(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】グラビアまたはフレキソインキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20220913BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C09D11/102
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2018119495
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】成廣 治憲
(72)【発明者】
【氏名】小藤 通久
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-242674(JP,A)
【文献】特開平01-242673(JP,A)
【文献】特開平01-215876(JP,A)
【文献】特開平11-228655(JP,A)
【文献】特開2016-130297(JP,A)
【文献】特開2018-016708(JP,A)
【文献】特開2018-053014(JP,A)
【文献】特開2017-039896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂(A)、および有機溶剤を含有するグラビアまた はフレキソインキであって、
下記(1)~(4)の要件を満たす、グラビアまたはフレキソインキ。
(1)ポリウレタン樹脂(A)は、アゼライン酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエス テルポリオール由来の構造単位を含有
する。
(2)ポリウレタン樹脂(A)は
、総質量中にアゼライン酸由来の構造単位を10質量%以上含有す
る。
(3)バインダー樹脂は、更に、塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(B)を含有する。
(4)バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂(A)と樹脂(B)を、ポリウレタン樹脂(A)と樹脂(B)との質量比率(A):(B)が95:5~30:70となるよう含有する。
【請求項2】
ポリウレタン樹脂(A)は更にポリエーテルポリオール由来の構造単位を含有する、請求項1に記載のグラビアまたはフレキソインキ。
【請求項3】
基材1上に請求項1
または2に記載のグラビアまたはフレキソインキからなる印刷層 を有する印刷物。
【請求項4】
請求項
3に記載の印刷物の印刷層上に、更に基材2を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビアまたはフレキソインキおよびその印刷物に関するものである。
【0002】
より詳しくはバイオマス成分を構造単位として有するポリウレタン樹脂を含有するグラビアまたはフレキソインキに関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、石油化学資源の枯渇に対しての代替素材としてバイオマス由来の素材が注目を浴びている。中でも樹脂原料としてはバイオマスに由来するセバシン酸やコハク酸はそれらのポリエステル化合物を得ることができ、樹脂原料として有望である。しかしながら従来石油由来のポリエステル化合物はアジピン酸由来のものが殆どであり、アジピン酸系ポリエステル樹脂に対して性能面での大きな優位性がなく、案なる代替に留まり、別途バイオマス原料に起因してコストが高くなってしまう。
【0004】
ポリエステル化合物としては例えばポリエステルポリオールがあり、ポリウレタン樹脂のための製造原料として多く使用されている。また、ポリウレタン樹脂はグラビアまたはフレキソ印刷インキ用のバインダー樹脂として有用であり、柔軟かつ密着性が良いため、好んで使用されてきた(特許文献1および特許文献2)。一方で当該グラビアまたはフレキソインキもバイオマス化による環境対応の要望があり、例えばセバシン酸、コハク酸ポリエステルポリオールを使用したグラビアインキが検討されている(特許文献3)。
【0005】
グラビアまたはフレキソインキは高速印刷および巻取り方式で印刷方法の特徴から生産性が良く、高精細な絵柄を表現できるため産業上重要な印刷技術である。グラビアまたはフレキソインキはインキ粘度が比較的低く、また印刷機も大きいため印刷環境の温度・湿度要因を大きく受ける。またその印刷物およびラミネート積層体も置かれる温度の要因等で不具合が生じるケースがあり、例えば印刷作業の場合では印刷環境を空調管理して一定温度、一定湿度としてその問題に対応していた。
【0006】
中でも、印刷環境において室温が低温である場合にはグラビア印刷では版かぶり性、フレキソ印刷では版絡み性などの不具合が生じやすい。なおラミネート積層体では低温ではポリウレタン樹脂が硬くなるためラミネート強度が低下する傾向があるうえ、印刷物における残留溶剤も増加する傾向がある。従って国内では冬場、更に気候が低温である地域においての問題点とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-150941号公報
【文献】特開2018-44047号公報
【文献】特開2018-62642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温での印刷適性が良好であり、低温でのラミネート強度が良好である積層体のための、バイオマス由来のポリウレタン樹脂を含むグラビアまたはフレキソインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載のグラビアまたはフレキソインキを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂(A)、および有機溶剤を含有するグラビアまたはフレキソインキであって、
