(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】撥液層形成用樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20220913BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220913BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220913BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220913BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220913BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20220913BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C08L23/10
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
B32B27/00 H
C08L23/26
C08L53/00
C08L83/10
(21)【出願番号】P 2018177518
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】永井 暁
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 廣介
(72)【発明者】
【氏名】川村 瞳
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177541(JP,A)
【文献】特開2014-223752(JP,A)
【文献】特開2015-24548(JP,A)
【文献】特開2015-25051(JP,A)
【文献】特開2017-179344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L23/
B32B27/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリプロピレン樹脂、及び、
ポリオレフィンユニットにシリコーン部位を持たせたものである(B)シリル化ポリオレフィンを含有する撥液層形成用樹脂組成物であって、
前記(A)ポリプロピレン樹脂は、第1のポリプロピレン樹脂と、前記第1のポリプロピレン樹脂よりも融点が10℃以上高い第2のポリプロピレン樹脂とを、質量比(第1のポリプロピレン樹脂の質量/第2のポリプロピレン樹脂の質量)20/80~80/20の範囲で含み、
前記第1のポリプロピレン樹脂はランダムポリプロピレン樹脂であり、前記第2のポリプロピレン樹脂はブロックポリプロピレン樹脂であり、
前記(B)シリル化ポリオレフィンは、PE-Siグラフト共重合体、PE-Siブロック共重合体、又は、PP-Siグラフト共重合体であり、
前記(A)ポリプロピレン樹脂の含有量が、撥液層形成用樹脂組成物の固形分全量を基準として、50.0~95.0質量%であり、
前記(A)ポリプロピレン樹脂が、前記撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を測定試料とした示差走査熱量測定における、下記(1)~(5)の工程を順次行う測定条件により得られる第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークを130~170℃の範囲内に2つ以上有する、撥液層形成用樹脂組成物。
(1)第一昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
(2)200℃で5分間保持。
(3)100℃/分の降温速度で0℃まで降温。
(4)0℃で5分間保持。
(5)第二昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
【請求項2】
前記第二昇温時の融解曲線において、130~170℃の範囲内で最も高温側にある吸熱ピークのピーク温度と、最も低温側にある吸熱ピークのピーク温度との差が10℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリプロピレン樹脂は、前記第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークを130℃以上150℃未満の範囲内、及び、150℃以上170℃以下の範囲内にそれぞれ1つ以上有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)ポリプロピレン樹脂と相溶する部位及び前記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を更に含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)相溶化剤が、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、及び、エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項
4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)シリル化ポリオレフィンの含有量に対する前記(C)相溶化剤の含有量の質量比((C)相溶化剤の質量/(B)シリル化ポリオレフィンの質量)が0.05~20である、請求項
4又は
5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(D)シリコーンを更に含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備える撥液性フィルム。
【請求項9】
前記撥液層の一方の主面上に設けられた1層以上の樹脂層を更に備える、請求項
8に記載の撥液性フィルム。
【請求項10】
前記撥液層中の前記(A)ポリプロピレン樹脂の融点T
1(℃)と、前記1層以上の樹脂層のうち前記撥液層と接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T
2(℃)とが、T
1<T
2の関係を満たす、請求項
9に記載の撥液性フィルム。
【請求項11】
基材と、該基材上に設けられた請求項
8~10のいずれか一項に記載の撥液性フィルムと、を備え、前記撥液層が少なくとも一方の最表面に配置されている、撥液性積層体。
【請求項12】
請求項
11に記載の撥液性積層体を用いて形成された包装材。
【請求項13】
80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられる、請求項
12に記載の包装材。
【請求項14】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて形成された撥液層を少なくとも内面に有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液層形成用樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、飲料、医薬品、化学品等の多くの商品に対して、それぞれの内容物に応じた包装材が開発されている。特に、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材としては、耐水性、耐油性、ガスバリア性、軽量性、フレキシブル性、意匠性などに優れるプラスチック材料が用いられている。
【0003】
また、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材としては、より高機能を提供する目的で、複数の種類のプラスチック基材を積層したプラスチック積層体や、紙、金属箔、無機材料等とプラスチック基材との複合積層体、さらにはプラスチック基材に機能性組成物による処理を施した複合体などが提案されている。
【0004】
上述の高機能の一つとして、例えば、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材内面への付着、すなわち包装体内部への残存を抑制する機能が求められている。より具体的には、ヨーグルト、ゼリー、シロップ等の容器の蓋材、お粥、スープ、カレー、パスタソース等のレトルト食品包装材、化学品や医薬品等の液体、半固体、ゲル状物質等の保存容器用フィルム材料などには、その内面に内容物が付着し、内容物を全て使い切ることができずに無駄が生じることや、内容物の付着により汚れが生じること、内容物の排出作業に手間がかかることを抑制することができる高い撥液性が求められている。
