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特許7139537排ガス処理システムおよび排ガス処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】排ガス処理システムおよび排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/78 20060101AFI20220912BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B01D53/78 ZAB
B01D53/56 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022012492
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214928
【氏名又は名称】直江津電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-195438(JP,A)
【文献】特開2008-126154(JP,A)
【文献】特開平11-156154(JP,A)
【文献】特開平11-197450(JP,A)
【文献】特開2005-334755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/74-53/85
B01D 53/34-53/73
B01D 53/14-53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要除去成分を含有する排ガスを、前記要除去成分を吸収する吸収液と接触させて、排ガス中の要除去成分を吸収除去する反応塔と、
前記吸収液を構成する薬剤を前記反応塔に注加する薬剤供給装置を有する薬剤注加機構と、
前記吸収液を構成する水を前記反応塔に注水する注水機構と、
前記薬剤注加機構および前記注水機構を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記注水機構による注水制御を、第1制御情報に基づいて行う、排ガス処理システムであって、
前記第1制御情報は、前記薬剤供給装置の所定時間における稼働時間または稼働率である、排ガス処理システム。
【請求項2】
前記薬剤供給装置は、薬剤供給ポンプである、請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御情報と注水量との対応関係を示すテーブルまたは関係式を予め記憶しており、
前記制御部は、前記第1制御情報を所定のサイクル時間ごとに繰り返し取得しており、前記テーブルまたは関係式を用いて、今回のサイクル時間で得られた前記第1制御情報に基づいて、次回のサイクル時間における注水量を制御する、請求項1または2に記載の排ガス処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1制御情報とは異なる第2制御情報に基づいて、前記薬剤供給装置による薬剤の注加制御を行うとともに、
前記制御部は、リアルタイムで得られた前記第2制御情報に基づいて、前記薬剤供給装置による薬剤の注加制御をリアルタイムで繰り返し実行するとともに、所定のサイクル時間ごとに得られた前記第1制御情報に基づいて、前記注水機構による注水制御を所定のサイクル時間ごとに繰り返し実行し、
前記第2制御情報は、前記反応塔における前記吸収液のpH、排ガス中の前記要除去成分の濃度もしくは量、または、前記吸収液のORPである、請求項3に記載の排ガス処理システム。
【請求項5】
要除去成分を含有する排ガスを、前記要除去成分を吸収する吸収液と接触させて、排ガス中の要除去成分を吸収除去する排ガス処理方法であって、
前記吸収液を構成する水を注水する注水機構による注水制御を、第1制御情報に基づいて行う、排ガス処理方法であって、
前記第1制御情報は、前記吸収液を構成する薬剤を注加する薬剤供給装置の所定時間における稼働時間または稼働率である、排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理システムおよび排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中に含まれる窒素酸化物(以下、NOxともいう)や硫黄酸化物などの環境汚染成分が大気中に放出されることを抑制するために、排ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物を除去する排ガス処理システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
排ガスからNOxを除去する方法の1つとして、アルカリ性水溶液をNOx吸収液として使用する湿式脱硝方法が用いられている。また、当該湿式脱硝方法では、水酸化ナトリウムやアンモニアなどのアルカリのみのアルカリ性水溶液をNOx吸収液として用いたアルカリ吸収法のほか、過マンガン酸塩や亜塩素酸塩などの酸化剤を混合したアルカリ性水溶液をNOx吸収液として用いた酸化吸収法、チオ硫酸塩や硫化物などの還元剤を混合したアルカリ性の水溶液をNOx吸収液として用いた還元吸収法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-202236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
湿式の排ガス処理においては、排ガス中の要除去成分(窒素酸化物や硫黄酸化物など)をより効率的に除去するために、吸収液における薬剤の濃度を、除去処理の過程全般を通じて、適切な濃度に保つ必要がある。すなわち、吸収液における薬剤(アルカリなど)は、排ガス中の要除去成分と反応することで減少するため、排ガス中の要除去成分の量に応じて、吸収液における薬剤の濃度を適切な濃度に制御することが求められる。また、排ガス中の要除去成分と吸収液における薬剤とが反応することで反応生成物が生成されるが、反応生成物の量が多くなると、吸収液から反応生成物が析出し、たとえば充填材の目詰まりなどの性能劣化が生じ、頻繁なメンテナンスが必要となる。
