IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-タイヤ 図1
  • 特許-タイヤ 図2
  • 特許-タイヤ 図3
  • 特許-タイヤ 図4
  • 特許-タイヤ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
B60C11/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018174846
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020044983
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/001488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を含むタイヤであって、
前記トレッド部には、サイプが設けられており、
前記サイプは、繰り返しエレメントがサイプの長手方向に連続する部分を含み、
前記繰り返しエレメントのそれぞれは、4つのサイプ片が互いに鋭角を形成するように折れ曲がっており、
前記4つのサイプ片は、
タイヤ軸方向に対して-5°以上+5°以下の角度で延びる第1サイプ片と、
前記第1サイプ片に連なって第1周方向に向かって第1軸方向に傾斜して延びる第2サイプ片と、
前記第2サイプ片に連なりかつタイヤ軸方向に対して-5°以上+5°以下の角度で前記第1軸方向とは反対側の第2軸方向に向かって延びる第3サイプ片と、
前記第3サイプ片に連なりかつ前記第1周方向とは反対側の第2周方向に向かって前記第1軸方向に傾斜して延びる第4サイプ片とを含み、
前記第4サイプ片の長さが、前記第2サイプ片の長さよりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記第4サイプ片は、前記第1サイプ片を前記第2軸方向に延長した領域よりも前記第2周方向の側まで延びている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1サイプ片及び前記第3サイプ片のそれぞれは、タイヤ軸方向に対して0°の角度で延びる、請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第4サイプ片の長さは、前記第2サイプ片の長さの1.10~1.50倍である、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記4つのサイプ片のそれぞれは、その長さ方向と直交する断面において、ジグザグ状に延びている、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にサイプが設けられたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷上等の滑り易い路面での走行を前提としたタイヤは、トレッド部にサイプが設けられる傾向がある。サイプは、その長さ方向と直交する向きに大きな摩擦力を提供する。したがって、氷上でのトラクションを高めるために、サイプは、タイヤ軸方向に平行に近い角度で配されるのが望ましい。関連する技術として、下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-001803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、タイヤ軸方向に延びるサイプは、タイヤの回転に伴ってトレッド部の接地面からその外側に出るときに大きく開く傾向がある。このようなサイプの開きは、サイプのエッジと路面との滑り量を大きくし、ひいては前記エッジ付近の偏摩耗(例えば、ヒールアンドトゥ摩耗である。)を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、優れた耐偏摩耗性能を発揮しつつ大きな氷上トラクションを提供し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を含むタイヤであって、前記トレッド部には、サイプが設けられており、前記サイプは、繰り返しエレメントがサイプの長手方向に連続する部分を含み、前記繰り返しエレメントのそれぞれは、4つのサイプ片が互いに鋭角を形成するように折れ曲がっており、前記4つのサイプ片は、タイヤ軸方向に対して±5°の角度で延びる第1サイプ片と、前記第1サイプ片に連なって第1周方向に向かって第1軸方向に傾斜して延びる第2サイプ片と、前記第2サイプ片に連なりかつタイヤ軸方向に対して±5°の角度で前記第1軸方向とは反対側の第2軸方向に向かって延びる第3サイプ片と、前記第3サイプ片に連なりかつ前記第1周方向とは反対側の第2周方向に向かって前記第1軸方向に傾斜して延びる第4サイプ片とを含み、前記第4サイプ片の長さが、前記第2サイプ片の長さよりも大きい。