(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】パレット搬送装置、部品実装機、パレット搬送方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
H05K13/02 A
(21)【出願番号】P 2020569308
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003585
(87)【国際公開番号】W WO2020157952
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】岸田 晃
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-166362(JP,A)
【文献】特許第3884278(JP,B2)
【文献】特開2018-115050(JP,A)
【文献】特開2007-324156(JP,A)
【文献】特開平01-115542(JP,A)
【文献】特開平03-149153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
主回転軸を中心に回転可能に前記基台に取り付けられた主回転体と、
前記主回転軸を中心に前記基台に対して前記主回転体を回転させる駆動部と、
前記主回転軸に平行であって前記主回転軸から離間する副回転軸を中心に回転可能に前記主回転体に取り付けられた副回転体と、
前記基台に対する前記主回転体の回転を前記副回転体に伝達することで、前記主回転体に対して前記副回転体を前記主回転体の回転方向と逆方向に回転させる回転伝達部と
を備え、
前記副回転体は、部品が載置されたパレットに係合可能な係合部材を前記副回転軸から離間した位置に有し、
前記主回転体が前記主回転軸を中心に回転すると、前記副回転体は、前記主回転体とともに前記主回転軸を中心に前記基台に対して回転しつつ、前記主回転体の回転方向と逆方向に前記副回転軸を中心に前記主回転体に対して回転することで、前記係合部材を前記主回転軸に直交する搬送方向に変位させて、前記係合部材に係合する前記パレットを前記搬送方向に搬送するパレット搬送装置。
【請求項2】
前記回転伝達部は、前記主回転軸を中心に前記主回転体が前記基台に対して回転する角度の2倍の角度で、前記副回転軸を中心に前記副回転体を前記主回転体に対して回転させる請求項1に記載のパレット搬送装置。
【請求項3】
前記パレットを収容するパレット収容部から前記パレットを引き出す請求項1または2に記載のパレット搬送装置であって、
前記副回転体の前記係合部材は、前記パレット収容部に収容された前記パレットから離脱した状態から前記主回転体とともに前記主回転軸を中心に前記基台に対して回転することで、前記パレット収容部に収容された前記パレットに係合する位置に移動し、
前記回転伝達部は、前記係合部材が前記パレット収容部に収容された前記パレットに係合するまでは、前記基台に対する前記主回転体の回転の前記副回転体への伝達を遮断することで、前記副回転体の前記主回転体に対する回転を制限し、前記係合部材が前記パレット収容部に収容された前記パレットに係合すると、前記基台に対する前記主回転体の回転の前記副回転体への伝達を開始して前記主回転体に対して前記副回転体を回転させるパレット搬送装置。
【請求項4】
前記係合部材は、前記主回転軸に平行なローラー軸を中心に回転可能なローラーである請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパレット搬送装置。
【請求項5】
前記副回転体は、前記副回転軸を中心に回転するアームを有し、前記副回転軸とは逆の前記アームの端部に前記係合部材を有する請求項1ないし4のいずれか一項に記載のパレット搬送装置。
【請求項6】
2個の前記副回転体が前記主回転体に取り付けられ、
前記2個の副回転体のうち、一方の副回転体の前記係合部材を選択的に前記パレットに係合させる状態と、他方の副回転体の前記係合部材を選択的に前記パレットに係合させる状態とを切り換える係合切換部をさらに備える請求項1ないし5のいずれか一項に記載のパレット搬送装置。
【請求項7】
前記係合切換部は、前記一方の副回転体の前記係合部材を前記パレットに係合させた状態では前記他方の副回転体を前記パレットが搬送される搬送経路から退避させ、前記他方の副回転体の前記係合部材を前記パレットに係合させた状態では前記一方の副回転体を前記搬送経路から退避させる請求項6に記載のパレット搬送装置。
【請求項8】
前記係合切換部は、前記一方の副回転体が取り付けられた一端部と前記他方の副回転体が取り付けられた他端部とを有する揺動部材と、前記一端部と前記他端部との間で前記揺動部材を揺動可能に支持する支持部材とを有し、前記揺動部材を揺動させることで前記一方の副回転体と前記他方の副回転体との間で前記パレットに係合する副回転体を切り換える請求項6または7に記載のパレット搬送装置。
【請求項9】
前記パレットを収容するパレット収容部から中継位置を経由して部品供給位置へ向かう、前記搬送方向に平行な引出方向に前記パレットを引き出す請求項6ないし8のいずれか一項に記載のパレット搬送装置であって、
前記パレットは、前方係合箇所と、前記
前方係合箇所より前記引出方向の上流側に設けられた後方係合箇所とを有し、
前記一方の副回転体の前記係合部材が前記他方の副回転体の前記係合部材よりも前記引出方向の上流側に位置した状態で、前記一方の副回転体の前記係合部材を前記パレット収容部に収容された前記パレットの前記前方係合箇所に係合させる動作と、
前記一方の副回転体の前記係合部材が前記他方の副回転体の前記係合部材よりも前記引出方向の下流側まで少なくとも移動するまで前記主回転軸を中心に前記主回転体を第1方向へ回転させることで、前記一方の副回転体の前記係合部材に係合する前記パレットを前記引出方向に引っ張って前記中継位置まで搬送するとともに、前記中継位置に位置する前記パレットの前記後方係合箇所より前記引出方向の上流側に前記他方の副回転体の前記係合部材を位置させる動作と、
前記他方の副回転体の前記係合部材を前記中継位置に搬送された前記パレットの前記後方係合箇所に係合させる動作と、
前記主回転軸を中心に前記主回転体を前記第1方向と逆の第2方向へ回転させることで、前記他方の副回転体の前記係合部材に係合する前記パレットを前記引出方向に押し出して前記部品供給位置まで搬送する動作と
を順番に実行するパレット搬送装置。
【請求項10】
前記主回転軸に平行な方向からの平面視において、前記各動作を通じて前記一方の副回転体が通過する軌跡と前記他方の副回転体が通過する軌跡とが重複しない請求項9に記載のパレット搬送装置。
【請求項11】
前記主回転軸に平行な方向からの平面視において、前記一方の副回転体の前記副回転軸と、前記他方の副回転体の前記副回転軸とは、前記主回転軸に対して点対称に設けられている請求項6ないし10のいずれか一項に記載のパレット搬送装置。
【請求項12】
部品が載置されたパレットを収容するパレット収容部と、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のパレット搬送装置と、
前記パレット収容部から部品供給位置まで前記パレット搬送装置により搬送された前記パレットに載置された前記部品を基板に実装する実装ヘッドと
を備えた部品実装機。
【請求項13】
主回転体の主回転軸に平行であって前記主回転軸から離間する副回転軸を中心に回転可能に前記主回転体に取り付けられた副回転体が有する係合部材を、部品が載置されたパレットに係合させる工程と、
前記主回転軸を中心に前記主回転体を回転させるとともに、前記主回転体の回転を前記副回転体に伝達することで、前記主回転体に対して前記副回転体を前記主回転体の回転方向と逆方向に回転させる工程と
を備え、
前記副回転体の前記係合部材は、前記副回転軸から離間した位置に設けられ、
