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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】縮合リン酸塩配合飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/56 20060101AFI20220913BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220913BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220913BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20220913BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A23L2/56
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23F3/16
A23L2/52
A23F5/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017066661
(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2018166445
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】木下 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-132073(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106070854(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102626158(CN,A)
【文献】特開昭63-068042(JP,A)
【文献】特開昭63-254949(JP,A)
【文献】特開2016-208861(JP,A)
【文献】特開平10-070956(JP,A)
【文献】国際公開第2011/126005(WO,A1)
【文献】特開2010-004827(JP,A)
【文献】日本食品科学工学会誌,1998年,Vol. 45, No. 2,pp. 108-113
【文献】FLAVOUR AND FRAGRANCE JOURNAL,1995年,Vol. 10,pp. 1-7
【文献】栄養と食糧,1981年,Vol. 34, No. 6,pp. 545-549
【文献】Agric. Biol. Chem.,1978年,Vol. 42, No. 11,pp. 2157-2159
【文献】J. Agric. Food Chem.,2006年,Vol. 54,pp. 916-924
【文献】日本農芸化学会誌,1981年,Vol. 55, No. 2,pp. 117-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
A23L
A01J
A23C
C12C
C12F
C12H
C12J
C12L
C12G
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合リン酸塩と、ダマセノンとを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のダマセノンの濃度(質量%)の比率が0.000001以上である飲料であって、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
【請求項2】
縮合リン酸塩と、イオノンとを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のイオノンの濃度(質量%)の比率が、0.0000005以上である飲料であって、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料(但し、茶飲料を除く)。
【請求項3】
縮合リン酸塩と、イオノンとを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のイオノンの濃度(質量%)の比率が、0.0000005以上である茶飲料であって、飲料のpHが4.5~7.0であり、かつ、前記茶飲料が緑茶飲料、穀物茶飲料およびルイボス茶飲料並びにこれらのブレンド茶飲料からなる群から選択されるものである、飲料。
【請求項4】
縮合リン酸塩と、エタノールとを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のエタノールの濃度(質量%)の比率が、0.1以上である飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、かつ、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
【請求項5】
縮合リン酸塩と、プロピレングリコールとを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のプロピレングリコールの濃度(質量%)の比率が、0.01以上である飲料であって、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料(但し、紅茶飲料を除く)。
【請求項6】
飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%である、請求項1~3および5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
縮合リン酸塩がメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびピロリン酸二水素二ナトリウムからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1および4~7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
縮合リン酸塩がメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびピロリン酸二水素二ナトリウムからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2または3に記載の飲料。
【請求項9】
茶飲料またはコーヒー飲料である、請求項1、4~7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項10】
茶飲料が、紅茶飲料、緑茶飲料、烏龍茶飲料、穀物茶飲料およびルイボス茶飲料並びにこれらのブレンド茶飲料からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の飲料。
【請求項11】
コーヒー飲料である、請求項2に記載の飲料。
【請求項12】
縮合リン酸塩と、ダマセノンおよび/またはエタノールとを配合する工程を含んでなる、縮合リン酸塩に起因する後苦味が抑制された飲料の製造方法であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中の前記ダマセノンおよび/またはエタノールの濃度(質量%)の比率が、前記ダマセノンは0.000001以上であり、前記エタノールは0.1以上10以下であり、かつ、飲料中のエタノールの濃度が0.05~0.5質量%である、方法。
【請求項13】
縮合リン酸塩と、イオノンとを配合する工程を含んでなる、縮合リン酸塩に起因する後苦味が抑制された飲料の製造方法であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中の前記イオノンの濃度(質量%)の比率が、0.0000005以上である、方法(但し、紅茶飲料および烏龍茶飲料の製造方法を除く)。
【請求項14】
縮合リン酸塩と、プロピレングリコールとを配合する工程を含んでなる、縮合リン酸塩に起因する後苦味が抑制された飲料の製造方法であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中の前記プロピレングリコールの濃度(質量%)の比率が、0.01以上である、方法(但し、紅茶飲料の製造方法を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合リン酸塩を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康や美容への意識の高まりから、安全な食品や付加価値のある食品に対する需要が高まっている。機能性素材や食品添加物を用いて、香味や食感、嗜好性、機能性、保存安定性など様々な要素を向上させた食品が種々開発されている。
【0003】
機能性素材および食品添加物のうち縮合リン酸塩は、乳化剤、かんすい、緩衝剤、pH調整剤、水処理剤などとして幅広い用途に使用されている。これらの用途以外では、例えば、特許文献1に、歯石形成抑制効果を有する縮合リン酸塩を含有する口腔組成物が開示されている。また、特許文献2には、炭酸飲料に縮合リン酸塩とリン酸を特定比率で配合することで後口が改善されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-34536号公報
【文献】特開2013-5786号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者らが確認したところ、縮合リン酸塩を所定量で配合した飲料には後苦味が生じており、風味改善の余地があることが分かった。本発明者らはまた、縮合リン酸塩を含有させた茶飲料およびコーヒー飲料にローズケトンおよび脂肪族アルコールを配合することによって、縮合リン酸塩に起因する風味低下が改善され、風味良好な飲料を提供できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
すなわち、本発明は、縮合リン酸塩を含有する飲料であって、縮合リン酸塩に起因する風味低下が改善された飲料を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]縮合リン酸塩と、ローズケトンおよび/または脂肪族アルコールとを含んでなる飲料であって、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料(以下、単に「本発明の飲料」ということがある)。
[2]ローズケトンとしてダマセノンを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のダマセノンの濃度(質量%)の比率が、0.000001以上である、上記[1]に記載の飲料。
[3]ローズケトンとしてイオノンを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のイオノンの濃度(質量%)の比率が、0.0000005以上である、上記[1]に記載の飲料。
