(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ゴム部材の形成方法及びゴム部材の形成装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20220913BHJP
B29C 31/00 20060101ALI20220913BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20220913BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20220913BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C31/00
B29D30/06
B29K21:00
(21)【出願番号】P 2018200470
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏和
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016023(JP,A)
【文献】実開昭57-196526(JP,U)
【文献】特表2013-526431(JP,A)
【文献】特開2005-305792(JP,A)
【文献】特開平04-046797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B29C 31/00 - 31/10
B29D 30/00 - 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム押出機から連続的に押し出される押出ゴムを搬送する搬送工程と、搬送された前記押出ゴムを切断して所定長さのゴム部材を形成する切断工程と、前記搬送工程中に前記押出ゴムを収縮させるシュリンク工程とを具え、
前記搬送工程は、搬送方向上流側の第1コンベヤと、搬送方向下流側の第2コンベヤとを含む搬送手段により前記押出ゴムを搬送し、
前記シュリンク工程は、前記第1コンベヤからの前記押出ゴムが、
0~25℃の温度の液体が貯められた貯留槽の前記液体中を拘束されずにU字状に弛んだ状態で通過することにより、前記押出ゴムを浮力を受けた状態で自由に収縮させたゴム部材の形成方法。
【請求項2】
前記シュリンク工程では、前記押出ゴムは、前記貯留槽の底面から浮いた状態で前記液体中を通過する請求項1記載のゴム部材の形成方法。
【請求項3】
前記シュリンク工程では、前記液体中を通過する前記押出ゴムの長さは、切断されるゴム部材の長さの1.6~2.0倍である請求項1又は2に記載のゴム部材の形成方法。
【請求項4】
前記シュリンク工程は、前記貯留槽の底面から前記押出ゴムのU字状の最下部までの高さを調整する調整工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム部材の形成方法。
【請求項5】
ゴム押出機から連続的に押し出される押出ゴムを搬送する搬送手段と、搬送された前記押出ゴムを切断して所定長さのゴム部材を形成する切断手段と、搬送中に前記押出ゴムを収縮させるシュリンク手段とを具え、
前記搬送手段は、搬送方向上流側の第1コンベヤと、搬送方向下流側の第2コンベヤとを含み、
前記シュリンク手段は、前記第1コンベヤと第2コンベヤとの間に配されかつ
0~25℃の温度の液体が貯められた貯留槽を有し、前記第1コンベヤからの前記押出ゴムが、前記液体中を拘束されずにU字状に弛んだ状態で通過することにより、前記押出ゴムを浮力を受けた状態で自由に収縮させたゴム部材の形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム部材の形成方法及びゴム部材の形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム押出機から押し出された押出ゴムは、内部応力により、その切断されたゴム部材に、収縮が生じることが知られている。このため、下記の特許文献1には、ゴム部材の形成方法として、ゴム押出機から押し出された押出ゴムを、一旦空気中に垂らし、その収縮を促進させるシュリンク工程を設けることが記載されている。
【0003】
しかしながら、空気中に垂らされた押出ゴムには、自重によるのびも付加される。そのため、シュリンク工程後、付加されたのびを原因として収縮が残り、ゴム部材の形状を十分に安定させることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、シュリンク工程を改善することを基本として、ゴム部材の形状を安定しうるゴム部材の形成方法及びゴム部材の形成装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴム押出機から連続的に押し出される押出ゴムを搬送する搬送工程と、搬送された押出ゴムを切断して所定長さのゴム部材を形成する切断工程と、前記搬送工程中に前記押出ゴムを収縮させるシュリンク工程とを具え、前記搬送工程は、搬送方向上流側の第1コンベヤと、搬送方向下流側の第2コンベヤとを含む搬送手段により前記押出ゴムを搬送し、前記シュリンク工程は、前記第1コンベヤからの押出ゴムが、液体が貯められた貯留槽の前記液体中を拘束されずにU字状に弛んだ状態で通過することにより、前記押出ゴムを浮力を受けた状態で自由に収縮させたゴム部材の形成方法である。