【0005】
これらの要求に対して、例えば特許文献1には、包装材の内面にシリコーン粒子等の疎水性微粒子を含有するシリコーン樹脂組成物層を設けた撥水性包装材が提案されている。また、特許文献2には、球状シリコンを添加した樹脂層を最内層とした内容物撥水性・離型性を有する包装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-23224号公報
【文献】特開平8-337267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
包装材内面の樹脂層の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性等の機能を付与する材料として用いられている。しかしながら、撥液性を付与するためにポリオレフィン樹脂に上述したシリコーン粒子を添加した場合であっても、樹脂層内でのシリコーン粒子の凝集や、樹脂層からのシリコーン粒子の遊離が生じ易く、包装材内面への内容物の付着を抑制する効果が必ずしも十分ではなかった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、内容物の付着を十分に抑制することができる優れた撥液性を有する撥液層を形成可能な樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)ポリプロピレン樹脂、及び、(B)シリル化ポリオレフィンを含有する撥液層形成用樹脂組成物であって、上記(A)ポリプロピレン樹脂が、上記撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を測定試料とした示差走査熱量測定における、下記(1)~(5)の工程を順次行う測定条件により得られる第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークを130~170℃の範囲内に2つ以上有する、撥液層形成用樹脂組成物を提供する。
(1)第一昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
(2)200℃で5分間保持。
(3)100℃/分の降温速度で0℃まで降温。
(4)0℃で5分間保持。
(5)第二昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
【0010】
上記撥液層形成用樹脂組成物によれば、(A)ポリプロピレン樹脂と、撥液層に撥液性を付与する成分である(B)シリル化ポリオレフィンとを併用すると共に、(A)ポリプロピレン樹脂が、上述した第二昇温時の融解曲線において吸熱ピークを130~170℃の範囲内に2つ以上有するものであることにより、撥液層を形成した際に(B)シリル化ポリオレフィン中のSiが撥液層表面に偏析しやすく、内容物の付着を十分に抑制することができる優れた撥液性を得ることができる。ここで、(A)ポリプロピレン樹脂が上記条件を満たすものであることにより上記効果が奏される理由について、本発明者らは以下のように推察する。
【0011】
ポリプロピレン樹脂が上記第二昇温時の融解曲線において吸熱ピークを130~170℃の範囲内に1つのみ有する場合、単一の結晶相が形成されており、そのピーク温度に応じて以下のような性質を示すこととなる。すなわち、ピーク温度が比較的低い場合、ポリプロピレン樹脂の結晶化度が比較的低く、撥液層形成時には(B)シリル化ポリオレフィン中のSiが撥液層表面に偏析しやすくなる反面、形成される撥液層内部への油膨潤量が増大することとなる。撥液層の油膨潤量が増大すると、その分だけ残液量が増大すると共に、撥液層表面に油脂が多量に偏析した状態となるため、Siが撥液層内部に埋もれ、撥液性が低下して残液量が更に増大することとなる。一方、ピーク温度が比較的高い場合、ポリプロピレン樹脂の結晶化度が比較的高くなり、形成される撥液層の油膨潤量を低減できる反面、撥液層表面にSiが偏析し難くなり、撥液性が低下して残液量が増加することとなる。
【0012】
これに対し、上記第二昇温時の融解曲線に複数の吸熱ピークが表れることは、ポリプロピレン樹脂に分離結晶化が起こっていることを意味する。すなわち、第一昇温後の冷却により、ポリプロピレン樹脂に複数の異なる結晶相が形成されていることを意味する。これにより、上述した吸熱ピークを130~170℃の範囲内に1つのみ有するポリプロピレン樹脂の、ピーク温度が比較的低い場合と比較的高い場合の中間的な性質を発現することができる。その結果、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とを両立させることができ、その結果、優れた撥液性を得ることができる。
【0013】
上記撥液層形成用樹脂組成物は、上記第二昇温時の融解曲線において、130~170℃の範囲内で最も高温側にある吸熱ピークのピーク温度と、最も低温側にある吸熱ピークのピーク温度との差が10℃以上であってもよい。上記ピーク温度の差が10℃以上であることで、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。
【0014】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(A)ポリプロピレン樹脂は、上記第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークを130℃以上150℃未満の範囲内、及び、150℃以上170℃以下の範囲内にそれぞれ1つ以上有していてもよい。これにより、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。
【0015】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(A)ポリプロピレン樹脂は、第1のポリプロピレン樹脂と、上記第1のポリプロピレン樹脂よりも融点が10℃以上高い第2のポリプロピレン樹脂とを含んでいてもよい。(A)ポリプロピレン樹脂が、融点が10℃以上異なる第1及び第2のポリプロピレン樹脂を含むことにより、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。
【0016】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(A)ポリプロピレン樹脂は、上記第1のポリプロピレン樹脂と上記第2のポリプロピレン樹脂とを、質量比(第1のポリプロピレン樹脂の質量/第2のポリプロピレン樹脂の質量)20/80~80/20の範囲で含んでいてもよい。第1及び第2のポリプロピレン樹脂の質量比が上記範囲内であることで、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。
【0017】
上記撥液層形成用樹脂組成物は、上記(A)ポリプロピレン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤を更に含有していてもよい。(C)相溶化剤を用いることで、(B)シリル化ポリオレフィンの分散性がより向上し、形成される撥液層により効率的に撥液性を付与することができる。
【0018】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(C)相溶化剤は、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、及び、エチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの(C)相溶化剤を用いることで、(B)シリル化ポリオレフィンの分散性がより一層向上し、形成される撥液層により一層効率的に撥液性を付与することができる。
【0019】
上記撥液層形成用樹脂組成物において、上記(B)シリル化ポリオレフィンの含有量に対する上記(C)相溶化剤の含有量の質量比((C)相溶化剤の質量/(B)シリル化ポリオレフィンの質量)は、0.05~20であってもよい。この含有量の比が上記範囲内であることにより、(B)シリル化ポリオレフィンの分散性がより一層向上し、形成される撥液層により一層効率的に撥液性を付与することができる。
【0020】
上記撥液層形成用樹脂組成物は、(D)シリコーンを更に含んでいてもよい。(D)シリコーンを更に含むことにより、形成される撥液層において表面のSi存在量を増加させることができ、それによって撥液性をより向上させることができる。
