(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ハーネス部品
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20220913BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01R12/71
H01R13/42 F
(21)【出願番号】P 2018234260
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄太
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165348(JP,A)
【文献】特開2006-100235(JP,A)
【文献】特開平03-040383(JP,A)
【文献】実開昭53-141390(JP,U)
【文献】特開2009-140840(JP,A)
【文献】特開昭52-12489(JP,A)
【文献】実開平2-25183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
12/00-12/91
13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に接続される複数の雄端子と、
前記各雄端子が挿入された複数の挿入孔、及び前記各挿入孔に連通するとともに前記挿入孔と反対側に開口部を備えた複数の端子収容穴を有するハウジングと、
前記各開口部から前記各端子収容穴に挿入配置され、前記各雄端子に前記端子収容穴の軸方向に交差する方向に弾性力を作用させつつ接触する複数の雌端子と、
前記各雌端子に電気的に接続された複数の電線と、を備え
、
前記雄端子は、前記回路基板のスルーホールに挿入されて前記回路基板に接合され、
前記挿入孔から前記開口部側の反対側に突出した前記雄端子の外側端子部は、前記軸方向に交差する方向に屈曲されるとともに前記回路基板の厚み方向に伸縮可能なクランク部を備え、
前記雄端子は、前記ハウジングの前記挿入孔に、前記端子収容穴における前記開口部が形成された側と反対側から圧入されている、ハーネス部品。
【請求項2】
前記雌端子は、前記ハウジングの前記開口部から前記端子収容穴に挿入されている、請求項1に記載のハーネス部品。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記回路基板に係合するハウジング係合部を一体に備える、請求項1
又は2に記載のハーネス部品。
【請求項4】
前記ハウジングには、リテーナが係止されており、前記リテーナは、前記ハウジングに対する前記リテーナの位置が仮係止位置にあるとき、前記ハウジングの前記端子収容穴に対する前記雌端子の脱着を許容し、前記ハウジングに対する前記リテーナの位置が本係止位置にあるとき、前記端子収容穴に挿入された前記雌端子の抜け止めをする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のハーネス部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のハーネス部品は、回路基板の厚み方向における一方側に実装される雄コネクタと、雄コネクタに嵌合された雌コネクタとを備える。
【0003】
雄コネクタは、回路基板のスルーホールに電気的に接続される雄端子と、雄端子を収容する電気的絶縁性を有する樹脂等からなる雄ハウジングとを備える。雄ハウジングは、回路基板側の反対側に開口する有底筒状のコネクタ嵌合部を備える。コネクタ嵌合部には、その開放側から雌コネクタが嵌合される。また、雄端子は、コネクタ嵌合部の底壁に対して、前記開放側から圧入されており、雄端子の一部である電気接触部が、コネクタ嵌合部の内側に突出している。
【0004】
雄コネクタのコネクタ嵌合部の内側に雌コネクタが嵌合されることで、電気接触部と雌コネクタの雌端子とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記雌コネクタは、雄端子に電気的に接続される雌端子と、前記雌端子を収容する電気的絶縁性を有する雌ハウジングとを備えるものが考えられる。しかしながら、この場合、特許文献1に記載のハーネス部品は、雄ハウジングと雌ハウジングとの2つのハウジング部材を嵌合する必要があり、部品点数の増加や大型化を招きやすい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、部品点数の削減、及び小型化を図ることができるハーネス部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、回路基板に接続される複数の雄端子と、