前記主回転体が前記主回転軸を中心に回転すると、前記副回転体は、前記主回転体とともに前記主回転軸を中心に回転しつつ、前記主回転体の回転方向と逆方向に前記副回転軸を中心に前記主回転体に対して回転することで、前記係合部材を前記主回転軸に直交する搬送方向に変位させて、前記係合部材に係合する前記パレットを前記搬送方向に搬送するパレット搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品が載置されたパレットを搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品が載置されたパレットを収容するパレット収容部から所定の部品供給位置までパレットを搬送して、部品供給位置のパレットから取り出した部品を基板に実装する部品実装機が知られている。かかる部品実装機では、部品供給位置にパレットを搬送する必要があり、例えば特許文献1では、省スペース化等を目的として、パレットのフック部に係合する係合部材(突出部)を回転させることでパレットを搬送する機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように上記の構成では、パレットに係合する係合部材の軌跡が円である。しかしながら、パレットをスムーズに搬送するという観点からは、パレットに係合する係合部材を直線に近い軌跡に沿って移動させることが好適となる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パレットに係合する係合部材を直線に近い軌跡に沿って移動させつつパレットを搬送することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパレット搬送装置は、基台と、主回転軸を中心に回転可能に基台に取り付けられた主回転体と、主回転軸を中心に基台に対して主回転体を回転させる駆動部と、主回転軸に平行であって主回転軸から離間する副回転軸を中心に回転可能に主回転体に取り付けられた副回転体と、基台に対する主回転体の回転を副回転体に伝達することで、主回転体に対して副回転体を主回転体の回転方向と逆方向に回転させる回転伝達部とを備え、 副回転体は、部品が載置されたパレットに係合可能な係合部材を副回転軸から離間した位置に有し、主回転体が主回転軸を中心に回転すると、副回転体は、主回転体とともに主回転軸を中心に基台に対して回転しつつ、主回転体の回転方向と逆方向に副回転軸を中心に主回転体に対して回転することで、係合部材を主回転軸に直交する搬送方向に変位させて、係合部材に係合するパレットを搬送方向に搬送する。
【0007】
本発明に係るパレット搬送方法は、主回転体の主回転軸に平行であって主回転軸から離間する副回転軸を中心に回転可能に主回転体に取り付けられた副回転体が有する係合部材を、部品が載置されたパレットに係合させる工程と、主回転軸を中心に主回転体を回転させるとともに、主回転体の回転を副回転体に伝達することで、主回転体に対して副回転体を主回転体の回転方向と逆方向に回転させる工程とを備え、副回転体の係合部材は、副回転軸から離間した位置に設けられ、主回転体が主回転軸を中心に回転すると、副回転体は、主回転体とともに主回転軸を中心に回転しつつ、主回転体の回転方向と逆方向に副回転軸を中心に主回転体に対して回転することで、係合部材を主回転軸に直交する搬送方向に変位させて、係合部材に係合するパレットを搬送方向に搬送する。
【0008】
このように構成された本発明(パレット搬送装置、パレット搬送方法)では、主回転軸を中心に回転可能な主回転体と、主回転軸から離間する副回転軸を中心に回転可能に主回転体に取り付けられた副回転体とが設けられ、主回転体の回転を副回転体に伝達することで、副回転体に設けられた係合部材によりパレットを搬送する。特に、副回転体は、主回転体とともに主回転軸を中心に回転しつつ、主回転体の回転方向と逆方向に副回転軸を中心に主回転体に対して回転することで、係合部材を主回転軸に直交する搬送方向に変位させる。そのため、係合部材は、比較的直線に近い軌跡に沿って移動することとなる。こうして、パレットに係合する係合部材を直線に近い軌跡に沿って移動させつつパレットを搬送することが可能となっている。
【0009】
また、回転伝達部は、主回転軸を中心に主回転体が基台に対して回転する角度の2倍の角度で、副回転軸を中心に副回転体を主回転体に対して回転させるように、パレット搬送装置を構成しても良い。これによって、より直線に近い軌跡に沿って係合部材を移動させつつ、当該係合部材に係合するパレットを搬送することが可能となる。
【0010】
また、パレットを収容するパレット収容部からパレットを引き出すパレット搬送装置において、副回転体の係合部材は、パレット収容部に収容されたパレットから離脱した状態から主回転体とともに主回転軸を中心に基台に対して回転することで、パレット収容部に収容されたパレットに係合する位置に移動し、回転伝達部は、係合部材がパレット収容部に収容されたパレットに係合するまでは、基台に対する主回転体の回転の副回転体への伝達を遮断することで、副回転体の主回転体に対する回転を制限し、係合部材がパレット収容部に収容されたパレットに係合すると、基台に対する主回転体の回転の副回転体への伝達を開始して主回転体に対して副回転体を回転させるように、パレット搬送装置を構成しても良い。かかる構成では、副回転体の係合部材は、パレット収容部に収容されたパレットから離脱した状態から主回転体とともに回転することで、当該パレットに係合する位置に移動する。この際、係合部材がパレットに係合するまでは、主回転体に対する係合部材の回転が制限されており、係合部材にパレットが係合してから、主回転体に対する係合部材の回転が開始される。そのため、係合部材の搬送方向への変位を抑えた状態で係合部材をパレットに的確に係合させてから、係合部材の搬送方向への変位を開始してパレットを搬送方向に搬送することができる。
【0011】
また、係合部材は、主回転軸に平行なローラー軸を中心に回転可能なローラーであるように、パレット搬送装置を構成しても良い。かかる構成では、係合部材とパレットとの間に生じる摩擦によらず、係合部材をパレットにスムーズに係合させることができる。
【0012】
なお、副回転体の具体的な構成は種々考えられる。例えば、副回転体は、副回転軸を中心に回転するアームを有し、副回転軸とは逆のアームの端部に係合部材を有するように、パレット搬送装置を構成しても良い。
【0013】
また、2個の副回転体が主回転体に取り付けられ、2個の副回転体のうち、一方の副回転体の係合部材を選択的にパレットに係合させる状態と、他方の副回転体の係合部材を選択的にパレットに係合させる状態とを切り換える係合切換部をさらに備えるように、パレット搬送装置を構成しても良い。このように、2個の副回転体それぞれの係合部材を用いてパレットを搬送することで、パレットの搬送距離を長く確保することができる。
【0014】
また、係合切換部は、一方の副回転体の係合部材をパレットに係合させた状態では他方の副回転体をパレットが搬送される搬送経路から退避させ、他方の副回転体の係合部材をパレットに係合させた状態では一方の副回転体を搬送経路から退避させるように、パレット搬送装置を構成しても良い。かかる構成では、パレットの搬送に用いられない副回転体がパレットの搬送の妨害となるのを防止できる。
【0015】
また、係合切換部は、一方の副回転体が取り付けられた一端部と他方の副回転体が取り付けられた他端部とを有する揺動部材と、一端部と他端部との間で揺動部材を揺動可能に支持する支持部材とを有し、揺動部材を揺動させることで一方の副回転体と他方の副回転体との間でパレットに係合する副回転体を切り換えるように、パレット搬送装置を構成しても良い。かかる構成では、揺動部材を揺動させるといった簡単な操作で、パレットに係合する副回転体を切り換えることができる。
【0016】
パレットを収容するパレット収容部から中継位置を経由して部品供給位置へ向かう、搬送方向に平行な引出方向にパレットを引き出すパレット搬送装置において、パレットは、前方係合箇所と、前方係合箇所より引出方向の上流側に設けられた後方係合箇所とを有し、 一方の副回転体の係合部材が他方の副回転体の係合部材よりも引出方向の上流側に位置した状態で、一方の副回転体の係合部材をパレット収容部に収容されたパレットの前方係合箇所に係合させる動作と、一方の副回転体の係合部材が他方の副回転体の係合部材よりも引出方向の下流側まで少なくとも移動するまで主回転軸を中心に主回転体を第1方向へ回転させることで、一方の副回転体の係合部材に係合するパレットを引出方向に引っ張って中継位置まで搬送するとともに、中継位置に位置するパレットの後方係合箇所より引出方向の上流側に他方の副回転体の係合部材を位置させる動作と、他方の副回転体の係合部材を中継位置に搬送されたパレットの後方係合箇所に係合させる動作と、主回転軸を中心に主回転体を第1方向と逆の第2方向へ回転させることで、他方の副回転体の係合部材に係合するパレットを引出方向に押し出して部品供給位置まで搬送する動作とを順番に実行するように、パレット搬送装置を構成しても良い。かかる構成では、パレット収容部から中継位置まで一方の副回転体によってパレットを引っ張り出してから、中継位置から部品供給位置まで他方の副回転体によってパレットを押し出すことができる。これによって、パレットの搬送距離を長く確保することが可能となっている。
【0017】
