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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A01C11/02 330B
A01C11/02 330C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018181823
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020048498
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 淳志
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140047(JP,A)
【文献】特開2017-200785(JP,A)
【文献】特開平10-047737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
B60K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)に搭載されたエンジン(20)と、
前記走行車体(2)に連結され、圃場に対し所定の作業が可能な作業装置(52)と、
前記エンジン(20)からの動力の走行系(10、11)への伝達を制御する変速装置(23)と、
前記変速装置(23)の出力を切り替える切替操作を行う変速レバー(33)と、を備え、
前記変速レバー(33)には、前記作業装置(52)の前記所定の作業の入り切りの切替操作を行う切替スイッチ(33b)が設けられており、
前記切替スイッチ(33b)にはカバー部材が着脱可能に設けられている、又は、前記切替スイッチ(33b)による前記切替操作を受け付けない非受付モードが設定可能に構成されており
前記走行系(10、11)のロック状態の入り切りの切替操作を行う第1レバー(100)と、
前記第1レバー(100)の前記切替操作による前記ロック状態の入り切りを検知する第1検知部(110)と、
前記変速装置(23)から伝達される動力を、路上走行用速、作業用速、及び前記動力の前記走行系への伝達を行わない中立速の何れかに切り替えるための切替操作を行う第2レバー(36)と、
前記第2レバー(36)が前記切替操作により何れの位置に位置するかを検知する第2検知部(37)と、を備え、
前記第1検知部(110)の検知結果が前記ロック状態の入りを示しており、且つ、前記第2検知部(37)の検知結果が、前記中立速に対応する位置に前記第2レバー(36)が位置することを示している状況で、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、前記変速装置(23)の前記出力を強制的に停止させる、ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記変速装置(23)は、入力側の油圧ポンプの斜板の角度を変更することにより前記出力を切り替えるHST装置(23)であり、
前記変速レバー(33)の位置に関わらず、前記斜板の角度を中立状態にすることで、前記HST装置(23)の前記出力を強制的に停止させる構成であって、
前記HST装置(23)の前記出力が強制的に停止された場合、前記変速レバー(33)が前記HST装置(23)からの前記出力を停止させるための停止位置に戻されたことが検知された後でなければ、前記変速レバー(33)による前記切替操作を受け付けない、ことを特徴とする請求項記載の作業車両。
【請求項3】
前記状況下で、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、前記走行車体(2)が走行出来ない状態にあることを示す表示部(24)を備えた、ことを特徴とする請求項又は記載の作業車両。
【請求項4】
前記作業装置(52)の前記所定の作業は、苗の植付け作業であって、
前記第1レバー(100)は前記ロック状態の切り側に切り替えられており、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記路上走行用速に対応する位置に切り替えられたことが検知され、且つ、前記切替スイッチ(33b)により前記苗の植付け作業を入り状態に切り替える切替操作がされた場合、前記苗の植付け作業を入り状態にしない、又は、前記変速装置(23)の前記出力を強制的に停止させる、ことを特徴とする請求項乃至の何れか一つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける植付装置を車体の後部に連結した乗用田植機などを含む作業車両に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、HSTレバーの切り替え操作により油圧ポンプの斜板の角度を変更することで前進、停止、後進の切り替え、及び前後進における無段変速を行うHST装置と、HST装置からの出力を植付速、路上速、及び走行中立の何れかに切り替える副変速機構と、圃場への苗の植付け作業の入り切りを行うための植付けクラッチ等を備えた乗用田植機が知られている(例えば、先行特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の乗用田植機では、HSTレバーに植付けクラッチの入り切り操作を行うための植付け入り切りスイッチが設けられており、操作性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-123015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の作業車両では、HSTレバーに植付け入り切りスイッチが設けられているので、例えば、新車をトラックに載せて輸送する場合において、作業車両をトラックに載せ降ろしするための最小限の操作知識しか持っていない運搬業者は、HSTレバーを操作する際に、HSTレバーに設けられている植付け入り切りスイッチを無意識に触ってしまうことがある。その様な誤操作が行われた場合、トラックの荷台において作業車両の苗タンクが左右方向に移動する等して作業車両が破損してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の作業車両のこの様な課題に鑑み、変速レバーに設けられた切替スイッチの誤操作を防止出来る作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の本発明は、
走行車体(2)に搭載されたエンジン(20)と、
前記走行車体(2)に連結され、圃場に対し所定の作業が可能な作業装置(52)と、
前記エンジン(20)からの動力の走行系(10、11)への伝達を制御する変速装置(23)と、
前記変速装置(23)の出力を切り替える切替操作を行う変速レバー(33)と、を備え、
前記変速レバー(33)には、前記作業装置(52)の前記所定の作業の入り切りの切替操作を行う切替スイッチ(33b)が設けられており、
前記切替スイッチ(33b)にはカバー部材が着脱可能に設けられている、又は、前記切替スイッチ(33b)による前記切替操作を受け付けない非受付モードが設定可能に構成されており、
前記走行系(10、11)のロック状態の入り切りの切替操作を行う第1レバー(100)と、
前記第1レバー(100)の前記切替操作による前記ロック状態の入り切りを検知する第1検知部(110)と、
前記変速装置(23)から伝達される動力を、路上走行用速、作業用速、及び前記動力の前記走行系への伝達を行わない中立速の何れかに切り替えるための切替操作を行う第2レバー(36)と、
前記第2レバー(36)が前記切替操作により何れの位置に位置するかを検知する第2検知部(37)と、を備え、
前記第1検知部(110)の検知結果が前記ロック状態の入りを示しており、且つ、前記第2検知部(37)の検知結果が、前記中立速に対応する位置に前記第2レバー(36)が位置することを示している状況で、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、前記変速装置(23)の前記出力を強制的に停止させる、ことを特徴とする作業車両である。
第2の本発明は、
前記変速装置(23)は、入力側の油圧ポンプの斜板の角度を変更することにより前記出力を切り替えるHST装置(23)であり、
前記変速レバー(33)の位置に関わらず、前記斜板の角度を中立状態にすることで、前記HST装置(23)の前記出力を強制的に停止させる構成であって、
