(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】風力タービンのロータ軸受の滑り軸受要素を交換する方法及び風力タービン用のナセル
(51)【国際特許分類】
F03D 80/50 20160101AFI20220912BHJP
【FI】
F03D80/50
(21)【出願番号】P 2021531023
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 AT2019060421
(87)【国際公開番号】W WO2020118329
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】グンター ハーガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス セバスティアン ヘルツル
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0071246(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02568163(EP,A1)
【文献】特開2003-194071(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第03726751(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
F16C 17/00-17/26
F16C 21/00-27/08
F16C 33/00-33/28
F16C 35/00-39/06
F16C 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(1)のロータ軸受(8)の滑り軸受要素(14、15)を交換する方法であって、
前記ロータ軸受(8)は、内側のリング要素(12)と外側のリング要素(13)とを有し、内側のリング要素(12)と外側のリング要素(13)との間に前記滑り軸受要素(14、15)が配置され、
前記内側のリング要素(12)と前記外側のリング要素(13)が互いに対して回動可能であり
、
前記滑り軸受要素(14、15)は、複数の個々の滑り軸受パッド(24)を有し
、前記滑り軸受要素(14、15)を交換する際、個々の滑り軸受パッド(24)を次々と取り外して、新しい滑り軸受パッド(24)に交換し、
前記滑り軸受要素(14、15)の個々の滑り軸受パッド(24)を交換する際、前記内側のリング要素(12)と前記外側のリング要素(13)を取り外さ
ず、
前記内側のリング要素(12)にロータハブ(6)が取り付けられ、前記滑り軸受パッド(24)の各々は、少なくとも1つの取付手段(18)によって取り外し可能に前記ロータ軸受(8)の前記内側のリング要素(12)にそれぞれ取り付けられている、滑り軸受要素(14、15)を交換する方法において、
前記方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
複数の滑り軸受パッド(24)の1つが、負荷を受けない滑り軸受パッド交換位置へ達するまで、ナセル(2)のナセルハウジング(4)に対して前記ロータハブ(6)を回動させるステップと、
前記滑り軸受パッド交換位置にある滑り軸受パッド(24)を取り外して、取り外した滑り軸受パッド(24)の代わりに新しい滑り軸受パッド(24)を挿入するステップと、
複数の滑り軸受パッド(24)の他のものが前記滑り軸受パッド交換位置へ達するまで、前記ナセル(2)のナセルハウジング(4)に対して前記ロータハブ(6)を回動させるステップと、
前記滑り軸受パッド交換位置にある滑り軸受パッド(24)を取り外して、取り外した滑り軸受パッド(24)の代わりに新しい滑り軸受パッド(24)を挿入するステップと、
古い滑り軸受パッド(24)の全てが新しい滑り軸受パッド(24)に代えられるまで、前記ステップを実施する、
ことを特徴とする滑り軸受要素(14、15)を交換する方法。
【請求項2】
交換作業においては、個々の滑り軸受パッド(24)の全てを交換し、
個々の滑り軸受パッド(24)を交換するために、交換される滑り軸受パッド(24)は、滑り軸受パッド交換位置へ動かされ、負荷を受けない、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内側のリング要素(12)と前記外側のリング要素(13)の両方はV字状に形成され、
