(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
C08J9/16 CFG
(21)【出願番号】P 2022546377
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008476
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021062214
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/050032(WO,A1)
【文献】特表2016-512850(JP,A)
【文献】特開2015-059201(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理発泡剤を用いてポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、
該ポリアミド系樹脂粒子が、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmであるポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアミド系樹脂粒子中の前記着色顔料の含有量が0.5~10質量%である、請求項1に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記着色顔料がカーボンブラックである、請求項1または2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する前記高級脂肪酸金属塩の含有量(質量ppm)の比[高級脂肪酸金属塩/カーボンブラック(質量ppm/質量%)]が50~3000である、請求項3に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10kg/m
3以上300kg/m
3以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
前記発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂の融点が185℃以上250℃以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が150μm以上500μm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、平均気泡径が150~500μmであるポリアミド系樹脂発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系樹脂は、耐熱性が高く、また耐摩耗性、耐薬品性等にも優れたプラスチックとして知られている。このポリアミド系樹脂を発泡させた発泡成形体は、耐熱性、耐摩耗性、及び耐薬品性等の優れた特性を保ちつつ、軽量化を図ることができることから、自動車部品、電気製品等での更なる用途展開が期待されている。
ポリアミド系樹脂発泡成形体に意匠性を付与し、外観を向上させるために、顔料等を添加する試みがなされている。
たとえば、特許文献1には、剛性、表面平滑性、金属光沢性を付与することを目的として、特定のポリアミド樹脂、層状珪酸塩、タルク又はマイカである板状フィラー、メタリック顔料を含むポリアミド樹脂組成物とこれより得られる発泡成形体が開示されている。
また、特許文献2には、軽量、耐荷重性、良好な外観の発泡成形体を得ることを目的として、結晶性ポリアミド樹脂、特定のカーボンブラック、無機強化材を有し、ポリアミド樹脂組成物の融点と結晶化温度が特定の関係を有する発泡成形体用ポリアミド樹脂組成物と、それを用いて得られたポリアミド樹脂発泡成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-059201号公報
【文献】国際公開第2014/185371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着色顔料を含む樹脂発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体には、成形体表面に色ムラが生じることがあった。従来使用されてきたポリオレフィン系樹脂等の汎用樹脂は、発泡性に優れ、発泡粒子が容易に得られる。そのため、着色顔料を含む汎用樹脂の発泡粒子は、発泡条件や気泡核剤量などの調整により色ムラを抑制することが可能であった。しかし、ポリアミド系樹脂発泡粒子は、汎用樹脂よりも発泡性に劣る。そのため、着色顔料を含むポリアミド系樹脂発泡粒子は、発泡条件や気泡核剤の量の調節により成形体表面の色ムラを抑制することが困難であった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、色ムラが抑制されたポリアミド系樹脂発泡粒子が得られるポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題に関し、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド系樹脂粒子に着色顔料と、特定量の高級脂肪酸金属塩とを含有させ、物理発泡剤を用いて発泡させる方法により、前記課題を解決できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の[1]~[8]を提供する。
[1]物理発泡剤を用いてポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、該ポリアミド系樹脂粒子が、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmであるポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
[2]前記ポリアミド系樹脂粒子中の前記着色顔料の含有量が0.5~10質量%である、上記[1]に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
[3]前記着色顔料がカーボンブラックである、上記[1]または[2]に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
[4]前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する前記高級脂肪酸金属塩の含有量(質量ppm)の比[高級脂肪酸金属塩/カーボンブラック(質量ppm/質量%)]が50~3000である、上記[3]に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
[5]前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10kg/m3以上300kg/m3以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
[6]前記発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂の融点が185℃以上250℃以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法
[7]前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が150μm以上500μm以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
[8]着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、平均気泡径が150~500μmであるポリアミド系樹脂発泡粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、色ムラが抑制されたポリアミド系樹脂発泡粒子が得られるポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法]
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法は、物理発泡剤を用いてポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、
