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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20220913BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20220913BHJP
   F25B 1/04 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F25B1/00 304P
F25B1/00 304L
F25B1/00 396Z
F25B49/02 510A
F25B1/04 Y
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018185474
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056516
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板倉 俊二
(72)【発明者】
【氏名】小峰 健治
(72)【発明者】
【氏名】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
(72)【発明者】
【氏名】船田 和也
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-101558(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174054(WO,A1)
【文献】特開平11-228947(JP,A)
【文献】特開2015-143359(JP,A)
【文献】特開平06-241623(JP,A)
【文献】特開2005-257232(JP,A)
【文献】特開2018-146208(JP,A)
【文献】特開2016-080331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 1/04
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒を、固定スクロールに対して旋回スクロールを旋回させることにより圧縮するスクロール圧縮機と、
前記混合冷媒を減圧させる膨張弁と、
前記スクロール圧縮機が配置される空間を密閉する筐体の圧縮機シェル温度を測定するシェル温度センサと、
本冷凍サイクル装置の運転状態を検出するセンサと、
前記運転状態により特定された本冷凍サイクル装置の負荷状態に基づいて、前記混合冷媒が前記スクロール圧縮機から吐出されるときの前記混合冷媒の理論吐出温度を算出し、前記理論吐出温度が目標温度に等しいときに前記混合冷媒が2相状態で前記スクロール圧縮機に吸入されるように、前記目標温度を算出する制御回路とを備え、
前記制御回路は、さらに、
前記圧縮機シェル温度が閾値温度より小さいときで、かつ、前記目標温度が前記閾値温度より小さいときに、前記理論吐出温度が前記目標温度に近づくように、前記膨張弁の開度を調整し、
前記圧縮機シェル温度が前記閾値温度より小さいときで、かつ、前記目標温度が前記閾値温度より大きいときに、前記理論吐出温度が前記閾値温度に近づくように、前記開度を調整し、
前記圧縮機シェル温度が前記閾値温度より大きいときに、前記旋回スクロールの旋回が停止するように、前記スクロール圧縮機を制御
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記理論吐出温度が100℃より小さくなるように、前記開度を調整する
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記混合冷媒が前記スクロール圧縮機から吐出されるときの前記混合冷媒の吐出温度を測定する吐出温度センサをさらに備え、
前記制御回路は、前記吐出温度にさらに基づいて前記開度を調整する
請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機、冷蔵機器、給湯器等の冷凍サイクル装置には、冷媒が循環する冷媒回路に、圧縮機及びアキュムレータが接続されたものがある。このような冷凍サイクル装置で使用する冷媒は、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)がより一層低い冷媒へ切り替えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-294066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GWPが低い冷媒としては、従来の冷媒と比べて分子間結合が弱い冷媒を含む混合冷媒の利用が検討されている。このような冷媒は、大気中で分解し易く、温暖化への影響も小さくなるので、環境への負荷を低減する観点において望ましい。しかしながら、分子間結合が弱い冷媒の一例として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、高温環境下で分解されたときや、冷媒回路に残留する水分や酸素と反応することで酸化や分解を起こしたときに、冷媒から酸が発生するおそれがある。冷凍サイクル装置内で酸が発生した場合には、その酸によって冷媒の分解が促進され、また、その酸で金属部品が酸で腐食するなどにより、冷凍サイクル装置の損傷を招くおそれがある。
【0005】
