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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】皮膚化粧料用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220912BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220912BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/34
A61K8/02
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020547908
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004909
(87)【国際公開番号】W WO2020059167
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018176765
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】山科 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小川 綾乃
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338428(JP,A)
【文献】特開2005-239633(JP,A)
【文献】特開2016-000703(JP,A)
【文献】特開平10-158138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(D)を含有し、前記成分(A)の含有割合が2.013.0質量%、前記成分(B)の含有割合が2.013.0質量%、前記成分(C)の含有割合が20.0~70.0質量%、前記成分(D)の含有割合が10.0~75.0質量%であり、下記油性成分の含有割合が1.0質量%以下である、皮膚化粧料用組成物。
成分(A):タルク及び/又はシリカ
成分(B):オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム
成分(C):エタノール
成分(D):水
油性成分:炭化水素油、エステル油、シリコーン油、油脂、及び炭素数12~22の脂肪族アルコールからなる群より選択される1以上
【請求項2】
シート基材と、前記シート基材に含浸された請求項1に記載の皮膚化粧料用組成物とを含むシート化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シート化粧料は、シート基材に化粧料組成物を含浸させて形成される。シート化粧料としては、汗、皮脂汚れや古い角質などの汚れを拭き取って肌を清潔に保つことを主目的とするフェイス用やボディ用のシート化粧料、メイク落としを主目的とするクレンジングシートなどのシート化粧料が知られている。
【0003】
従来、シート基材に含浸する化粧料組成物に粉体を配合し、使用後の肌に、肌を擦る際に肌の摩擦が低い感触(サラサラ感)を付与する技術が知られている。例えば、引用文献1及び2などには、粉体の配合による白残りを改善し、肌にサラサラ感を付与するシート化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-201109号公報
【文献】特開2000-1424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシート化粧料では、使用後においてサラサラ感を付与すると同時に、肌が乾燥したような感触となるという問題があった。多価アルコールなどの保湿剤をシート化粧料に配合することで乾燥した感触(乾燥感)を抑えることが可能であるが、粉体によるサラサラ感が損なわれてしまう。このため、乾燥した感触がなくサラサラ感を付与できるシート化粧料を得ることは困難であった。
【0006】
従って、本発明の目的は、使用後の肌に、乾燥した感触が抑制されつつサラサラ感を付与することができる皮膚化粧料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A):タルク及び/又はシリカ、成分(B):オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、成分(C):エタノール、並びに成分(D):水を含有し、成分(A)の含有割合が0.5~15.0質量%、成分(B)の含有割合が0.5~15.0質量%、成分(C)の含有割合が20.0~70.0質量%、成分(D)の含有割合が10.0~75.0質量%である皮膚化粧料用組成物を用いることにより、使用後の肌に、乾燥した感触が抑制されつつサラサラ感を付与することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(D)を含有し、上記成分(A)の含有割合が0.5~15.0質量%、上記成分(B)の含有割合が0.5~15.0質量%、上記成分(C)の含有割合が20.0~70.0質量%、上記成分(D)の含有割合が10.0~75.0質量%である、皮膚化粧料用組成物を提供する。
成分(A):タルク及び/又はシリカ
成分(B):オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム
成分(C):エタノール
成分(D):水
【0009】