該ポリアミド系樹脂粒子が、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmである。
【0009】
<ポリアミド系樹脂粒子>
本発明の製造方法に用いられるポリアミド系樹脂粒子は、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmである。
ポリアミド系樹脂粒子は、ポリアミド系樹脂を、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
(ポリアミド系樹脂)
前記ポリアミド系樹脂粒子を構成し、本発明の製造方法によって得られるポリアミド系樹脂発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられ、ポリアミド共重合体が好ましい。
ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6-アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。ポリアミド共重合体とは、2種以上の繰り返し単位を有し、それぞれの繰り返し単位の少なくとも一部にアミド結合を有するものを意味する。ポリアミド共重合体としては、例えば、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、及びナイロン6/66/12から選択される1種または2種以上を組み合わせたポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66またはナイロン6/66/12であることがより好ましい。
【0011】
ポリアミド共重合体は、ある一定量同じ繰り返し単位のアミドが続いた後に異なる種類のアミドがある一定量続くブロック共重合体であっても、異なる種類のアミドがそれぞれランダムに繰り返すランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。ポリアミド共重合体がランダム共重合体であれば、ポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形する際に比較的低い成形圧力で成形することが可能となる。
【0012】
本発明の製造方法に用いられるポリアミド系樹脂は、曲げ弾性率が1000MPa以上であることが好ましく、1100MPa以上であることがより好ましく、1200MPa以上であることがさらに好ましい。なお、アミド系エラストマーは、概ね曲げ弾性率が600MPa以下である。ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であれば、曲げ弾性率が高いことに由来して発泡後に常温に晒されても収縮しにくく、高倍率の発泡粒子が得られ易くなるため好ましい。また、曲げ弾性率が高いことにより型内成形性に優れるため好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率の上限は概ね3000MPa程度である。
【0013】
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、試験片を温度23℃、湿度50%の状態で24時間静置した後、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めることができる。
【0014】
本発明の製造方法に用いられるポリアミド系樹脂は、密度が1.05g/cm3以上であることが好ましく、1.1g/cm3以上であることが好ましい。なお、アミド系エラストマーの密度は概ね1.05g/cm3未満である。密度の測定は、ISO 1183-3に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0015】
前記ポリアミド系樹脂粒子で用いられ、得られるポリアミド系樹脂発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tm0)は、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは185℃以上、より好ましくは188℃以上、更に好ましくは190℃以上である。一方、発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、ポリアミド系樹脂の融点(Tm0)は、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは225℃以下である。
なお、ポリアミド系樹脂の融点とは、ポリアミド系樹脂を1種単独で用いた場合は、そのポリアミド系樹脂の融点を指す。ポリアミド系樹脂が、2種以上のポリアミド系樹脂の混合物からなる場合、又はポリアミド系樹脂と他の熱可塑性樹脂の混合物からなる場合には、予め押出機等で混練した混練物の融点を指す。
【0016】
本明細書において、樹脂の融点(Tm0)は、JIS K7121-1987に基づき、試験片の状態調節として「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定法により、加熱速度10℃/分で得られるDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求められる値である。DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークのピーク頂点温度を融解温度として採用する。なお、ポリアミド系樹脂の試験片は、例えば、デシケーター内に入れた後、真空吸引して保存する等、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないように保存したものを使用する。
【0017】
本発明の製造方法に用いられるポリアミド系樹脂は、分子鎖末端の官能基が封鎖されている末端封鎖ポリアミド系樹脂であることが好ましい。これにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、型内成形に耐えうるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなる。
更には、型内成形により得られるポリアミド系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」や、「成形体」ともいう。)の耐久性が向上する。
上記分子鎖末端を封鎖するための末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。
これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド(例えば、ラインケミー社製「Stabaxol 1-LF」)等の芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製「Stabaxol P」、「Stabaxol P100」、「Stabaxol P400」等)、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド(例えば日清紡ケミカル(株)製「カルボジライトLA-1」)等が挙げられる。これらの末端封鎖剤は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、末端封鎖剤の配合量は、ポリアミド系樹脂100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
このように、本発明で用いられるポリアミド系樹脂は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアネート化合物等から選ばれる1種以上の末端封鎖剤にて末端封鎖されたポリアミド系樹脂であることが好ましく、カルボジイミド化合物にて末端封鎖されたポリアミド系樹脂であることがより好ましい。
【0018】
(着色顔料)
本発明の製造方法に用いられるポリアミド系樹脂粒子は、着色顔料を含有する。着色顔料は、発泡粒子及び発泡粒子成形体の外観を向上させ、意匠性を高めるために用いられる。着色顔料としては、無機顔料又は有機顔料が挙げられ、これらを混合して用いてもよい。耐熱性や耐候性の点から、無機顔料が好ましい。