【0005】
そのため、従来では、想定される排ガス中の要除去成分の最大の除去量に基づいて、水の注水量を一定量に固定する手法が採用されていた。しかしながら、半導体ウエハの製造工程などでは、排ガスに含まれる要除去成分の量は、製造工程の内容により変動し一定ではないため、排ガス中の要除去成分の量が少ない場合には、想定される排ガス中の要除去成分の最大の除去量に基づいて排ガス処理を行ってしまうと、水の注水量が過剰となり、吸収液中の薬剤の濃度を適切化するために薬剤の消費量が多くなってしまうという問題があった。さらに、必要以上に注水量が多くなることで、排水処理が必要な排水量もその分増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、注水量が必要以上に多くなってしまうことを防止することができ、かつ、排ガス中の要除去成分を適切に除去することができる排ガス処理システムおよび排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る排ガス処理システムは、要除去成分を含有する排ガスを、前記要除去成分を吸収する吸収液と接触させて、排ガス中の要除去成分を吸収除去する反応塔と、前記吸収液を構成する薬剤を前記反応塔に注加する薬剤注加機構と、前記吸収液を構成する水を前記反応塔に注水する注水機構と、前記薬剤注加機構および前記注水機構を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記注水機構による注水制御を、第1制御情報に基づいて行う排ガス処理システムであって、前記第1制御情報は、前記薬剤供給装置の所定時間における稼働時間または稼働率である。
上記排ガス処理システムにおいて、前記薬剤供給装置は、薬剤供給ポンプである構成とすることができる。
上記排ガス処理システムにおいて、前記制御部は、前記第1制御情報と注水量との対応関係を示すテーブルまたは関係式を予め記憶しており、前記制御部は、前記第1制御情報を所定のサイクル時間ごとに繰り返し取得しており、前記テーブルまたは関係式を用いて、今回のサイクル時間で得られた前記第1制御情報に基づいて、次回のサイクル時間における注水量を制御する構成とすることができる。
上記排ガス処理システムにおいて、前記制御部は、前記第1制御情報とは異なる第2制御情報に基づいて、前記薬剤供給装置による薬剤の注加制御を行うとともに、前記制御部は、リアルタイムで得られた前記第2制御情報に基づいて、前記薬剤供給装置による薬剤の注加制御をリアルタイムで繰り返し実行するとともに、所定のサイクル時間ごとに得られた前記第1制御情報に基づいて、前記注水機構による注水制御を前記サイクル時間ごとに繰り返し実行し、前記第2制御情報は、前記反応塔における前記吸収液のpH、排ガス中の前記要除去成分の濃度もしくは量、または、前記吸収液のORPである構成とすることができる。
本発明に係る排ガス処理方法は、要除去成分を含有する排ガスを、前記要除去成分を吸収する吸収液と接触させて、排ガス中の要除去成分を吸収除去する排ガス処理方法であって、前記吸収液を構成する水を注水する注水機構による注水制御を、第1制御情報に基づいて行う、排ガス処理方法であって、前記第1制御情報は、前記吸収液を構成する薬剤を注加する薬剤供給装置の所定時間における稼働時間または稼働率である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排ガス中の要除去成分の量に応じて注水制御を行うことで、注水量が必要以上に多くなってしまうことを有効に防止することができ、かつ、排ガス中の要除去成分を適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る排ガス処理システムの構成図である。
図2】半導体ウエハの製造工程における排ガス中のNOx濃度の推移の一例を示すグラフである。
図3】排ガス中のNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合と、排ガス中のNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合との、水酸化ナトリウム水溶液の供給量、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量、水の注水量、および排水量の関係を説明するための図である。
図4】注水制御テーブルの一例を示す図である
図5】本実施形態に係る排ガス処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図を参照して、本発明に係る排ガス処理システムについて説明する。なお、以下においては、半導体ウエハの製造過程で発生した排ガス中のNOxを除去する排ガス処理システムを例示して説明するが、要除去成分はNOxに限定されず、アンモニア、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、塩素ガス、硫化水素などを要除去成分として排ガス中から除去するシステムに適用することができる。また、本実施形態では、半導体ウエハの製造過程で発生した排ガスを処理する排ガス処理システムを例示して説明するが、この構成に限定されず、金属表面の処理、ボイラー、焼成炉などで発生した排ガスを処理する排ガス処理システムにも適用することができる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る排ガス処理システム1を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る排ガス処理システム1は、反応塔10と、循環ポンプ20と、制御装置30と、アルカリ性水溶液貯留タンク40と、アルカリ性水溶液供給ポンプ50と、還元剤水溶液貯留タンク60と、還元剤水溶液供給ポンプ70と、注水弁80と、流量計90と、注水タンク100と、pH計測器110とを有する。
