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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/10 20060101AFI20220913BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20220913BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20220913BHJP
   H01G 9/10 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01G2/10 301
H01G2/06 A
H01G9/08 C
H01G9/10 E
H01G9/10 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018070796
(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2019186245
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 竜太
(72)【発明者】
【氏名】仲田 光一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 庸平
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-269081(JP,A)
【文献】特開平06-338439(JP,A)
【文献】実開昭51-162949(JP,U)
【文献】特開平08-078287(JP,A)
【文献】特開2001-110671(JP,A)
【文献】実公昭54-000977(JP,Y1)
【文献】特開平08-115842(JP,A)
【文献】特開2001-110693(JP,A)
【文献】実開昭53-150433(JP,U)
【文献】特開2012-174972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/10
H01G 2/06
H01G 9/08
H01G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封口部材を含むコンデンサ本体と、該コンデンサ本体の封口部材側に設置される台座を含むコンデンサの製造方法であって、
樹脂注入孔を備える台座を形成する工程と、
前記台座をコンデンサ本体の封口部材側に設置し、前記台座と前記封口部材の間に隙間を形成する工程と、
第1の温度且つ常温Tnである40[℃]以上、第2の温度T 2 である60[℃]以下の温度であって、前記封口部材の膨張が抑制される膨張抑制温度で流動性を有し、前記膨張抑制温度で硬化する樹脂を形成し、該樹脂を前記樹脂注入孔から前記隙間に注入する工程と、
前記膨張抑制温度で前記樹脂を硬化する工程と、
を含み、前記第2の温度T 2 は、前記封口部材の線膨張係数をα、常温Tnにおける前記封口部材の直径をDnとして、前記封口部材の線膨張量ΔLが以下の数式に示されている値となるように設定されることを特徴とするコンデンサの製造方法。
ΔL=α×(T 2 -Tn)×Dn=0.05[mm]
【請求項2】
前記樹脂の線膨張係数が20~25[ppm/k]であり、前記封口部材の線膨張係数が100~150[ppm/k]であることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂は、複数の液を混合することで硬化する複数液混合樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント基板等の配線板に実装されるコンデンサに関し、たとえば、金属製外装ケースを封止する封口部材側に台座が配置されたコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサを配線板に実装するには、たとえばコンデンサが台座を備え、台座の外側面に引き出されて折り曲げられた端子リードを配線板にはんだ付けする実装手段が用いられる。このような実装に用いられるコンデンサは、表面実装型のコンデンサと呼ばれている。この表面実装型のコンデンサの汎用性は高く、たとえば自動車に用いられる。