また、主回転軸に平行な方向からの平面視において、各動作を通じて一方の副回転体が通過する軌跡と他方の副回転体が通過する軌跡とが重複しないように、パレット搬送装置を構成しても良い。かかる構成では、一方の副回転体と他方の副回転体との衝突を防止しつつ、パレットをスムーズに搬送することができる。
【0018】
また、主回転軸に平行な方向からの平面視において、一方の副回転体の副回転軸と、他方の副回転体の副回転軸とは、主回転軸に対して点対称に設けられているように、パレット搬送装置を構成しても良い。これによって、パレットの搬送距離を長く確保することが可能となっている。
【0019】
本発明に係る部品実装機は、部品が載置されたパレットを収容するパレット収容部と、上記のパレット搬送装置と、パレット収容部から部品供給位置までパレット搬送装置により搬送されたパレットに載置された部品を基板に実装する実装ヘッドとを備える。したがって、パレットに係合する係合部材を直線に近い軌跡に沿って移動させつつパレットを搬送することが可能となっている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パレットに係合する係合部材を直線に近い軌跡に沿って移動させつつパレットを搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る部品実装機の一例を模式的に示す平面図。
【
図2】パレット搬送装置の構成を模式的に示す平面図。
【
図3】
図2のパレット搬送装置の構成を模式的に示す側面図。
【
図4】上側センターギアと上側サイドギアとの関係を模式的に示す平面図。
【
図5】プレート昇降機構の構成を模式的に示す側面図。
【
図6A】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図6B】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図6C】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図6D】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図6E】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図6F】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【
図6G】
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明に係る部品実装機の一例を模式的に示す平面図である。
図1および以下の図では、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向で構成されるXYZ直交座標系を適宜示す。ここで、X方向およびY方向はそれぞれ水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。この部品実装機1では、基板搬送部2により搬入された基板Bに対して、ヘッドユニット3が部品供給部4、5により供給された部品を実装する。
【0023】
部品実装機1では、X方向(基板搬送方向)へ基板Bを搬送する基板搬送部2が基台11上に配置されている。基板搬送部2は、それぞれX方向に延設された2本のコンベア21を有する。2本のコンベア21は、Y方向(幅方向)に基板Bの幅に応じた間隔を空けて並列に配置され、X方向の上流側から搬入された基板BをX方向の下流側へ搬送して、所定の実装作業位置(
図1の基板Bの位置)で停止させる。なお、実装作業位置で停止した基板Bは、図示を省略する保持機構によって実装作業位置に固定される。さらに、2本のコンベア21は、実装作業位置で部品が実装された基板Bを、実装作業位置からX方向の下流側へ搬出する。
【0024】
ヘッドユニット3は、実装作業位置に固定された基板Bに対して、部品供給部4、5により供給される部品を移載する。ヘッドユニット3は、X方向に並ぶ複数の実装ヘッド31を有し、各実装ヘッド31の下端に吸着ノズルが取り付けられている。そして、ヘッドユニット3は、コンベア21の上方でX方向およびY方向へ移動することで、部品供給部4、5からの供給部品を吸着ノズルによりピックアップして実装作業位置の基板Bへ移載する。このようなヘッドユニット3の移動は、次のような駆動機構によって実行される。
【0025】
つまり、基台11上には、それぞれY方向に平行に設けられた一対のY軸固定レール32と、Y方向に平行に設けられたY軸ボールネジ33と、Y軸ボールネジ33を回転させるY軸サーボモーター34とが配置されている。一対のY軸固定レール32上には、X方向に延設されたX軸ビーム35が掛け渡されている。このX軸ビーム35は、Y軸固定レール32によってY方向に移動可能に支持されており、X軸ビーム35に取り付けられたナット36がY軸ボールネジ33に螺合している。このX軸ビーム35には、X方向に平行に設けられたX軸レール(図示省略)と、X方向に平行に設けられたX軸ボールネジ37と、X軸ボールネジ37を回転させるX軸サーボモーター38とが取り付けられている。そして、ヘッドユニット3がX軸ガイドによってX方向に移動可能に支持されており、ヘッドユニット3に取り付けられたナット(図示省略)がX軸ボールネジ37に螺合している。
【0026】
したがって、Y軸サーボモーター34がY軸ボールネジ33を回転させると、X軸ビーム35に伴ってヘッドユニット3がY方向に移動する。また、X軸サーボモーター38がX軸ボールネジ37を回転させると、ヘッドユニット3がX方向に移動する。こうして、ヘッドユニット3は、部品供給部4、5の上方位置と実装作業位置の上方位置との間を移動して、部品のピックアップおよび移載を実行する。
【0027】
部品供給部4は、基板搬送部2の前側(Y方向の一方側)に配置されている。部品供給部4は、複数のテープフィーダー41をX方向に並べた構成を具備する。各テープフィーダー41は、IC(Integrated Circuit)、トランジスターおよびコンデンサー等の比較的小型のチップ部品を所定間隔おきに収納したテープをリールから導出する構成を具備し、各テープフィーダー41より間欠的に送り出される部品が、ヘッドユニット3によってピックアップされて、実装作業位置の基板Bへ移載される。
【0028】
部品供給部5は、基板搬送部2の後側(Y方向の他方側)に配置されている。
図1に示す例では、2個の部品供給部5がX方向に並んでいる。ただし、これらは互いに共通する構成を具備して同様の動作を行うものであるので、以下では、基本的に1個の部品供給部5について説明を行う。
【0029】
部品供給部5は、QFP(Quad Flat Package)およびBGA(Ball Grid Array)等の比較的大型のパッケージ部品を供給する。具体的には、部品供給部5は、パレットPを収納するパレット交換機51と、パレット交換機51と部品供給位置Lsとの間でY方向にパレットPを搬送するパレット搬送装置6とを有する。パレットPには、トレイTを介して部品が載置されており、このトレイTには、複数のパッケージ部品が整列されている。パレットPは、単一のあるいは複数のトレイTを磁力等によって固定した状態で支持する。
【0030】
パレット交換機51は、特許第3884278号公報に記載のトレイ収納部と同様の構成を具備する。つまり、パレット交換機51は、Z方向に並ぶ複数のパレットPを収納し、これら複数のパレットPのうち、パレット搬送装置6に応じた高さに位置するパレットPがパレット搬送装置6によってパレット交換機51から搬出することが可能となる。そして、パレット交換機51は、Z方向に昇降することで、パレット搬送装置6に応じた高さに位置するパレットPを切り換えて、パレット搬送装置6による搬出対象となるパレットPを変更する。そして、パレット搬送装置6によりパレット交換機51から部品供給位置LsにまでパレットPを搬送することで、部品供給が実行される。つまり、部品供給位置Lsに搬送されたパレットP上の部品がヘッドユニット3によってピックアップされて、実装作業位置の基板Bへ移載される。
【0031】
図2はパレット搬送装置の構成を模式的に示す平面図であり、
図3は
図2のパレット搬送装置の構成を模式的に示す側面図である。パレット搬送装置6を示すこれらの図および以下の図では、パレット搬送装置6の構成の一部が適宜省略されている。また、
図2では、パレット搬送装置6の他にパレットPが合わせて示されており、
図3ではパレット搬送装置6の異なる2通りの状態(「一方上昇」および「他方上昇」)が示されている。
【0032】
ちなみに、以下の説明では、対象物の回転を説明するにあたり、「自転」および「公転」といった文言を適宜用いる。ここで、「自転」とは、対象物が当該対象物に重なる回転軸を中心に回転する動作を示し、「公転」とは、対象物が当該対象物から離間した回転軸を中心に回転する動作を示す。