【0012】
また、本実施形態において、反応塔10は、導入管11、排気管12、ノズル13、充填材層14、排水管15および吸収液槽16を有している。本実施形態では、図示しない送風機により、半導体ウエハの製造工程で発生した排ガスが、導入管11を通過して、反応塔10内部へと導入される。また、反応塔10へと導入された排ガスは、反応塔10内の充填材層14を通過する過程で処理され、上方の排気管12から大気へと排出される。
【0013】
本実施形態では、反応塔10下部の吸収液槽16に、排ガスが含有する要除去成分であるNOxを吸収除去するための吸収液が貯留されている。吸収液槽16に貯留された吸収液は、循環ポンプ20により、反応塔10の上部に設置されたノズル13へと移送され、当該ノズル13から吸収液が散布される。吸収液には、NOxを吸収除去するための薬剤(本実施形態では、水酸化ナトリウムおよびチオ硫酸ナトリウム)が含まれており、ノズル13から散布された吸収液中の薬剤が、排ガス内のNOxと反応することで、排ガスからNOxが除去される。
【0014】
特に、本実施形態では、反応塔10の中央部に、多数の充填材が充填された充填材層14が設けられている。充填材は、たとえば合成樹脂やセラミックなどで製造された円筒状、円柱状、鞍状などの形状のものが用いられ、導入管11から導入された排ガスが、充填材層14に充填された充填材の隙間を迂回しながら通り抜け、排気管12まで流れるようになっている。これにより、排ガス中のNOxとノズル13から散布された吸収液とが接触する機会を多くすることができ、NOxの吸収除去効率を向上させることができる。
【0015】
本実施形態において、吸収液は、脱硝作用のある薬剤を含有する水溶液であり、このような薬剤として、アルカリ、酸化剤、還元剤など公知の湿式脱硝法で使用される薬剤を用いることができる。本実施形態では、薬剤として、アルカリである水酸化ナトリウムと、還元剤であるチオ硫酸ナトリウムを用いる構成を例示する。本実施形態では、アルカリ性水溶液貯留タンク40に水酸化ナトリウム水溶液が貯留されており、還元剤水溶液貯留タンク60にチオ硫酸ナトリウム水溶液が貯留されている。また、アルカリ性水溶液貯留タンク40に貯留された水酸化ナトリウム水溶液は、アルカリ性水溶液供給ポンプ50により、反応塔10の吸収液槽16へと供給され、還元剤水溶液貯留タンク60に貯留されたチオ硫酸ナトリウム水溶液は、還元剤水溶液供給ポンプ70により、反応塔10の吸収液槽16へと供給される。なお、アルカリ性水溶液供給ポンプ50および還元剤水溶液供給ポンプ70の動作は、制御装置30により制御される。そして、吸収液槽16に供給された水酸化ナトリウム水溶液およびチオ硫酸ナトリウム水溶液は、後述する注水機構80~100から供給された水と混合され、吸収液として吸収液槽16で貯留されることとなる。なお、アルカリ性水溶液貯留タンク40、アルカリ性水溶液供給ポンプ50、還元剤水溶液貯留タンク60および還元剤水溶液供給ポンプ70を含む構成群を、薬剤注加機構とも称す。
【0016】
なお、吸収液中のチオ硫酸ナトリウムの濃度および水酸化ナトリウムの濃度は、(1)排ガス中のNOxの濃度、(2)吸収液のpH、(3)吸収液のORP(酸化-還元電位)のいずれか、または、それらの組み合わせによって制御することができる。本実施形態では、吸収液中のチオ硫酸ナトリウムの濃度および水酸化ナトリウムの濃度は、(2)吸収液のpHに基づいて、制御装置30により制御される。
【0017】
具体的に、本実施形態では、反応塔10の吸収液槽16内に吸収液のpHを測定するためのpH計測器110が設置されており、pH計測器110の測定結果は、制御装置30へと送信される。制御装置30は、吸収液槽16内の吸収液のpHが下限閾値の8未満となると、アルカリ性水溶液供給ポンプ50と、還元剤水溶液供給ポンプ70とを稼働させて、吸収液中のpHが8以上となるように、アルカリ性水溶液貯留タンク40から水酸化ナトリウム水溶液を、還元剤水溶液貯留タンク60からチオ硫酸ナトリウム水溶液を、反応塔10内の吸収液槽16へと供給させる。また、本実施形態において、制御装置30は、吸収液中のチオ硫酸ナトリウムの濃度が所定の濃度以上となるように、吸収液槽16に供給するチオ硫酸ナトリウム水溶液の量を制御する。
【0018】
さらに、制御装置30は、吸収液槽16内の吸収液のpHが上限閾値の12以上となると、アルカリ性水溶液供給ポンプ50と、還元剤水溶液供給ポンプ70との稼働を停止する。これにより、吸収液のpHは8以上、かつ、12未満の範囲内で維持される。なお、吸収液のpHの範囲は、上記範囲に限定されず、排ガス中のNOxを吸収除去することができる範囲において適宜設定することができる。
【0019】
また、本実施形態において、反応塔10に供給される水酸化ナトリウム水溶液は比較的少量であるため、アルカリ性水溶液供給ポンプ50は小型の定量ポンプを用いることができる。アルカリ性水溶液供給ポンプ50を定量ポンプとすることで、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間に応じた量の水酸化ナトリウム水溶液を供給することができ、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間(あるいは稼働率)に基づいて、反応塔10に供給した水酸化ナトリウム水溶液の量を推測することが可能となっている。
【0020】
注水タンク100には、不純物の含有量が少ない純水などの水が貯留されており、注水弁80を開口させると、注水タンク100から、注水弁80を経由して、反応塔10の吸収液槽16内に水が注水される。また、流量計90は、注水タンク100から供給された注水量を測定し、制御装置30に測定結果を送信する。本実施形態では、制御装置30が、流量計90の測定結果に基づいて、注水弁80の開閉を制御することで、注水タンク100から反応塔10へと供給する注水量を制御することが可能となっている。なお、注水弁80、流量計90、および、注水タンク100を含む構成群を、注水機構としても称す。
