(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】放射線硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 25/326 20180101AFI20220912BHJP
C03C 25/6226 20180101ALI20220912BHJP
C03C 25/25 20180101ALI20220912BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220912BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20220912BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220912BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220912BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C03C25/326
C03C25/6226
C03C25/25
C08G18/67 010
C08G18/28 090
C08G18/48
C08G18/10
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2020539651
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034254
(87)【国際公開番号】W WO2020045663
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018163751
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592109732
【氏名又は名称】日本特殊コーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宣康
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠一郎
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040216(JP,A)
【文献】特開2012-111674(JP,A)
【文献】特開2004-043626(JP,A)
【文献】特開2014-006344(JP,A)
【文献】特開2018-077303(JP,A)
【文献】特開2017-007896(JP,A)
【文献】特開2015-219271(JP,A)
【文献】特表2013-501125(JP,A)
【文献】特開2010-235812(JP,A)
【文献】特開2010-280558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
C08F 2/00-2/60
C08G 18/00-18/87
G02B 6/44
C08F 290/06
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマー、ラジカル重合性非ウレタンモノマー及び重合開始剤を含有する、光ファイバ第1次被覆層形成用の放射線硬化性樹脂組成物であって、
エチレン性不飽和基を有する前記ウレタンオリゴマーは、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーと、1個の活性水素基を含有するイソシアネート反応性化合物との反応物であり、
前記イソシアネート反応性化合物は、脂肪族アルコール及びエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物を含有しており、該イソシアネート反応性化合物中の該脂肪族アルコールの含有量が24モル%以上であり、
エチレン性不飽和基を有する前記ウレタンオリゴマーは、単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとを含有し、
前記単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族アルコールに由来する構造を有する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび1個の活性水素基を有するアルコキシシランに由来する構造を有する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、
前記二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する前記単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数の比は、3/1以上100/1以下であ
り、
エチレン性不飽和基を有する前記ウレタンオリゴマーの含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、70質量%以上90質量%以下であり、
エチレン性不飽和基を有する前記ウレタンオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、5000以上8000以下であり、
前記ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有し、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、0質量%超1.0質量%以下である、放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する前記単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数の比は、5/1以上75/1以下である、請求項1に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する前記単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数の比は、7/1以上50/1以下である、請求項1又は2に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する前記単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数の比は、10/1以上35/1以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化条件が1J/cm
2のときの、前記放射線硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物の25℃におけるヤング率は、0.1MPa以上0.4MPa以下であり、
前記ヤング率は以下の方法によって測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