前記HST装置(23)の前記出力が強制的に停止された場合、前記変速レバー(33)が前記HST装置(23)からの前記出力を停止させるための停止位置に戻されたことが検知された後でなければ、前記変速レバー(33)による前記切替操作を受け付けない、ことを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
第3の本発明は、
前記状況下で、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、前記走行車体(2)が走行出来ない状態にあることを示す表示部(24)を備えた、ことを特徴とする第1又は第2の本発明の作業車両である。
第4の本発明は、
前記作業装置(52)の前記所定の作業は、苗の植付け作業であって、
前記第1レバー(100)は前記ロック状態の切り側に切り替えられており、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記路上走行用速に対応する位置に切り替えられたことが検知され、且つ、前記切替スイッチ(33b)により前記苗の植付け作業を入り状態に切り替える切替操作がされた場合、前記苗の植付け作業を入り状態にしない、又は、前記変速装置(23)の前記出力を強制的に停止させる、ことを特徴とする第1乃至第3の何れか一つの本発明の作業車両である。
本発明に関連する第の発明は、
走行車体(2)に搭載されたエンジン(20)と、
前記走行車体(2)に連結され、圃場に対し所定の作業が可能な作業装置(52)と、
前記エンジン(20)からの動力の走行系(10、11)への伝達を制御する変速装置(23)と、
前記変速装置(23)の出力を切り替える切替操作を行う変速レバー(33)と、を備え、
前記変速レバー(33)には、前記作業装置(52)の前記所定の作業の入り切りの切替操作を行う切替スイッチ(33b)が設けられており、
前記切替スイッチ(33b)にはカバー部材が着脱可能に設けられている、又は、前記切替スイッチ(33b)による前記切替操作を受け付けない非受付モードが設定可能に構成されている、ことを特徴とする作業車両である。
【0008】
また、本発明に関連する第の発明は、
前記非受付モードの設定により、前記非受付モードが設定されたことを示す情報が記録される不揮発性メモリ(61)を備えた、ことを特徴とする本発明に関連する第の発明の作業車両である。
【0009】
また、本発明に関連する第の発明は、
前記走行系(10、11)のロック状態の入り切りの切替操作を行う第1レバー(100)と、
前記第1レバー(100)の前記切替操作による前記ロック状態の入り切りを検知する第1検知部(110)と、
前記変速装置(23)から伝達される動力を、路上走行用速、作業用速、及び前記動力の前記走行系への伝達を行わない中立速の何れかに切り替えるための切替操作を行う第2レバー(36)と、
前記第2レバー(36)が前記切替操作により何れの位置に位置するかを検知する第2検知部(37)と、を備え、
前記第1検知部(110)の検知結果が前記ロック状態の入りを示しており、且つ、前記第2検知部(37)の検知結果が、前記中立速に対応する位置に前記第2レバー(36)が位置することを示している状況で、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、前記変速装置(23)の前記出力を強制的に停止させる、ことを特徴とする本発明に関連する第1又はの発明の作業車両である。
【0010】
また、本発明に関連する第の発明は、
前記変速装置(23)は、入力側の油圧ポンプの斜板の角度を変更することにより前記出力を切り替えるHST装置(23)であり、
前記変速レバー(33)の位置に関わらず、前記斜板の角度を中立状態にすることで、前記HST装置(23)の前記出力を強制的に停止させる構成であって、
前記HST装置(23)の前記出力が強制的に停止された場合、前記変速レバー(33)が前記HST装置(23)からの前記出力を停止させるための停止位置に戻されたことが検知された後でなければ、前記変速レバー(33)による前記切替操作を受け付けない、ことを特徴とする本発明に関連する第の発明の作業車両である。
【0011】
また、本発明に関連する第の発明は、
前記状況下で、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、前記走行車体(2)が走行出来ない状態にあることを示す表示部(24)を備えた、ことを特徴とする本発明に関連する第3又はの発明の作業車両である。
【0012】
また、本発明に関連する第の発明は、
前記作業装置(52)の前記所定の作業は、苗の植付け作業であって、
前記第1レバー(100)は前記ロック状態の切り側に切り替えられており、前記第2検知部(37)により、前記第2レバー(36)が前記路上走行用速に対応する位置に切り替えられたことが検知され、且つ、前記切替スイッチ(33b)により前記苗の植付け作業を入り状態に切り替える切替操作がされた場合、前記苗の植付け作業を入り状態にしない、又は、前記変速装置(23)の前記出力を強制的に停止させる、ことを特徴とする本発明に関連する第3乃至5の何れか一つの発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、変速レバー(33)に設けられた切替スイッチ(33b)の誤操作を防止出来る。なお、本発明によれば、このような効果に加えて、第1レバー(100)の切替操作により走行系(10、11)がロック状態に入っている場合は、第2レバー(36)が中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられると、変速装置(23)の出力が強制的に停止されるので、走行系(10、11)に動力が伝達されることが無く、走行系をロック状態にしているブレーキ機構の焼け付きや破損等の故障を防止出来る。
本発明に関連する第の発明によれば、変速レバー(33)に設けられた切替スイッチ(33b)の誤操作を防止出来る。
【0014】
また、本発明に関連する第の発明によれば、上記本発明に関連する第の発明の効果に加えて、作業車両のエンジンを停止しキーオフした後も非受付モードの設定を維持することが出来る。そのため、例えば、工場出荷段階において工場の作業者が非受付モードを一旦設定すれば、その情報は作業装置に内蔵された不揮発性メモリ(61)内に記録されているので、作業車両のエンジンを停止しキーオフした後に、再び、作業車両を起動させた場合でも、非受付モードの状態を維持すること出来て、誤操作防止の実効性が向上する。
【0015】
また、本発明に関連する第の発明によれば、上記本発明に関連する第1又はの発明の効果に加えて、第1レバー(100)の切替操作により走行系(10、11)がロック状態に入っている場合は、第2レバー(36)が中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられると、変速装置(23)の出力が強制的に停止されるので、走行系(10、11)に動力が伝達されることが無く、走行系をロック状態にしているブレーキ機構の焼け付きや破損等の故障を防止出来る。
【0016】
また、本発明に関連する第の発明によれば、上記本発明に関連する第の発明の効果に加えて、変速レバー(33)が停止位置に戻されたことが検知された後でなければ、変速レバーの切替操作を受け付けない構成としたことにより、HST装置(23)の出力を強制的に停止させる状況が解除された場合において、変速レバー(33)が例えば前進位置にあることにより、作業装置が急に動きだしたり、機体が急発進してしまうことが防止出来て、安全性の確保が図れる。
【0017】
また、本発明に関連する第の発明によれば、上記本発明に関連する第3又はの発明の効果に加えて、第1レバー(100)の切替操作により走行系(10、11)がロック状態に入っている場合は、第2レバー(36)が中立速に対応する位置以外の位置に切り替えられると、変速装置(23)の出力が強制的に停止されるので、走行系(10、11)に動力が伝達されることが無く、走行車体(2)が走行出来ない状態にあることを、例えば、モニタランプやセンタマスコット等の表示部(24)を点滅させる等して、作業者に知らせることが出来る。
【0018】
