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特許7139421手術ロボットアームに対する不適切な力の検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】手術ロボットアームに対する不適切な力の検出
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20220912BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20220912BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20220912BHJP
   G01L 5/22 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
A61B34/20
A61B34/30
G01L5/22
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020519988
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018052964
(87)【国際公開番号】W WO2019074669
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】15/729,569
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジャーイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シューユン
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502709(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073052(WO,A1)
【文献】特開2014-097431(JP,A)
【文献】特開2015-100677(JP,A)
【文献】特開2008-237784(JP,A)
【文献】特開2010-099784(JP,A)
【文献】特開平01-210292(JP,A)
【文献】特開2008-229800(JP,A)
【文献】特開平11-282540(JP,A)
【文献】米国特許第09119655(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0013336(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
A61B 34/20
A61B 34/30
G01L 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロボットアームであって、
少なくとも2つのリンク機構と、
前記少なくとも2つのリンク機構を接続する少なくとも1つのジョイントと、
前記少なくとも2つのリンク機構の間のトルクを検出するように構成された少なくとも1つのトルクセンサと、
前記第1のロボットアームの遠位端に接続された器具装置マニピュレータ(IDM;Instrument Device Manipulator)と、
を有する第1のロボットアームと、
プロセッサと、
コンピュータ実行可能な命令を記憶するメモリであって、前記命令は前記プロセッサに、
前記トルクセンサの出力に基づいて、前記少なくとも1つのジョイントにおける第1のトルク値を計測することと、
前記第1のロボットアームの位置に基づいて前記少なくとも1つのジョイントにおける第2のトルク値を計測することであって、前記第2のトルク値は、前記少なくとも2つのリンク機構の間の前記トルクの重力成分を示す、ことと、
前記第1のトルク値と前記第2のトルク値との間の差に基づいて、前記IDMにおける第1の力を特定することと、
前記IDMにおける前記第1の力に基づいて、前記第1のロボットアームが物体と衝突したか否かを特定することと、
を実行させるメモリと、
を有することを特徴とし、
前記IDMの第1の軸に沿った移動によって、患者内で駆動されるように構成された操縦可能な器具をさらに有し、
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
前記IDMに加わる前記第1の力の、前記第1の軸に直交する第2の軸に沿った第1の成分を特定することと、
前記第1の力の前記第1の成分が第1の閾値よりも大きいことを特定することと、
を実行させ、
前記第1のロボットアームが前記物体と衝突したことを特定することが、前記第1の力の前記第1の成分が前記第1の閾値よりも大きいことを特定することにさらに基づく、
システム。
【請求項2】
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
前記第1のロボットアームが前記物体と衝突したと特定することに応じて、前記第1のロボットアームと前記物体との間の衝突を示す指標を暗号化することと、
暗号化データを表示するように構成されたディスプレイに、前記衝突を示す暗号化された前記指標を提供することと、
を実行させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
前記IDMに加わる前記第1の力の、前記第1の軸に沿った第2の成分を特定することと、
前記第1の力の前記第2の成分が第2の閾値よりも大きいことを特定することと、
を実行させ、
前記第1のロボットアームが前記物体と衝突したことを特定することが、前記第1の力の前記第2の成分が前記第2の閾値よりも大きいことを特定することにさらに基づき、前記第2の閾値は、前記操縦可能な器具の前記患者内への挿入において想定される力よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
患者内で駆動されるように構成された操縦可能な器具であって、前記操縦可能な器具は、第1の医療器具と、前記第1の医療器具のワーキングチャネルを通って駆動されるように構成された第2の医療器具とを有し、前記第1の医療器具および前記第2の医療器具はそれぞれ、シース、リーダ、針、鉗子、およびブラシのうちの1つを含み、前記第1のロボットアームは、第1の軸に沿って前記第1の医療器具を駆動するように構成されている、操縦可能な器具と、
前記第1の医療器具を通って前記第2の医療器具を駆動するように構成された第2のロボットアームと、をさらに有し、
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
前記第2のロボットアームのIDMにおける第2の力を検出することと、
前記第1の力および前記第2の力の両方が、閾値力よりも大きいことを特定することと、
前記第1の力および前記第2の力の両方が、前記閾値力よりも大きいことを特定することに応じて、前記第1のロボットアームと前記第2のロボットアームとの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
(a)挿入データが、前記第2の力が検出されたときに前記第2の医療器具が前記第1の医療器具を通って駆動されていることを示すことを特定すること、
を実行させ、
前記挿入データが前記第2の医療器具が前記第1の医療器具を通って駆動されていることを示すことを特定することにさらに応じて、前記第1のロボットアームと前記第2のロボットアームとの位置ずれが発生していることを特定することが実行されるか、または、
(b)挿入データが、前記第1のトルク値および前記第2のトルク値が計測されたときに前記第1の医療器具が前記患者内に駆動されていることを示すことを特定することと、
前記第1の力の第1の成分が前記第1の閾値よりも大きいことを特定することと、
前記挿入データが、前記第1の医療器具が駆動されていることを示すことを特定すること、および前記第1の力の第1の成分が前記第1の閾値よりも大きいことを特定することに応じて、前記第1の医療器具を前記患者内にガイドするように構成された患者導入器に対して前記第1のロボットアームの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させる
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
患者内を駆動されるように構成された操縦可能な器具であって、第1の医療器具と、前記第1の医療器具を通って駆動されるように構成された第2の医療器具と、を有し、前記第1のロボットアームが、前記第1の医療器具を第1の軸に沿って駆動するように構成されている、器具と、
前記第2の医療器具を前記第1の医療器具を通って駆動するように構成された第2のロボットアームと、をさらに有し、
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
前記第2のロボットアームのIDMに加わる第2の力を検出することと、
前記第1の力と前記第2の力とが互いに反対の向きであることを特定することと、
前記第1の力と前記第2の力の大きさの差が閾値差未満であることを特定することと、
前記第1の力と前記第2の力とが互いに反対の向きであることを特定することと、前記第1の力と前記第2の力の大きさの前記差が前記閾値差未満であることを特定することに応じて、前記第1のロボットアームと前記第2のロボットアームとの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ロボットアームが、前記少なくとも2つのリンク機構の間の角度を計測するように構成された少なくとも1つの位置センサをさらに有し、
前記メモリは、コンピュータ実行可能な命令をさらに含み、前記命令は前記プロセッサに、
前記位置センサの出力に基づいて前記力を特定すること
を実行させ、
前記トルクセンサ、モータ、前記位置センサは、前記ジョイント内に配置され、
前記トルクセンサ、前記モータ、前記位置センサはそれぞれ、前記ジョイントに接続された前記2つのリンク機構に接続されている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
トルクセンサの出力に基づいて、第1のロボットアームのジョイントにおける第1のトルク値を計測することであって、前記第1のロボットアームは、前記ジョイントによって接続される2つのリンク機構と、前記2つのリンク機構の間のトルクを検出するように構成されたトルクセンサと、前記第1のロボットアームの遠位端に接続された器具装置マニピュレータ(IDM;Instrument Device Manipulator)とを有する、ことと、
前記第1のロボットアームの位置に基づいて前記ジョイントにおける第2のトルク値を計測することであって、前記第2のトルク値は、前記2つのリンク機構の間の前記トルクの重力成分を示す、ことと、
前記第1のトルク値と前記第2のトルク値との間の差に基づいて、前記IDMにおける第1の力を特定することと、
前記IDMにおける前記第1の力に基づいて、前記第1のロボットアームが物体と衝突したか否かを特定することと、
を実行させ、
前記第1のロボットアームは、前記IDMの第1の軸に沿った移動によって患者内で操縦可能な器具を駆動するようにさらに構成され、
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
前記IDMに加わる前記第1の力の、前記第1の軸に直交する第2の軸に沿った第1の成分を特定することと、
前記第1の力の前記第1の成分が第1の閾値よりも大きいことを特定することと、
前記第1の力の前記第1の成分が前記第1の閾値よりも大きいことを特定することにさらに基づいて、前記第1のロボットアームが前記物体と衝突したことを特定することと、
を実行させる、
ことを特徴とする非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項9】
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
前記第1のロボットアームが前記物体と衝突したと特定することに応じて、前記第1のロボットアームと前記物体との間の衝突を示す指標を暗号化することと、
暗号化データを表示するように構成されたディスプレイに、前記衝突を示す前記暗号化された指標を提供することと、
を実行させる
ことを特徴とする請求項8に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
前記IDMに加わる前記第1の力の、前記第1の軸に沿った第2の成分を特定することと、
前記第1の力の前記第2の成分が第2の閾値よりも大きいことを特定することと、
前記第1の力の前記第2の成分が前記第2の閾値よりも大きいことを特定することにさらに基づいて、前記第1のロボットアームが前記物体と衝突したことを特定することであって、前記第2の閾値は、前記操縦可能な器具の前記患者内への挿入において想定される力よりも大きい、ことと、
を実行させる
ことを特徴とする請求項に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
前記第1のロボットアームは患者内で操縦可能な器具を駆動するようにさらに構成され、前記操縦可能な器具は、第1の医療器具と、第2のロボットアームによって前記第1の医療器具のワーキングチャネルを通って駆動されるように構成された第2の医療器具とを有し、前記第1の医療器具および前記第2の医療器具はそれぞれ、シース、リーダ、針、鉗子、およびブラシのうちの1つを含み、前記第1のロボットアームは、第1の軸に沿って前記第1の医療器具を駆動するように構成され、
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
前記第2のロボットアームのIDMにおける第2の力を検出することと、
前記第1の力および前記第2の力の両方が、閾値力よりも大きいことを特定することと、
前記第1の力および前記第2の力の両方が、前記閾値力よりも大きいことを特定することに応じて、前記第1のロボットアームと前記第2のロボットアームとの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させる
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