【0003】
コンデンサが自動車内などの屋外に設置されると、コンデンサの設置周囲の環境温度が上昇する。このため、コンデンサは、高温度環境に耐える必要がある。たとえば、コンデンサの封口体と台座の間に樹脂層を形成し、コンデンサの密閉性が高められる(たとえば、特許文献1)。このコンデンサの樹脂層は、次のように形成される。コンデンサの封口ゴムと台座の間にエポキシ樹脂が注入され、このエポキシ樹脂が85[℃]の雰囲気中で約1時間加熱され、硬化する。この台座を設けたコンデンサでは、台座に挿通孔が形成され、コンデンサの端子リードが挿通孔を通って台座の外側に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-338439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂が注入された後、コンデンサを加熱してこの樹脂を硬化させると、加熱の温度によっては、加熱により封口部材が膨張した状態で樹脂が硬化し、膨張した状態の封口部材に沿った形状を有する樹脂層が形成される。加熱後の冷却により封口部材が収縮すると、膨張した状態の封口部材に沿った形状を有する硬化した樹脂層が封口部材から剥離する場合がある。また、加熱により液状にされた樹脂がコンデンサに注入されると、加熱の温度によっては、加熱や加熱後の冷却により、封口部材の膨張や収縮が大きくなり、樹脂層が封口部材から剥離するという課題がある。
【0006】
特許文献1には、斯かる課題の開示や示唆はなく、特許文献1に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0007】
そこで、本開示は、上記課題に鑑み、樹脂層および封口部材に残留する収縮力を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の側面は、封口部材を含むコンデンサ本体と、該コンデンサ本体の封口部材側に設置される台座を含むコンデンサの製造方法であって、樹脂注入孔を備える台座を形成する工程と、前記台座をコンデンサ本体の封口部材側に設置し、前記台座と前記封口部材の間に隙間を形成する工程と、第1の温度且つ常温Tnである40[℃]以上、第2の温度T 2 である60[℃]以下の温度であって、前記封口部材の膨張が抑制される膨張抑制温度で流動性を有し、前記膨張抑制温度で硬化する樹脂を形成し、該樹脂を前記樹脂注入孔から前記隙間に注入する工程と、前記膨張抑制温度で前記樹脂を硬化する工程とを含み、前記第2の温度T 2 は、前記封口部材の線膨張係数をα、常温Tnにおける前記封口部材の直径をDnとして、前記封口部材の線膨張量ΔLが以下の数式に示されている値となるように設定される。
ΔL=α×(T 2 -Tn)×Dn=0.05[mm]
【0011】
上記樹脂の線膨張係数が20~25[ppm/k]であってもよく、上記封口部材の線膨張係数が100~150[ppm/k]であってもよい。
【0012】
上記樹脂は、複数の液を混合することで硬化する複数液混合樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、封口部材の膨張が抑制される膨張抑制温度で流動性を有する樹脂を用いるので、樹脂の注入の開始から樹脂の硬化の終了までの間、封口部材の温度を膨張抑制温度以下に抑制することができる。樹脂および封口部材の膨張または収縮が抑制され、樹脂層および封口部材に残留する収縮力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係るコンデンサの製造工程のうち、台座の取付け以降の製造工程の一例を示す図である。
図2】コンデンサの製造工程うち、コンデンサ本体の形成までの製造工程の一例を示す図である。
図3】コンデンサの台座の一例を示す図である。
図4】台座の斜視図である。
図5】コンデンサの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。

