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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】材料試験機、及び材料試験機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20220913BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G01N3/08
G05B11/36 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019070255
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020169842
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 景視
(72)【発明者】
【氏名】松浦 融
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-050201(JP,A)
【文献】特開2005-094964(JP,A)
【文献】特開2008-181452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 - 3/62
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
G05B 1/00 - 7/04
G05B 11/00 - 13/04
G05B 17/00 - 17/02
G05B 21/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象に負荷を付与する負荷機構と、
前記負荷により前記試験対象に生じる物理量、又は前記負荷機構に生じる物理量を測定する測定器と、
前記測定器の出力する測定値と、前記物理量の目標値との偏差に基づいて前記負荷機構を制御し、前記測定値を予め設定された設定値に到達させるフィードバック制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記フィードバック制御において、前記物理量の目標値が、前記設定値に、前記フィードバック制御の制御遅延に対応した前記測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、前記物理量の目標値を前記設定値に固定する、ことを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
前記測定器は、前記試験対象の変位量を前記物理量として測定する第1測定器と、前記負荷機構に発生する負荷を前記物理量として測定する第2測定器と、を含み、
前記制御部は、前記測定値である前記変位量の増加分を、前記制御遅延の遅延時間と、前記変位量の単位時間当たりの変化量である速度との積により算出し、
前記遅延時間を、遅延時間により生じる前記負荷の偏差を、前記負荷の単位時間当たりの変化量である速度で除算して算出する、ことを特徴とする請求項1記載の材料試験機。
【請求項3】
操作を受け付ける受付部を備え、
前記制御部は、前記受付部により受け付けた前記操作により前記フィードバック制御として第1フィードバック制御と、第2フィードバック制御とを切り替えて実行し、
前記第1フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記加算値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、
前記第2フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の材料試験機。
【請求項4】
操作を受け付ける受付部を備え、
前記制御部は、前記受付部により受け付けた前記操作により前記フィードバック制御として第1フィードバック制御と、第3フィードバック制御とを切り替えて実行し、
前記第1フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記加算値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、
前記第3フィードバック制御は、前記測定値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の材料試験機。
【請求項5】
操作を受け付ける受付部を備え、
前記制御部は、前記受付部により受け付けた前記操作により前記フィードバック制御として第1フィードバック制御と、第2フィードバック制御と、第3フィードバック制御とを切り替えて実行し、
前記第1フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記加算値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、
前記第2フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、
前記第3フィードバック制御は、前記測定値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の材料試験機。
【請求項6】
負荷機構により試験対象に負荷を付与する材料試験機の制御方法であって、
前記負荷により前記試験対象に生じる物理量、又は前記負荷機構に生じる物理量を測定器に測定させるステップと、
前記測定器により測定された測定値と、前記物理量の目標値との偏差に基づいて前記負荷機構を制御し、前記測定値を予め設定された設定値に到達させるフィードバック制御を実行する制御ステップと、を有し、
