(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】圧縮点火内燃機関用の複合ゾーン化酸化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220912BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220912BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20220912BHJP
B01J 23/58 20060101ALI20220912BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20220912BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20220912BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20220912BHJP
B01J 23/656 20060101ALI20220912BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220912BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20220912BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J37/02 301C
B01J37/02 101C
B01J33/00 C ZAB
B01J23/58 A
B01J29/74 A
B01J29/76 A
B01J23/63 A
B01J23/656 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/96 500
F01N3/10 A
(21)【出願番号】P 2021569960
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2020068165
(87)【国際公開番号】W WO2020260669
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】シフィー、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】コール、キーラン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ダリー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート、リー
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ミカレフ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モロー、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】プラット、ジョージ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501719(JP,A)
【文献】特表2009-522094(JP,A)
【文献】特表2016-531737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
B01D 53/96
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用
であって、かつ排気システム内の粒子状物質フィルタ(44、50)の上流の圧縮点火内燃機関(30)によって生成される排気ガ
スを処理するために、前記排気システム内で使用するための複合酸化触媒(14、16、18、20)であって、前記複合酸化触媒は、
車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用の圧縮点火内燃機関(30)によって生成される排気ガス、及び排気システム内の粒子状物質フィルタ(44、50)の上流を処理するために、前記排気システム内で使用するための複合酸化触媒(14、16、18、20)であって、前記複合酸化触媒は、
基材(5)であって、全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部(I)と第2の基材端部(O)との間に軸方向に延在する基材表面を有する、任意選択的にハニカムフロースルー基材モノリスである、基材と、
前記基材表面上及び前記基材表面に沿って軸方向に直列に配置されている、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーン(1、2、3;又は1、2、3、4)であって、長さL
1を有し、L
1<Lである、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)は、前記第1の基材端部(I)によって1つの端部において、かつ、長さL
2を有し、L
2<Lである、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)の第1の端部(19、21)によって第2の端部において画定され、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)は、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む、上面に担持された2つ以上の白金族金属成分と、を含み、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)は、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)は、第3の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、前記第2の基材端部(O)によって前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)の第2の端部において画定される、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンと、を含み、
基材体積のリットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)中の総白金族金属担持量よりも大きく、基材体積の立方リットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中の総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)中の総白金族金属担持量よりも小さく、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)は、前記第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持される、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含む、複合酸化触媒。
【請求項2】
4つの触媒ウォッシュコートゾーン(1、2、3、4)を含み、第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)と前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)との間に配置され、第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)は、第4の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、前記第2の触媒ウォッシュコートの第2の端部によって前記第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)の第1の端部(23)において、かつ、前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)の第1の端部によって前記第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)の第2の端部(17)において画定され、基材体積のリットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、前記第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)中の総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)及び前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)のそれぞれにおける総白金族金属担持量よりも大きい、請求項1に記載の複合酸化触媒。
【請求項3】
第1の触媒ウォッシュコート層(6)と、第2の触媒ウォッシュコート層(7)と、を含み、前記第1の触媒ウォッシュコート層(6)は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL
3を有し、L
3<Lであり、前記第1の基材端部(I)によって一方の端部で画定され、前記第2の触媒ウォッシュコート層(7)は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL
4を有し、L
4<Lであり、前記第2の基材端部(O)によって第2の端部において画定され、前記第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)は、前記第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び前記第2の触媒ウォッシュコート層(7)の2層重複領域を含み、前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)は、前記重複領域に含まれない前記第2の触媒ウォッシュコート層(7)の単一層を含む、請求項2に記載の複合酸化触媒。
【請求項4】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総白金族金属担持量が、元素金属として計算される3.53g/L未満(100g/ft
3未満)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項5】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の白金のパラジウムに対する重量比が、10:1≧1.5:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項6】
元素金属として計算される全体として0.18~2.19g/L(5~60g/ft
3)の、前記基材(5)上の総白金族金属担持量を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項7】
前記複合酸化触媒(14、16、18、20)中の総Pt:Pd重量比が、全体として3:2~9:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項8】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)の後に前記基材長さLに沿って直列に配列された、各連続する触媒ウォッシュコートゾーン(1、2、3;又は1、2、3、4)中の白金のパラジウムに対する質量比が、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項9】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総アルカリ土類金属担持量が、元素金属として計算される0.35~3.53g/L(10~100g/ft
3)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項10】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中(1)の総元素アルカリ土類金属の総元素白金族金属に対する重量比が、<1:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項11】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)が、電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、前記基材(5)の表面に垂直の方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有し、前記1つ以上の白金族金属成分及び/又は前記第1のアルカリ土類金属成分の濃度は、前記基材の表面に向かって垂直方向に減少する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項12】
少なくとも前記第1の耐熱性金属酸化物支持材料が、ヘテロ原子、好ましくはシリカをドープしたアルミナを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項13】
前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)がマンガンを含み、かつ/又は、前記第2の触媒ウォッシュコート層(7)がマンガンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項14】
使用時にリン及び/又は亜鉛汚染から下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)の少なくとも一部を保護するために、前記第1の基材端部(I)から軸方向に延在するウォッシュコート被覆層(G)を含み、ウォッシュコート被覆層(G)は、48.8g/L超(0.8g/in
3超)の粒子状金属酸化物担持量を含み、任意選択的に、白金族金属を担持する、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項15】
重量ディーゼル車両用の圧縮点火内燃機関(30)であって、排気システム(32)を備え、排気システムは、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合酸化触媒(42)と、前記酸化触媒の下流側に配置された煤煙フィルタ基材(44、50)と、を備え、前記複合酸化触媒(14、16、18、20)の前記第1の基材端部は上流側に向けられている、圧縮点火内燃機関。
【請求項16】
前記酸化触媒を高濃度の炭化水素燃料を含む排気ガスと接触させることにより、通常の動作条件に対して排気システム(32)内を流れる排気ガス中の高濃度の炭化水素燃料から発熱がもたらされることによって、車両用圧縮点火内燃機関の前記排気システムにおいて前記複合酸化触媒の下流に配置された煤煙フィルタ(44、50)を加熱するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合酸化触媒(14、16、18、20)の使用。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の複合酸化触媒の製造方法であって、
(a)触媒ウォッシュコート層(6)を、前記基材表面に、前記基材(5)の1つの端部(I、O)から前記基材の前記全長未満まで延在する長さ分適用する工程であって、触媒ウォッシュコート層(6)は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、工程と、
(b)前記第1の基材端部(I)によって1つの端部で画定された長さL
1のゾーン内の前記触媒ウォッシュコート層(6)に、1つ以上の白金族金属を含有する溶液を含浸させる工程と、を含み、
前記1つ以上のアルカリ土類金属成分は、工程(a)の前記触媒ウォッシュコート層(6)及び/又は工程(b)で使用される含浸溶液中に存在し、前記方法は、工程(a)の前又は工程(a)の後であるが、いずれの場合も工程(b)の前に、第2の触媒ウォッシュコート層を、前記第2の基材端部から前記基材の前記全長未満まで延在する長さ分前記基材に適用して、前記第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に前記第2の触媒ウォッシュコート層と重なるか、又は前記第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に前記第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(a’)を更に含み、前記第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用であって、かつ排気システム内の粒子状物質フィルタの上流の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合ゾーン化酸化触媒に関する。本発明は更に、複合ゾーン化酸化触媒を含む排気システム又は車両に関する。本発明はまた、下流の粒子状物質フィルタを再生するための発熱をもたらす複合ゾーン化酸化触媒の使用、及び複合ゾーン化酸化触媒を調製するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関は、一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(PM)などの汚染物質を含有する排気ガスを生成する。特に車両エンジン用の燃焼機関によって生成される排気ガス中の汚染物質の排出基準は、ますます厳しくなっている。これらの基準を満たすことができ、費用効果が高いこのような排気ガス中の汚染物質を処理及び除去するための改善された触媒及び排気システムを提供する必要がある。
【0003】
ガソリン及びディーゼルエンジンの排気ガスは、一般に、(i)一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に、及び(ii)炭化水素(HC)を水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に酸化できる触媒で処理される。三元触媒(TWC)は、典型的には、酸化反応(i)及び(ii)と同時に、窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)、水(H2O)、及び二酸化炭素(CO2)に還元することによって、ガソリンエンジンの排気ガスを処理するために用いられる。ディーゼルエンジンなどの圧縮点火機関の排気ガスは、典型的には、酸化反応(i)及び(ii)を行う酸化触媒(一般にディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれる)で処理される。いくつかのディーゼル酸化触媒はまた、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化することもでき、これは追加の下流にある排出ガス制御装置を使用するNOxの除去を支援することができる。
【0004】
圧縮点火内燃機関用の酸化触媒は、典型的には、1つ以上の白金族金属を含有する。酸化触媒に含有させるために選択される特定の白金族金属は、特定の汚染物質を目的とする反応性、及び異なる排気ガス条件、コスト、高温での耐久性、支持材料及び触媒の任意の他の成分との化学的適合性、並びに不純物による汚染に対する感受性などの様々な要因に依存する。例えば、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)はそれぞれ、圧縮点火機関の排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化することができる。パラジウムは、白金と比較して、燃料中の硫黄による汚染の影響を受けやすいが、より高い熱耐久性を有する。
【0005】
内燃機関がディーゼルエンジンなどの、車両に動力を供給するための圧縮点火機関である場合、車両は軽量ディーゼル車両又は重量ディーゼル車両であってよい。
【0006】
用語「軽量ディーゼル車両(LDV)」は、米国又は欧州法令で定義される。米国では、軽量ディーゼル車両(LDV)は、≦8,500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車両を指す。
【0007】
欧州では、軽量ディーゼル車両は、≦2610kgの基準質量(EU5/6)を用いて、カテゴリM1、M2、N1、及びN2の車両として定義されている。
【0008】
米国では、法令で定義される重量ディーゼル車両(HDV)は、連邦管轄区では>8,500ポンド(USポンド)、カリフォルニア州では14,000ポンド超(1995年以降のモデル)の定格車両総重量を有するディーゼル車両である。
【0009】
欧州では、EU法令(理事会指令2007/46/EC)に従う重量ディーゼル車両とは、物品運送用に設計かつ構成されており、3.5トン(すなわち、メートルトン)を超えるが12トン以下(N2カテゴリ)又は12トン超(N3カテゴリ)の最大質量(すなわち、「技術的に許容される最大積載質量」)を有する車両、すなわちトラック、又は、運転席に加えて9人以上の座席を備えて旅客運送用に設計かつ構成されており、5トン以下(M2カテゴリ)又は5トン超(M2カテゴリ)の最大質量を有する車両、すなわち、バス及びコーチである。中国は、大まかには欧州の定義に従う。
【0010】
日本では、HDVは、>7500kgの車両総重量を有すると定義された重量商用車両である。
【0011】
ロシア及び韓国では、重量車両の排出基準は欧州基準に基づくため、欧州の上記定義が適用される。
【0012】
ブラジルでは、HDVは、3,856kgを超える最大総重量又は2,720kgを超える空車重量を有する、旅客及び/又は物品運送用の動力車である。
【0013】
インドでは、HDVは、車両総重量>3,500kgの車両である。
【0014】
重量ディーゼルエンジンの現行の排出基準を満たすための方策は、典型的には、一連の触媒化された基材及び燃料噴射装置を備える排気システム構成を採用する。上流から下流まで(上流は排気システムに接続されている又は接続可能なエンジンに対して)順に、排気システムは、炭化水素燃料噴射装置と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、触媒煤煙フィルタ(CSF、すなわち、触媒ディーゼル微粒子フィルタ(DPF))と、尿素(アンモニア前駆体)噴射装置と、1種以上の選択的触媒還元(SCR)触媒と、アンモニア酸化(AMOX)としても知られるアンモニアスリップ(ASC)触媒と、を備える。
【0015】
通常運転中のDOCの機能は、CO及びHC排出を制御すること、下流側パッシブフィルタ再生のためNOからNO2への変換を促進すること(排気ガス中のO2よりも低い排気ガス温度でのNO2内のフィルタに保持された粒子状物質の燃焼、すなわち、いわゆるCRT(登録商標)効果)、並びに、炭化水素燃料の排気ガスへの噴射を介して行われる能動的なCSF再生中に発熱生成触媒として作用することである。誤解を避けるため、燃料噴射/発熱生成事象は通常運転中に発生しない。通常運転は、燃料噴射と発熱生成事象との間の時間であると考えられる(C.Ruehlらの以下の論文参照)。CSFは、粒子状物質(PM)の排出を制御し、NO→NO2変換を促進して、SCR性能を向上させる。アンモニアの前駆体である尿素をCSFの下流に噴射し、排気ガスと混合する。NOxは、SCR触媒上でアンモニア(NH3)との反応を介して変換され、未反応NH3は、アンモニアスリップ触媒(ASC)上で酸化される。
【0016】
SCR触媒は、窒素系還元剤、典型的には尿素などのアンモニア前駆体から誘導され得るNH3を選択的に使用してNOxの還元を触媒するように設計されており、還元剤は、SCR触媒の上流の流動排気ガス中に噴射されて、以下の主なNOx還元反応を促進する。
(1) 4NH3+4NO+O2→4N2+6H2O、
(2) 4NH3+2NO2+O2→3N2+6H2O、及び
(3) NO+NO2+2NH3→2N2+3/2 H2O(好ましい、いわゆる「高速SCR反応」)。
【0017】
反応(1)~(3)のそれぞれは並行して生じ得るが、動力学的に最も速い反応が有利であることが理解されるであろう。したがって、0.5のNO2:NOx比を含む排気ガスにおいて、速度論的に好ましい高速SCR反応が支配的である。全てではないが、ほとんどの用途において、ある程度の排気再循環(EGR)を使用して、エンジンから排出されるNOxを、その後尿素-SCR後処理によって更に低減することができるレベルまで低減する。DPFは、EGRの使用に起因して生じるエンジンから排出されるPMの増加を低減するため、並びにEuro VIの微粒子数の放出限界に対する適合性を確保するために必要とされる。高効率SCRを使用すると、一部のEuro VIエンジンは、例えば、一時的及び/又は非冷却EGRによってEGRの使用を低減し、又はEGRを完全に排除することができる。これは、3つの主要なEuro VIエンジン戦略につながっている。
1. 冷却EGR+SCR、
2. 高温(非冷却)EGR+SCR、及び
3. SCRのみ。
【0018】
これらの戦略を使用すると、典型的な重量エンジンからの排出物は、約60ppmのCO及び約10ppmの未燃炭化水素燃料である。しかしながら、全てのこのようなシステムは、ディーゼル微粒子フィルタを含む。車両用ディーゼル粒子状物質フィルタシステムは、フィルタ材料と再生技術との相互作用を伴う。「再生」は、フィルタに保持されたディーゼル粒子状物質を燃焼させる選択された方法である。再生はまれに行われるが、再生事象間の時間は、エンジン設計、通常運転中の濾過効率、通常運転中のエンジン負荷などのいくつかの要因に依存する。近年の論文によれば、重量ディーゼルトラックにおける経験的再生頻度は、3~100時間かつ23~4078マイルと様々であった(C.Ruehlら,Environ.Sci.Technl,2018,52(10),pp 5868-5874参照)。
【0019】
再生技術は、受動的、能動的、並びに受動的及び能動的両方の組み合わせのカテゴリに大別することができる。受動的システムでは、粒子状物質の酸化温度は、通常の車両運転中にフィルタが自動再生され得るレベルまで低下する。このような受動的システムの例としては、フィルタ媒体を触媒すること、フィルタ上の粒子状物質が煤燃焼を促進するための組成物触媒中に含まれるように、触媒燃料添加剤を添加すること、及び、フィルタ上に保持された粒子状物質を燃焼させるためフィルタの上流に二酸化窒素(NO2)を生成することが挙げられ、粒子状物質は、酸素中よりも低い温度でNO2中で燃焼する。これは、いわゆるCRT(登録商標)効果である(例えば、欧州特許第0341832号を参照されたい)。
【0020】
能動的システムは、フィルタ内に捕捉された粒子状物質の温度を上昇させることによって、フィルタ再生を能動的に引き起こす。実際には、これは、車両が既に持っている炭化水素燃料を燃焼させることによって、及び/又は電気加熱によって行うことができる。燃料を燃焼させるための2つの方法としては、追加燃料の後期噴射などのシリンダ内エンジン管理法、又は、排気ガス中への燃料の噴射及び燃焼、すなわち排気ガスがエンジンシリンダ自体から出た後が挙げられる。
【0021】
受動能動的システムでは、「受動的」フィルタ触媒又は上流(CRT(登録商標)効果促進)のNO酸化触媒などにより、非触媒活性システムと比較して、より低い排気ガス温度及び/又はより短い時間での能動的再生を行うことができる。いずれの場合も、能動的再生に関与する燃費のペナルティを最小化することができる(触媒の追加コスト)。より低い温度での再生はまた、熱応力を低下させ、フィルタの耐用期間を延長することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、能動的再生システム又は能動受動的再生システムに関する。
【0023】
出願人による国際公開第2013/088152(A1)号は、ディーゼルエンジン排気ガス用の触媒後処理システムを開示しており、このシステムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、DOCの下流に位置する後処理装置であって、この後処理装置は定期的な熱処理を必要とする、後処理装置と、後処理装置内で温度上昇をもたらすための手段と、を備え、かかるDOCは、DOCの残部よりも、炭化水素(HC)に対する酸化活性がより高い、0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の長さの上流ゾーンを含む。この開示は、フィルタの能動的再生中に、最初に「着火」された上流のDOCが噴射された炭化水素燃料と接触している間にもたらされた発熱が、驚くべきことに、DOCが噴射された炭化水素燃料と接触している間でさえ消火され得ることを説明している。
【0024】
米国特許出願公開第2014/0271429(A1)号は、3:1未満のPt/Pd比で、基材の基材吸入端に隣接する第1のウォッシュコートゾーンを有する基材上のゾーンコーティングされたディーゼル酸化触媒と、基材の吐出端に隣接する第2のウォッシュコートゾーンの少なくとも2倍のPGM担持量と、を含む、酸化触媒複合物であって、第1のウォッシュコートゾーンは第2のウォッシュコートゾーンよりも短い長さを有する、酸化触媒複合物を開示している。
【0025】
米国特許出願公開第2009/288402号は、吐出ゾーンより吸入ゾーン中の貴金属担持量が高く、長さが等しいか又はより短い吸入ゾーンを含有する、ゾーン化ディーゼル酸化触媒を開示している。
【0026】
欧州特許第2000639(A1)号は、高濃度炭化水素を燃焼させることができる温度の範囲が広くなるか、又は高温のガスがより急速に後段触媒に供給される方法を開示している。内燃機関から排出される排気ガスの精製方法は、排気ガスの温度を上昇させて排気ガスを精製するための触媒を使用することを含み、炭化水素が、排気ガスの流れにおける温度上昇触媒の上流側の内燃機関の排気ガス通路内に、メタン量に関して排気ガスの1,000~40,000体積ppmの量で導入されることを特徴とする。すなわち、欧州特許第‘639(A1)号で使用される定義に従って、ディーゼル燃料炭化水素化合物が16個の炭素原子の鎖である場合、この炭化水素鎖はメタン(CH4)の量の16倍を表す。
【0027】
欧州特許第‘639(A1)号の触媒は、耐熱性三次元構造体上に、(a)白金、(b)マグネシウム、アルカリ土類金属、並びに、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、及びカリウムからなる群から任意に選択されるアルカリ金属からなる群から選択される、少なくとも1種の金属の酸化物、並びに、(c)パラジウム及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの部材からなる、触媒活性成分(A)を、耐熱性無機酸化物粉末(B)上に担持し、上部に担持された触媒活性成分を有する無機酸化物粉末を担持することによって、得られる。
【0028】
出願人による国際公開第2015/015182号は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための酸化触媒であって、基材と、基材上に配置された第1のウォッシュコート領域であって、第1の白金族金属と、第1の支持材料と、を含む、第1のウォッシュコート領域と、第1のウォッシュコート領域に隣接する第2のウォッシュコート領域であって、第2の白金族金属と、第2の支持材料と、を含む、第2のウォッシュコート領域と、基材上に配置された第3のウォッシュコート領域であって、第3のウォッシュコート領域が、第3の白金族金属と、第3の支持材料と、を含み、(i)第3のウォッシュコート領域が第2のウォッシュコート領域に隣接する、又は、(ii)第2のウォッシュコート領域が第3のウォッシュコート領域上に配置又は支持される、第3のウォッシュコート領域と、を含む、酸化触媒を開示している。第1のウォッシュコート領域は、アルカリ土類金属を含んでも含まなくてもよい。
【0029】
出願人による国際公開第2014/132034(A1)号は、燃焼機関によって生成された排気ガスを処理するための酸化触媒を開示しており、この酸化触媒は、基材と、触媒層と、を含み、触媒層は、第1の支持材料と、第1の白金族金属と、第2の白金族金属と、を含み、触媒層は、基材の表面上に配置され、触媒層は、基材の表面に垂直な方向に第1の白金族金属の不均一な分布を有する。酸化触媒を使用して、このような排気ガス中の、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)もまた酸化することができる。
【0030】