(a)挿入データが、前記第2の力が検出されたときに前記第2の医療器具が前記第1の医療器具を通って駆動されていることを示すことを特定することと、
前記挿入データが前記第2の医療器具が前記第1の医療器具を通って駆動されていることを示すことを特定することにさらに応じて、前記第1のロボットアームと前記第2のロボットアームとの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させるか、または、
(b)挿入データが、前記第1のトルク値および前記第2のトルク値が計測されたときに前記第1の医療器具が前記患者内に駆動されていることを示すことを特定することと、
前記第1の力の第1の成分が前記第1の閾値よりも大きいことを特定することと、
前記挿入データが、前記第1の医療器具が駆動されていることを示すことを特定すること、および前記第1の力の第1の成分が前記第1の閾値よりも大きいことを特定することに応じて、前記第1の医療器具を前記患者内にガイドするように構成された患者導入器に対して前記第1のロボットアームの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させる
ことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記第1のロボットアームは患者内で操縦可能な器具を駆動するようにさらに構成され、前記操縦可能な器具は、第1の医療器具と、第2のロボットアームによって前記第1の医療器具のワーキングチャネルを通って駆動されるように構成された第2の医療器具とを有し、前記第1のロボットアームは、前記第1の医療器具を第1の軸に沿って駆動するように構成され、
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
前記第2のロボットアームのIDMに加わる第2の力を検出することと、
前記第1の力と前記第2の力とが互いに反対の向きであることを特定することと、
前記第1の力と前記第2の力の大きさの差が閾値差未満であることを特定することと、
前記第1の力と前記第2の力とが互いに反対の向きであることを特定することと、前記第1の力と前記第2の力の大きさの前記差が前記閾値差未満であることを特定することに応じて、前記第1のロボットアームと前記第2のロボットアームとの位置ずれが発生していることを特定することと、
を実行させる
ことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記ロボットアームが、前記少なくとも2つのリンク機構の間の角度を計測するように構成された少なくとも1つの位置センサをさらに有し、
前記非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はさらなる命令を記憶し、前記さらなる命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、
前記位置センサの出力に基づいて前記力を特定すること
を実行させ、
前記トルクセンサ、モータ、前記位置センサは、前記ジョイント内に配置され、
前記トルクセンサ、前記モータ、前記位置センサはそれぞれ、前記ジョイントに接続された前記2つのリンク機構に接続されている
ことを特徴とする請求項8から13のいずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示のシステムおよび方法は手術ロボットシステムに関し、より具体的には、手術ロボットシステムの1つまたは複数のロボットアームに対する望ましくない不適切な力の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査(例えば、気管支鏡検査)などの医療手技には、診断目的または治療目的で患者の管腔ネットワーク(例えば、気道)に医療道具を挿入することが含まれる。手術ロボットシステムは、医療手技時における医療道具の挿入および/または操作の制御に使用することができる。手術ロボットシステムは、医療手技前や医療手技時における医療道具の位置決めの制御に使用可能な操作アセンブリを有する、少なくとも1つのロボットアームを備えることができる。
【発明の概要】
【0003】
本件開示のシステム、方法および装置には、それぞれいくつかの革新的な側面があり、いずれも本明細書に開示する所望の特徴を単独で担うものではない。
【0004】
1つの側面では、第1のロボットアームであって、少なくとも2つのリンク機構と、前記少なくとも2つのリンク機構を接続する少なくとも1つのジョイントと、前記少なくとも2つのリンク機構の間のトルクを検出する少なくとも1つのトルクセンサと、前記第1のロボットアームの遠位端に接続された器具装置マニピュレータ(IDM;Instrument Device Manipulator)と、を有する第1のロボットアームと、プロセッサと、コンピュータ実行可能な命令を記憶するメモリであって、前記命令は前記プロセッサに、前記トルクセンサの出力に基づいて、前記少なくとも1つのジョイントにおける第1のトルク値を計測することと、前記第1のロボットアームの位置に基づいて前記少なくとも1つのジョイントにおける第2のトルク値を計測することであって、前記第2のトルク値は、前記少なくとも2つのリンク機構の間の前記トルクの重力成分を示す、ことと、前記第1のトルク値と前記第2のトルク値との間の差に基づいて、前記IDMにおける第1の力を特定することと、前記IDMにおける前記第1の力に基づいて、前記第1のロボットアームが物体と衝突したか否かを特定することと、を実行させるメモリと、を有するシステムを提供する。
【0005】
別の側面では、命令が記憶された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が実行されると、少なくとも1つの計算装置に、トルクセンサの出力に基づいて、第1のロボットアームのジョイントにおける第1のトルク値を計測することであって、前記第1のロボットアームは、前記ジョイントによって接続される2つのリンク機構と、前記2つのリンク機構の間のトルクを検出するトルクセンサと、前記第1のロボットアームの遠位端に接続された器具装置マニピュレータ(IDM;Instrument Device Manipulator)とを有する、ことと、前記第1のロボットアームの位置に基づいて前記ジョイントにおける第2のトルク値を計測することであって、前記第2のトルク値は、前記2つのリンク機構の間の前記トルクの重力成分を示す、ことと、前記第1のトルク値と前記第2のトルク値との間の差に基づいて、前記IDMにおける第1の力を特定することと、前記IDMにおける前記第1の力に基づいて、前記第1のロボットアームが物体と衝突したか否かを特定することと、を実行させる非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0006】
さらに別の側面では、第1のロボットアームを位置決めする方法であって、トルクセンサの出力に基づいて、第1のロボットアームのジョイントにおける第1のトルク値を計測
することであって、前記第1のロボットアームは、前記ジョイントによって接続される2つのリンク機構と、前記2つのリンク機構の間のトルクを検出するトルクセンサと、前記第1のロボットアームの遠位端に接続された器具装置マニピュレータ(IDM;Instrument Device Manipulator)とを有する、ことと、前記第1のロボットアームの位置に基づいて前記ジョイントにおける第2のトルク値を計測することであって、前記第2のトルク値は、前記2つのリンク機構の間の前記トルクの重力成分を示す、ことと、前記第1のトルク値と前記第2のトルク値との間の差に基づいて、前記IDMにおける第1の力を特定することと、前記IDMにおける前記第1の力に基づいて、前記第1のロボットアームが物体と衝突したか否かを特定することと、を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本件開示の側面について、添付の図面および表と共に以下に説明するが、例示であって開示の側面を限定するものではなく、同様の構成要素には同様の名称を付す。
【0008】
図1】気管支鏡検査手技の診断および/または治療用に構成されたカートベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図2図1のロボットシステムの別の側面を示す図である。
図3】尿管鏡検査用に構成された図1のロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図4】血管手技用に構成された図1のロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図5】気管支鏡検査手技用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図6図5のロボットシステムの代替の図である。
図7】ロボットアームを収容するように構成されたシステムの一例を示す図である。
図8】尿管鏡検査用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図9】腹腔鏡検査用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図10】ピッチ調整または傾き調整された図5~9のテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図11図5~10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインタフェースの詳細図である。
図12】例示的な器具駆動部を示す図である。
図13】組になった器具駆動部を有する例示的な医療器具を示す図である。
図14】駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸と平行である、器具駆動部および器具の代替の設計を示す図である。
図15】実施形態の一例における、図13や14の器具の位置など、図1~10のロボットシステム1つまたは複数の要素の位置を推定する位置決めシステムを示すブロック図である。
図16】本件開示の側面に係る、気管支鏡検査手技の診断および/または治療用に構成された手術ロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図17】本件開示の側面に係る、ロボットアームに加わる力を特定し、衝突を検出する手順の一例を示すフローチャートである。
図18】本件開示の側面において、ロボットアームに加わる力を計算する手法を説明する、ロボットアームの自由物体図である。
図19A】本件開示の側面において、医療器具の挿入時に計測される力の一例を示すグラフである。
図19B】本件開示の側面において、衝突現象を示す可能性がある、医療器具の挿入時に計測される力の一例を示すグラフである。
図19C】本件開示の側面において、位置ずれ現象を示す可能性がある、医療器具の挿入時に計測される力の一例を示すグラフである。
図20】本件開示の側面に係る、衝突または位置ずれを検出する、手術ロボットシステムまたはその構成要素によって実行可能な方法の一例を示すフローチャートである。
図21】本件開示の側面に係る、衝突を検出する、手術ロボットシステムまたはその構成要素によって実行可能な方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1.はじめに)
本件開示の側面は、腹腔鏡検査などの低侵襲の手技や内視鏡検査などの非侵襲の手技を含む種々の医療手技を実行可能なロボット対応医療システムに組み込むことができる。内視鏡検査の手技においては、本システムは、気管支鏡検査、尿管鏡検査、消化器病検査などを実行することができる。
【0010】
本システムは、さまざまな手技を実行できることに加えて、術者を支援する強化された画像取得や誘導など、追加の利点を提供することができる。また、本システムは、扱いにくいアームの動きや位置などに対応する必要なく、人工工学による位置から手技を行うことが可能な機能を術者に提供することができる。さらに、本システムは、システムの1つまたは複数の器具を1人のユーザで制御可能な使いやすさが向上した手技を行うことが可能な機能を術者に提供することができる。
【0011】
以下に、例示目的の図面とともに種々の実施形態について説明する。開示の技術的思想のその他多数の実装が可能であり、さまざまな利点が開示の実装と共に得られる。また、ここには、参照用および多数の節の位置がわかるように見出しが含まれている。これらの見出しは、見出しが示す技術思想の範囲を制限するものではない。それぞれの技術思想は本明細書全体にわたって適用されてよい。
【0012】
(A.ロボットシステム-カート)
ロボット対応医療システムは、特定手技に応じてさまざまに構成することができる。図1は、気管支鏡検査の診断手技および/または治療樹技用に配置されたカートベースのロボット対応システム10の一実施形態を示す。気管支検査時に、システム10は、気管支鏡検査用の手技に特化した気管支鏡を自然開口部のアクセスポイント(この例ではテーブルに配置された患者の口など)に操作可能な内視鏡13などの医療器具を搬送して診断用の道具および/または治療用の道具を搬送するための、1つまたは複数のロボットアーム12を有するカート11を備える。図に示すように、カート11は、当該アクセスポイントにアクセスするために、患者の上半身に近い位置に配置されている。同様に、ロボットアーム12は、当該アクセスポイントに対して気管支鏡を配置するように作動可能である。図1に示す配置は、胃腸に関する(GI;gastro-intestinal)手技用の特別な内視鏡である胃鏡を用いた胃腸に関する手技を行うときにも使用できる。図2は、カートの一例である実施形態をより詳細に示す。
【0013】
引き続き図1を参照すると、カート11が適切に位置決めされると、ロボットアーム12は操縦可能な内視鏡13を患者に、ロボットにより、手動により、またはそれらの組み合わせにより挿入することができる。図示のように、操縦可能な内視鏡13は内側リーダ部分および外部シース部分などの少なくとも2つの入れ子式部分を備えることができ、各部分は器具ドライバ28のセットから別個の器具ドライバに結合され、各器具ドライバは個々のロボットアームの遠位端に結合される。リーダ部分をシース部分と同軸に整列させることを容易にする、器具ドライバ28のこの線形配置は、1つ以上のロボットアーム12を異なる角度および/または位置に操作することによって、空間内で再配置され得る「