実施の形態
【0017】
実施の形態について、図1ないし図5を参照して説明する。図1は実施の形態に係るコンデンサの製造工程の一例を示している。このコンデンサの製造工程は、本発明のコンデンサの製造方法の一例である。この製造工程により製造されるコンデンサ2は、電子部品の一例であり、たとえば電解コンデンサや電気二重層コンデンサであって、コンデンサ本体4、台座6および樹脂層8を含み、台座6は、コンデンサ本体4が含む封口部材10側に設置され、樹脂層8は、コンデンサ本体4の封口部材10と台座6の間に形成される。コンデンサの製造工程は、コンデンサ本体4の形成工程、台座6の形成工程、台座6をコンデンサ本体4に取付ける取付工程、樹脂の注入工程、および樹脂の硬化工程が含まれる。図1において、コンデンサ本体4の形成工程および台座6の形成工程は省略されている。図1では、上下方向に2分割したコンデンサ2の端面が示されている。
【0018】
コンデンサ本体4の形成工程では、コンデンサ本体4が形成され、台座6の形成工程では、台座6が形成される。台座6は、たとえば射出成形などの樹脂成形や三次元プリントにより形成される。台座6は絶縁合成樹脂などの絶縁板で形成される。この絶縁合成樹脂は、配線板に実装する際の加熱に耐える程度の耐熱性を有していればよく、たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ユリア樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フェノール樹脂、またはエポキシ樹脂である。
【0019】
台座6の取付け工程では、図1のAに示すように、台座6をコンデンサ本体4の封口部材10側に取付ける。封口部材10は絶縁性ゴムなどのゴムで形成されている。この取付工程では、コンデンサ本体4の封口部材10の一部または外装ケース12が台座6に接触し、コンデンサ本体4の封口部材10と台座6の間に隙間SPが形成される。
【0020】
樹脂の注入工程では、膨張抑制温度で流動性を有する樹脂が形成され、膨張抑制温度の樹脂が、たとえばディスペンサを用いて、図1のBに示すように、台座6の樹脂注入孔14から封口部材10と台座6の間の隙間SPに注入され、隙間SPを樹脂で充填する。注入される樹脂は、初期状態において、膨張抑制温度で流動性を有し、膨張抑制温度で硬化する樹脂である。膨張抑制温度は、封口部材10の膨張が抑制される温度であり、第1の温度以上、第2の温度以下の温度である。第1の温度は、たとえば常温Tn(23[℃])である。封口部材10の線膨張係数をα、常温Tnにおける封口部材10の直径をDn、第2の温度T2における封口部材10の直径をDとして、第2の温度T2は、封口部材10の線膨張量ΔLが以下の式(1)に示されている値となるように設定される。
ΔL=D-Dn=α×(T2-Tn)×Dn=0.05[mm] ・・・・(1)
封口部材10が異なる材料を含む積層体である場合には、たとえば、樹脂が接触する表面での線膨張係数を用いて第2の温度T2が設定される。膨張抑制温度は、たとえば40[℃]以上、60[℃]以下の温度である。
【0021】
注入に用いられる樹脂は、既述の温度特性を有し、台座6、外装ケース12および封口部材10に対して親和性があり、気体の遮断性を有していればよく、たとえば、二液混合エポキシ樹脂などの二液混合樹脂、既述の膨張抑制温度で流動性を有する熱可塑性樹脂、または既述の膨張抑制温度で硬化する熱硬化性樹脂である。二液混合樹脂は、複数の液を混合することで硬化する複数液混合樹脂の一例であり、液状の本剤に液状の硬化剤を一定の割合で混合する。二液混合樹脂は、混合からしばらくの間、流動性を有し、その後、たとえば常温で硬化する。したがって、本剤に硬化剤を混合して得られる混合液を樹脂注入孔14から注入し、この混合液を常温で硬化させて樹脂層8を形成することができる。つまり、二液混合樹脂を用いると、樹脂の注入工程および硬化工程において、加熱処理を伴わずにまたはわずかな加熱処理を伴って、樹脂層8を得ることができる。
【0022】