前記各雄端子が挿入された複数の挿入孔、及び前記各挿入孔に連通するとともに前記挿入孔と反対側に開口部を備えた複数の端子収容穴を有するハウジングと、
前記各開口部から前記各端子収容穴に挿入配置され、前記各雄端子に前記端子収容穴の軸方向に交差する方向に弾性力を作用させつつ接触する複数の雌端子と、
前記各雌端子に電気的に接続された複数の電線と、を備え、
前記雄端子は、前記回路基板のスルーホールに挿入されて前記回路基板に接合され、
前記挿入孔から前記開口部側の反対側に突出した前記雄端子の外側端子部は、前記軸方向に交差する方向に屈曲されるとともに前記回路基板の厚み方向に伸縮可能なクランク部を備え、
前記雄端子は、前記ハウジングの前記挿入孔に、前記端子収容穴における前記開口部が形成された側と反対側から圧入されている、ハーネス部品にある。
【発明の効果】
【0009】
前記態様のハーネス部品において、ハウジングの各挿入孔に雄端子が挿入されており、かつ、当該ハウジングに形成された複数の端子収容穴のそれぞれに雌端子が挿入されている。それゆえ、ハウジングの数が増加することを防ぐことができ、部品点数の削減や小型化を図りやすい。
【0010】
また、雄端子と雌端子とは、各端子収容穴内において接続される。それゆえ、雄端子を挿入孔から端子収容穴内に挿入するとともに、雌端子を開口部から端子収容穴内に挿入することで、ハウジングに対する雄端子及び雌端子の位置決めが容易である。また、複数の雌端子は、一つずつハウジングの各端子収容穴に挿入されて雄端子と接続されるため、雌端子をハウジングに組み付ける際の雌端子のガタ付きが防止される。それゆえ、ハーネス部品の生産性を向上させやすい。
【0011】
また、雌端子は、各雄端子に前記端子収容穴の軸方向に直交する方向に弾性力を作用させつつ接触する。それゆえ、雄端子と雌端子とが、前記軸方向に互いに摺動可能である。そのため、雌端子に接続された電線が引っ張られた場合でも、雌端子と雄端子とが摺動するため、この引っ張りによる力が雄端子と回路基板との接合部に作用し難い。それゆえ、雄端子と回路基板との接続性を向上させやすい。
【0012】
以上のごとく、前記態様によれば、部品点数の削減、及び小型化を図ることができるハーネス部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1における、ハーネス部品の斜視図。
【
図2】実施形態1における、回路基板に取り付けたハーネス部品の平面図。
【
図4】実施形態1における、ハーネス部品の背面図。
【
図5】実施形態1における、ハーネス部品の作用効果を説明する断面図であって、ハウジングに対して、先に雄端子を組み付け、次に雌端子を組み付ける様子を示す図。
【
図6】実施形態1における、ハーネス部品の作用効果を説明する断面図であって、ハウジングに対して、先に雌端子を組み付け、次に雄端子を組み付ける様子を示す図。
【
図7】実施形態1における、ハウジングに対するリテーナの位置が、仮係止位置にあるときのハーネス部品の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
ハーネス部品の実施形態につき、
図1~
図7を用いて説明する。
本実施形態のハーネス部品1は、
図1~
図3に示すごとく、複数の雄端子2とハウジング3と複数の雌端子4と複数の電線5とを備える。
【0015】
図2、
図3に示すごとく、複数の雄端子2は、回路基板11に接続されている。
図1、
図4に示すごとく、ハウジング3は、複数の挿入孔31及び複数の端子収容穴32を備える。
図3に示すごとく、挿入孔31には、雄端子2が挿入されている。各端子収容穴32は、各挿入孔31に連通するとともに挿入孔31と反対側に開口部321を備えている。
【0016】
複数の雌端子4は、各開口部321から各端子収容穴32に挿入配置されている。雌端子4は、各雄端子2に端子収容穴32の軸方向Xに交差する方向に弾性力を作用させつつ接触している。複数の電線5は、各雌端子4に電気的に接続されている。
以後、本実施形態につき詳説する。
【0017】
以後、端子収容穴32の軸方向をX方向という。X方向において、端子収容穴32における開口部321が形成された側をX1側といい、端子収容穴32における挿入孔31が形成された側をX2側という。
【0018】