[4]脂肪族アルコールとしてエタノールを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のエタノールの濃度(質量%)の比率が、0.1以上である、上記[1]に記載の飲料。
[5]脂肪族アルコールとしてプロピレングリコールを含んでなり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のプロピレングリコールの濃度(質量%)の比率が、0.01以上である、上記[1]に記載の飲料。
[6]飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]縮合リン酸塩がメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびピロリン酸二水素二ナトリウムからなる群から選択される1種または2種以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8]茶飲料またはコーヒー飲料である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
[9]茶飲料が、紅茶飲料、緑茶飲料、烏龍茶飲料、穀物茶飲料およびルイボス茶飲料並びにこれらのブレンド茶飲料からなる群から選択されるものである、上記[8]に記載の飲料。
[10]縮合リン酸塩と、ローズケトンおよび/または脂肪族アルコールとを配合する工程を含んでなる、縮合リン酸塩に起因する後苦味が抑制された飲料の製造方法。
【0008】
本発明によれば、縮合リン酸塩を含有する飲料にローズケトンまたは脂肪族アルコールを配合することによって、縮合リン酸塩を含有しつつ風味良好な飲料を提供することができる。すなわち、本発明は、飲料の風味を損なうことなく、機能性食品素材である縮合リン酸塩を配合できる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明において飲料は、縮合リン酸塩を配合可能な飲料であれば特に限定されないが、例えば、茶飲料およびコーヒー飲料が挙げられる。本発明に適用可能な茶飲料としては、例えば、発酵茶(例えば、紅茶)飲料、不発酵茶(例えば、緑茶、ルイボス茶)飲料、半発酵茶(例えば、烏龍茶)飲料、後発酵茶(例えば、プーアル茶)飲料および穀物茶(例えば、麦茶)飲料並びにこれらのブレンド茶飲料が挙げられる。
【0010】
本発明の茶飲料は、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮液または希釈液から調製することができる。例えば、茶葉と水(0~100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を水(0~100℃)に混合または溶解させることにより、本発明に用いられる茶抽出液を得ることができる。また、上記の茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーとを混合したものを茶抽出液として本発明の茶飲料に用いてもよい。茶葉と水を混合接触させた場合には、遠心分離や濾過などの分離手段を用いて茶葉と茶抽出液を分離することができる。また、茶抽出液の調製に際し茶葉以外の任意の原料を配合してよい。
【0011】
茶抽出液の調製に用いられる原料は、特に限定されないが、穀物など(麦、米など)やマメ科植物(ルイボスなど)の他、ツバキ科の常緑樹である茶樹カメリア・シネンシス(Camellia sinensis var.)に属する茶葉を用いることができる。本発明の茶飲料の製造に用いられる茶葉は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではなく、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、番茶、ほうじ茶などの緑茶に代表される不発酵茶の茶葉に限らず、烏龍茶のような半発酵茶の茶葉や、紅茶のような発酵茶の茶葉、プーアル茶のような後発酵茶の茶葉なども用いることができる。本発明に用いられる茶葉としては、好ましくは緑茶葉または紅茶葉である。本発明においてはまた、複数種類の原料および茶葉が使用されてもよい。
【0012】
本発明で用いられる茶葉は、茶期や、茶葉の形状、産地、品種や種類および等級などは限定されず、一般に飲用で市販されている乾燥茶葉を使用することができる。紅茶葉の種類は、例えば、スリランカ産茶葉(例えば、ウバ、ディンブラ、キャンディ、ラトナプラ、ギャル、ルフナ)、インド産茶葉(例えば、アッサム、ダージリン、ニルギリ)、ケニア、キーマン、ジャワとしてもよい。これらは1種類を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明において「茶抽出液」とは、茶葉を抽出処理に付することにより得られる、抽出液を意味する。本発明に用いられる茶抽出液は、茶葉からの抽出液それ自体や、その加工品類(例えば、濃縮液体エキス、粉末エキス)などが挙げられ、従来、茶飲料の製造に用いられている茶抽出原料であれば、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0014】
茶葉の抽出処理は、特に限定されず、食品加工分野で一般的に用いられている種々の抽出方法を用いることができ、例えば、溶媒抽出、気流抽出、圧搾抽出などが包含され、必要に応じて、沈殿もしくは濾過などの固液分離、濃縮、遠心分離、乾燥(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥)または粉末化などの処理をさらに施してもよい。