【0033】
パレット搬送装置6は、上方へ開口する箱型の筐体61と、筐体61の底板611の上側に配置された回転テーブル63と、回転テーブル63の上側に配置された2個の回転フック65とを備える。回転テーブル63は、底板611に対して回転可能な状態で底板611に取り付けられ、2個の回転フック65のそれぞれは、回転テーブル63に対して回転可能な状態で回転テーブル63に取り付けられている。そして、パレット搬送装置6は、回転テーブル63の回転に連動させて回転フック65を回転させることで、回転フック65に係合するパレットPをY方向に平行に搬送する。
【0034】
回転テーブル63は、Z方向に平行なテーブル回転軸A63を中心とした円板形状を有するプーリーである。この回転テーブル63は、テーブル回転軸A63を中心に筐体61の底板611に対して回転(自転)することができる。
【0035】
各回転フック65は、配置を除いて同一の構成を具備しており、回転テーブル63に回転可能に取り付けられた円板651と、円板651から側方へ延設されたアーム652と、アーム652の先端部に取り付けられた係合ローラー653とを有する。円板651は、Z方向に平行なフック回転軸A65を中心に配置され、フック回転軸A65を中心に回転テーブル63に対して回転(自転)可能である。係合ローラー653は、円板651に対して逆側のアーム652の端部に取り付けられ、Z方向に平行なローラー回転軸A653を中心にアーム652対して回転(自転)することができる。
【0036】
回転テーブル63のテーブル回転軸A63と、回転フック65のフック回転軸A65とは、距離Raを空けて互いに離間している。したがって、回転テーブル63がテーブル回転軸A63を中心に回転(自転)すると、回転フック65のフック回転軸A65は、テーブル回転軸A63を中心として、半径Raの円軌道に沿って回転(公転)する。また、回転フック65(換言すれば、円板651)のフック回転軸A65と、係合ローラー653のローラー回転軸A653とは、距離Rbを空けて互いに離間している。したがって、回転フック65(換言すれば、円板651)がフック回転軸A65を中心に回転(自転)すると、係合ローラー653のローラー回転軸A653は、フック回転軸A65を中心として、半径Rbの円軌道に沿って回転(公転)する。つまり、回転テーブル63および回転フック65の回転に伴って、係合ローラー653は、テーブル回転軸A63を中心とする回転軌道(公転軌道)と、フック回転軸A65を中心とする回転軌道(公転軌道)とを合成した軌道に沿って移動する。なお、Z方向からの平面視において、2個の回転フック65それぞれのフック回転軸A65は、回転テーブル63のテーブル回転軸A63に対して点対称に位置する。
【0037】
さらに、パレット搬送装置6は、テーブル回転軸A63を中心に回転テーブル63を回転させるテーブル駆動機構67と、回転テーブル63の回転を2個の回転フック65に伝達する回転伝達機構7とを備える。
【0038】
テーブル駆動機構67は、回転テーブル63の周縁に巻き掛けられた無端ベルト671と、無端ベルト671に外側から接触することで回転テーブル63への無端ベルト671の巻き掛け角度を確保する一対のローラー672と、無端ベルト671を駆動するモーター673とを有する。モーター673は、無端ベルト671を循環させることで、無端ベルト671の内側に接する回転テーブル63を、テーブル回転軸A63を中心に回転させる。
【0039】
回転伝達機構7は、テーブル回転軸A63を中心として回転テーブル63上に配置されたセンタープーリー71を有する。このセンタープーリー71は、テーブル回転軸A63を中心に回転可能に回転テーブル63に取り付けられている。さらに、回転伝達機構7は、回転フック65のフック回転軸A65を中心に配置されたフックプーリー72を有する。このフックプーリー72は、回転フック65の下側に配置され、回転テーブル63に回転可能に取り付けられている。つまり、フックプーリー72は、回転テーブル63に対してフック回転軸A65を中心に回転可能である。
【0040】
また、回転伝達機構7は、回転フック65とフックプーリー72とを接続する円柱形のリンクバー73を有する。リンクバー73はフック回転軸A65を中心にZ方向に平行に設けられ、リンクバー73の上端に回転フック65の円板651が固定されている。リンクバー73の下端は、フックプーリー72の中央で開口する嵌入孔にZ方向から嵌入しており、リンクバー73とフックプーリー72とは、フック回転軸A65を中心とする回転方向に互いに固定される一方、Z方向において互いに移動可能である。かかる構成は、例えばZ方向に平行に延設されたキーとキー溝によって実現できる。このようなフックプーリー72およびリンクバー73は、2個の回転フック65のそれぞれに対応して設けられている。
【0041】
また、回転伝達機構7は、センタープーリー71とフックプーリー72との間に配置されたプーリー74と、センタープーリー71の側方に配置されたプーリー75と、センタープーリー71、フックプーリー72、プーリー74およびプーリー75に掛け渡された無端ベルト76と、回転テーブル63上に有する。無端ベルト76の内側と外側のうち、センタープーリー71とフックプーリー72とは、無端ベルト76の同じ側(内側)に接触する。
【0042】
さらに、回転伝達機構7は、回転テーブル63の回転から独立してセンタープーリー71を筐体61の底板611に対して静止させる状態と、回転テーブル63と一体的にセンタープーリー71を回転させる状態とを切り換える伝達切換部78を有する。伝達切換部78の構成の詳細は後述することとし、ここでは、各状態における回転伝達機構7の動作について説明する。
【0043】
センタープーリー71が底板611に対して静止する状態では、
図2に示すように、回転テーブル63が底板611に対して回転方向Daに回転すると、センタープーリー71は、回転テーブル63に対して回転方向Daとは逆の回転方向Dbに相対的に回転することとなる。回転テーブル63に対するセンタープーリー71の回転方向Dbへの回転はフックプーリー72に伝達され、フックプーリー72を回転方向Dbに回転させる。センタープーリー71の径はフックプーリー72の径の2倍であり、増速比は2倍であるため、回転フック65の角速度は回転テーブル63の角速度の2倍となる。つまり、
図2に示すように、回転テーブル63が回転方向Daに角度αだけ回転すると、回転フック65は回転方向Dbに角度β(=2×α)だけ回転する。
【0044】
ここで、
図2の平面視に示すように、回転テーブル63の回転角度αは、テーブル回転軸A63を通りY方向に平行な絶対基準軸Ca(つまり、底板611に固定された基準軸)に対する回転テーブル63の回転角度として表記され、回転テーブル63の回転角度αが0°において各回転フック65のフック回転軸A65が絶対基準軸Ca上に位置するものとする。回転フック65の回転角度βは、絶対基準軸Caに対して角度α傾いた相対基準軸Cr(つまり、回転テーブル63に固定された基準軸)に対する回転フック65の回転角度として表記され、具体的には、フック回転軸A65とローラー回転軸A653とを通る直線と相対基準軸Crとの間の角度が、回転フック65の回転角度βに相当する。なお、回転テーブル63の回転角度αが0°の状態において、回転フック65の回転角度βは0°であり、係合ローラー653はフック回転軸A65に対してテーブル回転軸A63の逆側(回転テーブル63の径方向の外側)に位置する。以下の図においても、回転角度α、βの表記は同様である。
【0045】
かかる構成では、回転フック65の係合ローラー653は、テーブル回転軸A63を中心に回転角度αだけ回転しつつ、フック回転軸A65を中心に回転角度β(=2×α)だけ、回転テーブル63の回転方向の逆方向に回転する(連動動作)。なお、回転テーブル63の回転は、2個の回転フック65のそれぞれに同様に伝達され、2個の回転フック65それぞれの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63に対して点対称の関係を維持しつつ移動する。
【0046】
以上がセンタープーリー71の静止状態で実行される動作である。一方、回転テーブル63と一体的にセンタープーリー71が底板611に対して回転する状態では、動作が異なる。この場合、回転テーブル63に対してセンタープーリー71が相対的に静止するため、センタープーリー71による回転テーブル63から回転フック65への動力伝達は遮断される。したがって、回転フック65は、フック回転軸A65を中心とする回転方向において回転テーブル63に対して静止した状態で、テーブル回転軸A63を中心として回転テーブル63とともに底板611に対して回転する。したがって、2個の回転フック65の相対基準軸Crに対する回転角度が0°のまま、2個の回転フック65それぞれの係合ローラー653は、回転テーブル63と一体的にテーブル回転軸A63を中心に回転する(非連動動作)。