また、本発明に関連する第の発明によれば、上記本発明に関連する第3乃至5の何れか一つの発明の効果に加えて、走行系はロック状態で無い状況にあって、例えば、作業者が圃場において、作業車両で苗の植付け作業を開始するつもりで、第2レバー(36)を作業用速にすべきところを誤操作により路上走行用速に切り替えてしまった場合、その様な意図せぬ作業(誤作業)を行わせないことが出来て、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における、作業車両の一例である乗用田植機の側面図
図2】本実施の形態の乗用田植機の平面図
図3】本実施の形態の乗用田植機の主変速レバーの上部を左後方側から見た概略斜視図
図4】本実施の形態の乗用田植機の制御系の概要を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の作業車両の一実施の形態にかかる乗用田植機について説明する。
【0021】
図1及び図2は本実施の形態にかかる乗用田植機1の側面図と平面図である。
【0022】
同図に示す通り、本実施の形態の乗用田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0023】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両である。また、走行車体2の前部にはトランスミッションケース12が配置され、そのトランスミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に上記左右一対の前輪10,10が各々取り付けられている。
【0024】
また、トランスミッションケース12の背面部に車体メインフレーム15の前端部が固着されており、他方、その車体メインフレーム15の後端左右中央部に、走行車体2の前後方向に水平に設けた後輪上下動支点軸(図示省略)を軸中心にして左右一対の後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右一対の後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に上記左右一対の後輪11,11が取り付けられている。
【0025】
尚、左右一対の後輪ギヤケース18,18には、トランスミッションケース12の後壁から突出して設けた、左右一対の後輪ギヤケース18,18に連結した左右一対の後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
【0026】
エンジン20は車体メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(静油圧式無段階変速機)23を介してトランスミッションケース12内の副変速機構(図示省略)に伝達される。副変速機構に伝達された回転動力は、複数のギヤ部材により変速された後、走行系への走行動力と、植付装置52等のPTO系への外部取出動力とに分離して出力される。
【0027】
そして、走行動力は、デフロック機能付きのディファレンシャル機構を経由した後、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。
【0028】
また、トランスミッションケース12内の副変速機構は、HST23からの回転動力を路上走行用速(高速モード)と走行中立速(中立モード)と植付作業用速(低速モード)の三段に切り替え可能なギヤシフト式の構成であり、その副変速機構は作業者が、ハンドル34の左側に設けられた副変速レバー36(図1、2、4参照)の位置を切替操作することにより上記三段の何れかに切り替えられる構成である。
【0029】
なお、副変速レバー36が、上記走行中立速に対応する位置(中立位置)に切り替えられた場合には、副変速機構からの動力は、植付装置52等のPTO系側にのみ出力されて、走行系側には出力されない構成である。
【0030】
また、副変速機構の外部取出動力の出力側と植付装置52等のPTO系側との間には、植付クラッチ6(図4参照)が設けられているので、副変速機構からPTO系側に出力された動力が、植付装置52等に伝達されるか否かは、植付クラッチ6が入り状態であるか否かに依存している。
【0031】
副変速レバー36が何れの切り替え位置に位置するかを検知する第2検知センサ37(図4参照)が副変速レバー36の近傍に設けられている。なお、第2検知センサ37の検知結果は、制御部60に送信される。
【0032】
また、トランスミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって植付装置52へ伝動される。
【0033】
施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
【0034】
また、図1図2に示す通り、植付装置52の下部には、中央にセンターフロート53aと、その左右両側にサイドフロート53b、53cがそれぞれ設けられている。これらフロート53が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付部55により苗が植え付けられる。
【0035】
また、図1に示す通り、エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦席31が設置されている。操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵し、操縦席31側の上面において各種操作ボタンや表示部等を配置したモニターパネル(図示省略)が設けられたフロントカバー32があり、その上方に突き出したハンドルポスト35には、前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。
【0036】
また、ハンドル34の右側には、走行車体2の前進走行と後進走行の切り替え、及び走行速度などを設定する主変速レバー33(図2、4参照)が設けられている。主変速レバー33を操作することにより、制御部60を介して、HST23の出力が制御される。これについては、図4を用いて更に後述する。
【0037】
図4は、本実施の形態の乗用田植機1の制御系の概要を示すブロック図である。
【0038】
また、主変速レバー33の移動量(又は位置等)を検知する主変速レバー検知センサ7が設けられており、その検知結果は制御部60に送信される(図4参照)。制御部60は、その検知結果に応じた指令をトラニオン軸回動モータ8に出力することにより、主変速レバー33の操作に連動して、HST23のトラニオン軸9(図4参照)の回動量の調節が、トラニオン軸回動モータ8により行われる。これにより、HST23の出力は、前進、停止、後進の切り替え、及び前後進における無段変速が可能となる。
【0039】
なお、HST23の入力側の油圧ポンプに設けられた斜板にトラニオン軸9が連結されており、トラニオン軸9の回動量の調節により、斜板の傾斜角度が変化する構成である。また、斜板の傾斜を中立にすることにより、HST23の出力は停止される構成である。
【0040】
また、本実施の形態では、主変速レバー33のグリップ部33aの左側面には、植付入切スイッチ33bが、更にその下方には、フィンガレバー33cが左方向に突き出す様に設けられている(図3参照)。
【0041】
図3は、主変速レバー33の上部を左後方側から見た概略斜視図である。 植付入切スイッチ33bは、押すたびに制御部60に対して所定の信号を出力し、その信号を受け付けた制御部60は、植付クラッチ6に対して所定の指令を出力する。これにより、植付クラッチ6は「入り」状態と「切り」状態を交互に切り替える構成である。
【0042】
また、フィンガレバー33cは、右手の四本の指でグリップ部33aを掴んだ状態で、右手の親指で上向きに押し上げると植付装置52が上昇し、右手の親指で下向きに押し下げると植付装置52が下降する構成である。
【0043】
上述した様に、主変速レバー33上に植付入切スイッチ33bが設けられているので、何も対策をしていなければ、例えば、乗用田植機1の新車をトラックに載せて輸送する場合において、乗用田植機1をトラックに載せ降ろしするための最小限の操作知識しか持っていない運搬業者は、主変速レバー33を操作して前進走行又は後進走行させる際に、植付入切スイッチ33bを無意識に触ってしまうという誤操作で、トラックの荷台において植付装置52の苗タンクが左右方向に移動する等して破損してしまうおそれがある。
【0044】
そこで、本実施の形態の乗用田植機1では、この様な誤操作を受け付けない「植付切モード」が設定可能に構成されている。
【0045】
即ち、「植付切モード」の設定方法は次の通りである。
【0046】