仮想レール」29を作成する。本明細書で説明する仮想レールは破線を使用して図示され、したがって、破線はシステムのいかなる物理的構造も示さない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の移動は外部シース部分に対して内側リーダ部分を入れ子式にし、または内視鏡13を患者から前進または後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途または医師の好みに基づいて、調整、移動、および旋回されてもよい。例えば、気管支鏡検査では、図示のような仮想レール29の角度および位置が内視鏡13を患者の口内に曲げることに起因する摩擦を最小限に抑えながら、内視鏡13への医師のアクセスを提供することの折衷案を表す。
【0014】
内視鏡13は、挿入後、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して、目標位置または手術部位に到達するまで、患者の気管および肺に向けられ得る。患者の肺ネットワークを通るナビゲーションを強化し、かつ/または所望の標的に到達するために、内視鏡13を操作して、外部シース部分から内側リーダ部分を入れ子式に延ばして、関節動作を強化し、曲げ半径を大きくすることができる。別個の器具ドライバ28の使用はまた、リーダ部分およびシース部分が、互いに独立して駆動されることを可能にする。
【0015】
例えば、内視鏡13は例えば、患者の肺内の病変または小結節などの標的に生検針を送達するように指示されてもよい。針は病理学者によって分析されるべき組織サンプルを得るために、内視鏡の長さにわたるワーキングチャネルに沿って展開され得る。病理学的結果に応じて、追加のツールが追加の生検のために、内視鏡のワーキングチャネルの下方に配置されてもよい。悪性である結節を同定した後、内視鏡13は、潜在的に癌性の組織を切除するためのツールを内視鏡的に送達し得る。いくつかの例において、診断および治療手技は、別々の手続で送達される必要があり得る。これらの状況では、内視鏡13はまた、基準を送達して、対象小結節の位置を「マーキング」するために使用され得る。他の例において、診断および治療手技は、同じ手順の間に送達され得る。
【0016】
システム10はまた、可動タワー30を含むことができ、このタワー30は、支持ケーブルを介してカート11に接続されて、カート11に対する制御、電子機器、流体工学、光学系、センサ、および/または電力のためのサポートを提供することができる。このような機能をタワー30内に配置することにより、より小さなフォームファクタのカート11が可能になり、これは、手術医師およびそのスタッフによって、より容易に調整および/または再配置され得る。さらに、カート/テーブルと支持タワー30との間の機能の分割は手術室の混乱を低減し、臨床作業の流れを改善することを容易にする。カート11を患者の近くに配置することができるが、タワー30は手技中に邪魔にならないように離れた場所に収容することができる。
【0017】
上述のロボットシステムのサポートにおいて、タワー30はコンピュータプログラム命令を、例えば、永続的磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素を含むことができる。これらの命令の実行は、実行がタワー30またはカート11内で行われるかどうかにかかわらず、システム全体またはそのサブシステムを制御することができる。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行される場合、命令はロボットシステムの構成要素に、関連するキャリッジおよびアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療器具を制御させることができる。例えば、制御信号の受信に応じて、ロボットアームの関節内のモータは、アームを特定の姿勢に位置決めすることができる。
【0018】
タワー30はまた、内視鏡13を通して展開され得るシステムに制御された潅注および吸引能力を提供するために、ポンプ、流量計、弁制御、および/または流体アクセスを含み得る。これらの構成要素は、タワー30のコンピュータシステムを使用して制御するこ
ともできる。いくつかの実施形態では、洗浄および吸引能力が別個のケーブルを介して内視鏡13に直接送達されてもよい。
【0019】
タワー30はカート11にフィルタされ保護された電力を供給するように設計された電圧およびサージプロテクタを含むことができ、それによって、カート11内に電力変圧器および他の補助電力部品を配置することが回避され、その結果、より小さく、より可動性の高いカート11が得られる。
【0020】
タワー30はまた、ロボットシステム10全体に展開されるセンサのための支持装置を含むことができる。例えば、タワー30はロボットシステム10全体にわたって光学センサまたはカメラから受信したデータを検出し、受信し、処理するための光電子機器を含むことができる。制御システムと組み合わせて、このような光電子機器を使用して、タワー30を含むシステム全体に配置された任意の数のコンソールに表示するためのリアルタイム画像を生成することができる。同様に、タワー30は配置された電磁(EM;Electromagnetic)センサから受信された信号を受信し、処理するための電子サブシステムも含むことができる。タワー30はまた、医療器具内または医療器具上の電磁センサによる検出のために電磁場発生器を収容し、位置決めするために使用されてもよい。
【0021】
タワー30は、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えばカートの頂部に取り付けられたコンソールに加えて、コンソール31を含むこともできる。コンソール31は、ユーザインタフェースと、医師の操作者のためのタッチスクリーンなどの表示画面とを含むことができる。システム10内のコンソールは一般に、ロボット制御と、内視鏡13のナビゲーションおよび位置決め情報などの手術前およびリアルタイム情報との両方を提供するように設計される。コンソール31が医師が利用できる唯一のコンソールではない場合、看護師のような第二の操作者によって、患者の健康状態や活動状態とシステムの動作を監視し、ナビゲーションおよび位置決め情報などの手続固有のデータを提供するために使用することができる。他の実施形態では、コンソール30は、タワー30とは別の筐体内に格納されている。
【0022】
タワー30は、1つまたは複数のケーブルまたは接続部(図示せず)を介してカート11および内視鏡13に結合することができる。いくつかの実施形態では、タワー30からのサポート機能が単一のケーブルを介してカート11に提供されてもよく、手術室を単純化し、混乱を解消する。他の実施形態では、特定の機能が別個のケーブル配線および接続で結合されてもよい。例えば、単一の電力ケーブルを介してカートに電力を供給することができるが、制御、光学、流体、および/またはナビゲーションのための支持体は別個のケーブルを介して提供することができる。
【0023】
図2は、図1に示されたカートベースのロボット使用可能システムからのカートの実施形態の詳細図を提供する。カート11は全体として、細長い支持構造14(しばしば「カラム」と呼ばれる)、カート基部15、およびカラム14の上端部にコンソール16を含む。カラム14は、1つまたは複数のロボットアーム12(図2には3つが示されている)の展開を支持するためのキャリッジ17(あるいは「アーム支持体」)などの1つまたは複数のキャリッジを含むことができる。キャリッジ17は、患者に対してより良好に位置決めするためにロボットアーム12の基部を調整するために垂直軸に沿って回転する個別に構成可能なアームマウントを含むことができる。キャリッジ17はまた、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直に移動することを可能にするキャリッジインタフェース19を含む。
【0024】
キャリッジインタフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の移動を案内するためにカラム14の両側に配置されたスロット20のようなスロットを介してカラム14に接続
されている。スロット20はキャリッジをカート基部15に対して種々の垂直高さに位置決めし、保持するための垂直移動インタフェースを含む。キャリッジ17の垂直移動は、カート11が様々なテーブル高さ、患者サイズ、および医師の好みに合うようにロボットアーム12の到達範囲を調整することを可能にする。同様に、キャリッジ17上の個々に構成可能なアームマウントは、ロボットアーム12のロボットアームベース21が様々な構成で角度付けされることを可能にする。
【0025】
いくつかの実施形態では、スロット20がキャリッジ17が垂直に移動するときに、カラム14の内部チャンバおよび垂直移動インタフェース内への汚れおよび流体の進入を防止するために、スロット表面と面一であり、かつ平行であるスロットカバーで補足されてもよい。スロットカバーは、スロット20の縦上端部および底部の近くに配置されたバネスプールの対を通して展開されてもよい。カバーはキャリッジ17が垂直に上下に平行移動するときに、展開されてそれらのコイル状態から伸縮するまで、スプール内でコイル状に巻かれる。スプールのばね荷重はキャリッジ17がスプールに向かって移動するときにカバーをスプール内に引っ込める力を提供し、一方、キャリッジ17がスプールから離れるように移動するときにも緊密な捺印を維持する。カバーは例えば、キャリッジ17が移動するときにカバーの適切な伸縮を確実にするために、キャリッジインタフェース19内のブラケットを使用して、キャリッジ17に接続されてもよい。
【0026】
カラム14はユーザ入力、例えばコンソール16からの入力に応答して生成される制御信号に応答して機械的な方法でキャリッジ17を移動させるために、垂直に整列された親ねじを使用するように設計された、歯車およびモータなどの機構を内部に備えることができる。
【0027】
ロボットアーム12は一般に、一連のジョイント24によって接続された一連のリンク機構23によって分離されたロボットアーム基部21およびエンドエフェクタ22を備えることができ、各ジョイントは独立したアクチュエータを備え、各アクチュエータは独立して制御可能なモータを備える。各独立して制御可能なジョイントは、ロボットアームに利用可能な独立した自由度を表す。アーム12の各々は7つのジョイントを有し、したがって、7つの自由度を提供する。多数の関節は多数の自由度をもたらし、「冗長である」自由度を可能にする。冗長な自由度は、ロボットアーム12が異なる結合位置および関節角を使用して、空間内の特定の位置、向き、および軌道にそれぞれのエンドエフェクタ22を位置決めすることを可能にする。これにより、システムは医師が腕の関節を患者から離れた臨床的に有利な位置に移動させて、腕の衝突を回避して、より広いアクセス範囲を実現しながら、空間内の所望の位置から医療器具を位置決めしたり方向付けたりすることが可能になる。
【0028】
カート基部15は、床上のカラム14、キャリッジ17、およびアーム12の重量を釣り合わせる。したがって、カート基部15は、電子機器、モータ、電源などのより重い構成要素、ならびにカートの移動および/または固定のいずれかを可能にする構成要素を収容する。例えば、カート基部15は、手技の前にカートが部屋の周りを容易に移動することを可能にする、回転可能なホイール形状のキャスタ25を含む。適切な位置に到達した後、キャスタ25は、手続中にカート11を所定の位置に保持するためにホイールロックを使用して固定されてもよい。
【0029】
コンソール16はカラム14の垂直端部に配置されているので、ユーザ入力を受け取るためのユーザインタフェースと、医師ユーザに手術前および手術中の両方のデータを提供するための表示画面(または、例えば、タッチスクリーン26などの二目的用装置)との両方を可能にする。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(CT)スキャンから導出されたナビゲーションおよびマッピングデ
ータ、および/または術前患者インタビューからの注を含むことができる。ディスプレイ上の手術中データは、器具から提供される光学情報、センサおよびセンサからの座標情報、ならびに呼吸、心拍数、および/または脈拍などの患者の活動統計を含むことができる。コンソール16は医師がキャリッジ17の反対側のカラム14の側からコンソールにアクセスすることができるように、配置され、傾斜されてもよい。この位置から、医師はカート11の背後からコンソール16を操作しながら、コンソール16、ロボットアーム12、および患者を見ることができる。図示のように、コンソール16はまた、カート11の操縦および安定化を補助するためのハンドル27を含む。
【0030】
図3は、尿管鏡検査のために配置されたロボット使用可能システム10の実施形態を示す。尿管鏡手技では、カート11が患者の尿道および尿管を横切るように設計された手技特有の内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するように配置されてもよい。尿管鏡検査では、尿管鏡32を患者の尿道と直接整列させて、領域内の繊細な解剖学的構造に対する摩擦および力を低減することが望ましい場合がある。図に示されるように、カート11はロボットアーム12が患者の尿道への直接的な線形アクセスのために尿管鏡32を位置決めすることを可能にするために、テーブルの足に整列され得る。テーブルの足から、ロボットアーム12は、尿管鏡32を仮想レール33に沿って尿道を通して患者の下腹部に直接挿入することができる。
【0031】
尿道への挿入後、気管支鏡検査におけるのと同様の制御手法を使用して、尿管鏡32は診断および/または治療用途のために、膀胱、尿管、および/または腎臓内にナビゲートされ得る。例えば、尿管鏡32は、尿管鏡32のワーキングチャネルの下に配置されたレーザまたは超音波砕石装置を用いて、尿管および腎臓に向けられて、腎結石の蓄積を破壊することができる。砕石術が完了した後、得られた結石断片は、尿管鏡32の下方に配置されたバスケットを用いて除去され得る。
【0032】