前記ヤング率の測定方法:
354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に前記放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、塗布された前記放射線硬化性樹脂組成物を空気中で1J/cm
2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得る。前記試験用フィルムから延伸部が短手方向の長さ6mm、長手方向の長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作製する。温度25℃、湿度50%の条件下で、引張り試験機を用い、JIS K7127に準拠して前記短冊状サンプルに対して引張試験を行う。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバと、ガラスファイバ上に保護補強を目的として設けられた被覆層等から構成される。例えば、光ファイバは、ガラスファイバの表面上にまず柔軟な第一次の被覆層(以下、「第一次被覆層」ともいう。)を設け、当該第一次被覆層上に剛性の高い第二次の被覆層(以下、「第二次被覆層」ともいう。)を設けることにより製造される。被覆層が設けられた複数の光ファイバを結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルもよく知られている。
【0003】
ガラスファイバ上に被覆層を形成する方法としては、例えば、液状硬化性樹脂組成物をガラスファイバに塗布し、熱又は光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。例えば、特許文献1には、第一次被覆層を形成するための樹脂組成物として、特定の製造方法により製造したウレタンオリゴマーと、エチレン性不飽和基を1個有する化合物を組み合わせた放射線硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバ側面に局所的に圧力がかかった場合、圧力がかかった部分のガラスファイバのコアが小さな曲率で曲げを生じる結果、光損失が生じることあった。このような光損失(マイクロベンディング・ロスともいう。)を抑制する観点等から、第一次被覆層は、充分に柔軟であることが望ましい。一方で、第一次被覆層を柔軟にすると、充分な機械強度(破断強度及び破断伸び)が得られない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、第一次被覆層形成用の放射線硬化性樹脂組成物であって、柔軟性に優れると共に、充分な機械強度を有する硬化物を形成可能な放射線硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため種々検討を行った結果、本発明者等は、特定の重合性化合物を組み合わせることにより、柔軟性に優れると共に、充分な機械強度を有する硬化物を形成可能な放射線硬化性樹脂組成物が得られることが見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマー、ラジカル重合性非ウレタンモノマー(free-radically polymerizable non-urethane monomer)及び重合開始剤を含有する、光ファイバ第1次被覆層形成用の放射線硬化性樹脂組成物(radiation-curable resin composition)であって、エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーは、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーと、1個の活性水素基を含有するイソシアネート反応性化合物との反応物であり、イソシアネート反応性化合物は、脂肪族アルコール及びエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物を含有しており、該イソシアネート反応性化合物中の該脂肪族アルコールの含有量が24モル%以上である、放射線硬化性樹脂組成物を提供する。
【0009】
放射線硬化性樹脂組成物において、下記式(1)で定義される硬化速度Sは、15%以上であってよい。
式(1):S(%)=Y20/Y1000×100
[式中、Y1000及びY20は、前記放射線硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物の23℃におけるヤング率であり、Y1000及びY20の硬化条件は、それぞれ1J/cm2及び20mJ/cm2である。]
【0010】
放射線硬化性樹脂組成物において、硬化条件が1J/cm2のときの、放射線硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物の25℃におけるヤング率は、0.8MPa以下であってよい。
【0011】
ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、ビニルエステル化合物及びビニルアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のビニル基含有化合物を含有していてよい。
【0012】
ビニルアミド化合物は、N-ビニルカプロラクタムを含有していてよい。
【0013】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマー及び/又はラジカル重合性非ウレタンモノマーの少なくとも一部は、(メタ)アクリロイル基含有化合物であってよい。この場合、ビニル基含有化合物のモル数に対する(メタ)アクリロイル基含有化合物のモル数の比は、1/1以上10/1以下であってよい。
【0014】
エチレン性不飽和基を有する前記ウレタンオリゴマー及びラジカル重合性非ウレタンモノマーは、エチレン性不飽和基を有していてよい。この場合、エチレン性不飽和基を2個以上有する多官能化合物のモル数に対する、エチレン性不飽和基を1個有する単官能化合物のモル数の比は、2/1以上100/1以下であってよい。
【0015】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマー又はラジカル重合性非ウレタンモノマーは、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを含有し、多官能(メタ)アクリレートのモル数に対する、単官能(メタ)アクリレートのモル数の比は、1/1以上75/1以下であってよい。
【0016】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーの数平均分子量は、2000以上であってよい。
【0017】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーは、単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとを含有していてよい。