ポリウレタン樹脂(A)は、アゼライン酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、ポリウレタン樹脂(A)総質量中にアゼライン酸由来の構造単位を10質量%以上含有する、グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0011】
本発明は、ポリウレタン樹脂(A)は更にポリエーテルポリオール由来の構造単位を含有する、前記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0012】
本発明は、バインダー樹脂は、更に、塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂(B)を含有する、前記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0013】
本発明は、バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂(A)と樹脂(B)の質量比率(A):(B)が95:5~30:70で含有する、前記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0014】
本発明は、基材1上に前記グラビアまたはフレキソインキからなる印刷層を有する印刷物に関する。
【0015】
本発明は、前記印刷物の印刷層上に、更に基材2を有する積層体に関する。
関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、低温での印刷適性が良好であり、低温でのラミネート強度が良好である積層体のための、バイオマス由来のポリウレタン樹脂を含むグラビアまたはフレキソインキ提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0018】
本発明のグラビアまたはフレキソインキについて説明する。以下でグラビアまたはフレキソインキは単に「インキ」と略称する場合があるがグラビアまたはフレキソインキと同義である。また、グラビアまたはフレキソインキからなる印刷層は、「印刷層」、「インキ層」あるいは「インキ被膜」と称する場合があるがグラビアまたはフレキソインキからなる印刷層と同義である。
【0019】
本発明はバインダー樹脂としてポリウレタン樹脂(A)、および有機溶剤を含有するグラビアまたはフレキソインキであって、
ポリウレタン(A)総質量中に、アゼライン酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、ポリウレタン樹脂(A)総質量中にアゼライン酸由来の構造単位を10質量%以上含有する、グラビアまたはフレキソインキである。
アゼライン酸は植物油や動物油に由来する脂肪酸から得られる二塩基酸であり、特徴的な特性を有する。二塩基酸はカルボキシル基間の炭素数に偶奇性があり、融点などに現れる。例えばカルボキシル基間の炭素数が7であるアゼラインの融点は106℃である一方、カルボキシル基間の炭素数が6であるスベリン酸の融点は144℃、カルボキシル基間の炭素数が8であるゼバシン酸の融点は135℃である。そのためアゼライン酸とジオールからなるポリエステルポリオールは柔軟かつ強靭であり、特に低温特性に優れたポリウレタン樹脂を得ることが可能である。更に後述の樹脂(B)と併用することでグラビアまたはフレキソインキとしてより良好な低温特性を発現する。なお、アゼライン酸由来構造を含有しない場合にはこのような特徴は得られにくい傾向がある。
【0020】
<バインダー樹脂>
本明細書においてバインダー樹脂とは、グラビアまたはフレキソインキにおける結着樹脂をいい、以下のポリウレタン樹脂(A)を含有する。バインダー樹脂はインキ総質量中に2~15質量%含有することが好ましく、バインダー樹脂総質量中にポリウレタン樹脂は40質量%以上含有することが好ましい。
【0021】
<ポリウレタン樹脂(A)>
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、アゼライン酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、ポリウレタン樹脂(A)総質量中にアゼライン酸由来の構造単位を10質量%以上含有する。当該構造単位は、下記化学式(1)で表され、エステル構造を形成する構造単位であって、単一のポリエステルポリオールに含まれるものであってもよいし、数種併用したポリエステルポリオールに含まれるものであってもよい。
【0022】
(化学式(1))
【化1】
化学式(1)で表される構造の含有量としてはポリウレタン樹脂(A)中に15~45質量%であることが好ましく20~40質量%がより好ましく、25~40質量%が更に好ましい。下記樹脂(B)との組み合わせで低温での印刷適性および低温でのラミネート強度等が向上するためである。なお、化学式(1)で表されるエステル構造の含有量は、合成時の配合量より算出できる。
【0023】
また、ポリウレタン樹脂(A)は上記ポリエステルポリオール由来の構造単位をポリウレタン樹脂(A)総質量中に15~75質量%含有することが好ましく、20~75質量%含有することがより好ましく、30~60質量%含有することが更に好ましい。当該ポリウレタン樹脂(A)は、更に水酸基価を有することが好ましく、1~30mgKOH/gであることが好ましく、2~20mgKOH/gであることがより好ましい。有機溶剤への親和性および後述の樹脂(B)との親和性を生むためである。
また、アミン価を有することが好ましく、0.5~15mgKOH/gであることが好ましく、1~10mgKOH/gであることがより好ましい。
【0024】
上記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールを含むポリオールと、の反応物であるポリウレタン樹脂(A)であることが好ましく、ポリイソシアネートと当該ポリオールによりウレタンプレポリマーとして、更にポリアミンを用いて鎖延長されたポリウレタン樹脂(A)であることがより好ましい。