注入に用いられる樹脂は、封口部材10の線膨張係数αに近い線膨張係数を有するのが好ましい。封口部材10の線膨張係数αは、たとえば100~150[ppm/k]であり、注入に用いられる樹脂の線膨張係数は、たとえば20~25[ppm/k]である。樹脂および封口部材10の線膨張係数の差が小さいと、樹脂の硬化工程における樹脂および封口部材10の収縮差が小さくなり、樹脂層8と封口部材10の界面付近における収縮力のばらつきが抑制され、この界面を安定させることができる。
【0023】
注入に用いられる樹脂は、アルミニウムの線膨張係数(約23×10-6/℃)に近い線膨張係数を有し、硬化する際の収縮量が少なく、非吸湿性を有していてもよい。
【0024】
樹脂の硬化工程では、図1のCに示すように、コンデンサ2が放置される。この樹脂の硬化工程では、コンデンサ2の温度が、既述の膨張抑制温度に維持される。樹脂の硬化工程における膨張抑制温度は、樹脂の注入工程における膨張抑制温度と同じ温度であってもよく、異なる温度であってもよい。注入された樹脂が硬化し、コンデンサ本体4と台座6の間で樹脂層8を形成する。この樹脂層8は、コンデンサ本体4と台座6とを密着させ、台座6とともにコンデンサ本体4の封口部を封止する。
【0025】
このコンデンサの製造工程では、樹脂が膨張抑制温度で注入され、この膨張抑制温度と同じ膨張抑制温度または異なる膨張抑制温度で硬化されるので、樹脂の注入の開始から樹脂の硬化の終了までの間、封口部材10の温度を膨張抑制温度以下に抑制することができる。樹脂および封口部材10の膨張または収縮が抑制され、樹脂層8および封口部材10に残留する収縮力などの残留応力を抑制することができる。また、台座6は、たとえば封口部材10の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有するので、台座6の膨張量または収縮量が小さく、台座6、樹脂層8および封口部材10の密閉性が高められる。
【0026】
図2は、コンデンサの製造工程のうち、コンデンサ本体の形成までの製造工程の一例を示している。
【0027】
コンデンサ本体4の形成工程では、図2のAに示すように、端子リード16-1を接続した陽極箔と端子リード16-2を接続した陰極箔の間にセパレータを介在させて巻回して、コンデンサ素子17を形成する。端子リード16-1、16-2は、コンデンサ素子17の同一素子面より導出される。このコンデンサ素子17に電解液を含浸させ、図2のBに示すように、コンデンサ素子17の端子リード16-1、16-2に封口部材10の貫通孔を貫通させ、封口部材10をコンデンサ素子17に取り付ける。図2のCに示すように、コンデンサ素子17を外装ケース12に封入後、外装ケース12の外側面での加締めにより、外装ケース12の開口部に封口部材10を固定し、コンデンサ本体4が形成される。外装ケース12は、たとえば有底筒状のアルミニウムケースであり、外装ケース12の開放端は、カーリング処理されている。このカーリング処理された外装ケース12の開放端と封口部材10により、コンデンサ本体4の封口部が形成される。
【0028】
本実施の形態では、コンデンサ素子17に電解液を含浸して電解コンデンサを形成したが、これに限らず、導電性高分子を含浸させて固体電解質層を形成したコンデンサ素子17を用いて固体電解コンデンサとしてもよいし、導電性高分子を含浸したコンデンサ素子17に電解液を含浸させるハイブリッド型コンデンサとしてもよい。
【0029】
図3および図4は、台座6の形成工程で形成される台座6の一例を示している。図3のAは、台座6の平面図であり、コンデンサ本体4に設置される本体設置面であって、台座6の封口部材側の面部を示している。図3のBは、図3のAにおけるB-B線断面を示している。図3のCは、台座6の底面図であり、本体設置面の対向面(反対面)であって、台座6の外側面を示している。図4は、台座6の斜視図である。図5は、コンデンサの製造工程で製造されるコンデンサの一例を示している。
【0030】
台座6は、樹脂注入孔14と、挿通孔18-1、18-2と、突出部20と、周壁22と、支持突部24とを備える。
【0031】
樹脂注入孔14は、挿通孔の一例であり、樹脂の注入に用いられる。
【0032】
