IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工システムソリューション株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/44 20180101AFI20220912BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20220912BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
H04W4/44
H04W4/029
G08G1/09 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021107172
(22)【出願日】2021-06-29
(62)【分割の表示】P 2019160001の分割
【原出願日】2014-03-19
(65)【公開番号】P2021184603
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2014004804
(32)【優先日】2014-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 健吾
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103843(JP,A)
【文献】特開2010-102476(JP,A)
【文献】特開2012-27557(JP,A)
【文献】特開2011-170627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データから識別される前記移動体通信機の位置に基づいて、特定の制御に関する指令を出力するタイミングであるか否かを判定する制御判定部と、
前記制御判定部の判定結果が肯定的である場合に前記指令を出力する制御部と、を備えた制御装置であって、
前記制御判定部は、前記移動体通信機が所定エリア内の所定位置の近傍範囲に存在しているときに、前記タイミングに該当すると判定するように構成され、
前記所定エリアは、予め設定されている光ビーコンの設置位置を含むエリアであって前記光ビーコンが光通信を行うことが可能なエリアである
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交通信号制御器、光ビーコン、及び交通情報板などの交通用端末を、交通管制センターの中央装置で制御する交通管制システムが開示されている。光ビーコンは、車両の進路方向毎の方路(交差点を起点として所定の方角に延びる道路)にそれぞれ設置されており、光ビーコンが近赤外線を用いた光通信により移動体通信機(車載通信機)から受信した情報データは中央装置に集約され、この中央装置では、例えば交通信号機の信号制御や交通流を制御するための交通制御等が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-268925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、路側無線通信機及び他の装置の送信処理負荷を低減することができない。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、路側無線通信機及び他の装置の処理負荷を低減することができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動体通信機から送信されるとともに当該移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データを無線受信する受信部と、前記受信部が無線受信した前記情報データに含まれる移動体情報を他の装置に送信する送信部と、を備えた路側無線通信機であって、前記受信部が無線受信した前記情報データから識別される前記移動体通信機の位置に基づいて、前記送信部が前記他の装置に送信する送信タイミングに該当するか否かを判定する送信判定部を備え、前記送信部は、前記送信判定部の判定結果が肯定的である場合に、前記他の装置に前記移動体情報を送信するように構成されている路側無線通信機である。
【0007】
他の観点からみた本発明は、移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データを当該移動体通信機から無線受信した路側無線通信機から、前記情報データに含まれる移動体情報を受信する通信部と、前記通信部が受信した前記移動体情報に基づいて特定の制御を終了する指令を出力する制御部と、を備えた制御装置であって、前記制御部は、前記移動体通信機が所定エリアに流入した時点で前記通信部が前記移動体情報を受信すると、前記特定の制御を終了する指令を出力するように構成されている制御装置である。
【0008】
他の観点からみた本発明は、移動体通信機から送信されるとともに当該移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データを無線受信する受信部、及び前記受信部が無線受信した前記情報データを外部に送信する送信部を有する路側無線通信機と、前記路側無線通信機の送信部が送信した前記情報データを受信する通信部、前記通信部が受信した前記情報データから識別される前記移動体通信機の位置に基づいて特定の制御に関する指令を出力するタイミングであるか否かを判定する制御判定部、及び前記制御判定部の判定結果が肯定的である場合に前記指令を出力する制御部を有する制御装置と、を備えている制御システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、路側無線通信機及び他の装置の処理負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1参考例に係る路側無線通信機及び中央装置を含む交通管制システムが適用されている道路の平面図である。
図2】路側無線通信機の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3】路側無線通信機と中央装置との間で確立されている通信セッションを示す説明図である。
図4】パケットのデータ構造図である。
図5】中央装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
図6】宛先ポート番号に対応する方路を示した判定テーブルである。
図7】路側無線通信機により実行される処理を示すフローチャートである。
図8】中央装置により実行される処理を示すフローチャートである。
図9】路側無線通信機と中央装置との間で確立されている通信セッションの変形例、及びその通信セッションを用いて送信されるパケットのデータ構造を示す説明図である。
図10図9の変形例において用いられる判定テーブルである。
図11】第2参考例に係る路側無線通信機及び中央装置を含む交通管制システムが適用されている道路の平面図である。
図12】第2参考例の光ビーコンの内部構成を示す機能ブロック図である。
図13】第2参考例の光ビーコン制御機と中央装置との間で確立する通信セッション、及びその通信セッションを用いて送信されるパケットのデータ構造を示す説明図である。
図14】第2参考例において用いられる判定テーブルである。
図15】本発明の実施形態に係る路側無線通信機及び中央装置を含む交通管制システムが適用されている道路の平面図である。
図16】前記実施形態の路側無線通信機の内部構成を示す機能ブロック図である。
図17】前記実施形態において用いられる送信判定テーブルである。
図18】前記実施形態の中央装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
図19】前記実施形態において用いられる制御判定テーブルである。
図20】前記実施形態の路側無線通信機により実行される送信タイミングの判定処理を示すフローチャートである。
図21】前記実施形態において送信形態がセット送信の場合における判定処理を示すフローチャートである。
図22】前記実施形態において送信形態がリセット送信の場合における判定処理を示すフローチャートである。
図23】前記実施形態において送信形態が共用送信の場合における判定処理を示すフローチャートである。
図24】前記実施形態において送信形態が併用送信の場合における判定処理を示すフローチャートである。
図25】前記実施形態の中央装置により実行されるFASTの指令処理を示すフローチャートである。
図26】前記実施形態の制御装置の変形例を示すものであり、その制御装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
図27】前記実施形態の路側無線通信機及び中央装置の他の変形例を示すものであり、(a)は路側無線通信機の内部構成を示す機能ブロック図であり、(b)は中央装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係る路側無線通信機は、移動体通信機から送信されるとともに当該移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データを無線受信する受信部と、前記受信部が無線受信した前記情報データに含まれる移動体情報を他の装置に送信する送信部と、を備えた路側無線通信機であって、前記受信部が無線受信した前記情報データから識別される前記移動体通信機の位置に基づいて、前記送信部が前記他の装置に送信する送信タイミングに該当するか否かを判定する送信判定部を備え、前記送信部は、前記送信判定部の判定結果が肯定的である場合に、前記他の装置に前記移動体情報を送信するように構成されている。
