(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】架台
(51)【国際特許分類】
F16L 3/24 20060101AFI20220913BHJP
F16L 3/04 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F16L3/24 B
F16L3/04
(21)【出願番号】P 2018095025
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-05-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 サクラ工業株式会社が新菱冷熱工業株式会社に、架台を販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 一豊
(72)【発明者】
【氏名】氷沢 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】早野 行治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純大
(72)【発明者】
【氏名】田中 篤
(72)【発明者】
【氏名】石原 憲司
(72)【発明者】
【氏名】乾 重樹
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032027(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170924(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/24
F16L 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支持部材と、前記一対の支持部材間に架設される横架部材とからなる構造部材と、
前記支持部材と、前記横架部材が互いに重なり合う重合部分において、前記支持部材及び横架部材を締結する締結部材と、前記横架部材上に載置された物品を固定する固定部材とを備えた架台であって、前記支持部材及び横架部材は、繊維強化プラスチックによって形成され、前記
支持部材及び横架部材のうちの少なくとも一方の部材と、前記締結部材
との間に、補強部材が介装されたことを特徴とする架台。
【請求項2】
前記構造部材が型材から構成され、前記締結部材がボルト及びナットから構成され、前記補強部材は、前記構造部材と、前記ボルト頭部及び/又はナットとの接触面に介装されたことを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項3】
前記補強部材は、少なくとも前記構造部材と前記ボルト頭部との接触面に介装されたことを特徴とする請求項2に記載の架台。
【請求項4】
前記支持部材及び横架部材のうち、いずれか一方に前記ボルト挿通用の丸孔が形成され、他方に前記ボルト挿通用の長孔が形成され、少なくとも長孔が形成された他方の部材の長孔周縁部に補強部材が配置されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の架台。
【請求項5】
前記一対の支持部材が天井面から垂設されたことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の架台。
【請求項6】
前記補強部材は、繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の架台。
【請求項7】
前記補強部材は、炭素繊維強化プラスチック製板材であり、前記構造部材表面に固着されたことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に配設される温水、冷水、蒸気などの配管や、設備機器等の物品を支持するための架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物における温水、冷水、蒸気などの配管や、設備機器等の物品は、特許文献1に示すように、建築物の基礎床面に設置された架台上に配置される。架台は、強度的な面から金属製のものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築物における配管や設備機器等の物品の設置スペースは十分でなく、また、金属製の架台では重量が大きくなり、人手によって架台の構成部材を設置現場まで搬送して設置するのにかなりの時間と労力が必要とされていた。
【0005】
上記問題を解決するため、架台を繊維強化プラスチック製とすることも考えられる。しかしながら、限られた狭い作業スペース内において、架台の組み立て作業及び配管の固定作業を行うことにより、締結部材や固定部材に過度の力が加わり、架台の変形やクラックが生じる可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、軽量で優れた強度を有し、設置作業を容易に行なうことのできる架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様としての架台は、一対の支持部材と、前記一対の支持部材間に架設される横架部材とからなる構造部材と、前記支持部材及び横架部材を締結する締結部材と、前記横架部材上に載置された物品を固定する固定部材とを備え、前記支持部材及び横架部材は、繊維強化プラスチックによって形成され、前記構造部材と、前記締結部材及び/又は固定部材との間に、補強部材が介装されたことを特徴とする。