前記制御ステップは、前記フィードバック制御において、前記物理量の目標値が、前記設定値に、前記フィードバック制御の制御遅延に対応した前記測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、前記物理量の目標値を前記設定値に固定する、ことを特徴とする材料試験機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機、及び材料試験機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料試験機の材料試験においては、試験対象に負荷を付与する負荷機構の駆動対象に指示を与え制御対象とする計測値をフィードバックする制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、クロスヘッドを移動させて試験片に試験力を付与する負荷機構をフィードバック制御する材料試験機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-337812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のような材料試験機では、試験対象に対して、試験力を予め設定された目標値まで一定の速度で増加させたのち、試験力を目標値で保持する試験条件で試験を行なう場合がある。このような試験では、試験対象に付与される試験力をロードセル等のセンサにより測定して、測定された測定値に基づいて制御の切り替えを行なっている。しかしながら、フィードバック制御を他のフィードバック制御に切り替える場合、測定値が、目標値に到達してから制御の切り替えを行なうと、オーバーシュートが発生してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、オーバーシュートの発生を抑制し、負荷機構を精度良くフィードバック制御できる材料試験機、及び材料試験機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、試験対象に負荷を付与する負荷機構と、前記負荷により前記試験対象に生じる物理量、又は前記負荷機構に生じる物理量を測定する測定器と、前記測定器の出力する測定値と、前記物理量の目標値との偏差に基づいて前記負荷機構を制御し、前記測定値を予め設定された設定値に到達させるフィードバック制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記フィードバック制御において、前記物理量の目標値が、前記設定値に、前記フィードバック制御の制御遅延に対応した前記測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、前記物理量の目標値を前記設定値に固定する材料試験機に関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、負荷機構により試験対象に負荷を付与する材料試験機の制御方法であって、前記負荷により前記試験対象に生じる物理量、又は前記負荷機構に生じる物理量を測定器に測定させるステップと、前記測定器により測定された測定値と、前記物理量の目標値との偏差に基づいて前記負荷機構を制御し、前記測定値を予め設定された設定値に到達させるフィードバック制御を実行する制御ステップと、を有し、前記制御ステップは、前記フィードバック制御において、前記物理量の目標値が、前記設定値に、前記フィードバック制御の制御遅延に対応した前記測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、前記物理量の目標値を前記設定値に固定する材料試験機の制御方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、物理量の目標値が、設定値に、フィードバック制御の制御遅延に対応した測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、物理量の目標値が設定値に固定される。このため、測定値が設定値を超える前に、物理量の目標値が設定値に固定して試験対象に付与される負荷が、設定値よりも大きくならないように抑制することができる。このため、オーバーシュートの発生を抑制し、負荷機構を制度よくフィードバック制御できる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の材料試験機の構成を模式的に示す図である。
図2】ロードセルの測定データと、制御目標値との時間推移を示す図である。
図3】ロードセルの測定データと、制御目標値との時間推移を示す図である。
図4】ロードセルの測定データと、制御目標値との時間推移を示す図である。
図5】材料試験機の試験動作を示すフローチャートである。
図6】材料試験機の試験動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の材料試験機1の構成を模式的に示す図である。
材料試験機1は、試験対象である試験片TPに試験力Fを付与する試験機本体2と、試験機本体2の作動を制御する制御装置100とを備える。試験力Fとは、試験機本体2により試験片TPに付与される引張荷重や圧縮荷重等の負荷を意味する。本実施形態の材料試験機1は、材料試験として圧縮試験を実行する場合を例にして説明する。
【0012】
試験機本体2は、テーブル6と、このテーブル6上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設された一対のネジ棹8、9と、これらのネジ棹8、9に沿って移動可能なクロスヘッド10と、クロスヘッド10を移動させて試験片TPに試験力Fを付与する負荷機構12とを備える。
【0013】
一対のネジ棹8、9は、ボールネジから成り、クロスヘッド10は、各ネジ棹8、9に対して図示を省略したナットを介して連結される。負荷機構12は、各ネジ棹8、9の下端部に連結されるウォーム減速機16、17と、各ウォーム減速機16、17に連結されるサーボモータ18とを備える。負荷機構12は、ウォーム減速機16、17を介して、一対のネジ棹8、9にサーボモータ18の回転を伝達し、ネジ棹8、9が同期して回転することにより、クロスヘッド10がネジ棹8、9に沿って昇降する。
【0014】
また、負荷機構12は、ロータリエンコーダ20を備える。ロータリエンコーダ20は、サーボモータ18の回転に対応してパルス信号A1を出力する。パルス信号A1は制御装置100に入力される。
【0015】
クロスヘッド10には、固定具21Aを介して圧盤21が付設され、テーブル6には、固定具22Aを介して支持台22が付設される。試験機本体2は、圧縮試験において試験片TPを圧縮する場合、制御装置100の制御により、支持台22に載置された試験片TPに対してクロスヘッド10を下降させ、圧盤21と支持台22とにより試験片TPに試験力Fを付与する。
【0016】
材料試験機1は、圧盤21及び支持台22に代えて、試験片TPの上端部を把持する上つかみ具と下端部を把持する下つかみ具とを備え、これらつかみ具により試験片TPを把持した状態で、試験片TPに圧縮試験の試験力Fを与える構成でもよい。