ここで、「移動体情報」とは、移動体通信機が送信した情報データに含まれる情報であって、且つ移動体通信機の位置を識別可能な情報を除く情報である。
【0012】
上記路側無線通信機によれば、移動体通信機の位置に基づいて送信部が他の装置に送信する送信タイミングに該当するか否かを判定し、その判定結果が肯定的である場合に他の装置に移動体情報を送信するため、他の装置に送信するデータ量を削減する(間引く)ことができる。これにより、路側無線通信機の送信処理負荷を低減することができ、また、他の装置の処理負荷を低減することができる。
【0013】
(2)前記(1)の路側無線通信機は、前記送信部から前記他の装置への送信回数が1回に設定されているのが好ましい。この場合、他の装置に送信するデータ量をさらに削減することができる。
【0014】
(3)前記(1)又は(2)の前記移動体通信機が、車両に搭載される車載通信機であり、前記情報データは、前記車両が特定車両であることを識別可能な情報を含み、前記送信判定部は、前記受信部が無線受信した前記情報データに基づいて、前記車両が前記特定車両である場合に、前記送信タイミングに該当するか否かを判定するように構成されているのが好ましい。
ここで「特定車両」とは、パトカーや救急車等の緊急車両、およびバス等の公共車両を含む意味である。
この場合、特定車両の移動体情報を送信するデータ量を削減することができる。
【0015】
(4)前記(1)~(3)のいずれかの前記送信部は、特定の制御を開始させるために前記移動体情報を送信するものであり、前記送信判定部は、前記移動体通信機が所定エリア内の所定位置の近傍範囲に存在しているときに、前記送信タイミングに該当すると判定するように構成されているのが好ましい。
ここで「所定位置の近傍範囲」とは、所定位置とその近傍範囲を含む意味である。
この場合、移動体通信機が所定エリア内の所定位置の近傍範囲に存在しているときに、特定の制御を開始させるための移動体情報が送信されるため、移動体通信機が前記所定エリア内に存在しているときに特定の制御を確実に開始させることができる。
【0016】
(5)前記(4)の前記所定エリア内に光ビーコンの設置位置が予め設定されており、前記所定位置が、前記光ビーコンの設置位置とされているのが好ましい。
この場合、所定エリア内において予め設定されている光ビーコンの設置位置を、移動体通信機の存在を判断するための所定位置として流用することができるため、路側無線通信機により特定の制御を行うための改修量を軽減することができる。
【0017】
(6)前記(4)又は(5)の前記所定位置の近傍範囲は、所定の地点を基準とする第1距離から第2距離までの範囲(但し、第2距離>第1距離、かつ第1距離=0の場合も含む)とされており、前記送信判定部は、前記移動体通信機が前記第1距離から前記第2距離までの範囲内に存在しているときに、前記送信タイミングに該当すると判定するように構成されているのが好ましい。
この場合、送信判定部は、移動体通信機が第1距離から第2距離までの範囲内に存在しているか否かを判断することで、移動体通信機が所定エリア内に存在しているか否かを容易に判断することができる。
【0018】
(7)前記(4)又は(5)の前記所定位置の近傍範囲は、所定の座標範囲とされており、前記送信判定部は、前記移動体通信機が前記座標範囲内に存在しているときに、前記送信タイミングに該当すると判定するように構成されていてもよい。
この場合、送信判定部は、移動体通信機が所定の座標範囲内に存在しているか否かを判断することで、移動体通信機が所定エリア内に存在しているか否かを容易に判断することができる。
【0019】
(8)前記(1)~(7)のいずれかの前記送信部は、特定の制御を終了させるために前記移動体情報を送信するものであり、前記送信判定部は、前記移動体通信機が所定エリアに流入した時点で、前記送信タイミングに該当すると判定するように構成されているのが好ましい。
この場合、移動体通信機が所定エリアに流入した時点で、特定の制御を終了させるための移動体情報が送信されるため、移動体通信機が前記所定エリアに流入した時点で特定の制御を迅速に終了させることができる。
【0020】
(9)前記(4)~(8)のいずれかの前記所定エリア内に、前記送信タイミングが複数設定されているのが好ましい。
この場合、所定エリア内に複数の光ビーコンを設置して送信タイミングを設定する場合に比べて設置コストを抑えることができる。
【0021】
(10)他の観点からみた本発明の実施形態に係る制御装置は、移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データを当該移動体通信機から無線受信した路側無線通信機から、前記情報データに含まれる移動体情報を受信する通信部と、前記通信部が受信した前記移動体情報に基づいて特定の制御を終了する指令を出力する制御部と、を備えた制御装置であって、前記制御部は、前記移動体通信機が所定エリアに流入した時点で前記通信部が前記移動体情報を受信すると、前記特定の制御を終了する指令を出力するように構成されている。
【0022】
上記制御装置によれば、移動体通信機が前記所定エリアに流入した時点で路側無線通信機から移動体情報を受信すると、特定の制御を終了する指令を出力するため、特定の制御を迅速に終了させることができる。
【0023】
(11)他の観点からみた本発明の実施形態に係る制御システムは、移動体通信機から送信されるとともに当該移動体通信機の位置を識別可能な情報を含む情報データを無線受信する受信部、及び前記受信部が無線受信した前記情報データを外部に送信する送信部を有する路側無線通信機と、前記路側無線通信機の送信部が送信した前記情報データを受信する通信部、前記通信部が受信した前記情報データから識別される前記移動体通信機の位置に基づいて特定の制御に関する指令を出力するタイミングであるか否かを判定する制御判定部、及び前記制御判定部の判定結果が肯定的である場合に前記指令を出力する制御部を有する制御装置と、を備えている。
【0024】
上記制御システムによれば、路側無線通信機が移動体通信機から取得した情報データを制御装置に送信することで、その制御装置側において、情報データから識別される移動体通信機の位置に基づいて特定の制御に関する指令を出力するタイミングを容易に判定することができる。
【0025】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
[第1参考例]
[システムの全体構成]
図1は、第1参考例に係る路側無線通信機及び中央装置を含む交通管制システムが適用されている道路の平面図である。この交通管制システムは、交通管制室等に設けられた中央装置3、路側無線通信機4、交通信号機5、及び道路Rを走行する車両6に搭載された車載通信機(移動体通信機)7などを含んでいる。なお、移動体通信機としては、車載通信機7に限られず、例えば、歩行者が所持する歩行者用通信機であってもよい。
【0026】
図1に示す交差点Cにおける流入路(方路)L1~L4及び流出路(方路)L5~L8は、いずれも一車線である。なお、これらの車線数等は一例であって、交差点Cの構造は図1のものに限定されるものではない。
交通信号機5は、赤青黄の灯色を発光する交通信号灯器5aと、この交通信号灯器5aの灯色を制御するための交通信号制御機5bとを有している。交通信号制御機5bは、通信回線8aによって路側ルータ9に接続されている。この路側ルータ9は、ネットワーク網10を介して、中央装置3側のルータ11に接続されている。
【0027】
交通情報の収集、交通管理及び交通制御する中央装置3が生成する信号制御情報i1は、ネットワーク網10及び通信回線8aを通じて、各交通信号機5の交通信号制御機5bへ送信される。これに対して、交通信号制御機5bからは、実際に行った信号制御の実績を示す実行情報i2が、中央装置3へ送信される。なお、中央装置3は、交通情報の収集、交通管理及び交通制御を行っているが、これらのうち少なくとも一つを行っていれば良い。
【0028】
路側無線通信機4は、各交差点にそれぞれ1つずつ設置されており、走行中の車両6の車載通信機7に送信する情報i3を無線送信するとともに、車載通信機7が送信する情報を無線受信する。本参考例の路側無線通信機4は、ITS無線システムを想定した、無線LANやWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access )などに準拠した中・広域の無線通信装置(700MHz帯の無線通信を含む)である。
【0029】
路側無線通信機4が送信する情報i3には、中央装置3が配信する交通情報(渋滞情報や交通規制情報等)が含まれている。また、車載通信機7が送信する情報には、車両6の車両ID、車種情報及び位置情報等の情報データが含まれている。路側無線通信機4は、通信回線8bによって路側ルータ9に接続されている。車載通信機7が送信した情報データに含まれる車両情報(移動体情報)i4は、路側無線通信機4から通信回線8b及びネットワーク網10を通じて中央装置3に送信される。ここで、「車両情報」とは、車載通信機7が送信した情報データに含まれる車両6に関する情報(車両ID及び車種情報等)であって、且つ車両6の位置を識別可能な位置情報を除く情報である。
【0030】