図4は、血管手技のために同様に配置されたロボット使用可能システムの実施形態を示す。血管手技では、システム10がカート11が操縦可能なカテーテルなどの医療器具34を患者の脚の大腿動脈内のアクセスポイントに送ることができるように構成することができる。大腿動脈はナビゲーションのためのより大きな直径と、患者の心臓への比較的遠回りで曲がりくねった経路との両方の特徴があり、このためナビゲーションを単純化できる。尿管鏡手技におけるように、カート11は、ロボットアーム12が患者の大腿/股関節領域における大腿動脈アクセスポイントへの直接的な線形アクセスを有する仮想レール35を提供することを可能にするように、患者の脚および下腹部に向かって配置され得る。動脈内への挿入後、医療器具34は、器具ドライバ28を移動させることによって方向付けられ、挿入されてもよい。あるいは、カートが例えば、肩および手首の近くの頸動脈および上腕動脈などの代替の血管アクセスポイントに到達するために、患者の上腹部の周りに配置されてもよい。
【0033】
(B.ロボットシステム-テーブル)
ロボット対応医療システムの実施形態はまた、患者のテーブルを組み込んでもよい。テーブルを組み込むことにより、カートを取り外すことによって手術室内の資本設備の量が減少し、患者へのアクセスがより大きくなる。図5は、気管支鏡検査手順のために配置されたそのようなロボット使用可能システムの実施形態を示す。システム36は、床の上にプラットフォーム38(「テーブル」または「ベッド」として示される)を支持するための支持構造または支柱37を含む。カートベースのシステムと同様に、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタは、図5の気管支鏡40などの細長い医療器具を、器具ドライバ42の直線的な位置合わせから形成された仮想レール41を通して、またはそれに沿って操作するように設計された器具ドライバ42を備える。実際には、X線透視画像を提供するためのCアームがテーブル38の周りにエミッタおよび検出器を配置する
ことによって、患者の上腹部領域の上に配置され得る。
【0034】
図6は、説明のため患者および医療器具を除いたシステム36の代替図を示す。図示されているように、カラム37はシステム36内にリング形状として示されている1つ以上のキャリッジ43を含むことができ、このキャリッジを基に1つ以上のロボットアーム39を構成することができる。キャリッジ43はロボットアーム39が患者に到達するように配置され得る異なる視点を提供するために、カラム37の長さに沿って延びる垂直カラムインタフェース44に沿って移動してもよい。キャリッジ43は、カラム37内に配置された機械的モータを使用してカラム37の周りを回転して、ロボットアーム39がテーブル38の複数の側、例えば患者の両側にアクセスできるようにすることができる。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジがカラム上に個別に配置されてもよく、他のキャリッジとは独立して移動および/または回転してもよい。キャリッジ43はカラム37を取り囲む必要はなく、または円形である必要もないが、図示されるようなリング形状は構造的バランスを維持しながら、カラム37の周りのキャリッジ43の回転を容易にする。キャリッジ43の回転および移動により、システムは、内視鏡および腹腔鏡のような医療器具を患者の異なるアクセスポイントに整列させることができる。他の実施形態(図示せず)では、システム36は、調節可能なアーム支持部を有する患者テーブルまたはベッドを備えてもよく、アーム支持部はテーブルまたはベッドに沿って延伸するバーやレールの形態として設けることができる。1つまたは複数のロボットアーム39(肘関節を有する肩部を介するなどによる)は、上記の調節可能なアーム支持部を垂直方向に調整して取り付けることができる。垂直方向の調整ができることで、ロボットアーム39は、患者テーブルまたは別途の下にコンパクトに収容でき、後で手技時に引き上げることができる。
【0035】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成要素を提供するために個別に回転および/または入れ子式に延在することができる一連のジョイントを備える一組のアームマウント45を介してキャリッジに取り付けることができる。さらに、アームマウント45は、キャリッジ43が適切に回転されたときに、アームマウント45がテーブル38の同じ側(図6に示す)、テーブル38の反対側(図9に示す)、またはテーブル38の隣接する側(図示せず)のいずれかに配置されるように、キャリッジ43上に配置されてもよい。
【0036】
カラム37は構造的に、テーブル38を支持し、キャリッジを垂直方向に移動させるための経路を提供する。内部においては、カラム37がキャリッジの垂直移動を案内するためのリードスクリューと、リードスクリューに基づいて前記キャリッジの移動を機械化するためのモータとを備えることができる。カラム37はまた、キャリッジ43およびその上に取り付けられたロボットアーム39に電力および制御信号を伝達することができる。
【0037】
テーブル基部46は図2に示すカート11のカート基部15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43、およびロボットアーム39をバランスさせるためのより重い構成要素を収容する。テーブル基部46はまた、手続中の安定性を提供するために、硬性キャスタを組み込んでもよい。キャスタはテーブル基部46の下端から展開されて、基部46の両側で反対方向に延在し、システム36を移動させる必要があるときに後退することができる。
【0038】
引き続き図6を参照すると、システム36は、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割してテーブルのフォームファクタおよびバルクを低減するタワー(図示せず)を含むこともできる。上記の実施形態と同様に、タワーは、処理、計算、および制御能力、電力、流体工学、ならびに/または光学およびセンサ処理などの様々なサポート機能をテーブルに提供することができる。タワーはまた、医師のアクセスを改善し、手術室を
煩雑にしないようにするために、患者から離れて配置されるように移動可能であってもよい。さらに、タワー内に部品を配置することにより、ロボットアームの潜在的な収納のためのテーブル基部内のより大きい収納スペースが実現する。タワーはまた、キーボードおよび/またはペンダントなどのユーザ入力のためのユーザインタフェースと、リアルタイム画像、ナビゲーション、および追跡情報などの術前および術中情報のための表示画面(またはタッチスクリーン)との両方を提供するコンソールを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、テーブル基部が使用されていないときにロボットアームを収納し、格納することができる。図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態においてロボットアームを収容するシステム47を示す。システム47では、キャリッジ48がロボットアーム50、アームマウント51、およびキャリッジ48を基部49内に収容するために、基部49内に垂直に移動させることができる。基地カバー52は、キャリッジ48、アームマウント51、およびアーム50を列53の近辺に展開するために移動されて開閉され、使用されていないときにそれらを保護するために閉じられてもよい。基部カバー52は、その開口部の縁部に沿って膜54で封止されて、閉鎖時の汚れおよび流体の進入を防止することができる。
【0040】
図8は、尿管鏡検査手順のために構成されたロボット使用可能なテーブルベースのシステムの実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38が患者をカラム37およびテーブル基部46から外れた角度に位置決めするための旋回部分55を含むことができる。旋回部分55は旋回部分55の下端を支柱37から離して位置決めするために、旋回点(例えば、患者の頭部の下に位置する)の周りで回転または旋回してもよい。例えば、旋回部分55の旋回は、Cアーム(図示せず)がテーブル38の下のカラム(図示せず)と空間を競合することなく、患者の下腹部の上に配置されることを可能にする。キャリッジ35(図示せず)を支柱37の周りに回転させることによって、ロボットアーム39は、尿管鏡56を仮想レール57に沿って患者の鼠径部に直接挿入して尿道に到達させることができる。尿管鏡検査では、手技中に患者の脚の位置を支持し、患者の鼠径部への明確なアクセスを可能にするために、スターラップ58をテーブル38の旋回部分55に固定することもできる。
【0041】
腹腔鏡手技では、患者の腹壁の小さな切開を通して、最小侵襲性器具(1つ以上の切開のサイズに適応するように細長い形状)が患者の解剖学的構造に挿入され得る。患者の腹腔を膨張させた後、しばしば腹腔鏡と呼ばれる器具は把持、切断、切除、縫合などの手術タスクを実行するように指示されてもよく、図9は腹腔鏡手技のために構成されたロボット使用可能なテーブルベースのシステムの実施形態を示す。図9に示されるように、システム36のキャリッジ43はテーブル38の両側にロボットアーム39の対を位置決めするように回転され、垂直に調整され、その結果、腹腔鏡59は患者の腹腔に到達するために患者の両側の最小切開部を通過するようにアームマウント45を使用して位置決めされ得る。
【0042】
腹腔鏡手技に適応するために、ロボット使用可能テーブルシステムは、プラットフォームを所望の角度に傾斜させることもできる。図10は、ピッチまたはチルト調整を有するロボット使用可能医療システムの実施形態を示す。図10に示すように、システム36は、テーブル38の傾斜に適応して、テーブルの一部分を床から他の部分よりも大きな距離に位置決めすることができる。さらに、アームマウント45はアーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するように、傾きに合わせて回転することができる。より急勾配の角度に適応するために、カラム37は、カラム37の垂直延長部がテーブル38が床に触れたり基部46と衝突したりしないようにする入れ子式部分60を含むこともできる。
【0043】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインタフェースの詳細を示す。ピッチ回
転機構61は、欄37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変更するように構成されてもよい。ピッチ回転機構61はカラム・テーブル・インタフェースにおける直交軸1、2の位置決めによって可能にすることができ、各軸は、電気的なピッチ角コマンドに応答して各軸が別個のモータ3、4によって作動される。一方のねじ5に沿った回転は一方の軸1における傾斜調整を可能にし、他方のねじ6に沿った回転は、他方の軸2に沿った傾斜調整を可能にする。いくつかの実施形態では、ボールジョイントを用いて、複数の自由度でカラム37に対する相対的なテーブル38のピッチ角を変更することができる。
【0044】
例えば、ピッチ調整は下腹部手術のために、テーブルをトレンデレンブルグ位置に位置決めしようとするとき、すなわち、患者の下腹部を患者の下腹部よりも床から高い位置に位置決めしようとするとき、特に有用である。トレンデレンブルグ位置は患者の内部器官を重力によって患者の上腹部に向かってスライドさせ、腹腔鏡前立腺切除術などの下腹部手術手技を開始して実行するための最小侵襲性ツール(minimally invasive tool)のために腹腔の空間を空ける。
【0045】
(C.器具ドライバとインタフェース)
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(1)医療器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(あるいは「器具駆動機構」または「器具装置マニピュレータ(IDM;instrument device manipulator)」と呼ばれる)と、(2)モータなどの任意の電気機械的構成要素を削除できる取り外し可能または取り外し可能な医療器具とを備える。この二分法は、医療手技に使用される医療器具を滅菌する必要性、およびそれらの複雑な機械的アセンブリおよび繊細な電子機器のために高価な資本設備を適切に滅菌することができないことが起因となりうる。したがって、医療器具は医師または医師のスタッフによる個々の滅菌または廃棄のために、器具ドライバ(したがってシステム)から取り外し、取り外し、および交換されるように設計されてもよい。対照的に、器具ドライバは、交換または滅菌される必要はなく、保護のためにドレープで覆われてもよい。
【0046】
図12は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端に配置された器具ドライバ62は駆動シャフト64を介して医療器具に制御されたトルクを提供するために、平行軸に配置された1つ以上の駆動ユニット63を備える。各駆動ユニット63は器具と相互作用するための個々の駆動シャフト64と、モータシャフトの回転を所望のトルクに変換するためのギアヘッド65と、駆動トルクを生成するためのモータ66と、モータシャフトの速度を測定し、制御回路にフィードバックを提供するためのエンコーダ67と、制御信号を受信し、駆動ユニットを作動させるための制御回路68とを備える。各駆動ユニット63は独立して制御され、電動化されており、器具ドライバ62は、医療器具に複数(図12に示すように4つ)の独立した駆動出力を提供することができる。動作中、制御回路68は制御信号を受信し、モータ信号をモータ66に送信し、エンコーダ67によって測定された結果のモータ速度を所望の速度と比較し、モータ信号を変調して所望のトルクを生成する。
【0047】
無菌環境を必要とする手技では、ロボットシステムが器具ドライバと医療器具との間に位置する、無菌ドレープに接続された無菌アダプタなどの駆動インタフェースを組み込むことができる。無菌アダプタの主な目的は駆動シャフトと駆動入力との間の物理的分離、したがって無菌性を維持しながら、器具ドライバの駆動シャフトから器具の駆動入力に角運動を伝達することである。したがって、例示的な無菌アダプタは、器具ドライバの駆動シャフトおよび器具上の駆動入力と嵌合されることが意図される一連の回転入力および出力を備えてもよい。滅菌アダプタに接続された滅菌ドレープは透明または半透明プラスチックなどの薄い軟性材料からなり、器具ドライバ、ロボットアーム、およびカート(カー
