(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20220913BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F01P7/16 504A
F01P7/16 503
F01P7/16 502H
F02B29/04 T
F02B29/04 R
(21)【出願番号】P 2017195619
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 祐介
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0169080(US,A1)
【文献】特開2014-181661(JP,A)
【文献】特開2014-015885(JP,A)
【文献】特開2015-145667(JP,A)
【文献】特開2015-031235(JP,A)
【文献】特開2010-065544(JP,A)
【文献】特開2014-163336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F02B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと主ラジエータを繋げており、前記エンジンと前記主ラジエータの間で冷却水が循環する第1冷却流路と、
前記第1冷却流路
に設けられ、前記冷却水を循環させるポンプと、
前記第1冷却流路と繋がっており、水冷式インタークーラと副ラジエータの間で冷却水が循環する第2冷却流路と、
前記第2冷却流路において前記副ラジエータを迂回している迂回流路と、
前記副ラジエータへ流れる冷却水の流量と、前記迂回流路を流れる冷却水の流量を調整する流量調整部と、
を備え、
前記ポンプは、前記第1冷却流路から前記第2冷却流路へ冷却水を向かわせ、かつ前記第2冷却流路から前記第1冷却流路へ冷却水を戻すことで、前記第2冷却流路において冷却水を前記エンジンを通過させずに循環させ、
前記流量調整部は、前記エンジンの暖機時には、前記副ラジエータへ冷却水を流させない、
冷却システム。
【請求項2】
前記第2冷却流路は、前記第1冷却流路において前記ポンプの下流側と接続しており前記第1冷却流路から冷却水が流入する流入部と、前記第1冷却流路において前記ポンプの上流側と接続しており前記第1冷却流路へ冷却水が流出する流出部とを有する、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記第2冷却流路には、第1水冷式インタークーラと第2水冷式インタークーラが設けられており、
前記ポンプは、前記第1水冷式インタークーラを通過した冷却水と前記第2水冷式インタークーラを通過した冷却水を前記第1冷却流路へ戻す、
請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記流量調整部は、前記エンジンの負荷に応じて、前記迂回流路を流れる冷却水の流量を調整する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両には、冷却水が流れる冷却流路が2系統設けられた冷却システムを有するものがある。具体的には、冷却システムには、主ラジエータとエンジンの間で冷却水が循環する主冷却流路と、水冷式インタークーラと副ラジエータの間で冷却水が循環する副冷却流路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主冷却流路及び副冷却流路では、ラジエータによる冷却性能を確保するように冷却水を循環させるために、独立した主冷却流路及び副冷却流路にそれぞれ専用のポンプを設ける構成が採用されうる。しかし、上記の構成では、部品が増えるためコスト増加を招いてしまう。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、2系統の冷却流路の冷却水を適切に循環させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、エンジンと主ラジエータの間で冷却水が循環する第1冷却流路と、前記第1冷却流路に設けられ、前記冷却水を循環させるポンプと、前記第1冷却流路と繋がっており、水冷式インタークーラと副ラジエータの間で冷却水が循環する第2冷却流路と、前記第2冷却流路において前記副ラジエータを迂回している迂回流路と、前記迂回流路を流れる冷却水の流量を調整する流量調整部と、を備え、前記ポンプは、前記第1冷却流路から前記第2冷却流路へ冷却水を向かわせ、かつ前記第2冷却流路から前記第1冷却流路へ冷却水を戻すことで、前記第2冷却流路において冷却水を循環させる、冷却システムを提供する。
