(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】大麻組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20220913BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220913BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220913BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20220913BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220913BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20220913BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220913BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220913BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220913BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K31/352
A61K31/05
A61K31/015
A61K31/045
A61K31/01
A61K45/00
A61K47/44
A61P35/00
A61P15/00
(21)【出願番号】P 2020204014
(22)【出願日】2020-12-09
(62)【分割の表示】P 2019505187の分割
【原出願日】2017-08-03
【審査請求日】2021-01-07
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518227865
【氏名又は名称】ゼリラ セラピューティクス オペレーションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】カレリス、ハリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン、マラ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ウォッシャー、スチュワート
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522184(JP,A)
【文献】特表2014-530247(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030369(WO,A1)
【文献】特表2008-523078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0263785(US,A1)
【文献】Drug Test.Analysis.,2012年,Vol.4,No.7-8,pp.660-667
【文献】Molecules,2014年,Vol.19,pp.6694-6706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00
A61K 47/00-47/69
A61P 35/00
A61P 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麻抽出物、及び任意選択で、1以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物であって、前記大麻抽出物が、カンナビノイド留分及びテルペン留分を含み、前記大麻抽出物が以下:
A:
- ≧0.3%w/wのテルペン留分;
- ≧50%w/wのΔ
9-テトラヒドロカンナビノール(THC);
- ≧0.3%w/wのカンナビゲロール(CBG);及び
- ≦0.5%w/wのカンナビノール(CBN);
又は
B:
- ≧0.5%w/wのテルペン留分;
- ≧60%w/wのカンナビジオール(CBD);
- ≦3%w/wのTHC;及び
- ≦0.1%w/wのCBN;
のいずれかを含み、
前記テルペン留分が以下:
・ テルペン留分の少なくとも11重量%の量のβ-カリオフィレン、並びに
以下:
- テルペン留分の少なくとも5重量%の量のリナロール;及び
- テルペン留分の少なくとも1重量%の量のβ-ピネン
の1以上
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記大麻抽出物が大麻オイルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記大麻抽出物が、医薬組成物の50重量%~99重量%の量のΔ
9-テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物の60重量%~99重量%の量のカンナビジオール(CBD)を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記大麻抽出物が、Δ
9-テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、Δ
9-テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及び(-)-カンナビジバリン(CBDV)から選択される、1以上の追加的なカンナビノイドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記テルペン留分が、リナロール及びβ-ピネンの両方を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記テルペン留分が、β-ミルセン、D-リモネン、ネロリドール及びα-ピネンの1以上を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記テルペン留分が、α-ビサボロール、カリオフィレンオキシド、p-シメン、イソプレゴール、オシメン、α-テルピネン、γ-テルピネン、δ-s-カレン、グアイオール及びテルピノレンの1以上を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬的に許容される担体が胡麻油である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
大麻抽出物の他に活性剤を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
がん又はがんと関連する症状の治療剤であって、有効量の請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有
し、がんと関連する症状が、説明不能な体重減少、発熱、倦怠感、疼痛又は皮膚の変化である、治療剤。
【請求項12】
前記がんが乳がんである、請求項11に記載の治療剤。
【請求項13】
前記
乳がんがHER2陽性
乳がん、三重陰性
乳がん及びホルモン受容体陽
性乳がんから選択される、請求項12に記載の治療剤。
【請求項14】
乳がんと関連する症状が、乳房組織における肥厚又はしこりの形成である、請求項12又は13に記載の治療剤。
【請求項15】
がん又はがんと関連する症状を治療するための医薬の製造における大麻抽出物の使用であって、前記大麻抽出物がカンナビノイド留分及びテルペン留分を含み、前記大麻抽出物が以下:
A:
- ≧0.3%w/wのテルペン留分;
- ≧50%w/wのΔ
9-テトラヒドロカンナビノール(THC);
- ≧0.3%w/wのカンナビゲロール(CBG);及び
- ≦0.5%w/wのカンナビノール(CBN);
又は
B:
- ≧0.5%w/wのテルペン留分;
- ≧60%w/wのカンナビジオール(CBD);
- ≦3%w/wのTHC;及び
- ≦0.1%w/wのCBN;
のいずれかを含み、
前記テルペン留分が、以下:
・ テルペン留分の少なくとも11重量%の量のβ-カリオフィレン、並びに
以下:
- テルペン留分の少なくとも5重量%の量のリナロール;及び
- テルペン留分の少なくとも1重量%の量のβ-ピネン
の1以上
を含
み、がんと関連する症状が、説明不能な体重減少、発熱、倦怠感、疼痛又は皮膚の変化である、使用。
【請求項16】
前記がんが乳がんであり、乳がんと関連する症状が、乳房組織における肥厚又はしこりの形成である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
がん又はがんと関連する症状の治療のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物
であって、がんと関連する症状が、説明不能な体重減少、発熱、倦怠感、疼痛又は皮膚の変化である、医薬組成物。
【請求項18】
前記がんが乳がんであり、乳がんと関連する症状が、乳房組織における肥厚又はしこりの形成である、請求項17に記載のがん又はがんと関連する症状の治療のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、がん又はがんと関連する症状を治療するための方法に関する。本発明はまた、大麻草からの抽出物を含む医薬組成物、及びがん又はがんと関連する症状の治療における該組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
大麻の生物学的活性は周知であり、それにより「快楽を得るための」ドラッグとなる。しかしながら、数種類のカンナビノイド(CB)受容体が発見され、大麻の使用を制限する法律の緩和(幾つかの管轄における非犯罪化)により、現在は、新たな治療法の源として大麻の可能性を探索する機会が存在している。
【0003】
例えば、がん等の重篤な疾患に罹患している患者が、代替的又は補完的な治療法として自然療法を求める動きも大きくなっている。
【0004】