作業者が植付入切スイッチ33bを所定時間(例えば、5秒)以上長押しすることで、制御部60は、「植付切モード」が設定されたと判定し、その「植付切モード」を示す情報を制御部60に内蔵された不揮発性メモリ61(図4参照)に記録すると共に、植付入切スイッチ33bへの通常の切替操作を受け付けない。
【0047】
これにより、例えば、乗用田植機1の工場出荷段階において工場の作業者が「植付切モード」を一旦設定すれば、その情報は不揮発性メモリ61内に記録されており、工場において乗用田植機1のエンジン20を停止しキーオフした後に、今度は運搬業者が、乗用田植機1のエンジン20を起動させた場合でも、「植付切モード」の状態が制御部60において維持されているので、制御部60は、植付入切スイッチ33bへの通常の切替操作を受け付けず、誤操作防止の実効性が向上する。
【0048】
また、上記構成によれば、「植付切モード」の状態に設定するために、専用のスイッチ等を設ける必要が無い。
【0049】
なお、「植付切モード」の設定方法は、上記の場合に限らず例えば、(1)停車ペダルを踏んだ状態で、植付入切スイッチ33bを所定時間(例えば、5秒)以上長押しするという設定方法でも良いし、(2)植付入切スイッチ33bを所定時間(例えば、3秒)以内に複数回(例えば、5回)連続して押す操作をするという設定方法でも良い。これにより、上記(1)の設定方法によれば、停車ペダルを踏むことも設定条件に加えることで、「植付切モード」が誤操作により簡単に設定されることを防止出来、また、上記(2)の設定方法によれば、更に設定条件を細かく規定することで、「植付切モード」が誤操作により簡単に設定されることを防止出来る。
【0050】
また、作業者が、上述した複数種類(3種類)の設定方法の内の何れか一つの方法を用いて「植付切モード」の設定操作をした場合において、制御部60は、「植付切モード」に設定されたと判定した場合、既存のブザー(図示省略)に所定の指令を出力して、当該ブザーを鳴らす構成としても良い。この構成により、既存のブザーを用いて、乗用田植機1が「植付切モード」の設定されたことを、例えば、その設定操作を行った作業者に知らせることが出来る。
【0051】
また、作業者が、上述した複数種類(3種類)の設定方法の内の何れか一つの方法を用いて「植付切モード」の設定操作をした場合において、制御部60は、「植付切モード」に設定されたと判定した後、当該「植付切モード」が継続中であることを作業者に知らせるために、既存のモニタランプ(図示省略)に所定の指令を出力して、当該モニタランプを点滅させる構成としても良い。この構成により、上述した様に、「植付切モード」が設定されたことを示す情報は不揮発性メモリ61内に記録されているので、制御部60からの指令により、既存のモニタランプを用いて、乗用田植機1が「植付切モード」を継続中であることを、例えば、上述した運搬業者或いは、圃場で植付作業を行おうとする作業者に知らせることが出来る。
【0052】
また、「植付切モード」が継続中であることを作業者に知らせるために、モニタランプを点滅させる構成に限らず例えば、既存のセンタマスコットランプ24(図1図2参照)を点滅させる構成でも良い。
【0053】
また、「植付切モード」が継続中であることを作業者に知らせるために、モニタランプを点滅させる構成に限らず例えば、既存の7セグメント表示器(図示省略)に「植付切モード」中であることを知らせる表示を行う構成でも良い。
【0054】
また、作業者が、上述した複数種類(3種類)の設定方法の内の何れか一つの方法を用いて「植付切モード」の設定操作をした場合において、その「植付切モード」の設定操作の直前において植付クラッチ6が入りの状態であった場合、制御部60は、「植付切モード」に設定されたと判定すると共に、植付クラッチ6に所定の指令を出力して、植付クラッチ6を強制的に切り状態にする構成としても良い。この構成により、「植付切モード」に突入した後において植付クラッチ6が入り状態を維持することを防止出来る。
【0055】
また、乗用田植機1が既に「植付切モード」中である場合において、作業者が、上述した複数種類(3種類)の設定方法の内の何れか一つの方法を用いて「植付切モード」の設定操作をした場合、制御部60は、継続中の「植付切モード」を解除する構成としても良い。これにより、継続中の「植付切モード」を解除することが出来る。
【0056】
また、乗用田植機1が既に「植付切モード」中である場合において、作業者が、上述した複数種類(3種類)の設定方法の内の何れか一つの方法を用いて「植付切モード」の設定操作をした場合に、制御部60が、継続中の「植付切モード」を解除する構成において、制御部60が、当該継続中の「植付切モード」を解除すると共に、既存のブザー(図示省略)に所定の指令を出力して、当該ブザーを鳴らす構成としても良い。この構成により、既存のブザーを用いて、「植付切モード」の設定が解除されたことを、例えば、その解除操作を行った作業者に知らせることが出来る。
【0057】
なお、本実施の形態の植付装置52は、本発明の作業装置の一例にあたる。また、本実施の形態のHST23は、本発明の変速装置の一例にあたり、また、本実施の形態の主変速レバー33は、本発明の変速レバーの一例にあたる。また、本実施の形態の植付入切スイッチ33bは、本発明の切替スイッチの一例にあたり、本実施の形態の「植付切モード」は、本発明の「非受付モード」の一例にあたる。
【0058】
次に、主として図4を用いて、傾斜地でも安全にPTO作業を行うための「スロープドライブPTOモード」と、それに関する誤操作対策について説明する。
【0059】
本実施の形態の乗用田植機1の操縦席31の周辺には、前輪10及び後輪11のロック状態の入り切りの切替操作を行うためのスロープドライブPTOレバー100(図4参照)が設けられている。また、スロープドライブPTOレバー100の「入り」側又は「切り」側への切替操作による前輪10及び後輪11のロック状態の入り又は切りを検知する第1検知センサ110(図4参照)が設けられている。なお、第1検知センサ110の検知結果は、制御部60に送信される。
【0060】
以上の構成において、まず、作業者は、副変速レバー36を中立位置に設定する。
【0061】
これにより、副変速機構からの動力は、前輪10及び後輪11側(走行系側)への伝達が停止されると共に、植付装置52側(PTO系側)にのみ伝達可能となる。
【0062】
なお、上記の副変速レバー36の中立位置への設定操作に先立って、主変速レバー33は、HST23の出力を「停止」させる位置(停止位置)に設定されており、また、植付クラッチ6は、「切り」状態に設定されているものとする。
【0063】
また、第2検知センサ37は、副変速レバー36が中立位置に設定されたことを検知すると、その検知結果を制御部60に送る。
【0064】
次に、副変速レバー36の中立位置への設定操作の後、作業者は、スロープドライブPTOレバー100を「入り」側に操作する。
【0065】
このスロープドライブPTOレバー100の「入り」側への操作に連動するロック連動機構(図示省略)により四輪ブレーキ(図示省略)が作動して、前輪10及び後輪11がロック状態となる。
【0066】
制御部60は、第2検知センサ37から送信される、副変速レバー36が中立位置に設定されたことを示す検知結果と、第1検知センサ110から送信される、スロープドライブPTOレバー100が「入り」側に設定されたことを示す検知結果と、を受信することにより、乗用田植機1において「スロープドライブPTOモード」が設定されたと判定する。
【0067】
この様にして設定された「スロープドライブPTOモード」の下で、次に、作業者が、植付入切スイッチ33bを操作して植付クラッチ6を「入り」にして、更に、主変速レバー33を、HST23の出力を「前進」側に設定する位置(前進位置)に操作する。
【0068】
これにより、傾斜地の圃場であっても、四輪ブレーキが作動することで前輪10及び後輪11がロック状態を維持すると共に、HST23からの動力が副変速機構を介して、植付装置52側(PTO系側)にのみ伝達されるので、安全にPTO作業(例えば、植付装置52の洗浄、機体から降りて植付装置(PTO)の動きを確認、残り苗の取出作業等)を行うことが出来る。
【0069】
次に、上述した「スロープドライブPTOモード」中の誤操作対策について説明する。
【0070】
なお、「スロープドライブPTOモード」中においては、上述した通り、副変速レバー36は「中立位置」に設定されており、且つ、スロープドライブPTOレバー100は「入り」状態の位置に設定されている。
【0071】