【0019】
無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤などが挙げられ、カーボンブラックが好ましい。
有機顔料としては、モノアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、ニトロソ系顔料、有機蛍光顔料等が挙げられる。
これらのなかでも着色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
【0020】
発泡粒子と発泡粒子成形体に優れた意匠性を与えつつ、発泡粒子と成形体の色ムラを抑制する観点から、ポリアミド系樹脂粒子中の着色顔料の含有量は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは2質量%以上である。一方、ポリアミド系樹脂粒子を発泡させる際の発泡性及び発泡粒子成形体を得る際の発泡粒子相互の融着性を優れたものとする観点から、ポリアミド系樹脂粒子中の着色顔料の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
【0021】
(高級脂肪酸金属塩)
本発明の製造方法に用いられるポリアミド系樹脂粒子は、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩を含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmである。
本発明の製造方法の原料として、前記高級脂肪酸金属塩を特定量含むポリアミド系樹脂粒子を用いることで、得られるポリアミド系樹脂発泡粒子の色ムラを抑制できる理由は定かではないが、前記高級脂肪酸金属塩が気泡調整剤として働くことで、特に表面の気泡の大きさや形状、分布などに影響を与え、気泡状態が均質になるとともに、発泡粒子表面の着色顔料の分散状態が均質になるため、色ムラを低減できるものと考えられる。
【0022】
本発明の製造方法に用いられる高級脂肪酸金属塩としては、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩であり、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上である。該高級脂肪酸金属塩として、好ましくは炭素数12~24の高級脂肪酸マグネシウム、炭素数12~24の高級脂肪酸アルミニウム及び炭素数12~24の高級脂肪酸亜鉛から選択される1種以上であり、より好ましくは炭素数12~24の高級脂肪酸マグネシウム及び炭素数12~24の高級脂肪酸アルミニウムから選択される1種以上であり、より好ましくは炭素数12~24の高級脂肪酸マグネシウムである。
【0023】
高級脂肪酸金属塩を構成する高級脂肪酸は、炭素数12~24の高級脂肪酸であり、好ましくは炭素数14~22の高級脂肪酸であり、より好ましくは炭素数16~18の高級脂肪酸である。
具体的には、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられる。
飽和脂肪酸として、好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘン酸から選択される1種以上であり、より好ましくはパルミチン酸及びステアリン酸から選択される1種以上であり、更に好ましくはステアリン酸である。また、前記飽和脂肪酸は複数の飽和脂肪酸を含んでいてもよく、複数の飽和脂肪酸を含む場合もステアリン酸が主成分であることが好ましい。
不飽和脂肪酸として、好ましくはオレイン酸、エルカ酸、リノール酸及びリノレン酸から選択される1種以上である。
【0024】
具体的な高級脂肪酸金属塩として、好ましくはラウリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、及びベヘン酸亜鉛から選択される1種以上であり、より好ましくはパルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛、及びステアリン酸亜鉛から選択される1種以上であり、更に好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸亜鉛から選択される1種以上であり、より更に好ましくはステアリン酸マグネシウムである。前記高級脂肪酸金属塩は複数の高級脂肪酸金属塩を含んでいてもよく、複数の高級脂肪酸金属塩を含む場合もステアリン酸マグネシウムが主成分であることが好ましい。なお、ステアリン酸には少量の他の脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸等を含有していてもよく、これは、商業等級のステアリン酸の特性である。商業等級のステアリン酸マグネシウムにおいても、少量の他の脂肪酸マグネシウムを含むことがあり、他の脂肪酸マグネシウムとしては、例えば、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
前記高級脂肪酸金属塩の融点は、100~175℃であることが好ましく、100~160℃であることがより好ましく、100~150℃であることが更に好ましい。前記高級脂肪酸金属塩の融点は、JIS K7121-1987に基づいて、熱流束示差走査熱量測定(DSC)にて融解ピーク温度として測定することができる。前記高級脂肪酸金属塩を試験片とし、該試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を採用する場合」を採用し、加熱温度、冷却温度は共に10℃/分とする。また、DSC曲線に融解ピークが2個以上存在する場合には最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0026】
ポリアミド系樹脂粒子中の高級脂肪酸金属塩の含有量は、500~5000質量ppmである。よりポリアミド系樹脂発泡粒子の色ムラを抑制する観点から、ポリアミド系樹脂粒子中の高級脂肪酸金属塩の含有量は、好ましくは600質量ppm以上であり、より好ましくは700質量ppm以上であり、更に好ましくは800質量ppm以上である。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の色ムラを抑制しつつ、気泡径が過度に細かくなることを抑制する観点から、ポリアミド系樹脂粒子中の高級脂肪酸金属塩の含有量は、好ましくは4000質量ppm以下であり、より好ましくは3000質量ppm以下であり、更に好ましくは2000質量ppm以下である。
なかでも、高級脂肪酸金属塩としてステアリン酸マグネシウムを用いた場合、ポリアミド系樹脂粒子中のステアリン酸マグネシウムの含有量は、好ましくは500~5000質量ppmであり、より好ましくは600~4000質量ppmであり、更に好ましくは700~3000質量ppmであり、より更に好ましくは800~2000質量ppmである。高級脂肪酸金属塩の含有量が上記の範囲であることで、得られるポリアミド系樹脂発泡粒子と成形体の色ムラを効果的に抑制することができる。
【0027】
また、前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する前記高級脂肪酸金属塩の含有量(質量ppm)の比[高級脂肪酸金属塩/カーボンブラック(質量ppm/質量%)]は、好ましくは50以上であり、より好ましくは200以上であり、更に好ましくは300以上である。また、該比[高級脂肪酸金属塩/カーボンブラック(質量ppm/質量%)]は、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、更に好ましくは1000以下である。比[高級脂肪酸金属塩/カーボンブラック(質量ppm/質量%)]が前記範囲を満足すると、より色ムラが抑制された発泡成形体が得られやすくなる。
【0028】
(他の樹脂及び添加剤)