従って、少なくとも一部において天然のソースに由来する、がん又はその症状の新たな治療法を開発するための継続的なニーズが存在する。有利には、本発明は、存在しているがん化学療法に対して匹敵する有効性を示す大麻抽出物を含む医薬組成物を提供し得る。
【発明の概要】
【0005】
要旨
本発明は、がん又はがんと関連する症状を治療する方法であって、有効量の大麻抽出物を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。従って、大麻抽出物、及び任意選択で、1以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、アジュ
バント、賦形剤、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物もまた提供される。
【0006】
更なる態様においては、がん又はがんと関連する症状を治療するための医薬の製造における大麻抽出物の使用が提供される。
【0007】
また別の態様においては、がん又はがんと関連する症状を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が大麻抽出物、及び任意選択で、1以上の医薬的に許容される担
体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はそれらの任意の組合せを含む、組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本出願は、単なる例として、添付の図面を参照して、更に説明される:
【
図1】
図1は、BT474(HER2+ヒト乳腺がん細胞)を異所性の異種移植をした、雌性の免疫不全(ヌード)マウスにおいて、(i) ビヒクル単独、(ii) THC及び(iii) 大麻抽出物を用いて処理した腫瘍体積の時系列の図を示す。
【
図2】
図2は、BT474(HER2+ヒト乳腺がん細胞)を異所性の異種移植をした、雌性の免疫不全(ヌード)マウスにおいて、(i) ビヒクル単独、(ii) ラパチニブ(lapatinib)、(iii) THC、及び(iv) ラパチニブとTHCとの組合せを用いて処理した腫瘍体積の時系列の図を示す。
【
図3】
図3は、BT474(HER2+ヒト乳腺がん細胞)を異所性の異種移植をした、雌性の免疫不全(ヌード)マウスにおいて、(i) ビヒクル単独、(ii) ラパチニブ、(iii) 大麻抽出物、及び(iv) ラパチニブと大麻抽出物との組合せを用いて処理した腫瘍体積の時系列の図を示す。
【
図4】
図4は、BT474(HER2+ヒト乳腺がん細胞)を異所性の異種移植をした、雌性の免疫不全(ヌード)マウスにおいて、(i) ビヒクル単独、(ii) ラパチニブ、(iii) ラパチニブとTHCとの組合せを用いて処理した腫瘍体積の時系列の図を示す。
【
図5】
図5は、(A) BT474細胞、(B) HCC1954細胞及び(C) SKBR3細胞に対する、THC及び大麻抽出物(THCを多く含む抽出物)の活性を比較した一連の図を示す。BT474、HCC1954及びSKBR3細胞は、全てHER2+乳がん細胞である。
【
図6】
図6は、(A) MDA-MB-231細胞及び(B) SUM159細胞に対する、THC及び大麻抽出物の活性を比較した一連の図を示す。MDA-MB-231及びSUM159細胞は、三重陰性乳がん細胞である。
【
図7】
図7は、(A) MCF7細胞及び(B) T47D細胞に対する、THC及び大麻抽出物の活性を比較した一連の図を示す。MCF7及びT47D細胞は、ホルモン受容体陽性の乳がん細胞である。
【
図8】
図8は、大麻抽出物を用いて処理後の、様々な乳がん細胞における対照に対するパーセンテージとしての細胞生存率の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態(複数可)の詳細な説明
本発明は、大麻抽出物、及び任意選択で、1以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、
アジュバント、賦形剤、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物を提供する。
【0010】
大麻草は、カンナビノイド、テルペン及びテルペノイド、ステロール、トリグリセリド、アルカン、スクアレン、トコフェロール、カロテノイド並びにアルカロイドを含む、多種多様な二次代謝産物を産生する。これらの二次代謝産物の混合は、大麻の種類、抽出する大麻草の部位、抽出の方法、抽出物の処理及び季節を含む、数種類の要因によって異なる。
【0011】
2つの異なる命名規則で記載されている数種類の大麻草が存在する。これらの規則の1つにより、3種類の別種の大麻草、即ち、カンナビス・サティバ・リンネ(Cannabis sativa
Linnaeus)、カンナビス・インディカLAM.(Cannabis indica LAM.).及びカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)が特定されている。もう一方の規則によって、以下:カンナビス・サティバssp.サティバ及びssp.インディカを含む、数種類の亜種に分類される様々な種類のカンナビス・サティバL.種に属するとして、全ての大麻草が特定されている。本明細書において用いられる場合、用語「大麻」は、これらの植物の種類のいずれか及びその全てを指す。
【0012】
大麻抽出物は、当該技術分野において公知である任意の方法によって調製し得る。該抽出物は、カンナビノイド、テルペン及びテルペノイド化合物を含む大麻草の任意の部分から形成し得る。抽出物は、抽出剤を、葉、種子、トリコーム、花、キーフ(keif)、シェイク(shake)、蕾、茎又はそれらの組合せと接触させることにより形成し得る。幾つか
の実施形態においては、該抽出物は、大麻草の花及びシェイク(shake)から形成される
。例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール等)、水、炭化水素(例、ブタン、ヘキサン等)、オイル(例、オリーブオイル、植物油、エッセンシャルオイル,等)、極性有機溶媒(例、酢酸エチル、ポリ
エチレングリコール等)又は超臨界流体(例、液体CO2)を含む、当該技術分野において
公知である、任意の好適な抽出剤を使用し得る。該抽出剤は、医薬組成物に大麻抽出物を取り込むことに先立って、完全に若しくは部分的に除去し得るか、又は担体として医薬組成物中に含ませ得る。該抽出剤は、任意選択で、減圧下(例、真空下)で、抽出物を加熱することにより除去し得る。より揮発性の高い植物の代謝物(例えばテルペン等)の幾つかを、抽出剤を用いて除去しても良いことが理解される。従って、幾つかの実施形態にお
いては、抽出剤を除去することにより、抽出物のカンナビノイド留分を濃縮し得る。幾つかの実施形態においては、例えば、抽出物を露紙又は目の細かい篩(例、5μmのポアサイズの篩)を通過させることにより、抽出物が濾過され粒状物が除去される。
【0013】
幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、植物材料に熱及び圧力をかけることにより形成される。典型的には、これらの実施形態においては、抽出剤は必要でない。
【0014】
幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は大麻オイルである。本明細書において用いられる場合、「大麻オイル」は、大麻草の少なくとも一部をオイルと接触させることにより形成される抽出物である。該抽出オイルは、任意選択で、除去し得る。抽出オイルは、オリーブオイル、麻油、胡麻油、ココナッツオイル、植物油、キャノーラオイル、グレープシードオイル、アーモンドオイル、中鎖トリグリセリド(MCT)オイル、及び任意の他
の食用油、又はそれらの組合せから選択し得る。
【0015】
幾つかの実施形態においては、1以上の追加的な化合物(例、カンナビノイド、テルペ
ン又はテルペノイド化合物)を大麻抽出物に添加し得る。化合物の添加によって、大麻草内で発現しているある化合物の相対的な量において、自然による変動を補償しても良い。添加される化合物は、所望の化合物を合成したバージョンであっても良く、それらは他の大麻抽出物から取得した精製した化合物であっても良く、又はそれらは2以上の大麻抽出
物を混ぜ合わせることによって添加されても良い。
【0016】
本明細書において用いられる場合、用語「カンナビノイド」は、大麻草から単離されたか、又は内部のカンナビノイド系に関連する活性を有するよう合成により作製されている、任意のカンナビノイドに関する。
【0017】
用語「カンナビノイド留分」は、大麻抽出物中に存在するカンナビノイド化合物の組合せを説明するために使用される
【0018】
本明細書において用いられる場合、用語「テルペン」又は「テルペノイド」は、しばしば特有の臭気を放つ、ある種の炭化水素分子を指す。テルペンは、分子式C5H8を有する、イソプレンの単位から誘導される。テルペンの基本的な分子式は、イソプレン単位の倍数、即ち、(C5H8)n(nは結合したイソプレン単位の数である)である。テルペノイドは、典型的には酸化プロセスにより、植物内で更に代謝されているテルペン化合物であり、それゆえ、 通常は少なくとも1個の酸素原子を含む。
【0019】
用語「テルペン留分」は、大麻抽出物中に存在するテルペン及びテルペノイド化合物の組合せを説明するために使用される。
【0020】
一実施形態によって、大麻抽出物、及び任意選択で、1以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物であって、前記大麻抽出物が、以下:
A.
- ≧0.3% w/wのテルペン留分;
- ≧50% w/wのΔ9-テトラヒドロカンナビノール (THC);
- ≧0.3% w/wのカンナビゲロール (CBG);及び
- ≦0.5% w/wのカンナビノール (CBN)
又は
B.
- ≧0.5% w/wのテルペン留分;
- ≧60% w/wのCBD;
- ≦3% w/wのTHC;及び
- ≦0.1% w/wのCBN.