【0015】
ここで、溶媒抽出で用いられる抽出溶媒としては、水(例えば、硬水、軟水、イオン交換水および天然水)が望ましい。抽出溶媒の量は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その量は、茶葉の1~100倍量(質量)である。
【0016】
抽出温度および時間は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その温度および時間は、10~120℃で1分~12時間である。
【0017】
抽出処理の一例としては、茶葉を、水中に、0~90℃で、1分~24時間浸漬および攪拌し、その後、茶葉を濾過または遠心分離する方法が挙げられる。ここで、抽出時の温度や時間などの条件は、特に限定されず、茶葉の種類や量によって当業者が任意に選択し、かつ設定することができる。
【0018】
茶抽出液の調製において、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を用いてもよく、例えば、Value Instant Tea(Kroger社製)やポリフェノン(三井農林社製)、サンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物や茶精製物は、そのまままたは水で溶解もしくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0019】
本発明のコーヒー飲料は、コーヒーミル(グラインダー)により粉砕したコーヒー豆を抽出することにより調製することができる。
【0020】
本発明においてコーヒー抽出液は、一般的な方法により抽出することができる。コーヒー、例えば焙煎したコーヒー豆から各種方法により得られる抽出液(いわゆるレギュラーコーヒー)のほか、コーヒーから抽出した成分を含有する液体がすべて包含され、例えば、コーヒー焙煎豆の冷水、温水、熱水、加圧熱水による抽出液や、プロピレングリコール水溶液、ショ糖脂肪酸エステルなどの食品添加物として許容されている界面活性剤の水溶液による抽出液、炭酸ガスなどの臨界抽出により得られた抽出液、インスタントコーヒーの溶解液なども包含される。コーヒー抽出液は上述したいずれであってもよいが、コーヒー抽出液は、好ましい態様によれば、焙煎したコーヒー豆を熱水(例えば、コーヒー豆の10倍量)で抽出した後、冷却してコーヒー抽出液とすることが好ましい。また、コーヒー豆からの抽出方法については、特に限定されず、例えば、ボイリング式、エスプレッソ式、サイフォン式、ドリップ式(例えば、ペーパー、ネル)が挙げられる。100gの抽出液を調製するために用いられるコーヒーの焙煎豆量は、例えば、5~50gとすることができ、好ましくは10~20gである。コーヒーの抽出は、例えば、焙煎コーヒー豆またはその粉砕物を水(20℃~100℃)で5~100分かけて抽出することにより実施できる。
【0021】
本発明で用いられるコーヒー豆の種類は特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテンが挙げられ、これらの1種または2種以上をブレンドして用いても良い。コーヒー豆種としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種があり、好ましくは、香味の観点から、アラビカ種を用いることができる。コーヒー豆を焙煎により焙煎コーヒーとする方法については、特に限定されるものではなく、焙煎温度、焙煎環境についても限定されない。焙煎方法としては直火式、熱風式、半熱風式などが挙げられる。焙煎コーヒーの焙煎度としては特に限定されるものではなく、例えばライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンのいずれを用いても良く、焙煎度の異なるコーヒー豆を複数種混合しても良い。
【0022】
本発明の飲料は、縮合リン酸塩が配合されてなるものである。本発明で使用される縮合リン酸塩としては、例えば、メタリン酸、ウルトラリン酸およびポリリン酸類の金属塩が挙げられる。これら縮合リン酸の金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が挙げられ、具体的には、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸二水素二カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウムおよびピロリン酸第二鉄からなる群から選択される1種または2種以上を本発明の飲料に配合することができる。本発明の飲料に配合することができる好ましい縮合リン酸塩は、メタリン酸ナトリウムである。
【0023】
本発明の飲料中の縮合リン酸塩の濃度は、縮合リン酸塩の配合目的により決定することができるが、縮合リン酸塩の機能をよりよく発揮させるために縮合リン酸塩の下限値は、例えば0.01質量%(好ましくは0.02質量%)とすることができ、該濃度の上限値は、例えば0.1%(好ましくは0.08質量%)とすることができる。本発明の飲料中の縮合リン酸塩の濃度は、例えば、0.01~0.1質量%、あるいは0.02~0.08質量%とすることができる。
【0024】
本発明の飲料にはローズケトンおよび脂肪族アルコールのいずれか、または両方を配合することができる。少なくともローズケトンおよび脂肪族アルコールのいずれかを本発明の飲料に配合することにより、縮合リン酸塩に起因する飲料の風味低下を改善ないし抑制することができる。
【0025】