車載通信機7は、路側無線通信機4との間で情報を無線で送受信する通信機能を有する。この車載通信機7は、車両6が交差点Cに向かって走行中に路側無線通信機4の通信領域に入ると、路側無線通信機4から情報i3を無線受信するとともに、前記情報データを含む情報を所定の送信周期(例えば、100m秒)で路側無線通信機4に無線送信する。
【0031】
本参考例における交通管制システムは、車両6をパトカーや救急車等の緊急車両またはバス等の公共車両を含む特定車両とし、この特定車両が通過する交差点に設置された路側無線通信機4が、特定車両から受信された車車間通信情報を中央装置3に送信し、中央装置3において、特定車両が行く先の交差点を優先的に通過できるように交通信号灯器5aを制御したり、特定車両が接近しつつあることを他の車両に通知する情報を送信したりする場合に用いられる。なお、この交通管制システムは、車両6として、特定車両以外の一般車両にも適用してもよい。
【0032】
[路側無線通信機]
図2は、路側無線通信機4の内部構成を示す機能ブロック図である。
路側無線通信機4は、受信部401、判断部402、送信部404、及び記憶部405を内部に含んでいる。受信部401は、UD形伝送を行う通信インタフェースよりなり、車載通信機7の位置を識別可能な位置情報を含む前記情報データを、車載通信機7から無線受信する。なお、受信部401は、U形伝送を行う通信インタフェースであってもよい。このU形伝送の場合、IPアドレスやポート番号の代わりに、IPアドレスやポート番号に相当するアドレスに基づいて確立された通信セッションが用いられる。
判断部402は、受信部401が無線受信した前記情報データに基づいて、その送信元である車載通信機7が存在するエリア(広域エリア)である方路を判断する。ここで、「方路」とは、車載通信機7が搭載された車両6が進行中の流入路又は流出路を意味する。判断部402の具体的な判断方法については後述する。なお、判断部402が判断するエリアとしては、方路によって区分したもの以外に、車線毎に区分したものや、その他任意の領域毎に区分したものであってもよい。
【0033】
路側無線通信機4と中央装置3との間には予め通信セッションが確立されている。
図3は、路側無線通信機4と中央装置3との間で確立されている通信セッションを示す説明図である。路側無線通信機4は、複数(図例では16個)のポートPa1~Pa16を有している。これらのポートPa1~Pa16のうち、ポートPa1~Pa8は送信ポートとして使用され、残りのポートPa9~Pa16は受信ポートとして使用されている。
ポートPb1~Pb16は、互いに異なるポート番号(図例では「8001」~「8016」)が設定されている。本参考例では、ポートPa1~Pa8のポート番号は、送信元ポート番号(図例では「8001」~「8008」)として使用され、残りのポートPa9~Pa16のポート番号は、宛先ポート番号(図例では「8009」~「8016」)として使用される。
【0034】
一方、中央装置3は、複数(図例では16個)のポートPb1~Pb16を有している。これらのポートPb1~Pb16のうち、ポートPb1~Pb8は受信ポートとして使用され、残りのポートPb9~Pb16は送信ポートとして使用されている。
ポートPb1~Pb16は、互いに異なるポート番号(図例では「8001」~「8016」)が設定されている。本参考例では、ポートPb1~Pb8のポート番号は、宛先ポート番号(図例では「8001」~「8008」)として使用され、残りのポートPb9~Pb16のポート番号は、送信元ポート番号(図例では「8009」~「8016」)として使用される。
【0035】
図2において、送信部404は、UD形伝送を行う通信インタフェースよりなり、受信部401が無線受信した前記情報データに含まれる車両情報i4を、上記通信セッションを用いて中央装置3にパケット送信する。本参考例の送信部404は、判断部402において方路が流入路L1と判断された場合、路側無線通信機4の送信ポートであるポートPa1と、中央装置3の受信ポートであるポートPb1との間で確立された通信セッションを用いる。同様に、送信部404は、方路が流入路(流出路)L2~L8のうちのいずれかと判断された場合、路側無線通信機4の送信ポートであるポートPa2~Pa8と、中央装置3の受信ポートであるポートPb2~Pb8との間で、それぞれ図示のように確立された異なる通信セッションを用いる。このように、送信部404は、各方路L1~L8に応じて、路側無線通信機4と中央装置3との間で異なるポートを用いて送信する。
【0036】
図4は、送信部404から中央装置3に送信されるパケットのデータ構造図である。本参考例におけるパケットは、先頭からIPヘッダ、UDPヘッダ及びデータの各領域を有している。IPヘッダには、宛先IPアドレス及び送信元IPアドレスが含まれている。図例では、宛先IPアドレスのみを示している。UDPヘッダには、宛先ポート番号及び送信元ポート番号が含まれている。図例では、宛先ポート番号のみを示している。データ領域には、受信部401が無線受信した情報データから取得した車両情報i4が含まれている。
【0037】
したがって、路側無線通信機4のポートPa1と中央装置3のポートPb1との間で確立した通信セッションを用いる場合には、送信部404は、UDPヘッダに宛先ポート番号である「8001」を含めた状態でパケット送信する。同様に、路側無線通信機4のポートPa2~Pa8と中央装置3のポートPb2~Pb8との間でそれぞれ確立した通信セッションを用いる場合には、送信部404は、図示のようにUDPヘッダに他の宛先ポート番号である「8002」~「8008」のうちのいずれかを含めた状態でパケット送信する。
【0038】
送信部404は、受信部401が車載通信機7から次々と無線受信した情報データ毎に中央装置3にパケット送信すると、路側無線通信機4の送信負荷や通信回線のトラフィックが増加するとともに、中央装置3に多大な処理負荷がかかるため、中央装置3に送信するデータ量を削減する(間引く)処理を行う。具体的には、送信部404は、方路L1~L8毎に同一の車両IDを含む情報データを、受信部401が所定時間(所定期間)中に所定回数、無線受信したときに、中央装置3に情報データを1回送信する。なお、この間引き処理は、あくまで例示であり、他の方法によりデータ量を削減してもよい。
記憶部405は、判断部402による上述の判断処理、及び送信部404による上述の送信処理を実行するコンピュータプログラムを記憶している。
【0039】
[中央装置]
図5は、中央装置3の内部構成を示す機能ブロック図である。中央装置3は、通信部301、処理部302、及び記憶部303を内部に含んでいる。通信部301は、U形伝送及びUD形伝送の両方に対応する通信インタフェースよりなり、所定時間ごとの信号灯色の切り替えタイミング等に関する信号制御情報i1を交通信号制御機5bに送信する。
また、通信部301は、車両6の車両ID及び車種情報等を含む車両情報i4を路側無線通信機4から受信する。具体的には、通信部301は、路側ルータ9を介して路側無線通信機4と1つの通信回線8bで接続されており(図1参照)、中央装置3と路側無線通信機4との間で確立した通信セッションを用いて車両情報i4を受信する。
【0040】
処理部302は、通信部301が用いた通信セッションと、記憶部303に記憶されている判定テーブル(図6参照)とに基づいて、車両情報i4の送信元である車載通信機7が存在している方路を判定する。判定テーブルは、各宛先ポート番号「8001」~「8008」に対応する方路L1~L8を示した一覧表である。処理部302は、通信部301が用いた通信セッションのUDPヘッダに含まれる宛先ポート番号に対応する方路を、判定テーブルを参照して判定する。
記憶部303は、処理部302による上述の判定処理を実行するコンピュータプログラム、及び前記判定テーブルを記憶している。
【0041】
[通信方法]
図7は、路側無線通信機4により実行される処理を示すフローチャートである。また、図8は、中央装置3により実行される処理を示すフローチャートである。以下、図7及び図8を参照しつつ、路側無線通信機4から中央装置3に車両情報i4を送信する通信方法について説明する。
まず、路側無線通信機4の受信部401により、車載通信機7が送信する情報データを無線受信すると(図7のステップS1)、当該情報データから車両車種と車両IDを認識する(図7のステップS2)。次に、路側無線通信機4の判断部402により、受信部401が無線受信した情報データに含まれる位置情報に基づいて、その送信元である車載通信機7が存在している方路を判断する(判断ステップ、図7のステップS3)。例えば、図1に示すように、路側無線通信機4が交差点Cに設置されている場合、判断部402は、車載通信機7が搭載された車両6が、流入路L1~L4及び流出路L5~L8のうちのいずれの道路を進行しているかを判断する。
【0042】
具体的には、判断部402は、まず、記憶部405に記憶されている交差点Cの中央位置を示す位置データと、前記情報データに含まれる車両6の緯度経度を示す位置情報とに基づいて、これら2地点間を結ぶ仮想直線の真北方向に対する傾斜角度を算出し、交差点Cの中央位置から車両6の存在するおおよその方向を判断する。例えば、車両6が図1に示す位置を進行している場合、判断部402は、車両6が流入路L1又は流出路L5に位置していることを判断することができる。
【0043】