のいずれかを含む、組成物が提供される。
【0021】
別の実施形態によって、大麻抽出物、及び任意選択で、1以上の医薬的に許容される担
体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はそれらの任意の組合せを含む医薬組成物であって、前記大麻抽出物が、以下:
・ テルペン留分の少なくとも11重量%の量のβ-カリオフィレン、並びに
以下:
- テルペン留分の少なくとも5重量%の量のリナロール;及び
- テルペン留分の少なくとも1重量%の量のβ-ピネン
の1以上
を含むテルペン留分を含む、組成物が提供される。
【0022】
カンナビノイド留分
典型的には、カンナビノイド留分は、大麻抽出物中に存在する化合物の大部分を占める。
【0023】
幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、約35重量%~約95重量%のカンナビノイド、例えば、大麻抽出物の約40重量%~約90重量%、約45重量%~約70重量%又は約45重量%~
約55重量%を含み得る。幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、約5重量%~約65重
量%の非カンナビノイド、例えば、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%又は約15重量%~約30重量%の非カンナビノイドを含む。
【0024】
これまでに、大麻草において100超のカンナビノイドが同定されている。これらのカン
ナビノイドの包括的なリストは、Handbook of Cannabis Roger Pertwee(編)Oxford University Press (2014)(ISBN:9780199662685)中の、Mahmoud A. El Sohly and Waseem Gul、「Constituents of Cannabis Sativa」において見出し得る。大麻草において同定さ
れているカンナビノイドとしては、以下:カンナビゲロール(E)-CBG-C5、カンナビゲロールモノメチルエーテル (E)-CBGM-C5 A、カンナビゲロール酸A (Z)-CBGA-C5 A、カンナビ
ゲロバリン (E)-CBGV-C3、カンナビゲロール酸A (E)-CBGA-C5 A、カンナビゲロール酸Aモノメチルエーテル (E)CBGAM-C5 A及びカンナビゲロバリン酸A (E)-CBGVAC3A;(±)-カン
ナビクロメンCBC-C5、(±)-カンナビクロメン酸A CBCA-C5 A、(±)-カンナビバリクロメ
ン、(±)-カンナビクロメバリンCBCV-C3、(±)-カンナビクロメバリン酸A CBCVA-C3 A;(-)-カンナビジオールCBD-C5、カンナビジオールモノメチルエーテルCBDMC5、カンナビジ
オール-C4 CBD-C4、(-)-カンナビジバリンCBDVC3、カンナビジオールコール(Cannabidiorcol)CBD-Cl、カンナビジオール酸CBDA-C5、カンナビジバリン酸CBDVA-C3;カンナビノ
ジオールCBNDC5、カンナビノジバリンCBND-C3;Δ9-テトラヒドロカンナビノールΔ9-THC-C5、Δ9-テトラヒドロカンナビノール-C4 Δ9-THCC4、Δ9-テトラヒドロカンナビバリンΔ9-THCV-C3、Δ9-テトラヒドロカンナビオールコール(tetrahydrocannabiorcol)Δ9-THCO-Cl、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸AΔ9-THCA-C5 A、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸B Δ9-THCA-C5 B、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸-C4 A及び/又はB Δ9-THCA-C4 A及び/又はB、Δ9-テトラヒドロ-カンナビバリン酸AΔ9-THCVA-C3 A、Δ9-テトラヒドロカンナビオールコール酸(tetrahydrocannabiorcolic acid)A及び/又はB Δ9-THCOA-Cl A及び/又はB)、(-)-Δ8-トランス-(6aR,10aR)-Δ8-テトラヒドロカンナビノー
ルΔ8-THC-C5、(-)-Δ8-トランス-(6aR,10aR)-テトラヒドロカンナビノール酸AΔ8-THCA-C5 A、(-)-(6aS,10aR)-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(-)-シス-Δ9-THC-C5;カンナビノールCBN-C5、カンナビノール-C4 CBN-C4、カンナビバリンCBN-C3、カンナビノールC2 CBN-C2、カンナビオールコール(Cannabiorcol)CBN-Cl、カンナビノール酸A CBNA-C5 A、カンナビノールメチルエーテルCBNM-C5、(-)-(9R,10R)-トランス-カンナビトリオール(-)
-トランス-CBT-C5、(+)-(9S,10S)-カンナビトリオール(+)-トランス-CBT-C5、(±)-(9R,10S/9S,10R)-);カンナビトリオール (±)-シス-CBT-C5、(-)-(9R,10R)-トランス-10-O-エチル-カンナビトリオール(-)-トランス-CBT-OEt-C5、(±)-(9R,10R/9S,10S)-カンナビト
リオール-C3 (±)-トランス-CBT-C3、8,9-ジヒドロキシ-Δ6a(10a)-テトラヒドロカンナ
ビノール8,9-ジ-OH-CBT-C5、カンナビジオール酸AカンナビトリオールエステルCBDA-C5 9-OH-CBT-C5エステル、(-)-(6aR,9S,10S,10aR)-9,10-ジヒドロキシヘキサヒドロカンナビ
ノール、カンナビリプソール、カンナビリプソール-C5、(-)-6a,7,10a-トリヒドロキシ-
Δ9-テトラヒドロカンナビノール(-)-カンナビテトロール、10-オキソ-Δ6a(10a)テトラ
ヒドロカンナビノールOTHC);(5aS,6S,9R,9aR)-カンナビエルソインCBE-C5、(5aS,6S,9R,9aR)-C3-カンナビエルソインCBE-C3、(5aS,6S,9R,9aR)-カンナビエルソイン酸A CBEA-C5 A、(5aS,6S,9R,9aR)-カンナビエルソイン酸B CBEA-C5 B;(5aS,6S,9R,9aR)-C3-カンナビ
エルソイン酸B CBEA-C3 B、カンナビグレンドール-C3 OH-イソ-HHCV-C3、デヒドロカンナビフランDCBF-C5、カンナビフランCBF-C5)、(-)-Δ7-トランス-(1R,3R,6R)-イソテトラ
ヒドロカンナビノール、(±)-Δ7-1,2-シス-(1R,3R,6S/1S,3S,6R)-イソテトラヒドロカンナビバリン、(-)-Δ7-トランス-(1R,3R,6R)-イソテトラヒドロカンナビバリン;(±)-(laS,3aR,8bR,8cR)-カンナビシクロールCBL-C5、(±)-(1aS,3aR,8bR,8cR)-カンナビシクロール酸A CBLA-C5 A、(±)-(laS,3aR,8bR,8cR)-カンナビシクロバリンCBLV-C3;カンナビシ
トランCBTC5;カンナビクロマノンCBCN-C5、カンナビクロマノンC3 CBCN-C3、及びカンナビクマロノンCBCON-C5が挙げられる。
【0025】
カンナビノイド留分は、主要なカンナビノイドを含み得る。Δ9-テトラヒドロカンナビノール (THC)又はカンナビジオール (CBD)は、主要なカンナビノイドであり得る。主要なカンナビノイドは、大麻抽出物の少なくとも約40重量%、約45重量%、約50重量%又は約55
重量%の量で、大麻抽出物中に存在し得る。従って、THCが主要なカンナビノイドである場合、大麻抽出物は、少なくとも約40重量%、45重量%、50重量%又は55重量%のΔ9-テトラヒドロカンナビノール (THC)、例えば、40~97重量%又は50~90重量%のΔ9-テトラヒドロ
カンナビノール (THC)を含み得る。CBDが主要なカンナビノイドである場合、大麻抽出物
は、少なくとも約40重量%、45重量%、50重量%、55重量%又は60重量%のCBD、例えば、40~97重量%又は50~90重量%のCBDを含み得る。
【0026】
幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、THC又はCBDのどちらか一方で濃縮される。THC及びCBDを含む、内在のカンナビノイド(即ち、天然で生じた カンナビノイド)が、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の1種の「カンナビノイド受容体」と呼ばれる、例、CB1又
はCB2受容体と相互作用することが示されている。しかしながら、構造的に関連するカン
ナビノイド化合物は、大きく異なる活性を有している場合がある。例えば、THCはCB1アゴニストであり、CBDはCB1アンタゴニストであることが報告されている。従って、本発明においては、大麻抽出物は、THC及びCBDの1つのみを50~90重量%で含む。50~90%のTHCを
含む大麻抽出物が、少量のCBD、例えば、50重量%未満のCBD、又は40重量%未満、30重量%
未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満
、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満又は0.1重量%のCBDを含み得るか、又は測定可
能な量のCBDを何ら含み得ないことが理解されるであろう。同様に、50~90%のCBDを含む大麻抽出物が、少量のTHC、例えば、50重量%未満のTHC、又は40重量%未満、30重量%未満
