(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/58 20060101AFI20220913BHJP
H01R 13/56 20060101ALI20220913BHJP
H01R 31/08 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01R13/58
H01R13/56
H01R31/08 Q
(21)【出願番号】P 2019074919
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2021-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 治
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-124641(JP,A)
【文献】特開2004-014220(JP,A)
【文献】特開平08-190971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0119710(US,A1)
【文献】特開2003-168498(JP,A)
【文献】特開2010-212151(JP,A)
【文献】特開2007-250264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18、4/50、
13/56、13/58、
31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を接続するジョイントコネクタであって、
延び方向に沿って延びる前記複数の電線と、前記複数の電線の延び方向の前方端部にそれぞれ接続される複数の端子と、前記複数の端子を収容するロアハウジングと、前記ロアハウジングに配設されるバスバーと、前記ロアハウジングに組み付けられるアッパーカバーと、を備え、
前記バスバーは複数のタブを有し、
前記複数の端子のそれぞれは、前記複数のタブがそれぞれ接続されるバスバー接続部と、前記複数の電線がそれぞれ接続される電線接続部と、を有し、
前記ロアハウジングから前記延び方向の後方に導出された前記複数の電線は、前記延び方向の前方へ折り返された曲がり部を有し、
前記アッパーカバーは、前記複数の電線が前記延び方向の前方に折り返された状態で保持される電線保持部を有し
前記ロアハウジングには、複数のキャビティが前記延び方向と直交する左右方向に並んで形成され、前記キャビティは前記アッパーカバー側に開口されており、前記端子が前記アッパーカバー側から前記キャビティに収容される、ジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記アッパーカバーは、前記ロアハウジングから前記延び方向の後方に導出された前記複数の電線を、前記ロアハウジングに向かって押さえる電線押え部を有する、請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記延び方向について前記ロアハウジングの後方から延びたヒンジを介して、前記アッパーカバーが前記ロアハウジングと連結されている、請求項1または請求項2に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記アッパーカバーは、前記ロアハウジングに組み付けられた状態で、前記延び方向の後方から前記端子と係合する端子係合部を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項5】
前記アッパーカバーの内面には、前記ロアハウジングと前記アッパーカバーとが組み付けられた状態で、前記ロアハウジングとの間で前記バスバーを挟むバスバー保持部が設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記電線保持部は、前記電線を挿通させる孔状に形成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項7】
前記電線接続部は、前記延び方向に沿って延びるとともに前記複数の電線の1本を挟持する挟持部と、前記挟持部の外側に配されるとともに前記延び方向に沿って移動可能なスライド部と、を有し、前記スライド部は、前記挟持部に前記複数の電線の1本が挟まれた状態で、前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイントコネクタとして特開平10-261471号公報に記載のものが知られている。このジョイントコネクタは、ハウジングの各端子収容室の端子挿入口にブスバー付きリテーナのリテーナ本体を嵌合自在に設け、このリテーナ本体に各端子収容室の端子挿入口に設けられた係合部に係止される係止部を設けると共に、ブスバー付きリテーナのブスバーの端子をジョイント端子の係止部に係止自在にしてある。また、ブスバー付きリテーナと同形のリテーナのリテーナ本体を各ハウジングの各端子収容室の端子挿入口に嵌合自在に設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、車両に搭載されるジョイントコネクタについては小型化が求められている。ジョイントコネクタのハウジングを小型化することに伴い、端子を係止する部品(例えばリテーナ)も小型化することが考えられる。