本発明の飲料に配合できるローズケトンとしては、例えば、ダマセノン、イオノン、ダマスコンが挙げられる。ダマセノンとしてはα-ダマセノン、β-ダマセノンおよびγ-ダマセノンが挙げられ、好ましくはβ-ダマセノンである。イオノンとしてはα-イオノン、β-イオノンおよびγ-イオノンが挙げられ、好ましくはβ-イオノンである。ダマスコンとしてはα-ダマスコン、β-ダマスコン、γ-ダマスコンおよびδ-ダマスコンが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0026】
本発明において使用されるローズケトンは、市販されているものを入手しても、公知の方法によって調製してもよく、あるいは、ローズケトンを含有する他の原材料(例えば、果汁、香料)を使用することもできる。
【0027】
本発明において、配合するローズケトンがダマセノン(好ましくは、β-ダマセノン)である場合は、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のダマセノンの濃度(質量%)の比率は、下限を0.000001(好ましくは0.00001)とすることができ、上限を0.0008(好ましくは0.00008)または0.0002(好ましくは0.00002)とすることができる。本発明の飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のダマセノンの濃度(質量%)の比率は、0.000001~0.0008(好ましくは0.00001~0.00008)または0.000001~0.0002(好ましくは0.00001~0.00002)とすることができる。
【0028】
また本発明において、配合するローズケトンがダマセノン(好ましくはβ-ダマセノン)である場合は、飲料中のダマセノン濃度の上限は400ppb(好ましくは40ppb)とすることができ、飲料中の該ダマセノン濃度の下限は0.5ppb(好ましくは5ppb)とすることができる。本発明の飲料中のダマセノン(好ましくはβ-ダマセノン)濃度は、0.5ppb~400ppb(好ましくは5~40ppb)とすることができる。
【0029】
本発明において、配合するローズケトンがイオノン(好ましくはβ-イオノン)である場合は、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のイオノンの濃度(質量%)の比率は、下限を0.0000005(好ましくは0.000005)とすることができ、上限を0.0025(好ましくは0.00025)とすることができる。本発明の飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のイオノンの濃度(質量%)の比率は、0.0000005~0.0025(好ましくは0.000005~0.00025)とすることができる。
【0030】
また本発明において、配合するローズケトンがイオノン(好ましくはβ-イオノン)である場合は、飲料中のイオノン濃度の上限は1250ppb(好ましくは125ppb)とすることができ、飲料中の該イオノン濃度の下限は0.25(好ましくは2.5ppb)とすることができる。本発明の飲料中のイオノン(好ましくはβ-イオノン)濃度は、0.25ppb~1250ppb(好ましくは2.5ppb~125ppb)とすることができる。
【0031】
なお、本発明の飲料や他の原材料にローズケトンが含まれている場合には、その含有量を考慮して配合するローズケトンの量を決定することができる。
【0032】
本発明の飲料に配合できる脂肪族アルコールは炭素数1~6個のアルコールであり、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコールおよび多価アルコールを含む意味で用いられるが、好ましくは一価アルコールおよび二価アルコールであり、より好ましくは炭素数1~4の一価アルコールおよび炭素数1~4の二価アルコールである。本発明の飲料に配合できる脂肪族アルコールはまた、食品上許容される脂肪族アルコールであれば特に限定されない。このような脂肪族アルコールとしては、食品としての安全性が認められた脂肪族アルコール(例えば、食品衛生法により食品への添加が認められた脂肪族アルコール)が挙げられる。このような脂肪族アルコールとしては、エタノール、プロピレングリコール、トリアセチンが挙げられ、好ましくは、エタノールおよびプロピレングリコールである。
【0033】
本発明において、配合する脂肪族アルコールがエタノールである場合は、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のエタノールの濃度(質量%)の比率は、下限を0.1(好ましくは1)とすることができ、上限を100(好ましくは10)とすることができる。本発明の飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のエタノールの濃度(質量%)の比率は、0.1~100(好ましくは1~10)とすることができる。
【0034】
また本発明において、配合する脂肪族アルコールがエタノールである場合は、飲料中のエタノール濃度の上限は5質量%(好ましくは0.5質量%)とすることができ、飲料中の該エタノール濃度の下限は0.005質量%(好ましくは0.05質量%)とすることができる。本発明の飲料中のエタノール濃度は、0.005%~5.0%(好ましくは0.05%~0.5%)とすることができる。
【0035】