【0025】
<アゼライン酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール>
上記ポリエステルポリオールは、数平均分子量が500~5000であることが好ましい。なお、数平均分子量は以下の式(1)で得られ、価数とはポリオール一分子に有する水酸基の平均個数であり、水酸基価は試料 1g をアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数をいう。
式(1) 数平均分子量=1000×56.1×水酸基の価数/水酸基価
上記ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールを構成する二塩基酸のうち、アゼライン酸以外の二塩基酸(その他二塩基酸という)を含んでもよいが、ポリエステルポリオールを構成する二塩基酸の総質量中に、アゼライン酸を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することがさらに好ましい。その他二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ダイマー酸より選ばれる少なくとも一種の二塩基酸が好ましい。
【0026】
(ジオール)
上記ポリエステルポリオールを構成するジオールとしてはエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられ、低温における印刷適性および低温におけるラミネート強度等の物性が得られやすいので、分岐状ジオールであることが好ましい。分岐状ジオールとはアルキレンジオールの有するアルキレン基の水素原子のうち、少なくとも一つがアルキル基で置換されたジオールをいう。具体的にはプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールから選ばれる少なくとも一種のジオールであることが好ましい。
【0027】
以下の説明において、「その他ポリエステルポリオール」とはアゼライン酸とジオールからなるポリエステル構造単位を含有しないポリエステルポリオールをいう。
【0028】
<その他ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールはアゼライン酸とジオールからなるポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオールと併用してもよい。その他ポリエステルポリオールとしてはアゼライン酸以外の二塩基酸とジオールの縮合物が好ましく、以下に具体的態様を示す。
その他ポリエステルポリオールを構成する二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸のうちの少なくとも1種または2種以上の使用が好ましい。また、ジオールとしては上記ジオールと同様のものが挙げられる。数平均分子量は上記式(1)から算出される値であり、500~5000であることが好ましい。
【0029】
<ポリエーテルポリオール>
ポリウレタン樹脂(A)はポリエーテルポリオールを使用することが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、およびそれらの共重合物が挙げられる。数平均分子量としては500~5000であることが好ましい。上記ポリエステルポリオール(その他ポリエステルポリオールも含む)とポリエーテルポリオールは質量比(ポリエステルポリオール:ポリエーテルポリオール)は60:40~95:5であることが好ましく、70:30~95:5であることがより好ましい。ポリウレタン樹脂総質量中には40~5質量%含有することが好ましい。30~10質量%含有することがより好ましい。
【0030】
<その他ポリオール>
ポリウレタン樹脂(A)は、上記ポリオール以外にその他ポリオールを使用することができる。以下に好ましい態様を示す。当該ポリオールはポリウレタン樹脂総質量中に15質量%以下で含有することが好ましく、10質量%以下で含有することがより好ましく、6質量%以下で含有することが更に好ましい。該当するポリオールとしては、分子量が200以下のジオールが好ましく、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状ジオール類、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、メチルノナンジオール等の分岐ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、などの脂環族ジオール類等が挙げられ、複数種併用しても良い。中でも、炭素数1から6のアルキル基を置換基として有する脂肪族ジオールは、基材への接着性を向上させ、またポリウレタンの溶解性を高めるため印刷適性が向上するため好ましい。より具体的には3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましく使用される。
【0031】
上記ポリイソシアネートは芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートを含むことが好ましい。当該ジイソシアネートは例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていてもよい。これらのポリイソシアネート種は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
上記ポリアミンは、イソシアネート基との反応でウレア結合を形成し、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’ -ジアミンなどが好適に挙げられる。