【0017】
また、試験機本体2は、物理量を測定する複数の検出器を備える。本実施形態の試験機本体2は、試験片TPに付与される試験力Fを測定するロードセル14と、試験片TPの縮みに相当する変位を測定する変位計30とを検出器として備える。変位計30は、本発明の「第1測定器」に対応し、ロードセル14は、本発明の「第2測定器」に対応する。また、変位計30が測定する試験片TPの変位量は、本発明の「試験対象に生じる物理量」に対応する。また、ロードセル14が測定する試験力Fは、本発明の「負荷機構に発生する負荷」に対応する。
【0018】
ロードセル14は、試験片TPに付与される試験力Fを測定する。ロードセル14は、測定した試験力Fを示す測定信号A2を制御装置100に出力する。
変位計30は、試験片TPを把持し、試験片TPと共に変位する上アーム31及び下アーム33と、上アーム31及び下アーム33の変位を検出する歪みゲージ35とを備える。変位計30は、試験片TPにおける標点間の距離の変位を測定する。変位計30は、例えば、ひずみ計測が可能な伸び計である。変位計30は、測定した距離の変位量を示す測定信号A3を出力する。変位計30が出力した測定信号A3は、制御装置100に入力される。
【0019】
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、試験機本体2を制御する装置であり、試験機本体2との間で信号を送受信可能に接続される。試験機本体2から入力される信号には、ロータリエンコーダ20から出力されるパルス信号A1や、ロードセル14から出力される測定信号A2、変位計30から出力される測定信号A3等が含まれる。
【0020】
制御装置100は、ロードアンプ111、ローパスフィルタ112、A/D(Analog-to-digital)変換器113、ストレインアンプ121、A/D変換器123、カウンタ回路131、サーボアンプ133、表示器141、操作部145及び制御部150を備える。ローパスフィルタ112を、以下ではLPF(Low-pass filter)112と略記する。
【0021】
ロードセル14から出力された測定信号A2は、ロードアンプ111に入力される。ロードアンプ111は、測定信号A2を増幅してLPF112に出力する。LPF112は、入力された測定信号A2に含まれるノイズを低減するため、測定信号A2にフィルタ処理を行う。LPF112は、フィルタ処理した測定信号A2をA/D変換器113に出力する。A/D変換器113は、入力されたアナログの測定信号A2にA/D変換を行い、デジタルの測定データに変換する。A/D変換器113は、変換した測定データを制御部150に出力する。
【0022】
ストレインアンプ121は、変位計30から出力される測定信号A3を増幅し、増幅した測定信号A3をA/D変換器123に出力する。A/D変換器123は、入力されたアナログの測定信号A3にA/D変換を行い、デジタルの測定データに変換する。A/D変換器113は、変換した測定データを制御部150に出力する。
【0023】
カウンタ回路131は、ロータリエンコーダ20が出力するパルス信号A1のパルス数を計数し、サーボモータ18の回転量、すなわちサーボモータ18の回転によって移動するクロスヘッド10の移動量であるストローク値を示す測定データを制御部150に出力する。
【0024】
本実施形態では、負荷機構12にロータリエンコーダ20を搭載し、ロータリエンコーダ20が出力するパルス信号A1のパルス数を計数する構成であるが、ロータリエンコーダ20に代えて、ネジ棹8、9の少なくとも一方に装着されるエンコーダを備える構成でもよい。この構成の場合、当該エンコーダは、装着されたネジ棹8、9の少なくとも一方が所定角度回転する毎に1つのパルスを出力する信号を生成し、カウンタ回路131に出力する。カウンタ回路131は、エンコーダが出力する信号のパルス数を計数し、ネジ棹の回転量、すなわちネジ棹の回転によって移動するクロスヘッド10の移動量であるストローク値を示す信号を制御部150にデジタル信号で出力する。
【0025】
サーボアンプ133は、制御部150から供給される指令値に対応した電流をサーボモータ18に供給する。サーボモータ18は、サーボアンプ133から供給される電流により回転駆動される。
【0026】
表示器141は、制御部150の制御により、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値や、変位計30により測定された変位量の測定値を表示する。操作部145は、圧縮試験を含む材料試験条件の設定や各種設定パラメータの設定値、圧縮試験を含む材料試験の実行指示や中断指示等の操作を受け付ける。
【0027】
次に、制御部150について説明する。
制御部150は、メモリ160及びプロセッサ170を備えるコンピュータ装置である。制御部150は、メモリ160及びプロセッサ170の他に、HDDやSSDなどのストレージや、外部装置に接続可能なインターフェイス回路を備える。制御部150は、ICチップやLSIなどの集積回路といった1又は複数の回路により構成してもよい。
【0028】
メモリ160は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性のメモリデバイスと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリデバイスとを備え、プロセッサ170が実行する制御プログラム163及び目標データ165を記憶する。
目標データ165は、圧縮試験を含む材料試験における物理量の目標値を示すデータである。物理量には、ロードセル14により測定される試験力Fや、試験力Fの単位時間当たりの変化量を示す速度、変位計30により測定される試験片TPの変位量や、変位量の単位時間当たりの変化量を示す速度等が含まれる。
【0029】
プロセッサ170は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-processing unit)等の演算装置であり、制御プログラム163を実行して制御装置100の各部を制御する。制御部150は、試験機本体2の負荷機構12としてサーボモータ18をフィードバック制御して圧縮試験を実行する。
【0030】