【0021】
また、水酸化ナトリウム水溶液およびチオ硫酸ナトリウム水溶液を、水とともに吸収液槽16に導入することで、吸収液槽16内の吸収液は増加する。本実施形態では、排水管15が吸収液槽16の下部に設置されており、吸収液槽16内の吸収液が所定の上限水位まで到達すると、制御装置30により排水管15が開口され、排水管15から吸収液が排水される。また、反応塔10内の吸収液が所定の下限水位まで到達すると、制御装置30により排水管15が閉口され、排水管15からの排水が停止されることとなる。なお、排水された吸収液には、排ガス中のNOxと反応して生成された反応生成物などが含まれているため、公知の排水処理が行われることとなる。
【0022】
ここで、上述したように、吸収液槽16内の吸収液は、循環ポンプ20により、反応塔10上部のノズル13から散布される。散布された吸収液は、充填材層14の充填材の隙間を通り、反応塔10下部の吸収液槽16へと流れるまでの間に、排ガス中のNOxと接触し、亜硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの反応生成物を生成する。これら反応生成物は、十分な量の水(反応生成物の量に対して十分な量の水)があれば、飽和することなく吸収液中に溶解するが、反応生成物の量に対して水の量が少ないと、飽和し析出してしまう。特に、充填材層14の隙間において析出が生じてしまうと、充填材の隙間が目詰まりしてしまい、排ガス処理の処理効率を低下させてしまうこととなる。
【0023】
このような目詰まりを防止するために、排ガスに含有されるNOxの量にかかわらず、反応生成物の析出が生じない十分な量の水を一律に注水する手法が考えられる。具体的には、事前調査などにより、排ガス中のNOxの最大の除去量を予め想定しておき、想定した除去量のNOxを除去した際に生成する反応生成物を十分に溶解することができる水の量を予め決めておくことで、決められた量の水を一律に注水する手法が考えられる。しかしながら、半導体ウエハの製造工程(たとえばエッチング工程など)において発生する排ガス中のNOxの量は一定ではなく、操業度や製造加工の内容により変動する。ここで、図2は、半導体ウエハの製造工程における排ガス中のNOx濃度の推移の一例を示すグラフである。なお、本実施形態では、送風機の風量を一定としているため、排ガス中のNOxの量は排ガス中のNOxの濃度に比例することとなる。図2に示すように、半導体ウエハの製造工程で発生する排ガス中のNOxの濃度は時間とともに変動し、実測値の最大値は、想定される最大濃度の70~80%程度であったのに対して、半導体ウエハのエッチング工程で発生した排ガス中のNOxの濃度の実測値の平均値は、想定される最大濃度の40%程度となった。そのため、排ガス中に含有されるNOxの最大の除去量に合わせて注水量を一律とする場合では、排ガス中に含有される実際のNOxの量が低い場合に、注水量が過剰となり、これに伴い、吸収液中の薬剤の濃度を適切な濃度とするために消費する薬剤の消費量も多くなってしまうという問題があった。さらに、必要以上に注水量が多くなると、排水処理が必要な排水量もその分増加してしまうという問題もあった。
【0024】
ここで、図3は、排ガス中に含有されるNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合と、排ガス中に含有されるNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合との、水酸化ナトリウム水溶液の供給量、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量、注水量、および排水量の関係を説明するための図である。なお、本来であれば、排ガス中のNOxの量に基づいて注水量を制御することが好ましいが、本実施形態では、送風機が一定の送風量にて排ガスを送風しており、排ガス中のNOxの量はNOxの濃度に比例するため、図3に示す例においては、NOxの濃度を例示して説明している。
【0025】
具体的には、図3(1)に、排ガス中のNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合の水酸化ナトリウム水溶液の供給量、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量、注水量、および排水量を示し、図3(2)に、排ガス中のNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合の水酸化ナトリウム水溶液の供給量、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量、注水量、および排水量を示す。また、図3では、排ガス中のNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合に対する、排ガス中のNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合の、水酸化ナトリウム水溶液の供給量の削減率、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量の削減率、注水量の削減率、および排水量の削減率も示す。なお、図3に示す例は一例であり、図3に示す値に限定されるものではない。
【0026】