また、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることも好ましい。これらの有機ジアミンは単独または2種以上を混合して用いることができ、イソシアネート基との反応ではアミノ基と反応が極めて早いためポリウレタン樹脂(A)に水酸基を含有させることができるので好ましい。
中でもイソホロンジアミンおよび/または2-ヒドロキシエチルエチレンジアミンが好ましい。さらに、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン等のアミノ基数が3以上の多官能アミンを、上記有機ジアミンと併用することもできる。
【0033】
本発明において使用するポリウレタン樹脂(A)の製造は特段限定されるものではなく、例えば特開2016-150942号公報、特開2016-150944号公報、特開2013-213109または特開2017-31298号公報に記載の製造方法等を適宜使用することができる。
【0034】
<樹脂(B)>
上記ポリウレタン樹脂(A)に加えて、塩化ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびロジン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂(B)を含有することが好ましい。ポリウレタン樹脂(A)の有する柔軟性および低温特性に加え、樹脂(B)の有する強靭さで、併せてインキ被膜の強さや凝集力、低温での印刷適性およびラミネート強度を与えるためである。なお含有量はポリウレタン樹脂(A):樹脂(B)は95:5~30:70であることが好ましい。バインダー樹脂総質量中にポリウレタン樹脂(A)および樹脂(B)を合計で70~100質量%含有することが好ましく、85~100質量%含有することがより好ましい。
【0035】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂は塩化ビニルを主成分(当該樹脂の総質量中50質量%以上)とする樹脂であり、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂等が好適に挙げられる。
【0036】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂とは塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合した樹脂をいう。以下に好ましい態様を示す。
分子量としては重量平均分子量で5,000~70,000のものが好ましく、5,000~50,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。上記ポリウレタン樹脂(A)との併用で一体となった低温安定性を得るために、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂は水酸基価が20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は60℃~80℃であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)と塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の質量比(ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂)は95:5~30:70であることが好ましく、90:10~40:60であることがより好ましい。低温条件下でもインキの経時安定性および印刷適性が良好であり、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となるためである。
【0037】
<セルロース樹脂>
セルロース系樹脂とは、有機溶剤に可溶な繊維炭素系樹脂をいう。以下にその好ましい態様を示す。
セルロース樹脂は重量平均分子量が5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。当該セルロース樹脂としては、例えばニトロセルロース、またはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアセテートアルキレート類、またはヒドロキシアルキルセルロースもしくはカルボキシアルキルセルロース等のアルキルセルロース類が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。
なお、ニトロセルロースで窒素含有量が窒素分は10~13質量%であることが好ましい。低温条件下でもインキの経時安定性および印刷適性が良好であり、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となるためである。
【0038】
<ロジン樹脂>
本発明で使用するロジン樹脂とは、ロジン酸(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等)由来の構造単位を主成分(50質量%以上)として有するものをいう。ロジン酸またはロジン樹脂は水素化されていても良い。なお該ロジン樹脂の酸価は150mgKOH/g以下であることが好ましく、酸価としては100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。軟化点は60~180℃であることが好ましい。軟化点としては70~150℃であることがより好ましい。ロジン樹脂の種類としては例えばロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジン樹脂などが挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種のロジン樹脂であることが好ましい。なお、軟化点とは環球法による測定値をいう。軟化点は例えばJISK2207に記載の測定法により測定することができる。ロジンエステルの重量平均分子量としては500~3000であることが好ましい。1000~2000であることがより好ましい。ロジン樹脂が顔料表面を被覆して顔料分散安定性を高めるため、上記ポリウレタン樹脂(A)と組み合わせることで低温での印刷適性が良好となる。