前記ポリアミド系樹脂粒子には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、他の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂粒子中のポリアミド系樹脂の含有量は、耐熱性、耐摩耗性、及び耐薬品性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、より更に好ましくは95質量%以上である。
ポリアミド系樹脂粒子に含有される樹脂中の(ポリアミド系樹脂と他の熱可塑性樹脂の合計に対する)ポリアミド系樹脂の含有量は、耐熱性、耐摩耗性、及び耐薬品性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、より更に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であることが特に好ましい。
【0029】
ポリアミド系樹脂粒子には、ポリアミド系樹脂の他に、通常使用される帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性化剤、結晶核剤、耐候剤及び充填材等の各種の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。これらの各種添加剤の添加量は、目的、用途により異なるが、ポリアミド系樹脂粒子を構成するポリマー成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
【0030】
(ポリアミド系樹脂粒子の質量及び製造方法)
ポリアミド系樹脂粒子の1個の質量は、目的とするポリアミド系樹脂発泡粒子の大きさ、見掛け密度等に応じて適宜設定されるが、0.5~15.0mgであることが好ましい。上記範囲内であれば、見掛け密度を高めることができる。かかる観点から、ポリアミド系樹脂粒子の質量の下限は1.0mgであることがより好ましく、1.5mgであることが更に好ましい。一方、その上限は10.0mgであることがより好ましく、7.0mgであることが更に好ましく、5.0mgであることが特に好ましい。
【0031】
ポリアミド系樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリアミド系樹脂、着色顔料及び高級脂肪酸金属塩、必要に応じて気泡調整剤、末端封鎖剤、及び耐候剤等の添加剤を押出機に投入し、混練して溶融混練物とし、押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に溶融混練物を押し出し、押出された溶融物をペレタイザーで所定の質量となるように切断するストランドカット法、前記溶融混練物を気相中に押出した直後に切断するホットカット法、前記溶融混練物を水中に押出した直後に切断するアンダーウォーターカット法(UWC法)等により、ポリアミド系樹脂粒子を得ることができる。
【0032】
ポリアミド系樹脂粒子の製造にあたり、予め着色顔料を熱可塑性樹脂に分散させたマスターバッチを作製し、ポリアミド系樹脂、該マスターバッチ、高級脂肪酸金属塩、必要に応じてさらに添加される添加剤を押出機に投入することが好ましい。着色顔料をマスターバッチとすることによりポリアミド系樹脂粒子中に着色顔料を均一に分散させやすくなる。
【0033】
前記マスターバッチ中の着色顔料の濃度としては、20~70質量%が好ましく、30~65質量%がより好ましく、35~60質量%が更に好ましい。また、ポリアミド系樹脂に着色顔料をより分散させやすくする観点から、マスターバッチ中の熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂またはスチレン-アクリロニトリル共重合体であることが好ましい。
【0034】
<ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法の例>
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法は、前記着色顔料と高級脂肪酸金属塩とを含有するポリアミド系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる「含浸工程」と、加熱、圧力変化、体積変化等により、物理発泡剤を含浸したポリアミド系樹脂粒子を発泡させる「発泡工程」とを有する。
【0035】
(物理発泡剤)
本発明の製造方法では、発泡剤として物理発泡剤を用いる。物理発泡剤としては、有機系物理発泡剤として、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、及びメチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等が挙げられる。また、無機系物理発泡剤として、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等が挙げられる。
物理発泡剤の中でも、環境への影響が少ないとともに可燃性がなく安全性に優れるという観点から、無機系物理発泡剤が好ましく、二酸化炭素又は窒素がより好ましく、二酸化炭素が更に好ましい。
【0036】
(製造方法の例)
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法は前記「含浸工程」と「発泡工程」を有するものであれば、制限はないが、[1]樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、発泡剤を含浸させた樹脂粒子を発泡させずに取り出し、その後に発泡装置にて加熱して発泡粒子を得る方法、及び[2]密閉装置内の分散媒中に分散した樹脂粒子に発泡剤を含浸させるとともに、樹脂の軟化温度付近に昇温した後、低圧下で分散媒と共に樹脂粒子を装置外に放出することで発泡粒子を得る方法が好ましく、上記[2]の方法がより好ましい。
以下に[2]の方法である好適な製造方法を説明する。
【0037】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法は、次の各工程を有することが好ましい。
(1)密閉容器内で、前記ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る分散工程と、
(2)該分散液中の該ポリアミド系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる含浸工程と、
(3)該分散液を、該ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上50℃低い温度(Tm-50℃)未満で1分以上60分以下の保持時間で保持する保持工程
(4)発泡させる直前の分散液の温度(Te)を該ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上、50℃低い温度(Tm-50℃)未満とし、発泡剤を含むポリアミド系樹脂粒子を水と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させる発泡工程
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」ともいう。)の製造方法は、上記工程以外の工程を有していてもよいし、上記工程において、更に他の成分を添加してもよい。上記含浸工程と上記保持工程は同時に行っても良く、上記保持工程を上記含浸工程よりも先に行っても構わない。
【0038】
〔分散工程〕
分散工程は、密閉容器内で、ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る工程である。
ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、撹拌機を使用して、水を撹拌しながら水にポリアミド系樹脂粒子を添加し、更に撹拌することによって、分散液を得ることができる。
また、必要に応じて分散液に、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、タルク、スメクタイト等の無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤等の分散助剤を添加することが好ましい。ポリアミド系樹脂粒子と分散剤との質量比(樹脂粒子/分散剤)は、20~2000とすることが好ましく、より好ましくは30~1000である。また、分散剤と分散助剤との質量比(分散剤/分散助剤)は、1~500とすることが好ましく、より好ましくは1~100である。