上記皮膚化粧料用組成物は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、油脂、及び炭素数12~22の脂肪族アルコールからなる群より選択される1以上の油性成分の含有割合が1.0質量%以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、シート基材と、上記シート基材に含浸された上記皮膚化粧料用組成物とを含むシート化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚化粧料用組成物によれば、サラサラ感を付与する。それでいて、使用後の肌に皮膜が形成されたような感触(皮膜感)を付与することができ、これにより乾燥した感触(乾燥感)を抑制することができ、肌にしっとりした感触を付与することができる。また、使用後の肌の白浮きを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[皮膚化粧料用組成物]
本発明の皮膚化粧料用組成物は、タルク及び/又はシリカ、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、エタノール、並びに水を少なくとも含む。なお、本明細書において、タルク及び/又はシリカを「成分(A)」、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムを「成分(B)」、エタノールを「成分(C)」、水を「成分(D)」とそれぞれ称する場合がある。
【0013】
すなわち、本発明の皮膚化粧料用組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を少なくとも含む。本発明の皮膚化粧料用組成物は、上記成分(A)~(D)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の皮膚化粧料用組成物に含まれる各成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び他の成分などの各成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0014】
[成分(A)]
成分(A)は、タルク及び/又はシリカである。すなわち、成分(A)は、タルク及びシリカの一方又は両方である。成分(A)を用いることにより、粒子が肌上(特に皮丘)に広がり摩擦を低減するためと考えられるが、皮膚化粧料用組成物使用後の肌にサラサラ感を付与することができる。成分(A)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0015】
上記タルクとしては、特に限定されず、化粧料用組成物に一般的に用いられているタルクを使用することができる。
【0016】
上記タルクの吸油量は、特に限定されないが、18~50ml/100gが好ましい。また、上記タルクの平均粒径D50は、特に限定されないが、0.5~25.0μmが好ましい。
【0017】
上記シリカとしては、特に限定されず、化粧料用組成物に一般的に用いられているシリカ(無水ケイ酸)を使用することができる。上記シリカは、疎水化処理されていない無水ケイ酸(親水性のシリカ)であってもよいし、疎水化無水ケイ酸であってもよい。また、上記シリカは、アミノ酸、エステル、又はレシチンなどで表面処理されたシリカであってもよい。上記シリカは、肌への摩擦抵抗の低減に優れる観点から、球状シリカが好ましく、真球状シリカがさらに好ましい。
【0018】
上記シリカの吸油量は、特に限定されないが、20~300ml/100gが好ましく、より好ましくは20~120ml/100gである。また、上記シリカの平均粒径D50は、特に限定されないが、1~15μmが好ましい。
【0019】
なお、本明細書において、成分(A)の吸油量はJIS K5101に記載の測定方法に準拠して測定される値である。また、本明細書において、成分(A)の平均粒径D50はレーザー回折法により測定される値である。
【0020】
成分(A)は市販品を用いることもできる。タルクの市販品としては、商品名「タルクMS」(日本タルク株式会社製)などが挙げられる。シリカの市販品としては、例えば、商品名「SILICA PEARL P-4M」、商品名「SILICA PEARL 20CG」、商品名「HCS 160M5」、商品名「SILICA MICRO BEAD BA-1」(以上、日揮触媒化成株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の成分(A)の含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物100質量%に対して、0.5~15.0質量%であり、好ましくは0.7~14.0質量%、より好ましくは2.0~13.0質量%である。上記含有割合が0.5質量%以上であることにより、肌への摩擦抵抗を低減して、使用後の肌にサラサラ感を付与することができる。上記含有量が15.0質量%以下であることにより、白浮きを抑制することができる。上記成分(A)の含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物中の全ての成分(A)の含有割合の合計である。
【0022】
[成分(B)]
成分(B)は、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムである。上記オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムは、オクテニルコハク酸デンプンAl又はオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムと表記される場合がある。成分(B)を用いることにより、使用後の肌において、成分(A)によるサラサラ感を維持しつつ、皮膜感を付与し、これにより乾燥感を抑制することができる。成分(B)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0023】