すると、端子を係止する部品の強度が低下する場合が想定される。これにより端子がハウジングに強固に係止されなくなる結果、電線を介して端子に伝達された外力によって端子とハウジングが、がたつくことが懸念される。また、端子を小型化すると端子自体の強度も低下するので、電線を介して加えられる外力によって端子自体が不具合を生じるおそれもある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線からの外力が端子に伝達されることを抑制できるジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、複数の電線を接続するジョイントコネクタであって、延び方向に沿って延びる前記複数の電線と、前記複数の電線の延び方向の前方端部にそれぞれ接続される複数の端子と、前記複数の端子を収容するロアハウジングと、前記ロアハウジングに配設されるバスバーと、前記ロアハウジングに組み付けられるアッパーカバーと、を備え、前記バスバーは複数のタブを有し、前記複数の端子のそれぞれは、前記複数のタブがそれぞれ接続されるバスバー接続部と、前記複数の電線がそれぞれ接続される電線接続部と、を有し、前記ロアハウジングから前記延び方向の後方に導出された前記複数の電線は、前記延び方向の前方へ折り返された曲がり部を有し、前記アッパーカバーは、前記複数の電線が前記延び方向の前方に折り返された状態で保持される電線保持部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電線を介して端子に外力が伝達されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るジョイントコネクタを示す断面図であって、
図9におけるI-I線断面図である。
【
図2】
図2は、ロアハウジング、ヒンジ、およびアッパーカバーを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ジョイントコネクタを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、アッパーカバーに電線が挿通された状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、端子に電線が挿通された状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、スライド部が本係止位置に移動されたことにより電線と端子とが電気的に接続された状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、ジョイントコネクタを示す平面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2にかかるジョイントコネクタを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、ロアハウジングと、アッパーカバーとが組み付けられる前の状態を示す平面図である。
【
図12】
図12は、実施形態3にかかるロアハウジングを示す斜視図である。
【
図13】
図13は、ロアハウジングと、アッパーカバーとが組み付けられる前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0010】
(1)本開示は、複数の電線を接続するジョイントコネクタであって、延び方向に沿って延びる前記複数の電線と、前記複数の電線の延び方向の前方端部にそれぞれ接続される複数の端子と、前記複数の端子を収容するロアハウジングと、前記ロアハウジングに配設されるバスバーと、前記ロアハウジングに組み付けられるアッパーカバーと、を備え、前記バスバーは複数のタブを有し、前記複数の端子のそれぞれは、前記複数のタブがそれぞれ接続されるバスバー接続部と、前記複数の電線がそれぞれ接続される電線接続部と、を有し、前記ロアハウジングから前記延び方向の後方に導出された前記複数の電線は、前記延び方向の前方へ折り返された曲がり部を有し、前記アッパーカバーは、前記複数の電線が前記延び方向の前方に折り返された状態で保持される電線保持部を有する。
【0011】
延び方向の前方へ延びる複数の電線に外力が加えられると、この外力は延び方向の後方へと各電線に伝達される。各電線の延びる方向は、曲がり部において、延び方向について反転されている。これにより、各電線に伝達された力は、曲がり部において吸収されるので、電線に加えられた力が端子にまで伝えられることが抑制される。
【0012】
(2)前記アッパーカバーは、前記ロアハウジングから前記延び方向の後方に導出された前記複数の電線を、前記ロアハウジングに向かって押さえる電線押え部を有することが好ましい。
【0013】
複数の電線は、アッパーカバーの電線押え部によって、ロアハウジングに向かって押さえられているので、電線に加えられた力は、電線押え部よりも先に伝達されることが抑制される。これにより、電線に加えられた外力が端子にまで伝達されることが抑制される。
【0014】
(3)前記延び方向について前記ロアハウジングの後方から延びたヒンジを介して、前記アッパーカバーが前記ロアハウジングと連結されていることが好ましい。
【0015】