トベースのシステム内)またはテーブル(テーブルベースのシステム内)などの資本設備を覆うように設計される。ドレープの使用は滅菌を必要としない領域(すなわち、非滅菌領域)に依然として配置されている間に、患者の近くに資本設備を配置することを可能にする。滅菌ドレープの反対側では、医療器具が滅菌を必要とする領域(すなわち、滅菌野)において患者と接触することができる。
【0048】
(D.医療器具)
図13は、組になった器具ドライバを有する例示的な医療器具を示す。ロボットシステムと共に使用するように設計された他の器具と同様に、医療器具70は、細長いシャフト71(または細長い本体)および器具基部72を備える。医師による手動操作向けの設計として「器具ハンドル」とも呼ばれる器具基部72は、全体として、ロボットアーム76の遠位端で器具ドライバ75上の駆動インタフェースを通って延びる駆動出力74と嵌合するように設計された、回転可能な駆動入力73、例えば、レセプタクル、プーリ、またはスプールを備えてもよい。物理的に接続され、ラッチされ、および/または結合されると、器具基部72の嵌合された駆動入力73は器具ドライバ75内の駆動出力74と回転軸を共有し、駆動出力74から駆動入力73へのトルクの伝達が可能になる。いくつかの実施形態では、駆動出力74が駆動入力73上のレセプタクルと嵌合するように設計されたスプラインを備えてもよい。
【0049】
細長いシャフト71は例えば、内視鏡検査におけるように、解剖学的な開口またはルーメン、または、例えば、腹腔鏡検査におけるように、最小侵襲性切開のいずれかを介して送られるように設計される。細長いシャフト66は軟性(例えば、内視鏡と同様の特性を有する)または硬性(例えば、腹腔鏡と同様の特性を有する)のいずれかであり得るか、または軟性部分および硬性部分の両方のカスタマイズされた組み合わせを含み得る。腹腔鏡検査用に設計される場合、硬性の細長いシャフトの遠位端は回転軸を有するUリンクと、器具ドライバ75の駆動出力74から受け取ったトルクに応じて駆動入力が回転するときにテンドンからの力に基づいて作動され得る、例えば、1つまたは複数の把持器などの手術用道具とから形成される接合手首を備えるエンドエフェクタに接続されてもよい。内視鏡検査用に設計される場合、可撓性の細長いシャフトの遠位端は、器具ドライバ75の駆動出力74から受け取られるトルクに基づいて関節動作および屈曲され得る、操縦可能または制御可能な屈曲部を含み得る。
【0050】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71内のテンドンを使用して細長いシャフト71に伝達される。プルワイヤなどのこれらの個々のテンドンは、器具ハンドル72内の個々の駆動入力73に個々に固定することができる。ハンドル72から、テンドンは、細長いシャフト71内の1つ以上のプルルーメンに向けられ、細長いシャフト71の遠位部分に固定される。腹腔鏡検査では、これらのテンドンが手首、把持器、またはさみなどの遠位に取り付けられたエンドエフェクタに結合されてもよい。このような構成の下では、駆動入力73に及ぼされるトルクがテンドンに表面張力を伝達し、それによってエンドエフェクタを何らかの方法で作動させる。腹腔鏡検査では、テンドンは関節を軸の周りに回転させ、それによってエンドエフェクタを一指示または別の指示に移動させることができる。あるいはテンドンは細長いシャフト71の遠位端において、把持器の1つ以上の顎に接続され得、ここで、テンドンからの張力によって把持器が閉じる。
【0051】
内視鏡検査では、テンドンは接着剤、制御リング、または他の機械的固定を介して、細長いシャフト71に沿って(例えば、遠位端で)配置された屈曲または関節動作部に結合されてもよい。屈曲部の遠位端に固定して取り付けられると、駆動入力73に及ぼされるトルクがテンドンに伝達され、より柔軟性のある屈曲部(関節部または関節動作領域と呼ばれることもある)を屈曲または関節動作させる。非屈曲部に沿って、個々のテンドンを内視鏡シャフトの壁に沿って(または内側に)向ける個々のプルルーメンを螺旋状または
螺旋状にして、プルワイヤの表面張力から生じる半径方向の力を釣り合わせることが効果的であり得る。スパイラルの角度および/またはそれらの間の間隔は特定の目的のために変更または設計されてもよく、スパイラルを緊密にすると荷重力下でのシャフト圧縮が小さくなり、一方、スパイラルを少なくすると荷重力下でのシャフト圧縮が大きくなるが限界曲げとなる。スペクトルの他端では、プルルーメンが細長いシャフト71の長手方向軸に平行に向けられて、所望の屈曲または関節動作可能な部分における制御された関節動作が可能となる。
【0052】
内視鏡検査では、細長いシャフト71がロボットシステム手続を補助するために、いくつかの構成要素を収容する。シャフトは、シャフト71の遠位端における手術領域に手術ツール、潅注、および/または吸引を展開するためのワーキングチャネルを備えてもよい。シャフト71はまた、ワイヤおよび/または光ファイバを収容して、光学カメラを含み得る遠位先端の光学アセンブリへ/から信号を伝達し得る。シャフト71はまた、光ファイバを収容して、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端に光を運ぶことができる。
【0053】
器具70の遠位端において、遠位先端はまた、診断および/または治療、潅注、および吸引のためのツールを手術部位に送達するためのワーキングチャネルの開口部を備え得る。遠位先端はまた、内部解剖学的空間の画像を取得するために、ファイバースコープまたはデジタルカメラなどのカメラのためのポートを含んでもよい。関連して、遠位先端はまた、カメラを使用するときに解剖学的空間を照明するための光源のためのポートを含み得る。
【0054】
図13の例では駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は細長いシャフトの軸に直交する。しかしながら、この配置では、細長いシャフト71のロール機能が複雑になる。駆動入力73を静止状態に保ちながら、細長いシャフト71をその軸に沿って回転させると、テンドンが駆動入力73から延出して細長いシャフト71内のプルルーメンに入るときに、テンドンの望ましくない絡み合いが生じる。そのようなテンドンによって生じる絡み合いは、内視鏡手技時に可撓性の細長いシャフトの移動を予測することを目的とする任意の制御アルゴリズムの障害となり得る。
【0055】
図14は器具ドライバおよび器具の代替設計を示し、駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸に平行である。図示のように、円形の器具ドライバ80は、ロボットアーム82の端部に平行に整列された駆動出力81を有する4つの駆動ユニットを備える。駆動ユニットおよびそれぞれの駆動出力81は、アセンブリ83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転アセンブリ83内に収容される。回転駆動ユニットによって提供されるトルクに応じて、回転アセンブリ83は、回転アセンブリ83を器具ドライバの非回転部分84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電気接点を介して器具ドライバ80の非回転部分84から回転アセンブリ83に電力および制御信号を伝達することができ、この信号は、ブラシ付きスリップリング接続(図示せず)による回転によって維持することができる。他の実施形態では、回転アセンブリ83が非回転部分84に一体化され、したがって他の駆動ユニットと平行ではない別個の駆動ユニットに応答することができる。回転機構83は、器具ドライバ80が器具ドライバ軸85の周りに単一のユニットとして、駆動ユニットおよびそれぞれの駆動出力81を回転させることができる。
【0056】
上記に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長いシャフト部分88と、器具ドライバ80内の駆動出力81を受けるように構成された複数の駆動入力89(レセプタクル、プーリ、およびスプールなど)を備える器具基部87(説明のために透明な外皮と共に示されている)とを備えることができる。先に開示された実施形態とは異なり、器具シャ
フト88は、図13の設計におけるように直交するのではなく、駆動入力89の軸に実質的に平行な軸を有する器具基部87の中心から延伸する。
【0057】
器具ドライバ80の回転アセンブリ83に結合されると、器具基部87および器具シャフト88を備える医療器具86は、器具ドライバ軸85の周りで回転アセンブリ83と組み合わせて回転する。器具シャフト88は器具基部87の中心に配置されているので、器具シャフト88は取り付けられたとき、器具ドライバ軸85と同軸である。したがって、回転アセンブリ83の回転は、器具シャフト88をそれ自体の前後軸の周りに回転させる。さらに、器具基部87が器具シャフト88と共に回転するとき、器具基部87の駆動入力89に接続されたテンドンは、回転中に絡み合わない。したがって、駆動出力81、駆動入力89、および器具シャフト88の軸の平行性は、任意の制御テンドンの絡み合いを発生させることなく、シャフトを回転させることができる。
【0058】
(E.ナビゲーションと制御)
従来の内視鏡検査には、X線透視法(例えば、Cアームを介して送達され得るよう)および他の形態の放射線ベースの画像化モダリティの使用が含まれ、操作者の医師に管腔内ガイダンスが提供される。一方、本件開示によって実現されるロボットシステムは、放射線に対する医師の曝露を低減し、手術室内の機器の量を低減するために、非放射線ベースのナビゲーションおよび位置決め手段を提供する。本明細書で使用されるように、用語「位置決め」は、基準座標系における物体の位置を特定および/または監視することを指すことができる。術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイム電磁追跡、およびロボットコマンドデータなどの技術は放射線を用いない運用環境を達成するために、個別に、または組み合わせて使用されてもよい。放射線ベースの画像モダリティが依然として使用される他の場合には、術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイム電磁追跡、およびロボットコマンドデータは放射線ベースの画像モダリティによってのみ得られる情報を改善するために、個別に、または組み合わせて使用されてもよい。
【0059】
図15は、例示的な実施形態による、器具の位置など、ロボットシステムの1つまたは複数の要素の位置を推定する位置決めシステム90を示すブロック図である。位置決めシステム90は、1つまたは複数の命令を実行するように構成された1つまたは複数の計算装置のセットとすることができる。計算装置は、上述の1つまたは複数の構成要素内のプロセッサ(または複数のプロセッサ)およびコンピュータ可読メモリによって具現化され得る。限定ではなく例示として、計算装置は、図1に示すタワー30内や、図1~4に示すカート内や、図5~10に示すベッド内などに配置されてよい。
【0060】
図15に示すように、位置決めシステム90は、入力データ91~94を処理して医療器具の遠位先端の位置データ96を生成する位置決めモジュール95を含むことができる。位置データ96は、基準系に対する器具の遠位端の位置および/または向きを表すデータまたはロジックであってもよい。基準系は、患者の解剖学的構造、または電磁場発生器(電磁場発生器については以下の説明を参照)などの既知の物体に対する基準系とすることができる。
【0061】
ここで、さまざまな入力データ91~94についてより詳細に説明する。術前マッピングは、低線量CTスキャンの収集を使用することによって達成することができる。術前CTスキャンは2次元画像を生成し、各画像は、患者の内部解剖学的構造の破断図の「スライス」を表す。集合体で分析される場合、患者の肺ネットワークなどの患者の解剖学的構造の解剖学的空洞、空間、および構造のための画像ベースのモデルが生成され得る。中心線ジオメトリのような手法は、CT画像から決定され、近似されて、術前モデルデータ91と呼ばれる患者の解剖学的構造の3次元ボリュームを展開することができる。中心線ジオメトリの使用については、米国特許第14/523,760号に記載されており、その
内容の全体を本願に援用する。また、ネットワークトポロジーモデルは、CT画像から導出されてもよく、気管支鏡検査に特に適している。
【0062】
いくつかの実施形態では、器具が視覚データ92を提供するためにカメラを装備することができる。位置決めモジュール95は1つまたは複数の視覚ベースの位置追跡を可能にするために、視覚データを処理することができる。例えば、手術前モデルデータは医療器具(例えば、内視鏡または内視鏡のワーキングチャネルを通る器具の前進)のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にするために、ビジョンデータ92と共に使用されてもよい。例えば、手術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは内視鏡の予想される移動経路に基づいてモデルから予想される内視鏡画像のライブラリを生成することができ、各画像はモデル内の位置にリンクされる。手術中に、このライブラリはカメラ(例えば、内視鏡の遠位端にあるカメラ)で取得されたリアルタイム画像を画像ライブラリ内の画像と比較して位置決めを補助するために、ロボットシステムによって参照されてもよい。
【0063】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技術は、カメラ、したがって内視鏡の動きを特定するために特徴追跡を使用する。位置決めモジュール95のいくつかの特徴は解剖学的な管腔に対応する手術前モデルデータ91内の円形の幾何学的形状を識別し、それらの幾何学的形状の変化を追跡して、どの解剖学的な管腔が選択されたかや、カメラの相対的な回転および/または移動運動を特定することができる。トポロジーマップの使用によって、視覚ベースのアルゴリズムまたは方法をさらに強化することができる。
【0064】
別のコンピュータビジョンベースの技術であるオプティカルフローはカメラの動きを推測するために、ビジョンデータ92のビデオシーケンス内の画像画素の変位および移動を分析することができる。複数の反復にわたる複数のフレームの比較によって、カメラ(したがって、内視鏡)の移動および位置を特定することができる。