【0008】
前記架台について、構造部材が型材から構成され、前記締結部材がボルト及びナットから構成され、前記補強部材は、前記構造部材と、前記ボルト頭部及び/又はナットとの接触面に介装された構成にしてもよい。また、補強部材は、少なくとも前記構造部材と前記ボルト頭部との接触面に介装された構成としてもよい。
【0009】
さらに、構造部材である支持部材および横架部材のうち、いずれか一方に前記ボルト挿通用の丸孔が形成され、他方に前記ボルト挿通用の長孔が形成され、少なくとも長孔が形成された他方の部材の長孔周縁部に補強部材が配置された構成にしてもよい。
【0010】
また、前記構造部材が角筒材から構成され、前記補強部材は、前記横架部材の側面に前記固定部材を取付可能に形成された部材であるような構成にしてもよい。
【0011】
前記一対の支持部材は天井面から垂設された構成にしてもよい。また、補強部材は、繊維強化プラスチック製とする構成にしてもよく、補強部材を構造部材と締結部材の間に介装する場合には、補強部材として炭素繊維強化プラスチック製板材を使用し、構造部材表面に固着する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、構造部材を繊維強化プラスチックで形成すると共に、構造部材と、前記締結部材及び/又は固定部材との間に、補強部材を介装したため、軽量化可能で強度に優れ、たとえ、締結部材や固定部材に過度の力が加わった場合でも、架台の変形やクラックの発生を抑制することが可能で、設置作業を容易に行なうことが可能な架台を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る架台の第1実施形態を示す概略図
【
図3】本発明の第2実施形態を示す架台の領域Xの拡大図
【
図4】本発明の第3実施形態を示す架台の概略正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施態様を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る架台の実施形態を示す概略図であり、
図2は
図1の二点鎖線で囲まれた領域Xにおける分解拡大図である。
【0015】
本実施形態では、配管載置用で、天井面から吊り下げるタイプの架台を例に説明する。図示のように、本実施形態の架台は、構造部材1として、天井面から垂設される一対の支持部材2と、一対の支持部材2、2間に架設される横架部材3とを備え、横架部材3上に物品としての配管Bが載置される。支持部材2及び横架部材3は締結部材4によって締結され、配管Bは固定部材5によって横架部材3に固定される。
【0016】
本実施形態では、建築物の構造材である鋼材Cと建築物の基礎Dとの間に免振装置Eが介装されており、鋼材Cの下面に支持部材2を接続するための鋼板製の接続基部Fが形成されている。接続基部Fは鋼材Cの下面において一定距離離れた位置に2箇所形成され、それぞれの接続基部Fに支持部材2が接続される。接続基部Fから垂設された支持部材2、2間に横架部材3が架設される。
【0017】
支持部材2及び横架部材3は、繊維強化プラスチック(以下、FRPという)製の角筒材やC型型材によって構成される。FRP製の角筒材や型材は、たとえば、ガラス繊維に不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂を含浸し、引抜き成形法によって連続成形することができる。FRPは、軽量でかつ高い強度を備える。本実施形態では、構造部材1として、FRP製C型型材が用いられる。C型型材は、平面部と、平面部の両端に連設される側面部を有しており、横架部材3は平面部を立てた状態で、側面部が底面と天面を形成するようにして支持部材2に接続される。
【0018】
横架部材3の天面に配管Bが載置される。本実施形態では、配管Bを固定する固定部材5として、U字ボルト5aとナット5bが用いられており、横架部材3の天面にU字ボルト5aを挿通する複数の挿通孔(図示せず)が形成される。U字ボルト5aは配管Bを跨いで、異なる2つの挿通孔に挿通され、ナット5bで締め付け固定される。
【0019】
支持部材2と横架部材3とを接続する場合は、C型型材の平面部同士を背中合わせにして締結部材4により締結される。本実施形態では、締結部材4としてボルト4a及びナット(図示せず)が用いられている。
図2に示すように、支持部材2と横架部材3との接続には、強度を確保する観点から4つの締結部材4が用いられている。すなわち、支持部材2及び横架部材3には対応する位置に4つのボルト孔(丸孔)6が形成されており、それぞれのボルト孔6にボルト4aが挿通され、ナットに螺合される。
【0020】
ボルト4aの頭部と横架部材3との間、及び、ナットと支持部材2との間にそれぞれ補強部材7が介装される。補強部材7としては、強度の高い材質のものであればよく、本実施形態では、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)製板材が用いられる。CFRPは、炭素繊維に不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂を含浸して形成される。そして、CFRPは、FRPよりもさらに強度に優れるという利点を有する。補強部材7には4つのボルト孔6が形成され、ボルト4aが挿通可能とされる。なお、図示しないが、支持部材2と接続基部Fとの接続箇所においても、締結部材4と支持部材2との間に補強部材7が介装される。