【0039】
<顔料>
本発明のインキに使用される顔料としては、一般のインキ、塗料、および記録材などに使用されている有機、無機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系、カーボンブラックなどの顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。なお、カラーインデックスに収載のC.I.ピグメントとして記載されている顔料を随時使用することができる。なお、酸化チタンは、少なくともシリカまたはアルミナで表面被覆された酸化チタンが好ましい。
【0040】
これらの顔料は1種類、または2種類以上併用して用いることができる。上記顔料はインキ総質量中に2~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましい。
【0041】
<有機溶剤>
本発明のグラビアまたはフレキソインキは、顔料分散状態を維持させるために有機溶剤を含む。好ましくは、液状媒体の主成分が有機溶剤である有機溶剤型インキである。使用される有機溶剤としては、二種以上の有機溶剤からなる混合溶剤が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤が更に好ましい。また、印刷適性が向上するため、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の好ましい質量比率(エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤)は50/50~90/10である。
【0042】
<その他の添加剤>
その他、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、光安定化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などの添加剤を含むこともできる。
【0043】
<その他樹脂>
本発明におけるグラビアまたはフレキソインキには、本発明の効果を損なわない範囲で、その他樹脂を併用することができる。用いられる樹脂の例としては、上記記載以外のポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
<グラビアまたはフレキソインキの製造方法>
本発明におけるグラビアまたはフレキソインキは、顔料をポリウレタン樹脂(A)および必要に応じて塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散し、得られた顔料分散体にその他樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としてはサンドミルの使用が好ましい。また、本発明のグラビアまたはフレキソインキは粘度が40~600mPa・sであることが好ましい。
【0045】
<グラビアインキの印刷>
(グラビア版)
本発明においてグラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。
(印刷機)
本発明における印刷物は、グラビアインキにグラビア印刷機を用いて塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで得られる。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
【0046】
<フレキソインキの印刷>
(フレキソ版)
本発明においてフレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0047】
<基材1>
本発明のグラビアまたはフレキソインキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0048】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0049】
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0050】
<積層体>
本発明における積層体とは、少なくとも基材1、印刷層、基材2をこの順に有する積層体をいう。少なくとも基材1、印刷層、接着剤層、基材2をこの順に有する積層体の使用形態であることが好ましい。
本発明の積層体はグラビアまたはフレキソインキを印刷した印刷物の印刷層上に、接着剤層を設け、基材2と貼り合わせる(ラミネートする)ことで得られる。ラミネート加工の代表例として、ドライラミネート法等が挙げられる。ドライラミネート法とは、接着剤を印刷物の印刷層上に塗布・乾燥し、シーラントと熱圧着して積層する方法である。
【0051】
<接着剤層>
接着剤層は接着剤を塗布、乾燥して得られる。当該接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。具体的には東洋モートン株式会社製・TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および重量%を表わす。
【0053】
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0054】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0055】
(ガラス転移温度)
示差走査熱量計(DSC)測定によりベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とし、測定装置はリガク社製DSC8231を用いた。測定温度範囲は-100~200℃で行った。
【0056】
(軟化点)
樹脂の軟化点はJISK5902に記載の方法に従って求めた。
【0057】