ロアハウジングとアッパーカバーとがヒンジを介して連結されているので、部品点数を削減することができる。また、ヒンジによって複数の電線が保護されるので、電線に外力が加えられることが抑制される。
【0016】
(4)前記アッパーカバーは、前記ロアハウジングに組み付けられた状態で、前記延び方向の後方から前記端子と係合する端子係合部を有することが好ましい。
【0017】
端子係合部が、延び方向の後方から端子に係合しているので、電線に加えられた外力が曲がり部を越えて、電線接続部まで到達したとしても、端子が延び方向の後方に移動することが抑制されるようになっている。これにより、端子が、ロアハウジングおよびアッパーカバーに強固に保持されるようになっている。
【0018】
(5)前記アッパーカバーの内面には、前記ロアハウジングと前記アッパーカバーとが組み付けられた状態で、前記ロアハウジングとの間で前記バスバーを挟むバスバー保持部が設けられていることが好ましい。これにより、ロアハウジングとアッパーカバーとを組み付けるという簡易な操作によりバスバーを保持できる。
(6)前記電線保持部は、前記電線を挿通させる孔状に形成されていることが好ましい。
【0019】
孔状をなす電線保持部に電線が挿通されることにより、電線を延び方向に沿って確実に保持することができる。また、電線のうち、少なくとも電線保持部内に配された部分を外力から保護することができる。
【0020】
(7)前記電線接続部は、前記延び方向に沿って延びるとともに前記複数の電線の1本を挟持する挟持部と、前記挟持部の外側に配されるとともに前記延び方向に沿って移動可能なスライド部と、を有し、前記スライド部は、前記挟持部に前記複数の電線の1本が挟まれた状態で、前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有することが好ましい。
【0021】
挟持部が加圧部に押圧されることによって電線と端子とが接続されているので、電線の外周にバレルを圧着する際に必要とされる金型が不要となり、ジョイントコネクタの製造コストを低減できる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<実施形態1>
本開示の実施形態1が
図1から
図9を参照しつつ説明される。本実施形態にかかるジョイントコネクタ10は、複数の電線11を電気的に接続する。以下の説明では、矢線Zの示す向きを上とし、矢線Yの示す向きを前とし、矢線Xの示す向きを左として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態にかかるジョイントコネクタ10は、前後方向(延び方向の一例)に延びる複数の電線11と、複数の電線11の前方端部にそれぞれ接続される複数の端子12と、複数の端子12に接続されるバスバー50と、複数の端子12およびバスバー50が内部に収容されるロアハウジング30と、ロアハウジング30の上部に後部に取り付けられるアッパーカバー60と、を備える。
【0025】
[電線11]
図1に示されるように、複数の電線11は、前後方向(延び方向の一例)に延びて配されている。電線11は、芯線13の外周を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14で包囲されている。本実施形態にかかる芯線13は、1本の金属線からなる。なお、芯線13は複数の金属細線が撚り合わされてなる撚線であってもよい。芯線13を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる芯線13は銅、または銅合金からなる。
【0026】
[ロアハウジング30]
図2に示すように、ロアハウジング30は、上下に扁平な直方体形状をなしている。絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型されて形成される。ロアハウジング30には、前後に延びる複数(本実施形態では4つ)のキャビティ29が、左右方向に並んで形成されている。キャビティ29は上方に開口されており、端子12がキャビティ29内に上方から配置されるようになっている。左右方向に隣り合うキャビティ29は前後方向に延びる隔壁31によって隔てられている。この隔壁31により、各キャビティ29内に配置された端子12が電気的に絶縁されている。
【0027】
図2に示されるように、キャビティ29はロアハウジング30の前端部分において前方に開口している。ロアハウジング30の前端部には、キャビティ29の底壁と面一であると共に左右方向に延びて形成されたバスバー載置部32が形成されている。バスバー載置部32に、上方からバスバー50が載置されるようになっている。
【0028】
[アッパーカバー60]
図1に示されるように、ロアハウジング30は、上方から組み付けられたアッパーカバー60によって、上部が覆われるようになっている。アッパーカバー60は絶縁性の合成樹脂を射出成型することによって形成される。
図2に示されるように、アッパーカバー60の側縁には上下方向に延びるロック爪66が形成されている。このロック爪66が、ロアハウジング30の側壁に設けられたロック受け部33と弾性的に係わり合うことにより、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが一体に組み付けられるようになっている。
【0029】