しかし「スロープドライブPTOモード」中において、作業者の誤操作により、副変速レバー36が、「中立位置」から、植付作業用速又は路上走行用速に対応する位置に変更される場合がある。
【0072】
「スロープドライブPTOモード」中において、この様な誤操作が発生した場合、何ら対策をしなければ、HST23からの動力が副変速機構を介して、ブレーキがかけられた状態の前輪10及び後輪11に伝達されて、ブレーキ機構が破損してしまう。
【0073】
そこで、本実施の形態の乗用田植機1では、「スロープドライブPTOモード」中において、副変速レバー36が、「中立位置」から、植付作業用速又は路上走行用速に対応する位置に変更されたことを第2検知センサ37が検知し、その検知結果が制御部60により受け付けられたことを条件として、制御部60は、主変速レバー33の操作位置に関わらず、トラニオン軸回動モータ8に対して所定の指令を送りトラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成とした。
【0074】
これにより、HST23から出力される駆動力はゼロになり、走行系側に伝達される駆動力もゼロになるので、ブレーキがかかった状態の前輪10及び後輪11が駆動することが無く、ブレーキ機構が焼けたり損傷する等して故障することが防止出来る。
【0075】
なお、作業者は、スロープドライブPTOレバー100を「入り」にして、上述したPTO作業を行い、その後、PTO作業をやめる際に主変速レバー33を「停止位置」に戻す。しかし、更にその後、機体をどこかに動かす際には、作業者は、主変速レバー33を例えば「前進位置」に切り替えると共に、「中立位置」にある副変速レバー36を「路上走行用速」又は「植付作業用速」に切り替えることにより、機体を動かそうとするが、このときに、誤操作でスロープドライブPTOレバー100を「入り」状態にしたとすると、制御部60が作動して、次の様にしてHSTの出力を強制的に停止させる構成である。即ち、HSTのトラニオン軸9に連結された斜板は「前進位置」に対応する傾斜角度を成しているが、制御部60からの指令により、斜板の傾斜を中立に戻す際に、トラニオン軸回動モータ8の回動速度を通常速度よりゆっくりした速度で戻す構成とした。これにより、前進走行を開始しようとする機体の急停車を防止し、安全性を一層確保するものである。
【0076】
なお、「スロープドライブPTOモード」中において、主変速レバー33は、通常、「前進位置」に設定されているので、トラニオン軸に連結された斜板は「前進位置」に対応する傾斜角度を成しているが、これを、斜板の傾斜を中立に戻す際に、トラニオン軸回動モータ8の回動速度を通常速度よりゆっくりした速度で戻す構成とした。これにより、植付装置52等のPTO系の駆動をゆっくり停止させることが出来るので、より安全性が確保出来る。
【0077】
また、本実施の形態の乗用田植機1では、「スロープドライブPTOモード」中において、上述した様に、制御部60の指令により、HST23からの出力が強制的に停止された場合、主変速レバー33が、HST23からの出力を停止させるための「停止位置」に戻されたことが、主変速レバー検知センサ7により検知された後でなければ、制御部60は、主変速レバー33による切替操作を受け付けない構成とした。
【0078】
これにより、作業者の操作により、主変速レバー33が「停止位置」に戻されたことが、主変速レバー検知センサ7により検知された後でなければ、主変速レバー33の切替操作を受け付けない構成としたことにより、HST23からの出力を強制的に停止させる状況が解除された場合において、主変速レバー33が例えば前進位置にあることにより、植付装置52等のPTO系が急に動きだしたり、機体が急発進してしまうことが防止出来て、安全性の確保が図れる。
【0079】
また、本実施の形態の乗用田植機1では、「スロープドライブPTOモード」中において、第2検知センサ37により、副変速レバー36が中立速に対応する「中央位置」以外の位置に切り替えられたことが検知された場合、制御部60からの所定の指令により、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部を点滅させることにより、走行車体2が走行出来ない状態(走行不可状態)にあることを知らせる構成とした。
【0080】
これにより、「スロープドライブPTOモード」中において、走行車体2が走行出来ない状態にあることを、モニタランプ或いはセンタマスコットランプ24を点滅させて、作業者に知らせることが出来る。
【0081】
なお、上記構成では、制御部60からの所定の指令により、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部を点滅させることにより、「スロープドライブPTOモード」中において走行車体2が走行出来ない状態にあることを知らせる構成について説明したが、これに限らず例えば、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部に代えて、ブザー等を間欠的に鳴らすことにより、「スロープドライブPTOモード」中において走行車体2が走行出来ない状態にあることを知らせる構成としても良い。
【0082】
また、上記構成では、制御部60からの所定の指令により、ブザー等を間欠的に鳴らすことにより、「スロープドライブPTOモード」中において走行車体2が走行出来ない状態にあることを知らせる構成について説明したが、これに限らず例えば、主変速レバー33が「停止位置」以外の位置に位置することが、主変速レバー検知センサ7により検知された場合に限り、制御部60は、ブザー等を間欠的に鳴らす構成としても良い。
【0083】
これにより、主変速レバー33が「停止位置」に位置するときは、そもそもHST23からの動力が出力されず、走行系側に動力が伝達されることがなく、仮に、副変速レバー36を「中立位置」以外の位置に切り替えられたとしても走行車体2が走行を開始することはなく安全な状態にあるので、ブザーを鳴らさないことにより、煩わしさを防ぐことが出来る。
【0084】
また、上記構成では、「スロープドライブPTOモード」中において、作業者の誤操作により、副変速レバー36が、「中立位置」から、植付作業用速又は路上走行用速に対応する位置に変更された場合に、副変速レバー36の位置を第2検知センサ37により検出する場合について説明したが、これに限らず例えば、第2検知センサ37に代えて、既存の後輪回転検知センサ(図示省略)等の検知結果により、走行車体2が走行中か停止中かを検知することが出来、走行車体2が走行状態にあることを検知した場合に、制御部60は、上述した様に、主変速レバー33の操作位置に関わらず、トラニオン軸回動モータ8に対して所定の指令を送りトラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成としても良い。
【0085】
また、上述した様に、第2検知センサ37に代えて、既存の後輪回転検知センサ(図示省略)等の検知結果を利用して、トラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成において、斜板の傾斜を中立に戻す際に、トラニオン軸回動モータ8の回動速度を通常速度よりゆっくりした速度で戻す構成としても良い。これにより、植付装置52等のPTO系の駆動をゆっくり停止させることが出来るので、より安全性が確保出来る。
【0086】
また、上述した様に、第2検知センサ37に代えて、既存の後輪回転検知センサ(図示省略)等の検知結果を利用して、トラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成において、制御部60の指令により、HST23からの出力が強制的に停止された場合、主変速レバー33が、HST23からの出力を停止させるための「停止位置」に戻されたことが、主変速レバー検知センサ7により検知された後でなければ、制御部60は、主変速レバー33による切替操作を受け付けない構成としても良い。これにより、上記と同様の効果が発揮される。
【0087】
また、上述した様に、第2検知センサ37に代えて、既存の後輪回転検知センサ(図示省略)等の検知結果を利用して、トラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成において、制御部60からの所定の指令により、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部を点滅させることにより、走行車体2が走行出来ない状態(走行不可状態)にあることを知らせる構成としても良い。これにより、上記と同様の効果が発揮される。