複数の個々の滑り軸受パッド(24)を有する第1の滑り軸受要素(14)と第2の滑り軸受要素(15)とが2つのリング要素(12、13)の間で互いに対して軸方向に離れて配置され、
2つの滑り軸受要素(14、15)は、横断面で見て互いに対して角度(17)を成して配置され、
前記ロータハブ(6)に作用するチルティングトルク(11)に基づいて、2つの滑り軸受要素(14、15)の一方はその一番上の位置(27)において、そして2つの滑り軸受要素(14、15)の他方はその一番下の位置(28)において、それぞれ負荷を受けず、滑り軸受パッド交換位置をもたらされる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ロータハブ(6)は前記内側のリング要素(12)に取り付けられ、
前記滑り軸受要素(14、15)の前記滑り軸受パッド(24)は前記内側のリング要素(12)に取り付けられ、
前記ロータハブ(6)から遠く離れた前記第1の滑り軸受要素(14)は一番下の位置(28)において負荷を受けず、
前記ロータハブ(6)により近い前記第2の滑り軸受要素(15)は一番上の位置(27)において負荷を受けず、
前記ロータハブ(6)の回動によって、前記滑り軸受要素(14、15)の個々の滑り軸受パッド(24)は前記滑り軸受パッド交換位置へ動かされる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記滑り軸受要素(14、15)を交換する際の各時点において、前記滑り軸受パッド(24)の少なくとも1つがロータ軸受(8)内に残る、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータハブ(6)は受容装置(29)によって受容され、前記ロータハブ(6)は前記受容装置(29)によって力を受け、その場合に交換される滑り軸受パッド(24)は負荷を受けない、ことを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
交換の際、前記滑り軸受パッド(24)は交換方向(30)において滑り面(19)に対して平行に動かされる、ことを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ軸受の滑り軸受要素を交換する方法及び風力タービン用のナセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、ロータ軸受を交換するためにロータがナセルハウジングから取り外されることが、知られている。この作業は、きわめて煩雑であり、したがって時間がかかる。停止時間において、電力は生産できないので、風力タービンの保守は、できるかぎり短い時間で行われなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、かつロータ軸受の交換をできるだけ簡単に行うことができる方法を提供することである。さらに、この方法を実施することができる、風力タービン用のナセルを提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、特許請求の範囲に記載の装置及び方法によって解決される。
【0005】
本発明は、風力タービンのロータ軸受の滑り軸受要素を交換する方法である。ロータ軸受は、内側のリング要素と外側のリング要素とを有し、それらの間に滑り軸受要素が配置されている。内側のリング要素と外側のリング要素は互いに対して回動可能である。ロータハブが内側のリング要素に、又は外側のリング要素に取り付けられている。もちろん、内側のリング要素又は外側のリング要素は、ロータハブの一部又はハウジングの一部とすることもできる。滑り軸受要素は複数の個別の滑り軸受パッドを有しており、それらがそれぞれ少なくとも1つの取付手段によって取り外し可能にロータ軸受の内側のリング要素又は外側のリング要素に取り付けられている。滑り軸受要素を交換する場合に、個々の滑り軸受パッドが次々に取り外されて、新しい滑り軸受パッドに代えられ、滑り軸受要素の個々の滑り軸受パッドを交換する際に、内側のリング要素と外側のリング要素は取り外されない。
【0006】