【0007】
本発明に係るゴム部材の形成方法は、前記シュリンク工程では、前記押出ゴムは、前記貯留槽の底面から浮いた状態で前記液体中を通過するのが望ましい。
【0008】
本発明に係るゴム部材の形成方法は、前記シュリンク工程では、液体中を通過する押出ゴムの長さは、切断されるゴム部材の長さの1.6~2.0倍であるのが望ましい。
【0009】
本発明に係るゴム部材の形成方法は、前記シュリンク工程が、前記貯留槽の底面から前記押出ゴムのU字状の最下部までの高さを調整する調整工程を含むのが望ましい。
【0010】
本発明は、ゴム押出機から連続的に押し出される押出ゴムを搬送する搬送手段と、搬送された押出ゴムを切断して所定長さのゴム部材を形成する切断手段と、搬送中に前記押出ゴムを収縮させるシュリンク手段とを具え、前記搬送手段は、搬送方向上流側の第1コンベヤと、搬送方向下流側の第2コンベヤとを含み、前記シュリンク手段は、前記第1コンベヤと第2コンベヤとの間に配されかつ液体が貯められた貯留槽を有し、前記第1コンベヤからの押出ゴムが、前記液体中を拘束されずにU字状に弛んだ状態で通過することにより、前記押出ゴムを浮力を受けた状態で自由に収縮させたゴム部材の形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴム部材の形成方法では、搬送中の押出ゴムが、貯留槽の液体中を拘束されずにU字状に弛んだ状態で通過する。これにより、液体中の押出ゴムには、液体による浮力が作用するため、自重によるのびが抑制されるので、自由な収縮が促進される。従って、本発明の形成方法では、押出ゴムを切断して形成されたゴム部材の形状が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のゴム部材の形成装置の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のゴム部材の形成装置1(以下、単に「装置1」という場合がある)の模式的な側面図である。本実施形態の装置1は、ゴム押出機Tから押し出された押出ゴムGを、搬送方向下流側dにて切断してゴム部材(図示省略)に形成し得る。ゴム部材は、例えば、タイヤを構成するタイヤ構成用ゴム部材として利用される。
図1には、押出ゴムGの搬送方向下流側dが矢印で示される。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態の装置1は、搬送手段2と、切断手段3と、シュリンク手段4とを含んでいる。
【0015】
本実施形態の搬送手段2は、ゴム押出機Tから連続的に押し出された押出ゴムGを搬送方向下流側dに搬送し得る。搬送手段2は、本実施形態では、搬送方向上流側に配される第1コンベヤ2Aと、第1コンベヤ2Aよりも搬送方向下流側dに配される第2コンベヤ2Bとを含んでいる。
【0016】
ゴム押出機Tは、例えば、ゴム投入口(図示省略)を設けたシリンダTa内に、スクリュー軸Tbを収納した周知構造を有している。本実施形態のゴム押出機Tは、投入される押出ゴムGのゴム材料(図示省略)を、スクリュー軸Tbの駆動により可塑化しながら押進し、シリンダTaの前端に設ける押出しヘッドTcの吐出口から連続的に吐出する。
【0017】
本実施形態の第1コンベヤ2A及び第2コンベヤ2Bは、例えば、複数のローラ5を含む周知構造のローラコンベヤとして構成されている。ローラ5は、例えば、その円周方向の外周面上に押出ゴムGを載置して搬送する。ローラ5の回転速度が、押出ゴムGの搬送速度を構成する。
【0018】
各ローラ5は、例えば、電動機やモータ(図示省略)によって回転駆動されている。各ローラ5は、例えば、インバータ等の制御手段によって、回転速度可変に制御されるのが望ましい。第1コンベヤ2A及び第2コンベヤ2Bは、ローラコンベヤに代えて、例えば、ベルトコンベヤ又は球面コンベヤ等が用いられても良い。
【0019】
切断手段3は、搬送された押出ゴムGを切断して所定長さのゴム部材に形成し得る。本実施形態の切断手段3は、第2コンベヤ2Bの搬送方向下流側dに配されている。
【0020】
切断手段3は、本実施形態では、刃物3aと、刃物3aを所定の位置まで移動させる移動部3bとを含んでいる。刃物3aは、例えば、周知構造の回転可能な円盤状のものやギロチン状のものが望ましい。移動部3bは、例えば、シリンダやモータ等の周知構造のアクチュエータで構成されるのが望ましい。
【0021】
シュリンク手段4は、第1コンベヤ2Aと第2コンベヤ2Bとの間に配されている。シュリンク手段4は、本実施形態では、液体が貯められた貯留槽6と、液体中を通過する押出ゴムGの高さhを調節するための調節手段7とを含んでいる。
【0022】