【0088】
また、第2検知センサ37に代えて、既存の後輪回転検知センサ(図示省略)等の検知結果を利用する上記構成では、制御部60からの所定の指令により、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部を点滅させることにより、「スロープドライブPTOモード」中において走行車体2が走行出来ない状態にあることを知らせる構成について説明したが、これに限らず例えば、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部に代えて、ブザー等を間欠的に鳴らすことにより、「スロープドライブPTOモード」中において走行車体2が走行出来ない状態にあることを知らせる構成としても良い。
【0089】
また、第2検知センサ37に代えて、既存の後輪回転検知センサ(図示省略)等の検知結果を利用する上記構成では、制御部60からの所定の指令により、ブザー等を間欠的に鳴らすことにより、「スロープドライブPTOモード」中において走行車体2が走行出来ない状態にあることを知らせる構成について説明したが、これに限らず例えば、主変速レバー33が「停止位置」以外の位置に位置することが、主変速レバー検知センサ7により検知された場合に限り、制御部60は、ブザー等を間欠的に鳴らす構成としても良い。これにより、上記と同様の効果が発揮される。
【0090】
また、上記構成では、「スロープドライブPTOモード」中において、上述した様に、誤操作対策として、制御部60の指令により、HST23からの出力が強制的に停止される場合について説明したが、これに限らず例えば、HST23からの出力を強制的に停止させることは行わないで、モニタランプ(図示省略)或いはセンタマスコットランプ24等の表示部を点滅させるか、又は、ブザー等を鳴らす等して、作業者に対して警告のみ行う構成としても良い。
【0091】
これにより、走行に関しては、規制は行わずに警告のみを行うことでスイッチや機械が壊れた場合等、緊急時の作業性を失わない。
【0092】
なお、本実施の形態のスロープドライブPTOレバー100は、本発明の第1レバーの一例にあたり、本実施の形態の第1検知センサ110は、本発明の第1検知部の一例にあたる。また、本実施の形態の副変速レバー36は、本発明の第2レバーの一例にあたり、本実施の形態の第2検知センサ37は、本発明の第2検知部の一例にあたる。
【0093】
次に、作業者が圃場において、苗の植付作業を開始するつもりで、副変速レバー36を「植付作業用速」に設定すべきところを誤操作により「路上走行用速」に切り替えてしまった場合において、その様な意図せぬ植付作業(誤作業)を行わせない構成及び動作について説明する。
【0094】
即ち、本実施の形態の乗用田植機1では、制御部60は、第1検知センサ110から受け付けた検知結果により、前輪10及び後輪11のロック状態が「切り」状態であると判定している状況の下で、第2検知センサ37からの検知結果により副変速レバー36が「路上走行用速」に対応する位置に位置すると判定し、その後、植付入切スイッチ33bからの出力信号により植付クラッチ6を「切り」状態から「入り」状態に切り替える切替操作が行われたと判定した場合、植付クラッチ6を「入り」状態にする指令を出力しない構成とした。
【0095】
これにより、作業者が圃場において、苗の植付作業を開始するつもりで、副変速レバー36を「植付作業用速」に設定すべきところを誤操作により「路上走行用速」に切り替えて、その後、植付作業を開始しようとした場合、その様な意図せぬ植付作業(誤作業)を行わせないことが出来るので、例えば、苗の植付け姿勢が傾斜したまま植付けられるという誤作業が防止出来て、作業性が向上する。
【0096】
また、上記構成の場合、植付クラッチ6を「切り」状態から「入り」状態に切り替えるために、作業者が行った植付入切スイッチ33bの切替操作が、制御部60において受け付けられなかったことを、ブザーを間欠的に鳴らす、又は、植付モニターランプ(図示省略)を点滅させる、又は、センタマスコットランプ24(図1参照)を点滅させるなどにより、作業者に知らせる構成としても良い。
【0097】
なお、上記構成では、意図せぬ植付作業(誤作業)を行わせないために、制御部60は、植付クラッチ6を「入り」状態にする指令を出力しない場合について説明したが、これに限らず例えば、制御部60は、主変速レバー33の操作位置に関わらず、トラニオン軸回動モータ8に対して所定の指令を送りトラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成としても良い。この構成の場合でも、上記と同様の効果を発揮する。
【0098】
また、上記構成では、副変速レバー36を「植付作業用速」に設定すべきところを誤操作により「路上走行用速」に切り替えて、その後、植付入切スイッチ33bを操作して植付作業を開始しようとした場合について説明したが、これに限らず例えば、植付クラッチ6が「入り」状態であるときに、副変速レバー36が「路上走行用速」に切り替えられたと、制御部60が判定した場合でも、制御部60は、植付クラッチ6に所定の指令を出して「切り」状態に切り替える、又は、トラニオン軸回動モータ8に対して所定の指令を送りトラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成としても良い。これにより、「路上走行用速」で植付作業を行うという様な意図せぬ植付作業(誤作業)を行わせないことが出来るので、例えば、苗の植付け姿勢が傾斜したまま植付けられるという誤作業が防止出来て、作業性が向上する。
【0099】
また、上記実施の形態では、主変速レバー33に設けられた植付入切スイッチ33bの誤操作を防止するために、植付入切スイッチ33bによる切替操作を受け付けない植付切モードを設けた構成について説明したが、これに限らず例えば、植付入切スイッチ33bを操作出来ない様に、植付入切スイッチ33bを覆うカバー部材(図示省略)を、主変速レバー33の表面に着脱可能に取り付けた構成としても良い。これにより、上記と同様の効果が発揮される。
【0100】
また、上記実施の形態では、「スロープドライブPTOモード」が主として傾斜地の圃場において用いられる場合について説明したが、これに限らず例えば、平地の圃場において、「スロープドライブPTOモード」が用いられても良く、その場合でも、副変速レバー36が「中立位置」以外の位置に切り替えられるという誤操作が発生した場合は、上記と同様、制御部60が、HST23からの出力を強制的に停止させることにより、ブレーキ機構の破損を防止し、PTO作業の安全性が確保出来る。
【0101】
また、上記実施の形態では、「スロープドライブPTOモード」中における副変速レバー36の誤操作対策として、主変速レバー33の操作位置に関わらず、トラニオン軸回動モータ8に対して所定の指令を送りトラニオン軸9の回動量を調節することで、斜板の傾斜を中立にしてHST23からの出力を強制的に停止させる構成について説明したが、これに限らず例えば、主変速レバー33をワイヤー等で引っ張ることにより、主変速レバー33の位置を強制的に「停止位置」に移動させる構成としても良い。この場合でも、上記と同様の効果を発揮する。
【0102】
なお、スロープドライブPTOレバー100を「入り」状態に出来る条件として、副変速レバー36が「中立位置」にあり、且つ、主変速レバー33が「停止位置」にあることとしても良い。
【0103】
また、スロープドライブPTOレバー100が「入り」のときは、副変速レバー36は、「中立位置」から動かすことが出来ない様にメカロックさせる構成としても良い。
【0104】
また、副変速レバー36を「中立位置」から(更に倒す・引っ張る・押す)等の操作をすると(スロープドライブPTOレバーを入と同じ状態)4輪ブレーキがかかる構成としても良い。
【0105】
また、スロープドライブPTOレバー100を入のとき主変速レバー33は前後進共に操作可能であるが、主変速レバー33の位置が停止位置でないとスロープドライブPTOレバー100を操作できない構成としても良い。これにより、急発進防止が可能となる。
【0106】
また、駐車ペダルを入りにしないと、スロープドライブPTOレバー100は操作できない構成としても良い。
【0107】
また、スロープドライブPTOレバー100を切にすると主変速レバー33は停止位置へ案内される構成としても良い。
【0108】
また、スロープドライブPTOレバー100を入りにすると、主副変速の一方または両方が中立へ案内される構成としても良い。