【0018】
二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数の比は、3/1以上100/1以下であってよい。
【0019】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーは、一端に(メタ)アクリロイル基を1個、他端にアルコキシシリル基を1個有する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーを含有していてよい。
【0020】
アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマー以外の単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル数の比は、0.01/1以上0.7/1以下であってよい。
【0021】
エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーは、二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有していてよい。この場合、二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル数の比は、0.2/1以上20/1以下であってよい。
【0022】
ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、ラジカル重合性アルコキシシランを含有していてよい。
【0023】
ラジカル重合性アルコキシシランは、(メタ)アクリロイル基を有していてよい。
【0024】
ラジカル重合性アルコキシシランに対するアルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル比は、0.1/1以上10/1以下であってよい。
【0025】
放射性硬化性樹脂組成物は、非ラジカル重合性アルコキシシランを更に含有していてよい。
【0026】
非ラジカル重合性アルコキシシランのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル数の比は、0.01/1以上4/1であってよい。
【0027】
非ラジカル重合性アルコキシシランのモル数に対する、ラジカル重合性アルコキシシランのモル数の比は、0.01/1以上3/1以下であってよい。
【0028】
非ラジカル重合性アルコキシシランのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマー及びラジカル重合性アルコキシシランの合計モル数の比は、0.05/1以上4/1であってよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第一次被覆層形成用の放射線硬化性樹脂組成物であって、柔軟性に優れると共に、充分な機械強度を有する硬化物を形成可能な放射線硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
実施形態の放射線硬化性樹脂組成物は、エチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマー(以下単に「ウレタンオリゴマー」ともいう。)、ラジカル重合性非ウレタンモノマー及び重合開始剤を含有する、光ファイバ第1次被覆層形成用の放射線硬化性樹脂組成物である。光ファイバ第1次被覆層形成用は、プライマリ材用ということもできる。
【0032】
ここで、放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等であり、特に紫外線が好ましい。
【0033】
ウレタンオリゴマーは、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーと、1個の活性水素基を含有するイソシアネート反応性化合物との反応物である。すなわち、ウレタンオリゴマーは、ポリエーテル系ウレタンプレポリマー、及び1個の活性水素基を含有するイソシアネート反応性化合物に由来する構成成分を含有する。
【0034】
ポリエーテル系ウレタンプレポリマーは、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応物であり、分子末端にイソシアネート基を有している。ポリエーテル系ウレタンプレポリマーは、脂肪族ポリエーテルジオールとジイソシアネートとの反応物であってよい。
【0035】
脂肪族ポリエーテルジオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール及び二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルジオール等が好ましい。
【0036】
上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。
【0037】
二種以上の上記イオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールの具体例としては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン-1-オキシドとエチレンオキシド等の組み合わせより得られる二元共重合体;テトラヒドロフラン、ブテン-1-オキシド及びエチレンオキシドの組み合わせより得られる三元重合体等を挙げることができる。
【0038】
また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類;β-プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸;あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
【0039】
上記脂肪族ポリエーテルジオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学社製)、PPG400、PPG1000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭オーリン社製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂社製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学工業社製)、Z-3001-4、Z-3001-5、PBG2000A、PBG2000B、EO/BO4000、EO/BO2000(以上、第一工業製薬社製)、Acclaim 2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12000(以上、住友バイエルウレタン社製)等の市販品としても入手することができる。
【0040】