【0047】
続いては、回転伝達機構7が有する伝達切換部78について説明する。この伝達切換部78は、筐体61の底板611と回転テーブル63との間に配置された、上側センターギア781、下側センターギア782、上側サイドギア783および下側サイドギア784を有する。上側センターギア781は、テーブル回転軸A63を中心に配置され、テーブル回転軸A63を中心として回転可能に回転テーブル63に取り付けられている。上側センターギア781とセンタープーリー71は相互に固定されており、底板611に対する回転および静止を一体的に行う。下側センターギア782は、テーブル回転軸A63を中心として上側センターギア781と底板611との間に配置されている。この下側センターギア782は、底板611に固定されており、上側センターギア781からは離間・独立している。
【0048】
上側サイドギア783および下側サイドギア784(以下、「サイドギア783、784」と適宜称する)は、Z方向に平行なギア回転軸A78を中心として上下に積層され、上側センターギア781および下側センターギア782の側方に配置されている。上側サイドギア783は上側センターギア781に側方から接触し、下側サイドギア784は下側センターギア782に側方から接触する。これらサイドギア783、784は、相互に固定された状態でギア回転軸A78を中心として回転可能に回転テーブル63取り付けられており、一体的に動作する。なお、サイドギア783、784は、底板611からは離間・独立している。
【0049】
回転テーブル63のテーブル回転軸A63と、サイドギア783、784のギア回転軸A78とは、距離Rcを空けて互いに離間している。したがって、回転テーブル63がテーブル回転軸A63を中心に回転(自転)すると、サイドギア783、784のギア回転軸A78は、テーブル回転軸A63を中心として、半径Rcの円軌道に沿って回転(公転)し、サイドギア783、784は、上側センターギア781および下側センターギア782に接触しつつ、これらのギア781、782の周囲を回転(公転)する。この際、下側サイドギア784は、底板611に固定された下側センターギア782に常時係合している。そのため、サイドギア783、784は、テーブル回転軸A63を中心に底板611に対して回転しつつ、ギア回転軸A78を中心とする回転方向においては、底板611に対して静止する(換言すれば、回転テーブル63に対しては回転する)。一方、上側サイドギア783と上側センターギア781とは常時係合するわけではない。そのため、これらの位置関係に応じて、上側センターギア781の動作は、サイドギア783、784の動作から独立する場合と、従属する場合とある。この点について、
図4を用いて説明する。
【0050】
図4は上側センターギアと上側サイドギアとの関係を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、上側サイドギア783は、角度範囲783aにおいて歯を有する一方、角度範囲783bにおいて歯を有さない間欠ギアある。また、上側センターギア781は、角度範囲781aにおいて歯を有する一方、角度範囲781bにおいて歯を有さない間欠ギアである。上述のとおり、上側サイドギア783は、回転テーブル63の回転に伴って、テーブル回転軸A63を中心に回転しつつ、ギア回転軸A78を中心とする回転方向に静止する。その結果、上側サイドギア783と上側センターギア781とが角度範囲783b、781bで接触して互いに係合しない非係合状態と、上側サイドギア783と上側センターギア781とが角度範囲783a、781aで接触して互いに係合する係合状態とが存在する。
【0051】
そして、係合状態では、上側センターギア781は、底板611に固定された下側センターギア782にサイドギア783、784を介して接続される。そのため、上側センターギア781は、底板611に対して静止し、上側センターギア781に固定されたセンタープーリー71も底板611に対して静止する。その結果、各回転フック65の係合ローラー653は上述の連動動作を実行する。
【0052】
一方、非係合状態では、上側センターギア781は上側サイドギア783から独立する。また、上側サイドギア783の半月形状の凹凸がかみ合う間は、センターギア781の回転が阻害されるため、センターギア781はサイドギア783に対して静止する。そのため、上側センターギア781は、回転テーブル63と一体的に回転し、上側センターギア781に固定されたセンタープーリー71も回転テーブル63と一体的に回転する。その結果、各回転フック65の係合ローラー653は上述の非連動動作を実行する。
【0053】
ちなみに、パレット搬送装置6では、2個の回転フック65が設けられている。これに対して、パレット搬送装置6は、2個の回転フック65のうち、一方をパレットPに係合させ、他方をパレットPから離脱させる係合切換機構8を備える(
図3)。つまり、各回転フック65は、係合位置Heおよび係合位置Heよりも低い離脱位置Hdの間で昇降することで、係合位置Heおよび離脱位置Hdのいずれかに選択的に位置することができる。そして、係合位置Heに位置する回転フック65の係合ローラー653がパレットPに係合する一方、離脱位置Hdに位置する回転フック65の係合ローラー653はパレットPから離脱する。特に、係合切換機構8は、2個の回転フック65のうち、一方が係合位置Heに位置すると、他方が離脱位置Hdに位置し、一方が離脱位置Hdに位置すると他方が係合位置Heに位置するように、パレットPに係合する回転フック65を切り換える。
【0054】
この係合切換機構8は、回転テーブル63の上方にテーブル回転軸A63を中心に配置された円形の支持テーブル81を有する。支持テーブル81は、テーブル回転軸A63を中心に回転テーブル63と一体的に回転する。上述のセンタープーリー71、フックプーリー72、プーリー74およびプーリー75は、支持テーブル81と回転テーブル63の間に配置される一方、各回転フック65は、支持テーブル81の上側に配置される。リンクバー73は、支持テーブル81に設けられた貫通孔を介して支持テーブル81をZ方向に貫通する。
【0055】
また、係合切換機構8は、回転フック65と支持テーブル81との間で、フック回転軸A65を中心に配置された昇降ブラケット82を有する。この昇降ブラケット82の中央には貫通孔が設けられ、リンクバー73が、この貫通孔を介して昇降ブラケット82をZ方向に貫通する。昇降ブラケット82は、リンクバー73に沿って昇降可能であるとともに、リンクバー73に対してフック回転軸A65を中心に回転可能である。この昇降ブラケット82は、2個の回転フック65のそれぞれに対して設けられており、対応する回転フック65を下方から支持する。
【0056】
さらに、係合切換機構8は、Z方向からの平面視において回転テーブル63の中央に設けられたサポーター83と、サポーター83によって揺動可能に支持された揺動バー84とを有する。そして、2個の昇降ブラケット82のうち、一方に揺動バー84の一端が係合し、他方に揺動バー84の他端が係合する。揺動バー84の揺動軸A84は、水平方向に平行であり、揺動バー84の両端(一端および他端)の中央に位置する。そして、サポーター83は、この揺動軸A84を中心に揺動可能に揺動バー84を支持する。したがって、2個の昇降ブラケット82は、揺動バー84の揺動に伴ってシーソーのように昇降する。
【0057】
また、係合切換機構8は、Z方向に昇降可能な昇降プレート85を有し、2個の昇降ブラケット82のうち、一方の昇降ブラケット82に昇降プレート85が係合する。
図2に示すように、この昇降プレート85は、テーブル回転軸A63を中心とする回転方向において、回転テーブル63の移動に伴う昇降ブラケット82の可動範囲を含むように設けられている。昇降プレート85が上昇すると、一方の昇降ブラケット82が上昇して、一方の昇降ブラケット82に支持される回転フック65が係合位置Heに位置するとともに、他方の昇降ブラケット82が下降して、他方の昇降ブラケット82に支持される回転フック65が離脱位置Hdに位置する。また、昇降プレート85が下降すると、一方の昇降ブラケット82が下降して、一方の昇降ブラケット82に支持される回転フック65が離脱位置Hdに位置するとともに、他方の昇降ブラケット82が上昇して、他方の昇降ブラケット82に支持される回転フック65が係合位置Heに位置する。