【0109】
また、上記実施の形態では、スロープドライブPTOモードの入り切りは、スロープドライブPTOレバー100により行う場合について説明したが、これに限らず例えば、レバーではなく入り切りスイッチであっても良く、どの様な構成であっても良い。
【0110】
次に、本実施の形態の乗用田植機1において、走行車体2の左右両側に昇降可能に設けられた線引きマーカ25(図1参照)を、作業者の意図に基づいて、任意の側の線引きマーカ25だけ作動させる構成について説明する。
【0111】
本実施の形態の乗用田植機1では、左右一対の線引きマーカ25(図1参照)の内、任意の側の線引きマーカ25を作動させる(入り切りさせる)ことが出来るマーカ手動スイッチ左とマーカ手動スイッチ右(図示省略)と、が主変速レバー33のグリップ部33a(図3参照)の前面側に横方向に並べて配置されている。マーカ手動スイッチ左とマーカ手動スイッチ右は、オルタネイトタイプであっても良いし、又は、モーメンタリタイプであっても良い。なお、この構成例を「オートマーカ(1)の構成例」と記載する場合がある。
【0112】
これにより、マーカ手動スイッチ左とマーカ手動スイッチ右の手動スイッチを任意に操作することで、作業者の意図に基づいた任意の側の線引きマーカを作動させることが可能となる。
【0113】
なお、従来より、乗用田植機の旋回操作に対応して、左右一対の線引きマーカの何れか一方の線引きマーカを自動的に交互に昇降させるオートマーカ機能が知られているが、そのオートマーカ機能が「入り」状態の下では、植付作業の開始の際に、何れか一方の線引きマーカが自動で降りてから、それが意図した側と異なる側の線引きマーカである場合には、「切替スイッチ」を操作することで、意図した側の線引きマーカに入れ替えている。また、両方の線引きマーカを降ろすための「両出しスイッチ」も知られている。なお、上記オートマーカ機能の入り切りは「自動スイッチ」を操作することにより行われる。
【0114】
なお、上記オートマーカ(1)の構成例で、マーカ手動スイッチ左(又は、マーカ手動スイッチ右)が操作された場合、制御部60は、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力を待機状態にする構成としても良い。なお、この構成例を「オートマーカ(2)の構成例」と記載する場合がある。
【0115】
また、上記オートマーカ(2)の構成例で、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態にあって、それと同じ側のマーカ手動スイッチ左(又は、マーカ手動スイッチ右)が操作された場合、制御部60は、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力の待機状態をキャンセルさせる構成としても良い。なお、この構成例を「オートマーカ(3)の構成例」と記載する場合がある。
【0116】
また、上記オートマーカ(2)の構成例で、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態の場合、制御部60からの所定の指令により、マーカ左ランプ(又は、マーカ右ランプ)(図示省略)を点滅させる構成としても良い。これにより、マーカランプを点滅させることで、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態にあることを、作業者に知らせることが出来る。なお、この構成例を「オートマーカ(4)の構成例」と記載する場合がある。
【0117】
また、上記オートマーカ(2)の構成例で、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態にあって、植付装置52が下降された場合、制御部60は、上述した、オートマーカ機能の「自動スイッチ」や「両出しスイッチ」の入り切り状態に関わらず、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態にあることを優先的に処理するために、左側(又は、右側)の線引きマーカをセット位置まで作動させる構成としても良い。なお、この構成例を「オートマーカ(5)の構成例」と記載する場合がある。
【0118】
また、上記オートマーカ(5)の構成例で、マーカ手動スイッチ左(又は、マーカ手動スイッチ右)が操作された後の左側(又は、右側)の線引きマーカの動作は1回のみとし、植付装置52を下降させて、左側(又は、右側)の線引きマーカのセット位置までの作動が完了した後は、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力の待機状態をリセットする構成としても良い。これにより、線引きマーカの手動操作が一度完了した後は、線引きマーカの手動操作はリセットされて、そのリセット以降の線引きマーカの動作は、従来通りの、旋回操作、即ち、植付装置52の昇降動作と連動して、左右一対の線引きマーカが交互に作動することが可能となる。なお、この構成例を「オートマーカ(6)の構成例」と記載する場合がある。
【0119】
また、上記オートマーカ(2)の構成例で、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態にあって、それとは反対側のマーカ手動スイッチ右(又は、マーカ手動スイッチ左)が操作された場合、制御部60は、後から操作されたマーカ手動スイッチによる操作を優先させて、右側(又は、左側)の線引きマーカを降ろすための信号出力を待機状態とさせる構成としても良い。これにより、マーカ手動スイッチ左(又は、右)の手動操作を誤った場合、わざわざもう一度、それと同じ側のマーカ手動スイッチ左(又は、右)を操作して待機状態をキャンセルしなくても、出したい側に対応したマーカ手動スイッチ右(又は、左)を操作すれば、誤操作により生じた待機状態はキャンセルされると共に、出したい側である右側(又は、左側)の線引きマーカを降ろすための信号出力を待機状態とすることが出来る。なお、この構成例を「オートマーカ(7)の構成例」と記載する場合がある。
【0120】
また、上記オートマーカ(2)の構成例で、左側(又は、右側)の線引きマーカを降ろすための信号出力が待機状態にあって、それとは反対側のマーカ手動スイッチ右(又は、マーカ手動スイッチ左)が操作された場合、制御部60は、左側と右側の両方の線引きマーカを降ろすための信号出力を待機状態とする構成としても良い。これにより、左右両側の線引きマーカが同時に手動操作可能ななることで、作業者の意図通りに線引きマーカを作動させることが出来る。なお、この構成例を「オートマーカ(8)の構成例」と記載する場合がある。
【0121】
また、上述したオートマーカ機能を備えた乗用田植機1において、次回、線引きマーカを降ろす時の左右の向きを制御部60の不揮発性メモリ61に記憶させる構成としても良い。これにより、エンジンを停止した後、作業を再開する場合でも、降ろすべき線引きマーカの向きが不揮発性メモリ61に記憶されているので、作業者がわざわざ線引きマーカの向きを修正する必要がなくなる。
【0122】
なお、上述した乗用田植機1において、隣接する2条の内、少なくとも何れか一方の条で、連続した欠株が発生したことを検出可能な欠株センサ(図示省略)を備えた構成としても良い。ここで、乗用田植機は、マット苗タイプに限らず例えば、ポット苗タイプであっても良い。この構成において、制御部60は、欠株センサの検知結果から、連続した欠株が検出されたと判定した場合、通常のブザーの鳴らし方とは異なる鳴らし方(例えば、ブザーの音色を異ならせる)で、作業者に注意を促すことが出来る。なお、この構成例を「欠株センサ(1)の構成例」と記載する場合がある。
【0123】
また、上記欠株センサ(1)の構成例で、連続した欠株を検出した場合、制御部60は、ランプを点灯・点滅させて作業者に知らせる構成としても良い。これにより、欠株が発生したことをランプの表示で作業者に注意を促すことが出来る。なお、この構成例を「欠株センサ(2)の構成例」と記載する場合がある。
【0124】
また、上記欠株センサ(1)の構成例で、連続した欠株を検出した場合、制御部60は、欠株センサの検知結果から、何れの条で欠株が検出されたのかをモニタの7セグメント表示器に表示させる構成としても良い。例えば、1条目と2条目を検知対象として欠株の有無を検知する欠株検知センサからの検知結果が、欠株の存在を示している場合、制御部60は、モニタの7セグメント表示器に、P-12と表示し、また、7条目と8条目を検知対象として欠株の有無を検知する欠株検知センサからの検知結果が、欠株の存在を示している場合、制御部60は、モニタの7セグメント表示器に、P-78と表示する。これにより、隣接する2条を一つのグループとして、何れのグループの条で欠株が発生しているかを、モニタ表示で作業者に知らせることが出来る。なお、この構成例を「欠株センサ(3)の構成例」と記載する場合がある。