【0039】
〔含浸工程〕
含浸工程は、分散液中のポリアミド系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる工程である。また、同時にポリアミド系樹脂粒子を吸水させることもできる。ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸方法は特に限定されるものではないが、オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。なお、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸は、加圧に加えて、加熱することが好ましい。
含浸工程は、加圧する場合、密閉容器内の圧力が、大気圧から含浸時の圧力(以下、含浸圧力ともいう。)まで到達する工程を含む。
また、発泡剤を含浸させる工程は、ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散せた分散液を、常温から含浸時の温度(以下、含浸温度ともいう。)まで加熱する工程を含む。
【0040】
加熱下で行われる含浸時の温度は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくはポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm(℃))以下、より好ましくは(Tm-20(℃))以下である。
【0041】
また、加圧下で行われる含浸時の圧力(以下、含浸圧力ともいう。)は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、分散液が入った容器に発泡剤を添加することにより、密閉容器内の圧力が、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましく、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
なお、「1.5MPa(G)」は、ゲージ圧で1.5MPaであることを意味する。
【0042】
分散工程及び含浸工程は、ポリアミド系樹脂粒子を吸水させる役割も有する。ポリアミド系樹脂粒子を十分に吸水させて可塑化させる観点から、分散液を得る工程及び発泡剤を含浸させる工程の合計時間が20分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点からは、上記時間が60分以下であることが好ましい。
また、含浸工程における昇温速度は、ポリアミド系樹脂粒子を十分に吸水させて可塑化させる観点から、10℃/分以下とすることが好ましく、7℃/分以下とすることがより好ましい。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点から、昇温速度は、1℃/分以上とすることが好ましく、2℃/分以上とすることがより好ましい。
【0043】
〔保持工程〕
保持工程は、分散液を、ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上50℃低い温度(Tm-50℃)未満で1分以上60分以下の保持時間で保持する工程である。
保持工程における分散液の保持温度は、ポリアミド系樹脂を十分に吸水させ可塑化させる観点、及び発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させる観点から、ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上、好ましくは80℃低い温度(Tm-80℃)以上、より好ましくは70℃低い温度(Tm-70℃)以上、更に好ましくは65℃低い温度(Tm-65℃)以上であり、50℃低い温度(Tm-50℃)未満、好ましくは55℃低い温度(Tm-55℃)以下、より好ましくは57℃低い温度(Tm-57℃)以下、更に好ましくは59℃低い温度(Tm-59℃)以下である。
【0044】
通常、ポリプロピレン系樹脂等の汎用樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を製造する際、原材料の樹脂の融点付近で保持を行う。しかしながら、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法においては、ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上、50℃低い温度(Tm-50℃)未満で保持して製造される。これは、ポリアミド系樹脂が吸水性を有するため、分散液として用いる水によりポリアミド系樹脂粒子が可塑化され、融点が大幅に下がり、その結果、ポリアミド系樹脂粒子の融点よりも大幅に低い温度で、所望の見掛け密度及び独立気泡率を有する発泡粒子を製造することが可能になったためと考えられる。
【0045】
保持工程における保持時間は、発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させ、高い独立気泡率を有するポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは13分以上である。そして、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点、及びポリアミド系樹脂の加水分解を防ぐ観点から、保持する工程における保持時間は、60分以下、好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは18分以下である。上記時間で保持することにより、見掛け密度が低く、独立気泡率が高いポリアミド系樹脂発泡粒子を得ることが可能となる。保持する工程は、前記温度範囲内で多段階に設定することもでき、また、該温度範囲内で十分な時間を要してゆっくりと昇温させることも可能である。容易に製造が可能であるという観点からは、前記温度範囲内で一段階(保持温度が一定)に設定し、上記時間保持することが好ましい。
【0046】
保持工程は、発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させる観点から、加圧下で行われることが好ましく、含浸圧力と同じ圧力を維持することが好ましい。分散液が入った容器内の圧力は、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましい。また、分散液が入った容器内の圧力は、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
【0047】
〔発泡工程〕
発泡工程は、発泡剤を含浸したポリアミド系樹脂粒子を発泡させる工程である。
ポリアミド系樹脂粒子の発泡方法は特に限定されるものではないが、前記保持する工程に続いて、発泡剤が含浸したポリアミド系樹脂粒子を水とともに、保持する工程における圧力より低い圧力雰囲気下(通常は大気圧下)に放出して発泡させる方法が好ましい。
【0048】
発泡させる直前の分散液の温度Te(以下、発泡温度ともいう。)は、見掛け密度が低く、独立気泡率が高いポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上、好ましくは80℃低い温度(Tm-80℃)以上、より好ましくは70℃低い温度(Tm-70℃)以上、更に好ましくは65℃低い温度(Tm-65℃)以上である。また、発泡温度は、ポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm)よりも50℃低い温度(Tm-50℃)未満、好ましくは55℃低い温度(Tm-55℃)以下、より好ましくは57℃低い温度(Tm-57℃)以下、更に好ましくは59℃低い温度(Tm-59℃)以下である。
【0049】
発泡させる工程における放出直前の圧力(発泡圧力)は、好ましくは0.5MPa(G)以上、より好ましくは1.5MPa(G)以上、更に好ましくは2.5MPa(G)以上である。また、発泡圧力は、好ましくは10.0MPa(G)以下、より好ましくは7.0MPa(G)以下、更に好ましくは5MPa(G)以下である。