国際公開第2009/076574号は、排気処理システムを開示しており、ディーゼルエンジン排気流中に存在する窒素酸化物(NOx)、粒子状物質、及びガス状炭化水素を修復するための方法が記載されている。排出処理システムは、NOx還元触媒の上流の煤煙フィルタの上流に酸化触媒を有する。酸化触媒は、軸方向長さを有する吸入ゾーンと、軸方向長さを有する吐出ゾーンとを含み、吸入ゾーンは、第1の担持量で白金及びパラジウムのうちの少なくとも1つを含み、吐出ゾーンは、第2の担持量にパラジウムを含み、吐出ゾーンは、実質的に白金を含まず、これは、白金が意図的にゾーン中に提供されないが、非意図的に金属の約1重量%未満の白金を含むことができることを意味し、第1の担持量は第2の担持量よりも大きく、吸入ゾーンの軸方向長さは吐出ゾーンの軸方向長さ以下である。ディーゼル酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒の動作範囲の約90%でディーゼル酸化触媒を通過した後、排気ガス流に実質的に追加のNO2を生成する効果がない触媒を含有する。
【0031】
出願人による国際公開第2006/056811号は、圧縮点火機関と、排気ガスを処理するための少なくとも1つの排気システム構成要素を含む圧縮点火機関用の排気システムと、少なくとも1つの排気システム構成要素を加熱するための発熱をもたらす手段であって、発熱生成手段は、触媒と、触媒上での燃焼のために炭化水素を排気ガス内に噴射するための手段とから本質的になり、触媒は、パラジウム(Pd)成分及び白金(Pt)成分の両方から本質的になる、手段と、基材モノリス上に配置された任意の支持材料と、を備える、装置を開示している。
【0032】
出願人による国際公開第2014/080200号は、圧縮点火機関の排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を処理するための酸化触媒を含む、圧縮点火機関の排気システムを開示しており、酸化触媒は、白金(Pt)成分、パラジウム(Pd)成分、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される白金族金属(PGM)成分と、アルカリ土類金属成分と、ヘテロ原子成分を組み込む修飾アルミナを含む支持材料と、基材と、を含み、白金族金属(PGM)成分、アルカリ土類金属成分、及び支持材料が、基材上に配置されている。実施例では、≧100g/ft3のアルカリ土類金属担持量を使用した軽量ディーゼル排気ガス組成物について実施した試験が示されている。
【0033】
出願人による国際公開第2014/080202号は、濾過基材上に配置された圧縮点火機関の排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を処理するための酸化触媒を含む、触媒煤煙フィルタを開示しており、酸化触媒は、白金(Pt)成分、パラジウム(Pd)成分、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される白金族金属(PGM)成分と、アルカリ土類金属成分と、ヘテロ原子成分を組み込む修飾アルミナを含む支持材料と、を含む。実施例8では、一酸化窒素の酸化が、このような触媒配合物中の酸化バリウムの存在によって影響を受けることが示されている。
【0034】
国際公開第2010/118125号は、少なくとも2つのウォッシュコート層を含む、ディーゼルエンジンの未燃炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化、並びに窒素酸化物(NOx)の還元のための酸化触媒複合物を開示しており、第1のウォッシュコートはパラジウム成分を含み、第2のウォッシュコートは白金を含有し、総白金の少なくとも約50%は触媒の後側に位置する。
【0035】
出願人による国際公開第2015/110818(A1)号は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための酸化触媒、及び酸化触媒を含む排気システムを開示している。酸化触媒は、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化するための第1のウォッシュコート領域であって、第1の白金族金属(PGM)と、第1の支持材料と、を含む、第1のウォッシュコート領域と、酸化窒素(NO)を酸化するための第2のウォッシュコート領域であって、白金(Pt)と、マンガン(Mn)と、第2の支持材料と、を含む、第2のウォッシュコート領域と、吸入端及び吐出端を有する基材と、を含み、第2のウォッシュコート領域は、排気ガスが第1のウォッシュコート領域と接触した後に、排気ガスと基材の吐出端で接触するように配置される。
【0036】
出願人による国際公開第2017/093720号は、ディーゼルエンジンによって生成された排気ガスを処理するための酸化触媒を開示しており、酸化触媒は、基材と、ディーゼルエンジンによって生成された排気ガス中の少なくとも1つのリン含有不純物及び/又は少なくとも1つの硫黄含有不純物を捕捉するための捕捉材料と、基材上に配置された触媒領域と、を含み、触媒領域は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせからなる群から選択される白金族金属(PGM)を含む触媒材料を含む。
【0037】
内燃機関の排気ガスを処理するための触媒が汚染され得る2つの基本機構、つまり、(i)汚染物質が活性部位又は触媒支持体と直接反応し、活性の低下又は活性の壊滅的な損失を引き起こす選択的汚染物、及び(ii)支持体又は活性部位の表面が汚れる(又はマスキングされる)ことにより、触媒支持体中の活性部位又は細孔へのアクセスを立体的に妨げることによって性能損失を引き起こす非選択的汚染物、があると考えられる。発明者らは、亜鉛及び(低温の)リン(リン酸液滴として)及びそれ自体の油滴(全て燃料又は潤滑剤由来)が、出願人による国際公開第2013/088152(A1)号に開示されている能動的又は能動受動的システムの酸化触媒の発熱生成機能の非選択的汚染物であることを見出した。触媒成分と化学的に反応する汚染物(機構(i))としては、(高温の)リンが挙げられ、酸化触媒の発熱生成機能を害する場合もある。排気ガス中のリン及び亜鉛の主な供給源は、無機系油、又は合成油亜鉛ジチオホスフェート(ZDTP)で使用される添加剤の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)由来である可能性が高い。これらの添加剤は、使用による摩耗から、カムシャフトなどのエンジンの移動部品を保護するために使用される。重量車両のエンジン油は、乗用車に使用されるものなどの軽量車両用エンジンで使用する潤滑剤よりも高い濃度の添加剤を有するため、亜鉛及びリン不活性化の問題は、重量車両用エンジンにとって特に問題となる。リン及び亜鉛堆積物は、排気システム内の酸化触媒及び他の触媒成分の熱失活を引き起こす可能性がある条件(すなわち、非常に高い操作温度)を除き、触媒から除去することができない。リン及び亜鉛を含む汚染及び汚染機構に関する総説は、例えば、A.J.J.Wilkins et al.,Platinum Metals Review,1990,34(1)16-24に見出すことができる。
【0038】
商品としての白金族金属は、銅などの工業的卑金属に対して経済的価値が高い、比較的希少な、天然に存在する金属化学元素である。本明細書の出願日の少し前に、ロンドン金属取引所における銅のスポット価格はUS$5,463/トンであったのに対し、白金のロンドン貴金属市場協会のスポット価格はUS$29,806,530/トンに相当するUS$845/オンス(1メートルトンは35,274オンス)であった。しかしながら、対応するパラジウムのスポット価格は、US$1,968/オンスであった。すなわち、重量基準で、現在パラジウムは白金のコストの2倍を超えている。したがって、ディーゼル酸化触媒中のパラジウム量を白金に対して低減し、可能であれば、低コストの金属元素を用いる好適な促進によって、ディーゼル酸化触媒中の白金族金属の量を低減させることに、一般的な関心が存在する。
【0039】
本発明は、一般的にディーゼル酸化触媒中に存在する白金族金属の総量を低減すること、より具体的には白金に対するパラジウムの重量を低減すること、及び/又は、所望のフィルタ吸入部温度を達成するためにより少ない量音燃料を使用して能動的フィルタ再生の効率を改善すること、及び/又は、そこから発熱を精製するために従来技術の酸化触媒の上流に噴射された同じ量の燃料に対して、より高いフィルタ吸入部温度を達成すること、及び/又は、酸化触媒の上での発熱生成を、酸化触媒吸入部におけるより低い初期の排気温度から可能にすることを目的とした、出願人による国際公開第2013/088152(A1)号に開示されている能動的又は能動受動的システムに基づくものである。更に、発明者らは、単一の基材上の複合酸化触媒、すなわち多機能触媒構成を開発し、上記目標のうちの1つ以上を、下流の触媒機能の操作のための安定したNO2生成と組み合わせることができ、下流フィルタ上の粒子状物質の燃焼に対するCRT(登録商標)効果、及び/又は選択的触媒還元(SCR)触媒に対するいわゆる高速反応の促進を含む。好ましい構成の更なる利点は、改善された炭化水素スリップ制御を有する多官能触媒である。好ましい構成では、上述の利点の1つ以上又は全てに加えて、保護床特徴部を複合酸化触媒設計に組み込むことにより、エンジン潤滑添加剤由来のリン及び/又は亜鉛による触媒汚染を低減又は防止し、それによって触媒性能、すなわち耐久性をより長期にわたって実質的に維持することができる。
【0040】
発明者らは、驚くべきことに、車両用圧縮点火機関、特に車両用重量ディーゼルエンジンのシステム内のフィルタ基材の上流に配設された酸化触媒の吸入端で、触媒ウォッシュコートゾーン内に、重量基準で同等、又は好ましくは白金リッチな白金及びパラジウムPGM成分を組み合わせることにより、所望の改善のうちの1つ以上が得られることを見出した。
【0041】
第1の態様によれば、本発明は、車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用であって、かつ排気システム内の粒子状物質フィルタの上流の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合酸化触媒を提供し、複合酸化触媒は、
全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間で軸方向に延在する基材表面を有する、基材と、基材表面上及び基材表面に沿って軸方向に直列に配置された2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、長さL1を有し、L1<Lである、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部によって1つの端部で、長さL2を有し、L2<Lである、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部で画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む、上面に支持された2つ以上の白金族金属成分と、を含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に支持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、触媒ウォッシュコートゾーンと、を含み、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きく、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持される、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分、好ましくはバリウムを含む。
【0042】
特許請求される製品はまた、以下に記載される第2~第5の発明態様のいずれかに適合されたときに、第1の基材端部が上流側に向けるべきであるという指示付きで表示され得る。
【0043】
触媒ウォッシュコートゾーンの軸長を決定する特徴は、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)での白金族金属担持量であることが理解されるであろう。典型的には、触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さに沿った任意の点での白金族金属担持量は、全体としてゾーンの軸方向長さに沿った平均の+/-20%、任意に+/-15%、例えば+/-10%以下で変動する。局在化した白金族金属担持量は、X線蛍光法(XRF)又は電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定することができる。
【0044】
第2の態様によれば、本発明は、第1の発明態様による複合酸化触媒と、複合酸化触媒の下流側に配置された煤煙フィルタ基材と、を備える、車両用圧縮点火機関のための排気システムを提供し、酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている。
【0045】
第3の態様によれば、本発明は、第2の発明態様による排気システムを備える、重量ディーゼル車両用圧縮点火内燃機関を提供し、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている。
【0046】
第4の態様によれば、本発明は、第3の発明態様による排気システムを備える重量ディーゼル車両、すなわち、上記本明細書の背景技術の項に記載されている任意の関連する地域的定義による重量車両を提供する。そのため、例えば、本出願が米国で審査されている場合、本明細書の背景技術の米国に適合する重量車両の定義が適用されるものとする。同様に、本出願が欧州特許庁の前に審査されている場合、上記本明細書の背景技術の項のEUについての重量車両の定義が適用されるものとする。
【0047】
第5の態様によれば、本発明は、複合酸化触媒を高濃度の炭化水素燃料を含む排気ガスと接触させることにより、通常の動作条件に対して排気システム内を流れる排気ガス中の高濃度の炭化水素燃料から発熱がもたらされることによって、車両用圧縮点火機関の排気システムにおいて複合酸化触媒の下流に配置された煤煙フィルタを加熱するための、第1の発明態様による複合酸化触媒の使用を提供する。
【0048】
第6の態様によれば、本発明は、車両用圧縮点火内燃機関により生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合酸化触媒、任意選択的に、第1の発明態様による複合酸化触媒の製造方法を提供し、複合酸化触媒は、全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間で軸方向に延在する基材表面を有する、基材表面上及び基材表面に沿って軸方向に直列に配置された2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、長さL1を有し、L1<Lである、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部によって1つの端部で、長さL2を有し、L2<Lである、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部で画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む、上面に支持された2つ以上の白金族金属成分と、を含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に支持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、触媒ウォッシュコートゾーンと、を含み、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きく、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持される、1つ以上の第1のアルカリ土類金属、好ましくはバリウム成分を含み、この方法は、
(a)触媒ウォッシュコート層を、基材表面に、基材の1つの端部から延在する長さ分適用する工程であって、触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、工程と、
(b)第1の基材端部によって1つの端部で画定された長さL1のゾーン内の触媒ウォッシュコート層に、1つ以上の白金族金属を含有する溶液を含浸させる工程と、を含み、
1つ以上のアルカリ土類金属成分は、工程(a)の触媒ウォッシュコート層及び/又は工程(b)で使用される含浸溶液中に存在する。工程(a)及び(b)の組み合わせにより、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で、白金とパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含む長さL1を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンに到達することであれば、工程(a)の触媒ウォッシュコート層は、白金成分、パラジウム成分、又は白金及びパラジウム成分の両方を含み得、工程(b)の溶液は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方を含み得ることが理解されるであろう。
【0049】
第7の態様では、本発明による複合酸化触媒は、第6の発明態様による方法により得られる、又は得ることができる生成物として定義することができる。
【0050】
本発明の態様のより具体的な特徴は、エンジン潤滑剤由来のリン及び/又は亜鉛汚染に耐えるための複合酸化触媒の耐久性を改善することができ、窒素酸化物(NOx)の選択的触媒還元などの下流プロセスのNO酸化の管理を改善することができ、かつ、本発明による複合酸化触媒中の白金に対するパラジウムの相対量を制限することによりコストを低減することができる。
【0051】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、全長Lを有するフロースルーハニカム基材モノリス(5)の吸入端(I)に配置された第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)と、基材(5)の吐出端(O)に配置された、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)に隣接する第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)と、を含む、本発明による複合酸化触媒(12)を示し、第1及び第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面上及び表面に沿って直列に配置される。すなわち、使用中、複合酸化触媒の基材は、エンジンの排気ガスが最初に吸入(又は上流)端(I)を介して複合酸化触媒に入り、吐出(又は下流)端(O)を介して複合酸化触媒を出て、排気ガス流が参照番号10で矢印によって示される方向であるように、向けられる。複合酸化触媒を排気ガスと接触させるこの同じ方向及び順序は、
図1~
図5に開示され、本明細書に記載される全ての実施形態にわたって適用される。
【0053】
図1の複合酸化触媒は、基材(5)をその軸方向長さL全体に沿って、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属塩の水溶液と、を含む、第1の触媒ウォッシュコート層でコーティングし、コーティングした部分を乾燥して焼成し、次いで、第1の触媒ウォッシュコート層でコーティングされた基材の一部分のみを、長さL
1(L
1<L)まで、比較的高濃度の1つ以上の白金族金属及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分の水溶液を含浸させ、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)を形成することによって作製でき、第2の触媒ウォッシュコート(2)は、未含浸の第1の触媒ウォッシュコート層を含む。あるいは、含浸媒体中に存在するアルカリ土類金属成分ではなく、第1の触媒ウォッシュコート層自体が1つ以上のアルカリ土類金属成分を含み得る。もちろん、アルカリ土類金属成分は、含浸媒体及び第1の触媒ウォッシュコート層の両方に存在してもよい。「含浸」技術の説明については、以下を参照されたい。この構成は、最終生成物において、長さL
1を有する第1の触媒ウォッシュコート層の部分が、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含むようになっている。
【0054】
あるいは、
図1に示される複合酸化触媒は、基材(5)を、その第1の端部から、第1のウォッシュコート触媒ゾーンを形成し、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の白金族金属成分(例えば白金及びパラジウムは、唯一の白金族金属成分である)と、1つ以上のアルカリ土類金属成分と、を含むための第1の触媒ウォッシュコート層を、軸方向長さL
1(
図1中9と標示された項目を参照)で、並びに、第2の酸化触媒ゾーンを形成するための、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の第2の白金族金属と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分とを含む、第2の異なる触媒ウォッシュコート層(11と標示された項目を参照)を、軸方向長さL
2で、いずれかの順序でコーティングすることによって得られ得る、又は得ることができ得、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の第2の端部(13)及び第2の(11)触媒ウォッシュコート層の第1の端部(15)が、第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層との間で実質的に重なることなく、互いに当接する。
図1の実施形態を作製する後者の方法では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さL
1は、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の軸方向長さと同じであるか、又は実質的に同じであり、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さL
2は、第2の触媒ウォッシュコートゾーンL
2の軸方向長さと同じであるか、又は実質的に同じであることが理解されるであろう。
【0055】
図1及び
図2~
図5に示される実施形態のそれぞれは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)に重なる多孔質ウォッシュコート被覆層の好ましい任意の特徴部を保護床として含み、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、ZDDP又はZDTPなどの潤滑添加剤由来のリン及び/又は亜鉛堆積物によって汚染されることを低減又は防止する。任意の保護床特徴部(「G」)は、
図1~5の実施形態のそれぞれにおいて点線で示されている。
【0056】
【
図2】
図2は、同じ製造原理に基づいた本発明による複合酸化触媒(それぞれ14、16)を示し、すなわち、第2の触媒ウォッシュコート層(7)は、基材(5)の第2の端部(吐出端(O)に相当)から、フロースルーハニカム基材モノリス(5)の全軸長L未満の軸方向長さL
4(すなわちL
4<L)だけ適用される。第2の触媒ウォッシュコート層は、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分と、を含む。次いで、第2の触媒ウォッシュコート層(7)でコーティングされた基材は、それ自体が、第1の触媒ウォッシュコート層(6)で、基材(5)の反対側の端部(吸入端、つまり第1の基材の端部(I)に相当)から、第2の触媒ウォッシュコート層が基材(5)上へのコーティングが始まる場所までコーティングされる。第1の触媒ウォッシュコート層は、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分と、を含む。第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向コーティング長さ(L
3)は、基材の軸方向全長Lより短いが、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の長さ(L
4)と重なるのに十分な長さであり、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)が2層構造で存在する領域、すなわち「ゾーン」を形成する。第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層の重複ゾーンの軸方向長さは、「L
5」と定義することができ、
図2の「2」、すなわち、第2のウォッシュコート触媒ゾーン、及び
図3の「4」、すなわち、第4のウォッシュコート触媒ゾーンとして示される。
【
図3】
図3は、同じ製造原理に基づいた本発明による複合酸化触媒(それぞれ14、16)を示し、すなわち、第2の触媒ウォッシュコート層(7)は、基材(5)の第2の端部(吐出端(O)に相当)から、フロースルーハニカム基材モノリス(5)の全軸長L未満の軸方向長さL
4(すなわちL
4<L)だけ適用される。第2の触媒ウォッシュコート層は、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分と、を含む。次いで、第2の触媒ウォッシュコート層(7)でコーティングされた基材は、それ自体が、第1の触媒ウォッシュコート層(6)で、基材(5)の反対側の端部(吸入端、つまり第1の基材の端部(I)に相当)から、第2の触媒ウォッシュコート層が基材(5)上へのコーティングが始まる場所までコーティングされる。第1の触媒ウォッシュコート層は、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分と、を含む。第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向コーティング長さ(L
3)は、基材の軸方向全長Lより短いが、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の長さ(L
4)と重なるのに十分な長さであり、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)が2層構造で存在する領域、すなわち「ゾーン」を形成する。第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層の重複ゾーンの軸方向長さは、「L
5」と定義することができ、
図2の「2」、すなわち、第2のウォッシュコート触媒ゾーン、及び
図3の「4」、すなわち、第4のウォッシュコート触媒ゾーンとして示される。
【0057】
第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重なりを含む長さL
5のゾーンは、重複した領域内の第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の両方に存在する1つ以上の白金族金属と1つ以上のアルカリ土類金属の量の合計を含むことが理解され得る。また、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複領域が、それ自体のゾーンを表すため、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複領域の第2の(下流、つまり吐出側)端部によって第1の端部(17)において、かつ、第2の基材端部(つまり吐出端(O))によって第2の端部において画定された第2の触媒ウォッシュコート層(7)の単一層を含むゾーン(
図2及び
図3の両方で3と標示)は、直前の隣接する上流重複ゾーン(
図2のゾーン2、及び
図3のゾーン4)よりも、低い総白金族金属担持量を有することも理解され得る。
【0058】
図2に示される構成では、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複ゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンである(
図2で2と標示)。第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1と標示)であり、吸入/第1の基材端部(I)によって第1の端部において、かつ、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)の第1の(上流、すなわち吸入端に最も近い)端部(19)によって第2の端部(第2の触媒ウォッシュコート層(7)の第1の、つまり上流端に対応する点でもある)において画定される、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の全長の一部は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)よりも高い総白金族金属担持量(g/ft
3)を含む。
図2に示されるゾーン2は、第1のウォッシュコート層(6)及び第2のウォッシュコート層(7)の重なりを含むため、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向長さL
3は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)及び第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)の軸方向長さの合計と同等であることが理解され得る。また、第1のウォッシュコートゾーン(1)内に存在する第1の触媒ウォッシュコート層(6)の長さは、触媒ウォッシュコート層6の全長から、重複ゾーン2内に存在する第1のウォッシュコート層の長さを引いた長さ、すなわちL
5である。
【0059】
実際には、
図2~
図5に示される実施形態のそれぞれにおいて、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総白金族金属担持量が第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)中の総白金族金属担持量よりも高いという特徴は、下層の第1の触媒ウォッシュコート層(6)の所望の長さ(8)(L
1)を、比較的高い濃度の、例えば、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属の水性塩もまた含有する、その水溶液中の白金族金属塩を含浸させることによって得ることができる。「含浸」は、当業者に既知の方法であり、例えば、「Catalytic Air Pollution Control-Commercial Technology」3
rd Edition,Ronald M.Heck et al.,John Wiley & Sons,Inc.(2009)at paragraph 2.3に開示されている。
図2では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1と標示)の軸方向長さL
1は、実質的に、第1の触媒ウォッシュコート層(6)が第2の触媒ウォッシュコート層(7)と点19で重なり始める点までの第1の触媒ウォッシュコート層(6)の長さである。
【0060】
第1の触媒ウォッシュコート層(6)を形成するためのウォッシュコートが白金及びパラジウムのうちの1つを含まない場合、例えば、含浸媒体は、第1の触媒ウォッシュコート層(6)中にいずれも存在しない、パラジウム又は白金の溶質塩を含有すべきであり、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の所望の長さ(8)(L1)は、≧1の白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含む。もちろん、いかなる組み合わせにおいて、第1の触媒ウォッシュコート層自体は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方を含むことができ、これとは別に、含浸媒体は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方を含むことができ、すなわち、第1の触媒ウォッシュコート層及び含浸媒体のPGM含有量は、同じであっても異なっていてもよいが、これは、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の得られた所望の長さ(8)(L1)が、≧1の白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含む場合に限る。第1の触媒ウォッシュコート層(6)を形成するためのウォッシュコートが、1つ以上のアルカリ土類金属成分を含まない場合、例えば、含浸媒体は、1つ以上のアルカリ土類金属の塩を含有するべきである。もちろん、第1の触媒ウォッシュコート層(6)を形成するためのウォッシュコート及び含浸媒体の両方が、1つ以上のアルカリ土類金属を含有することも可能であり、その場合、ウォッシュコート組成物中及び含浸媒体中のアルカリ土類金属又は金属のそれぞれは、同じであっても異なっていてもよい。