所定の能力や冷媒循環量を確保しながら、冷媒温度(吐出温度)を所定の温度以下に抑制し、圧縮機の信頼性を担保する従来技術として、湿り吸入制御が知られている。この湿り吸入制御は、モータ温度の上限の制約への対応や、冷凍機油の劣化を防止することを主眼に置いたものである。湿り吸入制御では、吐出温度が予め定めた所定の上限温度以下になる様、膨張弁等の絞り機構等により、吸入冷媒の乾き度(密度)を低減(密度増加)させることにより、吐出温度を低下させている。吐出温度と圧縮部(機械部)の温度は、概ね相関性があるため、吐出温度を監視しながら、湿り吸入制御を行うことで、圧縮部の温度を下げる効果も得られる。
【0006】
しかしながら、スクロール圧縮機は、構造的要因(冷凍機油貯留部と圧縮部位置の関係性)で、ロータリ圧縮機より、圧縮部温度が上昇しやすい。このため、スクロール圧縮機では、吐出温度を「湿り吸入制御」で制御しても、圧縮部温度の高い状態が継続するケースがある。したがって、従来冷媒よりGWPが低い安定性の低い冷媒をスクロール圧縮機で用いた場合は、従来の湿り吸入制御では、冷媒分解が生じてしまい、酸の生成、冷凍サイクル装置の金属部品の腐食が生じてしまうという課題があった。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、スクロール圧縮機を備えた場合において、冷媒の分解を抑制する冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する冷凍サイクル装置の一態様は、スクロール圧縮機と膨張弁とシェル温度センサとセンサと制御回路とを備えている。前記スクロール圧縮機は、固定スクロールに対して旋回スクロールを旋回させることにより、混合冷媒を圧縮する。前記混合冷媒は、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含んでいる。前記膨張弁は、前記混合冷媒を減圧する。前記シェル温度センサは、前記スクロール圧縮機の筐体の温度である圧縮機シェル温度を測定する。前記センサは、本冷凍サイクル装置の運転状態を検出する。前記制御回路は、前記運転状態により特定された本冷凍サイクル装置の負荷状態に基づいて、前記混合冷媒が前記スクロール圧縮機から吐出されるときの前記混合冷媒の理論吐出温度を算出し、前記理論吐出温度が目標温度に等しいときに、前記混合冷媒が2相状態で前記スクロール圧縮機に吸入されるように、前記目標温度を算出する。前記制御回路は、さらに、前記圧縮機シェル温度が閾値温度より小さいときで、かつ、前記目標温度が前記閾値温度より小さいときに、前記理論吐出温度が前記目標温度に近づくように、前記膨張弁の開度を調整し、前記圧縮機シェル温度が前記閾値温度より小さいときで、かつ、前記目標温度が前記閾値温度より大きいときに、前記理論吐出温度が前記閾値温度に近づくように、前記開度を調整し、前記圧縮機シェル温度が前記閾値温度より大きいときに、前記旋回スクロールの旋回が停止するように、前記スクロール圧縮機を制御する。
【発明の効果】
【0009】
開示の冷凍サイクル装置は、冷媒の分解を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
図2図2は、実施例の冷凍サイクル装置のスクロール圧縮機を示す部分断面図である。
図3図3は、実施例の冷凍サイクル装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する冷凍サイクル装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する冷凍サイクル装置が限定されるものではない。
【実施例
【0012】
実施例の冷凍サイクル装置としては、空気調和装置を一例として、1台の室外機に1台の室内機が接続され、室内機が冷房運転または暖房運転を行うことが可能に構成されたものを説明する。図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
【0013】
[冷媒]
まず、実施例の冷凍サイクル装置1で使用される冷媒について説明する。実施例の冷凍サイクル装置1は、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、例えば、炭素原子間の二重結合を有するHFO冷媒や、炭素原子間の三重結合を有するトリフルオロプロピンがある。また、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒としては、トリフルオロヨードメタンがあり、エーテル結合(HFE冷媒とも言う)を持つ冷媒としてはHFE-143m等が挙げられる。これらの冷媒は、冷凍サイクル装置の中での安定性が低い。また、これらの冷媒は、大気中での安定性も低く、GWPが比較的低い傾向がある。その代わり、当該冷媒は、圧力が比較的低い。圧力の低い冷媒は、冷凍サイクル装置の作動流体として用いると、冷媒性能の指標の一つである体積能力(単位はkJ/m)が低くなる。そのため、冷凍サイクル装置の作動流体として用いる場合は、他の冷媒性能の高い冷媒(例えば、R32)と混合して用いることが考えられている。本実施例では、炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒の「GWPが低い」という、環境負荷が小さいという特性を十分に発揮するため、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒を少なくとも20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。
【0014】