【0021】
本発明はまた、上記本発明の撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備える撥液性フィルムを提供する。かかる撥液性フィルムによれば、上記本発明の撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備えることにより、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。また、上記撥液性フィルムによれば、水や油だけでなく、カレーやパスタソースなどの水中油分散型内容物に対しても良好な撥液性を発現することができる。
【0022】
上記撥液性フィルムは、上記撥液層の一方の主面上に設けられた1層以上の樹脂層を更に備えていてもよい。撥液性フィルムを撥液層以外の樹脂層を備えた多層構造とすることにより、撥液性に加えて更なる機能性(耐熱性、耐衝撃性等)を付与することが可能となる。また、撥液層の薄膜化が可能となり、コストダウンも可能である。
【0023】
撥液性フィルムが撥液層以外の樹脂層を備える場合、上記撥液層中の上記(A)ポリプロピレン樹脂の融点T1(℃)と、上記1層以上の樹脂層のうち上記撥液層と接する樹脂層に含まれる樹脂の融点T2(℃)とが、T1<T2の関係を満たしていてもよい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、撥液層中の(B)シリル化ポリオレフィンが第2の樹脂層に移行することを抑制でき、撥液層表面への(B)シリル化ポリオレフィンの偏在化又はブリードアウトの効率を向上させることができるため、撥液性をより向上できる傾向がある。
【0024】
本発明はまた、基材と、該基材上に設けられた上記本発明の撥液性フィルムと、を備え、上記撥液層が少なくとも一方の最表面に配置されている、撥液性積層体を提供する。かかる撥液性積層体によれば、上記本発明の撥液性フィルムを備えることにより、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。また、撥液性フィルムを所望の機能を有する基材と積層することにより、撥液性積層体に機械強度やバリア性、遮光性等の機能を付与することができる。
【0025】
本発明はまた、上記本発明の撥液性積層体を用いて形成された包装材を提供する。かかる包装材によれば、上記本発明の撥液性積層体を用いて形成されているため、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。
【0026】
上記包装材は、80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられるものであってもよい。本実施形態に係る包装材によれば、このような用途に用いられた場合であっても、加熱処理後も包装材内面への内容物の付着を抑制することができる。
【0027】
本発明は更に、上記本発明の樹脂組成物を用いて形成された撥液層を少なくとも内面に有する容器を提供する。かかる容器によれば、上記本発明の撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を備えているため、撥液層への内容物の付着を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、内容物の付着を十分に抑制することができる優れた撥液性を有する撥液層を形成可能な樹脂組成物、並びに、それを用いた撥液性フィルム、撥液性積層体、包装材及び容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る撥液性積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る撥液性積層体の概略断面図である。
【
図3】撥液性積層体の撥液性の評価方法を説明する模式図である。
【
図4】実施例1で得られた撥液層の第二昇温時の融解曲線を示す図である。
【
図5】実施例2で得られた撥液層の第二昇温時の融解曲線を示す図である。
【
図6】実施例3で得られた撥液層の第二昇温時の融解曲線を示す図である。
【
図7】比較例2で得られた撥液層の第二昇温時の融解曲線を示す図である。
【
図8】比較例3で得られた撥液層の第二昇温時の融解曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
[撥液性積層体]
本実施形態に係る撥液性積層体は、基材と、該基材上に設けられた撥液性フィルムと、を備え、撥液層が少なくとも一方の最表面に配置された構造を有するものである。
図1及び
図2は、本実施形態に係る撥液性積層体の概略断面図である。本実施形態に係る撥液性積層体は、
図1に示す撥液性積層体1のように、撥液層11からなる撥液性フィルム10と、基材14とが、接着剤13を介して積層された構造を有するものであってもよい。また、本実施形態に係る撥液性積層体は、
図2に示す撥液性積層体2のように、撥液層11及び第2の樹脂層12からなる撥液性フィルム10と、基材14とが、接着剤13を介して積層された構造を有するものであってもよい。撥液性フィルム10が第2の樹脂層12を備える場合、撥液性フィルム10は、撥液層11が撥液性積層体2の最表面となるように、第2の樹脂層12が基材14と対向するように配置される。
【0032】
<撥液層11>
撥液層11は撥液性を有する層である。撥液層11は、加熱によりヒートシール性を発現することができる層であってもよい。ここで、撥液性とは、撥水性及び撥油性の両特性を包含する概念であり、具体的には、液体状、半固体状、もしくはゲル状の水性又は油性材料に対し撥液する特性である。水性又は油性材料としては、水、油、ヨーグルト、ゼリー、プリン、シロップ、お粥、スープ、カレー、パスタソース等の食品、ハンドソープ、シャンプー等の洗剤、医薬品、化粧品、化学品などが挙げられる。また、ヒートシール性とは、一例として、100~200℃、0.1~0.3MPa、1~3秒間の条件にてヒートシールが可能である性質をいう。ヒートシールの条件は、撥液性積層体のヒートシールに要する条件に応じて容易に変更することが可能である。
【0033】
撥液層11の厚さは、0.1~100μmであることが好ましく、1~70μmであることがより好ましく、3~50μmであることが更に好ましく、5~30μmであることが特に好ましい。撥液層11の厚さが上記下限値以上であることにより良好な撥液性及びヒートシール性が得易くなる傾向がある。一方、厚さが上記上限値以下であることにより、撥液性積層体全体の厚さを薄くすることができる。
【0034】
撥液層11は、下記成分を含む撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成することができる。以下、撥液層形成用樹脂組成物について説明する。
【0035】
<撥液層形成用樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る撥液層形成用樹脂組成物は、(A)ポリプロピレン樹脂(以下、「(A)成分」ともいう)、(B)シリル化ポリオレフィン(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。そして、上記(A)ポリプロピレン樹脂は、上記撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を測定試料とした示差走査熱量測定における、下記(1)~(5)の工程を順次行う測定条件により得られる第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークを130~170℃の範囲内に2つ以上有する。
(1)第一昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
(2)200℃で5分間保持。
(3)100℃/分の降温速度で0℃まで降温。
(4)0℃で5分間保持。
(5)第二昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
【0036】
本実施形態に係る撥液層形成用樹脂組成物は、上記(A)ポリプロピレン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する(C)相溶化剤、並びに、(D)シリコーンの一方又は両方を更に含有していてもよい。
【0037】