また本発明において、配合する脂肪族アルコールがプロピレングリコールである場合は、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のプロピレングリコールの濃度(質量%)の比率は、下限を0.01(好ましくは0.1)とすることができ、上限を10(好ましくは1)とすることができる。本発明の飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のプロピレングリコールの濃度(質量%)の比率は、0.01~10(好ましくは0.1~1)とすることができる。
【0036】
また本発明において、配合する脂肪族アルコールがプロピレングリコールである場合は、飲料中のプロピレングリコール濃度の上限は0.5質量%(好ましくは0.05質量%)とすることができ、飲料中の該プロピレングリコール濃度の下限は0.0005質量%(好ましくは0.005質量%)とすることができる。本発明の飲料中のプロピレングリコール濃度は、0.0005%~0.5%(好ましくは0.005%~0.05%)とすることができる。
【0037】
本発明の飲料は、pHを4.5~7.0の範囲(好ましくは5.0~7.0の範囲または5.5~7.0の範囲)に調整することができる。本発明の飲料のpHは通常の飲料のpHを調整する手法により調整することができ、例えば、炭酸水素ナトリウムを用いて調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、東亜電波工業株式会社製)を使用して測定することができる。
【0038】
本発明の飲料が茶飲料である場合、飲料中のポリフェノール濃度は、例えば、15~60mg/100mLの範囲内とすることができ、好ましくは20~50mg/100mL、より好ましくは20~40mg/100mLの範囲内である。本発明の飲料に含まれるポリフェノールは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシル基をもつ成分のことを意味し、好ましくは茶由来のポリフェノールである。茶由来のポリフェノールとは、茶葉中に含まれる各種ポリフェノール類を指し、例えば、カテキン類やプロアントシアニジン類、これらの酸化重合などによる生成物であるテアシネンシン類、ウーロンテアニン、テアフラビン類、テアルビジン類などを挙げることができる。
【0039】
本発明の飲料中のポリフェノール濃度は、例えば、茶葉抽出物および/または茶類エキスのポリフェノール濃度を測定することにより、所定の範囲に調整することができる。あるいは、予めポリフェノール濃度が調整された茶葉抽出物および/または茶類エキスを飲料に対して所定量添加することによっても、飲料中のポリフェノール濃度の調整を行うことができる。
【0040】
飲料中のポリフェノール濃度の測定は飲料の性質や飲料に含まれるポリフェノールの種類に応じて決定することができる。本発明において、茶飲料中のポリフェノール濃度は、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)を用いて測定することができる。
【0041】
本発明の飲料では、通常の飲料の製造に用いられている飲料用添加剤、例えば、甘味料、酸味料、香料、色素、果汁、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤)などを添加してもよい。なお、本発明の飲料を低カロリー飲料あるいは低糖質飲料として提供する場合には、糖類を配合せずに無糖飲料とすることができる。このような無糖飲料であっても本発明の飲料は風味良好な飲料として提供できるので有利である。
【0042】
本発明の飲料は乳成分を含んでいてもよいが、飲料が乳成分を含まない場合あるいは実質的に含まない場合には、乳成分によるマスキング効果が期待できないため、乳成分を含む飲料と比較して縮合リン酸塩に起因する後苦味が強く感じられる。従って、本発明の飲料は乳成分が含まれないか、あるいは乳成分の濃度が所定値以下の飲料である場合にその効果をよりよく発揮することができる。すなわち、本発明の飲料は、乳成分を含まない飲料、乳成分を実質的に含まない飲料、あるいは飲料中の乳成分濃度が乳固形分として3重量%未満の飲料とすることができる。ここで、「乳成分」とは、牛乳、脱脂乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム等が挙げられる。
【0043】
本発明の飲料は、容器詰め飲料の形態で提供することができる。容器詰め飲料の容器とは、内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、以下の飲料が提供される。
・縮合リン酸塩と、ダマセノン(好ましくはβ-ダマセノン)とを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のダマセノンの濃度(質量%)の比率が0.00001以上(好ましくは0.00001~0.00008または0.00001~0.00002)であり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、ダマセノン(好ましくはβ-ダマセノン)とを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中のダマセノンの濃度が5~40ppbであり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、イオノン(好ましくはβ-イオノン)とを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のイオノンの濃度(質量%)の比率が0.000005以上