炭素原子間の結合として、単結合を持つ冷媒のうち、冷凍サイクル装置で使用された実績があり、不燃性、低毒性、かつ、オゾン層破壊係数(ODP)=0の冷媒でGWPが一番低い単一冷媒はR134a(GWP:1430)である。本実施例の「低GWP冷媒」はR134aよりもGWPが低いものとする。
ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、塩素(原子量:35.5)と炭素との結合を有するR12を代表としたクロロフルオロカーボン、臭素(原子量:79.9)と炭素との結合を持つハロン1301、ヨウ素(原子量:126.9)と炭素との結合を持つトリフルオロヨードメタン(CFI)がある。
塩素を含むR12は、GWPが10900である。臭素を含むハロン1301は、GWPが7140である。ヨウ素を含むトリフルオロヨードメタンは、GWPが1以下である。このことからわかるように、ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、ハロゲン族元素の原子量が大きい程、GWPが低い。なお、上記した各冷媒のGWPは、「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告等に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七等に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数(フロン類GWP告示)(平成28年経済産業省・環境省告示第2号)」において定められたものである。トリフルオロヨードメタンのGWPは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、略称:NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization)[平成30年8月13日検索]のインターネットサイト<URL:http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201207f_tech/index.html>において定められたものである。
【0015】
ハロゲン族元素の原子量と、当該ハロゲン族元素を含む代表的な冷媒のGWPの関係は、以下の式で示すことができる。
(原子量)=-4.0×10-8×(GWP)-3.0×10-4×(GWP)+10.58
上記式から、GWPをR134a(GWP:1430)よりも低くするためには、炭素(原子量:12)の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒であることが必要だとわかる。
説明の便宜上、以下の説明において単に冷媒と称した場合には、上述した混合冷媒を指す。
【0016】
[冷凍サイクル装置の構成]
図1に示すように、実施例の冷凍サイクル装置1は、室外機2と、室外機2に液管8及びガス管9を介して接続された室内機5と、を備えている。液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に接続され、他端が分岐して室内機5の各液管接続部53にそれぞれ接続されている。ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に接続され、他端が分岐して室内機5の各ガス管接続部54にそれぞれ接続されている。以上により、冷凍サイクル装置1が有する冷媒回路100が構成されている。
【0017】
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、スクロール圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、冷媒貯留器であるアキュムレータ28と、室外ファン27と、を備えている。室外ファン27を除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されており、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
【0018】
スクロール圧縮機21は、インバータにより回転数が制御されるモータ(図示せず)によって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型の圧縮機である。スクロール圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaと吐出管41を介して接続されている。スクロール圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ28の冷媒流出側と図示されない吸入管を介して接続されている。このようにスクロール圧縮機21は、冷媒が充填された冷媒回路100に接続されている。また、スクロール圧縮機21の内部には、図1に示すように、摺動部分(図示せず)を潤滑する潤滑油としての冷凍機油10が貯留されている。
【0019】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、4つのポートa、b、c、dを有している。ポートaは、上述したようにスクロール圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口に冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入側に冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26に室外機ガス管45で接続されている。