((A)ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂(PP)としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、並びに、エチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとプロピレンとの共重合体(プロピレン系共重合体)が挙げられる。αオレフィン成分としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。このようなポリプロピレン樹脂を用いることで、撥液性積層体をレトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装材用途に好適に用いることができ、袋状の包装材が湯煎等の加熱処理によって破袋することを防止し易くなる。
【0038】
本実施形態において、ポリプロピレン樹脂は、上述した条件で測定される第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークを130~170℃の範囲内に2つ以上有するものである。第二昇温時の融解曲線に複数の吸熱ピークが表れることは、ポリプロピレン樹脂に分離結晶化が起こっていることを意味する。分離結晶化を起こす方法としては、例えば、異なる結晶性のポリプロピレン樹脂をブレンドする方法が挙げられる。これにより、第一昇温後の冷却により、異なる結晶相を形成させることができる。より具体的には、ランダムポリプロピレン樹脂とブロックポリプロピレン樹脂とをブレンドする方法、ランダムポリプロピレン樹脂とホモポリプロピレン樹脂とをブレンドする方法、融点の異なる2種以上のランダムポリプロピレン樹脂をブレンドする方法、融点の異なる2種以上のブロックポリプロピレン樹脂をブレンドする方法等が挙げられる。
【0039】
ポリプロピレン樹脂は、第1のポリプロピレン樹脂と、該第1のポリプロピレン樹脂よりも融点が10℃以上高い第2のポリプロピレン樹脂とを含むことが好ましい。第2のポリプロピレン樹脂と第1のポリプロピレン樹脂との融点差は、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましく、25℃以上であることが特に好ましく、30℃以上であることが極めて好ましい。融点差が上記下限値以上であることで、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。なお、ポリプロピレン樹脂が3種以上のポリプロピレン樹脂を含む場合、最も高融点のポリプロピレン樹脂と最も低融点のポリプロピレン樹脂との融点差が上記範囲内であればよい。
【0040】
ポリプロピレン樹脂は、上記第1のポリプロピレン樹脂と上記第2のポリプロピレン樹脂とを、質量比(第1のポリプロピレン樹脂の質量/第2のポリプロピレン樹脂の質量)20/80~80/20(0.25~4.0)の範囲で含むことが好ましい。上記質量比は、30/70~70/30(0.43~2.3)であることがより好ましく、35/65~65/35(0.54~1.9)であることが更に好ましく、40/60~60/40(0.67~1.5)であることが特に好ましい。質量比が上記下限値以上であることで、形成される撥液層の表面にSiをより偏析し易くし、撥液性をより向上させることができる。一方、質量比が上記上限値以下であることで、形成される撥液層の油膨潤量をより低減することができる。撥液層の油膨潤量が低いと、その分だけ残液量を低減することができると共に、撥液層表面の油脂の存在量が低減されるため、Siが撥液層表面により偏析し易くなり、撥液性をより向上させることができる。
【0041】
ここで、上記第1のポリプロピレン樹脂は、ランダムポリプロピレン樹脂であることが好ましく、上記第2のポリプロピレン樹脂は、ブロックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂がランダムポリプロピレン樹脂及びブロックポリプロピレン樹脂を含むことは、例えば、形成された撥液層について赤外分光法(IR)により分析することで確認することができる。
【0042】
ポリプロピレン樹脂は所定の酸で変性された変性ポリプロピレンであってもよい。変性ポリプロピレンは、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリプロピレンをグラフト変性することで得られる。また、ポリプロピレン樹脂として、水酸基変性ポリプロピレンやアクリル変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレンを使用することもできる。
【0043】
上述したランダムポリプロピレン樹脂及びブロックポリプロピレン樹脂は、それぞれ一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記第二昇温時の融解曲線において、130~170℃の範囲内に観測される吸熱ピークの数は2つ以上であるが、3つ以上であってもよい。また、上記吸熱ピークの数は、5つ以下であってもよく、4つ以下であってもよい。吸熱ピークの数が上記範囲内であると、形成される撥液層は良好な撥液性を得ることができる。
【0045】
上記第二昇温時の融解曲線において、130~170℃の範囲内で最も高温側にある吸熱ピークのピーク温度と、最も低温側にある吸熱ピークのピーク温度との差は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましい。このピーク温度の差が上記下限値以上であることで、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。
【0046】
上記第二昇温時の融解曲線において、吸熱ピークは、130℃以上150℃未満の範囲内、及び、150℃以上170℃以下の範囲内にそれぞれ1つ以上有することが好ましい。これにより、形成される撥液層の油膨潤量の低減と、撥液層表面のSi存在量の向上とをより高水準で両立させることができ、その結果、より優れた撥液性を得ることができる。
【0047】
示差走査熱量測定(DSC)は、加熱及び降温を上記(1)~(5)に示した条件で行うこと以外は、JIS K7121-1987に準拠して行うことができる。測定試料(試験片)としては、撥液層形成用樹脂組成物を製膜した撥液層を用いることができる。
【0048】
本実施形態に係る撥液層形成用樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂以外の他のポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。他のポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。αオレフィン成分としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。上記以外でも、ポリオレフィン樹脂は、ポリノルボルネンなどの環状ポリオレフィンであってもよい。また、上記ポリオレフィン樹脂は、シール性及び強度物性(引張強度、衝撃強度など)の観点から、線状ポリオレフィンであってもよく、線状ポリオレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。
【0049】
ポリオレフィン樹脂の融点は、最終用途に応じて適宜調整することができる。例えば、レトルト食品包装材用途であれば、ポリオレフィン樹脂の融点は130~170℃であることが好ましい。
【0050】
ポリオレフィン樹脂は所定の酸で変性された変性ポリオレフィンであってもよい。変性ポリオレフィンは、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリオレフィンをグラフト変性することで得られる。また、ポリオレフィン樹脂として、水酸基変性ポリオレフィンやアクリル変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンを使用することもできる。
【0051】
上述したポリオレフィン樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
((B)シリル化ポリオレフィン)
シリル化ポリオレフィンは、撥液層11に撥液性を付与する成分である。シリル化ポリオレフィンは、ポリオレフィンユニットにシリコーン部位を持たせたものである。
【0053】
シリル化ポリオレフィンとしては、例えば、PE-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品、PE-Siブロック共重合体として三井化学ファイン株式会社製のイクスフォーラ、PP-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0054】