【0061】
第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3と標示)は、第2の基材端部によって第2の(つまり吐出(O))端部において画定され、軸方向長さL6を有する。第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)の第1の端部、すなわち第1の基材(つまり吸入(I))端部に最も近い端部は、上記(17)として定義される。
【0062】
図2に示され、上述される構成から、各触媒ウォッシュコートゾーンは、触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの一部分のみから部分的に作製され得ることが理解され得る。したがって、下層の耐熱性金属酸化物は、触媒ウォッシュコート層が部分的である触媒ウォッシュコートゾーン中の材料を支持する。その結果、触媒ウォッシュコートゾーンが触媒ウォッシュコート層の重なりを含む場合、その重なりから形成された触媒ウォッシュコートゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料は、その重なり中に存在する触媒ウォッシュコート層のそれぞれに耐熱性金属酸化物支持体を含むことになる。そのため、重複ゾーンにおける第1の触媒ウォッシュコート層内の耐熱性金属酸化物支持材料が、第2の触媒ウォッシュコート層内の耐熱性金属酸化物支持材料とは異なる場合、全体として、重複する触媒ウォッシュコートゾーン中に2つ(又はそれ以上)の耐熱性金属酸化物支持材料が存在する。当然ながら、個々の触媒ウォッシュコート層が、2つ以上の異なる耐熱性金属酸化物支持材料を含むことも可能であり、この場合、触媒ウォッシュコート層の単層から形成された触媒ウォッシュコートゾーンは、2つ以上の異なる耐熱性金属酸化物支持材料を含有する。同様に、耐熱性金属酸化物支持材料が、重複によって基材上に触媒ウォッシュコートゾーンを形成する2つの触媒ウォッシュコート層のそれぞれにおいて同じである場合、その重複する触媒ウォッシュコートゾーンには1つのみの耐熱性金属酸化物支持材料が存在する。
【0063】
図3に示される構成は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1と標示)の軸方向長さL
1が、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層(6)でコーティングされた基材(5)のより短い長さ(8)を、比較的高濃度の水性の1つ以上の白金族金属塩及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属の塩を含浸させることによって形成された、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の単層の長さより短いことを除いて、
図2に示され、上記で説明したものと同様である。この実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2と標示)は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン1、例えば第1の触媒ウォッシュコート層(6)の含浸(8)の範囲の第2の端部(21)によって、第1の端部、すなわち第1の基材端部又は吸入部に最も近い端部において、かつ、吸入端(I)に最も近く下に第2の触媒ウォッシュコート層(7)を有する第1の触媒ウォッシュコート層(6)の重複領域の第1の端部(23)によって、第2の端部において、画定される。第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量が、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きいという特徴は、例えば、1つ以上の白金族金属成分を含む、下層の第1の触媒ウォッシュコート層に、比較的高濃度の1つ以上の白金族金属を含浸することによって満たされる。このような含浸媒体はまた、1つ以上のアルカリ土類金属の水性塩も含み得る。
【0064】
本発明の定義によれば、第3の触媒ウォッシュコート層(3と標示)は、第2の基材端部によってその第2の(つまり吐出(O))端部において画定される。したがって、
図3に示される実施形態では、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複から構成されるゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)と第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)との間に軸方向に配置されており、第4の触媒ウォッシュコートゾーンとして番号付けされ、
図3において「4」と標示される。
図3より、第1のウォッシュコート層(6)の軸方向長さは、第1(1)、第2(2)及び第4(4)の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの合計であることが理解され得る。また、ゾーン2の軸方向長さは、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向全長L
3から、重複ゾーン、すなわちL
5に等しいゾーン4と、第1の触媒ウォッシュコートゾーン1の長さL
1の両方の軸方向長さを引いたものであることが分かる。ゾーン3の軸方向長さは、第2の基材端部によって第2の(吐出(O)、つまり下流端)において画定され、軸方向長さL
6を有する。
【0065】
【
図4】示される構成(それぞれ、複合酸化触媒18及び20)は、
図4及び
図5に示される実施形態では、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、所望により上面に担持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分と、を含む、第1のウォッシュコート層(6)が、吸入端(I)から長さL
3まで最初にフロースルーハニカム基材モノリス(5)上にコーティングされることを除いて、それぞれ
図2及び
図3に示されるものと同様である。次いで、第1の触媒ウォッシュコート層(6)でコーティングされた基材は、それ自体が、第2の触媒ウォッシュコート層(7)(すなわち、L
4<1である長さまで)で、基材(5)の反対側の端部(吐出端(O)に相当)から、第1の触媒ウォッシュコート層(6)が基材(5)上へのコーティングが始まる場所までコーティングされる。第2の触媒ウォッシュコート層(7)の軸方向コーティング長さは、基材の軸方向全長Lより短いが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と重なるのに十分な長さであり、第2の触媒ウォッシュコート層(7)及び第1の触媒ウォッシュコート層(6)が2層のゾーンで存在する領域を形成する。繰り返しを回避するために、出願人は、類推によって、軸方向ゾーン長さ、ゾーン境界定義、総ゾーン白金族金属担持量、ゾーン耐熱性金属酸化物支持材料の説明などの記述に関して、読者には上述の説明を参照するよう勧める。
【
図5】示される構成(それぞれ、複合酸化触媒18及び20)は、
図4及び
図5に示される実施形態では、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、所望により上面に担持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分と、を含む、第1のウォッシュコート層(6)が、吸入端(I)から長さL
3まで最初にフロースルーハニカム基材モノリス(5)上にコーティングされることを除いて、それぞれ
図2及び
図3に示されるものと同様である。次いで、第1の触媒ウォッシュコート層(6)でコーティングされた基材は、それ自体が、第2の触媒ウォッシュコート層(7)(すなわち、L
4<1である長さまで)で、基材(5)の反対側の端部(吐出端(O)に相当)から、第1の触媒ウォッシュコート層(6)が基材(5)上へのコーティングが始まる場所までコーティングされる。第2の触媒ウォッシュコート層(7)の軸方向コーティング長さは、基材の軸方向全長Lより短いが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と重なるのに十分な長さであり、第2の触媒ウォッシュコート層(7)及び第1の触媒ウォッシュコート層(6)が2層のゾーンで存在する領域を形成する。繰り返しを回避するために、出願人は、類推によって、軸方向ゾーン長さ、ゾーン境界定義、総ゾーン白金族金属担持量、ゾーン耐熱性金属酸化物支持材料の説明などの記述に関して、読者には上述の説明を参照するよう勧める。
【0066】
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの層などの単一層の概略図であり、第1の白金族金属(例えば、ρΔで表される白金族金属1)の均一又は均質な分布と、第2の白金族金属(例えば、○で表される白金族金属2)の不均一(すなわち不均質)な分布とを有する。
【0067】
【
図7】
図7は、本発明の単層触媒ウォッシュコートゾーンの実施形態における、2つの白金族金属(例えば、ρΔで表される白金族金属1及び○で表される白金族金属2)の均一な分布を示す概略図である。
【0068】
【
図8A】
図8Aは、本発明の第1の態様、例えば、
図1~
図5のそれぞれに開示されているもののいずれかによる、複合酸化触媒を含む様々なシステム構成を示す。
【
図8B】
図8Bは、本発明の第1の態様、例えば、
図1~
図5のそれぞれに開示されているもののいずれかによる、複合酸化触媒を含む様々なシステム構成を示す。
【
図8C】
図8Cは、本発明の第1の態様、例えば、
図1~
図5のそれぞれに開示されているもののいずれかによる、複合酸化触媒を含む様々なシステム構成を示す。
【
図8D】
図8Dは、本発明の第1の態様、例えば、
図1~
図5のそれぞれに開示されているもののいずれかによる、複合酸化触媒を含む様々なシステム構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
誤解を避けるため、本明細書に記載される複合酸化触媒は、圧縮点火機関の通常のリーンバーン運転中に排気ガス中の汚染物質を酸化し、リーン排気ガス、主に一酸化炭素及び未燃炭化水素を生成することができるため、「酸化触媒」と称される。複合酸化触媒はまた、排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化し、CRT(登録商標)効果などの下流の触媒活性を促進することができ、かつ/又は、選択的触媒還元反応を促進することができ、そのようなNO酸化活性は、本明細書に添付の従属請求項のうちの1つ以上の特徴を使用することによって向上させることができる。ディーゼル圧縮点火機関によって生成される排気ガスを処理するために使用されることが好ましいため、「ディーゼル酸化触媒」とも称され得る。しかしながら、まれには、本発明による複合酸化触媒は、排気ガス中に導入された追加の炭化水素から発熱をもたらし、それによって下流の粒子状物質フィルタを加熱し、そのことによってそれを再生する(すなわち、上面に捕集された煤を燃焼する(能動的再生))ことを意図している。
【0070】
複合酸化触媒の活性は酸化反応に限定されるものではないが、酸化触媒は、通常のリーンバーン運転中に圧縮点火機関の排気ガス中の1つ以上の汚染物質を酸化できなくてはならない。例えば、適切な条件であると仮定して、酸化触媒は、還元剤として排気ガス中の炭化水素を使用して、還元反応、例えば、窒素酸化物(NOx)の還元(いわゆる、リーンNOx触媒作用、DeNOx触媒作用、又は炭化水素-SCR)を追加的に行える場合があり、かつ/又は、NOx及び/若しくは炭化水素の一時的な吸着など、1つ以上の汚染物質を排気ガスから一時的に貯蔵できる場合もある。更に誤解を避けるため、排気ガス中に噴射される追加の炭化水素燃料から発熱をもたらすために複合酸化触媒を使用することは、「通常使用」ではない(上記背景技術の項における再生頻度についての説明を参照されたい)。すなわち、「正常なリーンバーン運転」は、発熱生成事象間の時間である。
【0071】
NO酸化活性に関して、好ましくは、複合酸化触媒は全体として、通常使用中に酸化触媒の動作範囲の>10%を超えて、例えば>20%、>30%、>40%又は>50%でNO酸化を促進する。これは、上記国際公開第2009/076574号に開示される酸化触媒とは著しく異なり、ここでは、ディーゼル酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒の動作範囲の約90%を超えてディーゼル酸化触媒を通過した後、排気ガス流に実質的に追加のNO2を生成する効果がない。本発明による複合酸化触媒は、酸化触媒中に、>1、例えば>1.5:1又は>2:1の白金のパラジウムに対する重量比、任意選択的に、その特定のゾーンに白金族金属のみが存在、すなわち、1:0(又は「無限」(∞))の白金のパラジウムに対する重量比であるとき、白金のみを有する少なくとも1つのゾーンを含むことによって、これを行う。任意選択的に、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外の触媒ウォッシュコートゾーンについては、そのような他のゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外のゾーンに存在するアルカリ土類金属担持量が少ない、又は実質的にアルカリ土類金属が存在しない場合、増加したNO酸化を示す場合がある。
【0072】
第1の態様によれば、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され得る。すなわち、複合酸化触媒は全体として、2つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む(例えば、
図1に示される構成を参照されたい)。
【0073】
2つの触媒ウォッシュコートゾーンを有するこのような触媒を製造する方法は、第6の発明態様による方法を含み、工程(a)において、触媒ウォッシュコートは、基材の全長Lに沿って延在する。この方法では、第1の耐熱性金属酸化物支持材料は、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と同じであることが理解されるであろう。あるいは、
図1に示される複合酸化触媒は、基材(5)を、その第1の端部から、第1のウォッシュコート触媒ゾーンを形成し、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の白金族金属成分と、1つ以上のアルカリ土類金属成分と、を含むための第1の触媒ウォッシュコート層を、軸方向長さL
1(
図1中9と標示された項目を参照)で、並びに、第2の酸化触媒ゾーンを形成するための、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の第2の白金族金属と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分とを含む、第2の異なる触媒ウォッシュコート層(11と標示された項目を参照)を、軸方向長さL
2で、いずれかの順序でコーティングすることによって得られ得る、又は得ることができ得、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の第2の端部(13)及び第2の(11)触媒ウォッシュコート層の第1の端部(15)が、第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層との間で実質的に重なることなく、互いに当接する。
図1の実施形態を作製する後者の方法では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さL
1は、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の軸方向長さと同じであるか、又は実質的に同じであり、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さL
2は、第2の触媒ウォッシュコートゾーンL
2の軸方向長さと同じであるか、又は実質的に同じであることが理解されるであろう。第1の発明態様による2ゾーン複合酸化触媒の製造方法の更なる詳細は、
図1に関連して上述されている。
【0074】
あるいは、第1の態様によれば、複合酸化触媒は、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含むことができ、第3の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい。
【0075】
本発明の第1の態様による複合酸化触媒は、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含むことができ、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンと第3の触媒ウォッシュコートゾーンとの間に配置され、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第4の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、第2の触媒ウォッシュコートの第2の端部によってその第1の端部において、かつ、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第4の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンのそれぞれにおける総白金族金属担持量よりも大きい。
【0076】
好ましくは、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む本発明の第1の態様による複合酸化触媒において、複合酸化触媒は、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層を含み、第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL
3を有し、このときL
3<Lであり、第1の基材端部によって一方の端部で画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL
4を有し、このときL
4<Lであり、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む。このような複合酸化触媒の製造方法は、
図3及び
図5に示される実施形態を参照して、更に
図2及び4に示される実施形態及びそれらの関連する説明を参照して上述されている。
【0077】
3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む複合酸化触媒は、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部によってその第1の端部において画定される第3の触媒ウォッシュコートゾーンを含み得る(例えば、
図2及び4に示される構成を参照)。
【0078】
このような複合酸化触媒は、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層を含み、第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL3を有し、このときL3<Lであり、第1の基材端部によって一方の端部で画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL4を有し、このときL4<Lであり、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含み得る。
【0079】
上記の3つ及び4つのゾーン構成において、好ましくは、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、本質的に白金からなる。第1及び第2の触媒ウォッシュコート層の重なりを特徴とする構成において、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属が本質的に白金からなる場合、第3の触媒ウォッシュコートゾーンを形成する第2の触媒ウォッシュコート層もまた、本質的に白金からなることが理解されるであろう。
【0080】
更に、本明細書に記載される2つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることが理解されるであろう。
【0081】
また、本明細書に記載される3つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーン、又は第2の触媒ウォッシュコートゾーン及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンの両方はそれぞれ、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることも理解されよう。
【0082】
更に、本明細書に記載される4つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンはそれぞれ、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることが理解されよう。
【0083】
更に、本明細書に記載される3つ又は4つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第1の触媒ウォッシュコート層、第2の触媒ウォッシュコート層、並びに/又は第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の両方はそれぞれ、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることが理解されよう。
【0084】
本発明による3つ又は4つのゾーンを有する複合酸化触媒を製造する方法は、第6の発明態様による方法を含み、工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、この方法は更に、工程(a)の前又は工程(a)の後であるが、いずれの場合も工程(b)の前に、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さで第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(a’)を含み、ここでは、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含み、2つの重なる層を含むウォッシュコート触媒ゾーンの白金族金属組成は、ゾーンの2つの重なる層のそれぞれに存在する総白金族金属を含むことが理解される。
【0085】
上記方法が、3つ以上のゾーンを有する本発明による複合酸化触媒を作製するために使用される場合、含浸工程の軸方向長さL
1は、軸方向基材長さに沿って存在する触媒ウォッシュコートゾーンの数を決定できることが理解されるであろう。これは、本明細書の
図2、
図3、
図4及び
図5を参照して更に説明される。
【0086】
L
1が、第1の基材端部と、第1の触媒ウォッシュコート層と第1の基材端部に最も近い第2の触媒ウォッシュコート層との重なり領域の端部を表す、第2の触媒ウォッシュコートの第1の端部との間の軸方向長さよりも短い場合、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンL
1の第2の端部によって一方の端部において、かつ、第1の触媒ウォッシュコート層の重複領域の第1の端部と第1の基材端部に最も近い第2の触媒ウォッシュコート層によって第2の端部において画定された、第1の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む。この場合、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部に最も近い第1及び第2のウォッシュコート層の重複領域の第1の端部によって画定され、白金族金属担持量(g/ft
3)は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン>第4の触媒ウォッシュコートゾーン>第2の触媒ウォッシュコートゾーンである。第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層が延在し始める基材端部の反対側の基材端部によって第2の端部において、かつ、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層が延在し始める端部に最も近い第2の触媒ウォッシュコート層との重複領域の端部によって第1の端部において画定され、すなわち、第4の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部にも対応する。この構成は、本明細書の
図3及び
図5に示される。
【0087】
L1が、第1の基材端部から第1の触媒ウォッシュコート層が第2の触媒ウォッシュコートゾーンの重複領域に入るまで延在する、第1の触媒ウォッシュコート層の単層の軸方向長さと同じ長さである場合、酸化触媒は、全体として、3つの軸方向に配置された触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第1の触媒ウォッシュコート層の酸化触媒全体は、第1の基材端部から、第1、第2、及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンとして順番に番号付けされ得る。
【0088】
あるいは、本発明による3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを有する酸化触媒は、以下のように、上記の2つの触媒ウォッシュコートゾーンを有する第6の発明態様による酸化触媒の製造方法に適合させて作製することができる。まず、基材は、その全長Lに沿って第1の触媒ウォッシュコート層でコーティングされる。次に、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第2の触媒ウォッシュコート層を、第1の触媒ウォッシュコート層の上面の第1の基材端部から、全基材長さL未満の軸方向長さまでコーティングすることができ、あるいは、第1の触媒ウォッシュコート層を、1つ以上の白金族金属塩及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属塩を含む含浸溶液で、第1の基材端部から全基材長さL未満の長さまで含浸することができる。第2の触媒ウォッシュコート層又は含浸された第1の触媒ウォッシュコート層は、基材に沿って軸方向に配置された3つの触媒ウォッシュコートゾーンの中間、つまり第2の部分を形成する。3番目に、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含み、第1の触媒ウォッシュコートゾーンL1である、第3の触媒ウォッシュコート層を、第2の触媒ウォッシュコート層の上面の第1の基材端部から第2の触媒ウォッシュコート層又は上記第2の工程の第1の含浸の軸方向長さよりも短い軸方向長さまで、コーティング(あるいは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンに相当するゾーン長さL1だけ、含浸された第1のウォッシュコート層上に含浸)することができる。第1の触媒ウォッシュコートゾーンL1の白金族金属含有量は、下層の第1の触媒ウォッシュコート層、第2の触媒ウォッシュコート層又は含浸溶液、及び第3の触媒ウォッシュコート層又は含浸溶液の白金族金属組成の組み合わせを含むが、これは、L1中に全体として、層と含浸溶液の組み合わせが、≧1の重量比で白金及びパラジウムの両方を含む場合に限ることを理解されたい。1つ以上のアルカリ土類金属成分は、第1、第2、及び/又は第3の適用工程のウォッシュコート又は含浸工程において存在し得る。
【0089】
少なくとも第3の工程は、第6の発明態様の工程(b)に対応する長さL1までの含浸として実施されることが好ましい。これは、複数の層上コーティングが、ガスの通過を可能にする基材の開放前面領域の断面積を減少させ、それによって、システム内の背圧を不必要に増加させるからである。したがって、少なくとも1つの触媒ウォッシュコートゾーンが、下層の触媒ウォッシュコート層の含浸工程、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの形成に対応する第3の工程から形成される複合酸化触媒が好ましい。
【0090】
車両用圧縮点火機関の排気システムでの使用において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンを含む本発明の第1の態様による酸化触媒の第1の基材端部は、上流側、すなわちエンジンの最も近くに向けられる。すなわち、第1の基材端部は、第1の上流側の吸入基材端部として画定され得、第2の基材端部は、第2の下流側の基材(又は吐出)端部として画定され得る。
【0091】
白金族金属担持量
一般に、本発明による複合酸化触媒中の各触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外において、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、及びこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物又は合金からなる群から選択される、1つ以上又は2つ以上の白金族金属成分を含み、本発明の第1の態様によると、≧1の白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む。触媒ウォッシュコートゾーン(第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外)が、1つの白金族金属のみを含む場合、好ましくは白金であり、すなわち、1つ以上の白金族金属成分は、本質的に白金からなるか、又は白金からなる。
【0092】
具体的には、第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層中の2つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方を含み、例えば、2つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムから本質的になるか、又は白金及びパラジウムからなる。好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層中に存在する唯一の白金族金属は、白金及びパラジウムである。第1の触媒ウォッシュコート層が白金及びパラジウムの両方を含む場合、第1の触媒ウォッシュコート層を含む任意の触媒ウォッシュコートゾーンもまた、白金及びパラジウムの両方を含むことが理解されるであろう。
【0093】
更に、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金、例えば白金及びパラジウムの両方を含み、すなわち意図的に含み、又は白金が、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中に存在する唯一の白金族金属であってもよく、例えば、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は白金からなり、又は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の2つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方からなることが好ましい。所望により、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金の含有量は、ゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された白金族金属及び卑金属(例えば、アルカリ土類金属)を含む総金属の1重量%超である。この特徴は、上記の背景技術の項で確認された国際公開第2009/076574号の開示と区別することを意図している。
【0094】
好ましくは、基材が3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含む場合、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層は、白金、例えば白金及びパラジウムの両方を含み、すなわち意図的に含み、又は白金が、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層中に存在する唯一の白金族金属のみであってもよい。所望により、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金の含有量は、ゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された白金族金属及び卑金属(例えば、アルカリ土類金属)を含む総金属の1重量%超である。この特徴は、上記の背景技術の項で確認された国際公開第2009/076574号の開示と区別することを意図している。