【0020】
室外熱交換器23は、室外機2の内部に取り込まれた外気を、冷媒と後述する室外ファン27による送風によって熱交換させる。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述のように四方弁22のポートbに冷媒配管43で接続されており、他方の冷媒出入口が室外機液管44を介して閉鎖弁25に接続されている。
【0021】
膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。膨張弁24は、電子膨張弁であり、その開度が調整されることにより、室外熱交換器23に流入する冷媒量、または、室外熱交換器23から流出する冷媒量が調整される。
【0022】
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、吹出口(図示せず)から室外機2の外部へ放出する。
【0023】
上述のように、アキュムレータ28の冷媒流入側は四方弁22のポートcに冷媒配管46を介して接続されるとともに、アキュムレータ28の冷媒流出側がスクロール圧縮機21の冷媒吸入側に接続されている。このように、アキュムレータ28は、冷媒回路100とスクロール圧縮機21とに接続されている。アキュムレータ28は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離してガス冷媒をスクロール圧縮機21に吸入させる。また、アキュムレータ28は、スクロール圧縮機21から冷媒回路100を経て流入した冷凍機油10を液冷媒と共に吸引し、ガス冷媒と共に液冷媒及び冷凍機油10をスクロール圧縮機21へ戻す。
【0024】
また、室外機2は、上述した構成に加えて、各種のセンサを有している。図1に示すように、吐出管41には、スクロール圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、スクロール圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口の近傍には、スクロール圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ32と、スクロール圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
【0025】
室外機液管44における室外熱交換器23と膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、または室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の吸込口(図示せず)の近傍には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が設けられている。
【0026】
また、室外機2は、室外機制御回路200を備えている。室外機制御回路200は、コンピュータであり、室外機2の電装品箱(図示せず)に格納されている制御基板に搭載されている。室外機制御回路200は、室外機2の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、スクロール圧縮機21及び室外ファン27の駆動制御を行う。また、室外機制御回路200は、室外機2の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行うと共に、膨張弁24の開度を調整する。
【0027】
次に、室内機5について説明する。室内機5は、室内熱交換器51と、分岐した液管8の他端が接続された液管接続部53と、分岐したガス管9の他端が接続されたガス管接続部54と、室内ファン55と、を備えている。そして、室内ファン55を除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
【0028】
室内熱交換器51は、吸込口(図示せず)から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を、冷媒と後述する室内ファン55による送風によって熱交換させる。室内熱交換器51は、一方の冷媒出入口と液管接続部53が室内機液管71で接続されており、他方の冷媒出入口とガス管接続部54が室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、室内機5が冷房運転を行う場合に蒸発器として機能し、室内機5が暖房運転を行う場合に凝縮器として機能する。
【0029】
室内ファン55は、樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内ファン55は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室内機5の内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を吹出口(図示せず)から室内へ供給する。
【0030】
上述した構成に加えて、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機5の吸込口(図示せず)の近傍には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度、すなわち吸込温度を検出する吸込温度センサ63が設けられている。室内機5の吹出口(図示せず)の近傍には、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って室内機5から室内に放出される空気の温度、すなわち吹出温度を検出する吹出温度センサ64が設けられている。室内熱交換器51には、室内熱交換器51の温度を検出する熱交中間温度センサ61が設けられている。