本発明に係る方法は、滑り軸受要素の交換及びそれに伴って風力タービンの保守をできるかぎり簡単かつ迅速に行うことができる、という利点をもたらす。それによって風力タービンは、短い保守時間の後に再びエネルギを生産することができる。特に個々の滑り軸受パッドを使用することが、これらを個々に、かつ互いに独立して風力タービンから取り外すことができ、それによってロータもしくはロータハブを取り外さずに保守を実施することができる、という利点をもたらす。
【0007】
さらに、交換作業において個々の滑り軸受パッドの全てが交換され、その場合に個々の滑り軸受パッドを交換するために、それぞれ交換される滑り軸受パッドは、負荷を受けずに滑り軸受パッド交換位置へ動かされる。交換される滑り軸受パッドを滑り軸受パッド交換位置へ動かされることによって、この滑り軸受パッドは取り外されることができる。そのためには、滑り軸受パッドを内側のリング要素又は外側のリング要素に取り付けている取付手段を外すだけで済む。ロータ軸受内に残る滑り軸受パッドは、ロータハブもしくはロータの配分された重量を支える。
【0008】
さらに、内側のリング要素も外側のリング要素もV字状に形成することができ、2つのリング要素の間に、互いに対して軸方向に離れ、それぞれ複数の個別の滑り軸受パッドを有する第1の滑り軸受要素と第2の滑り軸受要素が配置され、2つの滑り軸受要素は横断面で見て互いに対して角度をなして配置され、ロータハブに作用するチルティングトルクに基づいて、2つの滑り軸受要素の一方が一番上の位置において、また2つの滑り軸受要素の他方が一番下の位置においてそれぞれ負荷を受けずに、滑り軸受要素交換位置がもたらされる。特に、ロータ軸受がこのように構成されている場合に、個々の滑り軸受パッドを容易に交換することができるようにするために、ロータもしくはロータハブに作用する重力を利用することができる。
【0009】
さらに、ロータハブを内側のリング要素に取り付けることができ、かつ滑り要素の滑り軸受パッドを内側のリング要素に取り付けることができ、かつロータハブから遠く離隔した第1の滑り軸受要素はその一番下の位置において負荷を受けず、かつロータハブの近くに位置する第2の滑り軸受要素はその一番上の位置において負荷を受けず、かつロータハブの回動によって滑り軸受要素の個々の滑り軸受パッドが滑り軸受パッド交換位置へ動かされる。特にこのように構成されたロータ軸受において、個々の滑り軸受パッドの交換作業は簡単にできる。
【0010】
それに対して代替的に、ロータハブを外側のリング要素に固定することができ、かつ滑り軸受要素の滑り軸受パッドを外側のリング要素に固定することができ、かつロータハブから遠く離れた第1の滑り軸受要素はその一番上の位置において負荷を受けず、かつロータハブの近くに位置する第2の滑り軸受要素がその一番下の位置において負荷を受けず、かつロータハブの回動によって滑り軸受要素の個々の滑り軸受パッドが滑り軸受パッド交換位置へ移動される。特にロータ軸受がこのように構成されている場合に、個々の滑り軸受パッドの交換作業は簡単にできる。
【0011】
ある形態も可能であって、それによれば滑り軸受要素を交換する場合の時点において、滑り軸受パッドの少なくとも1つがロータ軸受内に残ることができる。それによって、任意の時点においてロータハブもしくはロータを支持することができる。
【0012】
展開によれば、本方法は以下の方法ステップを有することができる。すなわち、
滑り軸受パッドの1つが、負荷を受けない滑り軸受パッド交換位置へ達するまで、ロータハブをナセルのナセルハウジングに対して回転させるステップと、
滑り軸受パッド交換位置にある滑り軸受パッドを取り外して、取り外した滑り軸受パッドの代わりに新しい滑り軸受パッドを取り付けるステップと、
他の滑り軸受パッドが滑り軸受パッド交換位置に達するまで、ロータハブをナセルのナセルハウジングに対して回転させるステップと、
滑り軸受パッド交換位置にある滑り軸受パッドを取り外して、取り外した滑り軸受パッドの代わりに新しい滑り軸受パッドを取り付けるステップと、を有し、
古い滑り軸受パッドの全てが新しい滑り軸受パッドに交換されるまで、上記ステップを実施する。特にこれらのステップの連続が、滑り軸受パッドのできる限り簡単な交換をもたらす。
【0013】
さらに、ロータハブが受容装置によって受容され、ロータハブが受容装置によってそのような力を受け、その場合に、それぞれ交換すべき滑り軸受パッドの負荷が除去されると、効果的であり得る。受容装置によってロータ、特にロータハブとロータブレードの自重が支えられ、それによって滑り軸受パッドの交換を容易にすることができる。特に、滑り軸受パッド交換位置位置のポジションをアクティブに調節することが可能である。