【0095】
好ましい構成では、白金は、第2の触媒ウォッシュコート層中の唯一の白金族金属であり、すなわち、第2の触媒ウォッシュコート層中の1つ以上の白金族金属成分は白金からなる(Pt:Pd重量比は1:0)が、これは、この特徴が、特に、
図4及び
図5に示されるような、第2の触媒ウォッシュコート層が第1の触媒ウォッシュコート層と重なる構成において、下流触媒機能の動作のためのより安定したNO
2生成をもたらすためである。したがって、安定したNO
2生成のために、第2の触媒ウォッシュコート層中の1つ以上の白金族金属成分が白金からなる構成が好ましく、このとき、第2の触媒ウォッシュコート層は第1の触媒ウォッシュコート層と重なる。白金が、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層中に存在する唯一の白金族金属である、すなわちPt:Pd重量比が1:0である好ましい構成では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層はマンガンを含む(以下参照)。
【0096】
好ましくは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは白金及びパラジウムの両方を含み、例えば、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の2つ以上の白金族金属成分が、白金及びパラジウムからなるが、これは、この特徴が炭化水素スリップ制御を改善するからである。
【0097】
したがって、一般的に、本明細書の上記背景技術の項で確認された国際公開第2009/076574号の開示と区別するために、基材の第2の(吐出)端部によってその第2の端部において画定される任意の触媒ウォッシュコートゾーンは意図的に白金を含み、所望により、触媒ウォッシュコートゾーン中の白金の含有量は、ゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された白金族金属及び卑金属(例えば、アルカリ土類金属)を含む総金属の1重量%を超える。
【0098】
典型的には、重量ディーゼルエンジン排気システムに適用するための基材上の総白金族金属担持量は、全体として(元素金属として計算)、5~60g/ft3、好ましくは8~50g/ft3である。
【0099】
基材上のPt:Pdの重量比は、全体として(元素金属として計算)、好ましくは3:2~9:1、好ましくは2:1~7:1、最も好ましくは3:1~5:1である。
【0100】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金族金属担持量(元素金属として計算)は、好ましくは100g/ft3未満、好ましくは25~75g/ft3、最も好ましくは35~65g/ft3である。第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層、一般的には単一層の第1の触媒ウォッシュコート層内に「下層の」白金族金属担持量を含み得、これはその後、乾燥及び焼成される前に、白金族金属塩の高濃度溶液で含浸されることが理解されるであろう。結果として、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び含浸溶液の両方由来の白金族金属担持量の組み合わせである。
【0101】
第2及び後続の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金族金属担持量、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属(元素金属として計算)は、使用される実施形態に依存し得る。したがって、例えば、
図1に示されるような、合計2つのゾーンのみを含む実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、好ましくは1~10g/ft
3である。
【0102】
しかしながら、第2の触媒ウォッシュコートゾーンが第1及び第2の触媒ウォッシュコート層の重複領域を含む、3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態(例えば、
図2及び4の実施形態参照)、又は、第4の触媒ウォッシュコートゾーンが第1及び第2の触媒ウォッシュコート層の重複領域を含む、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態(例えば、
図3及び5の実施形態参照)では、第2の(又は第4の)触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、10~40g/ft
3、好ましくは15~35g/ft
3であり得る。
【0103】
図2~
図5のいずれか1つに示されるような3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、1~30g/ft
3、好ましくは5~20g/ft
3であり得る。
【0104】
図3又は
図5に示されるような4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、1~30g/ft
3、好ましくは5~20g/ft
3であり得る。しかしながら、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総ウォッシュコート量は、第3の触媒ウォッシュコートゾーンよりも常に大きい。
【0105】
耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された1つ以上の白金族金属成分、及び/又は、1つ以上のアルカリ土類金属成分は、それと共にウォッシュコート層を形成する前に、耐熱性金属酸化物支持材料に予め固定することができ、そのため、このようなウォッシュコートコーティングでコーティングされた任意のウォッシュコート層全体に存在する。しかしながら、好ましい方法では、1つ以上の白金族金属成分の溶質塩、及び任意選択的に1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の溶質塩は、例えば、「新しい」耐熱性金属酸化物材料もまた含有する水性ウォッシュコートスラリー中に存在して、基材に適用され、1つ以上の白金族金属成分及び1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分は、基材上にウォッシュコートスラリーをコーティングした後、乾燥及び焼成プロセスを通じて耐熱性金属酸化物支持材料に固定される。「新しい耐熱性金属酸化物材料」とは、白金族金属成分及び/又はアルカリ土類金属成分が、耐熱性金属酸化物成分に予め固定されていないことを意味する。この方法は、エネルギー消費が低く、すなわち、最初に支持された予め固定された耐熱性金属酸化物生成物を調製し、次いでこの予め固定された生成物を使用してコーティング用ウォッシュコートスラリーを調製する2工程プロセスを回避するため、好ましい。更に、発明者らは、少なくとも第1の触媒ウォッシュコート層が、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上のアルカリ土類金属成分の不均一な分布をその厚さ全体にわたって有する(すなわち、基材の表面に垂直な方向は、触媒層の厚さを表す)、発熱生成に有利であり得ることを発見した。この有利な特徴は、白金族金属又はアルカリ土類金属が耐熱性金属酸化物支持材料に予め固定される所望の効果を達成する同程度にまで、利用可能でないか、又は利用可能ではない。
【0106】
出願人による発明のこの態様の説明については、以下を参照されたい。
【0107】
以下にも記載される第6の発明態様によれば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、部分的に、
(a)触媒ウォッシュコート層を、基材表面に、基材の1つの端部から延在する長さ分適用する工程であって、触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、工程と、
(b)第1の基材端部によって1つの端部で画定された長さL1のゾーン内の触媒ウォッシュコート層に、1つ以上の白金族金属を含有する溶液を含浸させる工程とによって、得られる又は得ることが可能である。
【0108】
したがって、触媒ウォッシュコート層、例えば、耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された1つ以上の白金族金属成分を含む第1の触媒ウォッシュコート層は、それ自体が1つ以上の白金族金属成分を含む溶液で含浸され、得られるゾーンの白金族金属組成は、下層の触媒ウォッシュコート層と含浸溶液との組み合わせであることが理解されよう。したがって、例えば、全体としての第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金対パラジウム質量(すなわち重量)比は、触媒ウォッシュコート層、すなわち第1の触媒ウォッシュコート層と含浸溶液の両方に由来する白金及びパラジウムの合計から得られる。
【0109】
更に、第6の発明態様によれば、工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、この方法は更に、工程(a)の前であるが、いずれの場合も、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さにわたって第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(b)の前に、工程(a’)を含み、ここでは、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含むことが理解されよう。
【0110】
図4及び5に関して上述したように、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコート層は第1の基材端部から延在し、第2の触媒ウォッシュコート層は第2の基材端部から延在し、それによって、第2の触媒ウォッシュコート層は、第1の触媒ウォッシュコート層と部分的に重なる。
【0111】
本発明によれば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、≧1の白金のパラジウムに対する重量比で白金(Pt)とパラジウム(Pd)の両方を含む。以下の実施例9の試料9.5から分かるように、白金に対する複合酸化触媒中のパラジウムの量を低減して、触媒中の白金族金属の総コストを低減することが一般的に望まれているが、出願人による実験データは、触媒が古くなる際に発熱生成機能に悪影響を及ぼすことなく、第1の触媒ウォッシュコートゾーンからパラジウムを完全に除去することが望ましくないことを示唆している。この点に関し、実施例9の試料9.5は、2:1のPt:Pd重量比を有する下層のウォッシュコート層をパラジウムを含まない、すなわち1:0のPt:Pd重量比の含浸媒体で含浸して、約47:1のPt:Pd重量比を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンを形成する場合、結果として生じる触媒が発熱を促進する能力が損なわれ、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは経時変化に対して安定ではない。しかしながら、より好ましくはないが、実施例9の試料9.5は、本発明の目的のために有効な複合酸化触媒のままである。
【0112】
しかしながら、実施例9はまた、2:1のPt:Pd重量比を含む下層の触媒ウォッシュコート層を、1:1、2:1、3:1及び4:1のPd:Pd重量比を有する含浸媒体で含浸させたときに生じる第1の触媒ウォッシュコートゾーンを有する経時変化させた複合酸化触媒について、<500℃の不発熱(℃)試験での吸入部温度が類似していることを示しているため、一般に、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金(Pt)対パラジウム(Pd)の重量比は、10:1≧1:1、好ましくは10:1≧1.5:1又は6:1≧1.5:1、より好ましくは4:1≧1.5:1、例えば6:1≧2:1、4:1≧1.5:1又は2:1≧1:1である。また、アルカリ土類金属成分と組み合わせると、Pt:Pd≧1:1の重量比の特徴により、発熱の着火温度が改善され(着火温度が低下する)、能動的及び能動受動的再生システムにおいて、より低い排気ガス温度からの発熱生成の増加を可能にすることも見出された。
【0113】
同等な機能について本発明による複合酸化触媒における総白金族金属コストの更なる低減は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンがより高いPt:Pd重量比、例えば、≧1.5:1、例えば好ましくは10:1≧1.5:1の範囲、又は、吐出ゾーン、例えば、予備形成されたマンガンをドープした混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む、複合酸化触媒基材の吐出端によって1つの端部で画定された第3の触媒ウォッシュコートゾーンと組み合わせて、≧2:1の重量比を含む場合に得ることができることが理解されるであろう(パラジウムの重量による現在のコストが白金のものよりも著しく高いため)。この組成を含む吐出ゾーンを有する複合酸化触媒は、実施例8に示されて発熱性能を改善しており、吐出ゾーン又は、吐出(第3の触媒ウォッシュコート)ゾーンを部分的に形成する第2の触媒ウォッシュコート層中の白金族金属をより少量で使用することを可能にし得る。
【0114】
好ましくは、特に3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属は、白金及びパラジウムの両方を含む。特に好ましい特徴では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比よりも大きい。第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金族金属担持量と組み合わせて、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中のこのPt:Pd質量比の利点は、触媒が炭化水素スリップ制御、CO酸化、及びNO酸化を改善することである。
【0115】
この点に関して、例えば、
図1に示されるような2つのゾーンからなる実施形態では、製造方法から任意の重なりを可能にする(以下の「定義」項を参照)、好ましくは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、好ましくは≧10:1、≧5:1、≧3:1又は≧2:1の重量比でパラジウムを含む、PtリッチPGM組成を含む。≧1:1のPt:Pdを含む第1の触媒ウォッシュコートゾーンと組み合わせると、Ptのみ(すなわち、Pt:Pd重量比1:0)の第2の触媒ウォッシュコートゾーンが経時変化した触媒中の発熱着火及びHCスリップに不利であることが見出されているため、この特徴が有利であることが見出されている。この点に関して、第2の触媒ウォッシュコートゾーンにおいてPtに加えPdが存在することにより、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの経時変化に対する安定性を改善することができ、すなわち、経時変化中に酸化活性を維持することができる。しかしながら、マンガンと組み合わせると、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1:0のPt:Pd重量比は、NO酸化に有益であることが判明している(実施例8及び以下を参照されたい)。
【0116】
3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む本発明による複合酸化触媒では、好ましくは白金のパラジウムに対する質量比は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンから第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3のウォッシュコートゾーンへと増加する。これは、例えば、第2の触媒ウォッシュコート層(7)が、好ましくは1:0の質量比、すなわちPtのみで実質的にPdを含まない第1の触媒ウォッシュコート層よりも高いPt:Pd質量比を有し、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中の単層の第2の触媒ウォッシュコート層が、基材上に配置された触媒ウォッシュコートゾーンのうちのいずれかのうち最も高いPt:Pd比を有するように、
図2及び
図4に示される実施形態で行うことができる。しかしながら、2つの触媒ウォッシュコートゾーンのみを含む複合酸化触媒に関連して記載されたものと同じ解説が適用されるが、すなわち、ある程度、例えば≧10:1、≧5:1、≧3:1又は≧2:1のパラジウムを含むことにより、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの経時変化に対する安定性を改善することができつつも、第1の触媒ウォッシュコートゾーンから第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーンへと増加する白金のパラジウムに対する質量比の好ましい配置を依然として維持している。3ゾーン複合酸化触媒の文脈では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中にマンガンも含む利益も参照される(実施例8及び以下を参照されたい)。
【0117】
更に、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを有する複合酸化触媒では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後、基材長さLに沿って直列に配列された吸入端における各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい。これもまた、例えば、第2の触媒ウォッシュコート層(7)が、好ましくは1:0の質量比、すなわちPtのみで実質的にPdを含まない第1の触媒ウォッシュコート層よりも高いPt:Pd質量比を有し、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中の単層の第2の触媒ウォッシュコート層が、触媒ウォッシュコートゾーンのうちのいずれかのうち最も高いPt:Pd比を有するように、
図3及び
図5に示される実施形態で行うことができる。しかしながら、2つの触媒ウォッシュコートゾーンのみを含む複合酸化触媒に関連して記載されたものと同じ解説が適用されるが、すなわち、ある程度、例えば≧10:1、≧5:1、≧3:1又は≧2:1のパラジウムを含むことにより、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの経時変化に対する安定性を改善することができつつも、第1の触媒ウォッシュコートゾーンから第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーンへと増加する白金のパラジウムに対する質量比の好ましい配置を依然として維持している。4ゾーン複合酸化触媒の文脈では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中にマンガンも含む利益も参照される(実施例8及び以下を参照されたい)。
【0118】
本発明による4ゾーン複合酸化触媒の文脈では、「吸入端における、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい」という特徴は、
図3及び
図5の触媒ウォッシュコートゾーンの番号とは異なる順序であることを理解されたい。すなわち、
図3及び
図5では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)からウォッシュコート触媒ゾーンの番号の順序は、1→2→4→3である。これは、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)が第2の基材端部(又は吐出端)によって第2の端部において画定されるためである。しかしながら、「吸入端における、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい」という特徴は、例えば、第4の触媒ウォッシュコートゾーン中のPt:Pdの質量比が、直前の第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)のものよりも大きいこと、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中のPt:Pd質量比が、直前の第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)のものよりも大きいことを必要とする。
【0119】
好ましくは、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属は、白金及びパラジウムの両方を含み、白金のパラジウムに対する質量比は、>1:1、好ましくは10:1>3:2、例えば5:1>3:2である。
【0120】
典型的には、第1の触媒ウォッシュコートゾーン又は第1の触媒ウォッシュコート層は、ロジウムを含まない。
【0121】
第2の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層がロジウムを含まないことが好ましい場合がある。
【0122】
第3又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、ロジウムを含まなくてもよい。
【0123】
本発明による複合酸化触媒は、ロジウムを実質的に含まないことが更に好ましい場合がある。
【0124】
発明者らはまた、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布が、基材の表面に垂直な方向に存在する場合、改善された発熱生成の利点が存在し得ることもまた見出した。これは、以下の見出しの下でより詳細に説明される。
【0125】
アルカリ土類金属成分
本発明による複合酸化触媒中のアルカリ土類の目的は、上述のリーンNOx触媒プロセスによる後の放出及び還元のためにNOxを貯蔵しないことが理解されるであろう。これは、アルカリ土類金属、白金族金属、及び任意選択的にセリア、ドープされたセリア又はセリア混合酸化物成分も含むことができる、リーンNOxトラップ(LNT)と呼ばれる特別に設計された触媒の目的であるが、LNTは特別にプログラムされたエンジン制御ユニットと組み合わせて使用しなければならない。このエンジン制御は、リーンである理論空燃比運転モードで動作し、その間、NOxはLNTに吸収され、運転モードでは、CO及び/又は炭化水素などの追加の還元種を含有するリッチな排気ガスのパルスがLNTと接触し、それによって吸収されたNOxを脱着し、白金族金属上のリーンNOx触媒反応を介して還元する。LNTの使用では、リーン/リッチサイクルの周期は、リーン約60秒、リッチ5秒の順である。LNTの脱硫酸は頻度が低いが、リッチ化の期間はより長くなり得る。しかしながら、脱硫酸事象の制御はまた、特別にプログラムされたエンジン制御ユニットを必要とする。
【0126】
本発明の複合酸化触媒は、少なくとも2つの顕著な理由でLNTと区別され得る。第1に、LNTは、代わりにSCR触媒を使用する重量ディーゼルエンジンからの排気ガスの処理に使用されない。これは主に、重量ディーゼル車両用のLNT触媒が、必要とされる白金族金属のコストが触媒のコストを高額にするほど、非常に大量である必要があるからである。第2に、好ましくは、本発明の複合酸化触媒は、セリア、ドープされたセリア又はセリア混合酸化物又は複合酸化物成分を実質的に含有しない。
【0127】
第1の発明態様によれば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含む。発明者らは、炭化水素燃料から発熱を生じさせる目的で、好ましくはバリウムを含むアルカリ土類金属成分の存在は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属の量を約7g/ft3低減できる程度にまで、HC変換を改善し、依然として同じ活性を有することを見出した。第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の比較的高い白金族金属担持量は、発熱反応を急速に開始し、促進する一方で、1つ以上のアルカリ土類金属の存在は、例えば焼結を軽減し、熱耐久性を改善することによってPGMを安定化させると考えられる。
【0128】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上のアルカリ土類金属成分は、好ましくはバリウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)、好ましくはBaであり、例えば、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分はバリウムからなる。
【0129】
他のアルカリ土類金属よりバリウムが好ましい理由は、以下の「ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布」で説明される。
【0130】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総アルカリ土類金属成分担持量は、元素金属として計算される10~100g/ft3、好ましくは20~80g/ft3であってよい。過度に多くのアルカリ土類金属成分は、発熱生成に有害であり得る。この点に関して、アルカリ土類金属成分の総質量の白金族金属(PGM)成分の総質量に対する比は、1:1~1:2、好ましくは1:1~50:80であり得る。
【0131】
第6の発明態様の方法によれば、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分は、工程(a)で適用される触媒ウォッシュコート層、及び/又は工程(b)の含浸溶液中に存在することができるが、好ましくは、第6の発明態様の工程(a)の触媒ウォッシュコート層、例えば第1の触媒ウォッシュコート層に存在する。これは、アルカリ土類金属、例えばバリウム塩が工程(b)の含浸媒体中に存在する場合、含浸媒体中の白金族金属塩を使用するための好ましいpH範囲を用いて制御することがより困難である場合があり、そのため、多くは、標的とする第1の触媒ウォッシュコートゾーンから吸い上げることによって移動するためである。アルカリ土類金属成分がウォッシュコート中に存在し、次にコーティング後に乾燥及び焼成される最終生成物中の最終的なアルカリ土類金属の位置をより制御できるため、この代替物が好ましい。
【0132】
1つ以上のアルカリ土類金属を含む触媒ウォッシュコート層、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層が、第6の発明態様の工程(a)において適用され、触媒ウォッシュコート層がそれ自体が1つ以上のアルカリ土類金属成分を含む第6の発明態様の工程(b)における溶液で含浸される場合、得られる含浸ゾーンの組成は、下層の触媒ウォッシュコート層及び含浸溶液中のアルカリ土類金属成分の含有量の組み合わせであることが理解されよう。
【0133】
第2の触媒ウォッシュコートゾーンはまた、好ましくはバリウムを含む1つ以上のアルカリ土類金属成分を含み得る。これは、工程(a)の第6の発明態様の触媒ウォッシュコート層、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層中に、又は複合酸化触媒が第3又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンを含む場合は第2の触媒ウォッシュコート層中に存在している、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分、好ましくはバリウム由来であり得る。第2の触媒ウォッシュコート層中に存在する1つ以上のアルカリ土類金属成分は、本明細書では、1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分と称され得る。第3及び第4の触媒ウォッシュコート層はまた、1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分、好ましくはバリウムを含んでもよい。
【0134】
発明者らはまた、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布が、基材の表面に垂直な方向に存在する場合、少なくとも第1の触媒ウォッシュコートゾーンからの改善された発熱生成の利点が存在し得ることもまた見出した。これは、以下の見出しの下でより詳細に説明される。
【0135】
耐熱性金属酸化物支持材料
第1、第2、第3、若しくは第4の耐熱性金属酸化物支持材料、又は第1及び/若しくは第2の触媒ウォッシュコート層の耐熱性金属酸化物支持材料は、それぞれ一般的に、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及び複合酸化物、又はこれらの2つ以上の混合酸化物からなる群から選択される。原則として、任意の好適な耐熱性金属酸化物支持材料を、第1の耐熱性金属酸化物支持材料として使用することができる。第1、第2、第3、若しくは第4の耐熱性金属酸化物支持材料、又は第1若しくは第2の触媒ウォッシュコート層の耐熱性金属酸化物支持材料のそれぞれの支持材料は、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。しかしながら、
図1に示される複合酸化触媒が、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)及び第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)を画定するために、第1の端部において軸長L
1まで含浸された長さLの単一ウォッシュコート層であり得る場合、第1及び第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料は同じであることが理解されるであろう。
【0136】
更に、
図2~
図5に示される3つ及び4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第1の触媒ウォッシュコート(6)で使用される耐熱性金属酸化物支持材料が「X」である場合、第1、第2、及び(存在する場合)第4の触媒ウォッシュコートゾーンが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の全長L
3の一部分のみを含むため、第1、第2、及び(存在する場合)第4の触媒ウォッシュコートゾーンのそれぞれは、それぞれ、耐熱性金属酸化物支持材料「X」を含み、すなわち、第1、第2、及び(存在する場合)第4の耐熱性金属酸化物支持材料は同じである。同様に、
図2~5に示される実施形態における第2の触媒ウォッシュコート層(7)が、耐熱性金属酸化物支持材料「Y」を含む場合、第3の触媒ウォッシュコートゾーン、及び存在する場合重複領域を含む第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の全長L
4の一部のみを含むため、これらのゾーンのそれぞれは、耐熱性金属酸化物支持材料「Y」を含む。
【0137】
好ましくは、耐熱性金属酸化物支持材料が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、及びこれらの2つ以上の複合酸化物又は混合酸化物からなる群から選択され、最も好ましくは、アルミナ、シリカ及びジルコニア、並びにこれらの2つ以上の複合酸化物又は混合酸化物からなる群から選択される。混合酸化物又は複合酸化物としては、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニア、最も好ましくはシリカ-アルミナが挙げられる。好ましくは、耐熱性金属酸化物支持材料は、セリア、又はセリアを含む混合酸化物若しくは複合酸化物を含まない。より好ましくは、耐熱性酸化物は、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナからなる群から選択される。耐熱性酸化物はアルミナであってもよい。耐熱性酸化物はシリカであってもよい。耐熱性酸化物はシリカ-アルミナであってもよい。
【0138】