シリル化ポリオレフィンとしては、撥液層11の撥液性をより向上させる観点から、グラフト共重合体よりもブロック共重合体の方が好ましい。これは、ブロック共重合体の方が、撥液層11表面に偏在化又はブリードアウトし易い傾向にあるためである。
【0055】
上述したシリル化ポリオレフィンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
シリル化ポリオレフィンは、そのポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と相溶するものであってもよく、相溶しない(非相溶である)ものであってもよい。但し、ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合、以下の(C)相溶化剤と併用することが好ましい。なお、ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合、(A)ポリプロピレン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンの材料の組み合わせの選択肢が増え、目的・用途に応じた設計が可能であると共に、撥液性をより向上させ易い傾向があるという利点がある。ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と相溶するシリル化ポリオレフィンとしては、PP-Siグラフト共重合体等が挙げられ、ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンとしては、PE-Siグラフト共重合体及びPE-Siブロック共重合体等が挙げられる。
【0057】
((C)相溶化剤)
相溶化剤は、好ましくは、(B)シリル化ポリオレフィンとしてポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶であるシリル化ポリオレフィンを用いる場合に用いられる。相溶化剤は、(A)ポリプロピレン樹脂と相溶する部位及び上記(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位を有する成分である。相溶化剤を用いることにより、ポリオレフィン部位が(A)ポリプロピレン樹脂と非相溶である(B)シリル化ポリオレフィンと(A)ポリプロピレン樹脂との相溶性を向上させることができる。
【0058】
(A)ポリプロピレン樹脂と相溶する部位としては、(A)ポリプロピレン樹脂と相溶可能なポリオレフィン構造が挙げられ、(A)ポリプロピレン樹脂と同種のポリオレフィン構造を有する部位であることが好ましい。すなわち、(C)相溶化剤はポリプロピレン構造を有することが好ましい。また、(A)ポリプロピレン樹脂がプロピレン-αオレフィン共重合体等の2種以上のオレフィンからなる共重合体である場合、(C)相溶化剤は、上記共重合体を構成するオレフィンのうち主成分となるオレフィンと同種のオレフィンを重合又は共重合させた構造を少なくとも有することが好ましい。
【0059】
(B)シリル化ポリオレフィンと相溶する部位としては、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位と相溶可能なポリオレフィン構造が挙げられ、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位と同種のポリオレフィン構造を有する部位であることが好ましい。すなわち、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリエチレン構造を有する場合、(C)相溶化剤はポリエチレン構造を有することが好ましい。また、(B)シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位が、エチレン-αオレフィン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等の2種以上のオレフィンからなる共重合体に基づく構造を有する場合、(C)相溶化剤は、上記共重合体を構成するオレフィンのうち主成分となるオレフィンと同種のオレフィンを重合又は共重合させた構造を少なくとも有することが好ましい。
【0060】
(C)相溶化剤としては、例えば、エチレンとプロピレンとのブロック共重合体、あるいはエチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体などを用いることが可能である。これらの相溶化剤を用いる場合、(B)シリル化ポリオレフィンとしては、ポリエチレン部位を有するものを用いることが好ましい。この場合、(A)ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン部位と(C)相溶化剤のプロピレンもしくはエチレン・ブチレン共重合体部位とが相溶し、(B)シリル化ポリオレフィンのポリエチレン部位と(C)相溶化剤のポリエチレン部位とが相溶する。
【0061】
上述した相溶化剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
((D)シリコーン)
シリコーンは、撥液層11の撥液性をより向上させる成分である。シリコーンとしては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー、シリコーンパウダー等が挙げられる。これらの中でも、より良好な撥液性が得られ易いことから、シリコーンオイルが好ましい。
【0063】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0064】
シリコーンオイルとしては、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の製品、信越化学工業株式会社製の製品、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の製品、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0065】
シリコーンレジンとしては、信越化学工業株式会社製の製品、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の製品等が挙げられる。
【0066】
シリコーンオリゴマーとしては、信越化学工業株式会社製の製品、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0067】
シリコーンパウダーとしては、信越化学工業株式会社製の製品、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0068】
上述したシリコーンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分の含有量は、撥液層形成用樹脂組成物の固形分全量を基準として、50.0~99.9質量%であることが好ましく、55.0~99.0質量%であることがより好ましく、60.0~98.0質量%であることが更に好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。一方、(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、相対的に(B)成分並びに必要に応じて用いられる(C)成分及び(D)成分の含有量が増えるため、撥液性が向上し易い傾向がある。
【0070】
撥液層形成用樹脂組成物における(B)成分及び(C)成分の合計の含有量は、撥液層形成用樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1~50.0質量%であることが好ましく、1.0~45.0質量%であることがより好ましく、2.0~40.0質量%であることが更に好ましい。(B)成分及び(C)成分の合計の含有量が上記下限値以上であると、撥液性が向上し易い傾向がある。一方、(B)成分及び(C)成分の合計の含有量が上記上限値以下であると、相対的に(A)成分の含有量が増えるため、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。
【0071】