図3に示すように、(2)排ガス中のNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合では、排ガス中のNOxの濃度に応じた量の反応生成物が生成されるため、反応生成物を溶解させるための注水量も排ガス中のNOxの濃度に応じた量とすることができる。その結果、(2)排ガス中のNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合では、(1)排ガス中のNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合と比べて、排ガス中のNOx濃度が低いほど、注水量を少なくすることができ、それに伴い、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量も低く抑えることができる。また、わずかながらも、水酸化ナトリウム水溶液の供給量も削減することができる。さらに、(2)排ガス中のNOxの濃度に基づいて注水量を制御した場合では、排ガス中のNOx濃度が低いほど、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量の削減率、水酸化ナトリウム水溶液の供給量の削減率、注水量の削減率、排水量の削減率が高くなった。これに対して、(1)排ガス中のNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合では、排ガス中のNOxの最大濃度(図3に示す例では1000ppm)に基づいて注水量を一律に設定しているため、排ガス中のNOxの実際の濃度が低い場合ほど、注水量は過剰となり、特に、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量は増大してしまう。さらに、必要以上に注水量が多い場合は、排水量もその分多くなるため、排水処理に係るコストもその分増大してしまう。
【0027】
このように、排ガス中のNOxの量に基づいて注水量を制御することで、チオ硫酸ナトリウム水溶液の供給量、注水量、排水量を削減することができるため、本実施形態に係る排ガス処理システム1を、排ガス中のNOxの量に応じて注水量を制御する構成とすることができる。たとえば、排ガス中のNOxの濃度を測定するNOx濃度測定装置を備え、設定した送風機の送風量と、NOx濃度測定装置で測定した排ガス中のNOxの濃度とに基づいて、排ガス中のNOxの量を算出し、算出したNOxの量に基づいて、注水量を制御する構成とすることができる。また、本実施形態では、送風機が一定の送風量にて排ガスを送風する場合には、排ガス中のNOxの量はNOxの濃度に比例するため、NOx濃度測定装置で測定した排ガス中のNOxの濃度に応じて注水量を制御することで、排ガス中のNOxの量に応じた制御と同様に、注水量を制御する構成とすることもできる。
【0028】
また、導入コストやランニングコストの削減を図るため、NOx濃度測定装置を用いることなく、排ガス中のNOxの量に基づく制御と同様に注水量を制御する構成とすることもできる。たとえば、排ガス中のNOxの量を算出する方法の1つとして、吸収液のpHの変化量の積算値を求める方法が考えられる。これは、排ガス中のNOxの量が多いほど、吸収液中の薬剤がNOxと反応し反応生成物を生成することで吸収液のpHが低下するため、排ガス中のNOxの量と吸収液のpHの変化量とに相関関係があることを利用したものである。そのため、一定時間における、pHの変化量の積算値を、NOxの吸収によるpHの変化量として求め、このpHの変化量に基づいて注水量を制御することで、排ガス中のNOxの量に基づく制御と同様に注水量を制御する構成とすることができる。しかしながら、pHの変化量の積算値に基づく注水量の制御の場合、薬剤の供給によるpHの変動分を考慮する必要があるなど、システムが複雑となりコストも比較的高くなってしまう場合があるため、本実施形態では、上記構成に代えて、以下のような構成を採用するものとする。
【0029】
すなわち、排ガス中のNOxの量が多いほど、吸収液中の水酸化ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムは排ガス中のNOxと反応して消費され、吸収液のpHは低下する。また、本実施形態では、吸収液中の水酸化ナトリウムや硫酸ナトリウムが消費され、吸収液のpHが8未満に低下すると、水酸化ナトリウム水溶液が反応塔10へと供給される。このように、本実施形態では、排ガス中のNOxの量と、アルカリ性水溶液供給ポンプ50により供給される水酸化ナトリウム水溶液の量との間には相関関係があるため、反応塔10へと供給された水酸化ナトリウム水溶液の量に基づいて注水量を制御することで、排ガス中のNOxの量に基づいて注水量を制御する場合と同様に、注水量を制御することが可能である。
【0030】
そこで、本実施形態において、制御装置30は、アルカリ性水溶液供給ポンプ50により供給される水酸化ナトリウム水溶液の量に基づいて、注水量を制御する。特に、本実施形態では、アルカリ性水溶液供給ポンプ50は定量ポンプであるため、制御装置30は、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間または稼働率に基づいて、水酸化ナトリウム水溶液の注加量を算出することができる。そのため、制御装置30は、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間または稼働率に基づいて注水量を制御することで、排ガス中のNOxの量に応じた注水量の制御と同様に、注水量を制御することができる。以下に、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間または稼働率に基づく注水量の制御の詳細について説明する。
【0031】