図2に示されるように、ロアハウジング30の後端部と、アッパーカバー60の前端部とは、可撓性を有するヒンジ34によって連結されている。ヒンジ34は薄い板状をなしており、屈曲可能に形成されている。
【0030】
図3に示されるように、アッパーカバー60は上壁61を有する。
図3に示すように、アッパーカバー60の上壁61には、電線11が保持される複数(本実施形態では4つ)の電線保持部37が、左右方向に並んで設けられている。電線保持部37は、アッパーカバー60の上壁を前後方向に貫通する孔状に形成されている。電線保持部37の内径寸法は、電線11の絶縁被覆14の外径寸法と同じか、または大きく設定されている。これにより電線11が電線保持部37内に挿通されるようになっている。
【0031】
図1に示されるように、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが組み付けられた状態で、アッパーカバー60の上壁61の前端部には、ロアハウジング30のキャビティ29に対応する位置に、下方に突出するバスバー保持部64が形成されている。バスバー保持部64は、ロアハウジング30のバスバー載置部32との間でバスバー50を挟むようになっている。
詳細には、バスバー保持部64と、バスバー載置部32との間には、後述する連結部54が挟持されている。これにより、バスバー50が、ロアハウジング30およびアッパーカバー60に保持されるようになっている。
【0032】
図1に示されるように、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが組み付けられた状態で、上壁61には、バスバー保持部64の後方の位置に、下方に突出する複数(本実施形態では4つ)の端子係合部63が前後方向に延びている。端子係合部63は、前側に位置する前端子係合部63Fと、前端子係合部63Fの後部に位置する後端子係合部63Rとを備える。後端子係合部63Rは前端子係合部63Fよりも下方に突出している。
【0033】
図1に示されるように、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが組み付けられた状態で、上壁61には、端子係合部63の後方に、下方に突出する電線押え部65が設けられている。電線押え部65は、端子12の後端部から後方に導出された電線11に上方から接触し、電線11を上方からロアハウジング30に向かって押し付けるようになっている。
図2に示されるように、電線押え部65は左右方向に延びて形成されており、端子12から後方に導出された電線11が、キャビティ29とずれた位置に配された場合でも確実に電線11を押さえるようになっている。
【0034】
[バスバー50]
図4に示されるように、バスバー50は金属板材を所定の形状にプレス加工することにより形成される。金属板材としては、銅、銅合金等、任意の金属を適宜に選択できる。バスバー50は、後方に延びる複数(本実施形態では4個)のタブ52と、タブ52の前端部を、中継部53を介して連結部する連結部54と、を有する。タブ52は、左右方向に扁平な板状をなしている。連結部54は、上下方向に扁平な板状をなしている。中継部53は、連結部54から後方に延びて形成されている。
中継部53の右側縁は下方に折れ曲がって、タブ52に連なっている。
【0035】
[端子12]
図1に示されるように、端子12は、金属製の端子本体15と、端子本体15に対して相対的にスライド移動可能なスライド部16と、を備える。
【0036】
[端子本体15]
端子本体15はプレス加工、切削加工、鋳造等、公知の手法により所定の形状に形成される。端子本体15を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体15は、銅、又は銅合金からなる。端子本体15の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体15にはスズめっきが施されている。
【0037】
図1に示されるように、端子本体15は、タブ52が挿入可能な筒部17(バスバー接続部の一例)と、筒部17の後方に位置して電線11と接続される電線接続部20を有する。電線接続部20は後方に延出された上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bと、を備える。
【0038】
図1に示されるように、筒部17は前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部17の前端はタブ52が挿入可能に開口されている。
【0039】
図1には、筒部17に設けられた弾性接触片19の一部が示される。詳細には図示されないが、筒部17の内部には、弾性変形可能な弾性接触片19が配されている。弾性接触片19は、筒部17の内壁から内方に延びている。筒部17内に挿入されたタブ52は、弾性接触片19を押圧して弾性変形させる。弾性変形した弾性接触片19の弾発力によって、タブ52は、筒部17の内壁と弾性接触片19との間に挟まれる。これによりタブ52と端子12とが電気的に接続される。
【0040】