上記構成の冷却システムによれば、第1冷却流路だけでなく第2冷却流路を流れる冷却水が、一つのポンプによって循環されることによって、第2冷却流路に専用のポンプを設ける必要がなくなるので、部品コストを低減できる。また、流量調整部を設けたことによって、ポンプによって第2冷却流路を循環する冷却水の流れを調整できる。
【0007】
また、前記第2冷却流路は、前記第1冷却流路において前記ポンプの下流側と接続しており前記第1冷却流路から冷却水が流入する流入部と、前記第1冷却流路において前記ポンプの上流側と接続しており前記第1冷却流路へ冷却水が流出する流出部とを有することとしてもよい。
【0008】
また、前記第2冷却流路には、第1水冷式インタークーラと第2水冷式インタークーラが設けられており、前記ポンプは、前記第1水冷式インタークーラを通過した冷却水と前記第2水冷式インタークーラを通過した冷却水を前記第1冷却流路へ戻すこととしてもよい。
【0009】
また、前記流路調整部は、前記エンジンの負荷に応じて、前記迂回流路を流れる冷却水の流量を調整することとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、2系統の冷却流路の冷却水を適切に循環できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る冷却システム1の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】主冷却流路50における冷却水の流れを説明するための模式図である。
【
図3】副冷却流路60における冷却水の流れを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<冷却システムの構成>
本発明の一の実施形態に係る冷却システムの構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一の実施形態に係る冷却システム1の構成の一例を示す模式図である。
図2は、主冷却流路50における冷却水の流れを説明するための模式図である。
図3は、副冷却流路60における冷却水の流れを説明するための模式図である。なお、
図1では、吸気通路20、排気通路30及びEGR通路40が実線で示され、主冷却流路50が破線で示され、副冷却流路60が一点鎖線で示されている。また、
図2及び
図3には、冷却水の流れを示す便宜上、
図1に示す構成の一部のみが示されている。
【0014】
冷却システム1は、車両(例えばトラック)に搭載されており、ラジエータによって冷却水を冷却する。
図1に示すように、冷却システム1は、エンジン10と、吸気通路20と、排気通路30と、EGR通路40と、主冷却流路50と、副冷却流路60と、制御部90とを有する。
【0015】
エンジン10は、燃料と吸気の混合気を燃焼、膨張させて、車両を走行させる動力を発生させる原動機である。エンジン10は、ここではディーゼルエンジンであるが、ガソリンエンジンであってもよい。
【0016】
吸気通路20は、エンジン10に吸気を供給する通路である。吸気通路20には、第1過給機22の第1コンプレッサ22a、第1水冷式インタークーラ23、第2過給機24の第2コンプレッサ24a、第2水冷式インタークーラ25が設けられている。なお、第1過給機22及び第2過給機24は、エンジン10へ供給される吸気を過給するターボチャージャであり、過給効率を高めるために2つの過給機が設けられている。
【0017】
第1コンプレッサ22aは、例えばエアークリーナーを通過した吸気を圧縮する。第1水冷式インタークーラ23は、第1コンプレッサ22aによって圧縮されて温度が上昇した吸気を、冷却水により冷却する。第2コンプレッサ24aは、第1水冷式インタークーラ23を通過した吸気を圧縮する。第2水冷式インタークーラ25は、第2コンプレッサ24aによって圧縮されて温度が上昇した吸気を、冷却水により冷却する。これにより、2段階で過給された吸気がエンジン10へ送られる。
【0018】