第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含むため、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン又は下層の触媒ウォッシュコート、例えば第1の触媒ウォッシュコートの第1の耐熱性金属酸化物支持材料は、ヘテロ原子成分をドープしたアルミナを含むか、又はそれから本質的になる。ヘテロ原子成分は、典型的には、ケイ素、マンガン(以下を参照)、マグネシウム、バリウム、ランタン、セリウム、チタン、若しくはジルコニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む。ヘテロ原子成分は、ケイ素の酸化物、マンガンの酸化物、マグネシウムの酸化物、バリウムの酸化物、ランタンの酸化物、セリウムの酸化物、チタンの酸化物、又はジルコニウムの酸化物を含み得るか、又はこれらから本質的になり得る、又はこれらからなり得る。より好ましくは、ヘテロ原子成分をドープしたアルミナは、シリカをドープしたアルミナ、又は酸化マグネシウムをドープしたアルミナ、又は酸化マンガンをドープしたアルミナである。更により好ましくは、ヘテロ原子成分をドープしたアルミナは、シリカをドープしたアルミナである。ヘテロ原子成分をドープしたアルミナは、当該技術分野において既知の方法を使用して、又は例えば、米国特許第5,045,519号に記載の方法によって調製することができる。
【0139】
ドーパントを含めることにより、耐熱性金属酸化物支持材料を安定化させるか、又は担持白金族金属の触媒反応を促進することができる。典型的には、ドーパントは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、及びこれらの酸化物からなる群から選択され得る。一般に、ドーパントは、耐熱性金属酸化物(すなわち、耐熱性金属酸化物のカチオン)とは異なる。したがって、例えば、耐熱性金属酸化物がチタニアである場合、ドーパントはチタン又はその酸化物ではない。
【0140】
耐熱性金属酸化物支持材料がドーパントでドープされるとき、典型的には、耐熱性金属酸化物支持材料は、0.1~10重量%のドーパントの総量を含む。好ましくは、ドーパントの総量は0.25~7重量%、より好ましくは2.5~6.0重量%である。好ましくは、白金族金属及びアルカリ土類金属と組み合わせてこのような支持材料を含む酸化触媒が、酸化反応、例えばCO及び炭化水素酸化を促進するため、ドーパントはシリカである。
【0141】
耐熱性金属酸化物支持材料がシリカ-アルミナである場合、一般的に、耐熱性酸化物は、20~95重量%のアルミナ及び5~80重量%のシリカ(例えば、50~95重量%のアルミナ及び5~50重量%のシリカ)、好ましくは35~80重量%のアルミナ及び20~65重量%シリカ(例えば、55~80重量%アルミナ及び20~45重量%のシリカ)、更により好ましくは45~75重量%のアルミナ及び25~55重量%のシリカから本質的になる。シリカ含有量がより高い、例えばシリカ含量が約30重量%であるシリカ-アルミナは、複合酸化触媒全体に、より高い硫黄耐性を提供することができる。
【0142】
耐熱性酸化物がセリア-ジルコニアである場合、一般的に、耐熱性酸化物は、20~95重量%のセリア及び5~80重量%のジルコニア(例えば、50~95重量%のセリア及び5~50重量%のジルコニア)、好ましくは、35~80重量%のセリア及び20~65重量%のジルコニア(例えば、55~80重量%のセリア及び20~45重量%のジルコニア)、更により好ましくは45~75重量%のセリア及び25~55重量%のジルコニアから本質的になる。
【0143】
典型的には、第1及び第2の触媒ウォッシュコート層は、0.1~3.5g in-3(例えば、0.25~3.0g in-3)、好ましくは0.3~2.5g in-3、なおより好ましくは0.5~2.0g in-3、更により好ましくは0.6~1.75g in-3(例えば0.75~1.5g in-3)の第1の耐熱性金属酸化物支持材料の量を含む。
【0144】
一般に、本発明で使用する耐熱性金属酸化物支持材料は、微粒子状である。第1の支持材料は、≦50μm、好ましくは≦30μm、より好ましくは≦20μmのD90粒径を有し得る(従来のレーザー回折法によって決定される)。耐熱性金属酸化物支持材料の粒径分布は、基材への接着を補助するように選択される。粒子は、一般に粉砕によって得られる。
【0145】
加えて、第1、第2、第3、若しくは第4の耐熱性金属酸化物支持材料及び/又は第1若しくは第2の触媒ウォッシュコートの耐熱性金属酸化物支持材料のそれぞれにおける各支持材料は、炭化水素吸着剤を含んでいてもよく、又はそれから本質的になってもよく、又はそうでなくてもよい。炭化水素吸着剤は、ゼオライト、活性炭、多孔質黒鉛、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択されてもよい。存在する場合、好ましくは炭化水素吸着剤はゼオライトであり、最も好ましくはアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0146】
支持材料が炭化水素吸着剤を含む場合、典型的には、炭化水素吸着剤の総量は、0.05~3.00g in-3、特に0.10~2.00g in-3(例えば、0.2~0.8g in-3)である。
【0147】
炭化水素吸着剤がゼオライトであるとき、好ましくは、各ゼオライトは中細孔ゼオライト(例えば、最大で10個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)又は大細孔ゼオライト(例えば、最大で12個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)である。
【0148】
好適なゼオライト又はゼオライトの型の例としては、フォージャサイト(FAU)、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト(MFI)、フェリエライト、X型ゼオライト(FAU)、Y型ゼオライト(FAU)、超安定Y型ゼオライト(FAU)、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト(MTW)、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、SAPO-5ゼオライト(AFI)、オフレタイト、ベータ型ゼオライト、又は銅CHAゼオライトが挙げられる。存在する場合、ゼオライトは、好ましくは、ZSM-5(中細孔ゼオライト)、ベータ型ゼオライト(大細孔ゼオライト)又はY型ゼオライト(大細孔ゼオライト)である。存在する場合、Y型ゼオライト又はベータ型ゼオライトが好ましいが、ベータ型ゼオライトが最も好ましい。
【0149】
しかしながら、本発明によれば、ゼオライトが発熱生成事象中に水熱分解され得、これらを含むことが望ましくないため、酸化触媒(任意のリン及び/又は亜鉛保護床層を含まない、この特徴の説明については以下参照)が炭化水素吸着剤を全く、特にゼオライトに含まないことが好ましい。重量ディーゼルエンジンから放出される排気ガス温度が、炭化水素吸着が全体サイクルの炭化水素変換を改善するのに望ましい温度未満で使用中に変動することがめったにないため、重量車両用の酸化触媒に炭化水素吸着剤を含める必要性も低い。
【0150】
触媒ウォッシュコートゾーン長さ
図1に示されるような2つの触媒ウォッシュコートゾーンのみを含む実施形態では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さの<50%、好ましくは20~40%であり得る。
【0151】
しかしながら、3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、
図2~
図5のいずれか1つに示されるものは、第1のウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の15~35%であり得る。
【0152】
3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、
図2~
図5のいずれか1つに示されるものは、第1及び第2の触媒ウォッシュコート層(6、7)の重複領域の長さ、すなわち、
図2及び
図4の第2の触媒ウォッシュコートゾーンの長さ、又は
図3及び
図5の第4の触媒ウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の10~40%、好ましくは10~30%であり得る。
【0153】
3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、
図2~
図5のいずれか1つに示されるものは、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の10~40%、より好ましくは全基材長さ(L)の15~35%、例えば20~30%であり得る。
【0154】
4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、
図3及び
図5に示されるものは、
図3及び
図5の第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、全基材長さ(L)の1~40%、好ましくは5~30%であり得る。
【0155】
特に好ましい実施形態では、吸入部触媒ウォッシュコート層6は、まず、Lの約80%の長さまで基材上にコーティングされ、次いで、吐出部触媒ウォッシュコート層7は、Lの約50%の長さまで基材上にコーティングされ、すなわち、触媒ウォッシュコート層6は、Lの30%重なる。第1のウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の15~35%であり得る。
【0156】
基材の長さは変化し得るため、第1、第2、及び存在する場合、第3及び第4の触媒ウォッシュコートゾーンの長さを、軸方向全基材長さに対する軸方向長さとして、すなわち百分率又は割合として指すことがより有用である。一般に、本発明における用途を有する基材は、長さが3~6インチ、より典型的には4~6インチである。したがって、ゾーン長さの百分率×全基材長さ(L)を参照することによって、ウォッシュコート層の長さ又はウォッシュコートゾーンの長さを指すことが可能である。
【0157】
ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布
この態様は、
図6及び
図7に例示され、本明細書の図面の簡単な説明に簡潔に記載されている。
【0158】
第1の発明態様では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、基材の表面に垂直の方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有することができ、1つ以上の白金族金属成分及び/又は第1のアルカリ土類金属成分の濃度は、EPMAによって決定されるとき、基材の表面に向かって垂直方向に減少する。
【0159】
1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な垂直分布は、単一層内で達成され得ることが見出された。したがって、触媒の層によってこれらの成分の不均一な垂直分布を達成するための層化に関連する利点は、単層に満たない層を使用することによって得ることができる。
【0160】
本発明の複合酸化触媒において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を、任意選択的に、単層、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層などの触媒ウォッシュコート層(すなわち、触媒層は複数の層を含まない)である基材の表面に対して垂直な方向に有してもよい。
【0161】
好ましくは、触媒ウォッシュコート層は、その厚さ全体にわたって(すなわち、基材の表面に垂直な方向は、触媒層の厚さを表す)、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上のアルカリ土類金属成分、最も好ましくは、1つ以上の白金族金属成分及び1つ以上のアルカリ土類金属成分の両方の不均一な分布を有する。
【0162】
典型的には、触媒ウォッシュコート層は、第1の表面及び第2の表面を有する。一般に、第1の表面は、第2の表面に平行(例えば、実質的に平行)である(すなわち、第1の表面を含む平面は、第2の表面を含む平面に平行である)。第1の表面及び第2の表面は、典型的には、基材の表面に平行である。したがって、基材の表面に垂直な方向は、第1の表面及び/又は第2の表面にも垂直である。
【0163】
第1の表面と第2の表面との間の垂直距離は、一般に、触媒ウォッシュコート層の厚さである。
【0164】
第1の表面は、触媒層の露出表面であってもよく、又は追加の層(例えば、第2の層)は、第1の表面上に配置又は支持されてもよい。第1の表面は、一般に、触媒層の上側である(すなわち、上面である)。露出とは、第1の表面が別の材料によって完全に又は実質的に覆われておらず、典型的には、触媒を通過する排気ガスが第2の表面の前に第1の表面と接触することを意味する。
【0165】
第2の表面は、触媒ウォッシュコート層の露出面ではない。一般に、第2の表面は、基材の表面及び/又は別の層の表面と直接接触している。したがって、第2の表面は、一般に、触媒ウォッシュコート層の下側である(すなわち、底面又は最下面である)。
【0166】
好ましくは、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、基材の表面に向かって垂直方向に減少する(すなわち、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、第1の表面から第2の表面へと減少する)。1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、基材の表面に向かって垂直方向に連続的に減少又は不連続的に減少してもよく、好ましくは連続的に減少してもよい。したがって、例えば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、触媒ウォッシュコート層である単一層を含む場合、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、触媒ウォッシュコート層の露出面から基材の表面に向かって減少する。
【0167】
触媒ウォッシュコート層は、基材の表面に向かって垂直方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量が線形又は非線形的に減少してもよい(すなわち、第1の表面から第2の表面へ垂直方向に、第1の白金族金属の量が線形又は非線形的に減少)。
【0168】
典型的には、(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも60%は、第1の表面と、第1の表面と第2の表面との間の触媒ウォッシュコート層中の中間点又は中間面(例えば、第1の表面と第2の表面との間の垂直距離の50%)との間に分布させることができる。平面は、典型的には、第1の表面に平行である。この文脈における「中間」への言及は、一般に、第1の表面と第2の表面との間の平均中間距離を指す。(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%は、第1の表面と、第1の表面と第2の表面との間の触媒ウォッシュコート層中の中間点又は中間面との間に分布できることが好ましい。
【0169】
一般に、(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも60%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の25%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布させることができる。平面は、典型的には、第1の表面に平行である。(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の25%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布できることが好ましい。
【0170】
(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも60%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の10%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布させることができる。平面は、典型的には、第1の表面に平行である。(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の10%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布できることが好ましい。
【0171】
基材の表面に垂直な方向における第1の白金族金属の不均一な分布は、一般に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の段階的な分布であってもよい。あるいは、基材の表面に垂直な方向における第1の白金族金属の不均一な分布は、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の階段状の分布であってもよい。
【0172】
触媒ウォッシュコート層は、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の均一な水平分布又は不均一な水平分布を有し得る。
【0173】
典型的には、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に平行な方向(すなわち、長手方向平面)、及び基材の長手方向中心軸に垂直な方向(すなわち、基材の吸入端面及び/又は吐出端面に平行な方向)への分布は、均一又は不均一である。第1の白金族金属の、基材の表面に平行な方向、及び基材の長手方向中心軸に垂直な方向への分布が均一であることが好ましい。
【0174】
一般に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に平行な方向(すなわち、長手方向平面)、及び基材の長手方向中心軸に平行な方向(すなわち、基材の吸入端面及び/又は吐出端面に垂直な方向)への分布は、均一又は不均一であってよい。1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に平行な方向、及び基材の長手方向中心軸に平行な方向への分布が均一であることが好ましい。
【0175】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に垂直な方向への不均一な分布を得る方法は、1つ以上の白金族金属と、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、を含む、ウォッシュコートコーティングに含浸された1つ以上の白金族金属成分の溶質塩の習慣的な熱乾燥であり、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分は、ウォッシュコートコーティング中に、及び/又は1つ以上の白金族金属成分の溶質塩を有する含浸媒体中の溶質塩として存在する。好ましくは、第1のアルカリ土類金属成分は、1つ以上の白金族金属成分を含浸するウォッシュコートコーティング中に存在する。含浸は、例えば、Heck et al.,「Catalytic Air Pollution Control-Commercial Technology」、third edition(2009),John Wiley & Sons,Incの2.3章に記載されている、一般的な一般知識の手法である。この参照章はまた、熱乾燥及び焼成についても記載している。発明者らは、代替的な乾燥方法である、凍結乾燥(例えば、国際公開第2009/080155号を参照されたい)は、基材の表面に垂直な方向に十分によく分散したアルカリ土類金属粒子を形成し、有用な発熱がより低いことを見出した。更なる説明は、以下の「製造方法」の見出しの下で見出すことができる。
【0176】
アルカリ土類金属はバリウムであることが好ましい。発明者らは、バリウム以外のアルカリ土類金属を、例えば酢酸塩として用いる際に、非バリウムアルカリ土類金属塩は、乾燥工程において移動度が低く、したがって、ストロンチウム、カルシウム、又はマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の場合では、そのような不均一な分布を形成しない傾向があることを見出した。出願人は、例えば、いわゆる「クラスト」内の触媒ウォッシュコート層の上面における白金族金属、特にパラジウム、及びバリウムの存在が、本発明の複合酸化触媒の主要な意図である発熱生成機能に有益であると考える。したがって、好ましくは、EPMAによって測定されるとき、基材の表面に垂直な方向にバリウム成分の不均一な分布が存在することに加えて、濃度は、バリウム成分が基材の表面に向かって垂直方向に減少する場合、パラジウムの濃度もまた、基材の表面に向かって垂直方向に減少する。
【0177】
リン及び/又は亜鉛保護床
本明細書への導入において説明されるように、重量車両用潤滑剤は、比較的高い亜鉛及び/又はリンを含む添加剤含有量を有する。その結果、使用中、車両使用の耐用期間にわたって、重量車両の排気システム内の触媒は、比較的大量の亜鉛及び/又はリン化合物に曝露される。出願人の発明者らは、車両耐用期間の終了時(約1,000,000キロメートル)に、Euro 6重量ディーゼルエンジンの下流の排気システム内に配設された第1の触媒基材であった酸化触媒を分析し、基材吸入端から測定したコーティングされた基材の最初から4分の1の酸化触媒上に、1.0~1.5重量%のリンが存在することを発見した。
【0178】
本発明では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材上で最も高い白金族金属担持量を有し、使用時に吸入端に対応する第1の基材端部に画定されたゾーン内に存在する。本発明によれば、白金リッチである白金とパラジウムの組み合わせにおける白金族金属の最も高い担持量は、排気ガス中に存在する増加した炭化水素量から発熱を発生させるための複合酸化触媒の重要な特徴である。したがって、複合酸化触媒の吸入端に入る排気ガス中の触媒を汚染する亜鉛及び/又はリンの存在は、所望の発熱温度を達成するために追加の炭化水素を必要として、間接的に車両の燃費を低下させることによって、及び/又は、炭化水素の着火温度、すなわち、触媒が炭化水素を酸化し始めるために活性を生じる温度を上昇させ、そのために同じウォッシュコート組成で均一にコーティングされた酸化触媒に対して発熱を生じさせることによって、炭化水素から発熱を生じさせるための触媒の活性の低下について、不均衡な効果を有し得る(以下、実施例4、5及び6も参照)。したがって、通常は特定の発熱が生成されることが予想される比較的低温で排気ガス中に導入される炭化水素により、発熱が低下し、炭化水素スリップが増加するために、大気への炭化水素排出量が高くなる、及び/又は下流排気システム構成要素若しくはプロセスの炭化水素汚染、及び/又はオンボード診断(OBD)故障モードにつながる場合もある。
【0179】
出願人の発明者らは、複合酸化触媒機能に対するリン及び/又は亜鉛化合物の汚染効果を低減又は防止する方法を研究したところ、ウォッシュコート層を第1の触媒ウォッシュコートゾーン上の被覆層として、十分な担持量(ウォッシュコート層の厚さに相当する)で配置することによって(このとき任意に、ウォッシュコートは、十分な平均細孔径の粒子状金属酸化物を含有し、及び/又は、得られるウォッシュコートは、十分な平均粒子間孔径を有する)、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンとリン及び/又は亜鉛化合物との接触を防止又は低減することができ、触媒が使用されている間に保持される最初の触媒活性を、そのような追加の特徴を使用していない触媒よりも高い割合で保持する一方で、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンへの排気ガスの質量移動アクセスを維持する。
【0180】
したがって、好ましい構成では、本発明の第1の態様による複合酸化触媒は、使用時にリン及び/又は亜鉛汚染から下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの少なくとも一部を保護するために、第1の基材端部から軸方向に延在するウォッシュコート被覆層を含み、このウォッシュコート被覆層は、0.8g/in3以上の粒子状金属酸化物担持量を含む。
【0181】
出願人による研究は、0.5g/in3のウォッシュコート被覆層の比較的低い担持量が、1.0g/in3のウォッシュコート被覆層担持量と同程度に有効でないことが見出されたため、リン及び/又は亜鉛化合物の保護床として所望の機能を達成するために、ウォッシュコート被覆層の深さが重要であると思われることを見出した(以下、実施例4、5及び6を参照されたい)。
【0182】
ウォッシュコート被覆層は、粒子状金属酸化物から本質的になってもよく、ウォッシュコート被覆層は、処理を補助するための特定の結合剤又は添加剤、例えば、粉末の流れ、ウォッシュコートレオロジー改質剤などを含んでもよい。すなわち、バリウム又は1つ以上の白金族金属などの触媒成分は、複合酸化触媒の製造中に、下地層からウォッシュコート被覆層中に吸い上げられるか、又は移動し得るが、粒子状金属酸化物は、例えば、そのような金属を含まないウォッシュコートでコーティングされ、そのような金属がウォッシュコート被覆層に入ることを意図するものではない。この文脈において、本明細書で使用される用語「から本質的になる」は、任意のそのような金属がウォッシュコート被覆層内に意図的に移動していない、最終生成物を包含することを意図する。
【0183】
典型的には、ウォッシュコート被覆層は、0.8~3.5g in-3、好ましくは0.9~2.5g in-3、更により好ましくは1.0~2.0g in-3、例えば1.1~1.75g in-3の粒子状金属酸化物の担持量を有する。
【0184】
好ましくは、ウォッシュコート被覆層は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンのウォッシュコート上に直接コーティングされる。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーンと好ましい配置のウォッシュコート被覆層との間に1つ以上のウォッシュコート層が存在することは、本発明の範囲内である。
【0185】
保護床特徴部の適用は、本発明の全ての実施形態に一般的に適用可能であり、したがって、任意の点線特徴部「G」によって示され、特に
図1~
図5に開示される実施形態で示されるように、本発明の各実施形態及び全ての実施形態と容易に組み合わせできることが理解されるであろう。
【0186】
ウォッシュコート被覆層は、以下の追加の任意の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。
(a)ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物は、≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又はウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径を有する、
(b)ウォッシュコート被覆層の粒子状金属酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらのうちのいずれか2つ以上の混合酸化物若しくは複合酸化物、又はアルミノケイ酸塩ゼオライトからなる群から選択される。好ましくは、粒子状金属酸化物は、シリカをドープしたアルミナ又は平均細孔径が≧15nmのアルミナであり、
(c)ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物は、>100m2/gの比表面積を有し、
(d)ウォッシュコート被覆層は、それによって、重量ディーゼルエンジンの排気システムで使用されるときにリン及び/又は亜鉛汚染を防ぐために、第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大150%、好ましくは、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの>50%、例えば、その軸方向長さの>60%、>70%、>80%、>90%又は>100%、又は最大120%まで軸方向に延在し、
(e)ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物は、白金、又は≧1:1のPt:Pd重量比の白金とパラジウムとの組み合わせである白金族金属を担持し、任意選択的に、ウォッシュコート被覆層中の白金族金属担持量は1~35gft-3である。白金族金属は、ウォッシュコート被覆層中に意図的に導入される。
【0187】
粒子状金属酸化物は、≧10nmの平均細孔径及び粒子間細孔径の一方又は両方を有することができる。好ましくは、平均細孔径又は粒子間細孔径は、≧12nm又は≧15nmである。出願人は、粒子状金属酸化物の特定のパラメータが、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの炭化水素酸化活性を不必要に低減し得ることを見出した。したがって、出願人は、ウォッシュコート被覆層で使用するための可能な粒子状金属酸化物としてコロイド状シリカ(Ludox(商標))の試験を行ったときに、ウォッシュコート層が、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の酸化機能を維持するのに十分に多孔質かつ透過性であるには不十分であることを見出した。すなわち、粒子状金属酸化物としてコロイド状シリカを含む複合酸化触媒中の炭化水素酸化は、ガス質量移動が制限された。コロイド状シリカの担持量を低くすると質量移動を改善することができるが、ウォッシュコート被覆層の保護効果は不十分であると予想された(上記≧0.8g/in3のウォッシュコート負荷制限を参照)。したがって、複合酸化触媒の主要な炭化水素酸化機能をより良好に維持するために、粒子状金属酸化物は≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又はウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径を有する。
【0188】
担持された白金族金属を有さないウォッシュコート被覆層を特徴とする実施形態では、出願人の発明者らは、比較的低い平均細孔径を有する特定の粒子状金属酸化物、例えば、8nmの初期平均細孔径を有する粒子状セリアが本発明において有効であり得ることを見出した。しかしながら、好ましくは、ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物は、≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又はウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径、好ましくは≧10nmの平均細孔径を有する。すなわち、本質的に低い平均細孔径を有する粒子状金属酸化物、例えばセリア材料は、ウォッシュコート層中の平均粒子間細孔径が≧10nmとなるように、適切な粒径分布を選択する(以下も参照)ことによって本発明において応用され得る。
【0189】
ウォッシュコート被覆層の平均粒子間細孔径は、水銀ポロシメトリーによって測定することができる。
【0190】
粒子状金属酸化物の平均細孔径は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法を使用する、N2等温吸湿脱湿曲線によって決定することができる。
【0191】
粒子状金属酸化物が二峰性細孔径を有する場合、2つのピークのうちの少なくとも1つが≧10nmの粒径を超える場合に要件は満たされる。誤解を避けるため、シリカをドープした好ましい粒子状耐熱性金属酸化物アルミナは、少なくともこのパラグラフにおける一般的な定義を満たす。
【0192】
アルミノケイ酸塩ゼオライトは、一般に、≧10nmの平均細孔径の要件を満たさない。≧10nmの粒子間細孔径である特徴は、粒径、すなわち粒径分布の適切な選択によって得ることができる。コロイド状シリカに関連して上述したように、ウォッシュコートの粒子が小さすぎると、粒子間細孔が小さすぎて、下層の第1の触媒ウォッシュコート層での排気ガスの質量移動の維持ができない。粒径の適切な選択により、粒子間細孔径が≧10nmである好ましい条件を満たすように、適切なサイズの粒子間の粒子間細孔を得ることが可能である。
【0193】