【0065】
位置決めモジュール95は、リアルタイム電磁追跡を使用して、手術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に位置合わせすることができるグローバル座標系における内視鏡のリアルタイム位置を生成し得る。電磁追跡では医療器具(例えば、内視鏡ツール)の1つ以上の位置および向きに埋め込まれた1つ以上のセンサコイルを備える電磁センサ(トラッカ)は既知の位置に配置された1つ以上の静的電磁場発生器によって生成された電磁場の変動を測定する。電磁センサによって検出された位置情報は、電磁データ記憶される。電磁場発生器(または送信機)は埋め込まれたセンサが検出し得る低強度磁場を生成するために、患者の近くに配置され得る。磁界は電磁センサコイルに小さな電流をガイドし、この電流は、電磁センサと電磁界発生器との間の距離および角度を特定するために分析され得る。これらの距離および向きは、座標系内の単一の位置を患者の解剖学的構造の手術前モデル内の位置と整列させる幾何学的変換を特定するために、患者の解剖学的構造(例えば、手術前モデル)に対して手術中に「位置合わせ」されてもよい。一旦位置合わせされると、医療器具の1つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端)に埋め込まれた電磁追跡装置は、患者の解剖学的構造を通る医療器具の進歩のリアルタイムの指示を提供し得る。
【0066】
ロボットコマンドおよび運動学データ94はまた、ロボットシステムのための位置決めデータ96を提供するために、位置決めモジュール95によって使用されてもよい。関節動作コマンドから生じる装置ピッチおよびヨーは、手術前較正中に特定され得る。手術中に、これらの較正計量値は器具の位置を推定するために、既知の挿入デプス情報と組み合わせて使用されてもよい。あるいは、これらの計算がネットワーク内の医療器具の位置を推定するために、電磁、視覚、および/またはトポロジーモデリングと組み合わせて分析されてもよい。
【0067】
図15に示すように、多数の他の入力データを位置決めモジュール95によって使用することができる。例えば、図15には示されていないが、形状感知ファイバを用いる器具は、位置決めモジュール95が器具の位置および形状を特定するために使用する形状データを提供することができる。
【0068】
位置決めモジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて使用することができる。場合によっては、このような組み合わせは位置決めモジュール95が入力データ91~94の各々から特定された位置に信頼性重みを割り当てる確率的アプローチを使用することができる。したがって、電磁データが信頼できない場合(電磁干渉がある場合のように)、電磁データによって特定される位置の信頼性は低下する可能性があり、位置決めモジュール95は、視覚データ92および/またはロボットコマンドおよび運動学データ94により依存する可能性がある。
【0069】
上記の通り、本明細書で説明するロボットシステムは、上記の技術のうちの1つまたは複数の組合せを組み込むように設計することができる。タワー、ベッドおよび/またはカートに基づくロボットシステムのコンピュータベースの制御システムはコンピュータプログラム命令を、例えば、永続的磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に記憶することができ、これは、実行時に、システムにセンサデータおよびユーザコマンドを受信および分析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーションおよび位置決めデータを表示させる。
【0070】
(2.ロボットアームの衝突の検出方法について)
本件開示の実施形態は、手術ロボットシステムの1つ以上のロボットアームに関して生じる望ましくない力を検出するためのシステムおよび技術に関する。望ましくない力の発生を検出することは、手術ロボットシステムの全体的な安全性における重要な要素であり得る。例えば、ロボットアームが医療手技中に物体と衝突する場合、衝突によって予期せぬ力がロボットアームに加わり、ロボットアームに加えられる位置および/または力に影響する可能性があり、したがって、ロボットアームの衝突を検出し、衝突に適切に応答して、患者への危害を防止することが重要である
【0071】
本明細書で使用されるように、用語「衝突」は、一般に2つ以上の物体間の接触を指すものといえる。2つのロボットアーム間、および/またはロボットアームと運用環境内の別の物体(プラットフォーム、カート、Cアームなど)との間で衝突が発生することがある。1つまたは複数のロボットアームにおける予期しないまたは望ましくない力が生じる別の要因は、2つのロボットアーム間の位置ずれであることもある。位置ずれは2つのロボットアーム間の衝突を伴わない場合があるが、位置ずれは同様の予期せぬ力をもたらす場合があり、したがって、手術ロボットシステムの全体的な安全性のために位置ずれを検出することも重要である場合がある。
【0072】
システムは、衝突または位置ずれの検出に応じて、1つまたは複数の動作を行うことができる。例えば、システムは検出された現象(例えば、衝突または位置ずれ)の表示をシステムのユーザに提供することができる。検出された現象のユーザへの指示は、表示装置、触覚フィードバック装置、音声装置などを含む1つまたは複数の出力装置を介して提供され得る。システムはまた、衝突または位置ずれ現象が解決されるまで、医療手技を中断してもよい。
【0073】
(A.衝突および位置ずれを検出するシステム例)
図16は、本件開示の態様による、ロボットアーム衝突および/または位置ずれを検出
するように構成され得る、カートベースの手術ロボットシステムの実施形態を示す。図16はロボットアームがカートに取り付けられている実施形態を示すものであるが、開示内容はこれに限定されるものではなく、ここに述べる技術は図6に示す患者プラットフォームを支持するカラムに取り付け可能なロボットアームに適用することもできる。
【0074】
図16に戻り、カート105、1つ以上のロボットアーム110および120、ならびに操縦可能な器具130を含むシステム100が提供される。カート105は、プロセッサ(図示せず)、メモリ(図示せず)、および検出された衝突および/または位置ずれ現象を示す符号化データをレンダリングするように構成されたディスプレイ107を含むことができる。しかし、実施形態に応じて、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイ107のうちの1つまたは複数は、図1に示す可動タワー30などの別の装置上またはその内部に配置することができる。さらに、他の実施例では、ディスプレイ107の代わりに、またはそれに加えて、ディスプレイ107以外のフィードバック装置を使用することができる。使用可能な他のフィードバック装置は、触覚デバイス、スピーカ、ロボットアーム112のうちの1つ以上を介して作動されるフォースフィードバック、1つ以上の発光ダイオードLEDなどを含む。
【0075】
ロボットアーム110、120は、それぞれ、第1のロボットアーム110及び第2のロボットアーム120を有する。しかしながら、本件開示の態様は、より多くのまたはより少ない数のロボットアームを有するシステムにも適用可能である。図16の実施形態では、第1のロボットアーム110が複数のリンク機構111と、複数のジョイント113と、IDM115とを含む。ジョイント113の各々は、2つの隣接するリンク機構111を接続する。図示されていないが、第1のロボットアーム110はまた、リンク機構111のうちの2つの間のトルクを検出するように構成されたトルクセンサを含んでもよい。特定の実装において、所与のジョイント113は、所与のジョイント111に隣接する2つのリンク機構111の間のトルクを検出するように構成された対応するトルクセンサを収容することができる。第1のロボットアーム110をカート105に接続するジョイント113にトルクセンサを設けることもできる。特定の実施態様では、トルクセンサが対応するジョイント113の回転軸に沿っていないトルクがトルクセンサの出力に与える影響を最小限に抑えるように構成された複数の歪みゲージを介して実施することができる。
【0076】
さらに、所与のジョイント113は2つの隣接するリンク機構111の位置を調整するために、所与のジョイント113に2つの隣接するリンク機構111の間に力を加えるように構成されたモータ(図示せず)をさらに収容してもよい。IDM115は、ロボットアーム110の遠位端に接続することができる。第1のロボットアーム110の1つ以上のジョイント113内のモータを作動させることによって、モータは第1のロボットアーム110の向きまたは姿勢を、ひいてはIDM115を(例えば、第1のアームの1つ以上のジョイント113の位置および/または向きを調節することによって)調節し、これによりIDM115に取り付けられた操作可能な器具130を制御するように動作することができる。
【0077】
ジョイント113の各々はさらに、2つの隣接するリンク機構111の相対位置を測定するように構成された位置センサを収容することができる。したがって、所与のジョイント113はさらに、2つの隣接するリンク機構111の間の角度を測定するように構成された位置センサを収容することができる。システムは、位置センサの各々の出力に基づいて、第1のロボットアーム110内のリンク機構111の各々の位置を決定することができる。さらに、後述するように、位置センサの出力を使用して、第1のロボットアーム110上の基準点に加えられる力を決定してもよい。特定の実施形態では、所与の位置センサがエンコーダを含むことができる。エンコーダは例えば、モータシャフト上に印字され
たコード化された視覚情報を読み取ることによって、モータシャフトの速度および/または位置を測定するように構成されてもよく、モータの速度および/または位置を示すフィードバックをシステムに提供してもよい。
【0078】
第1のロボットアーム110と同様に、第2のロボットアーム120は、複数のリンク機構121と、隣接するリンク機構121を連結する複数のジョイント123と、IDM125とを含んでもよい。ジョイント123の各々は、対応するトルクセンサ及びモータ(図示せず)を収容することができる。IDM125はまた、操縦可能な器具130を操作するために、第2の医療器具133に取り付けられてもよい。
【0079】
特定の実施形態では、ジョイント113、123のそれぞれが個別のトルクセンサとモータを有するのではなく、モータがトルクセンサとしても機能する。例えば、第1のロボットアーム110に力(例えば、重力、衝突の力、ユーザによって加えられる力など)が加えられると、モータは第1のロボットアーム110の位置を維持するために、ジョイント113に対向する反対向きの力を加えるように構成されてもよい。第1のロボットアーム110の位置を維持するためにモータに必要とされる電流は、対応するジョイント113に加えられるトルクに対応してもよい。
【0080】
図16の実施形態における操作可能な器具130は、第1のロボットアーム110のIDM115に取り付けられた第1の医療器具131と、第2のロボットアーム120のIDM125に取り付けられた第2の医療器具133とを備える。しかしながら、図16に示される例は単に1つの例示的な操縦可能な器具130であり、他の実施形態は、単一のロボットアーム110によって制御される操縦可能な器具130、または操作のために3つ以上のロボットアームを必要とする操縦可能な器具130を含む。実施形態および実施される医療手技に応じて、第1および第2の医療器具のそれぞれは、外部シース部分、外部シース部分、針、鉗子、ブラシなどのうちの1つを備えてもよい。
【0081】
第1および第2の医療器具131および133は、第1の軸140に沿って患者に前進/挿入(または患者から後退)されるように構成されてもよい。上記から、第1の軸140は仮想レールと呼ぶこともできる。仮想レールは、EDM115およびEDM125の位置合わせ軸によって規定されてもよい。仮想レールに沿ったIDM115および125の移動によって、第1の医療器具131および第2の医療器具133の患者への前進および患者からの後退を制御することができる。図16に示されるように、座標系は、第1の軸140に関して定義されてもよい。例えば、第1の軸140(例えば、仮想レールまたは挿入軸)はY軸に沿って規定されてもよく、Z軸は重力方向(例えば、第1の軸140に略垂直)に基づいて規定されてもよく、X軸はY-Z平面に垂直に選択されてもよい。しかしながら、手技によっては、挿入軸140が重力方向と直交する横軸に対応しない場合がある。ロボットアームの座標系は、本件開示の範囲から逸脱することなく、任意の様式で選択されてよい。
【0082】
(B.ロボットアームに加えられる力の特定および衝突検出)
ロボットアームの衝突または位置ずれを検出するための1つの手法は、ロボットアームに生じる力を解析することである。例えば、ロボットアームは静止しているが、アームに加わる唯一の予期される力は重力による力である。したがって、重力による予期される力と一致しない(例えば、予期される力と測定された力との間の差が閾値よりも大きい場合)ロボットアームに生じる任意の力は、ロボットアームのうちの少なくとも1つと別の物体との間の衝突を示す可能性がある。
【0083】
特定の手術ロボットシステムは対応するロボットアーム上の基準点で受ける力を測定するために、ロボットアームのそれぞれに力センサを組み込むことができる。例えば、力セ
ンサは図16の第1のロボットアーム110のIDM115の上または近傍(例えば、規定された距離内)に配置され、IDM115に加わる力を計測してもよい。しかしながら、必要な精度でIDM115(例えば、力センサがIDM115に位置する)で加えられた力を直接計測することができる力センサは、コストが比較的高くなる可能性がある。したがって、特定の実装においては、システムは、ジョイント113内に位置するトルクセンサから出力されるトルク値を使用して、IDM115(またはロボットアーム110上の任意の基準点)における力を特定することができる。
【0084】