排気通路30は、エンジン10の排気ガスを車両の外部へ排出するための通路である。排気通路30には、第1過給機22の第1タービン22b、第2過給機24の第2タービン24b、後処理部32が設けられている。
【0019】
第2タービン24bは、エンジン10の排気ガスのエネルギーを受けて回転することで、第2コンプレッサ24aに吸気を過給させる。第1タービン22bは、第2タービン24bを通過した排気ガスのエネルギーを受けて回転することで、第1コンプレッサ22aに吸気を過給させる。後処理部32は、排気ガスを浄化する装置であり、例えばDPF(Diesel Particulate Filter)やSCR(Selective Catalytic Reduction)を含む。
【0020】
EGR通路40は、排気通路30と吸気通路20の間を接続しており、排気通路30を流れる排気ガスの一部を吸気通路20に還流させる還流通路である。EGR通路40には、排気ガスを冷却するEGRクーラ42が設けられている。
【0021】
主冷却流路50は、エンジン10を冷却する冷却水が流れる流路である。主冷却流路50には、
図1に示すように、主ラジエータ52と、ポンプ53と、三方弁54と、弁55が設けられている。主冷却流路50は、
図2に示すように、エンジン10と主ラジエータ52の間で冷却水を循環させる。
【0022】
主ラジエータ52は、車両の前部に設けられている。主ラジエータ52は、主冷却流路50を流れる冷却水と空気(例えば走行風)を熱交換させて冷却水を冷却する。主ラジエータ52で冷却された冷却水は、
図2に示すようにエンジン10へ送られる。
【0023】
ポンプ53は、主冷却流路50においてエンジン10と主ラジエータ52の間に設けられており、エンジン10と主ラジエータ52の間で冷却水が循環するように、冷却水を吸い込んで送り出す。ポンプ53が送り出した冷却水は、
図2に示すように、エンジン10やEGRクーラ42へ流れる。
【0024】
三方弁54は、三方向に冷却水の出入口を有する弁であり、主冷却流路50においてエンジン10の出口側に設けられている。三方弁54は、
図2に示すように、エンジン10からの冷却水を主ラジエータ52とポンプ53へ分流する。三方弁54は、例えば冷却水の温度に応じて開度を調整するサーモスタットであってもよい。
【0025】
弁55は、主冷却流路50においてEGRクーラ42とポンプ53の間に設けられている。弁55は、例えばEGRクーラ42からポンプ53へ流れる冷却水の流量を調整する。
【0026】
副冷却流路60は、冷却水が流れる流路であり、主冷却流路50と繋がっている。副冷却流路60には、
図1に示すように、副ラジエータ62と、迂回流路63と、三方弁64と、流入部65と、流出部66と、弁67とが設けられている。副冷却流路60は、
図3に示すように、第1水冷式インタークーラ23、第2水冷式インタークーラ25及び副ラジエータ62の間で冷却水を循環させる。なお、副冷却流路60を流れる冷却水の流量は、主冷却流路50を流れる冷却水の流量よりも大幅に少ない。
【0027】
副ラジエータ62は、
図1に示すように主ラジエータ52の前方に設けられている。副ラジエータ62は、副冷却流路60を流れる冷却水と空気(例えば走行風)を熱交換させて冷却水を冷却する。副ラジエータ62で冷却された冷却水は、
図3に示すように、第1水冷式インタークーラ23と第2水冷式インタークーラ25へ送られる。
【0028】
迂回流路63は、副冷却流路60において副ラジエータ62を迂回するように設けられた流路である。例えば、エンジン10の暖機時には、冷却水が迂回流路63を流れる。
【0029】
三方弁64は、三方向に冷却水の出入口を有する弁であり、副冷却流路60において副ラジエータ62の出口側に設けられている。また、三方弁64は、迂回流路63の副冷却流路60の合流部分に設けられている。三方弁64は、副ラジエータ62を流れる冷却水の流量と、迂回流路63を流れる冷却水の流路を調整する流量調整部である。例えば、三方弁64は、エンジン10の負荷に応じて、迂回流路63を流れる冷却水の流量を調整する。また、三方弁64は、エンジン10の暖機時には、副ラジエータ62へ冷却水を流させない。三方弁64は、例えば冷却水の温度に応じて開度を調整するサーモスタットであってもよい。なお、上記では、三方弁64が副冷却流路60の出口側に設けられていることとしたが、これに限定されず、例えば三方弁64は副冷却流路60の入口側に設けられていてもよい。