【0050】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子]
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、平均気泡径が150~500μmである。
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂は、上述のポリアミド系樹脂粒子を構成するポリアミド系樹脂が好ましい。すなわち、上述の<ポリアミド系樹脂粒子>を構成する前記(ポリアミド系樹脂)の項で説明したポリアミド系樹脂であることが好ましい。また、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、他の樹脂及び添加剤を含有させてもよく、これら他の樹脂及び添加剤も上述の<ポリアミド系樹脂粒子>を構成する前記(他の樹脂及び添加剤)の項で説明した他の樹脂及び添加剤であることが好ましい。
【0051】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、前述の製造方法によって得られるポリアミド系樹脂発泡粒子であることが好ましい。
つまり、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、物理発泡剤を用いてポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、該ポリアミド系樹脂粒子が、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmであるポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法によって得られるポリアミド系樹脂発泡粒子であることが好ましい。
前述の製造方法によって製造されることで、得られるポリアミド系樹脂発泡粒子は、色ムラが抑制され、外観に優れる。
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは10kg/m3以上であり、より好ましくは30kg/m3以上、更に好ましくは50kg/m3以上である。本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは300kg/m3以下であり、より好ましくは250kg/m3以下であり、更に好ましくは150kg/m3以下である。
また、前述の本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは10kg/m3以上であり、より好ましくは30kg/m3以上、更に好ましくは50kg/m3以上である。前述の本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは300kg/m3以下であり、より好ましくは250kg/m3以下であり、更に好ましくは150kg/m3以下である。
発泡粒子の見掛け密度が上記範囲であれば、軽量性に優れる。本発明においては、着色顔料と特定量の高級脂肪酸金属塩とを含有するポリアミド系樹脂発泡粒子であるため、見掛け密度が低くても色ムラが抑制されたポリアミド系樹脂発泡粒子とすることができる。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、以下の方法で測定される。
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置した約500cm3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して、該発泡粒子を前記メスシリンダー内の水中に沈める。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求められる。
【0052】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、150μm以上であり、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、500μm以下であり、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは250μm以下である。
また、前述の本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、更に好ましくは150μm以上である。前述の本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下であり、更に好ましくは250μm以下である。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、以下の方法で測定される。
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントする。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とする。この操作を10個以上の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0053】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
また、前述の本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
発泡粒子の独立気泡率が上記範囲を満足すると、見掛け密度が低い発泡粒子が得られやすい。また、発泡粒子の成形性が良好である。なお、独立気泡率は、発泡粒子中の全気泡の容積に対する独立気泡の容積の割合であり、ASTM-D2856-70に基づき空気比較式比重計を用いて求めることができる。
【0054】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子に含有される着色顔料は、前記ポリアミド系樹脂粒子に含有される着色顔料と同様であり、好ましい着色顔料も同様である。つまり、前記(着色顔料)の項で説明した着色顔料と同様であり、好ましい着色顔料も同様である。具体的にはカーボンブラックが好ましい。
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子に含有される高級脂肪酸金属塩は、前記ポリアミド系樹脂粒子に含有される高級脂肪酸金属塩と同様であり、好ましい高級脂肪酸金属塩も同様である。つまり、前記(高級脂肪酸金属塩)の項で説明した高級脂肪酸金属塩と同様であり、好ましい高級脂肪酸金属塩も同様である。具体的には好ましくはラウリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、及びベヘン酸亜鉛から選択される1種以上であり、より好ましくはパルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛、及びステアリン酸亜鉛から選択される1種以上であり、更に好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸亜鉛から選択される1種以上であり、より更に好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
ポリアミド系樹脂発泡粒子中の高級脂肪酸金属塩の含有量は、500~5000質量ppmであることが好ましい。よりポリアミド系樹脂発泡粒子の色ムラを抑制する観点から、ポリアミド系樹脂粒子中の高級脂肪酸金属塩の含有量は、より好ましくは600質量ppm以上であり、更に好ましくは800質量ppm以上である。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の色ムラを抑制しつつ、気泡径が過度に細かくなることを抑制する観点から、ポリアミド系樹脂粒子中の高級脂肪酸金属塩の含有量は、より好ましくは4000質量ppm以下であり、さらに好ましくは3000質量ppm以下である。なお、着色顔料及び高級脂肪酸金属塩は、前述の本発明のポリアミド系樹脂粒子の製造方法に記載の方法により前記ポリアミド系樹脂発泡粒子に含有させることができる。
【0055】
<ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体>