【0125】
また、上記欠株センサ(3)の構成例で、連続した欠株を複数の欠株センサで検出した場合、制御部60は、モニタの7セグメント表示器における表示を順次切り替えて表示する構成としても良い。例えば、1条目と2条目を検知対象として欠株の有無を検知する欠株検知センサからの検知結果と、5条目と6条目を検知対象として欠株の有無を検知する欠株検知センサからの検知結果とが、何れも欠株の存在を示している場合、制御部60は、モニタの7セグメント表示器に、P-12を表示した後、P-56を表示し、再び、P-12を表示した後、P-56を表示するという動作を繰り返す。これにより、複数の欠株センサで欠株の発生が検出された場合でも、何れのグループの条で欠株が発生しているかを、モニタ表示で作業者に知らせることが出来る。
【0126】
次に、本実施の形態の乗用田植機1において、施肥ロールの回転良否を判定する構成について説明する。
【0127】
即ち、植付クラッチ6が「入り」状態であって、後輪11が1回転したことを後輪回転センサで検出した場合、施肥の繰り出しを検出する施肥の繰り出しセンサの入力パルスが所定値未満(例えば、3パルス未満)であった場合、制御部60は、施肥ロールが回転していない(即ち、停止している)と判定する構成である。この様に施肥の繰り出しセンサを設けるだけで、植付クラッチ6が「入り」状態であるにも関わらず施肥ロールが回っていないという状態を検知可能となる。なお、この構成例を「施肥回転良否判定(1)の構成例」と記載する場合がある。
【0128】
なお、上記施肥回転良否判定(1)の構成例で、後輪11が1回転したことを後輪回転センサで検出した場合、施肥の繰り出しセンサの入力パルスが所定値以上(例えば、3パルス以上)であった場合、制御部60は、施肥ロールが回転していると判定する構成としても良い。なお、この構成例を「施肥回転良否判定(2)の構成例」と記載する場合がある。
【0129】
また、上記施肥回転良否判定(1)の構成例で、植付クラッチ6が「切り」状態になった場合に、制御部60は、後輪11の1回転を検出する後輪回転センサのパルスをリセットする構成としても良い。仮に、後輪回転センサのパルスをリセットする構成としなければ、どの状態から後輪11が1回転したのかがわからないからである。この様に、植付クラッチ6が「切り」状態になった場合に、後輪回転センサのパルスをリセットすることで、確実に植付クラッチ6が「入り」状態になったときから後輪11が1回転した時点において、施肥ロールの繰出判定が行える。なお、この構成例を「施肥回転良否判定(3)の構成例」と記載する場合がある。
【0130】
また、上記施肥回転良否判定(1)の構成例で、植付クラッチ6が「切り」状態になった場合に、制御部60は、施肥の繰り出しセンサの入力パルスをリセットする構成としても良い。仮に、施肥の繰り出しセンサをリセットする構成としなければ、どの状態から施肥の繰り出しの監視を行っているのかが分からなくなるからである。この様に、植付クラッチ6が「切り」状態になった場合に、施肥の繰り出しセンサをリセットすることで、確実に植付クラッチ6が「入り」状態になったときから後輪11が1回転した時点において、施肥ロールの繰出判定が行える。なお、この構成例を「施肥回転良否判定(4)の構成例」と記載する場合がある。
【0131】
また、上記施肥回転良否判定(1)~(4)の何れか一つの構成例で、制御部60は、施肥ロールが停止していると判定した場合、ブザーを鳴らす構成としても良い。これにより、植付クラッチ6が「入り」状態であるにも関わらず、施肥ロールが回転していないという状態を作業者に知らせることが出来る。
【0132】
また、上記施肥回転良否判定(1)~(4)の何れか一つの構成例で、制御部60は、施肥ロールが停止していると判定した場合、既存の肥料切れランプ又は、既存の肥料詰まりランプを点滅させる構成としても良い。これにより、植付クラッチ6が「入り」状態であるにも関わらず、施肥ロールが回転していないという状態を作業者に知らせることが出来ると共に、ランプを点滅させることで異常であることが分かり易くなる。
【0133】
また、上記施肥回転良否判定(1)~(4)の何れか一つの構成例で、制御部60は、施肥ロールが停止していると判定した場合、既存の肥料切れランプと、既存の肥料詰まりランプとを、同時に又は交互に点滅させる構成としても良い。これにより、植付クラッチ6が「入り」状態であるにも関わらず、施肥ロールが回転していないという状態を作業者に知らせることが出来ると共に、ランプを同時に又は交互に点滅させることで異常であることが分かり易くなる。
【0134】
また、上記施肥回転良否判定(1)~(4)の何れか一つの構成例で、制御部60は、施肥ロールが停止していると判定した場合、既存のセンタマスコットランプ24を点滅させる構成としても良い。これにより、植付クラッチ6が「入り」状態であるにも関わらず、施肥ロールが回転していないという状態を作業者に知らせることが出来ると共に、ランプを点滅させることで異常であることが分かり易くなる。
【0135】
また、上記施肥回転良否判定(1)~(4)の何れか一つの構成例で、制御部60は、施肥ロールが停止していると判定した場合、モニタの既存の7セグメント表示器に、施肥装置に異常が発生していることを知らせる表示(例えば、SEHI-NG等の表示)を行う構成としても良い。これにより、植付クラッチ6が「入り」状態であるにも関わらず、施肥ロールが回転していないという状態を作業者に表示により分かり易く知らせることが出来る。
【0136】
次に、乗用田植機がポット田植機の場合における、電動で水タンクポンプを作動させて水を散布する構成について説明する。
【0137】
従来のポット田植機の水タンクの吐出タイミングは時間で行っているため、車速が遅いと相対的に水の散布が多めになって水タンクの水がすぐになくなり、また、車速が速いと水の散布が少なめになってしまって泥だまりが発生してしまうという問題がある。
【0138】
そこで、本実施の形態のポット田植機では、車速が遅い場合は、水の散布タイミングを遅らせる構成とし、また、車速が速い場合は、水の散布タイミングを早くする構成とした。これにより、車速に応じて適切に水を散布することが出来るので、水のまきすぎ、及び泥だまりの発生を防止することが出来る。
【0139】
なお、上記実施の形態のポット田植機では、車速が遅い場合は、水の散布タイミングを遅らせ、車速が速い場合は、水の散布タイミングを早くする構成とした場合について説明したが、これに限らず例えば、水の散布タイミングを走行距離によって決定する(例えば、10m走行する毎に散布する等)構成としても良い。これにより、走行距離に応じて適切に水を散布することが出来るので、水のまきすぎ、及び泥だまりの発生を防止することが出来る。また、この構成の場合、植付クラッチ6が「入り」状態にある場合において、水の散布タイミングを走行距離によって決定する(例えば、10m走行する毎に散布する等)構成としても良い。これにより、植付作業時以外のときには、不要な水の散布を行なわせないことが出来る。
【0140】
なお、上記実施の形態では、主変速レバー33に植付入切スイッチ33bが設けられており、その植付入切スイッチ33bの誤操作を防止出来る構成について説明したが、これに限らず例えば、主変速レバー33に施肥入切スイッチが設けられており、その施肥入切スイッチの誤操作を防止出来る構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明にかかる作業車両は、変速レバーに設けられた切替スイッチの誤操作を防止出来る作業車両として有用である。
【符号の説明】
【0142】
1 乗用田植機
2 走行車体
3 昇降リンク装置
10 前輪
11 後輪
12 トランスミッションケース
15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース
23 HST
33 主変速レバー
33b 植付入切スイッチ
34 ハンドル
36 副変速レバー
37 第2検知センサ
52 植付装置
60 制御部
61 不揮発性メモリ
100 スロープドライブPTOレバー
110 第1検知センサ
図1
図2
図3
図4