【0031】
また、室内機5は、室内機制御回路500を備えている。室内機制御回路500は、コンピュータであり、室内機5の電装品箱(図示せず)に格納された制御基板に搭載されている。室内機制御回路500は、室内機5の各種センサが検出した検出結果やリモコン及び室外機2から送信された信号に基づいて、室内ファン55の駆動制御を行う。なお、冷凍サイクル装置1の制御回路は、上述の室外機制御回路200と室内機制御回路500とによって構成される。
【0032】
[スクロール圧縮機21の構成]
図2は、実施例の冷凍サイクル装置のスクロール圧縮機を示す部分断面図である。スクロール圧縮機21は、筐体211と圧縮部212とモータ213とトップシェル温度センサ214と圧縮部側面部温度センサ215とを備えている。筐体211は、概ね円筒形に形成され、圧縮部212を主とした機械部、およびモータ213を主としてモータ部を格納する。また、筐体211は、圧縮部212から高温高圧の冷媒が吐出される内部空間218を形成している。内部空間218は、概ね円柱状に形成されている。筐体211は、筐体211を水平面上に垂直に置いたとき内部空間218の円柱の軸が鉛直方向になるように、配置されている。筐体211は、さらに、内部空間218が吐出管41に接続されるように、形成されている。モータ213は、内部空間218のうちの下部に配置されている。モータ213は、室外機制御回路200に制御されることにより、所定の回転数の回転動力を圧縮部212に供給する。
【0033】
圧縮部212は、内部空間218のうちのモータ213より上側に配置されている。圧縮部212は、スクロール圧縮機21の内部に設けられ、固定スクロール216と旋回スクロール217とを備えている。固定スクロール216は、渦巻き状の凸部が形成され、筐体211に固定されている。旋回スクロール217は、渦巻き状の凸部形成されている。旋回スクロール217は、凸部が固定スクロール216の凸部に噛み合うように配置され、旋回可能に筐体211に支持されている。圧縮部212は、旋回スクロール217と固定スクロール216とに囲まれた複数の圧縮室が形成されている。圧縮部212は、旋回スクロール217が旋回することにより、複数の圧縮室の各々が内部空間218の中心軸の周りを回りながら中心軸に接近するように、かつ、複数の圧縮室の各々の容積が小さくなるように、形成されている。
【0034】
内部空間218に流入した冷媒は、複数の圧縮室のうちの内部空間218の中心軸から一番遠い側に配置される圧縮室に充填される。圧縮部212は、圧縮部212から供給された回転動力を用いて旋回スクロール217を固定スクロール216に対して旋回させることにより、圧縮室が中心軸に向かって移動しながら容積が小さくなる。その結果、圧縮部212は圧縮室に充填された冷媒を圧縮する。圧縮部212により圧縮された冷媒は、内部空間218のうちの圧縮部212より上側の領域に吐出された後に、モータ213の内部に形成される流路を通過し、吐出管41に吐出される。
【0035】
トップシェル温度センサ214は、筐体211のうちの上部に取り付けられ、筐体211のうちの上部の温度を測定する。圧縮部側面部温度センサ215は、筐体211の側面うちの上部に取り付けられ、筐体211の側面うちの上部の圧縮部側面部温度を測定する。
【0036】
[冷凍サイクル装置1の動作]
次に、本実施形態における冷凍サイクル装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。図1における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0037】
図1に示すように、室内機5が暖房運転を行う場合、室外機制御回路200は、四方弁22を図1中に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdを連通させ、ポートbとポートcを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器51が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0038】
スクロール圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管45、閉鎖弁26、ガス管9、ガス管接続部54の順に流れて室内機5に流入する。室内機5に流入した冷媒は、室内機ガス管72を流れて室内熱交換器51に流入し、室内ファン55の回転によって室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51が凝縮器として機能し、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が吹出口(図示せず)から室内に吹き出されることによって、室内機5が設置された室内の暖房が行われる。
【0039】
室内熱交換器51から流出した冷媒は室内機液管71を流れ、室内機液管71を流れて液管接続部53を介して液管8に流入する。
【0040】