本発明により得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形することにより、発泡成形体を得ることができる。型内成形法は、従来公知の方法を採用することできるが、スチームによる加熱を用いることが好ましい。スチームにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子中のポリアミド系樹脂が、吸水し可塑化する為、成形圧を低くすることが可能となる。なお、得られた成形体を乾燥して水分を除去すれば、ポリアミド系樹脂本来の物性に戻り、高い耐熱性を有する成形体となる。
【0056】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、型内成形性に優れる発泡粒子成形体とすることができる。具体的には、成形体を得るために型内成形する際の二次発泡性に優れる。また、水冷時間を短くすることができ、その結果、全体の成形時間を短くすることができることから好ましい。
発泡粒子成形体の水冷時間は、以下のようにして求められる。まず、得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を成形型(例えば、縦200mm×横250mm×厚さ50mm)に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得る。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、移動側型よりスチームを供給し、次いで固定側型よりスチームを供給した後、成形加熱スチーム圧力(成形圧力=成形蒸気圧)まで加熱する。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出す。発泡粒子成形体の水冷時間は、水冷開始から面圧が0.02MPa(ゲージ圧)に到達するまでに要した水冷時間(秒)とする。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0058】
各例におけるポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂発泡粒子の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0059】
[測定方法]
〔融点〕
JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定法により、ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂粒子及び高級脂肪酸金属塩の融点をそれぞれ測定した。窒素流入量30mL/分の条件下で、10℃/分の加熱速度で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融(1回目の昇温)してから、次いでその温度にて10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融して得られるDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求めた。なお、測定装置として、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。また、ポリアミド系樹脂及びポリアミド系樹脂粒子は、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないようデシケーター内に入れた後、真空吸引して水分量を1000質量ppm以下で24時間保存したものを融点の測定に使用した。
【0060】
〔曲げ弾性率〕
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めた。曲げ弾性率は、厚み4mm、幅10mm、長さ80mmの樹脂試験片を作製し、試験片を室温23℃、湿度50%の状態で72時間静置した後、支点間距離64mm、圧子の半径R15.0mm、支持台の半径R25.0mm、試験速度2mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、オートグラフAGS-10kNG(島津製作所製)試験機により測定し、算出された値(5点)の平均値を採用した。
なお、アミド系エラストマー(アルケマ社製、製品名「PEBAX5533」、融点159℃、密度1.01g/cm3)の曲げ弾性率を上記方法に基づき測定したところ、150MPaであった。
【0061】
[評価]
〔発泡粒子の見掛け密度〕
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置した約500cm3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して、該発泡粒子を前記メスシリンダー内の水中に沈めた。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
【0062】
〔平均気泡径〕
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影した。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントした。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とした。この操作を無作為に選択された50個の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とした。
【0063】
〔独立気泡率〕
ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の真の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を求めた。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積(cm3)
Va:発泡粒子の見掛けの体積(cm3)
W:発泡粒子測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3)
【0064】
〔発泡粒子の色ムラ〕
発泡粒子の表面の色ムラを下記の基準で目視評価した。白スジがある発泡粒子の割合が少ないほど、色ムラが少なく、発泡粒子の外観が良好である。
(評価基準)
A:白スジがある発泡粒子が全体の5%未満
B:白スジがある発泡粒子が全体の5%以上20%未満
C:白スジがある発泡粒子が全体の20%以上50%未満
D:白スジがある発泡粒子が全体の50%以上
【0065】
〔成形体の色ムラ〕
成形体の表面の色ムラを下記の基準で目視評価した。白スジの面積の割合が少ないほど、色ムラが少なく、成形体の外観が良好である。
(評価基準)
A:成形体表面に白スジがない
B:白スジの面積が成形体表面の2%未満
C:白スジの面積が成形体表面の2%以上5%未満
D:白スジの面積が成形体表面の5%以上
【0066】
[高級脂肪酸金属塩又は他の気泡核剤]
実施例及び比較例で用いた高級脂肪酸金属塩、及びその他の気泡核剤を表1に示す。表2の「高級脂肪酸金属塩」欄と表3の「高級脂肪酸金属塩又は他の気泡核剤」欄には表1の「名称」を記載した。
【0067】
【0068】
実施例1~6
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
押出機に、ポリアミド樹脂「5033B」(宇部興産株式会社製)を供給し、表2に示す着色顔料(カーボンブラック)と、表2に示す高級脂肪酸金属塩を、それぞれ表2の量となるように供給し、末端封鎖剤として「Stabaxol P」(ラインケミー社製)をポリアミド樹脂100質量部に対して1質量部となるように供給し、それぞれ溶融混練した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。着色顔料は、カーボンブラックの濃度45質量%であり、基材樹脂がスチレン-アクリロニトリル共重合体であるマスターバッチを用いた。なお、ポリアミド樹脂「5033B」は、ポリアミド6/66コポリマー(ナイロン6/66)、ポリアミド6/ポリアミド66=85/15、融点(Tm0):197℃、密度1.14g/cm3、曲げ弾性率:1300MPa、製品名:UBEナイロン5033Bである。ポリアミド系樹脂粒子の融点は197℃であった。