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第4サイプ片は、前記第1サイプ片を前記第2軸方向に延長した領域よりも前記第2周方向の側まで延びているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1サイプ片及び前記第3サイプ片のそれぞれは、タイヤ軸方向に対して0°の角度で延びるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第4サイプ片の長さは、前記第2サイプ片の長さの1.10~1.50倍であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記4つのサイプ片のそれぞれは、その長さ方向と直交する断面において、ジグザグ状に延びているのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤのトレッド部に設けられたサイプは、繰り返しエレメントがサイプの長手方向に連続する部分を含む。繰り返しエレメントのそれぞれは、4つのサイプ片が互いに鋭角を形成するように折れ曲がっている。また、4つのサイプ片は、タイヤ軸方向に対して±5°の角度で延びる第1サイプ片と、第1サイプ片に連なって第1周方向に向かって第1軸方向に傾斜して延びる第2サイプ片と、第2サイプ片に連なりかつタイヤ軸方向に対して±5°の角度で前記第1軸方向とは反対側の第2軸方向に向かって延びる第3サイプ片と、第3サイプ片に連なりかつ第1周方向とは反対側の第2周方向に向かって第1軸方向に傾斜して延びる第4サイプ片とを含んでいる。
【0012】
このような繰り返しエレメントは、第1サイプ片及び第3サイプ片がタイヤ軸方向に±5°の角度で延びているため、氷上走行時、タイヤ周方向に大きな摩擦力を提供し、ひいては氷上トラクションを高めることができる。また、繰り返しエレメントは、タイヤ周方向のせん断力が作用したとき、第2サイプ片及び第4サイプ片において、互いに向き合うサイプ壁同士が接触し、ひいては第1サイプ片及び第3サイプ片が過度に開くのを抑制することができる。このような作用は、タイヤの回転に伴って第1サイプ片及び第3サイプ片のエッジがトレッド部の接地面からその外側に出るときの、前記エッジと路面との滑り量を減少させる。したがって、エッジ付近の偏摩耗が抑制される。
【0013】
本発明では、第4サイプ片の長さが、第2サイプ片の長さよりも大きい。したがって、繰り返しエレメントは、せん断力が作用した際、捻れ変形を起こして第2サイプ片及び/又は第4サイプ片のサイプ壁同士を強く押し付けることができる。この作用により、第1サイプ片及び第3サイプ片が開くのをさらに抑制することができる。
【0014】
以上のように、本発明のタイヤは、優れた耐偏摩耗性能を発揮しつつ、大きな氷上トラクションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の横断面図である。
図2図1の陸部の拡大平面図である。
図3】(A)は、サイプの繰り返しエレメントの拡大図であり、(B)は、サイプが開いたときの繰り返しエレメントの拡大図である。
図4】(A)は、図3(A)のA-A線断面図であり、(B)は、(A)で示される断面を有するサイプ片の走行時の断面図である。
図5】(A)は、比較例1のサイプの繰り返しエレメントの拡大図であり、(B)は、比較例2のサイプの繰り返しエレメントの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の横断面図が示されている。なお、図1は、タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明のタイヤ1は、例えば、重荷重用として用いられても良い。
【0017】
「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0018】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0019】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0020】
図1に示されるように、トレッド部2には、例えば、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3と、これらに区分された陸部4とが設けられている。
【0021】
図2には、陸部4の拡大平面図が示されている。図2に示されるように、本実施形態の陸部4は、例えば、ブロック6をタイヤ周方向に複数含んだブロック列として構成されている。ブロック6は、陸部4をタイヤ軸方向に横切る複数の横溝5の間に区分されている。
【0022】
横溝5は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状に延びている。これにより、ブロック6の横エッジ6aは、タイヤ軸方向に対して傾斜している。
【0023】
トレッド部2の接地面には、サイプ10が設けられている。本実施形態では、1つのブロック6に、複数のサイプ10が設けられている。但し、本発明は、このようなブロックに限定されるものではなく、トレッド部2の接地面にサイプ10が配されていれば良い。本明細書において、「サイプ」は、幅が1.5mm未満の切れ込みを意味する。サイプ10の幅は、例えば、0.5~1.0mmであるのがより望ましい。