【0030】
流入部65は、主冷却流路50との接続部であり、主冷却流路50から副冷却流路60へ冷却水を流入させる。流入部65は、主冷却流路50においてポンプ53の下流側に位置している。主冷却流路50から流入した冷却水は、
図3に示すように副ラジエータ62へ向かって流れる。
【0031】
流出部66は、主冷却流路50との接続部であり、副冷却流路60から主冷却流路50へ冷却水を流出させる。流出部66は、主冷却流路50においてポンプ53の上流側に位置している。なお、
図3に示すように、第1水冷式インタークーラ23及び第2水冷式インタークーラ25を通過した冷却水が、流出部66へ流れる。
【0032】
弁67は、副冷却流路60において第1水冷式インタークーラ23の出口側に設けられている。弁67は、例えば第1水冷式インタークーラ23から流出部66へ流れる冷却水の流量を調整する。
【0033】
ところで、副冷却流路60には、ポンプ53が設けられた主冷却流路50とは異なり、ポンプが設けられていない。副冷却流路60を流れる冷却水は、ポンプ53によって循環される。すなわち、ポンプ53が動作することで、主冷却流路50の冷却水が流入部65を介して副冷却流路60へ送り出され、副冷却流路60を流れる冷却水が流出部66を介して主冷却流路50へ戻される。このように副冷却流路60にポンプを設けないことで、部品コストを低減でき、またポンプのメンテナンスも軽減できる。
【0034】
また、上述した三方弁64を設けることによって、ポンプ53によって副冷却流路60を循環する冷却水の流れを調整できる。例えば、三方弁64は、エンジン10の負荷に応じて、副ラジエータ62で冷却される冷却水の流量を調整する。例えば、三方弁64は、エンジン10の負荷が小さい場合には、冷却水の流量を少なくし、エンジン10の負荷が大きい場合には、冷却水の流量を多くする。これにより、吸気の温度が悪化することを抑制できる。また、エンジン10の暖機時には、三方弁64によって冷却水を迂回流路63に流させることで、副ラジエータ62による冷却水の冷却を抑制できるので、暖機を促進できる。
【0035】
制御部90は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを備えた電子制御装置(Electric Control Unit)であり、冷却システム1の動作全体を制御する。制御部90は、エンジン10の動作状態等に応じて、ポンプ53、三方弁54、弁55、三方弁64、弁67の動作を制御する。例えば、制御部90は、エンジン10の負荷やエンジン10の暖機状態に応じて三方弁64の動作を制御して、副ラジエータ62による冷却水の冷却を調整する。
【0036】
<本実施形態における効果>
上述した冷却システム1においては、主冷却流路50にポンプ53が設けられている一方で、副冷却流路60にはポンプが設けられていない。そして、ポンプ53が、主冷却流路50から副冷却流路60へ冷却水を向かわせ、かつ副冷却流路60から主冷却流路50へ冷却水を戻させる。また、副冷却流路60には、副ラジエータ62を迂回する迂回流路63と、迂回流路63を流れる冷却水の流量を調整する三方弁64が設けられている。
上記の構成によれば、主冷却流路50だけでなく副冷却流路60を流れる冷却水が、一つのポンプ53によって循環されることによって、副冷却流路60に専用のポンプを設ける必要がなくなるので、部品コストを低減できる。また、三方弁64を設けたことによって、ポンプ53によって副冷却流路60を循環する冷却水の流れを調整できる。このように、本実施形態の冷却システム1によれば、簡易な構成で、主冷却流路50及び副冷却流路60の冷却水を適切に循環させることができる。
【0037】
なお、上記では、2つの過給機と2つの水冷式インタークーラが設けられていることとしたが、これに限定されない。例えば、過給機と水冷式インタークーラがそれぞれ一つずつ設けられていてもよい。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0039】
1 冷却システム
10 エンジン
23 第1水冷式インタークーラ
25 第2水冷式インタークーラ
50 主冷却流路
52 主ラジエータ
53 ポンプ
60 副冷却流路
62 副ラジエータ
63 迂回流路
64 三方弁
65 流入部
66 流出部