【0069】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子10kgと、分散液として水310リットルとを、撹拌機を備えた400リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン3.0質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08質量部とを分散液に添加した。オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、含浸温度(136.0℃)に到達後、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が含浸圧力(4.0MPa)となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から含浸温度(136.0℃)に到達するまでの昇温時間は30分であった。次に、136.0℃、4.0MPaで15分間保持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られたポリアミド系樹脂発泡粒子について、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0070】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の製造]
次に、ポリアミド系樹脂発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製した。まず、得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を縦200mm×横250mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、固定側のドレン弁を開放した状態で移動側型よりスチームを供給し、次いで移動側のドレン弁を開放した状態で固定側型よりスチームを供給した後、排気弁を閉鎖し、成形加熱スチーム圧力(成形圧力=成形蒸気圧)まで加熱した。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生し、その後、室温まで徐冷した。このようにして、ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を得た。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体について、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0071】
【0072】
比較例1~5
実施例で用いた着色顔料の量、高級脂肪酸金属塩又は気泡核剤の種類及び量を表3のように変更した以外は実施例と同様にして、ポリアミド系樹脂発泡粒子及び成形体を製造した。具体的には以下のようにした。
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
押出機に、ポリアミド樹脂「5033B」(宇部興産株式会社製)を供給し、表3に示す着色顔料(カーボンブラック)と、表3に示す高級脂肪酸金属塩又は表3に示す気泡核剤を、それぞれ表3の量となるように供給し、末端封鎖剤として「Stabaxol P」(ラインケミー社製)をポリアミド樹脂100質量部に対して1質量部となるように供給し、それぞれ溶融混練した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。着色顔料は、カーボンブラックの濃度45質量%であり、基材樹脂がスチレン-アクリロニトリル共重合体であるマスターバッチを用いた。なお、ポリアミド樹脂「5033B」は、ポリアミド6/66コポリマー(ナイロン6/66)、ポリアミド6/ポリアミド66=85/15、融点(Tm0):197℃、密度1.14g/cm3、曲げ弾性率:1300MPa、製品名:UBEナイロン5033Bである。ポリアミド系樹脂粒子の融点は197℃であった。
【0073】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子10kgと、分散液として水310リットルとを、撹拌機を備えた400リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン3.0質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08質量部とを分散液に添加した。オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、含浸温度(136.0℃)に到達後、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が含浸圧力(4.0MPa)となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から含浸温度(136.0℃)に到達するまでの昇温時間は30分であった。次に、136.0℃、4.0MPaで15分間保持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られたポリアミド系樹脂発泡粒子について、前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0074】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の製造]
次に、ポリアミド系樹脂発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製した。まず、得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を縦200mm×横250mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、固定側のドレン弁を開放した状態で移動側型よりスチームを供給し、次いで移動側のドレン弁を開放した状態で固定側型よりスチームを供給した後、排気弁を閉鎖し、成形加熱スチーム圧力(成形圧力=成形蒸気圧)まで加熱した。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生し、その後、室温まで徐冷した。このようにして、ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を得た。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体について、前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0075】
【0076】
表2に示した結果より、実施例で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子及び発泡粒子成形体は、白スジ等の色ムラが見られず、外観が良好であった。特に表3に示した比較例と比べると、実施例で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子及び発泡粒子成形体は、白スジ等の色ムラが見られず、外観が良好であることが明らかである。したがって、本発明の製造方法によれば、色ムラが抑制されたポリアミド系樹脂発泡粒子を得られることが分かる。
【要約】
物理発泡剤を用いてポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、該ポリアミド系樹脂粒子が、着色顔料と、炭素数12~24の高級脂肪酸金属塩とを含有し、該高級脂肪酸金属塩における金属がマグネシウム、アルミニウム及び亜鉛から選択される1種以上であり、ポリアミド系樹脂粒子中の該高級脂肪酸金属塩の含有量が500~5000質量ppmであるポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。