図17は本件開示の態様による、ロボットアームに加わる力を特定し、衝突を検出するための例示的処理を示すフローチャートである。図17に示す方法1700は単に例示的な実装であり、方法1700は、方法1700に関連するブロックのうち1つまたは複数のブロックを追加、除去、および/または修正することで変更できる。便宜上、方法1700はシステム(例えば、図16の手術ロボットシステム100)によって実行されるものとして説明する。ただし、方法1700の特定の側面は例えば、メモリに記憶されたコンピュータ実行可能命令に基づいて、システムの1つ以上のプロセッサによって実行することができる。また、方法1700は、単一のロボットアームに関連して説明する。しかしながら、システムに含まれる複数のロボットアームが受ける力を特定するために、同様の方法を実行することができる。
【0085】
ブロック1701から開始する。ブロック1705において、システムは、ロボットアームのトルク値および位置値を受信する。システムは、ロボットアームに含まれるトルクセンサのそれぞれからトルク値を受け取ることができる。さらに、システムは、ロボットアーム内の各リンク機構の位置を示すメモリに記憶された位置データから位置値を検索することができる。例えば、ロボットアームは、各関節に形成されたエンコーダをさらに含んでもよい。エンコーダはモータシャフト上に印字されたコード化された視覚情報を読み取ることによって、モータシャフトの速度および/または位置を測定することができ、モータの速度および/または位置を示すフィードバックをシステムに提供することができる。システムは、エンコーダからのフィードバックに基づいて、ジョイントの各々の位置を特定するように構成することができる。ロボットアーム上の各エンコーダ位置からの情報を使用して、システムはリンク機構およびIDMの各々の位置を特定することができる。
【0086】
ブロック1710では、システムがトルク値および位置値に基づいて、各関節に対する重力補償トルク値を特定する。あるジョイントに対する重力補償トルク値は、重力以外の力によるジョイントにおけるトルクの成分を表すことができる。一実施形態では、システムが対応するトルクセンサの出力に基づいて、接合部における第1のトルク値を測定することができる。次に、システムは、ロボットアームの位置に基づいて、関節における第2のトルク値を特定することができる。ロボットアームの位置データは、システムがジョイントによって接続された2つのリンク機構の位置およびそれらの間に形成された角度を特定することを可能にするデータを含んでもよい。第2のトルク値は、2つのリンク機構間のトルクの重力成分を示すことができる。次いで、システムは、第1および第2のトルク値に基づいて重力補償トルク値を特定することができる。例えば、第1のトルク値と第2のトルク値との差は、重力補償トルク値に対応してもよい。
【0087】
ブロック1715では、システムが各関節に対する重力補償トルク値に基づいて、ロボットアームに働く力を特定してもよい。したがって、特定された力は、重力によってロボットアームが受ける力の成分を除外してもよい。重力補償されたトルク値およびロボットアーム上の基準点で加えられる力を特定するための1つの手法の例は、以下の図18を参照しながら説明する。
【0088】
ブロック1720において、システムは、特定された力に基づいて衝突を検出すること
ができる。例えば、力が閾値を超えた場合、システムは、ロボットアームが別の物体と衝突したと判定することができる。特定の実施態様では、システムが特定された力に基づいて、ロボットアームが別のロボットアームと位置ずれが発生しているか否かを特定することもできる。ブロック1725で、システムは、検出された衝突の指示をシステムのユーザに提供することができる。例えば、力が閾値を超えたと判断することに応じて、システムは衝突が検出されたことをユーザに通知することができる。さらに、位置ずれの検出に応じて、システムは、検出された位置ずれの表示をユーザに提供することもできる。方法1700はブロック1730で終了する。
【0089】
(C.ロボットアームの自由体図)
図18は、本件開示の態様による、ロボットアームに加えられる力の計算方法を説明するための、ロボットアームの自由体図を示す。ロボットアーム210は、カート211に取り付けることができる。ロボットアーム210は、第1のリンク機構230と、第1のリンク機構230をカート211に接続する第1のジョイント240と、第2のリンク機構235と、第1および第2のリンク機構230および235を接続する第2のジョイント245と、第2のリンク機構235の遠位端に接続されたIDM250とを含む。ロボットアーム210は、図18に簡略化されて示されているが、より複雑なロボットアームは追加のジョイントによって接続されたアームに追加のリンク機構を追加することによって、同様の方法で分析することができる。IDM250は、外力Fがロボットアーム210に加えられるものとしてモデル化される基準点を定義することができる。しかしながら、他の実施形態では、基準点がロボットアーム210に沿った任意の他の点に設定されてもよい。加えて、第1及び第2リンク機構230及び235の各々が受ける重力による力は、対応するリンク機構230及び235の重心において加えられる重力ベクトルgとして図に示されている。
【0090】
ジョイント240、245のそれぞれは、計測されたトルク値τmeasuredを出力するトルクセンサを有してもよい。各ジョイント240、245の計測されたトルク値τmeasuredは、以下の式により決まる。
τmeasured=τforce+τgravity・・・(1)
【0091】
ここで、τmeasuredは計測されたトルク値、τforceはロボットアーム210に加わる力Fによるジョイント240または245におけるトルク、τgravityは重力gによるジョイント240または245に加わるトルクである。本実施形態では、ロボットアーム210に加わる力Fは、参照点としてのIDM250に加わる力としてモデルされる。ただし、この力は、実施形態に応じて異なる点においてロボットアーム210に加わる力としてモデルされてもよい。
【0092】
参照点において加わる力Fによるトルクと重力gによるトルクは以下で決まる。
τforce=J(θ)F・・・(2)
τgravity=G(θ,g)・・・(3)
【0093】
ここで、J(θ)は、ロボットアーム210におけるジョイント240または245の位置に基づくジョイント240または245に対する力Fへの変換を表すヤコブの転置行列であり、G(θ,g)は、重力gによるジョイント240または245に対するトルクの変換を表す。式(2)、(3)を式(1)に代入すると以下の式(4)が得られる。τmeasured=J(θ)F+G(θ,g)・・・(4)
【0094】
したがって、参照点(例えばIDM250)に加わる力は、計測されたトルクτmeasured、ヤコブの転置行列J(θ)、重力によるトルクの変換G(θ,g)に基づいて得られる。
【0095】
(D.衝突および位置ずれ検出)
1つ以上のロボットアーム上の基準点における力が特定されると、システムは、この力に基づいて、衝突または位置ずれ現象が生じたかどうかを特定することができる。この特定は、特定された力が基準点における予想される力と一致するかどうかに基づく。
【0096】
ロボットアームが静止している場合、重力補償された力(例えば、重力による力の成分が除去された特定された力)の期待値はゼロである。すなわち、通常の状況下では、ロボットアームが静止しているとき、重力による力以外にアームに加えられることが想定される力はない。そのようにロボットアームが静止している場合、システムは、力を閾値と比較することができる。重力補償された力が閾値よりも大きい場合、システムは、物体がロボットアームと衝突したと判定することができる。
【0097】
特定の実施態様では、システムがX軸、Y軸、Z軸の各軸における力の成分を特定することができる。システムは、ある周波数で、医療手技中の力の成分を特定することができる。力の期待値は、実行される医療手技に依存する。例えば、医療器具がY軸(第1の軸140または挿入軸に対応する、図16を参照のこと)に沿って患者内に前進させられている間、IDMは、Y軸に沿った力として挿入に対する抵抗を受ける。Y軸に沿った同様の抵抗力は、医療器具が患者から待避されたときに生じうる。したがって、医療器具の挿入または後退中のY軸に沿った力は、必ずしも衝突を示すとは限らない。例えば、システムは外力の方向を医療器具の実際の挿入方向と比較して、力がロボットアームの正常な動作と一致するか(例えば、力が実際の挿入方向と実質的に同じ方向にある)、または力が外部の物体との衝突と一致するか(例えば、力の少なくとも一部が実際の挿入方向以外の方向にある)どうかを判定することができる。
【0098】
図19Aは、本件開示の態様による、医療器具の挿入中に計測される力の例を示すグラフである。例のグラフでは、第1の器具が5,000msから18,000msまでの第1のロボットアームによって移動/駆動され、第2の器具が18,000msから34,000msまでの第2のロボットアームによって駆動される。図示された力のX、Y、およびZ成分は、第2のロボットアームで計測される。図19Aに示すように、力のX、Y、およびZ成分の各々は、10N未満の大きさである。第2のロボットアームによって計測される力のY軸成分は第2の医療器具の駆動中(例えば、18,000msから34,000msの間)に約3Nから5Nの間の値となる。力のX軸およびZ軸成分は小さな位置ずれ(例えば、予想される許容範囲内の位置ずれ)に起因して、または医療器具を介してIDMに送り返され得る患者の管腔ネットワークのうちの1つ内の医療器具によって取られる経路に起因して医療器具に及ぼされる力に起因して、引き起こされ得る。また、力のX軸成分およびZ軸成分は、第2のロボットアームの現在位置に基づく第2のロボットアームへの重力による影響のモデルの不正確さから生じる場合がある。
【0099】
さらに、力のXおよびZ成分は医療器具が駆動されているときに、力のY成分または医療器具の構成の変化と関連付けることができる。すなわち、力のX軸成分とZ軸成分の変化は医療器具の移動が開始または停止するとき(例えば、力のY軸成分が約0Nに遷移あるいは約0Nから遷移したとき)に生じる可能性がある。さらに、医療器具の遠位端の挿入方向が変わると、医療器具からIDMに伝達される力も変わる。
【0100】
図19Bは、本件開示の態様による、衝突現象を示す、医療器具の挿入中に計測される力の例を示すグラフである。図19Bに示されるように、力のX成分、Y成分、およびZ成分のうちの少なくとも1つは、ロボットアームと別の物体との間の衝突現象と一致する鋭いピークを含む。ここで、医療器具の通常の挿入中に受ける力よりも、衝突力が著しく大きくなり得る。この場合、システムは力の1つが閾値よりも大きいことを検出すると、
ロボットアームが別の物体に衝突したと判断することができる。図19Bでは衝突現象が約18,000ms、22,000ms、24,000ms、35,000ms、38,000ms、および42,000msで、システムによって検出される。
【0101】
図19Cは、本件開示の態様による、位置ずれ現象を示し得る、医療器具の挿入中に計測される力の例を示すグラフである。図19Cに示されるように、力のX成分およびZ成分の変化は、患者への医療器具の挿入の開始および停止のタイミングと直接相関しないことがある。しかしながら、これらの非相関変化は、(例えば、医療器具の構成の変化に起因して)医療器具を通って伝達される力の変化と一致し得る。したがって、特定の実施態様では、システムが位置ずれによって引き起こされる力と、医療器具の通常の駆動と一致し得る力のX成分およびZ成分の予想される変化とを区別するようにさらに構成されてもよい。
【0102】
図16に戻ると、例えば操作可能な器具130のような医療器具は、第1のロボットアーム110の第1のIDM115に取り付けられた第1の医療器具131と、第2のロボットアーム120の第2のIDM125に取り付けられた第2の医療器具133とを含むことができる。第1の医療器具131は、第2の医療器具133が前進および/または後退するように構成されるワーキングチャネルを規定してもよい。したがって、第1のロボットアーム110は第1の軸140(例えば、Y軸)に沿って患者内に第1の医療器具131を前進させるように構成されてもよく、第2のロボットアーム120は、第1の軸140に沿ってワーキングチャネルを介して患者内に第2の医療器具133を前進させるように構成されてもよい。同様に、第1のロボットアーム110は第1の軸140(例えば、Y軸)に沿って患者から第1の医療器具131を後退させるように構成されてもよく、第2のロボットアーム120は、第1の軸140に沿ってワーキングチャネルを介して患者から第2の医療器具133を後退させるように構成されてもよい。
【0103】
第1のIDM115及び第2のIDM125が第1の軸140に沿って適切に位置合わせされていない場合、X-Z平面における位置合わせ不良の方向において第1のIDM115及び第2のIDM125の間に力が発生することがある。したがって、第1のIDM115および第2のIDM125は、第1のIDM115および第2のIDM125の位置ずれに起因して、XZ平面において反対かつ反対の力を受ける可能性がある。さらに、位置ずれによって引き起こされる力は第1および第2の医療器具131および133のうちの1つ以上を駆動している間(例えば、第2の医療器具133を前進/挿入している間、または第1の医療器具131を後退させている間)にのみ生成され得る。
【0104】
位置ずれ現象を検出するために、システムは、第2のロボットアーム120の第2のIDM125において第2の力を検出するように構成されてもよい。システムは第1のIDM115で計測された第1の力と、第2のIDM125で計測された第2の力とのうちの少なくとも1つが、しきい値力よりも大きいことを特定することができる。システムは、第1の力及び第2の力の両方が閾値力より大きいと判断することに応じて、第1及び第2のロボットアーム110及び120が位置ずれしていることをさらに判断することができる。
【0105】
(E.衝突および位置ずれの検出方法例)
一実施例では、手術ロボットシステムが衝突現象及び位置ずれ現象の両方を検出し、現象が検出されたという指標をユーザに提供するように構成されてもよい。図20は、本件開示の態様による、衝突または位置ずれを検出するための、手術ロボットシステムまたはその構成要素によって動作可能な例示的な方法を示すフローチャートである。例えば、図20に示される方法2000のステップは、手術ロボットシステムのプロセッサおよび/または他の構成要素によって実行される。便宜上、方法2000は、システムのプロセッ