次に、判断部402は、前記2地点間の距離を算出し、この距離が時間の経過とともにどのように変化するかによって方路を判断する。すなわち、前記2地点間の距離が時間の経過とともに短くなる場合には、車両6が流入路を進行していると判断し、逆に前記2地点間の距離が時間の経過とともに長くなる場合には、車両6が流出路を進行していると判断する。例えば、車両6が図1に示す位置を進行している場合、前記2地点間の距離は時間の経過とともに短くなるので、判断部402は、車両6が流入路L1を進行していると判断する。
なお、判断部402は、上述の判断方法に限られず、例えば、車両6の複数の位置情報と、記憶部405に記憶されている道路地図データとに基づいてマップマッチング処理を行うことで、車両6が存在している方路を判断してもよい。
【0044】
ステップS3において判断部402が方路を判断した後は、送信部404において中央装置3に送信するデータの間引き処理を行う。まず、送信部404は、受信部401において過去の一定時間以内に同一の車両IDを含む情報i4を次々と受信しているか否かを判定する(図7のステップS4)。受信部401において過去の一定時間以内に同一の車両IDを含む情報i4を次々と受信している場合、次に、送信部404は、この過去に受信した同一の車両IDを含む情報i4の送信元である車載通信機7が存在している方路と同じか否かを判定する(図7のステップS5)。方路が同じである場合、次に、送信部404は、その同一の車両IDを含む情報i4を、受信部401がN回(N≧2)受信したか否かを判定する(図7のステップS6)。受信部401が同一の車両IDを含む情報i4をN回受信した場合、図7のステップS7に移行する。
一方、ステップS4において同一の車両IDを含む情報i4を受信していない場合、ステップS5において方路が同じでない場合、またはステップS6においてN回受信しなかった場合は、ステップS1に戻る。
【0045】
図7のステップ7において、送信部404は、N回のうちの1回以上の情報データが、その送信元である車載通信機7が、交差点Cの中央位置から車両6までの距離が所定範囲以内から受信したものであるか否かを判定する。そして、前記距離が所定範囲以内から受信したものである場合、送信部404は、中央装置3に車両情報i4を1回送信する(送信ステップ、図7のステップS8)。
その際、送信部404は、判断部402が判断した方路に応じて、路側無線通信機4と中央装置3との間で確立されている異なる通信セッションを用いて送信する。例えば、判断部402が流入路L1と判断した場合には、路側無線通信機4の送信ポートであるポートPa1と、中央装置3の受信ポートであるポートPb1との間で確立した通信セッションを用いて送信する(図3参照)。
一方、ステップ7において、交差点Cの中央位置から車両6が存在する位置までの距離が所定範囲以内のときに受信しなかった場合は、ステップS1に戻る。
【0046】
ステップS8において、送信部404は確立した通信セッションを用いて中央装置3に車両情報i4をパケット送信する。その際、送信部404は、パケットのデータ領域に車両情報i4を含めるとともに、パケットのUDPヘッダに通信セッションの宛先ポート番号を含めた状態でパケット送信する。例えば、路側無線通信機4のポートPa1と中央装置3のポートPb1との間で確立した通信セッションを用いてパケット送信する場合には、送信部404は、中央装置3のポートPb1に設定されている宛先ポート番号である「8001」をUDPヘッダに含めた状態でパケット送信する。
【0047】
中央装置3は、路側無線通信機4の送信部404から送信された車両情報i4を含むパケットを通信部301が受信する(図8のステップS11)と、中央装置3の処理部302により、通信部301が用いた通信セッションのUDPヘッダに含まれる宛先ポート番号を取得し、この宛先ポート番号に対応する方路を、判定テーブル(図6参照)を参照して判定する(判定ステップ、図8のステップS12)。
例えば、通信部301が用いた通信セッションのUDPヘッダに含まれる宛先ポート番号が「8001」の場合、処理部302は、判定テーブルを参照して、宛先ポート番号「8001」に対応する方路が流入路L1であると判定する。
【0048】
以上、本参考例の路側無線通信機4及び中央装置3によれば、車載通信機7から無線受信した情報データに基づいて、その送信元である車載通信機7が存在している方路を判断し、その判断した方路に応じて確立した異なる通信セッションを用いて、前記情報データに含まれる車両情報i4を中央装置3に送信するため、中央装置3は、路側無線通信機4との間で確立された通信セッションに基づいて、車両情報i4の送信元である車載通信機7が存在している方路を判定することができる。これにより、路側無線通信機4から中央装置3に送信するデータフォーマットを変更する必要がないため、路側無線通信機4から中央装置3へ送信するデータフォーマットを変更する場合に比べて中央装置3の改修量を軽減しつつ、中央装置3において車載通信機7が存在している方路を判定することができる。
【0049】
また、路側無線通信機4と中央装置3との間で、複数の方路L1~L8毎に異なるポートに基づいて確立された通信セッションを用いるため、路側無線通信機4から中央装置3へ送信するデータに車載通信機7が存在しているエリア情報を含める場合に比べて、中央装置3の改修なしで、もしくは中央装置3に軽微な改修をするだけで、中央装置3において車載通信機7が存在している方路を判定することができる。
また、路側無線通信機4の送信部404は、方路毎に同一の車両IDを含む情報データを、受信部401が所定期間中に所定回数、無線受信したときに、中央装置3に車両情報i4を1回送信するため、中央装置3に送信するデータ量を削減する(間引く)ことができる。これにより、路側無線通信機4の送信処理負荷を低減することができ、また、中央装置3の処理負荷を低減することができる。
また、路側無線通信機4の送信部404は、交差点Cから車両6までの距離が所定距離の範囲以内となったときに中央装置3に送信するため、中央装置3は、路側無線通信機4から車両情報i4を受信した場合でも、車両6が交差点Cを通過するタイミングを、交差点Cから車両6までの距離を用いて判定することができる。
【0050】
[通信セッションの変形例]
図9は、本参考例の路側無線通信機4と中央装置3との間で確立する通信セッションの変形例、及びその通信セッションを用いて送信されるパケットのデータ構造を示す説明図である。また、図10は、図9の変形例において中央装置3が用いる判定テーブルを示している。本変形例において、路側無線通信機4は、複数(ここでは8個)の異なるIPアドレス(例えば「10.1.1.1」~「10.1.1.8」)を有している。
【0051】
本変形例における路側無線通信機4の送信部404は、複数の方路L1~L8毎に異なる送信元IPアドレスに基づいて確立された通信セッションを用いて送信する。例えば、図9に示すように、判断部402において方路が流入路L1と判断された場合、送信部404は送信元IPアドレス「10.1.1.1」により確立された通信セッションを用いて送信する。同様に、判断部402において方路が流入路L2~流出路L8のうちのいずれかと判断された場合、送信部404は中央装置3の宛先IPアドレス「10.1.1.2」~「10.1.1.8」のうちから、それぞれ図示のように異なる送信元IPアドレスにより確立された通信セッションを用いて送信する。
その際、送信部404は、図9に示すように、パケットのデータ領域に車両情報i4を含めるとともに、パケットのIPヘッダに通信セッションの送信元IPアドレスを含めた状態でパケット送信する。
【0052】
中央装置3は、路側無線通信機4の送信部404から送信された車両情報i4を含むパケットを通信部301で受信した後、処理部302により、通信部301が用いた通信セッションのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスを取得し、この送信元IPアドレスに対応する方路を判定テーブル(図10参照)を参照して判定する。この判定テーブルは、各送信元IPアドレス「10.1.1.1」~「10.1.1.8」に対応する方路L1~L8を示した一覧表である。例えば、通信部301が用いた通信セッションのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスが「10.1.1.1」の場合、処理部302は、判定テーブルを参照して、送信元IPアドレスの「10.1.1.1」に対応する方路が流入路L1であると判定する。
【0053】
以上、本変形例の路側無線通信機4及び中央装置3によれば、路側無線通信機4と中央装置3との間で、複数の方路L1~L8毎に異なるIPアドレスを用いて確立された通信セッションを用いるため、中央装置3は後述する光ビーコン20との間で確立された通信セッションを用いる場合(図13及び図14参照)と同様の通信セッションとなるため、既に導入されている従来の中央装置を活用することで、中央装置3において車載通信機7が存在している方路を判定することができる。
【0054】
[第2参考例]
図11は、第2参考例に係る路側無線通信機4及び中央装置3を含む交通管制システムが適用されている道路の平面図である。本参考例の交通管制システムは、車載通信機7との路車間通信を、路側無線通信機4だけでなく、光ビーコン20によっても行われる点で、第1参考例と相違する。光ビーコン20は、走行中の車両6の車載通信機7との間で、光信号による無線通信、つまり近赤外線を通信媒体とした光通信を行うとともに、光学式車両感知器としても機能する。本参考例における光ビーコン20は、交差点C’における流入路(方路)L1’~L4’の上流側及び流出路(方路)L5’~L8’に合計8個設けられている。