制御部150は、指令値演算部175を備える。指令値演算部175は、サーボアンプ133に出力する指令値を演算する。指令値演算部175は、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値、又は変位計30により測定された変位量の測定値と、制御目標値と、の偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。
【0031】
制御部150は、フィードバック制御を実行する。フィードバック制御は、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値、又は変位計30により測定された変位量の測定値を、制御目標値に一致させる制御である。制御部150は、入力された試験力Fの測定値又は変位量の測定値と、制御目標値との偏差に基づいて指令値演算部175により指令値を演算し、演算した指令値をサーボアンプ133に出力してサーボモータ18の回転量を制御する。サーボモータ18の回転量が制御されることにより、試験片TPに付与される試験力Fや変位量が制御される。制御目標値は、目標データ165に基づいて設定されるフィードバック制御の目標値である。
本実施形態では、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値を、制御目標値である試験力Fの目標値に一致させる場合を例にして説明する。
【0032】
制御部150は、試験力Fを、予め設定された設定値である保持目標値に到達させるフィードバック制御と、保持目標値に到達した試験力Fを維持するフィードバック制御とを実行する。試験力Fを、予め設定された設定値である保持目標値に到達させるフィードバック制御は、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御及び第3フィードバック制御の3つを有する。また、保持目標値に到達した試験力Fを維持するフィードバック制御を第4フィードバック制御という。
【0033】
制御部150は、操作部145により受け付けた操作により、試験力Fを、予め設定された設定値である保持目標値に到達させるフィードバック制御として、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御及び第3フィードバック制御のいずれか1つを選択し、選択したフィードバック制御を実行する。選択したフィードバック制御の終了後、制御部150は、第4フィードバック制御を実行する。本実施形態では、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御及び第3フィードバック制御のいずれかの実行後、第4フィードバック制御を実行する場合について説明するが、試験条件の設定によっては、第4フィードバック制を行なわなくてもよい。例えば、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御及び第3フィードバック制御のいずれかの制御の終了により材料試験を終了させてもよいし、第1フィードバック制~第3フィードバック制のいずれかを終了後、別の値に設定された保持目標値となるように第1フィードバック制御、第2フィードバック制御及び第3フィードバック制御のいずれかを実行してもよい。
【0034】
図2は、制御部150が第1フィードバック制御を実行した場合の試験力Fの測定値と、制御目標値との時間推移を示す図である。図2に示す破線が試験力Fの測定値を示し、図2に示す実線が制御目標値を示す。また、図2に示す一点鎖線は、試験力Fの測定値であって、LPF112によるフィルタ処理を行なわなかった場合のノイズを含む測定値の時間推移を示す。第1フィードバック制御を実行する場合の制御部150の制御状態は、2つに区分けされる。区分けされた2つの区間の前半の区間を第1区間といい、後半の区間を第2区間という。
【0035】
第1区間は、試験片TPに付与する試験力Fの単位時間当たりの変化量である速度が一定となるように制御する区間である。制御部150は、第1区間では、試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差に基づいてサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。また、制御部150は、目標データ165に基づいて制御目標値を更新していく。第1フィードバック制御を実行する場合、目標データ165は、試験力Fが一定の割合で増加するように制御目標値が設定されている。目標データ165に基づいて制御目標値が更新されることで、試験片TPに付与される試験力Fの速度が一定に制御される。
【0036】
また、制御部150は、制御状態を変更して、第1区間から第2区間に切り替えるタイミングを判定する。制御部150は、制御目標値と、第1しきい値とを比較して、第1区間を終了させるタイミングを判定する。第1しきい値は、本発明の「加算値」に対応する。第1しきい値は、保持目標値に、フィードバック制御の制御遅延に対応した試験力Fの増加分を加算した値に設定されている。保持目標値は、材料試験機1の使用者により事前に設定される目標値であり、本発明の「設定値」に対応する。
【0037】
フィードバック制御の制御遅延には、クロスヘッド10の移動による遅延や、LPF112のフィルタ処理による遅延が含まれる。制御部150が指令値をサーボアンプ133に出力してからクロスヘッド10が目的の位置まで動くには遅延が発生する。また、ロードセル14により測定された測定信号A2は、LPF112によりノイズ成分が除去される。LPF112のフィルタ処理によって制御部150に測定データが入力されるタイミングには遅延が生じる。第1しきい値は、保持目標値に、フィードバック制御の制御遅延に対応した試験力Fの増加分を加算した値に設定されている。制御遅延に対応した試験力Fの増加分を、以下では、制御遅延による試験力Fの偏差という。
【0038】
また、第4フィードバック制御として試験片TPに付与される試験力Fを一定に保持する制御を実行する場合、フィードバック制御の制御遅延による試験力Fの偏差は、以下の値となる。
制御遅延による試験力Fの偏差=制御目標値-ノイズ成分を含む試験力Fの測定値
【0039】
また、第4フィードバック制御として試験片TPの伸び(変位量)を一定に保持する制御を実行する場合、フィードバック制御の制御遅延による試験力Fの偏差は、以下の値となる。
制御遅延による試験力Fの偏差(伸び)=制御遅延時間×伸びの増加速度