これらの脂肪族ポリエーテルジオールのうち、1種又は2種以上の炭素数2~4のイオン重合性環状化合物の開環重合体であって、数平均分子量1000~5000のジオールを用いるのが、樹脂液の高速塗布性と被覆材の柔軟性の両立の点から好ましい。このような好ましい脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド及びイソブテンオキシドから選ばれる1種又は2種以上のオキシドの開環重合体であって、数平均分子量1000~4000のものが挙げられる。脂肪族ポリエーテルジオールは、特に数平均分子量1000~3000のプロピレンオキシドの開環重合体が好ましい。
【0041】
ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとして、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとして、例えば、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
経済性及び安定した品質の組成物が得られる点から、ジイソシアネートは、好ましくは芳香族ジイソシアネートであり、より好ましくは2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネートである。ジイソシアネートは単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0043】
イソシアネート反応性化合物は、1個の活性水素基を含有するものであり、活性水素基としては、例えば、メルカプト基(-SH)、ヒドロキシ基(-OH)、アミノ基(-NH2)等が挙げられる。
【0044】
イソシアネート反応性化合物は、脂肪族アルコール及びエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物を含有する。脂肪族アルコール及びエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物は、1個の活性水素基を有する化合物である。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」又はそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」等の類似の表現についても同様である。
【0045】
エチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物におけるエチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。エチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物における活性水素基は、ヒドロキシ基であることが好ましい。すなわち、エチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物は、(メタ)アクリロイル基及び活性水素基を有する化合物(活性水素基含有(メタ)アクリレート)であってよく、(メタ)アクリロイル基及びヒドロキシ基を有する化合物(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート)であってよい。
【0046】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシ基が第一級炭素原子に結合したヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(第一ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートともいう。)、及びヒドロキシ基が第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(第二ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートともいう。)、及びヒドロキシ基が第三級炭素原子に結合したヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(第三ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートともいう。)が挙げられる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、イソシアネート基との反応性の観点から、第一ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート又は第二ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートであってよい。
【0047】
第一ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
第二ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げられる。
【0049】
イソシアネート反応性化合物中のエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物の含有量は、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、40モル%以上、45モル%以上又は50モル%以上であってよく、60モル%以下又は55モル%以下であってもよい。
【0050】
イソシアネート反応性化合物は、活性水素基としてヒドロキシ基を有する脂肪族アルコールを含有する。脂肪族アルコールの炭素数は、1~15、5~12、又は6~10であってよい。脂肪族アルコールにおける炭素鎖は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられる。本発明の効果がより顕著に奏される観点から、脂肪族アルコールは、メタノール又は2-エチル-1-ヘキサノールであってよい。
【0051】
イソシアネート反応性化合物中の脂肪族アルコールの含有量は、24モル%以上である。イソシアネート反応性化合物中の脂肪族アルコールの含有量は、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、30モル%以上、35モル%以上又は40モル%以上であってよく、60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下又は45モル%以下であってもよい。
【0052】
イソシアネート反応性化合物は、1個の活性水素基を有するアルコキシシランを更に含有していてよい。1個の活性水素基を有するアルコキシシランとしては、例えば、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシリル基含有化合物は、活性水素基としてメルカプト基を有するアルコキシシランである、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランであってよい。
【0053】