例えば、粒子状金属酸化物の粒子は、<100マイクロメートルのD90を有し得る。粒子状金属酸化物の粒子は、好ましくは、<75マイクロメートル、例えば<50マイクロメートル(例えば<30マイクロメートル)、より好ましくは<20マイクロメートル、例えば<15マイクロメートルのD90を有し得る。耐熱性酸化物がより小さいD90を有する場合、より良好な充填及び接着性を得ることができる。
【0194】
当該技術分野において既知であるように、D90は、分布中の粒子の90%がこの値を下回る粒径を有する粒径の値である。誤解を避けるため、d90測定値は、体積ベースの手法であるMalvern Mastersizer 2000(商標)を使用したレーザー回折粒径分析によって得ることができ(すなわち、D90は、DV90(又はD(v,0.90))とも称され得る)、数学的Mie理論モデルを適用して粒径分布を求める。
【0195】
典型的には、粒子状金属酸化物の粒子は、>0.1マイクロメートルのD90を有する。粒子状金属酸化物の粒子が、>1.0マイクロメートル、例えば>5.0マイクロメートルのD90を有することが好ましい。
【0196】
好ましい構成に従って保護床ウォッシュコート被覆層で使用するための必要条件を満たし、本発明における用途を有する粒子状金属酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらのいずれか2つ以上の混合酸化物又は複合酸化物、例えばシリカをドープしたチタニア、セリア-ジルコニア混合酸化物が挙げられ、好ましいのは、シリカをドープしたアルミナ又はアルミノケイ酸塩ゼオライトである。例えば、粒子状金属酸化物は、アルミナ、セリア、シリカをドープしたアルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、セリア-アルミナ、セリア-ジルコニア-アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-ジルコニア、ジルコニア-チタニア、セリア-ジルコニア、及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群から選択されてもよい。好ましくは、粒子状金属酸化物は、アルミナ、シリカをドープしたアルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-ジルコニア、ジルコニア-チタニア、及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群から選択され、すなわち、粒子状金属酸化物は、上述のようにセリウムを含まない。
【0197】
粒子状金属酸化物は、任意選択的に、(例えば、ドーパントで)ドープされてもよい。ドーパントは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、及びこれらの酸化物からなる群から選択され得る。ドーパントを含めることにより、粒子状金属酸化物を熱的に安定化させることができる。この文脈において「ドープされた」への任意の言及は、粒子状金属酸化物のバルク又はホスト格子が、ドーパントによって置換ドープされた、又は格子間ドープされた材料を指すことを理解されたい。場合によっては、少量のドーパントが粒子状金属酸化物の表面に存在してもよい。しかしながら、ドーパントの大部分は、一般に、粒子状金属酸化物の主要部に存在する。
【0198】
粒子状金属酸化物がドープされるとき、ドーパントの総量は、粒子状金属酸化物の0.5~15重量%、好ましくは1~10重量%(例えば、約5重量%)である。好ましい粒子状金属酸化物は、シリカをドープした耐熱性金属酸化物アルミナであり、10nm以上の平均細孔径を有する必要条件を満たすことができ、また、約120m2/g以上の比表面積を有することができる(以下参照)。
【0199】
粒子状金属酸化物がアルミノケイ酸塩ゼオライトを含む実施形態では、好適なゼオライト又はゼオライトフレームワーク型の例としては、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、オフレタイト、ベータ型ゼオライト、又は銅CHAゼオライトが挙げられる。ゼオライトは、好ましくは、ZSM-5、ベータ型ゼオライト又はY型ゼオライトである。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、1つ以上の卑金属、例えば銅、鉄、又はマンガンのうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、アルミノケイ酸塩ゼオライトがCHAフレームワーク型コードを有する場合、CHAは銅で促進され得る。あるいは、アルミノケイ酸塩ゼオライトは、卑金属を含まないことが意図され得る。
【0200】
粒子状金属酸化物は、耐熱性金属酸化物であってもよく、この用語は、本出願で使用される定義に従うと、アルミノシリケートゼオライトを除外する。
【0201】
本発明で使用するのに特に好ましい粒子状金属酸化物は、白金族金属を含む貴金属を意図的に含まない、本明細書に開示されるシリカドーパントの総量内のアルミナをドープした耐熱性金属酸化物シリカである。≧15nmの平均細孔径を有するアルミナも好ましい。このような材料は、本明細書では「広細孔アルミナ」と呼ばれ、例えば欧州特許第1077769(A1)号から既知である。
【0202】
粒子状金属酸化物の比表面積はまた、粒子状金属酸化物成分の比表面積が高いほど、ウォッシュコート被覆層の、例えば潤滑添加剤から誘導されたガラス状のリン酸亜鉛化合物の予測される吸着能が高くなるため、重要であると考えられる。
【0203】
本発明による新しい複合酸化触媒のウォッシュコート被覆層に使用するための粒子状金属酸化物の粒子は、≧約100m2/g(>約100m2/g)、好ましくは≧約120m2/g(>約120m2/g)、例えば≧約150m2/g(>約150m2/g)、≧約180m2/g(>約180m2/g)、又は≧約200m2/g(>約200m2/g)の平均比表面積(SSA)を有する。一般に、アルミノケイ酸塩ゼオライトは、≧約200m2/g超のSSAを有する。
【0204】
耐熱性酸化物の粒子の平均比表面積(SSA)は、容積法を用いる-196℃での窒素物理吸着によって決定することができる。平均SSAは、BET吸着等温式を用いて決定される。
【0205】
好ましい実施形態では、ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物は、白金、又は≧1:1のPt:Pd重量比の白金とパラジウムとの組み合わせである白金族金属を担持する。Pt:Pd重量比が1:0、すなわちPtのみは、「≧1:1」の範囲内に入ることが理解されよう。
【0206】
好ましくは、ウォッシュコート被覆層中の白金族金属担持量は、1~35gft-3、好ましくは2.5~25g/ft-3、例えば5~17.5gft-3である。
【0207】
改善されたNO
2管理及び発熱挙動のための吐出触媒ウォッシュコート層へのマンガンの添加
図5に示される4ゾーン複合酸化触媒の開発の研究中、出願人は、第2の(吐出)基材端部から適用される第2の触媒ウォッシュコート層(7)の一部としての第2の(すなわち吐出)基材端部によってその第2の端部で画定される第3の触媒ウォッシュコートゾーンにマグネシウムを添加すると、有利には、発熱生成を促進し、及び/又は能動的フィルタ再生中の発熱の消失を回避し、下流SCR触媒の活性を向上させて、窒素酸化物(NO
x)をN
2に還元し、及び/又は、下流SCR触媒で使用するための窒素還元剤噴射管理を改善することができることを見出した。これらの観察結果は、とりわけ、本発明による2、3、及び4ゾーン複合酸化触媒に等しく適用することができる。
【0208】
上記のように、NOxをN2に還元するための下流SCR触媒の活性を向上させることに関して、一酸化窒素及び二酸化窒素の両方を含む排気ガスにおいて、SCRの触媒作用は、反応(1)~(3)を含むSCR反応の組み合わせを介して進行することが知られており、これらの全ては、NOxを元素窒素(N2)に還元する。
【0209】
関連する望ましくない非選択的な副反応は、反応(4)に従う。
2NH3+2NO2→N2O+3H2O+N2 (4)
【0210】
実際には、反応(1)~(3)は同時に起こり、主な反応は、とりわけ、反応の動力学及び反応物質の相対濃度に応じて有利である。動力学的に、反応(2)は反応(1)と比較して比較的遅く、反応(3)は全てのうちで最も速い。したがって、この化学的性質によれば、SCR触媒は、下流SCR触媒に入る排気ガス中のNO2/NOx比が約0.5、すなわち反応(3)によると、1:1のNO:NO2の比である。
【0211】
出願人の研究者らは、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の一部として
図5に示す複合酸化触媒の第3の触媒ウォッシュコートゾーンにマンガンを含むことにより、ピーク受動的NO酸化活性、すなわち活性発熱/再生事象間に起こるNO酸化活性が抑制され得ることを見出した。「ピーク受動的NO酸化活性」は、表7及び8の「300℃における初期NO
2/NOx(%)」列の値によって示される。
【0212】
マンガンを使用してピーク酸化活性を抑制することによって、出願人の研究者らは、「初期」及び「経時変化した」複合酸化触媒のNO2/NOxが、車両の耐用期間のかなりの部分に対して、より安定した0.55~0.45、すなわち、下流SCR触媒上で、速度論的に遅く、効率的に劣るNOx還元反応(2)の代わりに、反応(3)を実施するための「スイートスポット」まで抑え得ることを見出した。NOを受動的に酸化する初期触媒の活性が高すぎる場合、排気ガス中のピークNO2/NOx含量は、排気ガス組成を、下流SCR触媒において反応(3)を促進するための好ましいNO:NO2比である1:1から遠ざけるだけではなく、二次的に、最も遅い反応(2)を促進する、0.65を超えるまで増加することがある。更に、過剰なNO2は、望ましくないことに、反応(4)によるN2Oの生成をもたらし得る。
【0213】
下流SCR触媒で使用するための窒素系還元剤噴射管理を改善すると、出願人の研究者らはまた、第3のゾーンがマンガンを含む場合、複合酸化触媒全体の受動的NO酸化活性の初期と経年変化後との間の差(Δ)が減少したことも見出した(表7及び8に示す結果を参照されたい)。すなわち、複合酸化触媒の下流の排気ガス中の得られるNO2/NOx値は、触媒が新たに開始し、使用を通して着実に経時変化するため、車両排気システムの耐用期間にわたってより予測可能であった。実際には、SCR触媒反応は、一般に、窒素還元剤の提供を必要とするため、この観察結果は重要である(上記反応(1)~(3)を参照されたい)。典型的には、この窒素系還元剤はアンモニア(NH3)であり、これは、噴射装置を介して流れる排気ガス中に送達するための前駆体、尿素の形態で車両で運ばれている。高温の排気ガスと接触して、尿素はアンモニア及び水蒸気に分解する。反応(1)~(3)から、任意の特定の時間にどの反応が優勢であるかに応じて、NH3スリップが回避される場合、NOx全体の最も効率的な還元を達成するために、少量のアンモニア窒素還元剤が必要とされることが分かる。
【0214】
更に複雑であるのは、NOをNO2に酸化する酸化触媒の能力が、一般に使用を通じて経時的に低下する、いわゆる「経時変化」することである。この活性の経時的な損失は、システムプログラムアルゴリズムにおいて、徐々に減少する活性を相殺する必要があるため、窒素系還元剤を送達するための制御システムの設計における負担を増加させる。しかしながら、より高いNO酸化活性を抑制することによって、本明細書で上述したように、NO2/NOxを約0.5に「集中させる」ことに加えて、初期酸化活性と経時変化した酸化活性との間のΔを低下させることによって、車両の耐用期間にわたる窒素系還元剤噴射のシステムプログラミング制御を管理することは、重量ディーゼル車両の製造業者にとってはあまり複雑ではないはずである。
【0215】
第3に、かつ非常に驚くべきことに、以下の実施例9に示すように、出願人の研究者らは、第3のウォッシュコートゾーン/第2のウォッシュコート層にマンガンを含めることにより、有利には、発熱生成を促進し、及び/又は能動的フィルタ再生中の発熱の消失を回避できることを見出した。この観察により、非常に高コストの白金族金属を低コストの卑金属、すなわちマンガンに交換しつつも、複合酸化触媒の機能性を維持することが可能であった。
【0216】
排気システム後処理では、マンガンは硫黄汚染によって影響され得る。パラジウムもまた、パラジウム汚染に悩まされることも知られている。このため、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーン中のマンガンに加えてパラジウムを含むことを回避することが好ましい場合がある。しかしながら、上述したように、比較的低い含有量のパラジウムは、ゾーン中の白金成分の安定性を改善することができる。この点に関し、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーンが、白金リッチのPt:Pd重量比、例えば、≧10:1を含有することが好ましく、あるいは、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーン中の1つ以上の白金族金属は、白金から本質的になる、又は白金からなる(例えば、Pt:Pd重量比は1:0)場合がある。
【0217】
マンガン含有に対する記載された技術的効果から利益を得るために、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーン中の白金族金属担持量は、好ましくは≧2gft-3、好ましくは5~15gft-3、例えば7~13gft-3である。
【0218】
加えて、出願人は、マンガンによって減少する初期対経時変化したNO2へのNO酸化「Δ」の技術的効果は、第2の基材末端、例えば、第3の触媒ウォッシュコートゾーンによって、その第2の端部で画定された触媒ウォッシュコートゾーン中、及び/又は第2の触媒ウォッシュコート層中の、耐熱性金属酸化物支持材料を適切に選択することによって強化され得ることを見出した。
【0219】
この点に関し、出願人は、ヘテロ原子支持材料をドープしたアルミナの利益を指摘しており、このとき好ましくは、ヘテロ原子は、ケイ素及び/又はマンガンであり、又は混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物である。マンガンは、そのようなヘテロ原子として存在し、及び/又は、ウォッシュコート耐熱性金属酸化物支持材料、例えば混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物若しくはシリカをドープしたアルミナ支持材料と組み合わせた可溶性塩として、例えば、硝酸マンガンとして導入することができ、その後、還元剤を使用して、例えば、クエン酸、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ギ酸、アスコルビン酸などを使用して、支持材料上に沈殿させる。ドープされたマンガンを含む耐熱性金属酸化物支持体に、更に、追加のマンガンを含浸させることができる。
【0220】
したがって、マンガン含有ゾーン又は層内の耐熱性金属酸化物支持材料は、シリカをドープしたアルミナ、マンガンをドープしたアルミナ、シリカ及びマンガンの両方をドープしたアルミナ、混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物、又はマンガンをドープした「予め形成された」混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含むことができる。含浸されたマンガン成分は、耐熱性金属酸化物支持材料上に担持されることができる。
【0221】
混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物は、15重量%以下、例えば0.1~12重量%、又は2.0~10重量%の、Mgとして計算される予備焼成マグネシウム含有量を有することができる。混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む焼成された支持材料は、マグネシウムを欠いた、すなわち非理論空燃比のスピネルを含み得る。最も好ましくは、マンガン含有耐熱性金属酸化物支持材料は、マンガンをドープした「予め形成された」混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物である。マンガンをドープしたマグネシウムアルミニウム金属酸化物中のマンガンドーパントの量は、MnO2として計算される、1~15重量%であり得る。実施例8は、マンガンをドープしたマグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む試料が、初期触媒と経時変化した触媒との間の低下したNO2/NOx「Δ」に加えて、「連続発熱」試験によって実証されるように、より低温からの発熱生成において驚くべき改善を示したことを示す。
【0222】
基材
本発明の複合酸化触媒の触媒ウォッシュコート層及び触媒ウォッシュコートゾーン成分を担持するための基材は、当該技術分野において周知である。概して、基材はセラミック材料又は金属材料から作製される。
【0223】
基材は、コーディエライト(SiO2-Al2O3-MgO)、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム(AT)、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金、又はステンレス鋼合金で作製又は構成されることが好ましい。
【0224】
典型的には、基材はモノリス、すなわちモノリス基材である。好ましくは、モノリスは、フロースルーハニカムモノリス基材又はフィルタリングモノリス基材であり、最も好ましくはハニカムフロースルーモノリス基材である。
【0225】
本発明の複合酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒(DOC)又は触媒煤煙フィルタ(CSF)として使用されることが好ましい。実際には、DOC及びCSFで使用される触媒配合物は同様である。しかしながら、一般に、DOCとCSFとの間の原理的な差は、触媒配合物がコーティングされる基材と、コーティング中の白金族金属の量である。
【0226】
典型的には、フロースルーモノリスは、それを貫通して延びる複数のチャネルを有するハニカムモノリス(例えば、金属又はセラミックのハニカムモノリス)を含み、それらのチャネルは両端部で開口する。基材がフロースルーモノリスである場合、本発明の複合酸化触媒は、典型的にはディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるか、又はディーゼル酸化触媒(DOC)として使用される。
【0227】
モノリスがフィルタリングモノリスである場合、フィルタリングモノリスはウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各吸入チャネルは、多孔質構造のウォールによって吐出チャネルから交互に分離されており、逆もまた同様である。吸入チャネル及び吐出チャネルは、ハニカム配列を有することが好ましい。ハニカム配列が存在する場合、吸入チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれていることが好ましく、逆もまた同様である(すなわち、吐出チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれる)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの交互に塞がれ、開いている端部は、チェス盤の外観をとる。基材がフィルタリングモノリスである場合、本発明の酸化触媒は、典型的には触媒煤煙フィルタ(CSF)であるか、又は触媒煤煙フィルタ(CSF)として使用される。
【0228】
原則として、基材は、任意の形状又は大きさであってもよい。しかし、基材の形状及び大きさは、通常、触媒中の触媒活性材料の排気ガスへの暴露を最適化するように選択される。基材は、例えば、管状、繊維状、又は微粒子形態を有してもよい。好適な担持基材の例としては、モノリシックハニカムコーディエライト型の基材、モノリシックハニカムSiC型の基材、層状繊維又は編地型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤメッシュ型の基材、金属多孔質体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が挙げられる。
【0229】
重量エンジン
誤解を避けるため、本発明の第3の態様による重量エンジンは、本発明の「背景技術」の項に記載された定義のいずれかを使用することができる。そのため、例えば、日本向けの特許出願では、日本の排出基準に必要な重量ディーゼル車両の制限を、車両に対する特許請求項に組み込むことができる。欧州又は米国などの法規制も同様である。更に誤解を避けるため、本発明で使用するための重量エンジンは、LNT触媒の通常運転又は脱硫酸に好適なリーン/リッチサイクルを動作するように管理されていない。好ましい構成では、本発明による排気システムはLNTを含まない。
【0230】
本発明の第3の態様による重量圧縮点火機関は、好ましくはディーゼルエンジン、任意選択的に圧縮天然ガス(CNG)エンジンである。重量ディーゼルエンジンは、均一予混合圧縮点火(HCCI)エンジン、予混合圧縮点火(PCCI)エンジン、又は低温燃焼(LTC)エンジンであってもよい。ディーゼルエンジンは、通常の(すなわち従来からの)ディーゼルエンジンであることが好ましい。
【0231】
製造方法
本発明の酸化触媒の製造方法は、当該技術分野において既知である。例えば、国際公開第99/47260号、同第2007/077462号、及び銅第2011/080525号を参照されたい。同様に、ウォッシュコートの乾燥及び焼成の条件も周知である。
【0232】
上記に述べたように、あるいは第1の発明態様によると、酸化触媒は、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーン、好ましくは4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み得る。
【0233】
このような触媒を製造する方法は、第6の発明態様によるものであり、工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、この方法は更に、工程(a)の前又は工程(a)の後であるが、いずれの場合も工程(b)の前に、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さで第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(a’)を含み、ここでは、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む。
【0234】
この点に関して、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコート層は第1の基材端部から延在でき、第2の触媒ウォッシュコート層は第2の基材端部から延在し、それによって、第2の触媒ウォッシュコート層は、第1の触媒ウォッシュコート層と部分的に重なる。
【0235】
実施形態では、この好ましい方法は、
図4及び
図5に示されるものなどの構成をもたらすことができ、すなわち、工程(a’)における第2の触媒ウォッシュコート層の適用の軸方向長さ、したがって、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層との重なりの軸方向長さに応じて、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材表面上に支持された第1の触媒ウォッシュコートの単一層を含む。工程(b)における適用L
1の軸方向長さに応じて、第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層との重なりを含み得る。第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において、かつ第1の触媒ウォッシュコート層の第2の端部によってその第1の端部において、すなわち、第2の基材端部から第1の基材端部の方向に延在する第2の層が、第1の触媒ウォッシュコート層と重なり始める点において画定される基材表面上に支持される、単一のウォッシュコート層を含む。一般に、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部は、第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部である。
【0236】
第1の吸入基材端部で本発明の酸化触媒に入る排気ガスは、一般に、第3の触媒ウォッシュコートゾーンより前に、重複領域触媒ウォッシュコートゾーンと接触するため、この構成が好ましい。重複触媒ウォッシュコートゾーン(実施形態に応じて、第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンのいずれか)は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの「安定剤」として機能する。重複領域触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの酸化反応の一部又は全てを行うという意味で「安定剤」として機能するが、重複領域触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンのものよりもHC及び/又はCOに対してより高い着火温度を有し得る。
【0237】
本発明の第6の態様において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、工程(a)で適用された触媒ウォッシュコートを含浸させることによって工程(b)で得られるため、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料は、触媒ウォッシュコート、例えば、工程(a)で適用される第1の触媒ウォッシュコート層中の同一の耐熱性金属酸化物支持材料とすることができることが理解されよう。
【0238】
電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属成分、及び任意選択的に、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、このとき、1つ以上の白金族金属成分及び任意選択的な第1のアルカリ土類金属成分の濃度が、EPMAによって決定されるとき、基材の表面に向かって垂直方向に減少しており、一般に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分が、耐熱性金属酸化物支持材料に急速に固定されず、乾燥中のウォッシュコーティング内で移動可能である方法によって得ることができる。1つ以上の白金族金属成分を含有するウォッシュコーティングを基材に適用し、続いて、コーティング中の1つ以上の白金族金属成分及び任意選択的な1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の移動を可能にする条件を使用して、熱乾燥工程及び焼成工程を行い、その後定位置に固定することができる。このような条件は、特に従来技術における条件は、一般にコーティング内での移動を防止するためにコーティング(すなわちウォッシュコートコーティング)の構成要素を迅速に固定するように選択されるため、当該技術分野において既知である。すなわち、含浸によって、乾燥中のウォッシュコート内の白金族金属塩の移動を回避するための急速な固定条件であると認識される場合、このような移動を可能にする条件であると認識される。
【0239】
蒸発中、湿潤表面への、又は湿潤表面から離れる方向への溶質の移動は、他の技術分野で知られている効果である。ウェットコーティング内での第1の白金族金属(すなわち、白金族金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩)の移動は、リチャーズ式によって表すことができる。
【数1】
式中、
tは時間(例えば、溶媒(すなわち水)の実質的に又は完全に蒸発する前の時間)であり、θは典型的にはコーティングの溶媒(すなわち、水)含有量であり、Kは透水係数であり、zは位置水頭であり、Ψは圧力水頭である。透水係数は、第1の支持材料及び/又は存在し得る任意の他の支持材料の透水係数によって近似することができる。
【0240】
基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有する触媒ウォッシュコートゾーンを達成する方法は、
(a)耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分と、を含む、水性スラリーを提供することと、
(b)水性スラリーを基材上に適用して、ウォッシュコーティングを形成することと、
(c)ウォッシュコーティングを乾燥及び焼成することであって、この乾燥条件により、少なくとも1つ以上の白金族金属成分及び、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分が基材に向かって又はそれから離れる方向に流れ、例えば、基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属及び、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を得ることを可能にする、ことと、を含む。
【0241】
ウォッシュコーティングは、2つ以上の白金族金属成分を含むことができ、第1の白金族金属成分を第1の白金族金属成分と呼ぶことができ、第2の白金族金属成分を第2の白金族金属成分と呼ぶことができる。
【0242】
通常、耐熱性金属酸化物支持材料、第1の白金族金属成分及び第2の白金族金属成分のうちの少なくとも1つは不溶性である。しかしながら、スラリーは、例えば、耐熱性金属酸化物支持材料、第1の白金族金属成分及び第2の白金族金属成分のうちの1つ以上の前駆体が全て可溶性(すなわち、溶解される)場合、溶液を含んでもよいことを理解されたい。
【0243】
典型的には、耐熱性金属酸化物支持材料前駆体は、コーティングを乾燥及び/又は焼成した後に、耐熱性金属酸化物支持材料への変換を受ける化合物である。かかる耐熱性金属酸化物支持材料前駆体は、当該技術分野において周知であり、例えば、γ-アルミナの前駆体としてのベーマイトが挙げられる。
【0244】
一般に、第1の白金族金属成分は、第1の白金族金属の塩であるか、又は第1の白金族金属である(すなわち、第1の白金族金属自体である)。好ましくは、第1の白金族金属成分は、第1の白金族金属の塩である。第1の白金族金属の塩は、第1の白金族金属の硝酸塩、第1の白金族金属の酢酸塩、又は第1の白金族金属のカルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)であってもよい。
【0245】
第2の白金族金属成分は、典型的には、第2の白金族金属の塩であるか、又は第2の白金族金属である(すなわち、第2の白金族金属自体である)。第2の白金族金属成分が、第2の白金族金属の塩であることが好ましい。第2の白金族金属の塩は、第2の白金族金属の硝酸塩、第2の白金族金属の酢酸塩、又は第2の白金族金属のカルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)であってもよい。
【0246】
2つ以上の異なる白金族金属が使用される場合(例えば、第1の白金族金属は第2の白金族金属とは異なる)、存在する金属の違いから生じる、第2の白金族金属成分と比較して第1の白金族金属成分の移動度の差がある場合があり、ウォッシュコート層中の他の(又は互いの)白金族金属と比較して、それぞれの白金族金属の異なる分布プロファイルをもたらす(
図6参照)。触媒ウォッシュコート層中に存在する1つ以上の白金族金属成分に対するアルカリ土類金属の移動度の差にも当てはまる。白金族金属成分が白金族金属の塩であるときに適切なアニオンを選択することにより、白金族金属成分の触媒ウォッシュコート層内の移動度、及びまた好ましい垂直方向の流れも変化させることができる。白金族金属成分はまた、耐熱性金属酸化物支持材料と異なるように相互作用する場合があり、これを基準にして選択されてもよい。同様に、触媒ウォッシュコート層内での、アルカリ土類金属成分の移動度を、その溶質塩の適切な選択によって変えることが可能である。
【0247】
第1の白金族金属の塩の対アニオンは、第2の白金族金属の塩の対アニオンとは異なることが好ましい。例えば、第1の白金族金属成分は硝酸パラジウムであってもよく、第2の白金族金属成分は、白金カルボン酸塩であってもよい。硝酸アニオンは、カルボン酸アニオンと異なる。
【0248】
白金族金属成分の少なくとも1つの移動度は、他の白金族金属成分と混合する前に、支持材料上に担持させること(すなわち、白金族金属成分を予め固定すること)によって変更することができる。例えば、予め固定された第1の白金族金属/第1の耐熱性金属酸化物支持材料を、第2の耐熱性金属酸化物支持材料及び水性の第2の白金族金属塩、及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属の水性塩と混合してもよい。