制御遅延時間=制御遅延による試験力Fの偏差/試験力Fの増加速度
試験力の増加速度とは、第1区間において、一定の割合で増加させる試験力Fの増加速度である。伸びの増加速度とは、第1区間において、試験力Fを一定の割合で増加させているときの伸びの増加速度である。
【0040】
第1フィードバック制御の実行中に試験片TPの伸びについて制御目標値を作成することはできないため、まず、制御遅延による試験力Fの偏差と、試験力Fの増加速度とに基づいて、制御遅延時間を算出し、算出した制御遅延時間に伸びの増加速度を掛けて、制御遅延による伸びの偏差を求める。
【0041】
制御部150は、制御目標値が、第1しきい値よりも小さい場合、第1フィードバック制御を継続させる。また、制御部150は、制御目標値が、第1しきい値以上の場合、第1フィードバック制御の第1区間を終了させ、図2に示す第2区間に移行する。
【0042】
制御部150は、第2区間では、制御目標値に保持目標値を設定する。第2区間は、ロードセル14により測定される試験力Fの測定値が、保持目標値に近づくまで待機する待機期間である。制御部150は、第2区間では、制御目標値を保持目標値に固定する。制御部150は、試験力Fの測定値と、保持目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。
【0043】
制御部150は、制御目標値である保持目標値と、測定値と差が、第2しきい値以下になると、第1フィードバック制御を終了して第4フィードバック制御を開始する。本実施形態では、第4フィードバック制御として、試験力Fを一定に維持する制御を実行する場合について説明する。第4フィードバック制御は、このような制御に限定されるものではない。
【0044】
制御部150は、ロードセル14により測定された試験力Fと、目標データ165により設定した制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。制御目標値として、一定の試験力Fを設定することで、試験片TPに付与される試験力Fが一定になるように制御される。
【0045】
図3は、制御部150が第2フィードバック制御と、第4フィードバック制御とを実行した場合のロードセル14の測定データと、制御目標値との時間推移を示す図である。図3に示す破線が試験力Fの測定値を示し、図3に示す実線が制御目標値を示す。
制御部150は、第2フィードバック制御を実行する場合、第1フィードバック制御と同様に、試験片TPに付与する試験力Fの速度が一定となるように制御する。具体的には、制御部150は、試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。第2モードを実行する場合も、目標データ165として、試験力Fの単位時間当たりの変化量が一定となるように制御目標値が設定されている。
【0046】
第1フィードバック制御と第2フィードバック制御とは、次の制御への移行タイミングが異なる。制御部150は、第2フィードバック制御を実行する場合、目標データ165に基づいて設定する制御目標値が、保持目標値以上になった場合に、第2フィードバック制御を終了させる。
【0047】
図4は、制御部150が、第3フィードバック制御と第4フィードバック制御とを実行した場合の試験力Fの測定値と、制御目標値との時間推移を示す図である。図4に示す破線が試験力Fの測定値を示し、図4に示す実線が制御目標値を示す。
制御部150は、第3フィードバック制御を実行する場合、上述した第1フィードバック制御と同様に、試験片TPに付与する試験力Fの速度が一定となるように制御する。制御部150は、第3フィードバック制御を実行する場合も、試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。
【0048】
第1フィードバック制御と第3フィードバック制御とは、次の制御への移行タイミングが異なる。制御部150は、第3フィードバック制御を実行する場合、試験力Fの測定値が、保持目標値以上になった場合に、第3フィードバック制御を終了させる。
【0049】
次に、材料試験機1の動作について説明する。
図5及び図6は、材料試験機1の動作を示すフローチャートである。
制御部150は、まず、圧縮試験を開始するか否かを判別する(ステップS1)。制御部150は、操作部145により圧縮試験の実行を指示する操作を受け付けた場合に、圧縮試験を開始する(ステップS1)。
【0050】
次に、制御部150は、フィードバック制御の選択操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS2)。使用者は、操作部145を操作して、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御及び第3フィードバック制御のいずれかを選択する操作を入力する。制御部150は、操作を受け付けていない場合(ステップS2/NO)、操作を受け付けるまで待機する。また、制御部150は、操作を受け付けた場合(ステップS2/YES)、受け付けた操作が第1フィードバック制御を選択する操作であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0051】
制御部150は、受け付けた操作が第1フィードバック制御を選択する操作である場合(ステップS3/YES)、第1フィードバック制御を開始し、試験片TPに試験力Fを付与する(ステップS4)。制御部150は、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。これにより、サーボモータ18が回転駆動されてクロスヘッド10の位置が移動し、試験片TPに試験力Fが付与される。
【0052】
次に、制御部150は、ロードセル14に試験力Fを測定させる(ステップS5)。ロードセル14は、試験片TPに付与された試験力Fを測定し、測定結果を示す測定信号A2を出力する。測定信号A2は、ロードアンプ111、LPF112及びA/D変換器113により処理され、測定データとして制御部150に入力される。ステップS5は、本発明の「測定ステップ」に対応する。
【0053】
次に、制御部150は、目標データ165に基づいて制御目標値を設定する(ステップS6)。制御部150は、設定した制御目標値が、第1しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS7)。第1しきい値は、保持目標値に、フィードバック制御の制御遅延に対応した試験力Fの増加分を加算した値である。