撥液層形成用樹脂組成物が(C)成分を含む場合、(B)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比((C)成分の質量/(B)成分の質量)は、0.01~50であってもよく、0.04~30であることが好ましく、0.05~20であることがより好ましく、0.05~15であることが更に好ましい。この含有量の比が上記下限値以上であると、撥液層において(B)シリル化ポリオレフィンを十分に分散させることができ、より良好な撥液性を得ることができる傾向がある。一方、この含有量の比が上記上限値以下であると、過剰な(C)相溶化剤により(B)シリル化ポリオレフィンが被覆されることを防ぎ、より良好な撥液性を得ることができる傾向がある。また、含有量の比が上記上限値を超えるほど(C)相溶化剤を添加しても、(B)シリル化ポリオレフィンがそれ以上分散しない状態となり、撥液性の向上効果が見られなくなる傾向がある。
【0072】
撥液層形成用樹脂組成物が(D)成分を含む場合、その含有量は、撥液層形成用樹脂組成物全量を基準として0.1~20.0質量%であることが好ましく、1.0~15.0質量%であることがより好ましく、2.0~10.0質量%であることが更に好ましい。(D)成分の合計の含有量が上記下限値以上であると、撥液性が向上し易い傾向がある。一方、(D)成分の合計の含有量が上記上限値以下であると、相対的に(A)成分の含有量が増えるため、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。
【0073】
撥液層形成用樹脂組成物は、撥液性を損なわない程度の範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等が挙げられる。
【0074】
撥液層11は、上記撥液層形成用樹脂組成物を製膜することで形成することができる。
【0075】
<第2の樹脂層12>
第2の樹脂層12は、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性、酸素・水蒸気バリア性等を向上させるために撥液層11と基材14との間に設けられる層である。第2の樹脂層12は、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0076】
第2の樹脂層12に用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのエステル化物又はイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物、ポリ酢酸ビニル又はそのケン化物、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、フラン樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
第2の樹脂層12に用いられる上記熱可塑性樹脂は、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性が向上し易いことから、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、撥液層11に用いられる(A)ポリプロピレン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0078】
第2の樹脂層12が撥液層11と接している場合、撥液層11中の(A)ポリプロピレン樹脂の融点T1(℃)と、第2の樹脂層12中の上記熱可塑性樹脂の融点T2(℃)とは、T1<T2の関係を満たすことが好ましい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、撥液層11中の(B)シリル化ポリオレフィンが第2の樹脂層12に移行することを抑制でき、撥液層11表面への(B)シリル化ポリオレフィンの偏在化又はブリードアウトの効率を向上させることができるため、撥液性をより向上できる傾向がある。同じ観点から、融点T2は、融点T1よりも1℃以上高いことが好ましく、3℃以上高いことがより好ましい。
【0079】
ここで、融点T1は、撥液層11を測定試料とした、撥液層11中で測定される(A)ポリプロピレン樹脂の融点である。同様に、融点T2は、第2の樹脂層12を測定試料とした、第2の樹脂層12中で測定される樹脂の融点である。融点T1は、撥液層11が(A)ポリプロピレン樹脂として融点の異なる2種類以上のポリプロピレン樹脂を含有している場合、撥液層11中で最も低温で融解するポリプロピレン樹脂の融点を示すが、他のポリプロピレン樹脂等の影響を受けるため、ポリプロピレン樹脂単独で測定される融点とは異なる。撥液層11中での(A)ポリプロピレン樹脂の融点T1及び第2の樹脂層12中での樹脂の融点T2は、熱分析装置(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製のTA7000)により測定することができる。
【0080】
第2の樹脂層12の厚さは、本撥液層形成用樹脂組成物を用いた商材の最終用途に応じて適宜設定できる。第2の樹脂層12の厚さは、例えば、0.1~300μmであることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、5~150μmであることが更に好ましく、10~100μmであることが特に好ましい。
【0081】
<撥液性フィルム10>
上述した撥液層11単層、又は、撥液層11及び第2の樹脂層12の2層により、撥液性を有する撥液性フィルム10が形成される。撥液性フィルム10は、基材14の表面の一部又は全部を覆うように形成されている。なお、撥液性フィルム10は、用途に応じて、基材14と積層せずに撥液性フィルム10単独で使用してもよい。
【0082】
撥液性フィルム10は、撥液層11及び第2の樹脂層12以外の他の樹脂層を更に1層以上含んでいてもよい。他の樹脂層の組成は、第2の樹脂層12の組成と同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
<基材14>
基材14は、支持体となる物であれば特に制限はなく、例えば紙、樹脂フィルム、金属箔等が挙げられる。紙としては、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙、クラフト紙等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、セロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。金属箔としては、例えばアルミ箔、ニッケル箔等が挙げられる。基材14は、材質の異なる複数の基材を積層したものであってもよい。
【0084】
基材14の厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができるが、通常、1~500μmであり、好ましくは10~100μmである。
【0085】
基材14と撥液性フィルム10との貼り合わせ方法としては、以下のような、接着剤によるラミネート方法、及び、熱処理によるラミネート方法などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0086】
(接着剤によるラミネート方法)
接着剤によるラミネート方法としては、ドライラミネート、ウェットラミネート、ノンソルベントラミネートなどの各種公知のラミネート方法を用いることができる。これらのラミネート方法に用いられる接着剤13としては以下のものが挙げられる。
【0087】
<接着剤13>
接着剤13は、撥液性フィルム10と基材14とを接着するものである。接着剤13としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
接着剤13には更に、接着促進を目的として、上述したポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合してもよい。
【0089】
また、接着剤13に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0090】
接着剤13の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
【0091】
(熱処理によるラミネート方法)
熱処理によるラミネート方法としては、大きく以下の方法が挙げられる。
(1)あらかじめ製膜した撥液性フィルム10を接着性樹脂と共に基材14上に押出ラミネートする方法。
(2)撥液性フィルム10を構成する樹脂層と接着性樹脂とを基材14上に押出ラミネートする方法。
(3)上記(1)もしくは(2)の方法で得られたラミネート基材を、更に熱ロールで加熱・加圧することにより接着させる方法。