イソシアネート反応性化合物中の1個の活性水素基を有するアルコキシシランの含有量は、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、2モル%以上又は3モル%以上であってよく、10モル%以下、8モル%以下、7モル%以下、6モル%以下又は5モル%以下であってもよい。
【0054】
ポリエーテル系ウレタンプレポリマーとして脂肪族ポリエーテルジオールとジイソシアネートとの反応物を含有するウレタンオリゴマーは、下記式(a1)~(a2)で表される構造を有するオリゴマー(以下これらのオリゴマーをそれぞれ「オリゴマーa1」及び「オリゴマーa2」ともいう。)を含有していてよい。
A-(ICN-POL)n-ICN-A (a1)
A-(ICN-POL)n-ICN-R1 (a2)
これら式中、ICNは、それぞれ独立にジイソシアネートに由来する構造を表し、POLは、それぞれ独立に脂肪族ポリエーテルジオールに由来する構造を表し、nは、それぞれ独立に、1.0以上の数を表し、Aは、それぞれ独立にエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物に由来する構造を表し、R1は、脂肪族アルコールに由来する構造を表す。
【0055】
nは、1.0以上であり、1.0超、1.1以上、1.3以上若しくは1.5以上、又は3.0以下、2.5以下又は2.0以下であってよい。nは、例えば、1.1~3.0、1.3~2.5、1.5~2.0であってよい。
【0056】
ポリエーテル系ウレタンプレポリマーとして、脂肪族ポリエーテルジオールとジイソシアネートとの反応物を含有し、かつ、イソシアネート反応性化合物として、1個の活性水素基を有するアルコキシシランを含有する、ウレタンオリゴマーは、オリゴマーa1~a2に加えて、下記式(a3)で表される構造を有するオリゴマー(以下「オリゴマーa3」ともいう。)を更に含有していてよい。
A-(ICN-POL)n-ICN-R2 (a3)
式中、R2は、1個の活性水素基を有するアルコキシシランに由来する構造を表し、ICN、POL、n及びAは、上記と同意義である。
【0057】
上述のウレタンオリゴマーは、オリゴマーa1~a3の他に、下記式(a4)で表される構造を有するオリゴマー(オリゴマーa4)を更に含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
R1-(ICN-POL)n-ICN-R1 (a4)
式中、ICN、POL、n、A及びR1は、上記と同意義である。
【0058】
ウレタンオリゴマーは、エチレン性不飽和基として、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有していてよい。ウレタンオリゴマーは、エチレン性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(オリゴマーa2及びa3に該当する。)と、エチレン性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を2個有する二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(オリゴマーa1に該当する。)とを含有していてよい。
【0059】
二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数の比は、3/1以上100/1以下、5/1以上75/1以下、7/1以上50/1以下、又は10/1以上35/1以下であってよい。
【0060】
ウレタンオリゴマーは、単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、一端に(メタ)アクリロイル基を1個、他端にアルコキシシリル基を1個有するアルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマー(オリゴマーa3に該当する。)を含有していてよい。
【0061】
アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマー以外の単官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル数の比は、0.01/1以上0.7/1以下、0.02/1以上0.5/1以下、0.03/1以上0.25/1以下、又は0.05/1以上0.15/1以下であってよい。
【0062】
二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル数の比は、0.2/1以上20/1以下、0.5/1以上10/1以下、又は1/1以上5/1以下であってよい。
【0063】
ウレタンオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、2000以上、3000以上、4000以上又は5000以上であってよく、2000以上10000以下、3000以上9000以下又は5000以上8000以下であってよい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線に基づき換算した値である。
【0064】
ウレタンオリゴマーの含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、硬化物の柔軟性及び機械強度をより向上させることが可能となる観点から、30質量%以上、35質量%以上、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上であってよく、適度な粘度を有する放射線硬化性樹脂組成物が得られやすい観点から、90質量%以下、85質量%以下又は83質量%以下であってよい。
【0065】
ウレタンオリゴマーは、例えば、ポリエーテル系ウレタンプレポリマー、脂肪族アルコール及びエチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物を反応させることにより製造することができる。例えば、ポリエーテル系ウレタンプレポリマーと、エチレン性不飽和基含有イソシアネート反応性化合物と、必要に応じて1個の活性水素基を有するアルコキシシランとを反応させた後、脂肪族アルコールをイソシアネート反応性化合物中の脂肪族アルコールの含有量が24モル%以上となるように添加して反応させることにより上記ウレタンオリゴマーを製造することができる。
【0066】
ウレタンオリゴマーの製造では、必要に応じ、ウレタン化触媒を使用してもよい。ウレタン化触媒としては、例えば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7-トリメチル-1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等が挙げられる。ウレタン化触媒の使用量は、反応物の総量に対して0.01~1質量%であってよい。また、反応温度は、通常5~90℃、特に10~80℃で行うのが好ましい。
【0067】