挿通孔18-1、18-2は、コンデンサ本体4から突出している一対の端子リード16-1、16-2を挿通する。つまり、台座6の取付けにおいて、一対の端子リード16-1、16-2は、一対の挿通孔18-1、18-2を貫通し、台座6の外側に引き出される。
【0033】
突出部20は、挿通孔18-1、18-2に向かう樹脂を遮る遮断壁の一例であり、挿通孔18-1、18-2の周囲に配置され、挿通孔18-1、18-2を囲う。突出部20は、図5に示すように、コンデンサ2において、封口部材10に対向し、突出部20に隣接する樹脂層8と挿通孔18-1、18-2とを隔てる。
【0034】
図3のAに示すように、突出部20は、挿通孔18-1および挿通孔18-2を囲う端部と、これらの端部間、つまり挿通孔18-1と挿通孔18-2の間に配置される中央部を備える。突出部20の中央部は、突出部20の端部よりも狭い幅を有し、くびれている。このくびれにより、樹脂層8の形成領域が拡大され、コンデンサの密閉性が高められている。突出部20の中央部は、溝部34を含んでいる。この溝部34は、台座6と封口部材10の間に充填される樹脂の流路を形成する。突出部20の各端部は、たとえば二本の溝部36を含んでいる。各溝部36は、挿通孔18-1、18-2のいずれかに接続している。コンデンサ本体4と台座6を取り付けたとき、突出部20の上表面と封口部材10が接触し、隙間SPと挿通孔18-1、18-2は隔離されるが、溝部36によって、通気路を形成し、樹脂注入により押し出される空気を、溝部36を通して外部に排出する。溝部36の幅、深さ、設置間隔または設置個数を変更することにより、各通気路の開口面積および通気路全体の開口面積を管理および調整することができ、空気の通過を許容しつつ、挿通孔18-1、18-2への樹脂の侵入を容易に抑制することができる。溝部36の幅、深さ、設置間隔および設置個数は、空気の通過および樹脂の侵入抑制を考慮して適宜設定すればよい。たとえば、樹脂注入孔14側の突出部20には溝部36を形成せず、樹脂注入孔14側に対して反対側の突出部20のみに溝部36を形成する。この反対側の突出部20のみに溝部36を形成する場合、樹脂の流れの上流に溝部36が形成されていないので、樹脂が溝部36を通じて挿通孔18-1、18-2から出る可能性が低下するとともに、溝部36を通じて挿通孔18-1、18-2から空気を排出することができる。
【0035】
突出部20の高さは、図5に示すように、たとえば封口部材10の外表面と外装ケース12の開放端の高低差に支持突部24の高さを加えて得られる高さHに設定される。突出部20が高さHを有すると、外装ケース12の開放端と台座6の支持突部24が接触するとともに、台座6の突出部20と封口部材10とが接触する。外装ケース12および突出部20が支持部として機能することにより、台座6の設置が安定するとともにコンデンサ本体4が周囲部と中央部の両方で支持される。また、封口部材10に接触する突出部20は、樹脂層8を形成する樹脂が挿通孔18-1、18-2に侵入するのを高い水準で抑制することができる。
【0036】
突出部20は、高さHよりも低くてもよく、高くてもよい。高さHよりも低い突出部20は、樹脂層8を形成する樹脂が挿通孔18-1、18-2に侵入するのを抑制することができる。高さHよりも高い突出部20は、封口部材10と接触し、樹脂層8を形成する樹脂が挿通孔18-1、18-2に侵入するのを高い水準で抑制することができる。
【0037】
周壁22は、図5に示すように、コンデンサ2において、外装ケース12の開放端の外側に配置されるとともに、外装ケース12の開放端を囲う。周壁22の内側面は、有底筒状の外装ケース12の外周に沿わせるため、図3のAに示すように、円形状を有する。周壁22の内側面は、外装ケース12の外周より大きくてもよい。また、周壁22は、図3のBに示すように、突出部20より低くてもよく、突出部20と同じ高さまたは突出部20より高くてもよい。
【0038】