ハーネス部品1は、複数の雄端子2におけるハウジング3から突出した部位が回路基板11に接続され、各雌端子4に接続された複数の電線5が図示しない制御装置等の電子機器に接続されることで、回路基板11と電子機器との間を電気的に中継する。
【0019】
ハウジング3は、電気的絶縁性を有する樹脂からなる。
図1に示すごとく、ハウジング3は、X方向に直交するZ方向に厚みを有する直方体状のハウジング本体部30と、ハウジング本体部30からX2側に突出したハウジング係合部33とを有する。
図4に示すごとく、ハウジング本体部30は、X1側の面がX2側に向かって凹むようにして形成された端子収容穴32を、5つ有する。
【0020】
図4に示すごとく、5つの端子収容穴32のうちの3つの端子収容穴32は、Z方向の一方側に形成されており、残りの2つの端子収容穴32は、Z方向の他方側に形成されている。5つの端子収容穴32は、X方向とZ方向との双方に直交するY方向において、略等間隔で配置されている。Y方向において、5つの端子収容穴32は、Z方向の一方側に配された端子収容穴32とZ方向の他方側に配された端子収容穴32とが、交互に配されている。
【0021】
図3に示すごとく、X方向において、端子収容穴32は、ハウジング本体部30における略全体に形成されている。端子収容穴32は、その内側空間をX1側に開放する開口部321をX1側端部に有する。また、端子収容穴32の内側空間におけるX2側に配されたハウジング3の壁部に、挿入孔31が形成されている。
【0022】
雄端子2は、ハウジング3の挿入孔31に、X2側から圧入されており、雌端子4は、ハウジング3の開口部321から端子収容穴32に挿入されている。すなわち、ハウジング3に対する雄端子2の組付向き(X1側)と、ハウジング3に対する雌端子4の組付向き(X2側)とは、反対方向である。
【0023】
図3に示すごとく、端子収容穴32の側壁のX2側端部には、ランス322が形成されている。ランス322は、端子収容穴32の所定位置まで挿入された雌端子4を、X1側から係止している。これにより、雌端子4が端子収容穴32の所定位置まで挿入された後に、雌端子4が端子収容穴32のX1側に抜けることを防止している。
【0024】
図3に示すごとく、ランス322は、X方向に長尺に形成されており、Z方向に弾性的に撓むことができるよう構成されている。ランス322は、端子収容穴32に雌端子4が挿入されると、雌端子4に形成された被係止部411に押されて弾性的に撓む。このように、ランス322が撓むことにより、X1側からX2側への端子収容穴32への雌端子4の進入が許容される。
【0025】
図3に示すごとく、雌端子4が端子収容穴32の所定位置まで挿入されると、雌端子4の被係止部411がランス322のX2側に配され、ランス322の弾性的な復元力によってランス322が被係止部411のX1側に入り込む。これにより、ランス322が雌端子4の被係止部411を被係止部411のX1側から係止し、雌端子4の抜け止めがなされる。
【0026】
図3に示すごとく、ハウジング本体部30のX方向の中央部には、Z方向の一方から他方に向かって凹んでなるリテーナ配置部301が形成されている。リテーナ配置部301には、リテーナ34が係止されている。
【0027】
図7に示すごとく、リテーナ34は、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が仮係止位置にあるとき、ハウジング3の端子収容穴32に対する雌端子4の脱着を許容する。また、
図3に示すごとく、リテーナ34は、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が本係止位置にあるとき、端子収容穴32に挿入された雌端子4の抜け止めをする。
【0028】
図3に示すごとく、リテーナ34は、X方向に貫通する5つのリテーナ挿入穴341を有する。各リテーナ挿入穴341は、互いに異なる端子収容穴32に配される。
図3、
図7に示すごとく、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が仮係止位置及び本係止位置である場合において、リテーナ34のリテーナ挿入穴341は端子収容穴32と連通している。
【0029】
リテーナ挿入穴341は、X方向に雌端子4を挿通可能な程度の径に形成されている。
図7に示すごとく、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が仮係止位置にあるとき、リテーナ挿入穴341の中心軸は、端子収容穴32の中心軸と略一致する。それゆえ、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が仮係止位置にあるとき、端子収容穴32に対する雌端子4の脱着が許容される。