(好ましくは0.000005~0.00025)であり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、イオノン(好ましくはβ-イオノン)とを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中のイオノンの濃度が2.5~125ppbであり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、エタノールとを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のエタノールの濃度(質量%)の比率が1以上(好ましくは1~10)であり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、エタノールとを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中のエタノールの濃度が0.05~0.5質量%であり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、プロピレングリコールとを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中の縮合リン酸塩の濃度(質量%)に対する飲料中のプロピレングリコールの濃度(質量%)の比率が0.1以上(好ましくは0.1~1)であり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
・縮合リン酸塩と、プロピレングリコールとを含んでなる飲料であって、飲料中の縮合リン酸塩の濃度が0.01~0.1質量%であり、飲料中のプロピレングリコールの濃度が0.005~0.05質量%であり、飲料のpHが4.5~7.0である、飲料。
【0045】
本発明の飲料の製造は、縮合リン酸塩と、ローズケトンおよび/または脂肪族アルコールを原材料に配合する点を除いては、飲料の製造に用いられる通常の方法に従って実施することができる。例えば、本発明の飲料が茶飲料またはコーヒー飲料の場合には、茶抽出液またはコーヒー抽出液を準備し、所定の濃度となるように、縮合リン酸塩と、ローズケトンおよび/または脂肪族アルコールを調合することにより、飲料を得ることができる。本発明の飲料の製造においては、通常の飲料の処方設計に用いられている飲料用添加剤を添加してもよく、これら添加剤の添加時期は特に制限されない。
【0046】
本発明の飲料の製造に当たっては、当業界に公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0047】
本発明の飲料の製造手順において、縮合リン酸塩の添加時期と、ローズケトンおよび脂肪族アルコールの添加時期は特に制限されず、例えば、原材料の調合工程において添加することができる。縮合リン酸塩を添加する手順と、ローズケトンを添加する手順および脂肪族アルコールを添加する手順は、同時に実施しても、別々に実施してもよく、別々に実施する場合にはいずれが先であってもよい。
【0048】
本発明により提供される飲料は、抽出工程、調合工程、充填工程および殺菌工程などの工程を経て容器詰め飲料として提供することができる。例えば、調合工程で得られた飲料を常法に従って殺菌し、容器に充填することができる。殺菌は容器への充填前であっても充填後であってもよい。
【0049】
本発明の飲料の製造において殺菌処理を行う場合、食品分野で一般的に用いられている種々の殺菌方法を用いることができ、典型的には加熱殺菌法を用いることができる。使用できる殺菌方法としては、例えば、レトルト殺菌、UHT殺菌、低温殺菌、HTST殺菌などが挙げられる。これらの加熱殺菌方法は飲料の製造に通常用いられている条件で実施することができる。
【0050】
本発明の別の面によれば、縮合リン酸塩と、ローズケトンおよび/または脂肪族アルコールとを配合する工程を含んでなる、縮合リン酸塩に起因する後苦味が抑制された飲料の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、本発明の飲料およびその製造に関する記載に従って実施することができる。
【実施例
【0051】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0052】
例1:ローズケトンによる風味改善効果
(1)紅茶飲料(サンプル番号1~9)の調製
紅茶葉50gに対して70℃の熱水1500gを添加し、7分間攪拌しながら抽出して紅茶抽出液を調製した。ポリフェノール濃度が40mg/100mLとなるように得られた紅茶抽出液の配合量を決定し、該紅茶抽出液にビタミンC終濃度が0.04%となるようにビタミンCを配合後、重曹を配合してpH6.3に合わせることにより、紅茶飲料調合液を調製した。得られた紅茶飲料調合液を缶に充填してレトルト殺菌処理(121℃、7分)を行い、後苦味がない対照紅茶サンプル飲料(サンプル番号1)を製造した。次いで、表1に示す濃度となるようにメタリン酸ナトリウム、β-ダマセノンおよびβ-イオノンを対照紅茶サンプル飲料に配合することにより、紅茶サンプル飲料(サンプル番号2~9)を調製した。
【0053】
紅茶抽出液のポリフェノール濃度は、酒石酸鉄吸光度法に従って測定した(以下、同様)。具体的には、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)に従って測定を行った。この測定方法においては、液中のポリフェールと、酒石酸鉄試薬とを反応させて生じた紫色成分について、吸光度(540nm)を測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作成した検量線を用いて定量することができる。このようにして得られた定量した値に1.5倍したものをポリフェール量とすることができる。