(アゼライン酸とジオールからなるポリエステルポリオール)
以下のアゼライン酸とジオールからなるポリエステルポリオールは特開2016-150941号公報に記載の「ポリエステルポリオールの合成」の方法に従って合成した。
MPD/AZ:メチルペンタンジオールとアゼライン酸の縮合物である数平均分子量2000のポリエステルポリオール
NPG/AZ:ネオペンチルグリコールとアゼライン酸の縮合物である数平均分子量2000のポリエステルポリオール
MPO-BD/AZ:3-メチル-1,3-プロパンジオール(MPO)と1,4-ブタンジオール(BD)の混合ジオール(MPO:BD=9:1)とアゼライン酸の縮合物である数平均分子量3000のポリエステルポリオール
【0058】
(合成例1)[ポリウレタン樹脂(A)PU1]
MPD/AZ(メチルペンタンジオールとアゼライン酸の縮合物である数平均分子量2000のポリエステルポリオール)100部、1,4-ブタンジオール(「1,4BD」)を1部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)28.5部を酢酸エチル32.1部と混合し、90℃窒素雰囲気下で5時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーを得た。
次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)11部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下「AEA」)1.0部、ジブチルアミン(「DBA」)1.0部および酢酸エチルとイソプロパノール(質量比60:40)混合溶剤中に撹拌しておき、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、固形分30%、水酸基価3.8mgKOH/g、アミン価8.5mgKOH/g、重量平均分子量48000に調整したポリウレタン樹脂(A)溶液PU1を得た。
【0059】
(合成例2~8)[ポリウレタン樹脂(A)PU2~PU8]
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂(A)溶液PU2~PU8を得た。なお、表1中の略称は下記の通りである。
・MPD/AA:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物である数平均分子量2000のポリエステルポリオール
・PEG:数平均分子量1000のポリエチレングリコール
・PPG:数平均分子量1000のポリプロピレングリコール
【0060】
(比較合成例1および2)[ポリウレタン樹脂(A)PU1CおよびPU2C]
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ポリウレタン樹脂(A)溶液PU1CおよびPU2Cを得た。
【0061】
(実施例1)
[インキS1の作成]
ポリウレタン樹脂(A)溶液PU1(固形分30%)を40部、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインTA5R:日信化学工業社製 塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=88:1:11 ガラス転移温度78℃ 水酸基価90mgKOH/g (固形分30%酢酸エチル溶液))10部、C.I.ピグメントブルー(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFGシリーズ)10部、酢酸n-プロピル(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=70/30の混合溶剤40部をディスパーで10分間混合したのち、ビーズミルで20分間分散して、グラビアインキS1を得た。
【0062】
<インキS1のグラビア印刷>
上記で得られたインキS1を、混合溶剤(メチルエチルケトン「MEK」:Nプロピルアセテート「NPAC」:イソプロパノール「IPA」=30:40:30)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、ヘリオ175線ベタ版(版式コンプレスト、100%ベタ柄)により、二軸延伸ナイロン(NY)基材(N1102、東洋紡社製、膜厚15μm)のコロナ放電処理面に印刷速度100m/分、オーブン乾燥温度50℃、室内温度5℃にてグラビア印刷し、印刷物を得た。
<インキS1印刷物のドライラミネート加工>
上記印刷物の印刷層の上面に、ポリエステルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製 TM-550/CAT-RT37)を固形分30%の酢酸エチル溶液を、乾燥後の接着剤層が3.0g/m2となるように塗工・乾燥した後、接着剤層面に、厚さ50μmの未延伸ポリエチレン(PE)を貼り合わせてドライラミネート加工を行い、積層体を得た。当該積層体はNY基材/インキS1層/接着剤層/ポリエチレン基材層の順に構成された積層体である。
【0063】
(実施例2~24)[インキS2~S24の作成]
表2に示す原料を用いた以外は実施例1と同様の方法により、インキS2~S24を得た。更にそれら印刷物および積層体を得た。
なお、表2中の略称は以下を表す。
・VC-Ac:塩化ビニル-アクリル共重合樹脂 共重合成分としてアクリル酸ヒドロキシブチル成分を14質量%含有 ガラス転移温度65℃ 水酸基価60mgKOH/g 固形分30%酢酸エチル溶液
・NC1:ニトロセルロース 窒素含有量11% 固形分30質量%イソプロパノール溶液
・ハリエスターP:ロジン変性ペンタエリスリトールエステル 重量平均分子量1600 軟化点100℃ 酸価10mgKOH/g
【0064】
(比較例1~7)[インキT1~T7の作成]
表3に示す原料を使用する以外は、上記実施例1に記載の方法と同様の方法にてインキT1~T6を得た。更にそれら印刷物および積層体を得た。