(4)上記(1)もしくは(2)の方法で得られたラミネート基材を、更に高温雰囲気下で保管する、あるいは高温雰囲気下の乾燥・焼付け炉を通過させる方法。
【0092】
熱処理によるラミネート方法で用いられる接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。また、上記の方法では押出ラミネートにより基材14と撥液性フィルム10とを積層しているが、押出ラミネートを行わずに、酸変性ポリオレフィン系コーティング剤(溶解型、分散型)をあらかじめ基材14上に塗工形成した後、撥液性フィルム10を熱処理により積層させることも可能である。
【0093】
また、基材14には、接着性プライマー(アンカーコート)を設けることも可能であり、その材料として、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアリルアミン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素-酢酸ビニル系などを用いることが可能であり、必要に応じて、接着剤13として使用可能な上記の各種硬化剤や添加剤を配合してもよい。
【0094】
本実施形態に係る撥液性積層体は、撥液層が内面となるように袋状に形成した撥液性積層体内に、食用油を上記内面全体と接するように充填して密閉し、温度121℃、圧力0.2MPa、30分間の条件で水蒸気による加熱加圧処理を行った後の撥液性積層体の単位面積当たりの油膨潤量が、1.0mg/cm2以下であることが好ましい。このようにして測定される油膨潤量が1.0mg/cm2以下であることで、撥液性積層体はより優れた撥液性を有することができ、内容物を排出した後の残液量をより低減することができる。同様の観点から、上記油膨潤量は0.95mg/cm2以下であることがより好ましい。一方、内容物の滑落性を高める観点から、撥液層は油脂により多少膨潤してもよく、上記油膨潤量は、0.5mg/cm2以上であってもよい。
【0095】
[包装材]
本実施形態に係る包装材は、上述した撥液性積層体を用いて形成されたものである。包装材として具体的には、ヨーグルト、ゼリー、シロップ等の容器の蓋材、お粥、スープ、カレー、パスタソース等のレトルト食品包装材(レトルトパウチ)などが挙げられる。包装材の内面(内容物側)に撥液層が配置されるように包装材を形成することで、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の包装材内面への付着や残存を抑制することができる。また、レトルト食品包装材のような袋状の包装材においては、包装材の最内層同士がブロッキングすることで内容物が排出され難くなる場合があるが、本実施形態に係る包装材によれば、最内層である撥液層同士がブロッキングし難く、内容物を効率的に排出することができる。
【0096】
上記包装材は、80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられるものであってもよい。具体的には、レトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装材用途に用いられるものであってもよい。本実施形態に係る包装材によれば、このような用途に用いられた場合であっても、加熱処理後も包装材内面への内容物の付着や残存を抑制できる。
【0097】
[容器]
本実施形態に係る容器は、上述した撥液層形成用樹脂組成物を用いて形成された撥液層を少なくとも内面(内容物側)に有する容器である。容器として具体的には、化学品や医薬品等の液体、半固体、ゲル状物質等の保存容器、ハンドソープやシャンプー等を収容するボトルなどが挙げられる。容器の内面(内容物側)に撥液層が配置されるように容器を形成することで、液体や半固体、ゲル状物質等の内容物の容器内面への付着や残存を抑制することができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[実施例1]
<撥液層形成用樹脂組成物の作製>
(A)成分として、(A1)ランダムポリプロピレン樹脂(プロピレン-エチレンランダム共重合体、商品名「プライムポリプロ」、融点134℃(カタログ値)、株式会社プライムポリマー製、以下「r-PP」と略す場合がある)、及び、(A2)ブロックポリプロピレン樹脂(プロピレン-エチレンブロック共重合体、商品名「ノバテック」、融点165~166℃(カタログ値)、日本ポリプロ株式会社製、以下「b-PP」と略す場合がある)と、(B)成分であるシリル化ポリエチレン(PE-Siのブロック共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製、以下「PE-Si」と略す場合がある)とを混合し、撥液層形成用樹脂組成物を調製した。ここで、各成分の含有量は、(A)成分中のr-PPとb-PPとの質量比(r-PPの質量/b-PPの質量)が20/80となり、且つ、(A)成分及び(B)成分の総量を基準として、(B)成分が5質量%、残部が(A)成分となるように調整した。
【0100】
<撥液性積層体の作製>
3層共押出し機を用いて、撥液層形成用樹脂組成物を押出し製膜し、厚さ60μmの撥液層からなる撥液性フィルムを得た。得られた撥液性フィルムと、基材である厚さ38μmのPETフィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とを、ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、50℃で5日間エージングして、撥液性積層体を得た。
【0101】
[実施例2~3]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分中のr-PPとb-PPとの質量比を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0102】
[実施例4]
撥液層形成用樹脂組成物に、(D)成分であるシリコーンオイル(ジメチルシリコーン、東レ・ダウコーニング株式会社製、以下「シリコーン」と略す場合がある)を更に添加し、各成分の含有量を調整したこと以外は実施例2と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。撥液層形成用樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の総量を基準とした(B)成分及び(D)成分の含有量は、それぞれ表1に示す値となるように調整した。
【0103】
[実施例5~16及び18~20]
撥液層形成用樹脂組成物に、(C)成分であるエチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体(以下「PE-Et/Bu」と略す場合がある)、又は、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体(以下「PP-PE」と略す場合がある)を更に添加し、各成分の含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。撥液層形成用樹脂組成物において、(A)成分中のr-PPとb-PPとの質量比、(C)成分の種類、並びに、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量を基準とした(B)成分及び(C)成分の含有量は、それぞれ表1に示す値となるように調整した。
【0104】
[実施例17]
撥液層形成用樹脂組成物に、(C)成分であるプロピレンとエチレンとのブロック共重合体(PP-PE)、及び、(D)成分であるシリコーンオイル(シリコーン)を更に添加し、各成分の含有量を調整したこと以外は実施例2と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。撥液層形成用樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量を基準とした(B)成分、(C)成分及び(D)成分の含有量は、それぞれ表1に示す値となるように調整した。
【0105】
[実施例21]
<撥液層形成用樹脂組成物の作製>
撥液層形成用樹脂組成物に、(C)成分であるプロピレンとエチレンとのブロック共重合体(PP-PE)を更に添加し、各成分の含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物を作製した。撥液層形成用樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量を基準とした(B)成分及び(C)成分の含有量は、それぞれ表2に示す値となるように調整した。