本発明の皮膚化粧料用組成物において、成分(B)は粉体として配合される。オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムは、親水化・ゲル化(所謂、α化や糊化)させるように比較的高温に加温することで、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムに由来する増粘剤として、粉体状ではなくなった状態で使用されることがある。しかしながら、本発明の皮膚化粧料用組成物では、成分(B)は例えば50℃以下の比較的低温で配合されることで、粉体の状態で含まれる。粉体として成分(B)を配合することで、使用後の肌において、皮膜感を保持しつつ乾燥感を抑制するという効果を発揮することができる。
【0024】
成分(B)は市販品を用いることもできる。成分(B)の市販品としては、例えば、商品名「DRY-FLO PURE」(Akzo Nobel Chemicals社製)、商品名「オクティエ」(日澱化学株式会社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の成分(B)の含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物100質量%に対して、0.5~15.0質量%であり、好ましくは1.0~14.0質量%、より好ましくは2.0~13.0質量%である。上記含有割合が0.5質量%以上であることにより、肌に均一に塗布することが可能となり、成分(A)によるサラサラ感を維持しつつ、皮膜感を付与し、これにより乾燥感を抑制することができる。上記含有量が15.0質量%以下であることにより、白浮きを抑制することができる。上記成分(B)の含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物中の全ての成分(B)の含有割合の合計である。
【0026】
[成分(C)]
成分(C)はエタノールである。成分(C)を用いることにより、皮膚化粧料用組成物中において疎水性である成分(B)を分散させることができる。また、速乾性やさっぱりとした使用感を付与できる。
【0027】
本発明の皮膚化粧料用組成物中の成分(C)の含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物100質量%に対して、20.0~70.0質量%であり、好ましくは22.0~65.0質量%、より好ましくは25.0~60.0質量%である。上記含有割合が20.0質量%未満であると、成分(A)が皮膚化粧料用組成物中で均一分散できなくなる。上記含有量が70.0質量%を超えると、乾燥感が生じやすくなる。
【0028】
[成分(D):水]
成分(D)は水であり、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の皮膚化粧料用組成物中の成分(D)の含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物100質量%に対して、10.0~75.0質量%であり、好ましくは30.0~70.0質量%である。
【0029】
[その他の成分]
本発明の皮膚化粧料用組成物は、上記成分(A)~(D)以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、成分(C)以外の低級アルコール;ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;多価アルコール;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;金属イオン封鎖剤;成分(A)以外の粉体;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;中和剤;殺菌剤;制汗剤;消臭剤;酸;アルカリなどが挙げられる。
【0030】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、油脂、及び炭素数12~22の脂肪族アルコールからなる群より選択される1以上の油性成分を含まないか、又は上記油性成分の含有割合が1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。上記油性成分の含有割合が1.0質量%以下であると、油性成分に由来するぬるつきを抑制することができる。
【0031】
上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。
【0032】
上記エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル、安息香酸アルキル(C12-15)などが挙げられる。
【0033】
上記シリコーン油としては、特に限定されないが、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0034】