サによって実行されるものとして説明する。
【0106】
方法2000は、ブロック2001から開始する。ブロック2105において、プロセッサは、第1および第2のロボットアームのIDMにおける力を特定する。例えば、プロセッサは第1のロボットアームの第1のIDMにおける第1の力を特定し、第2のロボットアームの第2のIDMにおける第2の力を特定することができる。プロセッサは、i)第1および第2のロボットアームの関節のそれぞれに配置されたトルクセンサから受け取った出力と、ii)第1および第2のロボットアームの位置とに基づいて力を特定することができる。第1および第2の力は、重力によって第1および第2のロボットアームが受ける力を除去するように調整されてもよい。
【0107】
ブロック2010において、プロセッサは、第1の力および第2の力のうちの少なくとも一方が衝突を示すかどうかを判定する。例えば、プロセッサは、第1のIDMにおける第1の力に基づいて、第1のロボットアームが物体と衝突したかどうかを判定することができる。同様に、プロセッサは、第2のIDMにおける第2の力に基づいて、第2のロボットアームが物体と衝突したかどうかを判定することができる。
【0108】
一実施形態では、第1および/または第2のロボットアームが第1の軸に沿った第1および/または第2のIDMの移動によって、操縦可能な器具を患者の体内に前進させるように構成されてもよい。プロセッサは、第1の軸に直交する第2の軸に沿って第1のIDMに加えられる第1の力の第1の成分を特定することができる。プロセッサは、第1の力の第1の構成要素が第1の閾値よりも大きいと判断することができる。したがって、プロセッサは、第1の力の第1の成分が第1の閾値よりも大きいと判定することに基づいて、第1のロボットアームが物体と衝突したと判定することができる。挿入軸(例えば、第1の軸)に直交する軸に沿った力はしきい値未満であると予想されるので、プロセッサは第1のしきい値よりも大きい垂直軸に沿った第1の力の成分を、衝突を示すものと解釈することができる。プロセッサは、同様の手順を実行して、第2のロボットアームが物体と衝突したかどうかを判定することができる。
【0109】
プロセッサはまた、第1の挿入軸に沿った力の成分を第2の閾値と比較してもよい。例えば、プロセッサは第1の軸に沿ってIDMに加えられる第1の力の第2の成分を特定し、第1の力の第2の成分が第2の閾値よりも大きいことを特定することができる。プロセッサは第1の力の第2の成分が第2の閾値よりも大きいと判定することに基づいて、第1のロボットアームが物体と衝突したと判定することができ、この実施形態では第2の閾値が第1の軸に沿った挿入の予想される力よりも大きくなるように選択することができ、その結果、第2の閾値よりも大きい第1の軸で計測された力の任意の成分は物体との衝突によるものと判定することができる。
【0110】
第1の力および第2の力が衝突を示さないという特定に応じて、方法2000はブロック2015において、プロセッサは第1の力および第2の力の両方が第3の閾値力よりも大きいことを特定し、第1の力および第2の力の両方が第3の閾値力よりも大きいことを特定することに応じて、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームの位置ずれが発生していることを特定することができる。
【0111】
プロセッサはまた、第2の力が検出された時点で第1の医療器具を通して第2の医療器具が駆動されている(例えば、挿入されているか、または引っ込められている)ことを示す挿入データを特定してもよい。挿入データは、記憶に格納されてもよく、第1および第2のロボットアームの位置と、ユーザから受け取った第2の医療器具を駆動するための命令とのうちの少なくとも1つに基づいて特定されてもよい。プロセッサは、挿入データが第2の医療器具が第1の医療器具を通って駆動されている(例えば、挿入されているか、
または引っ込められている)ことを示すことを特定することに応じて、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームの位置ずれが発生していることを特定し得る。さらに、特定の実施態様では、プロセッサが第1および第2のロボットアームのIDMが受ける力が第1および第2の力の測定中に第2の医療器具が第1の医療器具を通って駆動されていないときの位置ずれによるものではないことを特定することができる。
【0112】
別の実施態様では、挿入データが第1および第2のトルク値が測定された時点で第1の医療器具が駆動されていたことを示すことができる。プロセッサは第1の力が閾値よりも大きいと判定し、第1の医療器具が駆動されていることを挿入データが示すと判定し、第1の力が第1の閾値よりも大きいと判定することに応じて、第1のロボットアームが患者導入器と位置ずれであると判定することができる。患者導入器は、第1の医療器具を患者の体内にガイドするように構成された装置であってもよい。特定の実施形態では、システムが患者導入器に及ぼされる力を特定するように構成されてもよい。これらの実施態様では、プロセッサが患者導入器に加えられる力と第1の力とが反対方向であるかどうかを判定し、患者導入器に加えられる力と反対方向である第1の力に応じて、第1のIDMが患者導入器と位置ずれであることを判定することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、プロセッサが第1および第2の力が反対方向にあることを特定するようにさらに構成されてもよい。プロセッサはまた、第1の力と第2の力との大きさの間の差が閾値差未満であることを特定してもよい。プロセッサは第1および第2の力が反対方向にあると判定し、第1および第2の力の大きさの間の差がしきい値差未満であると判定することに応じて、第1および第2のロボットアームの位置ずれが発生していると判定することができる。第2の医療器具は、第1の医療器具のワーキングチャネル内への第2の医療器具の挿入を通して第1および第2のIDMとそれぞれ接続されるので、反対方向に同様の大きさを有する第1および第2の力は位置ずれを示し得る。
【0114】
ブロック2020において、第1および第2のロボットアームのうちの1つが物体内で衝突したと判定すること(ブロック2010において)、または第1および第2のロボットアームの位置ずれが発生していると判定することに応じて、プロセッサは、衝突または位置ずれの指標を提供する。例えば、プロセッサは衝突または位置ずれの指標を暗号化し、暗号化された指標を、暗号化されたデータをレンダリングするように構成されたディスプレイに提供することができる。いくつかの実装形態では、指標は、現象が衝突であるか位置ずれであるかを特定しなくてもよく、たとえば、指標は単に、衝突/位置ずれエラーが検出されたことをユーザに通知するものでもよい。
【0115】
他の実施形態では、プロセッサが現象の種類を示す情報を指標に暗号化することができる。例えば、指標は、衝突が発生したかどうか、どのアームが衝突に関与しているか、位置ずれが発生しているかどうか、およびどのアームが位置ずれに関与しているかのうちの少なくとも1つを示すことができる。
【0116】
衝突または位置ずれが発生したと判定したことに応じて、プロセッサは、ユーザが操作可能な器具を患者内にさらに前進させることを防止することができる。表示はさらに、操作可能な器具を患者から後退させ、システムを再設定するように、ユーザに指標を提供してもよい。プロセッサはまた、衝突または位置ずれの原因が対処されたことを示す入力をユーザから受信するように構成されてもよい。衝突または位置ずれが解決されたという入力を受信することに応じて、プロセッサは、ユーザが医療手技を継続することを可能にし得る。方法2000はブロック202Sで終了する。
【0117】
(F.衝突および位置ずれに関する方法の別の例)
一実施例では、手術ロボットシステムがロボットアームの衝突を検出するように構成さ
れてもよい。図21は、本件開示の態様による、衝突を検出するための、手術ロボットシステムまたはその構成要素によって動作可能な例示的な方法を示すフローチャートである。例えば、図21に示される方法2100のステップは、手術ロボットシステムのプロセッサによって実行され得る。便宜上、方法2100は、システムのプロセッサによって実行されるものとして説明される。
【0118】
方法2100は、ブロック2101から開始する。ブロック2105において、プロセッサは、トルクセンサの出力に基づいて、ロボットアームのジョイントにおける第1のトルク値を計測する。ロボットアームは、関節によって接続された2つのリンク機構と、2つのリンク機構間のトルクを検出するように構成されたトルクセンサと、ロボットアームの遠位端に接続された器具装置マニピュレータ(IDM)とを含むことができる。ブロック2110において、プロセッサは、ロボットアームの位置に基づいて関節における第2のトルク値を特定する。第2のトルク値は、2つのリンク機構間のトルクの重力成分を示すことができる。
【0119】
ブロック2115において、プロセッサは、第1のトルク値と第2のトルク値との間の差に基づいてIDMにおける力を特定する。ブロック2120では、プロセッサがロボットアームが物体と衝突したかどうかをIDMでの力に基づいて判定する、ある実施形態では、プロセッサがロボットアームが物体と衝突したことの判定に応じて、ロボットアームが物体と衝突したことの指標を提供することができる。この方法はブロック2125で終了する。
【0120】
(3.システムの実装および用語)
本明細書に開示される実施形態は、医療器具の細長いシャフトにおける圧縮を補償するためのシステム、方法、および装置を提供する。圧縮は場合によっては医療器具の較正中に決定された圧縮補償パラメータを使用して決定することができ、医療器具に結合された器具位置決め装置を用いて医療器具を移動させることによって補償することができる。
【0121】
本明細書で使用される用語「結合する」、「結合する」、「結合される」、または単語対の他の変更は間接接続または直接接続のいずれかを示すことができ、例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されるか、または第2の構成要素に直接接続されることができることに留意されたい。
【0122】
本明細書で説明する特徴類似度計算、位置推定、およびロボット動作作動機能は、プロセッサ可読媒体またはコンピュータ可読媒体上に1つまたは複数の命令として格納することができる。用語「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータまたはプロセッサによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体を指す。限定ではなく例として、そのような媒体は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、EEPROM(電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ)、フラッシュメモリ、CD-ROM(コンパクトディスクリードオンリ)または他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージまたは他の磁気ストレージデバイス、あるいは命令またはデータ構造の様式で所望のプログラムコードを格納するために使用され得、コンピュータによってアクセスされ得る任意の他の媒体を備えることができる。コンピュータ可読媒体は、有形かつ非一時的であり得ることに留意されたい。本明細書で使用されるように、用語「コード」は、計算装置またはプロセッサによって実行可能なソフトウェア、命令、コード、またはデータを指すことができる。
【0123】
本明細書で開示される方法は、説明される方法を達成するための1つまたは複数のステップまたはアクションを備える。方法のステップおよび/またはアクションは、代替形態
の範囲から逸脱することなく、互いに交換することができる。言い換えれば、ステップまたはアクションの特定の命令が説明されている方法の適切な動作のために必要とされない限り、特定のステップおよび/またはアクションの命令および/または使用は、代替の範囲から逸脱することなく修正され得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、用語「複数」は2つ以上を意味する。例えば、複数の構成要素は2つ以上の構成要素を示す。用語「特定すること」が多種多様なアクションを包含し、したがって、「特定すること」は計算すること、計算すること、処理すること、導出すること、調査すること、参照すること(例えば、テーブル、データベース、または別のデータ構造を参照すること)、確認することなどを含むことができ、「特定すること」は受信すること(例えば、情報を受信すること)、アクセスすること(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)などを含むことができる。また、「特定すること」は、解決すること、選択すること、選ぶこと、確立することなどを含むことができる。
【0125】
「に基づく」という語句は特に断らない限り、「のみに基づく」という意味ではない。言い換えれば、「に基づく」という語句は、「のみに基づく」および「少なくともに基づく」の両方を表す。
【0126】
開示された実施形態の上記の説明は、当業者が本件開示を実現または使用することを可能にするために提供される。これらの実装に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本件開示の範囲から逸脱することなく、他の実装に適用することができる。例えば、当業者は、工具構成要素を固定、取り付け、結合、または係合する等価な方法、特定の作動運動を生成するための等価な機構、および電気エネルギーを送達するための等価な機構などの、いくつかの対応する代替的および等価な構造的詳細を採用することができることが理解されるのであろう。したがって、本件開示は、本明細書に示される実装に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
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