【0058】
この係合切換機構8は、昇降プレート85を昇降させるプレート昇降機構86を有する。
図5はプレート昇降機構の構成を模式的に示す側面図である。プレート昇降機構86は、それぞれL字型をした一対の揺動ブラケット861を有する。各揺動ブラケット861は、水平方向に平行な揺動軸A861を中心に揺動可能に、底板611から立設されたサポーター612により支持されている。この揺動ブラケット861は、揺動軸A861から延設された延設部861aと、当該延設部861aに直交しつつ揺動軸A861から延設された延設部861bとを有する。そして、各揺動ブラケット861の延設部861aの先端が昇降プレート85に係合する。さらに、係合切換機構8は、水平に延設された水平リンク862と、水平リンク862を水平方向に駆動するアクチュエーター863とを有し、各揺動ブラケット861の延設部861bの先端が水平リンク862に係合する。したがって、アクチュエーター863により水平リンク862を水平方向に移動させることで、揺動ブラケット861を揺動させて、昇降プレート85を昇降させることができる。
【0059】
以上がパレット搬送装置6の機械的構成である。このパレット搬送装置6は、かかる機械的構成を制御するためにコントローラー9を備える。このコントローラー9は、CPU(Central Processing Unit)等を有するプロセッサーであり、モーター673およびアクチュエーター863に指令を与えることで、以下の動作を実行する。
【0060】
図6A~
図6Gは
図2に示すパレット搬送装置が実行するパレット引出動作の一例を模式的に示す平面図である。このパレット引出動作では、パレット交換機51内に支持されるパレットPの位置(引出開始位置Ld)から部品供給位置LsまでY方向に平行な引出方向DdにパレットPが引き出される。なお、パレット搬送装置6は、平面視において引出開始位置Ldと部品供給位置Lsとの間に配置され、パレット引出動作では、パレットPがパレット搬送装置6の上方を通過するが、これらの図では、パレットPを透過してパレット搬送装置6の構成を適宜示す。また、これらの図では、2個の回転フック65を区別するために異なる符号65A、65Bを付するとともに、係合位置Heに位置する回転フック65に濃いドットハッチングを付し、離脱位置Hdに位置する回転フック65にこれより薄いドットハッチングを付する。
図6A~
図6Dの状態では、回転フック65Aが係合位置Heに位置するとともに回転フック65Bが離脱位置Hdに位置し、
図6E~
図6Fの状態では、回転フック65Aが離脱位置Hdに位置するとともに回転フック65Bが係合位置Heに位置する。
【0061】
これらの図に示すように、パレットPは、平面視で長方形を有して上方に開口するハウジングPhと、引出方向Ddの両側でハウジングPhの外壁Phf、Phbに取り付けられた2個の係合突起Peとを有し、ハウジングPh内にトレイTが載置される。ハウジングPhは、引出方向Ddに直交する2個の外壁Phf、Phbを有し、外壁Phf、Phbのうち外壁Phfは引出方向Ddの下流側に設けられ、外壁Phbは引出方向Ddの上流側に設けられている。各係合突起Peは、引出方向DdにおけるパレットPの外壁Phf、Phbに取り付けられたブラケットPbと、ブラケットPbから引出方向Ddに直交する方向に突出したフランジPfとを有する。2個の係合突起Peのうち、引出方向Ddの下流側(矢印側)の係合突起PeのブラケットPbは、ハウジングPhの外壁Phfから引出方向Ddの下流側に突出し、引出方向Ddの上流側(矢印の逆側)の係合突起PeのブラケットPbはハウジングPhの外壁Phbから引出方向Ddの上流側に突出する。また、引出方向Ddの下流側の係合突起Peと上流側の係合突起Peとでは、ブラケットPbからフランジPfが突出する方向が逆になっている。平面視において、これら係合突起Peは、パレットPの重心に対して点対称に配置されている。
【0062】
図6Aの「α=-10°」の欄に示すようにパレット引き出し動作では、回転テーブル63の回転方向Daへの回転角度αが-10°であって、回転フック65Aの係合ローラー653が回転方向Daの逆側に係合突起Peから離脱している状態から、回転テーブル63の回転方向Daへの回転が開始される。そして、
図6Aの「α=0°」の欄に示すように、回転テーブル63の回転角度αが0°になると、回転フック65A、65Bのうち、テーブル回転軸A63より引出方向Ddの上流側の回転フック65Aが係合位置Heに位置して、引出開始位置LdのパレットPに係合する。具体的には、回転フック65Aがその係合ローラー653をそのフック回転軸A65より引出方向Ddの上流側へ向けた状態で、回転フック65Aの係合ローラー653が、パレットPの下流側の係合突起Peに係合する。この際、回転フック65Bは、その係合ローラー653をそのフック回転軸A65より引出方向Ddの下流側に向けつつ、テーブル回転軸A63より引出方向Ddの下流側で離脱位置Hdに位置する。なお、回転角度αが-10°から0°の範囲では、上述の非係合状態が実現されている。そのため、回転フック65A、65Bは、フック回転軸A65とローラー回転軸A653とを通る直線が回転テーブル63の径方向に一致する(換言すれば、テーブル回転軸A63を通る)状態を維持しつつ、テーブル回転軸A63を中心とする円軌道に沿って係合ローラー653を移動させる。
【0063】
図6Bの「α=0°」の欄に示すように、回転テーブル63の回転角度αが0°となると、係合位置Heに位置する回転フック65Aの係合ローラー653が、引出開始位置Ldに位置するパレットPの外壁Phfの係合突起Peに係合するとともに、上述の係合状態が開始される。しがたって、回転フック65Aの係合ローラー653は連動動作を開始する。具体的には、
図6Bの「α=30°」の欄に示すように、回転フック65Aの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63を中心に回転角度αだけ回転しつつ、フック回転軸A65を中心に回転角度β(=2×α)だけ、回転テーブル63の回転方向Daの逆方向Dbに回転する。その結果、回転フック65Aの係合ローラー653は引出方向Ddの下流側へ変位して、当該係合ローラー653に係合するパレットPを引出開始位置Ldから引出方向Ddの下流側へ引っ張る。
【0064】
図6Bに示すように、係合位置Heに位置する回転フック65Aの係合ローラー653の連動動作に並行して、離脱位置Hdに位置する回転フック65Bも連動動作を実行する。具体的には、
図6Bの「α=30°」の欄に示すように、回転フック65Bの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63を中心に回転角度αだけ回転しつつ、フック回転軸A65を中心に回転角度β(=2×α)だけ、回転テーブル63の回転方向Daの逆方向Dbに回転する。その結果、回転フック65Bの係合ローラー653は引出方向Ddの上流側へ変位する。
【0065】
図6B~
図6Dから判るように、回転テーブル63の回転角度αが0°から150°へ変化するに伴って、回転フック65A、65Bそれぞれの係合ローラー653は連動動作を実行する。つまり、回転フック65Aの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63を中心に回転角度αだけ回転しつつ、フック回転軸A65を中心に回転角度β(=2×α)だけ、回転テーブル63の回転方向Daの逆方向Dbに回転することで、引出方向Ddの下流側へ変位して、パレットPを引出方向Ddの下流側へ引っ張る。これに並行して、回転フック65Bの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63を中心に回転角度αだけ回転しつつ、フック回転軸A65を中心に回転角度β(=2×α)だけ、回転テーブル63の回転方向Daの逆方向Dbに回転することで、引出方向Ddの上流側へ変位する。
【0066】
図6Cの「α=90°」の欄に示すように、回転テーブル63の回転角度αが90°となるタイミングで、引出方向Ddの下流側へ移動する回転フック65Aの係合ローラー653と、引出方向Ddの上流側へ移動する回転フック65Bの係合ローラー653とが、相互に最近接しつつ引出方向Ddにすれ違う。なお、フック回転軸A65とローラー回転軸A653とを通る直線上におけるフック回転軸A65と係合ローラー653の先端との距離をフック長l65と定義すると、回転フック65Aのフック長l65と、回転フック65Bのフック長l65との和よりも、回転フック65Aのフック回転軸A65と回転フック65Bのフック回転軸A65との距離laが長い。したがって、回転フック65A、65Bそれぞれの係合ローラー653が最近接した状態においてこれらが衝突するのが防止されている。