【0106】
<撥液性積層体の作製>
(A)成分である(A1)ランダムポリプロピレン樹脂(r-PP)を、第2の樹脂層形成用樹脂組成物とした。3層共押出し機を用いて、撥液層形成用樹脂組成物と第2の樹脂層形成用樹脂組成物とを共押出し製膜し、厚さ15μmの撥液層と厚さ45μmの第2の樹脂層からなる撥液性フィルムを得た。得られた撥液性フィルムの第2の樹脂層と、基材である厚さ38μmのPETフィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とを、ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、撥液性積層体を得た。
【0107】
[実施例22~30]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分中のr-PPとb-PPとの質量比、(B)成分及び(C)成分の含有量を、表2に示す値となるように調整したこと以外は実施例21と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0108】
[実施例31]
撥液層形成用樹脂組成物における(C)成分としてエチレンとエチレン・ブチレン共重合体とのブロック共重合体(PE-Et/Bu)を用い、第2の樹脂層形成用樹脂組成物として(A)成分である(A2)ブロックポリプロピレン樹脂(b-PP)を用いたこと以外は実施例25と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0109】
[実施例32]
第2の樹脂層形成用樹脂組成物として(A)成分である(A2)ブロックポリプロピレン樹脂(b-PP)を用いたこと以外は実施例21と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0110】
[実施例33~41]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分中のr-PPとb-PPとの質量比、(B)成分及び(C)成分の含有量を、表2に示す値となるように調整したこと以外は実施例32と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0111】
[比較例1]
撥液層形成用樹脂組成物に(B)成分及び(C)成分を添加しなかったこと以外は実施例24と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0112】
[比較例2]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分としてr-PPを単独で用い、撥液層形成用樹脂組成物に(C)成分を添加しなかったこと以外は実施例21と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0113】
[比較例3]
撥液層形成用樹脂組成物における(A)成分としてb-PPを単独で用い、撥液層形成用樹脂組成物に(C)成分を添加しなかったこと以外は実施例21と同様にして、撥液層形成用樹脂組成物、第2の樹脂層形成用樹脂組成物、撥液性フィルム及び撥液性積層体を作製した。
【0114】
表1及び表2には、撥液層における(B)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比((C)成分の質量/(B)成分の質量)を示した。また、表1及び表2には、撥液層中で測定される(A)成分である樹脂の融点T1(℃)と、第2の樹脂層に用いた(A)成分である樹脂の融点T2(℃)との大小関係を示した。撥液層が(A)成分としてr-PP及びb-PPを含有している場合、融点T1は、撥液層中でより低温で融解するr-PPの融点を示すが、b-PPの影響を受けるため、r-PP単独で測定される融点とは異なる。撥液層中での(A)成分の融点T1及び第2の樹脂層中での樹脂の融点T2は、熱分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、TA7000)により測定した。
【0115】
[示差走査熱量測定(DSC)]
実施例及び比較例で作製した撥液性フィルムの撥液層を測定試料とし、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を行った。測定機器には、株式会社日立ハイテクサイエンス(旧SIIナノテクノロジー株式会社)製のDSC 6220及びSII EXTAR 6000を用いた。測定条件は、下記(1)~(5)の工程を順次行う条件とした。
(1)第一昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
(2)200℃で5分間保持。
(3)100℃/分の降温速度で0℃まで降温。
(4)0℃で5分間保持。
(5)第二昇温として10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱。
【0116】
上記測定で得られた第二昇温時の融解曲線から、130~170℃の範囲内に存在する吸熱ピークの数及びピーク温度を求めた。結果を表1及び表2に示す。また、実施例1~3及び比較例2~3の撥液層の第二昇温時の融解曲線を、
図4~
図8にそれぞれ示す。
【0117】
[撥液性評価]
<レトルト処理後の残液評価>
実施例及び比較例で得られた撥液性積層体について、
図3に示した方法により、レトルト処理後の撥液性の評価を行った。まず、撥液性積層体を縦150mm×横138mmにカットしたサンプル100を2枚用意した。2枚のサンプル100を、それぞれの撥液層が内側となるように重ね、縦方向端部の1辺と横方向両端部の2辺とを、ヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部51を形成し、縦方向端部の一辺が開口しているパウチを作製した(
図3の(a)を参照)。次に、パウチの開口部から180gの水中油分散型液体54(商品名「ボンカレーゴールド 中辛」、脂質量7.0g/180g中、大塚食品社製)を注液した(
図3の(b)を参照)。その後、開口部をヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部51を形成し、パウチを密閉した(
図3の(c)を参照)。
【0118】
密閉したパウチを高温高圧調理殺菌装置(日立キャピタル株式会社製)に投入後、高温の水蒸気で圧力0.2MPaの条件下、121℃で30分間レトルト処理を行い、更に密閉したパウチを100℃で5分間湯煎処理した。上記処理後、直ちに密閉したパウチの上部を切断して注ぎ口を形成した(
図3の(d)を参照)。次いで、パウチを逆さにし、注ぎ口を水平面から45°傾けた状態で10秒間保持し、容器56に水中油分散型液体54を排出させて、秤57により排出量を秤量した(
図3の(e)を参照)。秤量した排出量から、下記式により残液量(%)を求めた。
残液量(%)={(
180-排出量)/
180}×100
測定は3回行い、3回の平均残液量から下記評価基準により残液評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
◎:平均残液量が6.5%未満
○:平均残液量が6.5%以上8.0%未満
△:平均残液量が8.0%以上10.0%未満
×:平均残液量が10.0%以上
【0119】
<レトルト処理後の外観評価>
上記残液評価において、パウチ内から液体を排出した際の液体の排出挙動を目視にて観察し、下記評価基準により外観評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
◎:液体を綺麗にはじく様子が見られ、撥液性積層体への付着が極めて少ない。
○:液体をはじく様子が見られ、撥液性積層体への付着が少ない。
△:液体をはじく様子は見られるが、撥液性積層体に付着している。
×:液体をはじく様子が見られない。
【0120】
【0121】
【0122】
表1及び表2に示した結果から明らかなように、実施例1~41の撥液性積層体によれば、比較例1~3の撥液性積層体と比較して、撥液性を向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0123】
1,2…撥液性積層体、10…撥液性フィルム、11…撥液層、12…第2の樹脂層、13…接着剤、14…基材、51…シール部、54…水中油分散型液体、56…容器、57…秤、100…撥液性積層体の評価用サンプル。