貯留槽6に貯められる液体としては、押出ゴムGに浮力を与えるために、例えば、水やアルコール等が望ましい。また、液体の温度としては、押出ゴムGの粘着性の低下を抑制するために、例えば、0~25℃程度が望ましい。
【0023】
貯留槽6は、上側面が開放された周知構造のもので良いが、例えば、液体の温度を調節して保持し得るような周知構造の温度調節手段(図示省略)を有するものが望ましい。
【0024】
調節手段7は、本実施形態では、貯留槽6の底面6sから押出ゴムGの最下部までの高さhを測定しうる測定具7aと、測定具7aで測定された高さhに基づいて押出ゴムGの搬送速度を調節する制御手段7bとを含んでいる。
【0025】
測定具7aは、例えば、周知構造の超音波式のセンサであるのが望ましい。測定具7aは、本実施形態では、測定結果に対応した電気信号を制御手段7bに出力し得る。
【0026】
制御手段7bは、本実施形態では、測定具7aから出力された電気的信号に基づいて、第1コンベヤ2A、及び、第2コンベヤ2Bのローラ5の回転数、即ち、第1コンベヤ2A、及び、第2コンベヤ2B上の押出ゴムGの各搬送速度を制御する。液体中の押出ゴムGの高さhは、例えば、これら搬送速度の差に基づいて調節される。このような制御手段7bとしては、例えば、プログラマブルシーケンサ、マイコン、パーソナルコンピュータ、その他の周知の制御デバイスが好適に用いられる。
【0027】
次に、本実施形態の装置1を用いたゴム部材の形成方法が説明される。先ず、ゴム押出機Tから押出ゴムGを連続的に押し出す押出工程行われる。押出工程では、例えば、図示しないモータ等によりスクリュー軸Tbの回転速度が、一定となるように制御される。この押し出された押出ゴムGには、スクリュー軸Tbによる内部応力が付加されている。
【0028】
次に、押出ゴムGを搬送する搬送工程が行われる。本実施形態の搬送工程は、第1コンベヤ2A上で押出ゴムGを搬送する第1ステップと、第2コンベヤ2B上で押出ゴムGを搬送する第2ステップとを含んでいる。
【0029】
本実施形態では、第1ステップと第2ステップとの間に、押出ゴムGを収縮させるシュリンク工程が行われる。
【0030】
本実施形態のシュリンク工程では、液体が貯められた貯留槽6内において、第1コンベヤ2Aと第2コンベヤ2Bとの間の押出ゴムGを通過させる。なお、液体は、周知構造の温度調節手段によって、予め定められた温度に調節されているのが望ましい。
【0031】
本実施形態の押出ゴムGは、貯留槽6内に搬送コンベヤ等が配されることがないので、貯留槽6内では、貯留槽6の底面6sから浮いた状態となり、液体による浮力のみに支えられる。これにより、液体を通過中の押出ゴムGは、U字状に弛んだ状態で通過することになり、自重によるのびが抑制されるので、前記浮力を受けた状態で自由な収縮が促進される。
【0032】
押出ゴムGの自重によるのびを効果的に除去するため、本実施形態のシュリンク工程では、貯留槽6の底面6sから押出ゴムGの最下部までの高さhを予め定められた高さに調整する調整工程を含んでいる。
【0033】
調整工程は、具体的には、液体中を通過する押出ゴムGの長さLを、切断されるゴム部材の長さ(図示省略)の1.6~2.0倍となるように前記高さhが調整される。液体通過中の押出ゴムGの長さLが、前記ゴム部材の長さの1.6倍未満の場合、押出ゴムGの収縮が液体中で完了せずに、切断後のゴム部材において収縮が生じるおそれがある。液体通過中の押出ゴムGの長さLが前記ゴム部材の長さの2.0倍を超える場合、例えば、押出ゴムGの粘着性が低下する他、搬送時間が長くなるおそれがある。なお、貯留槽6の底面6sから押出ゴムGの最下部までの高さhが、予め定められた高さに調整されると、例えば、第1コンベヤ2A及び第2コンベヤ2Bの搬送速度が同じ速さに調節される。
【0034】
上記作用を効果的に発揮させるために、押出ゴムGの液体中を通過する時間は、例えば、0.5~10分程度が望ましい。
【0035】
押出ゴムGを液体中に通過させる方法としては、種々の方法がある。例えば、押出ゴムGを第1コンベヤ2Aと第2コンベヤ2Bとに跨らせた後、第2コンベヤ2Bの搬送速度を第1コンベヤ2Aの搬送速度よりも遅くして、第1コンベヤ2Aと第2コンベヤ2Bとの間の押出ゴムGを液体中に落として通過させることができる。また、例えば、周知構造の把持手段(図示省略)によって、押出ゴムGの先端部を把持し、押出ゴムGを送り出ししつつ、これを液体中に浸して、第2コンベヤ2B上に前記先端部を載置しても良い。
【0036】
次に、切断工程が行われる。本実施形態の切断工程では、第2コンベヤ2Bで搬送された押出ゴムGが、切断手段3によって、所定の長さで切断されてゴム部材に形成される。このゴム部材は、本発明のシュリンク工程によって押出ゴムGの自重によるのびが抑制されているので、ゴム部材の収縮が防止されるため、その形状が安定している。
【0037】
以上、本発明の特に好ましい形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0038】
T ゴム押出機
2A 第1コンベヤ
2B 第2コンベヤ
6 貯留槽
G 押出ゴム