【0014】
さらに、交換する際に滑り軸受パッドを交換方向においてその滑り面に対して平行に移動させることができる。特に滑り軸受パッドをその滑り面に対して平行にその駆動位置から引き出すことができる。それによって、滑り軸受パッドを取り外すために2つのリング要素を互いに離す必要がなく、滑り軸受パッドは2つのリング要素の間のその位置から引き出すことができる、という利点がもたらされる。リング要素がV字状に形成されている場合に、滑り軸受パッドはその駆動位置から対角線方向に引き出すことができる。アキシャル軸受として形成されている滑り軸受要素においては、滑り軸受パッドはその駆動位置から径方向に引き出すことができる。ラジアル軸受として形成されている滑り軸受パッドにおいては、滑り軸受パッドはその駆動位置から軸方向に引き出すことができる。
【0015】
さらに、滑り軸受パッドを取り外す前に、潤滑油溜め内にある潤滑油を排出することができる。それによって滑り軸受パッドの周面全体へ達することができる。
【0016】
本発明によれば、風力タービンのためのナセルが設けられている。すなわちナセルは、
ナセルハウジングと、
ロータハブと、
ロータハブをナセルハウジングに軸承するためのロータ軸受であって、少なくとも1つの内側のリング要素と少なくとも1つの外側のリング要素とを有し、内側のリング要素と外側のリング要素の間に少なくとも1つの滑り軸受要素が設けられているロータ軸受と、を備える。滑り軸受要素は、複数の個別の滑り軸受パッドを有し、それらが周面にわたって分配して配置されている。滑り軸受パッドは、それぞれ少なくとも1つの取付手段によって、ナセルハウジングに対して回動可能に形成されたリング要素に取り付けられている。本発明に係る滑り軸受の交換は、この種の構造において可能である。
【0017】
特別な形態によれば、ナセルハウジング内に滑り軸受パッド交換開口部が配置されており、それを通して滑り軸受パッドを案内することが可能である。これが、個々の滑り軸受パッドを簡単に交換できるという利点をもたらす。
【0018】
さらに、個々の滑り軸受パッドに雌ねじを形成することができ、その雌ねじが取付手段、特にねじと協働する。
【0019】
代替的に、個々の滑り軸受パッド内に取付インサート、特にねじインサートを受容されることができ、それが取付手段、特にねじと協働する。
【0020】
特に雌ねじ及び/又は取付インサートは、盲孔内に形成され、又は受容されることができる。
【0021】
滑り軸受要素の個々の滑り軸受パッドを交換する間、内側のリング要素と外側のリング要素が取り外されないことは、特に2つのリング要素が300mmより長く、特に100mmより長く、好ましくは5mmより長くはその駆動位置から互いに離隔しないことを、意味する。しかし特に、内側のリング要素又は外側のリング要素は回動され、及び/又はわずかに持ち上げられ、ないしは傾けられ、軸受荷重はそれぞれ交換すべき個々の滑り軸受パッド軸受から取り除かれる。言い換えると、交換作業の間、ロータハブはナセルのナセルハウジングから取り外されない。
【0022】
この明細書の意味におけるナセルは、ナセルハウジングの他にロータハブとロータハブを軸承するためのロータ軸受とを含んでいる。
【0023】
内側のリング要素もしくは外側のリング要素は、それぞれ独立した構成部品として形成することができ、それをロータハブ又はロータシャフトと、もしくはナセルハウジングと結合することができる。その代わりに、内側のリング要素がロータハブ又はロータシャフトの一体的な構成部品として形成されることも、考えられる。その代わりに、外側のリング要素がロータハブもしくはロータシャフトの一体的な構成部品として形成されることも考えられる。その代わりに、内側のリング要素がナセルハウジングの一体的な構成部品として形成されることも考えられる。その代わりに、外側のリング要素がナセルハウジングの一体的な構成部品として形成されることも考えられる。
【0024】
本発明をさらによく理解するために、以下の図を用いて本発明を詳細に説明する。
【0025】
図は、それぞれ著しく簡略化された概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】
図2はナセルの横断面を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、図