【0055】
各光ビーコン20は、光ビーコン制御機21と、この光ビーコン制御機21に接続された光ビーコンヘッド(投受光器)22とを備えている。各光ビーコン20の光ビーコンヘッド22は、流入路L1’~L4 ’の上流側の真上及び流出路L5’~L8 ’ の上流側の真上にそれぞれ設置されている。光ビーコン制御機21は、通信回線8cによって路側ルータ12に接続されている。この路側ルータ12は、ネットワーク網10を介して、中央装置3側のルータ11に接続されている。光ビーコン20は、その設置位置の近傍を走行する車両6の車載通信機7から、車両6の車両ID、車種情報等の情報データを含むアップリンクデータを受信する。そして、光ビーコン制御機21が取得したアップリンクデータに含まれる車両情報i4は、通信回線8c及びネットワーク網10を通じて中央装置3に送信される。また、中央装置3から各光ビーコン20へは、通信回線8cを通じて、交通情報を含む情報が送信される。
【0056】
図12は、光ビーコン20の内部構成を示す機能ブロック図である。光ビーコンヘッド22は、光信号の授受を行って光通信を行う光通信部23と、光ビーコンヘッド22の直下を通過する車両6の有無を感知するための車両感知センサ部24とを有している。
光通信部23は、送信部25及び受信部26を有している。送信部25は、光通信のための光信号を送出する投光部からなり、近赤外線よりなるダウンリンク光を送出する機能を有している。具体的には、送信部25は、光ビーコン制御機21から送出されるダウンリンクデータi3を送信信号に変換する送信回路と、出力されたこの送信信号をダウンリンク方向の光信号に変換する発光ダイオード(LED)からなる発光素子とによって構成されている。このため、送信部25は、無線通信(光通信)によりダウンリンクデータi3を車載通信機7へ送信することができる。
【0057】
受信部26は、車載通信機7からの光信号を受光する受光部からなり、車載通信機7からの近赤外線よりなるアップリンク光を受光する機能を有している。具体的には、受信部26は、フォトダイオード等からなる受光素子と、この受光素子が出力する電気信号を増幅してデジタルの信号を生成する受光回路とを備えている。そして、光ビーコン制御機21は、受信部26によって生成された信号から、アップリンクデータを生成する。このように、受信部26は、無線通信(光通信)により車載通信機7が送信したアップリンクデータを受信することができる。
【0058】
光ビーコン制御機21は、中央装置3との双方向通信と、車載通信機7との路車間通信を行う通信部27を有する。通信部27は、UD形伝送を行う通信インタフェースよりなり、中央装置3にアップリンクデータi4を送信する際、アップリンクデータi4を受信した光ビーコンヘッド22が設置されている方路L1’~L8’に応じて、中央装置3との間で異なる通信セッションを確立する。なお、通信部27は、U形伝送を行う通信インタフェースであってもよい。
【0059】
図13は、本参考例の光ビーコン制御機21と中央装置3との間で確立する通信セッション、及びその通信セッションを用いて送信されるパケットのデータ構造を示す説明図である。各光ビーコン制御機21は、当該光ビーコン制御機21の個数と同数(ここでは8個)の異なるIPアドレスを有している。
【0060】
光ビーコン制御機21の通信部27は、複数の方路L1’~L8’毎に異なるIPアドレスにより確立された通信セッションを用いて送信する。例えば、図13に示すように、流入路L1’の真上に設置された光ビーコンヘッド22から取得したアップリンクデータi4を中央装置3へ送信する場合、通信部27は送信元IPアドレス「10.1.1.1」により確立された通信セッションを用いて送信する。同様に、流入路L2’~流出路L8’のうちのいずれかの真上に設置された光ビーコンヘッド22から取得したアップリンクデータi4を送信する場合、通信部27は中央装置3の送信元IPアドレス「10.1.1.2」~「10.1.1.8」のうちから、それぞれ図示のように異なる送信元IPアドレスにより確立された通信セッションを用いて送信する。
その際、通信部27は、図13に示すように、パケットのデータ領域に車両情報i4を含めるとともに、パケットのIPヘッダに通信セッションの送信元IPアドレスを含めた状態でパケット送信する。
【0061】
図11に示すように、中央装置3の通信部301(図5参照)は、路側ルータ9を介して路側無線通信機4と通信回線8bで接続されるとともに、路側ルータ12を介して光ビーコン制御機21と通信回線8cで接続される。これにより、通信部301は、路側無線通信機4の送信部404から送信された情報データを含むパケットを受信可能であり、且つ光ビーコン制御機21の通信部27から送信された車両情報i4を含むパケットを受信可能に構成されている。
【0062】
中央装置3の処理部302は、路側無線通信機4の送信部404から送信された車両情報i4を含むパケットを通信部301で受信した場合、上述の第1参考例と同様に、記憶部303に記憶されている図6の判定テーブルを参照して方路を判定する。
また、処理部302は、光ビーコン制御機21の通信部27から送信された車両情報i4を含むパケットを通信部301で受信した場合、中央装置3と光ビーコン制御機21との間で用いた通信セッションのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスを取得し、この送信元IPアドレスに対応する方路を、記憶部303に別途記憶されている判定テーブル(図14参照)を参照して判定する。この判定テーブルは、各宛先ポート番号「10.1.1.1」~「10.1.1.8」に対応する方路L1’~L8’を示した一覧表である。例えば、通信部301が用いた通信セッションのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスが「10.1.1.1」の場合、処理部302は、判定テーブルを参照して、送信元IPアドレスの「10.1.1.1」に対応する方路が流入路L1’であると判定する。
なお、第2参考例において説明を省略した点については、第1参考例と同様である。
【0063】
以上、本参考例の中央装置3によれば、通信部301は、路側無線通信機4により送信された車両情報i4だけでなく、光ビーコン20により送信された車両情報i4も受信可能に構成されているため、中央装置3は、路側無線通信機4から送信された車両情報i4と、光ビーコン20から送信された車両情報i4とが混在した状態であっても、車両情報i4の送信元である車載通信機7が存在している方路を判定することができる。
【0064】
[実施形態]
図15は、本発明の実施形態に係る路側無線通信機4及び中央装置3を含む交通管制システムが適用されている道路の平面図である。本実施形態の交通管制システムは、第1参考例の交通管制システムの変形例であり、より具体的には、路側無線通信機4から中央装置3に送信するデータ量を削減する間引き処理の変形例を示している。本実施形態の間引き処理は、現場急行支援システム(Fast Emergency Vehicle Preemption Systems :以下、「FAST」という。)において用いられる。
【0065】
上記FASTは、路側無線通信機4が交差点の上流側を走行するパトカーや救急車等の緊急車両(特定車両)から受信した車両情報を中央装置3に送信し、中央装置3から交通信号制御機5bに制御指令を送信することで、緊急車両が交差点を青信号で通過できるように流入路の青信号時間又は赤信号時間を調整する信号制御(特定の制御)を行うものである。この信号制御は、緊急車両が通行する流入路に青信号を表示し続ける青延長制御、或いは、赤信号の表示時間を可能な限り短くして青信号に切り替える赤短縮制御によって行われる。本実施形態では、図中の二点鎖線で囲む範囲内に存在する複数の交差点C1,C2において、FASTが実施される。
【0066】
なお、本実施形態の間引き処理は、FAST以外に、路線バス等の公共車両(特定車両)が交差点を青信号で通過できるように流入路の青信号時間又は赤信号時間を調整する信号制御(特定の制御)が行われる公共車両優先システム(Public Transportation Priority System :以下、「PTPS」という。)など、他の特定の制御が行われる場合にも適用することができる。また、本実施形態の間引き処理は、特定車両以外の一般車両にも適用してもよい。この場合、交通信号制御機5bが一般車両を対象とした感応制御を行う場合に本実施形態の間引き処理を利用することができる。また、一般車両を対象とした感応制御が行われなくても、一般車両及び特定車両のいずれも同様に本実施形態の間引き処理を利用することができる。また、特定車両については本実施形態の間引き処理を行い、一般車両については第1参考例の間引き処理を行うようにしても良い。
【0067】
[路側無線通信機]
図16は、本実施形態の路側無線通信機4の内部構成を示す機能ブロック図である。
路側無線通信機4は、受信部401、判断部402、送信部404、記憶部405、及び送信判定部406を内部に含んでいる。送信判定部406は、受信部401が無線受信した情報データに含まれる車種情報に基づいて車両6が緊急車両であると判断した場合、当該情報データから識別される車載通信機7の位置に基づいて、送信部404が他の装置である中央装置(制御装置)3に送信する送信タイミングに該当するか否かを判定する。送信部404は、送信判定部406の判定結果が肯定的である場合、つまり送信判定部406が送信タイミングに該当すると判定した場合、中央装置3に車両情報(移動体情報)i4を送信する。その送信回数は例えば1回に設定されている。