【0249】
第1の白金族金属成分が第1の耐熱性金属酸化物支持材料前駆体上で支持され得る1つの方法は、(i)第1の耐熱性金属酸化物支持材料前駆体及び第1の白金族金属成分を溶液中で混合し、最終の第1の耐熱性金属酸化物支持材料を、好ましくは含浸するか、又は細孔を満たすこと、及び(ii)水溶液を乾燥及び/又は焼成し、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された第1の白金族金属成分(例えば、第1の白金族金属)を提供することによる。工程(i)の後に、還元剤を添加して第1の白金族金属成分を還元し、第1の支持材料を、好ましくは含浸するか、又は細孔を満たす工程(i)(a)が続く場合がある。工程(i)及び/又は(i)(a)において、存在する白金族金属成分のみが第1の白金族金属成分であることが好ましい。
【0250】
したがって、上記方法の工程(a)は、(a)第1の支持材料前駆体上に担持された、第2の白金族金属成分と、第1の白金族金属成分と、を含む、水性スラリーを提供する工程であってもよい。
【0251】
工程(b)に関して、スラリー又はウォッシュコートを基材に適用する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、出願人による国際公開第99/47260号を参照されたい)。
【0252】
一実施形態において、工程(c)は、少なくとも第1の白金族金属成分及び第2の白金族金属成分が、基材表面を表す平面に垂直な方向で互いに異なる速度で流れることを可能にする乾燥条件を使用して、コーティングを乾燥させることを含む。別の実施形態では、工程(c)は、第1の白金族金属成分のみが基材に向かって又はそれから離れる方向に流れることを可能にする乾燥条件を使用して、コーティングを乾燥させることを含む。
【0253】
工程(c)は、白金族金属成分が、通常は基材又は耐熱性金属酸化物支持材料上に固定される点を決定する。使用される乾燥条件は、コーティング中に存在する材料(例えば、白金族金属成分、アルカリ土類金属成分、耐熱性金属酸化物支持材料など)の同一性、及び酸化触媒のサイズ(例えば、触媒の用途に応じて変化する基材のサイズ)に依存する。
【0254】
典型的には、乾燥条件は、コーティングを少なくとも15分、好ましくは少なくとも20分間乾燥させることを含む。第1の白金族金属及び任意のアルカリ土類金属の不均一な分布は、このような条件を使用して得ることができる。乾燥時間が約5分以下であるとき、均一な分布が得られる傾向がある。
【0255】
その後、コーティングは、400~800℃の温度、好ましくは450~600℃、より好ましくは少なくとも500℃の温度で焼成され得る。
【0256】
一例として、第1の触媒ウォッシュコート層が、第1の担持量、及び、2つ以上の白金族金属成分として白金のパラジウムに対する重量比を含み、1つ以上のアルカリ土類金属成分がバリウムである場合、白金族金属及びバリウムの両方が、好ましいシリカ含有量でシリカをドープしたアルミナである耐熱性金属酸化物支持材料上に担持され、このような第1の触媒ウォッシュコート層に、比較的高濃度の白金及びパラジウム塩の水溶液を含浸させて、上記の乾燥方法の適用後に第1の触媒ウォッシュコートゾーンを形成し、パラジウム及びバリウムは、露出した触媒ウォッシュコート層表面により容易に移動し、EPMAにより「クラスト」として観察されることが見出された。下層の耐熱性金属酸化物支持材料に予め固定されていないとき、白金成分は、第1の触媒ウォッシュコート層の断面内の同じ露出面に向かっていくらかの可動性を示し、パラジウム及びバリウムと比べて、第1の触媒ウォッシュコート層の断面にわたって比較的より均一に分布したままである。完成した製品は、発熱生成に対する有益な活性を実証することが見出されている。この効果はまた、以下の実施例2に部分的に示される。
【0257】
排気システム
本発明の第2の態様による排気システムは、本発明による複合酸化触媒と、その下流に配置された煤煙フィルタ基材と、を含み、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている。
【0258】
煤煙フィルタ基材は、触媒配合物であってもよく、典型的には、触媒配合物でコーティングされてもよい。
【0259】
煤煙フィルタの触媒配合物は、(i)粒子状物質(PM)及び/又は(ii)一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化に好適であり得る。触媒配合物がPMの酸化に好適である場合、得られる排出ガス制御装置は、触媒煤煙フィルタ(CSF)として知られている。典型的には、CSFの触媒配合物は、上記に定義したような、第1の白金族金属及び/又は第2の白金族金属などの白金族金属を含む。
【0260】
SCR触媒はまた、当該技術分野において周知であり、フロースルー基材又はウォールフローフィルタ基材などの濾過基材上にコーティングすることができる。本発明の排気システムが、例えば、フロースルー基材モノリス上にコーティングされたSCR触媒を含む場合、排気システムは、アンモニア又は尿素などの窒素系還元剤を噴射するための噴射装置を、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化するための触媒(本発明による複合酸化触媒又は本発明による複合酸化触媒の下流に配置されたCSF)の下流、及びSCR触媒の上流に更に備えてもよい。排気システムは、複合酸化触媒を炭化水素と接触させて、下流煤煙フィルタを再生するための発熱を生成させるために、排気ガスに炭化水素を混入するエンジン管理手段を更に備えてもよい。あるいは、又はそれに加えて、炭化水素噴射は、エンジンマニホールドから下流であるが複合酸化触媒の上流で炭化水素燃料を排気ガス中に噴射するための独立型炭化水素噴射装置を介して促進され得る。
【0261】
CSF触媒配合物の代わりに、煤煙フィルタ基材、好ましくはウォールフローフィルタを、SCR触媒でコーティングすることができ、その場合、SCRF触媒と呼ばれる。
【0262】
一般に、SCR触媒は、排気ガス温度(つまり触媒の温度)が低すぎるため、圧縮点火機関の始動直後に排気ガス中の相当量のNOxを低減することができない。リーンNOxトラップ触媒(例えば、NOx吸着触媒)は、例えば、SCR触媒の上流に用いられており、SCR触媒がより高い排気ガス温度で活性状態になるまでNOxを貯蔵することができる。しかしながら、リーンNOxトラップ触媒は、多くの場合、排気ガスの流量が大きいとき(例えば、エンジンが高速サイクルで運転されるとき)、NOxを十分に貯蔵できない。
【0263】
本発明の第2の態様によれば、本発明における用途を有する排気システムが、添付の
図8A~Dに示される。第1の排気システムの実施形態(
図8A参照)は、フロースルーハニカム基材モノリス(
図8Aの項目42を参照)上の本発明の複合酸化触媒と、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)触媒とを含む。このような構成は、DOC/SCRFと呼ばれることがある。本実施形態はまた、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)触媒と組み合わせた、燃焼機関、特に圧縮点火機関からの排気ガスを処理するための複合酸化触媒の使用にも関する。好ましくは、複合酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒であるか、又はディーゼル酸化触媒として使用される。典型的には、本発明の複合酸化触媒の後に 選択的接触還元フィルタ(SCRF)触媒が続く(例えば、上流にある)。窒素系還元剤噴射装置は、複合酸化触媒と選択的接触還元フィルタ(SCR)触媒との間に配置され得る。したがって、複合酸化触媒の後に、窒素系還元剤噴射装置が続いてもよく(例えば、上流にある)、窒素系還元剤噴射装置の後に、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)触媒が続いてもよい(例えば、上流にある)。
【0264】
第2の排気システムの実施形態(
図8B参照)において、排気システムは、フロースルーハニカム基材モノリス上の本発明の複合酸化触媒と、(触媒されていない)ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)又は触媒煤煙フィルタ(CSF)のいずれかとを含む。このような構成は、DOC/DPF又はDOC/CSFと呼ばれることがある。本実施形態はまた、ディーゼル微粒子フィルタ又は触媒煤煙フィルタと組み合わせた、燃焼機関、特に圧縮点火機関からの排気ガスを処理するための複合酸化触媒の使用にも関する。好ましくは、複合酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒であるか、又はディーゼル酸化触媒として使用される。複合酸化触媒の後に、典型的には、ディーゼル微粒子フィルタ又は触媒煤煙フィルタ(CSF)が続く(例えば、N上流にある)。したがって、例えば、複合酸化触媒の吐出部は、ディーゼル微粒子フィルタ又は触媒煤煙フィルタの吸入部に接続される。
【0265】
第3の排気システムの実施形態(
図8C参照)は、フロースルーハニカム基材モノリス上の本発明の複合酸化触媒と、ディーゼル微粒子フィルタ又は触媒煤煙フィルタ(CSF)と、選択的触媒還元(SCR)触媒と、を含む、排気システムに関する。このような構成は、DOC/DPF/SCR又はDOC/CSF/SCRと呼ばれることがある。本実施形態はまた、ディーゼル微粒子フィルタ又は触媒煤煙フィルタ(CSF)のいずれか、及び選択的触媒還元(SCR)触媒と組み合わせた、燃焼機関、特に圧縮点火機関からの排気ガスを処理するための複合酸化触媒の使用にも関し、好ましくは酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒であるか、又はディーゼル酸化触媒として使用されるものである。複合酸化触媒の後に、典型的には、ディーゼル微粒子フィルタ又は触媒煤煙フィルタ(CSF)が続く(例えば、N上流にある)。DPF又はCSFの後に、典型的には、選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、上流にある)。窒素系還元剤噴射装置は、DPF又はCSFと選択的触媒還元(SCR)触媒との間に配置され得る。したがって、DPF又はCSFの後に、窒素系還元剤噴射装置が続いてもよく(例えば、上流にある)、窒素系還元剤噴射装置の後に、選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、上流にある)。
【0266】
第4の排気システムの実施形態(
図8A参照)は、ウォールフロー基材モノリス上の本発明の複合酸化触媒(CSF、
図8Aの項目42を参照)と、選択的触媒還元(SCR)触媒と、を含む排気システムに関する。これは、CSF/SCR構成でもある。本実施形態の更なる態様は、ディーゼル酸化触媒(DOC)及び選択的触媒還元(SCR)触媒と組み合わせた、圧縮点火機関からの排気ガスを処理するための複合酸化触媒の使用に関し、好ましくは複合酸化触媒は、触媒煤煙フィルタ(CSF)であるか、又はCSFとして使用されるものである。ディーゼル酸化触媒(DOC)は、典型的には、本発明の複合酸化触媒の後に続く(例えば、上流にある)。典型的には、本発明の複合酸化触媒の後に 選択的接触還元(SCR)触媒が続く(例えば、上流にある)。窒素系還元剤噴射装置は、複合酸化触媒と選択的接触還元(SCR)触媒との間に配置されてもよい。したがって、複合酸化触媒の後に、窒素系還元剤噴射装置が続いてもよく(例えば、上流にある)、窒素系還元剤噴射装置の後に、選択的触媒還元(SCR)触媒が続いてもよい(例えば、上流にある)。
【0267】
第5の排気システムの実施形態(
図8D参照)において、排気システムは、好ましくはDOCとしての本発明の複合酸化触媒と、選択的触媒還元(SCR)触媒と、触媒煤煙フィルタ(CSF)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)のいずれかと、を含む。この構成は、DOC/SCR/CSF又はDOC/SCR/DPFのいずれかである。本実施形態はまた、選択的触媒還元(SCR)触媒及び触媒煤煙フィルタ(CSF)又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)のいずれかと組み合わせた、燃焼機関、特に圧縮点火機関からの排気ガスを処理するための複合酸化触媒の使用にも関し、好ましくは複合酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒であるか、又はディーゼル酸化触媒として使用されるものである。
【0268】
このような構成は、
図8A~
図8Dにそれぞれ示されており、図中、項目30は、重量ディーゼルエンジンであり、項目32は、重量ディーゼルエンジンの排気システムであり、項目34は、排気ガスを重量ディーゼルエンジンから排気システムの構成要素(42、44、50)に、又は排気システムから大気36まで搬送するためのパイプであり、項目38は、炭化水素燃料を、エンジンマニホールド40の下流かつ本発明による複合酸化触媒42(例えば、
図1~5に例示される複合酸化触媒のうちのいずれか1つ)の上流の排気ガス中に噴射するための噴射装置であり、第1の触媒ウォッシュコートゾーン1は、上流側に向けられ、複合酸化触媒の基材は、フロースルー基材モノリス又はウォールフローフィルタ基材モノリスであってよく、項目44は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)又は触媒煤煙フィルタ(CSF)であり、項目46は、流れている排気ガス中に、リザーバ48内に保持された窒素系還元剤前駆体流体、例えば尿素を噴射するための噴射装置であり、項目50は、フロースルー基材モノリス又はウォールフローフィルタ基材モノリス(SCRF)上にコーティングされた選択的触媒還元触媒(SCR)である。
【0269】
添付の特許請求の範囲に加えて、本発明は、以下の定義のうちの1つ以上に従って定義することができる。
1. 車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用であって、かつ排気システム内の粒子状物質フィルタの上流の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合酸化触媒であって、この複合酸化触媒は、
全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する、基材と、
基材表面上及び基材表面に沿って軸方向に直列に配置された2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、長さL1を有し、L1<Lである、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部によって1つの端部で、長さL2を有し、L2<Lである、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部で画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む、上面に支持された2つ以上の白金族金属成分と、を含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に支持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、触媒ウォッシュコートゾーンと、を含み、
基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きく、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持される、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含む、複合酸化触媒。
2. 第2の触媒ウォッシュコートゾーンが、第2の基材端部によってその第2の端部において画定される、1に記載の複合酸化触媒。
3. 3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第3の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい、1に記載の複合酸化触媒。
4. 4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンと第3の触媒ウォッシュコートゾーンとの間に配置され、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第4の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、第2の触媒ウォッシュコートの第2の端部によってその第1の端部において、かつ、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第4の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンのそれぞれにおける総白金族金属担持量よりも大きい、3に記載の複合酸化触媒。
5. 第1の触媒ウォッシュコート層と、第2の触媒ウォッシュコート層と、を含み、第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL3を有し、このときL3<Lであり、第1の基材端部によって一方の端部で画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL4を有し、このときL4<Lであり、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む、4に記載の複合酸化触媒。
6. 3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部によってその第1の端部において画定される、3に記載の複合酸化触媒。
7. 第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層を含み、第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL3を有し、このときL3<Lであり、第1の基材端部によって一方の端部で画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL4を有し、このときL4<Lであり、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む、6に記載の複合酸化触媒。
8. 第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する重量比が10:1≧1.5:1である、1~7のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
9. 第2の基材端部によってその第2の端部において画定された触媒ウォッシュコートゾーンがマンガンを含み、及び/又は、第2の触媒ウォッシュコート層がマンガンを含む、2~7のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
10. マンガン含有ゾーン又は層中の耐熱性金属酸化物支持材料が、シリカをドープしたアルミナ、マンガンをドープしたアルミナ、シリカ及びマンガンの両方をドープしたアルミナ、混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物、又はマンガンをドープした混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む、9に記載の複合酸化触媒。
11. 含浸されたマンガン成分が耐熱性金属酸化物支持材料上に担持されている、9又は10に記載の複合酸化触媒。
12. 第2のウォッシュコート層又は第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分が、白金から本質的になる、3~11のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
13. 第1の触媒ウォッシュコート層中の2つ以上の白金族金属成分が、白金及びパラジウムの両方からなる、5~12のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
14. 第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量が、元素金属として計算される100g/ft3未満である、1~13のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
15. 第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分が、白金及びパラジウムの両方を含む、1~14のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
16. 第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比が、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比よりも大きい、15に記載の複合酸化触媒。
17. 第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後に、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比が、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい、4~16のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
18. L1がLの50%未満である、1~17のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
19. 元素金属として計算される全体として5~60g/ft3の、基材上の総白金族金属担持量を含む、1~18のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
20. 複合酸化触媒中の総Pt:Pd重量比が、全体として3:2~9:1である、1~19のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
21. 第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総アルカル金属担持量が、元素金属として計算される10~100g/ft3である、1~20のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
22. 第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総元素アルカリ土類金属の総元素白金族金属に対する重量比が、<1:1である、1~21のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
23. 第1の触媒ウォッシュコートゾーン中のアルカリ土類金属が、バリウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)、好ましくはBaを含む、1~22のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
24. 第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、基材の表面に垂直の方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有し、1つ以上の白金族金属成分及び/又は第1のアルカリ土類金属成分の濃度は、基材の表面に向かって垂直方向に減少する、1~23のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
25. 少なくとも第1の耐熱性金属酸化物支持材料が、ヘテロ原子、好ましくはシリカをドープしたアルミナを含む、1~24のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
26. 使用時にリン及び/又は亜鉛汚染から下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの少なくとも一部を保護するために、第1の基材端部から軸方向に延在するウォッシュコート被覆層を含み、このとき、ウォッシュコート被覆層は、0.8g/in3超の粒子状金属酸化物担持量を含む、1~25のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
27. ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物が、10nm以上の平均細孔径を有し、及び/又はウォッシュコート被覆層が、10nm以上の平均粒子間細孔径を有する、26に記載の複合酸化触媒。
28. ウォッシュコート被覆層の粒子状金属酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらのうちのいずれか2つ以上の混合酸化物若しくは複合酸化物、又はアルミノケイ酸塩ゼオライトからなる群から選択される、26又は27に記載の複合酸化触媒。
29. ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物が、100m2/g超の比表面積を有する、26、27又は28に記載の複合酸化触媒。
30. ウォッシュコート被覆層中の粒子状金属酸化物が、白金である、又は≧1:1のPt:Pd重量比の白金とパラジウムとの組み合わせである、白金族金属を担持する、26~29のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
31. ウォッシュコート被覆層中の白金族金属担持量が、1~35gft-3である、30に記載の複合酸化触媒。
32. 基材がハニカムフロースルー基材モノリスである、1~31のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
33. 1~32のいずれか1つに記載の複合酸化触媒と、酸化触媒の下流側に配置された煤煙フィルタ基材と、を備え、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている、車両用圧縮点火機関のための排気システム。
34. 煤煙フィルタ基材が、白金族金属触媒又は選択的触媒還元触媒で触媒される触媒煤煙フィルタ基材である、33に記載の排気システム。
35. 液体炭化水素源に接続された液体炭化水素用の噴射装置を備え、噴射装置は、エンジンの下流の排気システム内を流れる排気ガス中に液体炭化水素を噴射するように配置されている、33又は34に記載の排気システム。
36. 選択的触媒還元触媒で触媒される煤煙フィルタ基材の下流に配置された基材を備える、33、34又は35に記載の排気システム。
37. 選択的触媒還元触媒を含み、システムは、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の噴射装置を備え、噴射装置は、複合酸化触媒の下流かつ選択的触媒還元触媒を含む基材の上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素還元剤前駆体を噴射するように配置されている、34、35又は36に記載の排気システム。
38. 33~37のいずれか1つに記載の排気システムを備える、重量ディーゼル車両用圧縮点火内燃機関であって、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている、圧縮点火内燃機関。
39. 38に記載の圧縮点火内燃機関を備える、重量ディーゼル車両。
40. 酸化触媒を高濃度の炭化水素燃料を含む排気ガスと接触させることにより、通常の動作条件に対して排気システム内を流れる排気ガス中の高濃度の炭化水素燃料から発熱がもたらされることによって、車両用圧縮点火内燃機関の排気システムにおいて複合酸化触媒の下流に配置された煤煙フィルタを加熱するための、1~32のいずれか1つに記載の複合酸化触媒の使用。
41. 車両用圧縮点火内燃機関により生成される排気ガスを処理するために排気システムで使用するための複合酸化触媒を製造する方法であって、複合酸化触媒は、
全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する、基材と、
基材表面上及び基材表面に沿って軸方向に直列に配置された2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、長さL1を有し、L1<Lである、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部によって1つの端部において、かつ、長さL2を有し、L2<Lである、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部において画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、≧1である白金のパラジウムに対する重量比で白金とパラジウムの両方を含む、上面に支持された2つ以上の白金族金属成分と、を含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に支持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、触媒ウォッシュコートゾーンと、を含み、
基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft3)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きく、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持される、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含み、
(a)触媒ウォッシュコート層を、基材表面に、基材の1つの端部から延在する長さ分適用する工程であって、触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、工程と、
(b)第1の基材端部によって1つの端部で画定された長さL1のゾーン内の触媒ウォッシュコート層に、1つ以上の白金族金属を含有する溶液を含浸させる工程と、を含み、
1つ以上のアルカリ土類金属成分は、工程(a)の触媒ウォッシュコート層及び/又は工程(b)で使用される含浸溶液中に存在する、方法。
42. 工程(a)において、触媒ウォッシュコートは基材の全長Lに沿って延在する、41に記載の方法。
43. 工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、方法は更に、工程(a)の前又は工程(a)の後であるが、いずれの場合も工程(b)の前に、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さで第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(a’)を更に含み、このとき、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、41に記載の方法。
44. 第1の触媒ウォッシュコート層が第1の基材端部から延在し、第2の触媒ウォッシュコート層が第2の基材端部から延在し、それによって、第2の触媒ウォッシュコート層が第1の触媒ウォッシュコート層に部分的に重なる、43に記載の方法。
【0270】
定義
白金族金属(例えば、第1の白金族金属又は第2の白金族金属)の、基材の表面に垂直な方向(例えば、直線)における分布に関する任意の言及は、一般に、触媒層が配置されている基材の同じ表面に垂直な方向を指す。参照目的のために、基材の表面は、概して水平(すなわち、長手方向)平面にある。基材の表面に垂直な方向は、典型的には、基材の表面に垂直な触媒層(すなわち、触媒層の厚さを露出させる断面平面)を通る断面平面内の方向である。断面平面は、概して垂直(すなわち、横断)面である。断面平面は、触媒層が配置されている表面に垂直である。より典型的には、断面平面は、基材の吸入端面及び/又は基材の吐出端面(すなわち、吸入端面を含む平面及び/又は吐出端面を含む平面)と実質的に平行である。この文脈における「実質的に平行」への任意の言及は、基材の断面平面と吸入端面又は吐出端面との間の、5°未満、好ましくは2.5°未満、より好ましくは1°未満(例えば0.5°未満)の角度を指す。
【0271】
「基材の表面」への任意の言及は、一般に、基材を通るチャネルの壁の表面を指す。