2の切断線III-IIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最初に記録しておくが、異なるように記述される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、説明内で選択された、たとえば上、下、側方などのような位置記載は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0028】
図1は、風のエネルギから電気エネルギを発生させるための風力タービンを概略的に示している。風力タービン1はナセル2を有しており、そのナセルがタワー3に回転可能に取り付けられている。ナセル2はナセルハウジング4を有しており、それがナセル2のメイン構造を形成している。ナセル2のナセルハウジング4内に、たとえば風力タービン1のジェネレータのような、電気的コンポーネントが配置されている。
【0029】
さらにロータ5が形成されており、そのロータがロータハブ6とそれに配置されたロータブレード7を有している。ロータハブ6は、ナセル2の一部と見なされる。ロータハブ6は、ロータ軸受8によってナセルハウジング4に回転移動可能に受容されている。
【0030】
ナセル2のナセルハウジング4にロータハブ6を軸承するために用いられるロータ軸受8は、半径方向力9、軸力10及びチルティングトルク11を吸収するように形成されている。軸力10は、風の力によってもたらされる。半径方向力9は、ロータ5の自重によってもたらされ、かつロータ5の重心に作用する。ロータ5の重心はロータ軸受8の外部に位置するので、ロータ軸受8内に半径方向力9によってチルティングトルク11がもたらされる。チルティングトルク11は、同様にロータブレード7の不均一な負荷によってもたらされることがある。
【0031】
本発明に係るロータ軸受8は、たとえば0.5mと5mの間の直径を有することができる。もちろん、ロータ軸受8がそれより小さいこと、あるいは大きいことも考えられる。
【0032】
図2には、ナセルハウジング4とロータハブ6が概略的な断面表示で示されており、構造、特にその寸法は著しく概略化されている。
図2から明らかなように、ロータ軸受8は少なくとも1つの内側のリング要素12と少なくとも1つの外側のリング要素13とを有することができる。内側のリング要素12と外側のリング要素13の間に、少なくとも1つの滑り軸受要素14、15が配置されている。特に、内側のリング要素12と外側のリング要素13の間に、第1の滑り軸受要素14と第2の滑り軸受要素15を配置することができる。
【0033】
図2から明らかなように、内側のリング要素12はロータハブ6と結合することができる。特に、ロータハブ6がロータシャフト16に配置されることができる。内側のリング要素12は、ロータシャフト16に直接取り付けることができる。
【0034】
もちろん、図示されない他の実施例においては、内側のリング要素12をロータハブ6に直接取り付けることもできる。
【0035】
さらに他の図示されない実施例において、もちろん、内側のリング要素12をナセルハウジング4に取り付け、ロータハブ6を外側のリング要素13と結合することもできる。
【0036】
図2から明らかなように、内側のリング要素12も外側のリング要素13もV字状に形成することができ、かつ2つのリング要素12、13の間のそれぞれV字状の側面に、軸方向に互いに離隔して2つの滑り軸受要素14、15を形成することができる。
【0037】
特に、2つの滑り軸受要素14、15は互いに対して角度17をなすように配置することができる。
図2から明らかなように、一実施例においては、滑り軸受要素14は取付手段18によって内側のリング要素12に取り付けることができる。したがって滑り軸受要素14,15と外側のリング要素13との間に滑り面19を形成することができる。滑り軸受要素14、15を
図2に示すように配置する場合に、滑り面19は同様にV字状に形成することができる。
【0038】
図示されない実施例において、2つのリング要素12、13の間の滑り軸受要素14、15は、ラジアル軸受として、及び/又はアキシャル軸受として形成することもできる。
【0039】
同様に
図2から明らかなように、ロータ軸受8の組み立てを容易にするために、内側のリング要素12はその軸方向の延びに関して分割して形成することができる。
【0040】
図示されない実施例においては、もちろん、内側のリング要素12が