上記油脂としては、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボガド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、カカオバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油、ハッカ油、アルガンオイル、カロットオイル、ラベンダー油、シュガースクワラン、ダマスクバラ花ロウ、センチフォリアバラ花ロウ、ソケイ花ワックス、椿油、綿実油、コーン油、菜種油、米ぬか油、カポック油、乳脂、ラード、魚油、鯨油、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボカド油、水素添加大豆油等)などが挙げられる。
【0035】
上記炭素数12~22の脂肪族アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0036】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、保湿感を付与するなどの観点で、多価アルコールを含んでいてもよい。上記多価アルコールは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0037】
上記多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール、トレハロースなどが挙げられる。
【0038】
上記多価アルコールの含有割合は、本発明の皮膚化粧料用組成物100質量%に対して、保湿感を付与する観点から、0.5~2.0質量%が好ましい。ただし、サラサラ感を付与する効果を特に優れたものとする観点からは、本発明の皮膚化粧料用組成物は、多価アルコールを含まないか、又は多価アルコールの含有割合が1.0質量%以下であることが好ましい。
【0039】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて撹拌する方法などで、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0040】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、水[成分(D)]中にタルク及び/又はシリカ[成分(A)]を配合することにより、使用後の肌にサラサラ感を与える。また、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム[成分(B)]を特定の割合で併用することにより、皮膜感を付与し、乾燥感を抑制することができる。これにより、使用後の肌の、サラサラ感と、乾燥感の抑制によるしっとり感とが両立することができる。この効果のメカニズムは以下のように推測される。成分(A)は皮膚上の凹凸部の凸部(皮丘)に広がり摩擦を低減するためと考えられるが、皮膚化粧料用組成物使用後の肌にサラサラ感を付与することができる。しかしながら、成分(A)は、皮膚上の凹凸の凹部(皮溝)に入りにくい。このため、成分(A)のみでは、使用後の肌に皮膜感を付与することはできない。一方、粉体の成分(B)は疎水性が高いため肌への親和性が高いこと、また形状などの表面性能に基づき、皮膚上の凹凸の凹部(皮溝)に入りやすい。これにより、成分(A)と成分(B)を併用することによって、粉体が肌全体を覆うことが可能となり、優れた皮膜感を付与することができる。また、使用後の肌において白浮きも抑制される。なお、エタノール[成分(C)]を特定の割合で配合することにより、疎水性が高く粉体として通常水媒体に配合されることがない成分(B)が成分(D)中で分散することが可能となる。また、速乾性を付与することができる。
【0041】
本発明の皮膚化粧料用組成物は、皮膚(肌)に塗布するために用いられる化粧料用組成物である。本発明の皮膚化粧料用組成物を塗布する部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元など)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などが挙げられる。
【0042】
[シート化粧料]
本発明の皮膚化粧料用組成物をシート基材に含浸することによりシート化粧料が得られる。すなわち、上記シート化粧料は、シート基材と、上記シート基材に含浸された本発明の皮膚化粧料用組成物とを含む。なお、本明細書では、上記シート化粧料を「本発明のシート化粧料」と称する場合がある。本発明のシート化粧料は、シート基材及び本発明の皮膚化粧料用組成物以外の構成成分を含んでいてもよい。
【0043】
上記シート基材は、本発明の皮膚化粧料用組成物が含浸可能なシート状の支持体である。上記シート基材としては、織布、不織布が好ましい。上記シート基材は、積層体(即ち、積層シート)であってもよく、例えば、織布の積層体、不織布の積層体、織布と不織布の積層体などであってもよい。上記シート基材は、使用感、加工のしやすさ等の観点から、不織布を含むシート基材であることが好ましく、より好ましくは不織布である。
【0044】
上記不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。
【0045】
上記織布や不織布を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維、半天然繊維などが挙げられる。上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンター、カボックなどが挙げられる。上記合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)などが挙げられる。上記半天然繊維としては、レーヨン、アセテートなどが挙げられる。上記繊維は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、二種以上の上記繊維からなる混紡繊維を用いてもよい。