【0054】
制御部150は、制御目標値が第1しきい値よりも小さい場合(ステップS7/NO)、ステップS5で測定された試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量に対応する指令値を演算し(ステップS8)、演算した指令値をサーボアンプ133に出力する。サーボアンプ133は、制御部150から入力される指令値に対応した電流をサーボモータ18に供給してサーボモータ18を回転駆動する(ステップS9)。ステップS7、S8及びS9は、本発明の「制御ステップ」に対応する。
【0055】
次に、制御部150は、ロードセル14により試験力Fを再度測定させ(ステップS5)、目標データ165に基づいて制御目標値を再度設定する(ステップS6)。制御部150は、制御目標値が第1しきい値よりも小さい場合(ステップS7/NO)、ステップS8、S9、S5及びS6の処理を再度、繰り返す。
【0056】
また、制御部150は、制御目標値が第1しきい値以上である場合(ステップS7/YES)、第1フィードバック制御を終了させ(ステップS10)、制御目標値として保持目標値を設定する(ステップS11)。制御部150は、試験力Fの測定値と、保持目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量に対応する指令値を演算し(ステップS12)、演算した指令値をサーボアンプ133に出力する。サーボアンプ133は、制御部150から入力される指令値に対応した電流をサーボモータ18に供給してサーボモータ18を回転駆動する(ステップS13)。
【0057】
次に、制御部150は、ロードセル14に試験力Fを測定させる(ステップS14)。制御部150は、ロードセル14から入力される試験力Fの測定値と、保持目標値との偏差を算出し、算出した偏差が第2しきい値以下であるか否かを判定する(ステップS15)。制御部150は、算出した偏差が第2しきい値よりも大きい場合(ステップS15/NO)、所定時間経過後に試験力Fの測定を再度行い(ステップS14)、ステップS15の判定を再度行なう。また、制御部150は、算出した差分が第2しきい値以下である場合(ステップS15/YES)、第4フィードバック制御を実行する(ステップS16)。
【0058】
次に、S2で受け付けた操作により選択されたフィードバック制御が、第1フィードバック制御ではなかった場合の材料試験機1の動作を、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
制御部150は、ステップS3の判定が否定判定である場合、S2で受け付けた操作により選択されたフィードバック制御が第2フィードバック制御であるか否かを判定する(ステップS17)。制御部150は、フィードバック制御として第2フィードバック制御が選択された場合(ステップS17/YES)、第2フィードバック制御を開始する(ステップS18)。
【0059】
制御部150は、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。これにより、サーボモータ18が回転駆動され、クロスヘッド10の位置が移動して、試験片TPに試験力Fが付与される。
【0060】
次に、制御部150は、ロードセル14に試験力Fの測定を実行させる(ステップS19)。次に、制御部150は、目標データ165に基づいて制御目標値を設定する(ステップS20)。そして、制御部150は、設定した制御目標値が、保持目標値以上であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0061】
制御部150は、制御目標値が保持目標値よりも小さい場合(ステップS21/NO)、ステップS19で測定された試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量に対応する指令値を演算し(ステップS22)、演算した指令値をサーボアンプ133に出力する。サーボアンプ133は、制御部150から入力される指令値に対応した電流をサーボモータ18に供給してサーボモータ18を回転駆動する(ステップS23)。
【0062】
次に、制御部150は、ロードセル14により試験力Fを再度測定させ(ステップS19)、目標データ165に基づいて制御目標値を再度設定する(ステップS20)。制御部150は、制御目標値が保持目標値よりも小さい場合(ステップS21/NO)、ステップS22、S23、S19及びS20の処理を再度、繰り返す。
【0063】
また、制御部150は、設定した制御目標値が保持目標値以上である場合(ステップS21/YES)、第2フィードバック制御を終了し(ステップS24)、第4フィードバック制御を開始する(ステップS25)。制御部150は、制御目標値として保持目標値を設定し、試験力Fの測定値を保持目標値に一致させる第4フィードバック制御を実行する。制御部150は、第4フィードバック制御の終了により、この処理フローを終了さる。
【0064】
また、制御部150は、ステップS17の判定が否定判定である場合、第3フィードバック制御を開始する(ステップS26)。制御部150は、試験力Fの測定値と、制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令値をサーボアンプ133に出力する。これにより、サーボモータ18が回転駆動され、クロスヘッド10の位置が移動して、試験片TPに試験力Fが付与される。
【0065】
次に、制御部150は、ロードセル14に試験力Fの測定を実行させる(ステップS27)。次に、制御部150は、測定された試験力Fの測定値が保持目標値以上であるか否かを判定する(ステップS28)。制御部150は、試験力Fの測定値が保持目標値よりも小さい場合(ステップS28/NO)、目標データ165に基づいて制御目標値を更新し(ステップS29)、試験力Fの測定値と、更新した制御目標値との偏差を減少させるサーボモータ18の回転量に対応する指令値を演算する(ステップS30)。そして、制御部150は、演算した指令値をサーボアンプ133に出力する。サーボアンプ133は、制御部150から入力される指令値に対応した電流をサーボモータ18に供給してサーボモータ18を回転駆動する(ステップS31)。
【0066】