液管8を流れる冷媒は、閉鎖弁25を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機液管44を流れ、膨張弁24により減圧される。室外機液管44から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ28の順に流れ、スクロール圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0041】
なお、室内機5が冷房/除霜運転を行う場合、室外機制御回路200は、四方弁22を図1中に破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとを連通させ、ポートcとポートdとを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100は、室外熱交換器23が凝縮器として機能すると共に室内熱交換器51が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0042】
すなわち、スクロール圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を介して室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23は、スクロール圧縮機21から吐出された高圧の冷媒が流入されることにより、加熱され、除霜される。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転によって室外機2の内部に取り込まれた室外空気と熱交換され、凝縮する。冷却された冷媒は、膨張弁24、閉鎖弁25、液管8、液管接続部53の順に流れて室内機5に流入する。室内機5に流入した冷媒は、室内機液管71を流れ、室内機液管71を介して室内熱交換器51に流入し、室内ファン55の回転によって室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換され、蒸発する。このとき、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が吹出口(図示せず)から室内に吹き出されることによって、室内機5が設置された室内の冷房が行われる。
【0043】
室内熱交換器51から流出した冷媒は、室内機ガス管72を流れ、ガス管接続部54を介してガス管9に流入する。ガス管9を流れる冷媒は、閉鎖弁26を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45を流れ、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ28の順に流れ、スクロール圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0044】
図3は、実施例の冷凍サイクル装置の動作を示すフローチャートである。室外機制御回路200は、所定のサンプリング周期ごとに、吐出温度センサ33により測定された吐出温度Tdを、吐出温度センサ33から取得する(ステップS1)。室外機制御回路200は、所定のサンプリング周期ごとに、さらに、圧縮機シェル温度Tbをトップシェル温度センサ214または圧縮部側面部温度センサ215から取得する(ステップS2)。圧縮機シェル温度Tbは、トップシェル温度センサ214により測定されたトップシェル温度、または、圧縮部側面部温度センサ215により測定された圧縮部側面部温度を示している。たとえば、室外機制御回路200は、トップシェル温度センサ214と圧縮部側面部温度センサ215からそれぞれ検出値を取得した上でトップシェル温度と圧縮部側面部温度とのうちの高い方の温度を圧縮機シェル温度Tbに設定している。
【0045】
室外機制御回路200は、冷凍サイクル装置1に設けられる各種センサが検出した検出結果に基づいて目標温度Tgtを算出する(ステップS3)。その検出結果は、吐出圧力センサ31、吸入圧力センサ32、吸入温度センサ34、熱交温度センサ35、外気温度センサ36、熱交中間温度センサ61の検出値を含んでいる。目標温度Tgtは、理論吐出温度に調整値が加算された値である。理論吐出温度は、冷媒回路100の圧力損失や運転効率を加味せずに、その検出結果により特定された冷凍サイクル装置1の負荷状態に基づいて算出される理論値である。理論吐出温度は、冷凍サイクルの負荷状態(各部圧力、温度)、および目標過熱度Tshから算出される。通常は、過熱度は0以上とするが、特定の閾値を超過する場合は、過熱度を0未満、すなわち、スクロール圧縮機21に流入する冷媒が、液体と気体を含む2相状態で算出される。特に、安定性の低い冷媒を用いる場合は、理論吐出温度が、100℃より小さくなるようにすることが望ましい。目標温度Tgtは、冷媒回路100の圧力損失や運転効率が考慮されることにより、理論吐出温度に基づいて算出される。すなわち、目標温度Tgtは、スクロール圧縮機21により圧縮された冷媒の温度が目標温度Tgtに等しいときに、スクロール圧縮機21に流入する冷媒が、液体と気体を含む2相状態になるように、算出される。
【0046】
室外機制御回路200は、冷凍サイクル装置1に設けられる各種センサが検出した検出結果に基づいて、冷凍サイクル装置1に設けられる各部の運転状態を算出する。その検出結果は、吐出圧力センサ31、吸入圧力センサ32、吐出温度センサ33、吸入温度センサ34、熱交温度センサ35、外気温度センサ36、熱交中間温度センサ61、吸込温度センサ63または吹出温度センサ64の検出値を含んでいる。室外機制御回路200は、さらに、目標温度Tgtと閾値温度Tblimitとを比較する(ステップS4)。閾値温度Tblimitは、予め定められた数値を示し、冷媒制御温度が閾値温度Tblimitを超えると、冷媒の圧力が所定の圧力範囲に含まれるときに、冷媒が著しく分解されやすくなる。つまり、閾値温度Tblimit以下の温度であれば、冷媒の分解を抑制できることを示している。所定の圧力範囲は、冷凍サイクル装置1の各部が、その算出された運転状態であるときに、スクロール圧縮機21により圧縮される冷媒が取り得る圧力の範囲を示している。