放射性硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性非ウレタンモノマーを更に含有する。ラジカル重合性非ウレタンモノマーとしては、エチレン性不飽和基を含有するモノマーを使用することができる。エチレン性不飽和基は、上記例示した基であってよい。ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、ビニル基含有化合物(ビニルモノマーということもできる。但し、後述の(メタ)アクリレートモノマーに該当するモノマーは除く。)を含有していてよく、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有していてよい。ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、ビニル基含有化合物及び(メタ)アクリレートモノマーを含有していてよい。
【0069】
ビニル基含有化合物は、ビニルエステル化合物及びビニルアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。つまり、ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、ビニルエステル化合物及びビニルアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のビニル基含有化合物を含んでいてよい。ビニル基含有化合物中のビニル基の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。
【0070】
ビニル基含有化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニルアミド化合物(ビニル基含有ラクタム)、ビニルイミダゾール、ビニルピリジンが挙げられる。硬化速度がより向上する観点から、ビニル基含有化合物は、ビニルアミド化合物であってよい。同様の観点から、ビニルアミド化合物は、N-ビニルカプロラクタムであってよい。
【0071】
放射性硬化性樹脂組成物中のビニル基含有化合物の含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、3~20質量%、又は5~12質量%であってよい。
【0072】
ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、(メタ)アクリレートモノマーとして、(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有していてよい。
【0073】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。さらに、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、上述のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを用いてもよい。
【0074】
放射線硬化性樹脂組成物中の単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、3~30質量%、又は8~15質量%であってよい。
【0075】
ラジカル重合性非ウレタンモノマーは、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有していてもよい。この場合、硬化物中の架橋密度がより高くなるため、硬化物の機械強度をより一層向上させることができる。
【0076】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。また、市販品としては、例えばユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学社製);ビスコート700(大阪有機化学工業社製);KAYARAD R-604、DPCA-20、-30、-60、-120、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬社製);アロニックスM-210、M-215、M-315、M-325(以上、東亞合成社製)等が挙げられる。
【0077】
放射線硬化性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、2質量%以下、1.5質量%以下又は1.0質量%以下であってよく、0質量%超であってよい。
【0078】
放射線硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性非ウレタンモノマーとして、ラジカル重合性アルコキシシランを含有していてよい。ラジカル重合性アルコキシシランは、エチレン性不飽和基を有するアルコキシシランであってよく、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランであってよい。ラジカル重合性アルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
放射線硬化性樹脂組成物中のラジカル重合性アルコキシシランの含有量は、例えば、0質量%超0.5質量%以下、又は0.10質量%以上0.30質量%以下であってよい。
【0080】
ラジカル重合性アルコキシシランに対するアルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル比は、0.1/1以上10/1以下、0.5/1以上7/1以下、又は0.7/1以上5/1以下であってよい。
【0081】
放射線硬化性樹脂組成物は、非ラジカル重合性アルコキシシラン(上述のラジカル重合性アルコキシシランに該当しないアルコキシシラン)を更に含有していてよい。アルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
被覆とガラスとの密着力の維持の点から、放射線硬化性樹脂組成物中のアルコキシシランの含有量は、0.01~2質量%、0.1~1.5質量%、又は0.5~1.5質量%であってよい。放射線硬化性樹脂組成物中のアルコキシシラン及び上述のラジカル重合性アルコキシシランの合計含有量が当該範囲内であってよい。
【0083】
非ラジカル重合性アルコキシシランのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマー及びラジカル重合性アルコキシシランの合計モル数の比は、0.05/1以上4/1以下、0.1/1以上3/1以下、0.2/1以上2/1以下、又は0.3/1以上1.5/1以下であってよい。
【0084】
非ラジカル重合性アルコキシシランのモル数に対する、アルコキシシリル基含有ウレタンオリゴマーのモル数の比は、0.01/1以上4/1、0.05/1以上3/1以下、0.1/1以上2/1以下、又は0.1/1以上1.5/1以下であってよい。
【0085】
非ラジカル重合性アルコキシシランのモル数に対する、ラジカル重合性アルコキシシランのモル数の比は、0.01/1以上3/1以下、0.05/1以上2/1以下、0.1/1以上1.5/1以下、又は0.15/1以上1/1以下であってよい。