【0068】
前記送信タイミングとしては、中央装置3においてFASTをセット(開始)する指令を出力するためのタイミングと、FASTをリセット(終了)する指令を出力するためのタイミングとがある。送信判定部406は、これらの2つのタイミングのいずれか一方又は両方を用いて構成された複数の送信形態に基づいて、それぞれ異なる判定を行うようになっている。
前記複数の送信形態としては、FASTをセットする指令を出力するだけの「セット送信」と、FASTをリセットする指令を出力するだけの「リセット送信」と、FASTをリセット及びセットする両指令を同じタイミングで出力する「共用送信」と、FASTをリセット及びセットする両指令を異なるタイミングで出力する「併用送信」との4種類がある。
【0069】
これらの送信形態は、記憶部405に記憶されている送信判定テーブル(図17参照)において、FASTの実施エリア及び交差点間の道路長さ等に応じて、方路L1~L8毎にそれぞれ予め設定されている。本実施形態では、図17に示すように、セット送信を「01」、リセット送信を「10」、共用送信を「00」、併用送信を「11」として、それぞれ送信判定テーブルに記憶されている。ここでは、流入路L1,L2,L4の送信形態はセット送信、流入路L3の送信形態は共用送信、流出路L5,L6,L8の送信形態はリセット送信、流入路L7の送信形態は併用送信としてそれぞれ設定されている。
なお、送信判定テーブルには、方路L1~L8毎に、後述の距離Dがそれぞれ設定されている。
【0070】
送信形態がセット送信の場合、送信判定部406は、車載通信機7が所定エリア(狭域エリア)内の所定位置の近傍範囲に存在しているときに、FASTをセットするための送信タイミングに該当すると判定する。ここで、「所定位置の近傍範囲」とは、所定位置とその近傍範囲を含む意味である。
図15に示すように、前記所定エリアは、複数のエリアS1~S8からなる。各エリアS1~S8は、各方路L1~L8において予め設定されている光ビーコンの設置位置(図中の各方路において示す白丸部分)を含めた範囲であって、かつ当該光ビーコンが光通信を行うこと可能な範囲に設定されている。本実施形態では、この光ビーコンの設置位置が前記所定位置とされている。
【0071】
前記所定位置の近傍範囲は、例えば交差点C2(所定の地点)を基準とする第1距離(D-α)及び第2距離(D+β)を用いて、第1距離(D-α)から第2距離(D+β)までの範囲(但し、第2距離(D+β)>第1距離(D-α)、かつ第1距離(D-α)=0の場合も含む)として設定されている。なお、Dは、交差点C2から前記所定位置(光ビーコンの設置位置)までの距離であり、α及びβは任意の値であって、α≧0、β≧0である。したがって、送信判定部406は、交差点C2から車載通信機7が存在する位置までの距離が第1距離(D-α)から第2距離(D+β)までの範囲内のときに、前記送信タイミングに該当すると判定する。
なお、第1距離及び第2距離は、交差点C2を基準としているが、交差点C2の手前の停止線など他の任意の地点を基準としても良い。
また、前記所定位置の近傍範囲は、所定の座標範囲として設定されていても良い。この場合、例えば前記座標範囲を、車載通信機7の位置座標(x,y)に対してa1≦x≦a2かつb1≦y≦b2の関係を満たす範囲とすることで、送信判定部406は、この関係を満たす場合に、前記送信タイミングに該当すると判定することができる。
また、路側無線通信機4の受信部401が、前記所定位置よりも上流側に位置する車載通信機7から情報データを受信したときに、送信判定部406は、その情報データから車載通信機7が前記所定位置を通過するまでの所要時間(=前記所定位置までの残距離/速度)を計算し、その所要時間が経過した時点で前記送信タイミングに該当すると判定することもできる。
【0072】
送信形態がリセット送信の場合、送信判定部406は、車載通信機7が前記所定エリアに流入した時点で、FASTをリセットする送信タイミングに該当すると判定する。
送信形態が共用送信の場合、送信判定部406は、車載通信機7が前記所定エリア内の所定位置の近傍範囲に存在しているときに、FASTをリセットする送信タイミング、及びFASTをセットするための送信タイミングに該当すると判定する。
【0073】
送信形態が併用送信の場合、送信判定部406は、所定エリア内において複数設定された送信タイミングを、それぞれ個別に判定する。具体的には、送信判定部406は、上述のリセット送信の場合の判定方法によりFASTをリセットする送信タイミングに該当すると判定し、上述のセット送信の場合の判定方法によりFASTをセットする送信タイミングに該当すると判定する。
【0074】
本実施形態では、各流出路L5~L8のエリアS5~S8の上流端側は、交差点C2内を含む範囲に設定されている。したがって、各流出路L5~L8においてFASTをリセットする送信タイミングは、車載通信機7が各エリアS5~S8に流入した時点、つまり交差点C2に流入した時点(図中の各流出路において示す黒丸部分)となるため、交差点C2で行われているFASTを迅速にリセットさせることができる。
【0075】
[中央装置]
図18は、中央装置3の内部構成を示す機能ブロック図である。中央装置3は、通信部301、処理部302、記憶部303、及び制御部304を内部に含んでいる。
制御部304は、通信部301が路側無線通信機4から受信した車両情報i4に含まれる車種情報に基づいて車両6が緊急車両であると判断した場合、処理部302で判定された車載通信機7が存在している方路に基づいて、FASTをセットする指令及びリセットする指令を選択的に出力する。制御部304から出力された指令は、通信部301から交通信号制御機5bに送信される。
【0076】
制御部304は、記憶部303に記憶されている制御判定テーブル(図19参照)を参照して、方路L1~L8毎に設定されている送信形態の種類を特定し、各送信形態に応じてFASTをセットする指令及びリセットする指令を選択的に出力する。
具体的には、送信形態がセット送信の場合、制御部304はFASTをセットする指令を出力し、送信形態がリセット送信の場合、制御部304はFASTをリセットする指令を出力する。また、送信形態が共用送信の場合、制御部304はFASTをリセットする指令およびFASTをセットする指令をこの順に連続して出力する。さらに、送信形態が併用送信の場合、制御部304は路側無線通信機4から緊急車両の車両情報i4を最初に受信したときにFASTをリセットする指令を出力し、その後、路側無線通信機4から緊急車両の車両情報i4を再び受信したときにFASTをセットする指令を出力する。
【0077】
[送信タイミングの判定処理]
図20は、路側無線通信機4により実行される送信タイミングの判定処理を示すフローチャートである。図21図24は、送信形態がセット送信、リセット送信、共用送信、及び併用送信の各場合における判定処理をそれぞれ示すフローチャートである。以下、図20図24を参照しつつ、路側無線通信機4により実行される送信タイミングの判定処理について説明する。
図20に示すように、まず、路側無線通信機4の受信部401により、車載通信機7が送信する情報データを無線受信すると(ステップST1)、当該情報データから認識される車両車種が緊急車両であるか否かを確認する(ステップST2)。車両車種が緊急車両でない場合は、上記ステップST1に戻る。
【0078】
上記ステップST2において、車両車種が緊急車両であると確認された場合、判断部402により、受信部401が無線受信した情報データに含まれる位置情報に基づいて、その送信元である車載通信機7が存在している方路を判断する(ステップST3)。判断された方路は記憶部405に記憶される(ステップST4)。
【0079】
次に、送信判定部406により、送信判定テーブル(図17参照)を参照して記憶部405に記憶された方路に対応する送信形態を確認する。その送信形態がセット送信である場合(ステップST5において「Yes」の場合)、送信判定部406はセット送信に対応した判定処理を行う(ステップST6)。また、送信形態がリセット送信である場合(ステップST7において「Yes」の場合)、送信判定部406はリセット送信に対応した判定処理を行う(ステップST8)。また、送信形態が共用送信である場合(ステップST9において「Yes」の場合)、送信判定部406は共用送信に対応した判定処理を行う(ステップST10)。また、送信形態が併用送信である場合(ステップST9において「No」の場合)、送信判定部406は併用送信に対応した判定処理を行う(ステップST11)。
【0080】
図21に示すように、送信形態がセット送信である場合、送信判定部406は、まずFASTをセットするための送信が既に行われているか否かを確認する(ステップST21)。FASTをセットするための送信が既に行われている場合、送信判定部406は判定処理を終了する。
一方、FASTをセットするための送信が未だ行われていない場合、送信判定部406は、受信部401が無線受信した情報データに含まれる位置情報に基づいて、交差点から車載通信機7が存在する位置までの距離を算出する(ステップST22)。そして、送信判定部406は、送信判定テーブルを参照して、記憶部405に記憶された方路に対応する距離Dを特定し、ステップST22で算出された距離が第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内であるか否かを判定する(ステップST23)。