、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満若しくは0.1重量%未満のTHCを含み得るか、又は測定可能な量のTHCを何ら含み得ない。
【0027】
幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、50~80重量%のTHC若しくはCBD、50~75
重量%のTHC若しくはCBD、50~70重量%のTHC若しくはCBD、50~65重量%のTHC若しくはCBD
、52~80重量%のTHC若しくはCBD、53~80%のTHC若しくはCBD、又は52~65重量%のTHC若しくはCBDを含み得る。
【0028】
幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、組成物の50~90重量%(組合せた重量)
のTHC及びCBDを含み得る。これらの実施形態においては、CBDに対するTHCの比は約1:1であり得、例えば、CBDに対するTHCの比は100:0~0:100、100:1~1:100、80:1~1:80、60:1~1:60、40:1~1:40又は20:1~1:20であり得る。
【0029】
典型的には、大麻抽出物はまた、THC及び/又はCBDに加えて、他のカンナビノイドも含み得る。これらのカンナビノイドとしては、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、Δ9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、(-)-カンナビジバリン(CBDV)、カンナビノール (CBN)及びカンナビゲロール (CBG)が挙げられる。これらのカンナビノイドの各々は、大麻抽出物の0.001重量%~40重量%の量で存在し得る。例えば、CBNは抽出物の0.5重量%以下、例えば、抽出物の0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下又は0.1重量%以下の量で存在し得る。CBNは、0.001~0.5重量%又は0.001~0.1重量%の量で、大麻抽出物中に存在し得る。CBGは、抽出物の少なくとも0.3重量%、例えば、抽出物の0.3~10重量%又は0.35~5重量%の量で存在し得る。
【0030】
幾つかの実施形態においては、あるカンナビノイドが、存在していなくても、又は検出可能でない量(例、検体の0.001重量%未満)で存在していても良い。幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、以下のカンナビノイド:Δ9-テトラヒドロカンナビバリン (THCV)、カンナビジオール酸 (CBDA)、カンナビノール (CBN)、(-)-カンナビジバリン(CBDV)及びカンナビクロメン (CBC)の1以上を含まない場合がある。
【0031】
テルペン留分
大麻抽出物は、典型的には、テルペン留分を含む、非カンナビノイド化合物を含む。幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、抽出物の50重量%未満、例えば、45重量%未満、40重量%未満、35重量%未満、30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%
未満、3重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満の量で、テルペン留分を含む。幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、抽出物の少なくとも0.001重量%、例えば、抽出物の総重量の少なくとも0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、10%、15%以上の量で、テルペン及びテルペノイド化
合物を含み得る。幾つかの実施形態においては、大麻抽出物は、組成物の約0.001重量%~約50重量%のテルペン及びテルペノイド化合物、例えば、組成物の約0.01重量%~約50重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約6重量%又は約0.01~約5重量%のテルペン及びテルペノイド化合物を含む。
【0032】
典型的には、抽出物を形成するために使用される植物材料中のテルペン留分は、テルペン留分中の特定の化合物の量及び他の成分に対するテルペン留分の重量の項目の両方において、最終的な抽出物のテルペンプロファイルとは異なる、テルペン/テルペノイドプロファイルを有し得る。例えば、大麻の花は、約20重量%のカンナビノイド及び約3重量%の
テルペンを含み得る。抽出及び濃縮(即ち、抽出剤の除去)の後に、カンナビノイドの量は約50~90重量%の量に増加し得、テルペン留分は大麻抽出物の約0.1~6重量%になり得る。この典型的なシナリオは、抽出剤が除去される場合に、カンナビノイドが濃縮される一方で、テルペン留分中に存在する多くのテルペン/テルペノイドの揮発性のために、テルペン留分の相対的な量が低減する可能性があることを示している。それゆえ、大麻抽出物中に存在するテルペン留分のプロファイルは、天然で存在するテルペン留分のプロファイルとは有意に異なっている。
【0033】
テルペン留分があるプロファイルを有する場合、即ち、ある割合の特定のテルペン/テルペノイドが抽出物中に存在する場合に、医薬組成物の効能が促進され得る。効能の増大
は相乗的(即ち、相加的ではない)であり得ると考えられる。テルペン留分中の特定の成分の存在によって、カンナビノイド療法に対する患者の寛容性が促進され得ることも考えられる。
【0034】
モノテルペン、モノテルペノイド、セスキテルペン及びセスキテルペノイドを含む様々なテルペン及びテルペノイドがまた、大麻抽出物において同定されている。例えば、以下のテルペン及びテルペノイド:アロアロマデンドレン、ヘキサン酸アリル、ベンズアルデヒド、(Z)-a-シス-ベルガモテン、(Z)-a-トランス-ベルガモテン、β-ビサボロール、エ
ピ-a-ビサボロール、β-ビサボレン、ボルネオール (竜脳)、シス-y-ビサボレン、ボメ
オールアセテート (酢酸ボミル)、α-カジネン、カンフェン、樟脳、シス-カルベオール、カリオフィレン (β-カリオフィレン)、α-フムレン (α-カリオフィレン)、γ-カジネン、Δ-3-カレン、カリオフィレンオキシド、1,8-シネオール、シトラールA、シトラールB、シンナムアルデヒド(cinnameldehyde)、α-コパエン (アグライエン)、γ-クル
クメン、β-シメン、β-エレメン、γ-エレメン、エチルデカジエノエート(ethyl decdienoate)、エチルマルトール、プロピオン酸エチル、エチルバニリン、ユーカリプトール、α-ユーデスモル、β-ユーデスモル、γ-ユーデスモル、オイゲノール、シス-β-ファ
メセン ((Z)-β-ファルネセン)、トランス-α-ファルネセン、トランス-β-ファメセン
、トランス-γ-ビサボレン、フェンチョン、フェンコール (ノルボマノール(norbomanol)、β-フェンコール)、ゲラニオール、α-グアイエン、グアイオール、アントラニル酸メチル、サリチル酸メチル、2-メチル-4-ヘプタノン、3-メチル-4-ヘプタノン、酢酸ヘキシル、イプスジエノール、酢酸イソアミル、レメノール(lemenol)、リモネン、d-リモ
ネン(リモネン)、リナロール(linolool)(リナリルアルコール、β-リナロール(linolool))、α-ロンギピネン、メントール、γ-ムロレン、ミルセン (β-ミルセン)、ネロリドール、トランス-ネロリドール、ネロール、β-オシメン(シス-オシメン)、酢酸オクチル、α-フェランドレン、フィトール、α-ピネン (2-ピネン)、β-ピネン、プレゴン
、サビネン、シス-サビネン水和物 (シス-ツヤノール)、β-セリネン、α-セリネン、γ-テルピネン、テルピノレン (イソテルピン)、テルピネオール (α-テルピネオール)、テルピネオール-4-オール、α-テルピネン (テルピレン)、α-ツジェン (オリガネン)
、バニリン、ビリジフロレン(レデン)、及びα-イランジュ(ylange)が、大麻抽出物
において同定されている。
【0035】
テルペン留分中に存在する特定の量で、特定のテルペン/テルペノイドが存在することが、in vivoでの研究における医薬組成物の増大した効能と関係していると考えられる(
実施例2を参照)。
【0036】
医薬組成物中に含まれる大麻抽出物は、テルペン留分の少なくとも11重量%の量のβ-カリオフィレンを含む。β-カリオフィレンは、幾つかのカンナビノイドの鎮静作用を打ち
消し得ると考えられる。
【0037】
幾つかの実施形態においては、抽出物は、テルペン留分の少なくとも約11重量%、約12
重量%、約13重量%、約14重量%又は約15重量%の量のβ-カリオフィレン(carylophyllene
)を含む。幾つかの実施形態においては、抽出物は、約60重量%未満、約55重量%未満、約50重量%未満又は約45重量%未満のテルペン留分を含む。いずれかの最小レベルは、制限されることなく、最大レベルと組み合わされ得、最小レベルが、水の最大のレベルを下回るという要求が満たされ得る。例えば、幾つかの実施形態においては、抽出物は、総テルペン留分の11重量%~60重量%の量、例えば、テルペン留分の13重量%~60重量%、14重量%~60重量%、15重量%~60重量%、15%重量%~50重量%又は15%重量%~45重量%のβ-カリオフィ
レンを含み得る。
【0038】
大麻抽出物はまた、以下:β-ミルセン、D-リモネン、リナロール、ネロリドール(例
、ネロリドール1及び/又は2)及びピネン(例、α-ピネン及び/又はβ-ピネン)の1以上を含み得る。