【0086】
放射線硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、光重合開始剤として使用される通常の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24-61、DAROCUR1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製);LUCIRIN TPO(BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0087】
放射線硬化性樹脂組成物中の重合開始剤の含有量は、放射線硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、0.1~10質量%であってよく、0.3~7質量%であってよい。
【0088】
放射線硬化性樹脂組成物は、上述の成分以外の添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、例えば、Irganox 245等が挙げられる。
【0089】
ウレタンオリゴマー及び/又はラジカル重合性非ウレタンモノマーが、(メタ)アクリロイル基含有化合物(例えば、上述のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマー)を含有し、ラジカル重合性非ウレタンモノマーがビニル基含有化合物(ビニルモノマー)を含有する放射線硬化性樹脂組成物において、ビニル基含有化合物のモル数に対する、(メタ)アクリロイル基含有化合物のモル数の比は、1/1以上10/1以下、1/1以上5/1以下、1/1以上3/1以下、1/1以上2/1以下、又は1/1以上1.5/1以下であってよい。
【0090】
ウレタンオリゴマー及びラジカル重合性非ウレタンモノマーが、エチレン性不飽和基を備えている放射線硬化性樹脂組成物において、エチレン性不飽和基を2個以上有する多官能化合物のモル数に対する、エチレン性不飽和基を1個有する単官能化合物のモル数の比は、2/1以上100/1以下、5/1以上75/1以下、10/1以上50/1以下又は15/1以上30/1以下であってよい。
【0091】
ウレタンオリゴマー又はラジカル重合性非ウレタンモノマーが、単官能(メタ)アクリレート(1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物)及び多官能(メタ)アクリレート(2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物)を含有する放射線硬化性樹脂組成物において、放射線硬化性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートのモル数に対する、放射線硬化性樹脂組成物中の単官能(メタ)アクリレートのモル数の比は、1/1以上75/1以下、2/1以上50/1以下又は5/1以上25/1以下であってよい。
【0092】
放射線硬化性樹脂組成物は、液状であってよい。すなわち、放射線硬化性樹脂組成物は、液状放射線硬化性樹脂組成物であってよい。
【0093】
放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他のオリゴマー、ポリマー、その他の添加剤等を配合することができる。
【0094】
放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、ハンドリング性及び塗布性等の観点から25℃において、0.1~10Pa・s又は1~8Pa・sであってよい。放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0095】
硬化条件が1J/cm2のときの、放射線硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物の25℃におけるヤング率は、0.8MPa以下であってよい。当該ヤング率は、0.5MPa以下又は0.4MPa以下であってよく、0.1MPa以上0.8MPa以下、0.1MPa以上0.5MPa以下、又は0.1MPa以上0.4MPa以下であってよい。当該ヤング率の具体的な測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0096】
実施形態の放射線硬化性樹脂組成物において、下記式(1)で定義される硬化速度Sは、15%以上であってよい。
式(1):S(%)=Y20/Y1000×100
[式中、Y1000及びY20は、前記放射線硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物の23℃におけるヤング率であり、Y1000及びY20の硬化条件は、それぞれ1J/cm2及び20mJ/cm2である。]
【0097】
硬化速度Sは、50%以上、70%以上、80%以上又は81%以上であってよい。硬化速度Sの具体的な測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0098】
実施形態の放射線硬化性樹脂組成物の硬化物は、柔軟性に優れると共に、機械強度においても優れている。放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の破断強度は、0.5MPa以上、0.6MPa以上又は0.7MPa以上であってよく、10MPa以下又は5MPa以下であってよい。放射線硬化性樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、130~250%であってよく、180~240%であってよい。硬化物の破断強度及び破断伸びはいずれも後述する実施例に記載の条件で測定される。
【実施例】
【0099】
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0100】
実施例1:放射線硬化性樹脂組成物の製造
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコール70.00g、2-4-トリレンジイソシアネート6.00g、2,6-ジーt-ブチル―p-クレゾール0.019gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が25℃になるまで加温した。ジブチル錫ジラウレート0.032gを添加した後、撹拌しながら液温度を30分かけて60℃まで徐々に上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.18質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.19g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.34g、ジブチル錫ジラウレート0.032gを添加し、液温度60℃にて90分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.37質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、2-エチルヘキサノール1.27gを添加して60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.05質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンオリゴマーは、下記式(I)~(III)で表されるウレタンオリゴマーを主成分とする混合物である。