【0047】
室外機制御回路200は、目標温度Tgtが閾値温度Tblimitに等しいときに、または、目標温度Tgtが閾値温度Tblimitより小さいときに(ステップS4、Yes)、目標温度Tgtに基づいて膨張弁操作を実行する(ステップS5)。すなわち、室外機制御回路200は、冷媒制御温度が目標温度Tgtに近付くように、膨張弁24の開度を制御する。冷媒制御温度は、圧縮機シェル温度Tbを示している。たとえば、室外機制御回路200は、冷媒制御温度が目標温度Tgtより小さいときに、膨張弁24の開度を増加させ、冷媒制御温度が目標温度Tgtより大きいときに、膨張弁24の開度を減少させる。室外機制御回路200は、膨張弁24の開度が調整された後に、ステップS1以降の処理を繰り返し実行する。
【0048】
室外機制御回路200は、目標温度Tgtが閾値温度Tblimitより大きいときに(ステップS4、No)、閾値温度Tblimitに基づいて膨張弁操作を実行する(ステップS6)。すなわち、室外機制御回路200は、冷媒制御温度が閾値温度Tblimitに近付くように、膨張弁24の開度を制御する。冷媒制御温度は、圧縮機シェル温度Tbを示している。たとえば、室外機制御回路200は、冷媒制御温度が閾値温度Tblimitより小さいときに、膨張弁24の開度を増加させ、冷媒制御温度が閾値温度Tblimitより大きいときに、膨張弁24の開度を減少させる。
【0049】
室外機制御回路200は、閾値温度Tblimitが目標温度Tgtより小さい場合で(ステップS4、No)、圧縮機シェル温度Tbが閾値温度Tblimitより小さいときに(ステップS7、Yes)、ステップS1~ステップS6の処理を繰り返し実行する。室外機制御回路200は、閾値温度Tblimitが目標温度Tgtより小さい場合で(ステップS4、No)、圧縮機シェル温度Tbが閾値温度Tblimitより大きいときに(ステップS7、No)、旋回スクロール217の旋回が停止するように、スクロール圧縮機21を制御(冷媒分解保護動作)する(ステップS8)。すなわち、室外機制御回路200は、モータ213から圧縮部212に回転動力が供給されないように、モータ213を制御する。
【0050】
トップシェル温度センサ214は、吐出温度センサ33より圧縮部212に近い位置に配置されている。また、圧縮部212により圧縮された冷媒が通過する流路のうちのトップシェル温度センサ214の近傍の部分は、その流路のうちの吐出温度センサ33の近傍の部分より圧縮部212に近い上流側に配置されている。このため、トップシェル温度センサ214により測定されたトップシェル温度は、吐出温度センサ33により測定された従来の吐出温度と比較して、圧縮部212により圧縮された冷媒の温度がより早く、より高精度に検出値に反映される。
【0051】
また、圧縮部側面部温度センサ215は、吐出温度センサ33より圧縮部212に近い位置に配置されている。圧縮部212により圧縮された冷媒が通過する流路のうちの圧縮部側面部温度センサ215の近傍の部分は、その流路のうちの吐出温度センサ33の近傍の部分より圧縮部212に近い上流側に配置されている。このため、圧縮部側面部温度センサ215により測定された圧縮部側面部温度は、吐出温度センサ33により測定された従来の吐出温度に比較して、圧縮部212により圧縮された冷媒の温度がより早く、より高精度に検出値に反映される。
【0052】
このような動作によれば、冷凍サイクル装置1は、スクロール圧縮機21により圧縮される冷媒が取り得る温度範囲の上限を所定の温度より低くすることができる。このため、冷凍サイクル装置1は、高温環境下での安定性が低い冷媒を用いた場合でも、冷媒の分解を防止し、酸が発生することによる冷凍サイクル装置の金属部品の腐食を防止することができる。
【0053】
また、スクロール圧縮機21により圧縮された冷媒の実際の温度は、理論吐出温度が100℃を超過しているときに、スクロール圧縮機21の回転数によらずに、110~120℃程度となることがある。このとき、スクロール圧縮機21の摺動部は、150℃を超過する状態となり、冷媒の分解が発生しやすい状態となる。このため、冷凍サイクル装置1は、理論吐出温度を100℃より小さくすることにより、湿り吸入制御をするときに、冷媒が分解されるリスクを低減することができる。
【0054】
スクロール圧縮機21により圧縮される冷媒は、旋回スクロール217が旋回することによる摩擦熱により加熱される。このような動作によれば、冷凍サイクル装置1は、冷媒分解保護動作で旋回スクロール217の旋回が停止されることにより、旋回スクロール217の摩擦熱による冷媒の過熱を防止することができる。冷凍サイクル装置1は、旋回スクロール217の摩擦熱による冷媒の過熱が防止されることにより、高温環境下での安定性が低い冷媒を用いた場合でも、摩擦熱により冷媒が分解されることを防止することができる。
【0055】
[冷凍サイクル装置の特徴的な構成]