【0067】
また、回転テーブル63の回転角度αが90°未満の範囲では、回転フック65Aの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63より引出方向Ddの上流側を移動し、回転フック65Bの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63より引出方向Ddの下流側を移動する。一方、回転テーブル63の回転角度αが90°より大きい範囲では、回転フック65Aの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63より引出方向Ddの下流側を移動し、回転フック65Bの係合ローラー653は、テーブル回転軸A63より引出方向Ddの下流側を移動する。このように、回転角度αが90°となるタイミングの前後で、回転フック65Aの係合ローラー653と回転フック65Bの係合ローラー653との位置関係が逆転する。
【0068】
さらに、
図6Cの「α=90°」の欄と
図6Dの「α=150°」の欄との比較から判るように、回転テーブル63の回転に伴って回転フック65BとパレットPとの相対的な位置関係が変化した結果、回転フック65Bの係合ローラー653が、引出方向DdにおいてパレットPのハウジングPhの下流側から上流側へ移動する。この際、回転テーブル63の回転角度αが変化するのに伴ってパレットPが搬送される搬送経路(換言すれば、パレットPの通過範囲)よりも、離脱位置Hdに位置する回転フック65Bの係合ローラー653は低い。つまり、離脱位置Hdに位置する回転フック65Bの係合ローラー653は、回転テーブル63の回転に伴って、パレットPの下方を引出方向Ddの下流側から上流側へと通過する。
【0069】
図6Dの「α=150°」の欄に示すように、回転テーブル63の回転角度αが150°となったタイミングで、パレットPは中継位置Lmに到達する。この中継位置Lmは、引出方向Ddにおいて引出開始位置Ldと部品供給位置Lsとの中間に位置する。ここの例では、平面視において、中継位置LmのパレットPの重心は、回転テーブル63のテーブル回転軸A63に一致する。また、回転フック65Bの係合ローラー653は、中継位置Lmに位置するパレットPのハウジングPhの外壁Phbと、外壁Phbに取り付けられた係合突起PeのフランジPfとの隙間に下方から対向する。
【0070】
図6Dおよび
図6Eそれぞれの「α=150°」の欄の比較から判るように、回転フック65Aが係合位置Heに位置するとともに回転フック65Bが離脱位置Hdに位置する状態(
図6Dの「α=150°」の欄)から、回転フック65Aが離脱位置Hdに位置するとともに回転フック65Bが係合位置Heに位置する状態(
図6Eの「α=150°」の欄)へ、回転フック65A、65Bの昇降状態が切り換わる。かかる昇降状態の切換は、上述のように係合切換機構8によって実行される。これによって、回転フック65Aは、パレットPの係合突起Peから下方へ離脱し、回転フック65Bは、パレットPの外壁Phbと係合突起PeのフランジPfとの間に嵌って、パレットPの外壁Phbに係合する。
【0071】
さらに、回転テーブル63の回転方向が回転方向Daから回転方向Dbへと反転する。その結果、
図6E~
図6Gに示すように、回転フック65A、65Bそれぞれの係合ローラー653は、回転テーブル63の回転角度αが150°から0°に変化するのに応じて、
図6B~
図6Dに示した動作と逆の動作を実行する。つまり、回転フック65A、65Bそれぞれの係合ローラー653は、回転テーブル63が回転方向Daに回転するのに伴って移動した軌跡を、回転テーブル63が回転方向Dbに回転するのに伴って逆行する。
【0072】
ただし、回転フック65Bの係合ローラー653がパレットPの外壁Phbに係合している。そのため、パレット搬送装置6は、回転フック65Bの係合ローラー653によって、パレットPの外壁Phbを引出方向Ddの下流側へ押し出す。これによって、パレットPは、中継位置Lmから部品供給位置Lsへと引出方向Ddへ搬送される。
【0073】
また、回転テーブル63の回転に伴って回転フック65AとパレットPとの相対的な位置関係が変化した結果、回転フック65Aの係合ローラー653が、引出方向DdにおいてパレットPのハウジングPhの下流側から上流側へ移動する。この際、回転テーブル63の回転角度αが変化するのに伴ってパレットPが搬送される搬送経路(換言すれば、パレットPの通過範囲)よりも、離脱位置Hdに位置する回転フック65Aの係合ローラー653は低い。つまり、離脱位置Hdに位置する回転フック65Aの係合ローラー653は、回転テーブル63の回転に伴って、パレットPの下方を引出方向Ddの下流側から上流側へと通過する。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態に係るパレット搬送装置6では、テーブル回転軸A63を中心に回転可能な回転テーブル63と、テーブル回転軸A63から離間するフック回転軸A65を中心に回転可能に回転テーブル63に取り付けられた回転フック65とが設けられている。そして、回転テーブル63の回転を回転フック65に伝達することで、回転フック65に設けられた係合ローラー653によりパレットPを搬送する。特に、回転フック65は、回転テーブル63とともにテーブル回転軸A63を中心に回転しつつ、回転テーブル63の回転方向と逆方向にフック回転軸A65を中心に回転テーブル63に対して回転することで、係合ローラー653を引出方向Ddに変位させる。そのため、係合ローラー653は、比較的直線に近い軌跡に沿って移動することとなる。こうして、パレットPに係合する係合ローラー653を直線に近い軌跡に沿って移動させつつパレットPを搬送することが可能となっている。
【0075】
さらに、パレットPの高速搬送が可能となるとともに、パレット搬送装置6をコンパクトに構成することも可能となる。
【0076】
また、このように直線に近い軌跡で係合ローラー653を移動させられることから、パレットPの重心に近い位置に対して、引出方向Ddから係合ローラー653を対向させつつ、パレットPを搬送できる。よって、パレットPの安定的な搬送が可能である。
【0077】
特に、回転伝達機構7は、テーブル回転軸A63を中心に回転テーブル63が底板611に対して回転する角度の2倍の角度で、回転フック65を回転テーブル63に対して回転させる。これによって、より直線に近い軌跡に沿って係合ローラー653を移動させつつ、当該係合ローラー653に係合するパレットPを搬送することが可能となる。
【0078】
また、回転フック65の係合ローラー653は、パレット交換機51に収容されたパレットPから離脱した状態(
図6Aの「α=-10°」の欄)から回転テーブル63とともにテーブル回転軸A63を中心に底板611に対して回転することで、パレット交換機51に収容されたパレットPに係合する位置(角度α=β=0°)に移動する。また、回転伝達機構7は、係合ローラー653がパレット交換機51に収容されたパレットPに係合するまでは、底板611に対する回転テーブル63の回転の回転フック65への伝達を遮断することで、回転フック65の回転テーブル63に対する回転を制限する(
図6A)。そして、係合ローラー653がパレット交換機51に収容されたパレットPに係合すると、底板611に対する回転テーブル63の回転の回転フック65への伝達を開始して、回転テーブル63に対して回転フック65を回転させる。つまり、回転フック65の係合ローラー653は、パレット交換機51に収容されたパレットPから離脱した状態から回転テーブル63とともに回転することで、当該パレットPに係合する位置に移動する。この際、係合ローラー653がパレットPに係合するまでは、回転テーブル63に対する係合ローラー653の回転が制限されており、係合ローラー653にパレットPが係合してから、回転テーブル63に対する係合ローラー653の回転が開始される。そのため、係合ローラー653の引出方向Ddへの変位を抑えた状態で係合ローラー653をパレットPに的確に係合させてから、係合ローラー653の引出方向Ddへの変位を開始してパレットPを引出方向Ddに搬送することができる。
【0079】
また、係合ローラー653は、ローラー回転軸A653を中心に回転可能である。かかる構成では、係合ローラー653とパレットPとの間に生じる摩擦によらず、係合ローラー653をパレットPにスムーズに係合させることができる。
【0080】