支持突部24は、外装ケース12の先端部を支持する突出部の一例であって、不連続に形成される。支持突部24は、図5に示すように、コンデンサ2において、樹脂層8に隣接し、外装ケース12の先端部に接触する。支持突部24の形成部分では、外装ケース12の先端部の第1部分が台座6の支持突部24に接触し、支持突部24の分断部分では、外装ケース12の先端部の第2部分が台座6から離間し、外装ケース12の先端部と台座6の間に隙間SPが形成される。この外装ケース12の先端部と台座6の間の隙間SPは、台座6の周壁22と外装ケース12の外周面の間に樹脂を流入するための樹脂経路26を形成する。支持突部24を備えることで、樹脂が外装ケース12と台座6の間の隙間SPを通り、周壁22と外装ケース12の外周面の間に到達する。周壁22と外装ケース12の間および台座6と外装ケース12の先端部の間に樹脂が充填され、樹脂によるコンデンサ2の密閉性を高めることができる。
【0039】
図3のAに示すように、挿通孔18-1と挿通孔18-2を結ぶ仮想線L1と挿通孔18-1と挿通孔18-2の中間点Oを想定する。台座6は、この中間点Oを通り仮想線L1に直交する中心線L2上に既述の樹脂注入孔14を含み、さらに、この中心線L2上に貫通孔40および突出部42を含む。樹脂注入孔14および貫通孔40は互いに離れ、中間点Oは樹脂注入孔14と貫通孔40の間に配置される。樹脂注入孔14および貫通孔40は、いずれも挿通孔18-1、18-2から等距離に形成されている。
【0040】
貫通孔40は、たとえば注入された樹脂が最後に流れ込む終端部に形成される。貫通孔40は、たとえば終端部に到達した樹脂の確認に用いられるほか、樹脂の注入により押し出される空気の排出に用いられる。この貫通孔40により樹脂の充填状態の確認が容易になるとともに、空気の排出が容易になる。
【0041】
突出部42は、貫通孔40の縁部に沿うように配置され、貫通孔40の周囲を部分的に囲っている。この突出部42は、貫通孔40の部分的な包囲により、樹脂注入孔14から注入される樹脂が封口部材10と台座6との間に充填される前に、貫通孔40が塞がることを抑制する。つまり、貫通孔40に樹脂が最後に流れ込むように突出部42で囲うことで、空気の残留を抑制しつつ、封口部材10と台座6の間に樹脂を充填することができる。また、突出部42が貫通孔40の縁部に隣接し、この縁部から離れていないので、貫通孔40と突出部42の間に気泡が残留することが抑制される。
【0042】
樹脂注入孔14から注入された樹脂は、樹脂注入孔14を中心とする同心円状に広がる。突出部20に向かう樹脂は、樹脂注入孔14と突出部20の間を埋めるとともに、溝部34または突出部20と周壁22の間を通って流れる。その他の樹脂は、樹脂注入孔14の周りを埋めるとともに、突出部20と周壁22の間を通って流れる。樹脂は、台座6と封口部材10の間の隙間SPを埋めながら下流に進み、最終的には、貫通孔40に到達する。
【0043】
樹脂の一部が溝部34を通って突出部20と突出部42の間の隙間SPに到達するので、突出部20の周りを通る樹脂が二方向からこの隙間SPに到達する前に、この隙間SPを樹脂で埋めることができ、二方向からの樹脂の到達による空気の残留を抑制することができる。
【0044】
コンデンサ2において、端子リード16-1、16-2は、図5に示すように、台座6の挿通孔18-1、18-2にそれぞれ挿入され、台座6に形成されたガイド溝32-1、32-2に沿って相反方向に折り曲げられている。
【0045】
端子リード16-1、16-2は導電性のよい金属から形成されている。端子リード16-1は陽極側端子であって、コンデンサ素子17の陽極箔から引き出されるリード部と配線板30に実装される端子部とを備え、これらが溶接などにより接続されて一体化したものである。
【0046】
端子リード16-2は陰極側端子であって、コンデンサ素子17の陰極箔から引き出されるリード部と配線板30に実装される端子部とを備え、端子リード16-1と同様に、これらが溶接などにより接続されて一体化したものである。リード部はたとえば円柱状であり、端子部は、たとえば配線板30への実装面側を平坦化し、断面を矩形形状にしたものである。
【0047】