【0030】
そして、
図7に示すごとく、仮係止位置にあるリテーナ34を、ハウジング3のリテーナ配置部301の奥側に向かって押し込むことにより、
図3に示すごとく、リテーナ34が本係止位置に配される。リテーナ34が本係止位置にあるとき、リテーナ34の一部は、端子収容穴32の所定位置まで挿入された雌端子4の後述の筒状部41のX1側の空間に入り込む。これにより、リテーナ34が本係止位置にあるとき、リテーナ34が雌端子4の筒状部41を筒状部41のX1側から係止し、端子収容穴32からの雌端子4の抜け止めがなされる。
【0031】
図1、
図4に示すごとく、ハウジング本体部30には、端子収容穴32に対してZ方向及びY方向に隣り合う位置に、X方向における両面がX方向に凹んでなる肉抜部302が形成されている。
図3に示すごとく、肉抜部302は、X方向におけるハウジング本体部30の端面から、リテーナ配置部301の手前まで形成されている。肉抜部302は、ハウジング3の軽量化や、ハウジング3におけるヒケの発生の防止等の役割を果たす。
【0032】
図1、
図2に示すごとく、ハウジング係合部33は、ハウジング本体部30と一体的に形成されている。すなわち、ハウジング係合部33とハウジング本体部30とを有するハウジング3全体は、一部材で構成されており、例えば複数部材を接合等したものではない。ハウジング係合部33は、ハウジング本体部30のY方向の両端からX2側に形成されている。
【0033】
図1に示すごとく、ハウジング係合部33は、ハウジング可撓片331とハウジング規制部332とを有する。ハウジング可撓片331は、ハウジング本体部30のY方向の両端のそれぞれにおける、Z方向の中央部からX2側に形成されている。
【0034】
図1に示すごとく、ハウジング可撓片331は、Y方向に厚みを有するとともに、X方向に長尺な板状に形成されている。ハウジング可撓片331は、Y方向に弾性的に撓むことができるよう構成されている。
図1、
図2に示すごとく、一対のハウジング可撓片331は、X1側端部に、互いにY方向に離れる側に突出するよう形成された係合突起部331aを有する。
【0035】
図2に示すごとく、一対のハウジング可撓片331は、回路基板11においてZ方向に貫通形成された基板係合孔111に、挿入される。ここで、一対の係合突起部331aが基板係合孔111を通過する際は、一対のハウジング可撓片331は互いにY方向に近付く方向に撓みながら、基板係合孔111に挿入される。そして、係合突起部331aが基板係合孔111を通過し、回路基板11のX2側に配されると、一対のハウジング可撓片331は、弾性的な復元力により、Y方向における互いに遠ざかる側に変形し、元の形状に戻る。これにより、係合突起部331aが、回路基板11における基板係合孔111の周囲の部位とX方向に係合し、ハウジング3が基板係合孔111から抜けなくなる。
【0036】
図1、
図3に示すごとく、ハウジング可撓片331のZ方向の両側には、ハウジング規制部332が形成されている。ハウジング規制部332は、ハウジング可撓片331と平行に形成されている。また、ハウジング規制部332は、ハウジング可撓片331よりもX方向に短く形成されており、X2側の端部が、ハウジング可撓片331のX2側の端部よりもX1側の位置に形成される。
【0037】
図1、
図3に示すごとく、一対のハウジング可撓片331が回路基板11の基板係合孔111に係合された状態において、ハウジング規制部332のX2側の面は、回路基板11のX1側の面に対向している。これにより、一対のハウジング可撓片331が回路基板11の基板係合孔111に係合された状態においては、回路基板11は、ハウジング規制部332とハウジング可撓片331の係合突起部331aとの間に挟まれる状態となる。それゆえ、一対のハウジング可撓片331が回路基板11の基板係合孔111に係合された状態において、回路基板11に対するハウジング3のX方向の変位は、ハウジング規制部332とハウジング可撓片331の係合突起部331aとによって制限される。
【0038】
図1~
図3に示すごとく、雄端子2は、ピン状(柱状)の金属材料からなる。雄端子2は、X1側の端部が、挿入孔31から端子収容穴32に挿入されている。また、雄端子2は、X2側に形成された外側端子部21が、挿入孔31からX2側に突出している。
【0039】
図1、