【0039】
幾つかの実施形態においては、抽出物はまたβ-ミルセンを含む。β-ミルセンは、抽出物中に存在するカンナビノイドの生体利用効率を増大し得るか、及び/又はカンナビノイドが血管脳関門を通過できるようにすることを補助し得ると考えられる。ミルセンは、組成物全体の少なくとも0.4重量%、例えば、組成物全体の0.4重量%~約40重量%の量で、抽
出物中に存在し得る。ミルセンは、テルペン留分の50重量%まで、例えば、テルペン留分
の0.05重量%~50重量%、0.05重量%~25重量%、0.05%重量%~5重量%の量で、抽出物中に存在し得る。
【0040】
幾つかの実施形態においては、ミルセンに対するβ-カリオフィレンの比は、約30:1超、例えば、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1又は97.5:1である。幾つかの実
施形態においては、ミルセンに対するβ-カリオフィレンの比は、170:1未満、例えば、160:1、150:1、140:1又は130:1である。幾つかの実施形態においては、ミルセンに対
するβ-カリオフィレンの比は、例えば、上記の比の任意の組合せ等の、例えば、30:1~170:1、40:1~160:1、50:1~150:1、60:1~140:1、70:1~130:1、80:1~120:1又は90:1~110:1の特定の比の範囲内である。
【0041】
リモネンは、分子式C10H16を有する環式モノテルペンである。多くの異なる天然で生じた異性体が存在している;しかしながら、殆んどに共通する形態は右旋性の異性体、即ち、D-リモネンである。リモネンは、テルペン留分の少なくとも約0.1重量%、例えば、テルペン留分の0.1~約10重量%の量で抽出物中に存在し得る。幾つかの実施形態においては、リモネンは抽出物に存在しないか、又は検出限界を下回る量しか存在しない。
【0042】
リナロールは、分子式C10H18Oを有し、多くの花及び香辛料植物において見出されるテ
ルペノイドである。リナロールが大麻抽出物中に存在する場合、それにより鎮静作用がもたらされ得ると考えられる。幾つかの実施形態においては、リナロールは、テルペン留分の少なくとも0.05重量%の量で存在し得る。幾つかの好ましい実施形態においては、リナ
ロールは、テルペン留分の少なくとも5重量%の量で存在する。他の実施形態においては、リナロールは、テルペン留分の0.05重量%~25重量%、例えば、テルペン留分の0.1重量%~20重量%の量で存在する。
【0043】
ネロリドールは、分子式C15H26Oを有するセスキテルペノイドである。それは天然にお
いては、中心のオレフィンの周りの構造が異なる、即ち、シス又はトランス異性体のいずれかである、2つの異性体、即ち、ネロリドール1及びネロリドール2として存在する。抽
出物は、テルペン留分の少なくとも0.01重量%、例えば、テルペン留分の0.01重量%~20重量%の量のネロリドール(即ち、ネロリドール1及びネロリドール2の両方)を含み得る。
典型的には、ネロリドール1はネロリドール2と比べてより多い量で存在する;しかしながら、他の実施形態においては、ネロリドール2はネロリドール1と比べてより多い量で存在し得る。ネロリドール2に対するネロリドール1の比は、約1:1、約2:1、約2:1、約3:1、約1:3、約4:1、約1:4、約5:1、又は約1:5であり得る。幾つかの実施形態においては、ネロリドール1又はネロリドール2は存在しない場合がある(又は検出限界を下回る量で存在する場合がある)。ネロリドール1は、テルペン留分の少なくとも約0.01重量%、例えば、テルペン留分の0.01重量%~20重量%又は0.1~15重量%の量で抽出物中に存在し得る。ネロリドール2は、テルペン留分の少なくとも約0.01重量%、例えば、テルペン留分の0.01重量%~5重量%又は0.1重量%~2重量%の量で抽出物中に存在し得る。
【0044】
ピネンは分子式C10H16を有する二環式モノテルペンである。ピネンは天然において、2
つの異性体:α-ピネン及びβ-ピネンとして見出される。抽出物は、テルペン留分の少な
くとも5重量%、例えば、組成物の少なくとも6重量%、8重量%、10重量%、15重量%又は20重量%の量のピネン(即ち、α-ピネン及びβ-ピネン)を含み得る。幾つかの実施形態にお
いては、α-ピネンはβ-ピネンと比べてより多い量で存在する。他の実施形態においては、β-ピネンはα-ピネンと比べてより多い量で存在する。β-ピネンに対するα-ピネンの比は、約1:1、約2:1、約2:1、約10:1、約1:10、約15:1、約1:15、約20:1、約1:20、約25:1、約1:25、約30:1又は約1:30であり得る。幾つかの実施形態においては、α-ピネン又はβ-ピネンは存在しない場合がある(又は検出限界を下回る量で存在する場合がある)。α-ピネンは、テルペン留分の少なくとも約0.01重量%、例えば、0.01重量%
~5重量%の量で抽出物中に存在し得る。β-ピネンは、テルペン留分の少なくとも約0.01
重量%、例えば、テルペン留分の0.01重量%~50重量%又は5重量%~40重量%の量で抽出物中に存在し得る。
【0045】
幾つかの実施形態においては、テルペン留分は、抽出物の0.01重量%~6重量%の量で、
組成物中に存在し得、以下:
・ テルペン留分の11重量%~50重量%の量のβ-カリオフィレン;
・ 任意選択で、テルペン留分の0.01重量%~40重量%の量のβ-ミルセン;
・ 任意選択で、テルペン留分の0.01重量%~10重量%の量のD-リモネン;
・ 任意選択で、テルペン留分の5重量%~20重量%の量のリナロール;
・ 任意選択で、テルペン留分の1重量%~50重量%の量のβ-ピネン;
・ 任意選択で、テルペン留分の0.01重量%~5重量%の量のα-ピネン;
・ 任意選択で、テルペン留分の0.01重量%~20重量%の量のネロリドール1;及
び
・ 任意選択で、テルペン留分の0.001重量%~5重量%の量のネロリドール2
を含み得る。
【0046】
幾つかの実施形態においては、抽出物はフムレンを更に含む。フムレンは、抽出物の鎮静特性を増大し得ると考えられる。フムレンはまた、時々、α-カリオフィレンと呼ばれ
る。フムレンは、テルペン留分の少なくとも約1重量%、例えば、テルペン留分の約1重量%~約25重量%又は約5重量%~約15重量%の量で抽出物中に存在し得る。
【0047】
幾つかの実施形態においては、フムレンのミルセンに対する比は約12:1超、例えば、14:1、16:1、18:1、20:1、22:1、24:1、25:1、26:1、27:1又は28:1である。幾
つかの実施形態においては、フムレンのミルセンに対する比は、50:1未満、例えば、45
:1、40:1、38:1、36:1、34:1、33:1、32:1、31:1又は30:1である。幾つかの実
施形態においては、フムレンのミルセンに対する比は、例えば、上記の比の任意の組合せ等の、例えば、14:1~50:1、16:1~40:1、18:1~38:1、20:1~36:1、22:1~34
:1、24:1~33:1又は26:1~30:1の特定の比の範囲内である。
【0048】
大麻抽出物は、医薬組成物の効能も強化すると考えられる、追加的なテルペン及びテルペノイドを含み得る。これらのテルペンとしては、α-ビサボロール、カリオフィレンオ
キシド、p-シメン、イソプレゴール、オシメン、α-テルピネン、γ-テルピネン、δ-s-カレン、グアイオール、及びテルピノレンの1以上が挙げられ得る。
【0049】
幾つかの実施形態においては、特定のテルペン若しくはテルペノイドが存在しない場合があるか、又は検出できない量(例、検体の0.001重量%未満)で存在する場合がある。幾つかの実施形態においては、大麻抽出物には、以下のテルペン若しくはテルペノイド:カンフェン、δ-s-カレン、ゲラニオール、グアイオール及びD-リモネンの1以上が存在しないか、又は検出できない量で存在する。
【0050】
1つの例示的な大麻抽出物が、以下の表に記載されている。カンナビノイドの量は、
高速液体クロマトグラフィー (HPLC)によって決定されたことが報告されており、テルペ
ンの量は、 ガスクロマトグラフィー (GC)によって決定されたことが報告されている。大麻抽出物は天然に由来するので、各成分の量は、幾つかの事例においては、+/-10%、+/-25%又は+/-50%変動し得ることが理解されるであろう。組成物中で変動する可能性を説明するこれらの境界の各々に対応する量の範囲もまた以下の表中に示される。
【0051】
【0052】
医薬組成物は、1以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又
はそれらの任意の組合せを更に含み得る。
【0053】
担体、希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤は「医薬的に許容される」ものであり、それらが組成物の他の成分と適合すること、及び投与の最中又は投与後に被検体に対して有害でないことを意味している。医薬組成物は、例えば医薬製剤の分野において周知である技術等によって、従来の固形又は液体のビヒクル又は希釈剤、並びに所望の投与方法に適切な種類の医薬品添加物(例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定化剤、フレーバー剤等)を利用して、製剤化し得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第21版)2005、Lippincott Williams & Wilkinsを参照)。医薬的に許容される担
体は、米国薬局方/国民医薬品集(USP/NF)、英国薬局方(BP)、欧州薬局方(EP)、