【0024】
サイプ10は、繰り返しエレメント11がサイプ10の長手方向に連続する部分を含んでいる。繰り返しエレメント11のそれぞれは、4つのサイプ片12が互いに鋭角を形成するように折れ曲がっている。また、4つのサイプ片12は、第1サイプ片12a、第2サイプ片12b、第3サイプ片12c及び第4サイプ片12dを含んでいる。
【0025】
図3(A)には、繰り返しエレメント11の拡大図が示されている。図3(A)に示されるように、第1サイプ片12aは、タイヤ軸方向に対して±5°の角度で延びている。第2サイプ片12bは、第1サイプ片12aに連なって第1周方向に向かって第1軸方向に傾斜して延びている。なお、本明細書の各図において、第1周方向は上方向であり、その反対側の第2周方向は下方向である。また、第1軸方向は左方向であり、その反対側の第2軸方向は右方向である。
【0026】
第3サイプ片12cは、第2サイプ片12bに連なりかつタイヤ軸方向に対して±5°の角度で第2軸方向に向かって延びている。第4サイプ片12dは、第3サイプ片12cに連なりかつ第2周方向に向かって第1軸方向に傾斜して延びている。
【0027】
本発明の繰り返しエレメント11は、第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cがタイヤ軸方向に±5°の角度で延びているため、氷上走行時、タイヤ周方向に大きな摩擦力を提供し、ひいては氷上トラクションを高めることができる。
【0028】
氷上トラクションを確実に高めるために、第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cのそれぞれは、タイヤ軸方向に対して±3°の角度で延びるのが望ましい。より望ましい態様として、本実施形態の第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cのそれぞれは、タイヤ軸方向に対して0°の角度で延びている。
【0029】
図3(B)には、サイプ10が開いたときの繰り返しエレメント11の拡大図が示されている。なお、発明を理解し易いように、図3(B)において、サイプ10の開口部分は着色されている。図3(B)に示されるように、繰り返しエレメント11は、タイヤ周方向のせん断力が作用したとき、第2サイプ片12b及び第4サイプ片12dにおいて、互いに向き合うサイプ壁同士が接触し、ひいては第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cが過度に開くのを抑制することができる。このような作用は、タイヤの回転に伴って第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cのエッジがトレッド部2の接地面からその外側に出るときの、前記エッジと路面との滑り量を減少させる。したがって、エッジ付近の偏摩耗が抑制される。
【0030】
図3(A)に示されるように、本発明では、第4サイプ片12dの長さL4が、第2サイプ片12bの長さL2よりも大きい。したがって、繰り返しエレメント11にせん断力が作用した際、第4サイプ片12dのサイプ壁に沿ったせん断変形量は、第2サイプ片12bのサイプ壁に沿ったせん断変形量よりも大きくなる傾向がある。このため、第2サイプ片12b及び第4サイプ片12d並びにこれらの間の陸部片13は、接地圧が作用したとき、捻れ変形を起こす傾向がある。このため、第2サイプ片12b及び/又は第4サイプ片12dのサイプ壁同士を強く押し付けることができる。この作用により、第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cが開くのをさらに抑制することができる。
【0031】
氷上トラクションを確保するために、第2サイプ片12bの長さL2は、第1サイプ片12aの長さL1及び第3サイプ片12cの長さL3よりも小さいのが望ましい。同様に、第4サイプ片12dの長さL4は、第1サイプ片12aの長さL1及び第3サイプ片12cの長さL3よりも小さいのが望ましい。なお、本明細書において、各サイプ片の長さは、例えば、サイプの中心線で測定されるのが望ましい。
【0032】
第4サイプ片12dは、第2サイプ片12b及び第3サイプ片12cを介して連なる第1サイプ片12aを第2軸方向に延長した領域よりも第2周方向の側まで延びているのが望ましい。これにより、第4サイプ片12dの第2周方向側の端は、前記第1サイプ片12aよりも第2周方向側に位置する。このような繰り返しエレメント11を複数有するサイプ10は、第1サイプ片12a及び第3サイプ片12cによってタイヤ軸方向成分を確保しつつ、例えば、ブロックの形状に合せて斜め方向に配することができる。したがって、本発明のサイプは、斜め方向に配された場合であっても、大きな氷上トラクションを提供することができる。
【0033】
第4サイプ片12dの長さL4は、第2サイプ片12bの長さL2の好ましくは1.10倍以上、より好ましくは1.20倍以上であり、好ましくは1.50倍以下、より好ましくは1.40倍以下である。このような第4サイプ片12dを有する繰り返しエレメント11は、氷上トラクションを確保しつつ、サイプ全体におけるタイヤ軸方向に対する配列角度を大きくできる。