【0046】
上記シート基材は、エンボス加工処理が施されていてもよい。上記エンボス加工処理としては、特に限定されず、例えば、裏面を押し上げて浮かす(したがって裏面は凹む)方式や、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式などが挙げられる。
【0047】
上記シート基材の目付は、特に限定されないが、20~100g/m2が好ましく、より好ましくは30~80g/m2である。目付が上記範囲内であると、肌を拭く際に、シート基材が丸まらず使用感に優れる。また、シート化粧料の単位面積あたりの皮膚化粧料用組成物の含浸量が多くなる。これにより、シリカ等の粉体の肌への付着量が多くなるため、使用後の肌の皮膜感及び乾燥感のなさがより向上する。さらに、肌の広範囲に使用する場合にも十分な効果が得られ、特にボディ用のシート化粧料等として用いる場合の使用性がより一層向上するため好ましい。
【0048】
上記シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。また、上記シート基材は市販品を用いることもできる。上記シート基材の市販品としては、特に限定されないが、例えば、商品名「RH」、商品名「PLDF-40D」、商品名「AS-40」(以上、ダイワボウポリテック株式会社製)、商品名「TCF404WJ」(フタムラ化学株式会社製)、商品名「コットエース A060S/A18」、商品名「コットエース C030S/A18」(以上、ユニチカ株式会社製)、商品名「クラフレックスJP2445B019」、商品名「クラフレックスJP0509B056」、商品名「クラフレックスJP4250H023」(以上、株式会社クラレ製)、商品名「ベンリーゼJP254」、商品名「ベンリーゼRE75K」(以上、旭化成株式会社製)、商品名「サンモアSP8740」、商品名「サンモアSP8748」(以上、三昭紙業株式会社製)、商品名「M1-30-2PE」(伊野紙株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
本発明のシート化粧料における、上記シート基材に対する含浸された本発明の皮膚化粧料用組成物の質量割合は、特に限定されないが、上記シート基材100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、より好ましくは150~700質量部である。
【0050】
本発明のシート化粧料の形状はシート状である。これにより、皮膚(肌)を拭く使用形態での使用性に優れ、携帯性にも優れる。シートの平面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形(例えば、正方形、長方形等)、三角形等の多角形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形;キャラクターの形状などが挙げられる。中でも、生産性、使用性や梱包性の観点からは四角形が好ましい。本発明のシート化粧料には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部などの成型が施されていてもよい。本発明のシート化粧料のシートの片面の表面積は、特に限定されないが、使用性、携帯性、包装性などの観点から、100~3000cm2が好ましく、より好ましくは150~1000cm2である。
【0051】
本発明のシート化粧料は、乾燥防止、外出時の携帯性、使用時の取り扱い性等の観点から、包装容器に収納されることが好ましい。本発明のシート化粧料は1枚ごとに個別包装されてもよいし、生産コスト、生産効率等の観点から、複数枚の本発明のシート化粧料が同一包装容器内に収納されてもよい。1つの包装容器に収納される本発明のシート化粧料の枚数は、特に限定されないが、2~50枚(/1包装容器)が好ましい。本発明のシート化粧料は、二つ折り、三つ折り、四つ折り等に折り畳んで包装容器に収納されていることが好ましい。
【0052】
上記包装容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器などが挙げられる。上記包装容器は、本発明の皮膚化粧料用組成物の揮発を抑制できるものが好ましい。上記包装容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂;アルミニウム等の金属等が挙げられる。上記包装容器としては、軽量であり優れた揮発防止効果を有する観点から、表面に金属層が積層又は蒸着された樹脂製の包装容器(特に、包装袋)が好ましく、より好ましくは表面にアルミニウム蒸着された樹脂製の包装袋である。
【0053】
本発明のシート化粧料は、上記シート基材に本発明の皮膚化粧料用組成物を含浸させることにより製造することができる。シート基材に本発明の皮膚化粧料用組成物を含浸させる方法は、特に限定されず、例えば、折りたたまれた状態のシート基材に本発明の皮膚化粧料用組成物を注入し含浸させる方法、シート基材に本発明の皮膚化粧料用組成物をスプレーする方法、印刷法を用いてシート基材に本発明の皮膚化粧料用組成物を含浸させる方法、本発明の皮膚化粧料用組成物中にシート基材を浸す方法などが挙げられる。
【0054】
本発明のシート化粧料は、皮膚(肌)を拭くために用いられる。本発明のシート化粧料により拭き取る部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などが挙げられる。本発明のシート化粧料としては、例えば、シート洗顔料(洗顔シート)、ボディ用拭き取りシート、ウェットティッシュ、使い捨ておしぼり、お尻拭きシート、メイク落としシート(クレンジングシート)などが挙げられる。中でも、本発明のシート化粧料は、使用後の肌に、乾燥した感触が抑制されつつ皮膜が形成されたような感触を付与することができるため、ボディ拭き取り用に特に好ましく用いられる。なお、本発明のシート化粧料は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【0055】