【0272】
本明細書で使用するとき、用語「層」(例えば、触媒層)は、基材の表面又は別の層の表面などの表面上に広がる、ある厚さの材料を指し、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術(例えば、透過型電子顕微鏡)を使用して、組成的に異なる第2の層から第1の層を区別することが可能である)。
【0273】
白金族金属の分布に対して本明細書で使用するとき、用語「均一」は、一般に、組成物中の任意の点における白金族金属の量が、組成物全体(例えば層)における白金族金属の平均量の±20%以内である組成物(例えば、層)を指す。好ましくは、組成物中の任意の点における白金族金属の量は、組成物全体(例えば層)における白金族金属の平均量の±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%以内である。白金族金属の平均量は、その組成物の調製中に測定される白金族金属の量に相当するべきである。組成物中の任意の点における白金族金属の量は、透過型電子顕微鏡を用いたEDX分析などの従来の分析技術を使用して決定することができる。
【0274】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。
【0275】
本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0276】
用語「担持量」は、白金族金属成分、アルカリ土類金属成分、又は、触媒ウォッシュコートゾーン、触媒ウォッシュコート層中に存在する、若しくは全体として基材上に存在する、耐熱性金属酸化物支持材料上に担持される、1つ以上の白金族金属成分及び1つ以上のアルカリ土類金属成分の両方を含むウォッシュコート配合物などの成分の、濃度量を定義するために使用される。EPMA又はXRF法によって、各白金族金属成分又は各アルカリ土類金属成分の局所濃度を決定することが可能である。本明細書及び先行技術で使用される担持量の単位は、一般に、使用される基材の体積に概ね関連する、g ft-3若しくはg in-3、又はそれらのSI単位に相当するグラム/リットルで表される。体積成分は、例えばウォッシュコート層が適用される基材の体積成分に関する。典型的には、比較的低濃度の成分は、ある量の100分の1又は1000分の1を参照する必要がない意味のある量にするために、「g ft-3」として与えられ、ウォッシュコート総適用量など、より高濃度の量が「g in-3」として与えられる。技術常識の慣習により、担持量の単位の「体積」成分は、基材が固体である、例えば、シリンダの全体積であると仮定し、基材が、基材組成物から作製された壁によって画定された内部を延在するチャネルを有すること、又は基材組成物が本質的に多孔質であるという事実を無視する。
【0277】
用語「含む(comprising)」は、指定された要素が必須であることを意味することを意図するものであるが、他の要素が追加されてもよく、それでもなお、請求項の範囲内に構成を形成してもよい。
【0278】
本明細書で使用されるとき、「本質的になる」という表現は、より広義の「含む」の代わりになり得、特定の材料又は工程、及び、その特徴若しくは他の請求項の特徴と組み合わせたその特徴の基本的かつ新規特性及び機能に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む、特徴の範囲を制限する。触媒ウォッシュコートゾーンが白金から本質的になる場合、これは、白金からなることを意図しているが、他の白金族金属、例えばパラジウムが、例えば、製造中の触媒ウォッシュコートゾーンへのパラジウムの移動のために、最終生成物の触媒ウォッシュコートゾーンに非意図的に存在し得ることを意味する。この文脈では、「から本質的になる」は、白金から本質的になると定義される触媒ウォッシュコートゾーン中に、非意図的にパラジウムが存在することを除外しない。用語「から本質的になる」は、「からなる」という表現を包含し、「含む」又は「からなる」のいずれかと互換可能である。「からなる」は、通常それに関連する不純物を除いて、列挙されたもの以外の材料を含めることに対して請求項を閉鎖する。
【0279】
本発明による複合酸化触媒に関して、本発明の基本的かつ新規な特性は、基材表面上及び基材表面に沿って軸方向に直列に配置された少なくとも2つの触媒ウォッシュコートゾーンの基材であり、基材吸入端によって1つの端部において画定された第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、耐熱性金属酸化物支持材料と、≧1のPt:Pd重量比の白金及びパラジウムの両方と、バリウムとを含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、耐熱性金属酸化物支持材料と、唯一の白金族金属としての白金か、第1の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きいPt:Pd重量比で白金及びパラジウムの両方かのいずれかと、含む。
【0280】
表現「白金族金属」(例えば、第1の白金族金属又は第2の白金族金属)の文脈において、触媒中の正確な触媒種を特徴付けることが困難であることが多く、白金族金属は、元素金属形態で存在しない場合があることを理解されたい。「白金族金属...から本質的になる」への任意の言及は、白金族金属の元素形態、白金族金属を含む合金、又は白金族金属を含む化合物(例えば、白金族金属の酸化物)の「白金族金属部分」を包含する。好ましくは、任意のそのような「白金族金属部分」は、白金族金属の元素形態又は白金族金属を含有する合金、より好ましくは白金族金属の元素形態である。
【0281】
請求項2及び
図1の実施形態を参照すると、第1及び第2の触媒ウォッシュコート層は、「第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層との間で実質的に重なることなく」、互いに当接しており、用語「実質的に重なる」は、第1の触媒ウォッシュコートコーティングと第2の触媒ウォッシュコートコーティングとの間に間隙がない製品を含むことを意図する。実際には、2つの複合ウォッシュコート層の間に、それらの間の接合部においていくらかの重なりを有することなく、完全に「間隙がない」コーティングを達成することは、実質的に非常に困難である。したがって、本発明の第6の態様によって包含される方法によって作製される実際の製品は、1~2mmから軸方向長さの最大15%、例えば、最大14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、8%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%の非意図的な重なりを有し得る。したがって、第1の態様による複合酸化触媒は、この非意図的な重なりの最大寸法を有する製品まで延在する。
【実施例】
【0282】
これから、以下の非限定的な実施例によって本発明を例示する。誤解を避けるため、全てのコーティング工程は、本出願人による国際公開第99/47260号に開示されている方法及び装置を用いて行われ、すなわち、(a)基材の上に収容手段を配置する工程と、(b)所定量の液体成分を、(a)の次に(b)又は(b)の次に(a)のいずれかの順で、上記収容手段に投入する工程と、(c)真空を適用することにより、上記の量の液体成分の全体を、基材の少なくとも一部に引き込み、リサイクルすることなく、基材内に上記の量の実質的に全てを保持する工程と、を含む。
【0283】
実施例1(比較例)
1平方インチ当たり400個のセルを有し、壁厚1000分の6インチ(6ミル)、全長4インチのコーディエライトがむき出しのハニカムフロースルー基材モノリスを、触媒ウォッシュコートを用いて、以下のようなゾーン構成でコーティングした。白金及びパラジウムの水性塩(硝酸塩として)と、5重量%のシリカをドープしたアルミナ担体とを含有する第1の触媒ウォッシュコートスラリーを、基材モノリス上に、吸入端と標示した一方の端部からの基材モノリス全長の75%の軸方向長さまでコーティングした。白金及びパラジウム塩の濃度は、第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の白金のパラジウムに対する重量比を2:1として、6.67Pt:3.33Pd gft-3のコーティング中担持量を達成するように選択した。次いで、この吸入部コーティングを従来のオーブン内において100℃で1時間乾燥させて、過剰な水及び他の揮発性種を除去した。
【0284】
存在する唯一の白金族金属として水性硝酸白金塩と、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを含有する第2の触媒ウォッシュコートスラリーを、第1のコーティングが適用された端部、すなわち吐出端部とは反対側の基材モノリスの端部から基材上にコーティングした。第2の触媒ウォッシュコートのコーティングの軸方向長さは、全基材長さの50%、すなわち、第1のウォッシュコート触媒コーティングと重なった第2のウォッシュコート触媒コーティングの25%であった。使用した白金塩の濃度を、コーティングされた50%軸方向基材長さにおいて、2gft-3のPt担持量を達成するように選択した。第1及び第2のウォッシュコートコーティングの両方でコーティングされた基材を、従来のオーブンで100℃にて1時間乾燥させ、次いで、乾燥させた部品を500℃で1時間焼成して、白金及びパラジウム塩を分解し、白金及びパラジウムをシリカをドープしたアルミナ支持体に固定した。
【0285】
次いで、硝酸白金と硝酸パラジウムの両方の塩を1:1重量比で含む水性媒体を、第1の触媒ウォッシュコートのコーティング上で、基材吸入端から測定された25%の基材の軸方向長さに含浸させた。塩の濃度を、基材の含浸された長さにおいて白金及びパラジウムのそれぞれについて25gft-3の重量を達成するように選択した。これにより、下層の第1の触媒ウォッシュコートコーティングを50gft-3上回る追加的担持量によって、吸入端のゾーン中での高PGM担持量をもたらした。含浸させた部品をオーブンで乾燥させ、上記のように焼成した。
【0286】
全てのウォッシュコート及び含浸溶液は本来酸性であり、pH調整を行わなかった。
【0287】
最終生成物は、軸方向に直列に配置された3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む基材モノリスを含み、第1の高担持量前側ゾーンは、吸入端から測定される基材モノリスの軸方向長さの約25%として画定され、下層の2Pt:1Pdの第1の触媒ウォッシュコートと含浸された1:1のPt:Pdとの組み合わせである総白金族金属担持量を有し、軸方向直列にその次は、第2の触媒ウォッシュコートゾーンが、基材モノリスの軸方向長さの約50%の2Pt:1Pdの第1の触媒ウォッシュコートを、第1の触媒ウォッシュコートゾーンよりも低い総白金族金属担持量で含み、最後に、吐出端にある第3のPtのみゾーンが、基材モノリスの軸方向長さの約25%の第2の触媒ウォッシュコートを、第1又は第2の触媒ウォッシュコートゾーンのいずれかよりも低い総白金族金属担持量で含んでいた。全体としての基材モノリス上の総白金族金属担持量は、2.95:1と同等の11.8:4の総Pt:Pd重量比で20gft-3であった。
【0288】
EPMA-WDX(電子マイクロプローブ分析-波長分散型X線)画像分析を使用すると、白金及びパラジウムの両方の高濃度を含有する、この方法で調製された第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面に垂直な方向にPdの不均一な分布を有すること、すなわち、Pdの量は、基材の表面に向かって垂直方向に減少していることが見出された。換言すれば、基材の吸入端に入るガスと接触するウォッシュコート層の上面におけるPd濃度は、基材表面のウォッシュコート層よりも高かった。比較的程度は低いが、白金はまた、パラジウムと同じ傾向に従うことが見出された。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の基材の表面に垂直な方向におけるPdの不均一な分布が、最も顕著であった。この効果は、本明細書では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中のPdのいわゆる「クラスト」の形成と呼ばれる。
【0289】
実施例2
本発明による、白金及びパラジウムの水性塩に加えて、第1の触媒ウォッシュコートスラリーが水性酢酸バリウム塩を含有することを除き、比較例1に開示したものと同一の生成物を調製した。第1の触媒ウォッシュコートコーティング中のバリウム担持量が、第1の触媒ウォッシュコートコーティングの75%軸長について80gft-3となるように、酢酸バリウムの濃度を選択した。すなわち、第1及び第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、80gft-3の担持量でバリウムを含んでいた。総白金族金属担持量及び全体として基材モノリス上のPt:Pd重量比は、実施例1と同じ、すなわち20gft-3であった。
【0290】
EPMA-WDX画像分析を使用すると、このようにして調製された第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面に向かって垂直方向に減少するPdの量、及び程度は低いがPtと同じく、基材の表面に向かって垂直方向に減少するバリウムの比較的強い不均一な分布も有することが見出された。換言すれば、Pd及びBa(Ptに対して程度は低い)の両方は、基材の吸入端に入るガスと接触してウォッシュコート層の表面に「クラスト」を形成した。
【0291】
実施例3-吸入ゾーン中のバリウムの有無を比較するための試験方法及び結果
実施例1及び2に従って調製された各複合酸化触媒の熱分析を、実験台に装着したディーゼルエンジンを使用して実施した。エンジンについては、エンジン運転及び排気ガス炭化水素濃縮(発熱生成)の両方について、EUVI B7燃料(7%Bio燃料)を注ぎ、2200rpmで運転し、その内部に、複合酸化触媒のそれぞれが、吸入端/第1の触媒、上流側に向けられた高担持量ウォッシュコートゾーンについて試験するために挿入され得る、排気配管及び取り外し可能なキャニングを含む排気システムを装備した。エンジンは、7リットル容量のEUV 6シリンダエンジンであり、2500rpmで235kWを生み出し、排気システムには、エンジンマニホールドから下流かつ試験される複合酸化触媒の上流の排気ガス配管に、炭化水素燃料を直接噴射するために配置された「7番目 の噴射器」を備えた。この燃料噴射装置は、エンジンのシリンダに関連付けられた6つの燃料噴射装置に追加されるため、「7番目 の噴射器」と名付けられる。熱電対は、複合酸化触媒への吸入部に位置し、各複合酸化触媒の基材モノリスの中心線に沿った様々な軸方向位置に挿入した。
【0292】
各触媒を、1000kg/時の排気ガス流量で490℃の吸入部排気ガス温度にて10分間調整した後、急速冷却工程を行った。次いで、排気ガス流量を720kg/時(試験した基材のサイズ及び体積では120,000時間-1の空間速度に対応)に設定し、設定した吸入部排気ガス温度が約270℃に安定して約1800秒間達成されるようにエンジン負荷を制御した。
【0293】
次いで、下流熱電対及び炭化水素センサによって、複合酸化触媒基材の吐出部において600℃と安定した炭化水素「スリップ」の両方を標的とする7番目 の噴射装置を介して炭化水素燃料を噴射することによって、それぞれ安定した設定温度で発熱を生成させる複合酸化触媒の能力について試験した。複合酸化触媒の下流で測定された炭化水素スリップが1000ppm C3を超えた場合に試験を停止したが、すなわち、検出された炭化水素中の炭化水素鎖の長さを問わず(典型的なディーゼル燃料中の形式上炭素鎖長はC16である)、1000ppm C3相当が検出された場合に試験を停止した。したがって、187.5ppm C16が検出された場合、1000ppm C3(C16は5 1/3×C3炭化水素と等価である)相当とした。
【0294】
約270℃に設定した吸入部温度での試験に続いて、システムを再び、吸入部排気ガス温度490℃で10分間、1000kg/時の流量でプレコンディショニングした後、急速冷却し、第2の設定温度、例えば約260℃での発熱試験を行った。このサイクルを繰り返して、約250℃、240℃及び230℃の設定温度での発熱生成を試験した。複合酸化触媒が複合酸化触媒吐出端で600℃の安定した発熱を生成できない、又は複合酸化触媒吐出部で測定された炭化水素スリップが1000ppm(C3)を超えた、のいずれかの場合に試験を停止した。
【0295】
実施例1及び2で実施したこれらの試験の結果を以下の表1に示す。安定な発熱が許容可能な炭化水素スリップで達成され得る吸入部温度が低いほど、より有利であることが理解されるであろう。これは、フィルタ再生事象が、より低い吸入部排気ガス温度により、すなわち、通常運転では発生頻度が低い、通常運転条件下での排気ガス温度がフィルタ再生を開始するのに十分に高くなるまで待機する必要なしに開始することができるという点で、システムの設計柔軟性が増すためである。また、複合酸化触媒への吐出部での所望の排気ガス温度を達成するために、多くの炭化水素を噴射する必要がないため、全体的な燃費を改善する。
【表1】
【0296】
表1は、従来の酸化触媒(実施例1)は250℃以下の吸入部温度で安定した発熱を達成できず、本発明による複合酸化触媒は230℃に至るまで安定した発熱を達成できることを示す。
【0297】
実施例4-触媒のリン及び/又は亜鉛汚染を防止するための保護床の評価-試料の調製
図5に示す構造を有する本発明による触媒を使用して、保護床特徴部の機能原理を示した。長さ10.5インチ×直径4インチの寸法を有する円筒形のコーディエライトフロースルーハニカムモノリス基材を、5重量%のシリカをドープしたアルミナ微粒子支持体に担持されたPt及びPdを2:1の重量比で、及び80gft
-3のバリウムを含む基材上に吸入端(I)からの75%の軸方向コーティング長でコーティングされた第1の触媒ウォッシュコート層(6)、並びに、吐出端(O)から基材の軸方向長さの50%をコーティングした5重量%のシリカをドープしたアルミナ微粒子支持体(バリウムなし)上にのみ担持されたPtのみを含む、第2のウォッシュコート層(7)でコーティングした。第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層(6)に、50gft
-3の追加の合計PGM担持量で基材の軸長の25%にわたって、Pt及びPdの1:1重量比を達成するのに十分な白金及びパラジウム塩の溶液を含浸させることによって得た。複合酸化触媒は、全体として、21gft
-3の総白金族金属担持量、1.4:1と同等の7:5のPt:Pd重量比を有していた。すなわち、この実施例4の第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、>1:1のPt:Pd重量比を有していた。
【0298】
3つの試料を調製した。第1の試料は、あらゆる保護床を適用せずに、対照として使用した。第2の試料は、0.5gin-3のウォッシュコート担持量で基材(I)の吸入端から基材軸方向長さの合計30%で第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)上にコーティングした5重量%のシリカをドープしたアルミナ(白金族金属を含まない)(第1(6)及び第2(7)の触媒ウォッシュコート層で使用したものを同じシリカをドープしたアルミナ)のウォッシュコートを有しており、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの25%は、シリカをドープしたアルミナ「保護床」のウォッシュコート被覆層で完全に被覆されており、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの120%はウォッシュコート被覆層でコーティングされていた。使用した5重量%のシリカをドープしたアルミナの平均細孔径は、約19nmであった。
【0299】
5重量%のシリカをドープしたアルミナ「保護床」のウォッシュコート担持量が1.0gin-3であったことを除いて、第2の試料と同様に第3の試料を調製した。
【0300】
3つの試料をそれぞれ、650℃の空気中で50時間オーブン中で経時処理を行った。
【0301】
実施例5-触媒のリン及び/又は亜鉛汚染を防止するための保護床の評価-試料の試験
実施例4に従って調製した3つのコーティングした基材試料を、独自のキャニング構成で並行して同時にキャニングし、キャニングした基材を、実験台に装着した、ZDTP燃料添加剤を1750ppmの濃度まで混合したMK1燃料でかけているEuro 2排出基準認証の16リットル重量ディーゼルエンジンの排気システム内に挿入した。次いで、基材を、以下のサイクルを使用してエンジンにより経時処理し、これは、キャニングされた基材が全体として、サイクル毎に触媒基材1リットル当たり0.5gのZDTPまで曝露するように計算していた。
(i)定常状態である470℃の基材吸入部温度をもたらすエンジン負荷において30分間「浸漬」し、
(ii)定常状態である210℃の基材吸入部温度をもたらすエンジン負荷において15分間「浸漬」し、その後、250℃の吸入部温度で15分間、最後に325℃の吸入部温度で10分間行い、
(iii)工程(i)及び(ii)を6回繰り返した。
【0302】
次いで、試料を脱キャニングし、次の手順に従って実施例3に記載のエンジンを使用して各試料を試験した。
【0303】
「連続発熱」試験を以下のように行った。各触媒を490℃の吸入部温度で20分間調整した後、320℃の吸入部温度まで急速冷却し、触媒を10分間保持した。次に、7番目の噴射装置を介した炭化水素噴射を、基材吐出部において600℃をもたらす発熱を達成する速度で開始した。この発熱を定常状態で5分間維持した。次いで、720kg/hの流量で1分当たり1℃の吸入部温度低下を達成するため、エンジン負荷を連続的に調節することによって、炭化水素酸化触媒消化温度の下降を開始した。下流の触媒煤煙フィルタ吸入部の温度が425℃を下回ったとき、又は1500ppm C3の炭化水素スリップ分析限界に達したときに、操作を停止した。
【0304】
各基材試料の吸入端から測定された基材の最初の4分の1のウォッシュコートコーティングを、X線蛍光(XRF)を用いて分析し、ウォッシュコートの元素組成、並びにリン及び亜鉛による汚染を確認とした。検出された汚染の程度を、Omnian多元素参照標準スキャンに対してゼロ合わせした。結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0305】
リン汚染は、3つの部品全てにおいて一貫しており、任意の2つの試料間で最大約8.0%の差があった。
【0306】
当業者であれば、本実施例で使用される手順を使用して達成されたリン汚染は、通常の使用により当該分野で報告されているよりも多いリン汚染を達成することを理解するであろう(上記参照、ここでは、事後触媒試料は、車両耐用期間終了時において、1.0~1.5重量%のリン汚染を有することが見出された)。しかしながら、この実施例5に記載の手順を用いて得られたリン汚染のレベルは、車両耐用期間終了時に通常の運転において経験的に見られるものと同等であった。
【0307】
【0308】
これらの結果から、保護床特徴部がない参照触媒と比較して、保護床特徴部を含む2つの試料について、≧500℃の発熱を得るために必要とされる吸入部温度において、わずかに5.2℃(2.2%)の増加があったことが分かる。これは、エンジン管理が、保護床特徴部を含む複合酸化触媒を含む、本発明による排気システムにおける下流フィルタ構成要素の再生のための発熱生成事象を開始することができる吸入部温度の、小さくかつ実質的にわずかな増加が存在することを示す。
【0309】
また、存在する同等量の汚染リンを有する参照及び本発明による試料中の酸化触媒の同一のセグメントにもかかわらず、1.0g/in3の担持量の保護床を含む試料は、参照と比較して、著しく高い炭化水素酸化活性を保持したことも分かる(参照試料の吸入部温度の損失が30.3%であったのに対し、500℃の発熱を達成するのに必要な吸入部温度の損失は13.9%のみ)(表3参照)。しかしながら、ウォッシュコート被覆層に0.5g/in3を含む試料は、参照に対して同様の活性損失を受けたことも理解され得る。
【0310】
実施例6-触媒のリン及び/又は亜鉛汚染を防止するための保護床の更なる評価
複合酸化触媒が全体として、15gft-3の総白金族金属担持量、及び1.45:1と同等である、7.24:5のPt:Pd重量比を有しているが、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは依然として>1:1のPt:Pd重量比を有していたことを除いて、実施例4に記載の触媒と同様の配合及び設計を有する触媒を調製した。
【0311】
【0312】
実施例6.2及び6.11の新しい「γアルミナ」は、約13nmの固有平均細孔径を有していた。実施例6.3、6.4及び6.10及び6.12~6.14の新しい「5重量%のシリカをドープしたアルミナ」は、15nmの固有平均細孔径を有していた。新しい「広細孔アルミナ」は、約20nmの固有平均細孔径を有していた。実施例6.9の新しいセリアは、約8nmの固有平均細孔径を有していた。実施例6.7及び6.8のAEIアルミノケイ酸塩ゼオライトは、約20のシリカ-アルミナ比を有していた。実施例6.8のCuイオン交換AEIアルミノケイ酸塩ゼオライト中の銅担持量は、約3.8重量%であった。本実施例で使用される全ての粒子状金属酸化物材料は、100m2/g超の当初の比表面積を有していた。
【0313】
各保護床実施例で使用される粒子状金属酸化物を、20μm未満のD90、8μm未満のD50(平均粒径)を有するように粉砕したところ、出願人が考える組み合わせにより、10nm以上の層である保護内の平均粒子間細孔径をもたらす。
【0314】
全ての試料を、650℃の空気中で50時間オーブン中で経時処理を行った。実施例は、上記の実施例5に記載したものと同じ方法で試験した。結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0315】
表5に示す結果から、保護床でコーティングされた全ての実施例は、239.0℃の発熱失敗温度を有する対照(参照)実施例6.1と比較して、リンによる経時変化前の発熱活性が低下していることが分かる。しかしながら、保護床を含む実施例6.2~6.14の全ては、リンによる経時変化後の基準よりも良好な成績を収めた(285.9℃)。最もよい成績であった実施例は、例えば、252.0℃未満のリン経時変化前と、例えば273.0℃未満のリン経時変化後との間の成績に合理的なバランスを有するものであった。
【0316】
また、PGMが保護床の粒子状酸化物材料上に担持された実施例のように、より高いウォッシュコート担持量の試料(例えば、実施例6.4を6.3と比較)がより良い成績であったことも分かる。
【0317】
実施例7-吐出部触媒ウォッシュコートゾーンへの組成変化によるNO酸化触媒活性についての初期対経時変化後「Δ」の調査
実施例4に記載したものと同様であるが、保護床がなく、
図5に示す構造を有する一連の触媒を調製した。実施例4の触媒試料との唯一の他の違いは、複合酸化触媒が全体として30gft
-3の総白金族金属担持量を有し、第2のウォッシュコート層(7)の配合を修正して吐出ゾーンのNO酸化活性を調べたことであり、その詳細は以下の表7に記載されている。この実施例7の第2のウォッシュコート層中の全ての試料中の総白金族金属担持量は12.5gft
-3であり、試験した全ての試料中の第2のウォッシュコート層のウォッシュコート担持量は同等であり、試験された第2のウォッシュコート層はバリウムを含まなかった。複合酸化触媒中の総Pt:Pd重量比は全体として、実施例4の試料とは異なる。
【0318】
各新しい触媒を、実施例3に記載の実験台に装着したディーゼルエンジンの試験排気システム内に挿入した。まず、新しい触媒を、550℃の触媒床温度を生成するエンジン負荷及び速度で、30分間「調整」した。次に、得られた「調整済み」触媒を室温まで放冷させた。次いで、調整された初期触媒を、一定の1400rpmのエンジン速度及び空間速度を増加させる負荷勾配過渡試験サイクルにおいて試験し、複合酸化触媒のNO酸化活性を決定した。複合酸化触媒の下流の排気ガス中に検出されたNO
2/NO
xを、基材吸入部温度に対して記録した。次いで、試験した触媒を冷却し、脱キャニングし、600℃の空気/10% H
2O中で140時間、熱水的にオーブン中で経時処理し、車両耐用期間終了時の酸化活性をシミュレートした。その後、経時変化した触媒を実験台に装着したディーゼルエンジンの排気システム内に再装着し、再調整し、新しい触媒について記載したものと同じプロトコルを用いて再試験した。
【表6】
†焼成された材料中の5.0重量%のMnO
2に相当する。
*5重量%のシリカをドープしたアルミナに、所望の焼成されたマンガンの重量を達成するのに十分な濃度で硝酸マンガン溶液を含浸させた。
【0319】
実施例8-吐出部触媒ウォッシュコートゾーンへの組成変化によるNO酸化触媒活性についての初期対経時変化後「Δ」の更なる調査
実施例7に記載したものと同様であり、
図5に示す構造を有する一連の触媒を調製した。実施例7の触媒試料との唯一の違いは、第1の触媒ウォッシュコート層(6)に、複合酸化触媒が全体として、20gft
-3の総白金族金属担持量を有するように、追加の35gft
-3量のPt及びPdを1:1の重量比で有する、基材の軸長の25%を含浸するのに十分な白金及びパラジウム塩の溶液を含浸させることによって、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが得られたことであり、この実施例8の第2のウォッシュコート層中の全ての試料中の総白金族金属担持量は、7.5gft
-3であった。複合酸化触媒における総Pt:Pd重量比は、1.9:1であった。
【0320】
触媒の経時処理が異なることを除いて、上記実施例7に記載したものと同じ方法で試験を実施した。この実施例8では、新しい「コンディショニングされた」触媒を、650℃の空気中で50時間オーブン中で経時処理した。
【表7】
†5.7重量% MgO/94.3wt% Al
2O
3に相当する。X線回折(XRD)によって決定されるとき、この材料は、主に単相の立方晶スピネルである。ある程度の過剰なAl
2O
3が存在してもよい。
*11.0重量% Mn
O2に相当。
*23.0重量% Mn
O2に相当。
*35.0重量% Mn
O2に相当。
【0321】
加えて、本実施例8の複合酸化触媒を、実施例5に記載の「連続発熱」試験に従うが、ZDTPによる経時処理は行わずに試験した。結果を以下の表9に示す。
【表8】
【0322】
表8及び9に示される結果から、予備形成されたマンガンをドープした理論空燃比に満たない混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む試料8.4、8.5及び8.6が、初期対経時処理後NO酸化活性を低下させ、発熱生成を改善させる驚くべきかつ有益な組み合わせを示すことが分かる。
【0323】
実施例9-第1の触媒ウォッシュコートゾーンのPt:Pd重量比試験
現在のパラジウムの重量当たりコストは、白金のコストの2倍を超える。この実施例9では、出願人は、本発明による複合酸化触媒中のパラジウムの総量を削減するために一連の実験を行った。
【0324】
実施例8に記載したものと同様であり、
図5に示す構造を有する一連の触媒を調製した。実施例8の触媒試料との唯一の違いは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの含浸溶液の組成を、35gft
-3の追加の総PGM担持量で吸入基材端部から基材の軸方向長さの25%において、以下の表10に記載されるPt:Pd重量比の範囲を達成し、複合酸化触媒が全体として15gft
-3の総白金族金属担持量をするのに十分に変化させたことであり、第2のウォッシュコート層中の唯一の白金族金属が白金であり、すなわち、2.0gft
-3のウォッシュコート担持量において、1:0のPt:Pd重量比とした。
【0325】
表10は、実施例8に記載されるように経時処理して試験した触媒試料に関する「連続発熱」試験の結果を示す。
【表9】
【0326】
表10に示される結果から、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金対パラジウムの重量比は、複合酸化触媒の発熱を生成し維持する能力に過度に影響を与えずに増加できることが分かる。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーンを得るための含浸媒体がパラジウムを含有しない場合(実施例9.5)、発熱失敗がより高くなるため、この構成はより好ましくない。したがって、好ましくは、含浸媒体及び下層の含浸された触媒ウォッシュコート層の組み合わせたPt:Pd重量比は、白金を安定化させるために、例えば10:1≧1:1である程度のパラジウムを含有する。
【0327】
いずれの疑義も回避するために、本明細書に引用される全ての文書及び全ての文書の内容全体が、参照により本出願に組み込まれる。