また、2個の回転フック65A、65Bが回転テーブル63に取り付けられている。そして、2個の回転フック65A、65Bのうち、一方の回転フック65Aの係合ローラー653を選択的にパレットPに係合させる状態と、他方の回転フック65Bの係合ローラー653を選択的にパレットPに係合させる状態とを切り換える係合切換機構8が具備されている。このように、2個の回転フック65A、65Bそれぞれの係合ローラー653を用いてパレットPを搬送することで、パレットPの搬送距離を長く確保することができる。
【0081】
また、係合切換機構8は、一方の回転フック65Aの係合ローラー653をパレットPに係合させた状態では他方の回転フック65BをパレットPが搬送される搬送経路から下方に退避させ、他方の回転フック65Bの係合ローラー653をパレットPに係合させた状態では一方の回転フック65AをパレットPの搬送経路から下方に退避させる。かかる構成では、パレットの搬送に用いられない回転フック65がパレットPの搬送の妨害となるのを防止できる。
【0082】
また、係合切換機構8は、揺動バー84の両端の間で揺動バー84をサポーター83により揺動可能に支持し、揺動バー84の一端部に一方の回転フック65Aが取り付けられ、揺動バー84の他端部に他方の回転フック65Bが取り付けられている。そして、係合切換機構8は、揺動バー84を揺動させることで一方の回転フック65Aと他方の回転フック65Bとの間でパレットPに係合する回転フック65を切り換える。かかる構成では、揺動バー84を揺動させるといった簡単な操作で、パレットPに係合する回転フック65を切り換えることができる。
【0083】
また、パレット搬送装置6は、
図6A~
図6Gに示すように、回転テーブル63を回転方向Daに回転させてから回転方向Dbに回転させるといったワンモーションによって、パレットPを引出開始位置Ldから部品供給位置Lsへ搬送する。具体的には、一方の回転フック65Aの係合ローラー653が他方の回転フック65Bの係合ローラー653よりも引出方向Ddの上流側に位置した状態で、一方の回転フック65Aの係合ローラー653をパレット交換機51に収容されたパレットPの係合突起Peに係合させる(
図6A)。次に、一方の回転フック65Aの係合ローラー653が他方の回転フック65Bの係合ローラー653よりも引出方向Ddの下流側まで少なくとも移動するまでテーブル回転軸A63を中心に回転テーブル63を回転方向Daへ回転させる(
図6B~
図6D)。これによって、一方の回転フック65Aの係合ローラー653に係合するパレットPを引出方向Ddに引っ張って中継位置Lmまで搬送するとともに、中継位置Lmに位置するパレットPの外壁Phbより引出方向Ddの上流側に他方の回転フック65Bの係合ローラー653を位置させる(
図6Dの「α=150°」の欄)。そして、他方の回転フック65Bの係合ローラー653を中継位置Lmに搬送されたパレットPの外壁Phbに係合させると(
図6Eの「α=150°」の欄)、テーブル回転軸A63を中心に回転テーブル63を回転方向Daと逆の回転方向Dbへ回転させる(
図6E~
図6G)。これによって、他方の回転フック65Bの係合ローラー653に係合するパレットPを引出方向Ddに押し出して部品供給位置Lsまで搬送する。かかる構成では、パレット交換機51から中継位置Lmまで一方の回転フック65AによってパレットPを引っ張り出してから、中継位置Lmから部品供給位置Lsまで他方の回転フック65BによってパレットPを押し出すことができる。これによって、パレットPの搬送距離を長く確保して、基板Bに近接して設けられた部品供給位置LsまでパレットPを搬送することが可能となっている。
【0084】
また、テーブル回転軸A63に平行な方向からの平面視において、
図6A~
図6Bの動作を通じて一方の回転フック65Aが通過する軌跡と他方の回転フック65Bが通過する軌跡とが重複しないように、構成されている。したがって、一方の回転フック65Aと他方の回転フック65Bとの衝突を防止しつつ、パレットPをスムーズに搬送することができる。
【0085】
また、テーブル回転軸A63に平行な方向からの平面視において、一方の回転フック65Aのフック回転軸A65と、他方の回転フック65Bのフック回転軸A65とは、テーブル回転軸A63に対して点対称に設けられている。これによって、パレットPの搬送距離を長く確保することが可能となっている。
【0086】
このように本実施形態では、部品実装機1が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、パレット交換機51が本発明の「パレット収容部」の一例に相当し、パレットPが本発明の「パレット」の一例に相当し、実装ヘッド31が本発明の「実装ヘッド」の一例に相当し、パレット搬送装置6が本発明の「パレット搬送装置」の一例に相当し、底板611が本発明の「基台」の一例に相当し、回転テーブル63が本発明の「主回転体」の一例に相当し、テーブル回転軸A63が本発明の「主回転軸」の一例に相当し、テーブル駆動機構67が本発明の「駆動部」の一例に相当し、回転フック65が本発明の「副回転体」の一例に相当し、回転フック65Aが本発明の「一方の副回転体」の一例に相当し、回転フック65Bが本発明の「他方の副回転体」の一例に相当し、フック回転軸A65が本発明の「副回転軸」の一例に相当し、回転伝達機構7が本発明の「回転伝達部」の一例に相当し、係合ローラー653が本発明の「係合部材」および「ローラー」の一例に相当し、ローラー回転軸A653が本発明の「ローラー軸」の一例に相当し、アーム652が本発明の「アーム」の一例に相当し、係合切換機構8が本発明の「係合切換部」の一例に相当し、部品供給位置Lsが本発明の「部品供給位置」の一例に相当し、中継位置Lmが本発明の「中継位置」の一例に相当し、Y方向が本発明の「搬送方向」の一例に相当し、引出方向Ddが本発明の「引出方向」の一例に相当し、外壁Phfに取り付けられた係合突起Peが本発明の「前方係合箇所」の一例に相当し、外壁Phbが本発明の「後方係合箇所」の一例に相当し、回転方向Daが本発明の「第1方向」の一例に相当し、回転方向Dbが本発明の「第2方向」の一例に相当する。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、回転テーブル63の形状は円板形状に限られず、他の形状でも構わない。
【0088】
また、回転テーブル63における2個の回転フック65の位置関係は、上記の点対称に限られず、これら回転フック65を異なる位置関係で配置しても良い。
【0089】
また、回転フック65の個数は2個に限られず、1個あるいは3個以上でも構わない。さらに、回転フック65の形状も適宜変更可能であり、回転フック65は円形を有していても良い。
【0090】
また、回転フック65に具備する係合部材の具体的な構成は、係合ローラー653に限られず、回転自由度を有さない突起等でも良い。
【0091】
また、ギアを用いて動力を伝達する機構を、プーリーを用いて動力を伝達する機構に変更したり、プーリーを用いて動力を伝達する機構を、ギアを用いて動力を伝達する機構に変更したりできる。
【0092】
また、回転テーブル63の角速度に対する回転フック65の角速度の比(増速比)は2倍に限られず、例えば1.9~2.1倍や、この範囲以外の値でも良い。
【0093】
また、係合位置Heと離脱位置Hdとの間で回転フック65を昇降させる機構は、上記の係合切換機構8のようにシーソーを用いた機構に限られない。したがって、Z方向にロッドを進退させるアクチュエーターのロッドに回転フック65を取り付けて、このアクチュエーターによって回転フック65を昇降させても良い。
【0094】
また、
図6A~
図6Gの動作を逆に実行することで、部品供給位置Lsからパレット交換機51内の引出開始位置LdにパレットPを引き戻すことができる。
【符号の説明】
【0095】
1…部品実装機
31…実装ヘッド
51…パレット交換機(パレット収容部)
6…パレット搬送装置
611…底板(基台)
63…回転テーブル(主回転体)
65…回転フック(副回転体)
65A…回転フック(一方の副回転体)
65B…回転フック(他方の副回転体)
652…アーム
653…係合ローラー(係合部材、ローラー)
67…テーブル駆動機構(駆動部)
7…回転伝達機構(回転伝達部)
8…係合切換機構(係合切換部)
A63…テーブル回転軸(主回転軸)
A65…フック回転軸(副回転軸)
A653…ローラー回転軸(ローラー軸)
Da…回転方向(第1方向)
Db…回転方向(第2方向)
Dd…引出方向
Lm…中継位置
Ls…部品供給位置
P…パレット
Pe…係合突起(前方係合箇所)
Phb…外壁(後方係合箇所)
Y…Y方向(搬送方向)