本発明のシート化粧料の使用方法は、特に限定されないが、肌上の汚れ、古い角質や皮脂等を拭き取る方法が挙げられる。本発明のシート化粧料は、肌上を拭いて使用するだけで、汚れ等が拭きとられるだけでなく、使用後の肌に、乾燥した感触が抑制されつつ皮膜が形成されたような感触を付与することができるため、肌上を拭いて使用する拭き取り用シート化粧料とすることが好ましい。
【実施例
【0056】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。ここで、実施例2、3、4、5は参考例1、2、3、4と読み替えるものとする。
【0057】
実施例1~8、比較例1~5
表に記した各成分(成分(A)~(D))を用い、実施例及び比較例の各皮膚化粧料用組成物を常法により調製した。さらに、上記皮膚化粧料用組成物を、目付40g/m2のスパンレース不織布に、不織布100質量部に対して化粧料組成物を290質量部の割合で含浸させ、実施例及び比較例の各シート化粧料(シートサイズ:14cm×20cm、長方形)を作製した。
【0058】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各シート化粧料について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。但し、比較例5は成分(B)が均一分散しなかったため他の評価を行わなかった。
【0059】
(1)サラサラ感
実施例及び比較例で得られた各シート化粧料1枚で、片方の前腕の内側を20cm幅で3往復するように拭き取り、10分後の拭き取り部分について、サラサラ感(粉が肌上に存在することによって、掌との摩擦が小さくなったような感触)を評価した。上記評価は、25℃、湿度50%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。下記評価基準で判定し、結果を表に記載した。
[サラサラ感の判定基準]
◎(優れる):サラサラ感を非常に感じる。
○(良好):サラサラ感をわずかに感じる。
×(不良):サラサラ感を感じない。
【0060】
(2)皮膜感
上記サラサラ感の評価と同時に、皮膜感を評価した。下記評価基準で判定し、結果を表に記載した。
[皮膜感の判定基準]
◎(優れる):皮膜感を非常に感じる。
○(良好):皮膜感をわずかに感じる。
×(不良):皮膜感を感じない。
【0061】
(3)白浮き
実施例及び比較例で得られた各シート化粧料1枚で、片方の前腕の内側を20cm幅で3往復するように拭き取り、10分後の拭き取り部分について、目視で白浮きを評価した。上記評価は、25℃、湿度50%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。下記評価基準で判定し、結果を表に記載した。
[白浮きの判定基準]
◎(優れる):塗布部分に白浮きがない。
○(良好):塗布部分の一部に白浮きがあるが使用可能。
×(不良):塗布部分の全体に白浮きが生じる。
【0062】
(4)分散性
実施例及び比較例において皮膚化粧料用組成物を作製する際、水とエタノールを混合した溶液に成分(A)及び成分(B)を投入し、10分間撹拌したときの粉体の分散性について目視で評価した。下記評価基準で判定し、結果を表に記載した。
[分散性の判定基準]
○(良好):均一分散する。
×(不良):均一分散しない。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明の皮膚化粧料用組成物を用いたシート化粧料(実施例)は、サラサラ感を有し、且つ皮膜感が得られ乾燥感が抑制された。また、白浮きも抑制されていた。これに対し、成分(A)の含有割合が少ない場合(比較例1)、サラサラ感が得られなかった。成分(A)の含有割合が多い場合(比較例2)、塗布部分全体に白浮きが発生した。成分(B)の含有割合が少ない場合(比較例3)、皮膜感が得られず乾燥感を抑制することができなかった。成分(B)の含有割合が多い場合(比較例4)、塗布部分全体に白浮きが発生した。成分(C)の含有割合が少ない場合(比較例5)、粉体が均一分散しなかった。
【0065】
さらに、以下に、本発明の皮膚化粧料用組成物の処方例を示す。
【0066】
(処方例1)ボディシート
<皮膚化粧料用組成物>
タルク 5.0質量%
オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム 10.0質量%
エタノール 30.0質量%
PPG-6デシルテトラデセス-20 0.4質量%
水 53.25質量%
メントール 0.7質量%
香料 0.5質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸Na 0.1質量%
合計 100.0質量%
(*)不織布100質量部に対して上記皮膚化粧料用組成物を290質量部の質量割合で含浸。
【0067】
(処方例2)デオドラントウォーター
タルク 2.0質量%
オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム 2.0質量%
エタノール 50.0質量%
PPG-6デシルテトラデセス-20 0.4質量%
水 45.1質量%
メントール 0.3質量%
香料 0.2質量%
合計 100.0質量%