図1に示されるように、筒部17の後方には角筒状をなす電線接続部20が設けられている。電線接続部20の上壁の後端部には上側挟持部18A(挟持部の一例)が後方に延びて設けられており、電線接続部20の下壁の後端部には下側挟持部18B(挟持部の一例)が後方に延びて設けられている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bは前後に延びた細長い形状をなしている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bの前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。
【0041】
上側挟持部18Aの下面には、後端部よりも前方の位置に、下方に突出する上側保持突部23Aが設けられている。下側挟持部18Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部23Bが設けられている。下側保持突部23Bと、上側保持突部23Aとは、前後方向についてずれた位置に設けられている。
【0042】
上側挟持部18Aの下面、および下側挟持部18Bの上面が、芯線13の表面に形成された酸化被膜に食い込んで酸化被膜を剥がすことにより、芯線13の金属表面を露出させるようになっている。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bとが接触することにより、芯線13と端子本体15とが電気的に接続される。
【0043】
[スライド部16]
図1および
図5に示されるように、スライド部16は、前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部16は、切削加工、鋳造、プレス加工等、必要に応じて公知の手法により形成される。スライド部16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかるスライド部16は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部16の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0044】
スライド部16の内形状の断面は、端子本体15のうち、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bが設けられた領域の外形状の断面と同じか、やや大きく形成されている。これにより、スライド部16は、端子本体15のうち、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域の外方に配されるようになっている。
【0045】
図1に示されるように、スライド部16の上壁の下面には、下方に突出する上側加圧部25A(加圧部の一例)が設けられている。スライド部16の下壁の上面には、上方に突出する下側加圧部25B(加圧部の一例)が設けられている。
【0046】
図5に示されるように、スライド部16の側壁には、前後方向の前端部寄りの位置に、仮係止受け部26が開口されている。また、スライド部16の側壁には、仮係止受け部26よりも後方の位置に、本係止受け部27が開口されている。仮係止受け部26と、本係止受け部27は、端子本体15の側壁に設けられた係止突起28と弾性的に係止可能になっている。
【0047】
端子本体15の係止突起28とスライド部16の仮係止受け部26とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持された状態となっている。この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bは、端子本体15の上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bの後端縁から後方に離間している。また、この状態においては、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の間隔は、芯線13の直径よりも大きく設定されている。
【0048】
端子本体15の係止突起28とスライド部16の本係止受け部27とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が本係止位置に係止された状態となっている。
図1に示されるように、この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aは、上側挟持部18Aの上方から上側挟持部18Aに接触している。また、スライド部16の下側加圧部25Bは、下側挟持部18Bの下方から下側挟持部18Bに接触している。
【0049】
上記のように、スライド部16は、端子本体15のうち上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域に外嵌された状態で、上記した仮係止位置と、本係止位置との間をスライド移動可能になっている。
【0050】