図3に示すごとく、外側端子部21は、X方向に交差する方向に屈曲されるとともに回路基板11の厚み方向(X方向)に伸縮可能なクランク部211を備える。クランク部211は、外側端子部21の中央部が、Z方向の一方側にU字状に屈曲するよう形成されている。そして、雄端子2は、クランク部211以外の部位が、X方向にまっすぐ形成されたピン状(柱状)に形成されている。
【0040】
図1に示すごとく、雄端子2は、少なくとも回路基板11に接続される外側端子部21の長手方向に直交する断面が、凸多角形又は円形である。凸多角形とは、すべての内角がそれぞれ180°未満である多角形を意味する。本実施形態において、雄端子2は、全体において、雄端子2の長手方向に直交する断面形状が正方形である。外側端子部21は、クランク部211のX2側の部位が、回路基板11のスルーホールにX方向に挿入されて、回路基板11にはんだ付けされる。
【0041】
図3に示すごとく、雌端子4は、筒状部41とかしめ部42とを備える。筒状部41は、板状の導電部材を矩形筒状に形成してなる。筒状部41は、X2側の端部から筒状部41の内側に雄端子2を挿入できるよう構成されている。ハウジング3に対するリテーナ34の位置が本係止位置にあるとき、筒状部41のX1側にはリテーナ34の一部が配されており、筒状部41がリテーナ34にX方向に当接することにより、雄端子2の抜け止めがなされている。なお、雌端子4が端子収容穴32の所定位置に配された状態において、雌端子4の筒状部41は、リテーナ34の若干X2側に離れた位置に配されている。
【0042】
図3に示すごとく、筒状部41には、Z方向における雄端子2側に向かって隆起するとともに雄端子2に接触する隆起部412と、隆起部412に対向するとともに、隆起部412の反対側から雄端子2に弾性接触する弾性接触片413とが形成されている。
【0043】
弾性接触片413は、Z方向に弾性的に撓むことができるよう構成されている。弾性接触片413は、筒状部41の内側に雄端子2が挿入されると、当該雄端子2に押されてZ方向における隆起部412と反対側に撓む。これにより、雄端子2は、隆起部412と弾性接触片413との間に弾性的に挟持される。そして、雄端子2は、隆起部412と弾性接触片413との間に弾性的に挟持された状態において、筒状部41に対してX方向に摺動可能に構成されている。すなわち、雄端子2は、筒状部41に対して固着されていない。
【0044】
図3に示すごとく、雌端子4は、Z方向における隆起部412に対する弾性接触片413が形成された側の反対側に、被係止部411が形成されている。被係止部411は、筒状部41のX2端部からX1側に形成されており、X1側に向かうほどZ方向の隆起部412側と反対側に向かうよう形成されている。そして、被係止部411のX1側端部が、ランス322に係止されている。
【0045】
図3に示す語ごとく、かしめ部42は、電線5の端部をかしめている。電線5は、導電性を有する導電部51と、導電部51を被覆する電気的絶縁性を有する被覆部52とを有する。電線5の端部は、導電部51が被覆部52から露出した露出導電部511となっている。かしめ部42は、露出導電部511にかしめられる第一かしめ部421と、第一かしめ部421のX1側に形成されて、被覆部52の端部にかしめられる第二かしめ部422とを備える。
【0046】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
前記態様のハーネス部品1において、ハウジング3の各挿入孔31に雄端子2が挿入されており、かつ、当該ハウジング3に形成された複数の端子収容穴32のそれぞれに雌端子4が挿入されている。それゆえ、ハウジング3の数が増加することを防ぐことができ、部品点数の削減や小型化を図りやすい。
【0047】
また、雄端子2と雌端子4とは、各端子収容穴32内において接続される。それゆえ、雄端子2を挿入孔31から端子収容穴32内に挿入するとともに、雌端子4を開口部321から端子収容穴32内に挿入することで、ハウジング3に対する雄端子2及び雌端子4の位置決めが容易である。また、複数の雌端子4は、一つずつハウジング3の各端子収容穴32に挿入されて雄端子2と接続されるため、雌端子4をハウジング3に組み付ける際の雌端子4のガタ付きが防止される。それゆえ、ハーネス部品1の生産性を向上させやすい。
【0048】
また、雌端子4は、各雄端子2に前記端子収容穴32の軸方向に直交する方向に弾性力を作用させつつ接触する。それゆえ、雄端子2と雌端子4とが、X方向に互いに摺動可能である。そのため、雌端子4に接続された電線5が引っ張られた場合でも、雌端子4と雄端子2とが摺動するため、この引っ張りによる力が雄端子2と回路基板11との接合部に作用し難い。それゆえ、雄端子2と回路基板11との接続性を向上させやすい。