【0081】
ステップST23の判定結果が肯定的である場合、送信判定部406は、FASTをセットするための送信タイミングであると判定し、送信部404により中央装置3に車両情報i4を送信する(ステップST24)。その後、送信判定部406は、FASTをセットするための送信が行われたことを記憶部405に記憶し(ステップST25)、判定処理を終了する。
一方、ステップST23の判定結果が否定的である場合、送信判定部406は、中央装置3に車両情報i4を送信させることなく、判定処理を終了する。
【0082】
図22に示すように、送信形態がリセット送信である場合、送信判定部406は、まずFASTをリセットするための送信が既に行われているか否かを確認する(ステップST31)。FASTをリセットするための送信が既に行われている場合、送信判定部406は判定処理を終了する。
一方、FASTをリセットするための送信が未だ行われていない場合、送信判定部406は、FASTをリセットするための送信タイミングであると判定し、送信部404により中央装置3に車両情報i4を送信する(ステップST32)。その後、送信判定部406は、FASTをリセットするための送信が行われたことを記憶部405に記憶し(ステップST33)、判定処理を終了する。
【0083】
図23に示すように、送信形態が共用送信である場合、送信判定部406は、まずFASTをリセット及びセットするための送信が既に行われているか否かを確認する(ステップST41)。FASTをリセット及びセットするための送信が既に行われている場合、送信判定部406は判定処理を終了する。
一方、FASTをリセット及びセットするための送信が未だ行われていない場合、送信判定部406は、受信部401が無線受信した情報データに含まれる位置情報に基づいて、交差点から車載通信機7が存在する位置までの距離を算出する(ステップST42)。そして、送信判定部406は、送信判定テーブルを参照して、記憶部405に記憶された方路に対応する距離Dを特定し、ステップST42で算出された距離が第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内であるか否かを判定する(ステップST43)。
【0084】
ステップST43の判定結果が肯定的である場合、送信判定部406は、FASTをリセット及びセットするための送信タイミングであると判定し、送信部404により中央装置3に車両情報i4を送信する(ステップST44)。その後、送信判定部406は、FASTをリセット及びセットするための送信が行われたことを記憶部405に記憶し(ステップST45)、判定処理を終了する。
一方、ステップST43の判定結果が否定的である場合、送信判定部406は、中央装置3に車両情報i4を送信させることなく、判定処理を終了する。
【0085】
図24に示すように、送信形態が併用送信である場合、送信判定部406は、まずFASTをリセットするための送信が既に行われているか否かを確認する(ステップST51)。FASTをリセットするための送信が既に行われている場合は、ステップST54に移行する。
一方、FASTをリセットするための送信が未だ行われていない場合、送信判定部406は、FASTをリセットするための送信タイミングであると判定し、送信部404により中央装置3に車両情報i4を送信する(ステップST52)。その後、送信判定部406は、FASTをリセットするための送信が行われたことを記憶部405に記憶する(ステップST53)。
【0086】
次に、送信判定部406は、FASTをセットするための送信が既に行われているか否かを確認する(ステップST54)。FASTをセットするための送信が既に行われている場合、送信判定部406は判定処理を終了する。
一方、FASTをセットするための送信が未だ行われていない場合、送信判定部406は、受信部401が無線受信した情報データに含まれる位置情報に基づいて、交差点から車載通信機7が存在する位置までの距離を算出する(ステップST55)。そして、送信判定部406は、送信判定テーブルを参照して、記憶部405に記憶された方路に対応する距離Dを特定し、ステップST55で算出された距離が第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内であるか否かを判定する(ステップST56)。
【0087】
その際、上記ステップ52においてFASTをリセットする送信タイミングで中央装置3に車両情報i4が送信された直後は、前記算出された距離は第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内となっていないため、ステップST23の判定結果は否定的となり、送信判定部406は、一旦、判定処理を終了する。
その後、車載通信機7が上述の所定位置まで移動した時点で、再び図20のステップST1において路側無線通信機4の受信部401が車載通信機7の情報データを無線受信すると、図20のステップST3~ステップST11を経て図24に示す送信判定が再び行われる。
【0088】
この再判定では、上記のようにFASTをリセットするための送信は既に行われているため、ステップST51からステップST54、ステップST55を経てステップST56に移行し、送信判定部406により、ステップST55で算出された距離が第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内であるか否かの判定が行われる。このステップST55の判定結果が肯定的である場合、送信判定部406は、FASTをセットするための送信タイミングであると判定し、送信部404により中央装置3に車両情報i4を送信する(ステップST57)。その後、送信判定部406は、FASTをセットするための送信が行われたことを記憶部405に記憶し(ステップST58)、判定処理を終了する。
【0089】
[中央装置の指令処理]
図25は、中央装置3により実行されるFASTの指令処理を示すフローチャートである。図25に示すように、中央装置3の通信部301により、路側無線通信機4の送信部404が送信した車両情報i4を受信すると(ステップSS1)、当該車両情報i4から認識される車両車種が緊急車両であるか否かを確認する(ステップSS2)。車両車種が緊急車両でない場合は、上記ステップSS1に戻る。
【0090】
上記ステップSS2において、車両車種が緊急車両であると確認された場合、制御部304において、制御判定テーブル(図19参照)を参照して記憶部303に記憶された方路に対応する送信形態を確認する。その送信形態がセット送信である場合(ステップSS3において「Yes」の場合)、制御部304はFASTをセットする指令を通信部301に出力する(ステップSS4)。
また、送信形態がリセット送信である場合(ステップSS5において「Yes」の場合)、制御部304はFASTをリセットする指令を通信部301に出力する(ステップSS6)。
また、送信形態が共用送信である場合(ステップSS7において「Yes」の場合)、制御部304は、FASTをリセットする指令を通信部301に出力した後(ステップSS8)、FASTをセットする指令を通信部301に出力する(ステップSS9)。
【0091】
また、送信形態が併用送信である場合(ステップSS7において「No」の場合)、制御部304は、まずFASTをリセットするための送信が既に行われているか否かを確認する(ステップSS10)。FASTをリセットするための送信が既に行われている場合、送信判定部406は指令処理を終了する。
一方、FASTをリセットするための送信が未だ行われていない場合、制御部304は、FASTをリセットする指令を通信部301に出力する(ステップSS11)。その後、制御部304は、FASTをリセットする指令を出力したことを記憶部303に記憶し(ステップSS12)、ステップSS1に一旦戻る。
【0092】
そして、ステップSS1において、再び中央装置3の通信部301が路側無線通信機4からの車両情報i4を受信すると、ステップSS2、ステップSS5及びステップSS7を経て、ステップSS10に移行し、制御部304は、FASTをリセットするための送信が既に行われているか否かを確認する。ここでは、上記のようにFASTをリセットするための送信が既に行われているため、制御部304は、ステップSS13に移行し、FASTをセットする指令を通信部301に出力する。
なお、本実施形態において説明を省略した点については、第1参考例と同様である。
【0093】
以上、本実施形態の路側無線通信機4によれば、車載通信機7の位置に基づいて送信部404が中央装置3に送信する送信タイミングに該当するか否かを判定し、その判定結果が肯定的である場合に中央装置3に車両情報i4を送信するため、中央装置3に送信するデータ量を削減する(間引く)ことができる。これにより、路側無線通信機4の送信処理負荷を低減することができ、また、中央装置3の処理負荷を低減することができる。
【0094】
また、送信部404から中央装置3への送信回数は1回に設定されているため、中央装置3に送信するデータ量をさらに削減することができる。
また、送信判定部406は、車載通信機7が搭載された車両6が緊急車両である場合に、送信タイミングに該当するか否かを判定するため、緊急車両の車両情報i4を中央装置3に送信するデータ量を削減することができる。
【0095】