図1に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側加圧部25Aが上方から上側挟持部18Aを押圧することによって上側挟持部18Aが下方に変形するようになっている。また、下側加圧部25Bが下方から下側挟持部18Bを押圧することによって下側挟持部18Bが上方に変形するようになっている。これにより、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間に、芯線13を前後方向(延び方向)に延びた状態で配し、且つ、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持した状態では、芯線13は、弾性変形した上側挟持部18Aと下側挟持部18Bによって上下方向から挟持されるようになっている。すなわち、上側挟持部18Aは上側加圧部25Aに下方に押圧されることにより芯線13に上方から接触し、下側挟持部18Bは下側加圧部25Bに上方に押圧されることにより芯線13に下方から接触するようになっている。
【0051】
図1に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aが芯線13を上方から押圧し、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bが芯線13を下方から押圧する。このように、芯線13は、上側保持突部23Aによって上方から押圧されるとともに、上側保持突部23Aと前後方向にずれた位置に配された下側保持突部23Bによって下方から押圧されることにより、上下方向(延び方向と交差する方向の一例)について屈曲した状態に保持される。また、上側保持突部23Aと、下側保持突部23Bとによっても、芯線13と端子12とが電気的に接続されるようになっている。
【0052】
図1に示すように、スライド部16の前端部には、上壁から上方に突出する治具接触部46が設けられている。治具接触部46に後方から治具(図示せず)が接触して、この治具によってスライド部16が前方に押されることにより、スライド部16が前方に移動可能になっている。
【0053】
図1および
図5に示されるように、スライド部16の後端部寄りの位置には、左右両側壁に、スライド部16の内方に突出する一対の誘い込み部47が設けられている。誘い込み部47は、後方から前方に向かうに従って幅狭に形成されている。誘い込み部47の内面に芯線13が摺接することにより、芯線13はスライド部16の内部へと案内される。
【0054】
図1および
図5に示されるように、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが組み付けられた状態で、前端子係合部63Fは筒部17に上方から係合して、筒部17が上方に移動することを抑制している。後端子係合部63Rはスライド部16に上方から係合して、スライド部16が上方に移動することを抑制している。後端子係合部63Rの前端部は、スライド部16の治具接触部に後方から係合することにより、スライド部16および端子本体15が後方に移動することを抑制している。電線押え部65の前端部は、スライド部16の後端部に後方から係合することにより、スライド部16および端子本体15が後方に移動することを抑制している。
【0055】
[ジョイントコネクタ10の組み立て工程]
続いて、本実施形態にかかるジョイントコネクタ10の組み立て工程の例について説明する。ジョイントコネクタ10の組み立て工程は以下の記述に限定されない。
【0056】
公知の手法により、端子本体15と、スライド部16とが形成される。端子本体15に対して、後方からスライド部16が組み付けられる。端子本体15の係止突起28に後方からスライド部16の前端縁が当接し、スライド部16の側壁が拡開変形する。更にスライド部16が前方に押し込まれると、スライド部16の側壁が復帰変形し、端子本体15の係止突起28に、スライド部16の仮係止受け部26が係止する。これにより、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持される。これにより端子12が得られる。
【0057】
合成樹脂を射出成型することにより、ロアハウジング30とアッパーカバー60とがヒンジ34を介して一体に形成される。
図2に示されるように、ロアハウジング30と、アッパーカバー60とが、ヒンジ34を介して前後に並ぶように配される。
【0058】
筒部17内に前方からバスバー50のタブ52が挿入される。タブ52と、弾性接触片19とが接触することにより、タブ52と端子12とが電気的に接続される。これにより、複数の端子12がバスバー50を介して電気的に接続される。
【0059】
図2に示されるように、ロアハウジング30のキャビティ29内に、上方から、バスバー50と接続された状態の端子12が挿入される。
【0060】
公知の手法で絶縁被覆14が皮剥ぎ加工されることにより電線11の芯線13が露出される。
図6に示されるように、芯線13を前側にして、電線11がアッパーカバー60の電線保持部37に、後方から挿入される。ロアハウジング30と、アッパーカバー60とが、ヒンジ34を介して前後に並ぶ配置では、各電線保持部37の前方に、キャビティ29が位置するようになっている。これにより、電線保持部37に挿通された電線11は、各キャビティ29へと進入する。
【0061】
図7に示されるように、電線11が更に前方に押し込まれると、芯線13の前端部は、スライド部16の後端部からスライド部16の内部へと導入される。芯線13はスライド部16の誘い込み部47と当接することにより、スライド部16へと案内される。更に電線11が前方に押し込まれると、芯線13の前端部は端子本体15の内部へと進入して上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間内に至る。