【0034】
本実施形態において、4つのサイプ片12によって形成された各鋭角部分14は、例えば、互いに同じ角度で配されている。但し、このような態様に限定されず、各鋭角部分14は、角度が相違しても良い。鋭角部分14の角度θ1は、例えば、45°以上であるのが望ましい。具体的には、鋭角部分14の角度θ1は、50~80°であるのが望ましい。このような繰り返しエレメント11は、上述の効果を発揮しつつ、第1サイプ片12aと第3サイプ片12cとのタイヤ周方向の距離を適度に確保でき、耐偏摩耗性能をさらに高めることができる。
【0035】
図2に示されるように、サイプ10の配列角度は、例えば、5~15°であるのが望ましい。このようなサイプ10は、タイヤ周方向に大きな摩擦力を提供することができる。なお、サイプ10の配列角度は、タイヤ軸方向で隣り合う第1サイプ片12aの一端同士を結ぶ直線のタイヤ軸方向に対する角度に相当する。
【0036】
図4(A)には、図3(A)のA-A線断面図が示されている。図4(A)は、各サイプ片12の長さ方向と直交する断面を示す図である。図4(A)に示されるように、4つのサイプ片12のそれぞれは、その長さ方向と直交する断面において、タイヤ半径方向にジグザグ状に延びているのが望ましい。
【0037】
図4(B)には、図4(A)で示される断面を有するサイプ片12の走行時の断面図が示されている。図4(B)に示されるように、上記断面形状を有するサイプ片12は、タイヤ半径方向及びタイヤ周方向の荷重が作用したとき、互いに向き合うサイプ壁同士が接触して互いに支え合う。この作用により、ブロックの変形が抑制され、優れた操縦安定性が得られる。なお、このような形状のサイプは、サイプの深さ方向にジグザグ状に延びるサイプブレードを有する加硫金型を用いて周知の方法で加硫成形できる。
【0038】
上述の断面形状を有するサイプ片12において、ジグザグの振幅の最大幅は、例えば、サイプの開口幅の2.0~3.0倍であるのが望ましい。これにより、加硫成形時において、サイプブレードを引き抜くときのトレッドゴムの損傷が抑制される。
【0039】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0040】
上述したサイプを有するサイズ185/65R15の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、図5(A)に示される繰り返しエレメントbを複数含んだサイプaを有するタイヤが試作された。図5(A)に示される繰り返しエレメントbは、各サイプ片cが互いに鈍角を形成するように折れ曲がって台形波状に延びている。比較例2として、図5(B)に示されるサイプdを有するタイヤが試作された。サイプdは、第1サイプ片e及び第3サイプ片gがタイヤ軸方向に対して約7°で傾斜しており、第2サイプ片fと第4サイプ片hとが互いに同じ長さを有している。各テストタイヤは、サイプの形状を除いて、実質的に同じ構成を具えている。各テストタイヤの氷上トラクション、耐偏摩耗性能、及び、ドライ路面での操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×6.0J
タイヤ内圧:前輪220kPa、後輪210kPa
テスト車両:排気量1300cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0041】
<氷上トラクション>
各テストタイヤが装着された上記テスト車両で氷路を走行したときの氷上トラクションが、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1の氷上トラクションを100とする評点であり、数値が大きい程、氷上トラクションが優れていることを示す。
【0042】
<耐偏摩耗性能>
摩耗エネルギー測定装置が用いられ、各テストタイヤのサイプのエッジの摩耗エネルギーが測定された。結果は、比較例1の摩耗エネルギーの逆数を100とする指数であり、数値が大きい程、摩耗エネルギーが小さく、耐偏摩耗性能に優れていることを示す。
【0043】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0044】
【表1】
【0045】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた耐偏摩耗性能を発揮しつつ大きな氷上トラクションを提供していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、ドライ路面において、比較例と同等以上の操縦安定性を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0046】
2 トレッド部
10 サイプ
11 繰り返しエレメント
12 サイプ片
12a 第1サイプ片
12b 第2サイプ片
12c 第3サイプ片
12d 第4サイプ片
図1
図2
図3
図4
図5