【0021】
上記構成によれば、架台を構成する支持部材及び横架部材が繊維強化プラスチック製で軽量であるとともに、補強部材7により、締結部材4を過度に締め付けた場合でも、構造部材1の変形やクラックの発生を抑止することが可能となる。これにより、架台の組み立て作業を容易に行なうことができる。さらに、建築物とその基礎との間に免振装置を介在させる免震構造においては、上述の天井吊り下げタイプの架台を鋼材Cの下面に複数設置することによって、温水、冷水、蒸気などの配管を建築物側に容易に配設することが可能となる。
【0022】
なお、補強部材7は、ボルト4aの頭部と横架部材3との間、及び、ナットと支持部材2との間のうち、少なくとも一方に介装される。この場合、工具で締め込む側の締結部材4と構造部材1との間に補強部材7を介装するのが好ましい。たとえば、ナットをスパナで回り止めした状態で、ボックスレンチによりボルト4aの頭部を締め込む場合、ボルト4aの頭部と構造部材1との間に補強部材7を介装する。これにより、締結部材4の締め込みによる摩擦力が構造部材1に作用してクラックが発生するのを防止することが可能となる。
【0023】
[第2実施形態]
本実施形態では、横架部材3のボルト挿通用の孔形状として長孔8が2つとされ、それに伴い、補強部材7の形状が変更された点が特徴とされ、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。
【0024】
本実施形態では、
図3に示すように、横架部材3のボルト挿通用の孔形状として長孔8が2つとされる。なお、支持部材2のボルト孔は丸孔4つのままである(図示せず)。これにより、支持部材2の4つのボルト孔の相対的な位置ずれが生じた場合でも、横架部材3の長孔8で位置ずれを吸収することが可能となる。
【0025】
しかしながら、長孔8を形成した場合には、締結部材4と支持部材2表面との接触面積が減少するため、その分、横架部材3表面にかかる締付力が大きくなり、横架部材3(構造部材1)の変形やクラックが発生しやすくなる。したがって、少なくとも長孔8が形成された構造部材1の長孔周縁部に補強部材7を配置するのが好ましい。
【0026】
本実施形態では、補強部材7を短冊状とし、長孔8の長さ方向に沿って横架部材3に接着している。すなわち、補強部材7は、CFRP製であることから、接着剤によって横架部材に強固に固着させることが可能となる。接着剤の樹脂成分は特に限定されないが、FRP及びCFRPで用いられる樹脂と同種成分であることが、より接着性が良好になるという点で好ましい。このように、あらかじめ補強部材7を構造部材1に固着することで現場作業がより容易となる。
【0027】
[第3実施形態]
本実施形態では、構造部材1として角筒材が用いられる。すなわち、
図4に示すように、支持部材2及び横架部材3は角筒材で形成されており、両者2、3を接続するのに、角筒状のL字形継手9が用いられる。各部材2、3はそれぞれ締結部材4によって締結される。
【0028】
本実施形態では、横架部材3が角筒状であるため、固定部材5であるU字ボルト5aを直接取り付けることができない。そこで、
図4~6に示すように、横架部材3の側面に固定部材5を取付可能な補強部材10が形成される。補強部材10としては、アングル状に形成された部材(本実施形態ではCFRPによって形成されたL字状の板材)が用いられる。補強部材10の直交する2面の一面側には締結部材4を挿通するボルト孔が形成され、他面側に固定部材のU字ボルトを挿通するU字ボルト孔が形成される。補強部材10の両端には補強リブ10aが形成される。
【0029】
図6に示すように、横架部材の側面に取り付けられた補強部材10に固定部材5が固定される。固定部材5を締めつけることにより、補強部材10には直交する2方向に外力が加わる。従って、補強部材10を繊維強化プラスチックで構成することにより、補強部材10の変形や破壊を防止することが可能となる。
【0030】
本実施形態では、支持部材を一対使用した形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、一対の支持部材のうち、少なくとも一方の支持部材を別の架台の支持部材として共用することも可能である。
【0031】
また、第1~3実施形態では、いずれも天井面から吊り下げるタイプの架台について説明したが、これに限らず、床面に設置するタイプの架台であってもよい。具体的には、床面に一対の支持部材を立設し、一対の支持部材間に横架部材を架設した構成としてもよいし、一対の支持部材と、その間に架設される横架部材とを1つのユニットとし、このユニットを複数組用いて、ユニット同士を繊維強化プラスチック製の構造材又は横架部材によって接続して一体化し、複数本の支持部材を脚部とした構成とすることも可能である。
また、第1~3実施形態では、架台に載置される物品として配管の例について説明したが、配電盤、発電機、空気調和機の室外機、モータ等の設備機器であってもよい。
本実施形態及び上記変形例に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 構造部材
2 支持部材
3 横架部材
4 締結部材
5 固定部材
6 ボルト孔(丸孔)
7 補強部材
8 ボルト挿通用の長孔
9 L字形継手
10 補強部材
X 領域
B 配管
C 鋼材
D 基礎
E 免振装置
F 接続基部