【0049】
また、雄端子2は、ハウジング3の挿入孔31に、端子収容穴32における開口部321が形成された側と反対側から圧入されており、雌端子4は、ハウジング3の開口部321から端子収容穴32に挿入されている。つまり、ハウジング3に対する雄端子2の組付向き(X1側)と、ハウジング3に対する雌端子4の組付向き(X2側)とは、反対方向である。それゆえ、ハーネス部品1を組み付けるに当たっては、
図5に示すごとく、挿入孔31に雄端子2を圧入し、次に端子収容穴32に開口部321から雌端子4を組み付けることも可能であるし、
図6に示すごとく、端子収容穴32に対して開口部321から雌端子4を組み付け、次に挿入孔31に雄端子2を圧入することも可能である。そのため、ハーネス部品1の組付工程の自由度を向上させることができる。また、圧入により雄端子2を挿入孔31に固定しているため、別途雄端子2をハウジング3に固定する機構を設ける必要がない。それゆえ、ハーネス部品1の生産性を向上させやすい。
【0050】
また、挿入孔31から開口部321側の反対側に突出した雄端子2の外側端子部21は、X方向に交差する方向に屈曲されるとともに回路基板11の厚み方向に伸縮可能なクランク部211を備える。それゆえ、例えば回路基板11に接続されたハーネス部品1に外力が加わった場合でも、クランク部211がX方向に伸縮することで外側端子部21と回路基板11との接合部に応力生じることを抑制することができる。
【0051】
ここで、クランク部211は、屈曲した形状を有すため、例えばハウジング3を、ハウジング3の成形型の内側に雄端子2を配置したインサート成形によって製造した場合、成形後に成形型を抜き取る際、クランク部211が障害物となり、成形型が抜き難い。そのため、成形型にスライド機構等の特別な構造を設ける必要が生じ、ハーネス部品1全体の生産性が低下する。一方、本実施形態においては、雄端子2は、ハウジング3に対して圧入により固定されている。それゆえ、雄端子2にクランク部211を設けることによってハーネス部品1の生産性が低下することを抑制できる。
【0052】
また、ハウジング3は、回路基板11に係合するハウジング係合部33を一体に備える。それゆえ、ハウジング係合部33においてハウジング3を回路基板11に係合し、ハウジング3と回路基板11との間の位置を固定した上で、雄端子2と回路基板11とのはんだ付け等の接合作業を行うことができる。さらに、ハウジング3は、ハウジング係合部33を一体に備えるため、ハウジング係合部33を設けても部品点数が増加することがない。
【0053】
また、ハウジング3には、リテーナ34が係止されている。リテーナ34は、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が仮係止位置にあるとき、ハウジング3の端子収容穴32に対する雌端子4の脱着を許容し、ハウジング3に対するリテーナ34の位置が本係止位置にあるとき、端子収容穴32に挿入された雌端子4の抜け止めをする。それゆえ、1つのハウジング3で雄端子2と雌端子4との双方を保持する構成においても、雌端子4がハウジング3から抜け落ちることを抑制しやすい。
【0054】
また、雄端子2における回路基板11にはんだ付けされる外側端子部21は、外側端子部21の長手方向に直交する断面の形状が凸多角形又は円形である。それゆえ、例えば外側端子部21を、板状の金属部材を、断面U字状となるよう折り曲げてなるタブ状の端子に形成した場合に比べ、はんだにボイドが形成されることを防止できる。すなわち、外側端子部21をタブ状に形成した場合、断面U字状の外側端子部21に囲まれた空間に空気が残り、はんだにボイドが生じやすい。一方、外側端子部21を断面が凸多角形又は円形となるよう形成することで、X方向に直交する外側端子部21の断面に、外側端子部21に囲まれる空間が形成されないため、はんだにボイドが生じることを抑制することができる。
【0055】
以上のごとく、本実施形態によれば、部品点数の削減、及び小型化を図ることができるハーネス部品を提供することができる。
【0056】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ハーネス部品
2 雄端子
21 外側端子部
211 クランク部
3 ハウジング
31 挿入孔
32 端子収容穴
321 開口部
33 ハウジング係合部
34 リテーナ
4 雌端子
5 電線