図2に示す実施例におけるように、溝を形成するのではなく、V字状の配置を逆にして形成されるので、内側のリング要素12にV字状の突出部が形成されることも、考えられる。組み立てを容易にするために、外側のリング要素13をその軸方向の延びにおいて分割して形成することができる。
【0041】
図2からさらに明らかなように、潤滑油21を受容するために用いられる、潤滑油溜め20を形成することができる。駆動状態において、潤滑油溜め20は潤滑油レベル22まで潤滑油21を充填することができる。潤滑油レベル22は、滑り面19が少なくとも部分的に潤滑油レベル22の下方に位置し、したがって潤滑油溜め20内にある潤滑油21内へ浸るように、選択されている。
【0042】
滑り軸受要素14、15を交換するために、潤滑油溜め20内にある潤滑油21を排出することができる。
【0043】
特に、滑り軸受要素14、15をロータ軸線23の周りに配置することができる。
【0044】
図3は、図
2の切断線III-IIIに基づく断面を示している。
【0045】
図3から明らかなように、滑り軸受要素14、15は複数の滑り軸受パッド24を有しており、それらは周面にわたって分配して配置されている。個々の滑り軸受パッド24は、取付手段18によって内側のリング要素12と結合することができ、もしくはそれに固定することができる。特に、個々の滑り軸受パッド24は取付手段18によって互いに独立して内側のリング要素12から取り外し可能である。それによって個々の滑り軸受パッド24は、個々に、かつ互いに独立してその駆動位置から取り外され、又は交換されることができる。
【0046】
図2からさらに明らかなように、ナセルハウジング4内に1つの滑り軸受パッド交換開口部25を形成することができ、それを通して個々の滑り軸受パッド24をナセルハウジング4から取り出すことができ、その場合にナセルハウジング4を取り外す必要はない。もちろん、ナセルハウジング4内に複数の滑り軸受パッド交換開口部25を設けることもできる。
【0047】
他の実施例においては、滑り軸受パッド交換開口部25は、ロータハブ6内に同様に設けることもできる。
【0048】
滑り軸受パッド交換開口部25は、蓋26によって閉鎖されることができ、その蓋は個々の滑り軸受パッド24を交換するためにナセルハウジング4から取り外すことができる。
【0049】
図2からさらに明らかなように、滑り軸受パッド交換開口部25の1つを、第2の滑り軸受要素15の一番上の位置27に配置することができ、かつ滑り軸受パッド交換開口部25の他のものを第1の滑り軸受要素14の一番下の位置28に配置することができる。したがって第2の滑り軸受要素15の個々の滑り軸受パッド24を第2の滑り軸受要素15の一番上の位置27において交換することができる。さらに、第1の滑り軸受要素14の滑り軸受パッド24は、第1の滑り軸受要素14の一番下の位置28において交換することができる。
【0050】
さらに受容装置29を形成することができ、その受容装置を用いてロータハブ6をナセルハウジング4に取り付けることができ、それによって滑り軸受パッド24を交換するために、個々の滑り軸受要素14、15の負荷を除くことができる。
【0051】
【0052】
個々の滑り軸受パッド24を交換するための交換作業は、
図2~
図4に示されている。
【0053】
第1の方法ステップにおいて、潤滑油溜め20内にある潤滑油21をそこから排出することができる。次に、滑り軸受パッド交換開口部25を解放するために、ナセルハウジング4から蓋26を外すことができる。それによって滑り軸受パッド交換開口部25を通して個々の滑り軸受パッド24をナセルハウジング4の内部から取り出すことができ、かつ新しい滑り軸受パッド24に代えることができる。
【0054】
他の方法ステップにおいて、ロータ5をナセルハウジング4に対して、第2の滑り軸受要素15の交換すべき滑り軸受パッド24の第1のものが一番上の位置27にくるように、回動させることができる。ロータハブ6に作用するチルティングトルク11によって、第2の滑り軸受要素15の、一番上の位置27にある滑り軸受パッド24は、負荷を受けず、したがって内側のリング要素12と外側のリング要素13の間に挟持されない。特に、第2の滑り軸受要素15の、一番上の位置27にある滑り軸受パッド24の滑り面19は、外側のリング要素13に接触することがない。
【0055】