又は日本薬局方(JP)に含まれる、任意の担体であり得る。幾つかの実施形態においては、担体、希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤は、非天然(例、合成によって生産したもの)であり得る。
【0054】
医薬組成物としては、経口、経直腸、経鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、経膣若しくは非経口(筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に好適なもの、又は吸入若しくは送気による投与に好適な形態が挙げられる。
【0055】
従って、大麻抽出物は、従来型のアジュバント、担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に、医薬組成物の形態及びそれらの単位用量に入れられても良く、そのような形態においては、いずれも経口用途のため、経直腸投与のための座薬の形態で;又は、非経口(皮下を含む)用途のための滅菌注射溶液の形態で、例えば錠剤又は充填カプセル等の固形、又は例えば溶液、懸濁液、乳化剤、エリキシル剤若しくはそれらを充填したカプセル等の液体として利用しても良い。
【0056】
そのような医薬組成物及びそれらの単位用量の形態は、追加的な活性化合物又は素(principles)を含む又は含めずに従来型の割合で、従来型の成分を含んでも良く、そのような単位用量の形態は、使用が意図される1日の投与量範囲に見合った、有効量の任意の好適な活性成分を含んでも良い。
【0057】
本明細書に記載された大麻抽出物から医薬組成物を調製するために、医薬的に許容される担体は、固形又は液体のいずれかであり得る。固形製剤としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェー(cachets)、座薬及び分散性(dispensable)顆粒が挙げられる。固形担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤又は封入材料としても作用し得る1以上の物質であり得る。
【0058】
好適な担体としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等が挙げられる。用語「製剤」は、担体としての封入材料を含む、活性化合物の製剤を含むことが意図され、担体を含む又は含まない活性成分が、従ってそれと関連する、担体により囲まれているカプセルが提供される。同様に、カシェー(cachets)及び薬用キャンディーが挙
げられる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェー(cachets)及び薬用キャンディーが
、経口投与のために好適な固形の形態で使用し得る。
【0059】
液体製剤としては、溶液、分散液、懸濁液及び乳濁液、例えば、水又は水-プロピレン
グリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液剤は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液として製剤化し得る。
【0060】
滅菌液形態の組成物としては、滅菌溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。大麻抽出物は、例えば、滅菌水、滅菌された有機溶媒、又は両方の混合液等の医薬的に許容される担体中に懸濁し得る。
【0061】
その他の液体製剤としては、大麻抽出物を、1以上の天然由来のオイル(例、エッセン
シャルオイル)又はワックスと混合することによって調製された製剤が挙げられる。「エッセンシャルオイル」は、主に植物材料の疎水性で一般的には芳香性の成分を含み、抽出(例、蒸気抽出、又は植物材料を抽出剤と接触させることによる)又は加圧により得られるオイルである。好適な天然由来のオイル及びワックスとしては、胡麻油、オリーブオイル、アルニカエッセンシャルオイル、ラベンダーエッセンシャルオイル、スパイクラベン
ダーエッセンシャルオイル、乳香エッセンシャルオイル、レモングラスエッセンシャルオイル、シナモンリーフエッセンシャルオイル、ローズマリー・シネオールエッセンシャルオイル、ローズマリーエッセンシャルオイル、ベルガモットエッセンシャルオイル、ミルラエッセンシャルオイル、セージエッセンシャルオイル、ココナッツオイル、蜜蝋及び麻油が挙げられる。
【0062】
医薬組成物は、非経口投与(例、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による)のために製剤化されても良く、任意選択で、防腐剤が添加された、アンプル中の単位用量の形態、予め充填されたシリンジ、少量注入又は複数回投与用の容器内で存在しても良い。組成物は、油性又は水性のビヒクル中で懸濁液、溶液又は乳濁液としてそのような形態をとっても良く、例えば懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の調製剤を含んでも良い。代替的には、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例、滅菌された、パイロジェンフリーの水を用いて構成するための、滅菌固形の無菌単離によるか、又は溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末の形態であっても良い。
【0063】
注射用途のために好適な医薬品形態としては、滅菌注射溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。それらは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、酸化及び例えば細菌又は真菌等の微生物の汚染作用から保護され得る。
【0064】
注射溶液又は分散液の溶媒又は分散媒体は、任意の従来型の溶媒又は担体系のいずれかを含み得、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体のポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合液、並びに植物油を含み得る。
【0065】
注射用途に好適な医薬品形態は、静脈内、筋肉内、脳内、髄腔内、硬膜外への注射又は注入を含む、任意の適切な経路によって送達し得る。
【0066】
滅菌注射溶液は、例えば上記において列挙したもの等の様々な他の成分と共に、適切な担体中で必要量の大麻抽出物を取り込むことにより調製され、必要であれば続けて滅菌される。一般的に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒及び上記において列挙したもののうち必要なその他の成分を含む無菌のビヒクルに取り込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合においては、調製の好ましい方法は、予め滅菌した活性成分の懸濁液及び任意の追加的な所望の成分の、減圧乾燥又は凍結乾燥である。
【0067】
活性成分が好適に保護される場合、例えば、不活性な希釈剤若しくは吸収できる食用の担体と共に、経口投与しても良く、又はハード若しくはソフトシェルのゼラチンカプセルに封入しても良く、又は錠剤中に圧縮しても良く、又は食事の食物と共に直接取り込まれても良い。経口治療投与のために、活性成分は、賦形剤と共に取り込まれても良く、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウェハー剤等の形態で用いられても良い。
【0068】
治療に有用である組成物中の活性成分の量は、好適な用量が取得される十分な量でなければならない。
【0069】
錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル等はまた、以下に列記した成分を含んでも良い:例えばガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン等の結合剤;例えばリン酸二カルシウム等の賦形剤;例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;及び例えばスクロース、ラクトース若しくはサッカリン等の甘味剤、又は例えばペパーミント、ウィンターグリーンオイル、チェリー
フレーバー等の香味剤が添加されても良い。投与単位形態がカプセルである場合、それは、上記の種類の材料に加えて、液体担体を含んでも良い。
【0070】
様々なその他の材料は、コーティング剤として存在しても良く、又はそうでなければ投与単位の物理的な形態を改変するために存在しても良い。例えば、錠剤、丸薬又はカプセルは、シェラック、糖又はその両方を用いてコーティングしても良い。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素並びに例えばチェリー又はオレンジフレーバー等の香味剤を含み得る。当然のことながら、任意の投与単位形態を調製する際に使用される任意の材料は、医薬的に純粋でなければならず、使用される量で実質的に無毒でなければならない。更に、活性化合物(複数可)は、腸の特定の領域への活性ペプチドの特異的送達を可能にするものを含む、徐放性製剤及び製剤に取り込まれても良い。
【0071】
経口用途に好適な水性溶液は、水中に活性成分を溶解することにより、及び所望により、好適な着色剤、フレーバー剤、安定化剤及び増粘剤を添加することにより、調製し得る。経口用途に好適な水性懸濁液は、例えば天然又は合成されたガム、レジン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他の周知の懸濁化剤等の粘性物質を含む水中に、細かくした活性成分を分散させることにより作製し得る。