本実施形態において、制御装置30は、所定のサイクル時間におけるアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間を、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率として算出する。そして、制御装置30は、予め記憶している注水制御テーブルを参照し、今回のサイクル時間におけるアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率に基づいて、次回のサイクル時間の目標注水量を設定する。すなわち、本実施形態において、制御装置30は、薬剤の注加量にリアルタイムに連動して注水量を制御するのではなく、薬剤の注加量の情報を得てから、得た薬剤の注加量の情報に基づいて、目標注水量を設定し、注水量が設定した目標注水量となるように、注水量を制御する構成となっている。このような複雑な制御を必要としない比較的単純な構成とすることで、投資コストを抑えながらも、注水量を適切に制御することが可能となる。なお、上記サイクル時間は、特に限定されないが、たとえば、1~120分、好ましくは5~60分、より好ましくは10~20分とすることができる。サイクル時間が短すぎると(たとえば1分よりも短いと)、必要以上に変更回数が多くなり装置負荷が高くなる一方、サイクル時間が長すぎると(たとえば120分よりも長いと)、半導体ウエハの製造工程におけるNOxの量の変動に適切に追従することができないためである。
【0032】
ここで、図4は、注水制御テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、注水制御テーブルでは、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率と、目標注水量との対応関係が定められている。具体的には、本実施形態では、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率を10の区分に分け、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率の区分ごとに、稼働率に応じた目標注水量が設定されている。具体的には、各区分に示すアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率で供給される、水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウムが排ガス中のNOxと反応した場合に生成される反応生成物を溶解できる注水量を予め計算しておくことで、算出された注水量が目標注水量として区分ごとに設定されている。図4に示す例において、制御装置30は、注水制御テーブルを参照することで、たとえば、今回のサイクル時間におけるアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率が40%以上から50%未満である場合、次回のサイクル時間における目標注水量をX6として設定することができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る排ガス処理について説明する。図5は、本実施形態に係る排ガス処理を示すフローチャートである。本実施形態では、制御装置30により、以下に説明する排ガス処理が行われる。
【0034】
ステップS101では、まず、制御装置30により、目標注水量の初期設定が行われる。目標注水量とは、後述するステップS112で参照される閾値であり、注水タンク100から実際に供給された注水量が、当該目標注水量となるように、注水制御が行われる。なお、本実施形態に係る排ガス処理は、排ガス中のNOxの量に応じて注水制御を行うものであるが、ステップS101では、排ガス中のNOxの量の算出がまだ行われていないため、予め決められた目標注水量がデフォルトで設定されることとなる。
【0035】
ステップS102では、制御装置30により、サイクル時間およびアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間のカウントがリセットされる。また、制御装置30により、サイクル時間のカウントが新たに開始される。そして、ステップS103では、制御装置30により、注水弁80が開けられ、注水の開始が行われる。なお、ステップS103で開始された注水処理は、制御装置30の制御により、前回のサイクル時間において設定された目標注水量(前回のサイクル時間においてステップS115で設定された目標注水量。ただし、ステップS115で目標注水量が設定されていない場合には、ステップS101で設定された目標注水量)となるように、ステップS113まで行われる。
【0036】
ステップS104では、制御装置30により、吸収液槽16内の吸収液のpHが下限閾値未満であるか否かの判定が行われる。具体的には、制御装置30は、pH計測器110から吸収液槽16内の吸収液のpHの測定結果を随時取得しており、pHが8未満となると、pHが下限閾値未満であると判定し、ステップS105に進む。一方、pHが下限閾値以上である場合は、ステップS108に進む。また、ステップS105では、制御装置30により、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が停止中であるか否かの判断が行われ、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が停止中である場合にはステップS106に進み、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が動作中である場合にはステップS108に進む。
【0037】
ステップS106では、吸収液槽16内の吸収液のpHが下限閾値未満であり、かつ、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が停止しているため、制御装置30により、アルカリ性水溶液供給ポンプ50および還元剤水溶液供給ポンプ70の稼働が開始され、水酸化ナトリウム水溶液およびチオ硫酸ナトリウム水溶液が、反応塔10の吸収液槽16へ供給される。また、ステップS107では、制御装置30により、今回のサイクル時間におけるアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間のカウントが開始される。なお、水酸化ナトリウム水溶液およびチオ硫酸ナトリウム水溶液の吸収液槽16への供給と、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間のカウントは、後述するステップS110およびS111の処理が行われるまで継続して行われる。