そして、端子リード16-1、16-2の端子部が、台座6に形成されたガイド溝32-1、32-2に沿って相反方向に折り曲げられて台座6のガイド溝32-1、32-2に配置されている。このような構成において、台座6は端子リード16-1、16-2の配置を規制し、コンデンサ2の端子板として機能する。なお、ガイド溝32-1、32-2に代えて、ガイド突起を台座6の配線板30への実装面側に設けてもよい。この場合、端子リード16-1、16-2の端子部は、台座6に形成されたガイド突起に沿って相反方向に折り曲げられる。ガイド突起は、端子リード16-1、16-2の端子部をガイドし、折り曲げられた端子リード16-1、16-2の周囲に設けられることで、実装時のコンデンサ2の安定性を確保することができる。
【0048】
この実施の形態について、特徴事項、利点または変形例などを以下に列挙する。
【0049】
(1) 既述のコンデンサの製造方法では、樹脂が既述の膨張抑制温度で台座6の樹脂注入孔14からコンデンサ本体4と台座6の間の隙間SPに注入されるので、封口部材10の温度上昇が抑制され、樹脂注入時の封口部材10の膨張およびその後の収縮を抑制することができる。また、注入された樹脂は、既述の膨張抑制温度で硬化させるので、封口部材10の温度上昇が抑制され、樹脂硬化時の封口部材10の膨張およびその後の収縮を抑制することができる。これらの膨張および収縮の抑制により、樹脂が硬化し樹脂層8を形成するときの封口部材10の膨張と収縮を抑制し、樹脂層8と封口部材10の剥離を抑制できる。
【0050】
(2) 膨張または収縮の抑制により、台座6、樹脂層8および封口部材10相互の密閉性が高められ、電解液の蒸散抑止構造を実現できる。その結果、高温環境下でのコンデンサの使用であっても一定のコンデンサ寿命を得ることができる。
【0051】
(3) 台座6に突出部20が形成されるので、挿通孔18-1、18-2への樹脂の侵入が妨げられ、挿通孔18-1、18-2からの樹脂流出を抑制することができる。樹脂充填量の低下やばらつきが抑制され、コンデンサの品質を一様にすることができる。突出部20は、挿通孔18-1、18-2を囲えばよく、既述の形状に限定されることなく、適宜変更してもよい。たとえば、突出部20は挿通孔18-1、18-2を囲うような形状であったが、挿通孔18-1、18-2をそれぞれ個別に囲うように二つの突出部を形成し、この二つの突出部の間に樹脂通路を備えてもよい。このような台座6の形状であっても、樹脂が挿通孔18-1、18-2に向かうことが妨げられるとともに、樹脂が突出部の間の樹脂通路を通って流れることができ、隙間SPを樹脂で埋めることができる。また、突出部20と突出部42を一体として、突出部20が挿通孔18-1、18-2および貫通孔40を囲ってもよい。
【0052】
(4) 実施の形態に示した台座6は一例であり、突出部20、支持突部24、貫通孔40、突出部42などの要素は省略してもよい。台座6が樹脂注入孔14を有していれば、膨張抑制温度で樹脂を注入することができ、樹脂や封口部材10に残留する収縮力を抑制することができる。
【0053】
(5) 台座6の外側面から樹脂で挿通孔18-1、18-2を埋めるようにしてもよい。挿通孔18-1、18-2と端子リード16-1、16-2の間が樹脂で埋まり、密閉性を更に高めることができる。
【0054】
(6) この実施の形態では、突出部42の形状は、樹脂注入孔14の中心と貫通孔40の中心を結ぶ中心線に対して左右対称であるが、左右非対称であってもよい。左右非対称であっても樹脂が封口部材10と台座6の間に行き渡る前に、貫通孔40が樹脂で埋まることを抑制することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態などについて説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のコンデンサの製造方法は、広く電子機器に利用でき、有用である。
【符号の説明】
【0057】
2 コンデンサ
4 コンデンサ本体
6 台座
8 樹脂層
10 封口部材
12 外装ケース
14 樹脂注入孔
16-1、16-2 端子リード
17 コンデンサ素子
18-1、18-2 挿通孔
20、42 突出部
22 周壁
24 支持突部
26 樹脂経路
30 配線板
32-1、32-2 ガイド溝
34、36 溝部
38 樹脂注入孔
40 貫通孔
44 樹脂通路

図1
図2
図3
図4
図5