また、車載通信機7が所定エリア内の所定位置の近傍範囲の近傍に存在しているときに、FASTをセットさせるための車両情報i4が送信されるため、車載通信機7が前記所定エリア内に存在しているときにFASTを確実にセットさせることができる。
また、所定エリア内において予め設定されている光ビーコンの設置位置を、車載通信機7の存在を判断するための所定位置として流用することができるため、路側無線通信機4によりFASTを行うための改修量を軽減することができる。
また、路側無線通信機4は光ビーコンよりも通信範囲が広いため、仮に、緊急車両が路側無線通信機4の通信範囲に入ったときに、車載通信機7から路側無線通信機4を経由して車両情報i4を受信した中央装置3が、その車両情報i4を受信したときに緊急車両が光ビーコンの設置位置に存在するという前提で、FASTをセットする指令を交通信号制御機5bに出力する場合、緊急車両が交差点にさしかかるタイミングで適切に青信号にならないおそれが生じる。
これに対して、本実施形態では、光ビーコンの設置位置を車載通信機7の存在を判断するための所定位置としているため、緊急車両の車載通信機7から光ビーコンを経由して中央装置3に車両情報i4を送信する場合、及び緊急車両の車載通信機7から路側無線通信機4を経由して中央装置3に車両情報i4を送信する場合のいずれの場合であっても、FASTの指令を適切に行うことができる。
【0096】
また、送信判定部406は、車載通信機7が第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内又は所定の座標範囲内に存在しているか否かを判断しているため、車載通信機7が所定エリア内に存在しているか否かを容易に判断することができる。
また、車載通信機7が所定エリアに流入した時点で、FASTをリセットするための車両情報i4が送信されるため、車載通信機7が前記所定エリアに流入した時点でFASTを迅速にリセットさせることができる。
【0097】
また、所定エリア内に、送信タイミングが複数設定されているため、所定エリア内に複数の光ビーコンを設置して送信タイミングを設定する場合に比べて設置コストを抑えることができる。
また、中央装置3は、車載通信機7が所定エリアに流入した時点で路側無線通信機4から車両情報i4を受信すると、FASTをリセットする指令を出力するため、FASTをさらに迅速にリセットさせることができる。
【0098】
[変形例]
図26は、上記実施形態の制御装置の変形例を示すものであり、その制御装置の内部構成を示す機能ブロック図である。上記実施形態では中央装置3を制御装置としているが、この変形例では、上記実施形態の路側無線通信機4とは別の路側無線通信機(他の装置)14が制御装置を兼ねている。この路側無線通信機14は、受信部401、判断部402、送信部404、記憶部405、及び制御部407を内部に含んでいる。受信部401、判断部402、送信部404、記憶部405は、第1参考例の路側無線通信機4と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0099】
制御部407は、受信部401が路側無線通信機4から受信した車両情報i4に含まれる車種情報に基づいて車両6が緊急車両であると判断した場合、判断部402で判断された車載通信機7が存在している方路に基づいて、FASTをセットする指令及びリセットする指令を選択的に出力する。具体的には、制御部407は、記憶部405に記憶されている制御判定テーブル(図19参照)を参照して、判断部402で判断された方路に対応する送信形態を特定し、その送信形態に基づいて、FASTをセットする指令及びリセットする指令を選択的に出力する。制御部407から出力された指令は、送信部404から交通信号制御機5bに送信される。
【0100】
図27は、上記実施形態の路側無線通信機4及び中央装置3の他の変形例を示すものであり、(a)は路側無線通信機4の内部構成を示す機能ブロック図であり、(b)は中央装置3の内部構成を示す機能ブロック図である。上記実施形態では路側無線通信機4が送信タイミングの判定処理を行うが、この変形例では、中央装置3が送信タイミングの判定処理を行う。そして、本変形例では、路側無線通信機4と中央装置3とにより制御システムが構成されている。
【0101】
図27(a)に示すように、本変形例の路側無線通信機4は、受信部401、送信部404、及び記憶部405を内部に含んでいる。送信部404は、受信部401が無線受信した情報データ(車載通信機7の位置を識別可能な位置情報を含む)を中央装置3に送信するように構成されている。なお、送信部404は、受信部401が無線受信した情報データの一部(位置情報や速度情報等を含む)を中央装置3に送信するようにしても良い。
【0102】
図27(b)に示すように、本変形例の中央装置3は、通信部301、記憶部303、制御部304、及び制御判定部305を内部に含んでいる。通信部301は、路側無線通信機4の送信部404が送信した情報データを受信する。制御判定部305は、通信部301が受信した情報データから識別される車載通信機7の位置に基づいて、FASTに関する指令、すなわちFASTをセットする指令及びリセットする指令を出力するタイミングであるか否かをそれぞれ判定する。
【0103】
FASTをセットする指令を出力するタイミングであるか否かの判定は、例えば、上記実施形態の路側無線通信機4の送信判定部406が行う判定と同様に、通信部301が受信した情報データに含まれる位置情報に基づいて、交差点から車載通信機7が存在する位置までの距離を算出し、この算出距離が第1距離(D-α)から第2距離(D-β)までの範囲内であるか否かによって判定する。
また、FASTをリセットする指令を出力するタイミングであるか否かの判定は、例えば、上記実施形態の路側無線通信機4の送信判定部406が行う判定と同様に、車載通信機7が所定エリアに流入したか否かによって判定する。
【0104】
中央装置3の制御部304は、制御判定部305がFASTをセットする指令を出力するタイミングであると判定した場合、FASTをセットする指令を通信部301に出力する。また、制御部304は、制御判定部305がFASTをリセットする指令を出力するタイミングであると判定した場合、FASTをリセットする指令を通信部301に出力する。
なお、中央装置3の制御部304が指令を出力するタイミングを判断する場合、最初に路側無線通信機4から受信した情報データに基づいて計算した情報を、一定時間経過後に路側無線通信機4から受信した情報データにより見直すことができる。例えば、車載通信機7が交差点の遠方に位置するときに受信した情報データに基づいて、制御部304が前記タイミングを計算して指令を出力したが、車載通信機7が交差点の近傍に近づいてきたときに前記タイミングがずれてきた場合に、制御部304は再び指令を出力し直すことができる。この場合、交通信号制御機5側は、中央装置3から指令を2回以上受信することになるので、これらの指令を区別して判断できるようにすれば良い。
【0105】
以上、本変形例の制御システムによれば、路側無線通信機4が車載通信機7から取得した情報データを中央装置3に送信することで、その中央装置3側において、情報データから識別される車載通信機7の位置に基づいてFASTをセット及びリセットする指令を出力する各タイミングを容易に判定することができる。
また、本変形例では、中央装置3が、路側通信機4から車両の位置等に関する情報を受信して、FASTに関する指令を出力するタイミングの判定処理を行うが、その中央装置3には、前記判定処理を行う上位装置と、その上位装置に前記情報を提供する下位装置とを備えている。このため、前記下位装置において、車両の位置等に関する情報を、従来の光ビーコンと同一の電文フォーマットに変換することで、前記上位装置の改修量を低減することができる。
【0106】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記参考例では、宛先ポート番号又は送信元IPアドレスを用いて方路を判定しているが、送信元ポート番号又は宛先IPアドレスによって方路を判定してもよい。その際、宛先IPアドレスを用いる場合は、中央装置3側が、これらの宛先IPアドレスに対応する複数のIPアドレスを備えていればよい。
また、上記参考例では、ポート番号及びIPアドレスのうちの一方を用いて方路を判定しているが、ポート番号及びIPアドレスの両方を用いて方路を判定してもよい。
【符号の説明】
【0107】
3 中央装置
301 通信部
302 処理部
303 記憶部
304 制御部
305 制御判定部
4 路側無線通信機
401 受信部
402 判断部
404 送信部
405 記憶部
406 送信判定部
407 制御部
5 交通信号機
5a 交通信号灯器
5b 交通信号制御機
6 車両
7 車載通信機(移動体通信機)
8a 通信回線
8b 通信回線
8c 通信回線
9 路側ルータ
10 ネットワーク網
11 ルータ
12 路側ルータ
14 路側無線通信機
20 光ビーコン
21 光ビーコン制御機
22 光ビーコンヘッド
23 光通信部
24 車両感知センサ部
25 送信部
26 受信部
27 通信部
C 交差点
C’ 交差点
C1~C3 交差点
D 距離
i1 信号制御情報
i2 実行情報
i3 情報
i4 車両情報(移動体情報)
L1~L4 流入路
L5~L8 流出路
L1’~L4 ’ 流入路
L5’~L8 ’ 流出路
Pa1~Pa16 ポート
Pb1~Pb16 ポート
R 道路
S1~S8 エリア(所定エリア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27