【0038】
ステップS108では、制御装置30により、吸収液槽16内の吸収液のpHが上限閾値以上であるか否かの判定が行われる。本実施形態において、制御装置30は、本実施形態ではpHが12以上となると、pHが上限閾値以上であると判定し、ステップS109に進む。一方、pHが上限閾値未満である場合は、ステップS112に進む。また、ステップS109では、制御装置30により、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が動作中であるか否かの判断が行われ、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が動作中である場合はステップS110に進み、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が停止中である場合にはステップS112に進む。
【0039】
ステップS110では、吸収液槽16内の吸収液のpHが上限閾値以上であり、かつ、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が動作しているため、制御装置30により、アルカリ性水溶液供給ポンプ50および還元剤水溶液供給ポンプ70の稼働が停止される。また、ステップS111では、制御装置30により、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間のカウントが停止される。なお、本実施形態では、アルカリ性水溶液供給ポンプ50と還元剤水溶液供給ポンプ70とは同期して動作するため、アルカリ性水溶液供給ポンプ50が稼働している場合には、還元剤水溶液供給ポンプ70も稼働している。
【0040】
ステップS112では、制御装置30により、注水量が前回サイクル時間において設定された設定量以上となったか否かの判定が行われる。制御装置30は、流量計90から注水量の測定結果を随時取得しており、注水量が前回サイクル時間において設定された設定量以上となった場合には、ステップS113に進み、制御装置30により、注水弁80が閉じられ、注水が停止される。注水が停止された後は、ステップS114に進む。また、ステップS112で、注水量が前回サイクル時間において設定された設定量未満であると判断された場合も、ステップS114に進む。
【0041】
ステップS114では、制御装置30により、今回のサイクル時間が経過したか否かの判定が行われる。制御装置30は、今回のサイクル時間が経過するまでは、ステップS104からS114の処理を繰り返す。そして、今回のサイクル時間が経過すると、ステップS115に進む。
【0042】
ステップS115では、制御装置30により、次回のサイクル時間における注水量の設定が行われる。具体的には、制御装置30は、ステップS107からステップS111の間でカウントした、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間から、今回のサイクル時間におけるアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率を算出する。そして、制御装置30は、図4に示す注水制御テーブルを参照し、算出した今回のサイクル時間におけるアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率に基づいて、次回のサイクル時間における注水量を設定する。
【0043】
ステップS116では、制御装置30により、本実施形態に係る排ガス処理が終了したか否かの判断が行われる。たとえば、作業者から、排ガス処理を終了するための指示が入力された場合には、制御装置30は、この排ガス処理を終了する。一方、排ガス処理が継続される場合は、ステップS102に戻り、上記ステップS102からS116の処理を繰り返す。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る排ガス処理システム1は、要除去成分であるNOxを含有する排ガスを吸収液と接触させて排ガス中のNOxを吸収除去する反応塔10と、吸収液を構成する水酸化ナトリウム水溶液およびチオ硫酸ナトリウム水溶液を、反応塔10に注加するアルカリ性水溶液供給ポンプ50および還元剤水溶液供給ポンプ70と、吸収液を構成する水の反応塔10への注水を制御する注水弁80と、アルカリ性水溶液供給ポンプ50および還元剤水溶液供給ポンプ70や注水弁80の動作を制御する制御装置30と、を有する。そして、制御装置30は、注水弁80の動作を、第1制御情報である、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間(あるいは稼働率)に基づいて制御する。本実施形態では、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間(あるいは稼働率)は、排ガス中のNOxの量と相関関係にあるため、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間(あるいは稼働率)に基づいて注水量を制御することで、排ガス中のNOxの量に基づいて注水量を制御する場合と同様に、注水量を適切に制御することができ、排ガス中のNOxと吸収液中の薬剤との反応生成物の析出を有効に防止することが可能となる。
【0045】