次に、制御部150は、ロードセル14により試験力Fを再度測定させ(ステップS27)、測定された試験力Fの測定値が保持目標値以上であるか否かを判定する(ステップS28)。制御部150は、試験力Fの測定値が保持目標値よりも小さい場合(ステップS28/NO)、ステップS29、S30、S31及びS27の処理を再度、繰り返す。
【0067】
また、制御部150は、測定された試験力Fの測定値が保持目標値以上である場合(ステップS28/YES)、第3フィードバック制御を終了して(ステップS32)、第4フィードバック制御を開始する(ステップS33)。制御部150は、制御目標値として保持目標値を設定し、試験力Fの測定値を保持目標値に一致させる第4フィードバック制御を実行する。制御部150は、第4フィードバック制御の終了により、この処理フローを終了さる。
【0068】
以上説明したように、材料試験機1は、負荷機構12、ロードセル14及び制御部150を備える。負荷機構12は、試験片TPに試験力Fを付与する。ロードセル14は、負荷機構12に生じる試験力Fを測定する。制御部150は、ロードセル14により測定された試験力Fの測定値と、試験力Fの目標値との偏差に基づいて負荷機構12を制御する第1フィードバック制御を実行する。また、制御部150は、試験力Fの測定値に基づいて設定する試験力Fの目標値が、予め設定された保持目標値に、フィードバック制御の制御遅延に対応して増加する試験力Fの測定値の増加分を加算した加算値と一致した場合に、試験力Fの目標値を保持目標値に固定する。
【0069】
これにより、試験力Fの目標値が、予め設定された保持目標値に、フィードバック制御の制御遅延に対応して増加する第1測定値の増加分を加算した加算値と一致した場合に、試験力Fの目標値が保持目標値に固定される。このため、試験力Fの測定値が保持目標値を超える前に、試験力Fの目標値が保持目標値に固定され、試験片TPに付与される試験力Fが保持目標値よりも大きくなることを抑制することができる。従って、オーバーシュートの発生を抑制し、負荷機構を精度良くフィードバック制御できる。
【0070】
材料試験機1は、測定器として、試験片TPの変位量を物理量として測定する変位計30と、負荷機構12に発生する試験力Fを物理量として測定するロードセル14と、を備える。制御部150は、測定値である変位量の増加分を、制御遅延の遅延時間と、変位量の単位時間当たりの変化量との積により算出し、記遅延時間を、遅延時間により生じる試験力Fの偏差を、試験力Fの単位時間当たりの変化量である速度で除算して算出する。
【0071】
これにより、制御遅延による変位量の増加分が、制御遅延の遅延時間と、変位量の単位時間当たりの変化量との積により算出される。従って、精度よく求めることができる。
【0072】
材料試験機1は、操作を受け付ける操作部145を備える。
制御部150は、操作部145により受け付けた操作によりフィードバック制御として第1フィードバック制御と、第2フィードバック制御とを切り替えて実行する。
第1フィードバック制御は、試験力Fの目標値が、第1しきい値に一致するように負荷機構12を制御する制御である。第2フィードバック制御は、試験力Fの目標値が、保持目標値に一致するように負荷機構12を制御する制御である。
【0073】
これにより、操作部145を操作して、制御部150に実行させるフィードバック制御を、第1フィードバック制御又は第2フィードバックに切り替えることができる。
【0074】
制御部150は、操作部145により受け付けた操作によりフィードバック制御として第1フィードバック制御と、第3フィードバック制御とを切り替えて実行する。
第3フィードバック制御は、試験力Fの測定値が、保持目標値に一致するように負荷機構12を制御する制御である。
【0075】
これにより、操作部145を操作して、制御部150に実行させるフィードバック制御を、第1フィードバック制御又は第3フィードバックに切り替えることができる。
【0076】
制御部150は、操作部145により受け付けた操作によりフィードバック制御として第1フィードバック制御と、第2フィードバック制御と、第3フィードバック制御とを切り替えて実行する。
【0077】
これにより、操作部145を操作して、制御部150に実行させるフィードバック制御を、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御又は第3フィードバックに切り替えることができる。
【0078】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、負荷機構12の駆動源としてサーボモータ18を用いたが、油圧源等の他の駆動源を用いてもよい。
【0079】
また、図1に示した機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0080】
例えば、図5及び図6に示す動作のステップ単位は、材料試験機1の各部の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0081】
例えば、上記実施形態では、圧縮試験を行う材料試験機1を示したが、本発明は、試験片TPに試験力Fを付与して、試験片TPの物理量の変化を測定する材料試験機に対して広く適用することができる。例えば、引張試験、曲げ試験、引き剥がし試験等を行う材料試験機に対して、本発明を適用することができる。なお、試験片TPの試験機本体2に固定する冶具は、試験種に応じて適切なものが採用される。
【0082】
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0083】
(請求項1)
一態様に係る材料試験機は、試験対象に負荷を付与する負荷機構と、前記負荷により前記試験対象に生じる物理量、又は前記負荷機構に生じる物理量を測定する測定器と、前記測定器の出力する測定値と、前記物理量の目標値との偏差に基づいて前記負荷機構を制御し、前記測定値を予め設定された設定値に到達させるフィードバック制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記フィードバック制御において、前記物理量の目標値が、前記設定値に、前記フィードバック制御の制御遅延に対応して増加する前記測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、前記物理量の目標値を前記設定値に固定する。