【0054】
(2)官能評価
上記(1)で得られた各紅茶サンプル飲料を官能評価に供した。具体的には、メタリン酸ナトリウムを添加することで生じる舌の上で感じる収斂を「後苦味」として、以下の評価基準に従って評価した。但し、サンプル番号1の官能評価結果を1点とし、サンプル番号2の官能評価結果を5点とした。ここで、「後苦味」とは、「飲用後(口中を通過した直後)に舌の表面で感じられる収斂味」をいう。
5点:後苦味を非常に強く感じる
4点:後苦味を感じる
3点:後苦味を少し感じる
2点:後苦味をほとんど感じない
1点:後苦味を感じない
【0055】
官能評価は5名の訓練されたパネラーにより実施した。パネラー5名の評価スコアの平均値を算出し、平均値が3.5未満の紅茶飲料を風味良好な紅茶飲料と判断した。
【0056】
(3)結果
評価結果を表1に示す。
【表1】
【0057】
表1の結果より、紅茶飲料にメタリン酸ナトリウムを添加すると後苦味が非常に強く感じられる(サンプル番号2)が、メタリン酸ナトリウムに加えてβ-ダマセノンまたはβ-イオノンを添加することにより、風味良好な紅茶飲料を提供できることが確認された。
【0058】
例2:脂肪族アルコールによる風味改善効果(1)
(1)紅茶飲料(サンプル番号1、2および10~16)の調製
例1(1)と同様の手順により、後苦味がない対照紅茶サンプル飲料(サンプル番号1)を製造した。次いで、表2に示す濃度となるようにメタリン酸ナトリウム、エタノールおよびプロピレングリコールを対照紅茶サンプル飲料に配合することにより、紅茶サンプル飲料(サンプル番号2、10~16)を調製した。紅茶抽出液のポリフェノール濃度は、例1(1)と同様の手順で測定した。
【0059】
(2)官能評価
上記(1)で得られた各紅茶サンプル飲料を官能評価に供した。官能評価は、例1(2)に記載の手順および基準により実施した。
【0060】
(3)結果
評価結果を表2に示す。
【表2】
【0061】
表2の結果より、紅茶飲料にメタリン酸ナトリウムを添加すると後苦味が非常に強く感じられる(サンプル番号2)が、メタリン酸ナトリウムに加えて所定量のエタノールまたはプロピレングリコールを添加することにより、風味良好な紅茶飲料を提供できることが確認された。
【0062】
例3:脂肪族アルコールによる風味改善効果(2)
(1)緑茶飲料(サンプル番号17~20)の調製
緑茶葉50gに対して60℃の熱水1500gを添加し、6分間攪拌しながら抽出して緑茶抽出液を調製した。ポリフェノール濃度が40mg/100mLとなるように得られた緑茶抽出液の配合量を決定し、該緑茶抽出液にビタミンC終濃度が0.04%となるようにビタミンCを配合後、重曹を配合してpH6.3に合わせることにより、緑茶飲料調合液を調製した。得られた緑茶飲料調合液を缶に充填してレトルト殺菌処理(121℃、7分)を行い、後苦味がない対照緑茶サンプル飲料(サンプル番号17)を製造した。次いで、表3に示す濃度となるようにメタリン酸ナトリウム、エタノールおよびプロピレングリコールを対照緑茶サンプル飲料に配合することにより、緑茶サンプル飲料(サンプル番号18~20)を調製した。緑茶抽出液のポリフェノール濃度は、例1(1)と同様の手順で測定した。
【0063】
(2)官能評価
上記(1)で得られた各緑茶サンプル飲料を官能評価に供した。官能評価は、例1(2)に記載の手順および基準により実施した。但し、サンプル番号17の官能評価結果を1点とし、サンプル番号18の官能評価結果を5点とした。
【0064】
(3)結果
評価結果を表3に示す。
【表3】
【0065】
表3の結果より、緑茶飲料にメタリン酸ナトリウムを添加すると後苦味が非常に強く感じられる(サンプル番号18)が、メタリン酸ナトリウムに加えてエタノールまたはプロピレングリコールを添加することにより、風味良好な緑茶飲料を提供できることが確認された。
【0066】
例4:脂肪族アルコールによる風味改善効果(3)
(1)コーヒー飲料(サンプル番号21~24)の調製
コーヒー豆300gを粉砕後、98℃の熱水3000gを用いて、ドリップ式抽出でコーヒー抽出液を調製した。Brixが1.3となるように得られたコーヒー抽出液の配合量を決定し、該コーヒー抽出液に重曹を配合してpH6.3に合わせることにより、コーヒー飲料調合液を調製した。得られたコーヒー飲料調合液を缶に充填してレトルト殺菌処理(121℃、7分)を行い、後苦味がない対照コーヒーサンプル飲料(サンプル番号21)を製造した。次いで、表4に示す濃度となるようにメタリン酸ナトリウム、エタノールおよびプロピレングリコールを対照コーヒーサンプル飲料に配合することにより、コーヒーサンプル飲料(サンプル番号22~24)を調製した。
【0067】
(2)官能評価
上記(1)で得られた各コーヒーサンプル飲料を官能評価に供した。官能評価は、例1(2)に記載の手順および基準により実施した。但し、サンプル番号21の官能評価結果を1点とし、サンプル番号22の官能評価結果を5点とした。
【0068】
(3)結果
評価結果を表4に示す。
【表4】
【0069】
表4の結果より、コーヒー飲料にメタリン酸ナトリウムを添加すると後苦味が非常に強く感じられる(サンプル番号22)が、メタリン酸ナトリウムに加えてエタノールまたはプロピレングリコールを添加することにより、風味良好なコーヒー飲料を提供できることが確認された。