実施例の冷凍サイクル装置1は、スクロール圧縮機21と膨張弁24とトップシェル温度センサ214と室外機制御回路200とを備えている。スクロール圧縮機21は、固定スクロール216に対して旋回スクロール217を旋回させることにより、低GWP冷媒を20重量%以上含む冷媒を圧縮する。膨張弁24は、開度に対応した流量に絞ることで、冷媒を減圧する。トップシェル温度センサ214は、スクロール圧縮機21が配置される内部空間218を密閉する筐体211のトップシェル温度を測定する。室外機制御回路200は、冷媒が2相状態でスクロール圧縮機21に吸入されるように、トップシェル温度に基づいて膨張弁24の開度を制御する。トップシェル温度センサ214により測定されたトップシェル温度は、吐出温度センサ33により測定された吐出温度に比較して、圧縮部212により圧縮された冷媒の温度がより早く、より高精度に反映される。このため、冷凍サイクル装置1は、膨張弁24の膨張弁操作がトップシェル温度に基づいて実行されるときに、気体と液体との2相状態の冷媒をスクロール圧縮機21に流入させる湿り吸入制御をより適切に行うことができる。
【0056】
また、実施例の冷凍サイクル装置1の室外機制御回路200は、トップシェル温度が閾値温度Tblimitより大きいときに、旋回スクロール217の旋回が停止するように、スクロール圧縮機21を制御する。スクロール圧縮機21により圧縮される冷媒は、旋回スクロール217が旋回することによる摩擦熱により加熱される。また、旋回スクロール217の旋回による摩擦熱は、旋回スクロール217が旋回する速さを遅くした場合でも、生成され続ける。冷凍サイクル装置1は、冷媒分解保護動作で旋回スクロール217の旋回が停止されることにより、旋回スクロール217の旋回による摩擦熱の発生を止め、旋回スクロール217の摩擦熱による冷媒の過熱を確実に防止することができる。
【0057】
また、実施例の冷凍サイクル装置1の室外機制御回路200は、冷媒がスクロール圧縮機21から吐出されるときに冷媒の理論吐出温度が100℃より小さくなるように、膨張弁24の開度を調整する。スクロール圧縮機21により圧縮された冷媒の実際の温度は、理論吐出温度が100℃を超過しているときに、スクロール圧縮機21の回転数によらずに、110~120℃程度となることがある。このとき、スクロール圧縮機21の摺動部は、300℃を超過する状態となり、冷媒の分解が発生しやすい状態となる。このため、冷凍サイクル装置1は、理論吐出温度を100℃より小さくすることにより、湿り吸入制御するときに、冷媒が分解されるリスクを低減することができる。
【0058】
また、実施例の冷凍サイクル装置1は、冷凍サイクル装置1の運転状態を検出するセンサをさらに備えている。そのセンサは、吐出圧力センサ31、吸入圧力センサ32、吐出温度センサ33、吸入温度センサ34、熱交温度センサ35、外気温度センサ36、吸込温度センサ63または吹出温度センサ64を含んでいる。このとき、理論吐出温度は、検出された運転状態により特定された冷凍サイクル装置1の負荷状態に基づいて算出される。冷凍サイクル装置1は、理論吐出温度が冷凍サイクル装置1の負荷状態に基づいて算出されることにより、適切に湿り吸入制御することができる。
【0059】
また、実施例の冷凍サイクル装置1は、スクロール圧縮機21から吐出される冷媒の吐出温度を測定する吐出温度センサ33をさらに備えている。室外機制御回路200は、吐出温度センサ33により測定された吐出温度にさらに基づいて膨張弁24の開度を制御する。
【0060】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置1は、吐出温度センサ33を備えているが、吐出温度センサ33が省略されてもよい。冷凍サイクル装置1は、吐出温度センサ33が省略されたときに、圧縮機シェル温度Tbのみに基づいて膨張弁24の開度が調整される。
【0061】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置1は、トップシェル温度センサ214と圧縮部側面部温度センサ215とを備えているがトップシェル温度センサ214と圧縮部側面部温度センサ215とのうちの一方が省略されてもよい。このとき、圧縮機シェル温度Tbは、トップシェル温度センサ214と圧縮部側面部温度センサ215とのうちの省略されていない他方により測定された温度を示している。
【0062】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置1は、各種センサが検出した検出結果に基づいて目標温度Tgtが算出されているが、目標温度Tgtが定数であってもよい。
【0063】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置1は、圧縮機シェル温度Tbが閾値温度Tblimitより大きいときに、旋回スクロール217の旋回を停止させているが、旋回スクロール217の旋回を停止させなくてもよい。この場合も、冷凍サイクル装置1は、圧縮機シェル温度Tbに基づいて膨張弁24の開度が調整されることにより、湿り吸入制御を適切に行うことができる。
【0064】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 :冷凍サイクル装置
21 :スクロール圧縮機
24 :膨張弁
31 :吐出圧力センサ
32 :吸入圧力センサ
33 :吐出温度センサ
34 :吸入温度センサ
35 :熱交温度センサ
36 :外気温度センサ
61 :熱交中間温度センサ
63 :吸込温度センサ
64 :吹出温度センサ
211 :筐体
212 :圧縮部
213 :モータ
214 :トップシェル温度センサ
215 :圧縮部側面部温度センサ
216 :固定スクロール
217 :旋回スクロール
218 :内部空間
図1
図2
図3