【0084】
第1項に記載の材料試験機によれば、物理量の目標値が、予め設定された設定値に、フィードバック制御の制御遅延に対応して増加する測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、物理量の目標値が設定値に固定される。このため、物理量の測定値が設定値を超える前に、物理量の目標値が設定値に固定され、試験対象に付与される物理量が設定値よりも大きくなることを抑制することができる。従って、オーバーシュートの発生を抑制し、負荷機構を精度良くフィードバック制御できる。
【0085】
(請求項2)
第1項に記載の材料試験機において、前記測定器は、前記試験対象の変位量を前記物理量として測定する第1測定器と、前記負荷機構に発生する負荷を前記物理量として測定する第2測定器と、を含み、前記制御部は、前記測定値である前記変位量の増加分を、前記制御遅延の遅延時間と、前記変位量の単位時間当たりの変化量である速度との積により算出し、前記遅延時間を、遅延時間により生じる前記負荷の偏差を、前記負荷の単位時間当たりの変化量である速度で除算して算出する。
【0086】
第2項に記載の材料試験機によれば、制御遅延による変位量の増加分が、制御遅延の遅延時間と、変位量の単位時間当たりの変化量との積により算出される。従って、精度よく求めることができる。
【0087】
(請求項3)
第1項又は第2項に記載の材料試験機において、操作を受け付ける受付部を備え、前記制御部は、前記受付部により受け付けた前記操作により前記フィードバック制御として第1フィードバック制御と、第2フィードバック制御とを切り替えて実行し、前記第1フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記加算値に一致するように前記負荷機構(12)を制御する制御であり、前記第2フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御である。
【0088】
第3項に記載の材料試験機によれば、受付部を操作して、制御部に実行させるフィードバック制御を、第1フィードバック制御又は第2フィードバックに切り替えることができる。
【0089】
(請求項4)
第1項又は第2項に記載の材料試験機において、操作を受け付ける受付部を備え、前記制御部は、前記受付部により受け付けた前記操作により前記フィードバック制御として第1フィードバック制御と、第3フィードバック制御とを切り替えて実行し、前記第1フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記加算値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、
前記第3フィードバック制御は、前記測定値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御である。
【0090】
第4項に記載の材料試験機によれば、受付部を操作して、制御部に実行させるフィードバック制御を、第1フィードバック制御又は第3フィードバックに切り替えることができる。
【0091】
(請求項5)
第1項又は第2項に記載の材料試験機において、操作を受け付ける受付部を備え、前記制御部は、前記受付部により受け付けた前記操作により前記フィードバック制御として第1フィードバック制御と、第2フィードバック制御と、第3フィードバック制御とを切り替えて実行し、前記第1フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記加算値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、前記第2フィードバック制御は、前記物理量の目標値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御であり、前記第3フィードバック制御は、前記測定値が、前記設定値に一致するように前記負荷機構を制御する制御である。
【0092】
第5項に記載の材料試験機によれば、受付部を操作して、制御部に実行させるフィードバック制御を、第1フィードバック制御、第2フィードバック制御又は第3フィードバックに切り替えることができる。
【0093】
一態様に係る材料試験機の制御方法は、負荷機構により試験対象に負荷を付与する材料試験機の制御方法であって、前記負荷により前記試験対象に生じる物理量、又は前記負荷機構に生じる物理量を測定器に測定させるステップと、前記測定器により測定された測定値と、前記物理量の目標値との偏差に基づいて前記負荷機構を制御し、前記測定値を予め設定された設定値に到達させるフィードバック制御を実行する制御ステップと、を有し、前記制御ステップは、前記フィードバック制御において、前記物理量の目標値が、前記設定値に、前記フィードバック制御の制御遅延に対応した前記測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、前記物理量の目標値を前記設定値に固定する。
【0094】
第6項に記載の材料試験機の制御方法によれば、物理量の目標値が、予め設定された設定値に、フィードバック制御の制御遅延に対応した測定値の増加分を加算した加算値以上になった場合に、物理量の目標値が設定値に固定される。このため、物理量の測定値が設定値を超える前に、物理量の目標値が設定値に固定され、試験対象に付与される物理量が設定値よりも大きくなることを抑制することができる。従って、オーバーシュートの発生を抑制し、負荷機構を精度良くフィードバック制御できる。
【符号の説明】
【0095】
1 材料試験機
2 試験機本体
6 テーブル
8、9 ネジ棹
10 クロスヘッド
12 負荷機構
14 ロードセル(第2測定器)
16、17 ウォーム減速機
18 サーボモータ
20 ロータリエンコーダ
21 圧盤
21A、22A 固定具
22 支持台
30 変位計(第1測定器)
31 上アーム
33 下アーム
35 歪みゲージ
100 制御装置
111 ロードアンプ
112 LPF
113、123 A/D変換器
121 ストレインアンプ
131 カウンタ回路
133 サーボアンプ
145 操作部(受付部)
150 制御部
160 メモリ
163 制御プログラム
165 目標データ
170 プロセッサ
175 指令値演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6