【0072】
医薬的に許容される担体及び/又は希釈剤としては、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張な吸収遅延剤等が挙げられる。
【0073】
使用の直前に、経口投与用の液体製剤に変換することが意図される固形製剤もまた挙げられる。そのような液体形態としては、溶液、懸濁液及び乳濁液が挙げられる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、フレーバー剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含んでも良い。
【0074】
表皮への局所投与のために、活性成分は、軟膏、クリーム若しくはローションとして、又は経皮パッチとして製剤化し得る。軟膏及びクリームは、例えば、好適な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性の基材を用いて製剤化し得る。ローションは、水性又は油性の基材を用いて製剤化し得、一般的には、1以上の乳濁剤、安定化剤、分散剤、
懸濁化剤、増粘剤又は着色剤も含むであろう。
【0075】
口内に局所投与するために好適な製剤としては、風味づけられた基材、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性剤を含む薬用キャンディー;例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア等の不活性な基材中に活性成分を含むトローチ;並びに好適な液体担体中に活性成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0076】
溶液又は懸濁液は、従来の方法により、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーを用いて、鼻腔に直接投与される。製剤は単回投与又は複数回投与の形態で提供されても良い。スポイト又はピペットを用いた後者の場合においては、これは患者によって、適切な所定の容量の溶液又は懸濁液を投与されることによって達成され得る。
【0077】
スプレーの場合においては、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプによって達成されても良い。経鼻送達及び保持を改善するために、本発明の化合物は、シクロデキストリンを用いて封入しても良く、又は送達及び鼻粘膜における保持を増大することが期待されるその他の剤と一緒に製剤化しても良い。
【0078】
気道への投与はまた、活性成分が、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)等の好適な
推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロ
テトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の好適な気体を含む加圧パック中において提供されている、エアロゾル製剤によって達成されても良い。
【0079】
エアロゾルはまた、好都合には、例えばレシチン等の界面活性剤を含んでも良い。薬剤の用量は、計量弁を備えることによって調節されても良い。
【0080】
代替的には、活性成分は、乾燥粉末、例、例えばラクトース、デンプン、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等のデンプン誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)
等の好適な粉末基剤中における化合物の粉末混合物の形態で提供されても良い。好都合には、粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成し得る。粉末組成物は、例えば、 例、ゼラチンの
カプセル若しくはカートリッジ内に、又は粉末が吸入器を用いて投与され得るブリスター包装内に、単位用量の形態で存在しても良い。
【0081】
経鼻腔製剤を含む、気道に投与することが意図される製剤においては、一般的に、化合物は、例えば5~10ミクロン以下のオーダーの小さい粒子サイズを有する。そのような粒
子サイズは、当該技術分野において公知である技術、例えば微粉化により、取得し得る。
【0082】
所望の場合、活性成分の徐放に適した製剤を使用しても良い。
【0083】
好ましくは、医薬製剤は単回投与の形態である。そのような形態においては、製剤は適切な量の活性成分を含む単位用量に分けられる。単位用量の形態は、包装された製剤であり得、該包装は、例えば包装された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末等、個別の量の製剤を含む。また、単位用量の形態はそのカプセル、錠剤、カシェー若しくは薬用キャンディーであり得、又はこれらの包装された形態のいずれかの適切な数であり得る。
【0084】
単位投薬量の形態に非経口組成物を製剤化することは、投与の容易さ及び投与量の均一性のために特に有利である。本明細書において用いられる場合、単位投薬量の形態は、治療される被検体にとって、単位投薬量として適した、物理的に個別になった単位を指す;各単位は、必要とされる医薬的な担体と共同して所望の治療効果を生成するよう計算された所定の量の活性材料を含む。単位投薬量の形態についての詳細な説明は、(a) 活性材料の特有の性質及び達成される特定の治療効果、並びに(b) 身体的な健康が害される疾患状態を有する生きている被検体における、がんと関連する症状の治療のためのそのような活性材料を配合する技術に固有の制限、によって、及び直接的に依存して影響を受ける。
【0085】
組成物が単位投薬量の形態になっている、担体を含まない組成物もまた本明細書に記載されている。従って、大麻抽出物を含む医薬もまた提供される。
【0086】
幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、大麻抽出物以外の活性剤を更に含む。組合せた場合に、活性剤及び/又は大麻抽出物の活性が減少しない限り、任意の好適な活性剤を使用しても良い。好ましくは、活性剤は抗がん剤である。好適な抗がん剤としては、トラスツズマブ(trastuzumab)(例、ハーセプチン(登録商標))又はプロテイン・チ
ロシンキナーゼ阻害剤(例、ラパチニブ(lapatinib)(例、タイケルブ(登録商標))
)が挙げられる。幾つかの実施形態においては、被検体は既にアロマターゼ阻害剤が投与されているか、又は現在も投与されている。幾つかの実施形態においては、アロマターゼ阻害剤は、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、テストラクトン(testolactone
)(例、テスラック(登録商標))、アナストロゾール(anastrozole)(例、アリミデ
ックス(登録商標))、レトロゾール(letrozole)(例、フェマーラ(登録商標))、
エキセメスタン(exemestane)(例、アロマシン(登録商標))、ボロゾール(vorozole)(例、リバイザー(Rivisor)(登録商標))、フォルメスタン(formestane)(例、
レンタロン(登録商標))、酢酸メゲストロール(megestrol acetate)(例、メゲース
(登録商標))、及びファドロゾール(fadrozole)(例、アフェマ(登録商標))から
選択される。幾つかの実施形態においては、乳がんを有する被検体は、既にERアンタゴニストが投与されているか、又は現在も投与されている。幾つかの実施形態においては、被検体は、ER陽性乳がんを有することが既に決定されている。限定されない例示的なERアンタゴニストとしては、タモキシフェン(例、ノルバデックス(登録商標)、イスツバル(登録商標)及びバロデックス(登録商標))並びにフルベストラント(fulvestrant)(
例、フェソロデックス(登録商標))、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0087】
治療方法
別の態様においては、がん又はがんと関連する症状を治療するための方法もまた提供される。前記方法は、有効量の本明細書に記載された医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0088】
医薬組成物は、がん又はがんと関連する症状を治療するために使用し得る。特に、医薬組成物は、乳がん、例えば、HER2陽性、三重陰性及び/又はホルモン受容体陽性の乳がんの治療において効果的であり得る。幾つかの実施形態においては、乳がんはHER2陽性乳がんである。HER2陽性乳がんは、より悪性である形態の乳がんの1つであり、乳がん全体の約20%が該当する。HER2は、HER2陽性乳がん細胞によって発現されるタンパク質である「ヒト上皮成長因子受容体2」の略語である。幾つかの実施形態においては、乳がんは三重陰性乳がんである。現在、市場には、三重陰性乳がんを標的とした治療選択肢は存在しない。幾つかの実施形態においては、乳がんはホルモン受容体陽性の乳がんである。本発明者等は、大麻抽出物が、HER2+、三重陰性及びホルモン受容体陽性の乳がん細胞に対する効能を有することを示した。更に、THCを多く含む抽出物(例、≧0.3% w/wのテルペン留分、≧50% w/wのΔ
9-テトラヒドロカンナビノール (THC);≧0.3% w/wのカンナビゲロール (CBG);及び≦0.5% w/wの
カンナビノール (CBN)を含む抽出物)について、本発明者等は、大麻抽出物がTHC単独よりも、試験した乳がん細胞に対してより強い活性を有することを示した(