なお、表3中の略称は以下を表す。
・Z-37:日立ケミカル社製 ポリエステル樹脂 ガラス転移温度50℃ 重量平均分子量40000
【0065】
(実施例25~27)
<インキS5、S16およびS21のフレキソ印刷>
上記インキS5、S16およびS21を、フレキソ版(感光性樹脂版 KODAK社製 FLEXCEL NXHデジタルフレキソプレート 版厚1.14mm 版線数150lpi)及びアニロックスロール(900lpi 3cc/m2)を具備したフレキソ印刷機(MIRAFLEX CM)にて、二軸延伸ナイロン(NY)基材(N1102、東洋紡社製、膜厚15μm)のコロナ放電処理面に速度150m/分にて5℃において印刷を行い、印刷物を得た。なお印刷層の乾燥条件は色間ドライヤー100℃、トンネルドライヤー100℃とした。
<ドライラミネート加工>
上記インキS5、S16およびS21を印刷した印刷物の印刷層の上面に、ポリエステルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製 TM-550/CAT-RT37)を固形分30%の酢酸エチル溶液を、乾燥後の接着剤層が3.0g/m2となるように塗工・乾燥した後、接着剤層面に、厚さ50μmの未延伸ポリエチレン(PE)を貼り合わせてドライラミネート加工を行い、積層体を得た。当該積層体はNY基材/インキS1層/接着剤層/ポリエチレン基材層の順に構成された積層体である。
【0066】
<評価>
実施例および比較例のインキ、印刷物および積層体を用いて、以下の評価を行った。表2-1、表2-2および表3に結果をそれぞれ示した。
【0067】
<低温経時安定性>
実施例および比較例で得たインキS1~S24およびT1~T7それぞれについて5℃で7日間保存し、保存前と保存後の状態観察および粘度測定により評価を行なった、なお粘度はザーンカップ#4にて流出秒数で確認を行った。
[評価基準]
A.液分離や沈殿が見られず、粘度変化が1秒未満(優良)
B.液分離がやや有るが、沈殿は無く、粘度変化が1秒以上2秒未満(良好)
C.液分離および沈殿が僅かに見られ、粘度変化は2秒以上5秒未満(実用可)
D.液分離および沈殿がやや見られ、粘度変化は5秒以上10秒未満(やや不良)
E.液分離および沈殿が激しく見られ、粘度変化は10秒以上(不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0068】
<低温版かぶり性>
実施例および比較例で得たインキS1~S24およびT1~T7それぞれについて混合溶剤(酢酸n-プロピル:メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール=40:40:20)にて、粘度をザーンカップNo.3で15秒に調整し、グラビア印刷機における版の空転90分後(5℃条件下)の、版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
[評価基準]
AA.版かぶり面積が無い(極めて良好)
A.版かぶり面積が2%未満である(優良)
B.版かぶり面積が2%以上5%未満であるもの(良好)
C.版かぶり面積が5%以上10%未満であるもの(実用可)
D.版かぶり面積が10%以上25%未満であるもの(やや不良)
E.版かぶり面積が25%以上であるもの(不良)
なお、AA、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0069】
<低温ラミネート強度>
実施例および比較例で得たインキS1~S24およびT1~T7を使用して得た積層体を5℃で7日間保存し、それぞれについて印刷部分を巾15mmで裁断し、インキ層と基材面で剥離させた後、剥離強度(ラミネート強度)を5℃の環境下でインテスコ社製201万能引張り試験機にて測定した。
[評価基準]
A.2.0N以上(優良)
B.1.5N以上2.0N未満(良好)
C.1.0N以上1.5N未満(実用可)
D.0.5N以上1.0N未満(やや不良)
E.0.5N未満(不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0070】
<低温版絡み性の評価>
インキS5、S16およびS21について、フレキソ印刷機で印刷速度150m/分で2000m印刷後の印刷部にて3%網点部の版絡み性を評価した。
[評価基準]
A.3%網点部の太りが見られず、画像が鮮明なである。(優良)
B.3%網点部に太りがやや認められるが、鮮明な画像が形成されている。(良好)
C.3%網点部に太りがやや認められるが、網点同士は繋がっていない。(実用可)
D.3%網点部の形状が崩れ、網点の繋がり(ドットブリッジ)または汚れが認められる。(不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0071】
<残留溶剤>
実施例および比較例で得たインキS1~S24およびT1~T7を使用した印刷物それぞれについて、印刷物を密閉した三角フラスコ中で80℃に加熱し溶剤を揮発させ、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス社製、GC-4000)にて、揮発溶剤量を確認した。
[評価基準]
A.2mg/m2未満(優良)
B.2mg/m2以上4mg/m2未満(良)
C.4mg/m2以上6mg/m2未満(実用可)
D.6mg/m2以上8mg/m2未満(やや不良)
E.8mg/m2以上(不良)
なお、A、B、Cは実用上問題がない範囲である。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
以上の検討結果より、低温条件下においてもインキ経時安定性、印刷適性およびラミネート強度に優れ、更に残留溶剤も増加させないグラビアまたはフレキソインキを提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のグラビアまたはフレキソインキは軟包装ラミネート分野のみに限らず、表刷り印刷用にも適用することができる。