他の方法ステップにおいて、この滑り軸受パッド24を内側のリング要素12に固定する取付手段18を解除することができるので、この滑り軸受パッド24は内側のリング要素12と外側のリング要素13の間にルーズに受容されて、次の方法ステップにおいて、その位置から交換方向30に取り出すことができる。その場合に滑り軸受パッド24は、滑り軸受パッド交換開口部25を通してナセルハウジング4の内部から取り出すことができ、次に適切に廃棄し、もしくは再処理することができる。
【0056】
それに続く方法ステップにおいて、摩耗していない新しい滑り軸受パッド24を、取り外された滑り軸受パッド24の位置へ挿入し、次に取付手段18によって内側のリング要素12に取り付けることができる。次にロータ5を内側のリング要素12と共にロータ軸線23を中心に回動させることができるので、第2の滑り軸受要素15の他の滑り軸受パッド24が一番上の位置27に達する。
【0057】
次に、上述した方法と同様にして、この滑り軸受パッド24を新しい滑り軸受パッド24に交換することができる。
【0058】
次にロータ5は、他の滑り軸受パッド24を交換することができるようにするために、さらに回動させることができる。第2の滑り軸受要素15の滑り軸受パッド24の全てが交換されるまで、これらの方法ステップを繰り返すことができる。
【0059】
それと同様にして、第1の滑り軸受要素14の個々の滑り軸受パッド24をその一番下の位置28において交換することができる。
【0060】
個々の滑り軸受パッド24を交換するために、第1の方法において第1の滑り軸受要素14の全ての滑り軸受パッド24を交換し、次に第2の滑り軸受要素15の全ての滑り軸受パッド24を交換することができる。もちろん、第1の方法において第2の滑り軸受要素15の全ての滑り軸受パッド24を交換し、次に第1の滑り軸受要素14の全ての滑り軸受パッド24を交換することも、考えられる。また、他の方法においては、交換作業のために必要なロータハブ6の回転をできるだけ少なく抑えるために、第1の滑り軸受要素14の滑り軸受パッド24と第2の滑り軸受要素15の滑り軸受パッド24を交互に交換することも可能である。
【0061】
個々の滑り軸受パッド24の交換は受容装置29を用いて行うことができる。
【0062】
図4からさらに明らかなように、個々の滑り軸受パッド24内に取付インサート31、特にねじインサートが設けられ得る。
【0063】
ロータ軸受8もしくはナセル2の様々な構造において、個々の滑り軸受パッド24を様々な方法により、もしくは様々な順序で、交換することも考えられる。
【0064】
実施例は、可能な実施変形例を示しており、ここに記載するが、本発明は具体的に示された実施変形例に限定されるものではなく、むしろ個々の実施変形例を互いに様々に組み合わせることも可能であり、これらの変形可能性はこの発明による技術的に取り扱うための教示に基づいて、この技術分野で活動する当業者の裁量の範囲内にある。
【0065】
保護領域は、請求項によって定められている。しかし明細書と図面は、請求項を解釈するために利用すべきである。図示されかつ説明された様々な実施例に由来する個別特徴又は特徴の組合せは、それ自体自立した進歩的解決を表すことができる。自立した進歩的解決の基礎となる課題は、明細書から読みとることができる。
【0066】
具体的な説明内の値領域についての全ての記載は、その任意の部分領域と全ての部分領域を共に含むものであって、たとえば記載1から10は、下限の1と上限の10から始まる全ての部分領域、すなわち下限の1またはそれ以上で始まり、上限の10またはそれ以下で終了する、たとえば1から1.7、または3.2から8.1、あるいは5.5から10の全ての部分領域、を一緒に含んでいるものとする。
【0067】
最後に形式的に指摘しておくが、構造を理解しやすくするために、構成要素は一部縮尺どおりではなく、かつ/又は拡大及び/又は縮小して示されている。
【符号の説明】
【0068】
1 風力タービン
2 ナセル
3 タワー
4 ナセルハウジング
5 ロータ
6 ロータハブ
7 ロータブレード
8 ロータ軸受
9 半径方向力
10 軸力
11 チルティングトルク
12 内側のリング要素
13 外側のリング要素
14 第1の滑り軸受要素
15 第2の滑り軸受要素
16 ロータシャフト
17 角度
18 取付手段
19 滑り面
20 潤滑油溜め
21 潤滑油
22 潤滑油レベル
23 ロータ軸線
24 滑り軸受パッド
25 滑り軸受パッド交換開口部
26 蓋
27 一番上の位置
28 一番下の位置
29 受容装置
30 交換方向
31 取付インサート