HEA-TDI-(PPG3000-TDI)2.1-HEA (I)
HEA-TDI-(PPG3000-TDI)2.1-EH (II)
HEA-TDI-(PPG3000-TDI)2.1-Sil (III)
[式中、PPG3000は、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコールに由来する構造単位であり、TDIは、2,4-トリレンジイソシアネートに由来する構造単位であり、HEAは、2-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造単位であり、Silは、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランに由来する構造単位であり、EHは、2-エチル-1-ヘキサノールに由来する構造単位である。結合手「-」は、全てウレタン結合である。]
【0101】
イソシアネート反応性化合物(γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び2-エチルヘキサノール)中の脂肪族アルコール(2-エチルヘキサノール)の含有量は、24モル%以上であった。
【0102】
得られたウレタンオリゴマーを用いて表1に示す組成の実施例1の液状硬化性樹脂組成物を製造し、下記の方法に従い、物性値を評価した。
【0103】
実施例2:放射線硬化性樹脂組成物の製造
2-エチルヘキサノールに代えて、メタノールを使用し、かつ、表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の液状硬化性樹脂組成物を製造した。実施例2の放射線硬化性樹脂組成物におけるウレタンオリゴマーは、式(I)及び(III)並びに下記式(IV)で表されるウレタンオリゴマーを主成分とする混合物である。
HEA-TDI-(PPG3000-TDI)2.1-Me (IV)
[式中、PPG3000、TDI及びHEAは上記と同意義であり、Meは、メタノールに由来する構造単位である。]
【0104】
[評価方法]
(1)粘度:
実施例及び比較例で得られた組成物の25℃における粘度を、粘度計B8H-BII(トキメック社製)で測定した。
【0105】
(2)ヤング率:
実施例及び比較例で得られた組成物の硬化後のヤング率を測定した。354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。この硬化フィルムから延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成した。温度25℃、湿度50%の条件下で引張り試験機AGS-1KND(株式会社島津製作所製)を用い、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0106】
(3)硬化速度:
実施例及び比較例で得られた組成物の硬化速度を測定した。354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で20mJ/cm2及び1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルム二種類を得た。この硬化フィルム二種類から、それぞれ延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%にて、引張り試験機AGS-1KND(島津製作所社製)を用い、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。20mJ/cm2で硬化させた試験用フィルムのヤング率と1J/cm2で硬化させた試験用フィルムのヤング率の比を下記式(1)より算出して、組成物の硬化速度Sを評価した。
【0107】
式(1):S(%)=Y20/Y1000×100
[式中、Y1000及びY20は、放射線硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物の23℃におけるヤング率であり、Y1000及びY20の硬化条件は、それぞれ1J/cm2及び20mJ/cm2である。]
【0108】
(4)破断強度及び破断伸び:
354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これに空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。引張試験器(島津製作所社製、AGS-50G)を用い、試験片の破断強度及び破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%
【0109】
(5)ガラス密着力:
実施例で得られた放射線硬化性樹脂組成物のガラス密着力を測定した。354ミクロン厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射し硬化させ試験用フィルムを得た。この硬化フィルムから延伸部が幅10mm、長さ50mmとなるように短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%下で7日間静置後に、同温度・湿度条件下で引っ張り試験機AGS-1KND(島津製作所株式会社製)を用いてガラス密着力試験を行った。引張速度は50mm/minで30秒後の抗張力からガラス密着力を求めた。
【0110】
(6)ゲル分率:
354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これに空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。硬化後、シートを温度23℃,湿度50%の恒温恒湿器内で24時間静置した。その後硬化物1.5gを切り取り円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて温度80℃でMEK(メチルエチルケトン)により12時間抽出した。抽出後、試料をろ紙ごと取り出し温度60℃・圧力1.34kPa以下で6時間真空乾燥を行った。試料をろ紙から取り出し重量を測定した。次式によりゲル分率を算出した。
【0111】
ゲル分率(%)=W1/W0×100
[上記式中、W0は、抽出前の試料の重量であり、W1は、抽出後の試料の重量である。]
【0112】
表1に、実施例1~2の放射線硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)を示した(硬化条件1.0J/cm2,200μm厚)。
【0113】