図5~8を参照)。
【0089】
本発明者等は、該医薬組成物を用いた治療の後に、承認薬のラパチニブと比較して同じ体積分だけ、ヒトHER2陽性悪性細胞の異所性の異種移植片の体積が減少することを観察した(
図1、2及び3を参照)。高THCの大麻抽出物を含む医薬組成物を用いた場合の腫瘍体積の減少は、等しい用量のTHC単独を用いた場合の腫瘍体積の減少よりも大きかった。
【0090】
がんと関連する症状としては、説明不能な体重減少、発熱、倦怠感、疼痛及び皮膚の変化が挙げられる。乳がんと特異的に関連する症状としては、乳房組織における肥厚又はしこりの形成が挙げられる。
【0091】
がんの症状はまた、一般的に、全てではないが、化学療法及び放射線治療を含む多くの既存のがん治療と関係している。本組成物はまた、がん治療の症状を治療するために使用し得る。
【0092】
「有効量」は、患者に投与した場合、薬剤の量によって効果の達成がもたらされるのに十分な量を意味する。治療法の場合においては、本効果はがん又はがんと関連する症状の治療であり得る。それゆえ、「有効量」は「治療有効量」であり得る。「治療有効量」は、患者に投与した場合、薬剤の量によって疾患又は疾患の症状の治療がもたらされるのに十分な量を意味する。
【0093】
本明細書において用いられる場合、用語「治療する(treating)」、「治療(treatment)」、「治療する(treat)」等は、所望の薬理学的な効果及び/又は生理学的な効果が
得られるように、被検体、組織又は細胞に影響を及ぼすことを意味する。該効果は、疾患又はそれと関連する症状の重篤度を完全若しくは部分的に予防するか、又はそれを低減するという点で予防的であり得、及び/或いは疾患が部分的若しくは完全に治癒されるという点で治療的であり得る。それゆえ、がんを「治療する(treating)」についての言及は:(a) がん細胞の増殖を阻害する、例、腫瘍の発生若しくは更なる発生を阻止すること;(b) がんの影響を緩和若しくは改善する、即ち、がんの影響の退縮を起こさせること;(c) 転移の発生率を低減すること;又は (d) 被検体においてがんが発生しないよう若しく
は生じないように、がんに罹患しやすい若しくはそのリスクがある被検体において、がん若しくがんと関連する症状が生じることを予防すること、を包含している。
【0094】
方法は、1超の本発明の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み得
る。例えば、幾つかの状況においては、THCが多い医薬組成物及びCBDが多い医薬組成物を、患者に投与することが好ましい。これらの組成物は、交互に、時間を空けて、投与され得る。THCが多い医薬組成物は、≧50% w/wのTHC、≧0.3% w/wのCBG、≦0.5% w/wのCBN及
び≧0.3% w/wのテルペン留分を含み得る。CBDが多い医薬組成物は、≧60% w/wのCBD、≦3% w/wのTHC、≦0.1% w/wのCBN及び≧0.5%のw/w テルペン留分を含み得る。
【0095】
方法はまた大麻抽出物以外の活性剤を投与することを含み得る。本活性剤は、大麻抽出物と同時に又連続して投与し得る。連続してとは、大麻抽出物及びその他の活性剤を別々に投与することを意味し、それが異なる時間で行われても良いことを意味する。典型的には、大麻抽出物及びその他の活性剤が連続して投与される場合、それらは互いに24時間以内、又は12、8、6、5、4、3、2若しくは1時間(複数可)以内に投与される。大麻抽出物
は、その他の活性剤の前又は後に投与しても良い。更に、大麻抽出物及びその他の活性剤の投与経路は、同じであるか、又は異なっていても良い。
【0096】
別の態様においては、がん又はがんと関連する症状の治療のための医薬の製造における大麻抽出物の使用もまた提供される。
【0097】
別々のパーツとして以下:
(a) 有効量の大麻抽出物;及び
(b) 医薬的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤又はそれらの組合せ
を含むキットもまた提供される。
【0098】
幾つかの実施形態においては、該キットは、大麻抽出物の他に、有効量の活性剤を、別のパーツ(b’)として含んでいる場合がある。パーツ(b’)は、パーツ(a)及び(b)に加えて、又はパーツ(b)の代わりに、キット中に含まれていても良い。
【0099】
別の態様においては、がん又はがんと関連する症状を治療するための医薬組成物が提供される。それが、特定されたテルペン留分と共に大麻抽出物を含んでいる限り、医薬組成物は、任意の上記の成分の組合せを含む、上記の医薬組成物のいずれかであっても良い。がん及びその症状もまた、上記のもののいずれかであっても良い。
【実施例】
【0100】
本発明について、限定されない実施例によって更に説明する。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの改変がなされても良いことが、本発明の当業者に理解される。
【0101】
実施例1-THC組成物
以下のTHC組成物が記載されている:
AZ1-Purple Urkl(e)大麻草の抽出物
AZ2-Granddaddy Purple大麻草の抽出物
AZ3-Sensi Star大麻草の抽出物
AZ4-Ogre Kush大麻草の抽出物
AZ5-Harletsu大麻草の抽出物
AZ6-ACDC大麻草の抽出物
【0102】
【0103】
実施例2-HER2陽性の腫瘍体積に対する、大麻抽出物、THCのみ及びラパチニブを含む組成物についてのin vivoでの比較研究
方法論。5×10
6の生きているBT474(HER2+ヒト乳腺がん細胞)を、6週齢の無胸腺マウ
スの右脇腹の皮下に注射した。腫瘍が約200 mm
3に達した時、動物を以下の実験群にラン
ダムに割り当て、表示した処置を開始し、4週間維持した:
ビヒクル:水中の胡麻油(THC ビヒクル、1週間に3回)+0.5%ヒドロキシプロピルメチル
セルロース+0.1% Tween 80(ラパチニブビヒクル、毎日)
ラパチニブ(100mg/Kg、毎日)
THC(45mg/Kg、1週間に3回)
THC+ラパチニブ
THC AZ(45mg/Kg THC、1週間に3回)。THC AZは、ビヒクル (胡麻油)及び実施例1に記載したAZ1を含む。
THC AZ+ラパチニブ
全ての処置は、経口強制飼養によって投与した。腫瘍は定期的に外部キャリパーを用いて測定し、体積は(4π/3)×(幅/2)
2×(長さ/2)で計算した。
結果は、
図1~4に示す。
図1からは、THC AZ組成物を用いた処置によって、THCのみの処置及びビヒクルのみの処置よりも、腫瘍体積の大幅な減少がもたらされたことが見られ得る。更に、THC AZの効能は、承認されているラパチニブ化学療法とおよそ同じである(
図2~4を参照)。更に、これらのデータはTHC AZ及びラパチニブの組合せ療法が有害でないことを示唆している(
図3)。
【0104】
実施例3-純粋なTHC及び大麻抽出物(THCを多く含む抽出物)の様々な乳がん細胞に対す
る効能のIn vitroでの研究
がん細胞を5000細胞/cm2の密度でプレーティングし、以下の培地中で、37℃、5%CO2雰
囲気下で24時間インキュベートした:
【0105】
【0106】
次いで、細胞を血清不含培地に移し、5時間後、対応する処置を行った(純粋なTHC、THCを多く含む抽出物 (AZ1)又は対応するビヒクル-DMSO-)。細胞生存率は、異なる処理
で24時間インキュベーションした後、クリスタルバイオレット染色:20%メタノール中の0.1%クリスタルバイオレットをウェルに添加し、室温で20分インキュベーションし、染色
した細胞をメタノール中に再懸濁する、によって決定した。細胞生存率は、570nmの吸収
を測定することによって決定し、ビヒクルで処理した細胞(100%に設定する)に対する%
で表した。
【0107】
これらの実験の結果を
図5~7に示す。各実験において、大麻抽出物が、THC単独に比べ
て効能を増大させたことが実証された。大麻抽出物は、試験したHER2陽性 (
図5)、三重陰性 (
図6)及びホルモン受容体陽性 (
図7)の乳がん細胞の各々に対して、THC単独に比べて
効能を増大させたことが実証された。
【0108】
本実施例の結果は、大麻抽出物が試験したがん細胞株の全てに対して有効であったことを示す、
図8にまとめられている。
【0109】
文脈上別段の必要がない限り、本明細書においては、全てのパーセンテージは、医薬組成物の重量パーセンテージである。
【0110】
値を記載するために用いられる場合、用語「約」は、好ましくは、値の±10%以内の量
を意味する。
【0111】
用語「a」、「an」、「and」及び/又は「the」並びに同様の指示対象は、本発明及び
それに続く請求項を記載する文脈においては、本明細書において特に断りのない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むものとして解釈されるべきである。
【0112】
任意の先行技術の刊行物が本明細書で言及されている場合、該刊行物が、オーストラリア又は任意のその他の国における、当該技術分野の一般的な知見の一部を形成するということが、そのような参照によって承認されるものでないことが理解される。
【0113】
以下の請求項及びこれまでの発明の詳細な説明において、文脈により、言語又は必要な意味合いを表すために別段の要求がある場合を除き、「comprise」という語、又は例えば「comprises」若しくは「comprising」等の変形は、包括的な意味で使用され、即ち、記
載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。