たとえば、図3に示す例では、(A)に示す排ガス中のNOxの量(本実施形態ではアルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間あるいは稼働率)に基づいて注水量を制御した場合では、(B)に示す排ガス中のNOxの最大濃度に基づいて注水量を一律に固定した場合と比べて、排ガス中のNOxの濃度が100ppmである場合に、注水量を89%削減することができ、チオ硫酸ナトリウム水溶液の消費量を10%削減することができ、排水量を83%削減することができた。また、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間あるいは稼働率に基づいて注水量を制御した場合でも、本発明者は、反応生成物の析出が生じないこと、および、NOxの除去量に変化(劣化)がないことを確認した。
さらに、本実施形態では、排ガス中のNOxの量を、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間(あるいは稼働率)に基づいて算出することで、高価な設備投資を行うことなく、注水量を適切に制御することもできる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
たとえば、上述した実施形態では、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率と、注水量との対応関係が予め定められている注水制御テーブルを参照することで、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率に基づいて注水量を制御する構成を例示したが、この構成に限定されず、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率と注水量との対応関係を示す関係式を用いて、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働率から、制御する注水量を算出する構成とすることができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、アルカリ性水溶液供給ポンプ50に定量ポンプを用いる構成を例示したが、この構成に限定されず、定量ポンプ以外のポンプを用いる構成とすることができる。この場合、たとえば、アルカリ性水溶液貯留タンク40から反応塔10へと流出させた水酸化ナトリウム水溶液の量を、流量計を用いて計測し、流量計により計測した水酸化ナトリウム水溶液の流量を積算することで、反応塔10に供給した水酸化ナトリウム水溶液の量を把握する構成とすることができる。
【0049】
また、上述した実施形態では、排水管15の開閉を制御することで、吸収液槽16内の吸収液が所定の水位範囲となるように制御する構成を例示したが、この構成に限定されず、オーバーフローさせる水位を決め、その水位に排水口を設けることで、吸収液の水位がオーバーフローの水位まで上がると排水口から吸収液が排出される構成とすることもできる。
【0050】
さらに、上述した実施形態では、図4に示すように、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間または稼働率に応じて、注水量が設定される構成を例示したが、アルカリ性水溶液供給ポンプ50の稼働時間または稼働率に加えて、排ガスの処理風量、CO濃度、NO/NOx比、および/または、ポンプの設定ごとに、反応塔10への注水量をさらに細かく設定したテーブルを記憶しておき、当該テーブルを参照し、排ガスの処理風量、CO濃度、NO/NOx比、および/または、ポンプの設定を加味して、注水量を設定する構成とすることができる。特に、排ガス中のNOxの量は、処理風量とNOxの濃度とを乗じたものと考えることができるため、処理風量とNOxの濃度とに基づいて注水量を設定することで、処理風量が自在に変更できる場合でも、排ガス中のNOxの量に基づいて注水量を制御することが可能となる。
【0051】
加えて、上述した実施形態では、還元剤として、チオ硫酸ナトリウムを用いる構成を例示したが、この構成に限定されず、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜ジオチン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウムなどを用いる構成とすることもできる。また、チオ硫酸ナトリウム水溶液を用いないで、アルカリ性水溶液のみを用いる構成とすることもでき、あるいは、アルカリ性水溶液に、過マンガン酸塩や亜塩素酸などの酸化剤を併用する構成とすることもできる。また、アルカリ性溶液として、水酸化ナトリウム水溶液を用いる構成に限定されず、アンモニア水溶液などを用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…排ガス処理システム
10…反応塔
11…導入管
12…排気管
13…ノズル
14…充填材層
15…排水管
16…吸収液槽
20…循環ポンプ
30…制御装置
40…アルカリ性水溶液貯留タンク
50…アルカリ性水溶液供給ポンプ
60…還元剤水溶液貯留タンク
70…還元剤水溶液供給ポンプ
80…注水弁
90…流量計
100…注水タンク
110…pH計測器
【要約】
【課題】注水量が必要以上に多くなってしまうことを防止することができ、かつ、排ガス中の要除去成分を適切に除去することができる、排ガス処理システムおよび排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】要除去成分を含有する排ガスを、要除去成分を吸収する吸収液と接触させて、排ガス中の要除去成分を吸収除去する反応塔10と、吸収液を構成する薬剤を反応塔10に注加する薬剤注加機構50と、吸収液を構成する水を反応塔10に注水する注水機構80と、薬剤注加機構50および注水機構80を制御する制御部30と、を有し、制御部30は、注水機構80による注水制御を、第1制御情報に基づいて行う、排ガス処理システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5