【0062】
次に、
図8に示されるように、治具(図示せず)を後方から治具接触部46に当接させて、スライド部16を前方にスライド移動させる。スライド部16は端子本体15に対して相対的に前方に移動させられる。このとき、端子本体15の係止突起28と、スライド部16の仮係止受け部26との係止が外れ、スライド部16の側壁が係止突起28に乗り上げて拡開変形する。
【0063】
スライド部16が前方に移動させられると、スライド部16の側壁が復帰変形して端子本体15の係止突起28と、スライド部16の本係止受け部27とが弾性的に係止する。これによりスライド部16が端子本体15に対して本係止位置に保持される。
【0064】
スライド部16が端子本体15に対して本係止位置に保持された状態で、スライド部16の上側加圧部25Aが、端子本体15の上側挟持部18Aに上方から当接して下方へと押圧する。また、スライド部16の下側加圧部25Bが、端子本体15の下側挟持部18Bに下方から当接して上方へと押圧する。これにより、芯線13が、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bに上下から挟持される(
図1参照)。
【0065】
図1に示されるように、上側挟持部18Aの下面と、下側挟持部18Bの上面とに芯線13が挟まれることにより、芯線13の表面に形成された酸化被膜が剥がされ、芯線13を構成する金属表面が露出する。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bが接触することにより、電線11と端子12とが電気的に接続される。これにより、複数の電線11が、端子12、およびバスバー50を介して電気的に接続される(
図9参照)。
【0066】
芯線13が上側挟持部18Aと下側挟持部18Bに上下から挟持された状態においては、芯線13は、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aと、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bとに挟まれることにより、前後方向に延びた状態で、且つ、上下方向に屈曲した状態で保持される。これにより、芯線13を強固に保持することができるので、電線11に引っ張り力が作用した場合に、電線11と端子12との保持力を高めることができる。
【0067】
図1に示すように、側方から見てヒンジ34をC字形状に屈曲させながら、ロアハウジング30の上方からアッパーカバー60がロアハウジング30に組み付けられる。アッパーカバー60のロック爪66と、ロアハウジング30のロック受け部33とが弾性的に係わり合うことにより、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが一体に組み付けられる。ロアハウジング30とアッパーカバー60とが組み付けられた状態で、ロアハウジング30の後方に導出された電線11は、上方から前方へと屈曲し、前方に延びるようになっている。電線11のうち、ロアハウジング30およびアッパーカバー60の後方においてC字形状に屈曲した部分は曲がり部35とされる。電線11は、アッパーカバー60の電線保持部37内で、前方に延びた状態で保持される。これによりジョイントコネクタ10が完成する。
【0068】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、複数の電線11を接続するジョイントコネクタで10あって、前後方向に沿って延びる複数の電線11と、複数の電線11の前方端部にそれぞれ接続される複数の端子12と、複数の端子12を収容するロアハウジング30と、ロアハウジング30に配設されるバスバー50と、ロアハウジング30に組み付けられるアッパーカバー60と、を備え、バスバー50は複数のタブ52を有し、複数の端子12のそれぞれは、複数のタブ52がそれぞれ挿入される筒部17と、複数の電線11がそれぞれ接続される電線接続部20と、を有し、ロアハウジング30から後方に導出された複数の電線11は、前方へ折り返されており、アッパーカバー60は、複数の電線11が前方に折り返された状態で保持される電線保持部37を有する。
【0069】
アッパーカバー60から前方へ延びる複数の電線11に外力が加えられると、この外力は後方へと各電線11に伝達される。各電線11の延びる方向は、曲がり部35において、前後方向について反転されている。これにより、各電線11に伝達された力は、曲がり部35において吸収されるので、電線11に加えられた力が端子12にまで伝えられることが抑制される。
【0070】
本実施形態によれば、アッパーカバー60は、ロアハウジング30から後方に導出された複数の電線11を、ロアハウジング30に向かって押さえる電線押え部65を有する。
【0071】
複数の電線11は、アッパーカバー60の電線押え部65によって、ロアハウジング30に向かって押さえられているので、電線11に加えられた力は、電線押え部65よりも先に伝達されることが抑制される。これにより、電線11に加えられた外力が端子12にまで伝達されることが抑制される。
【0072】
本実施形態によれば、ロアハウジング30の後方から延びたヒンジ34を介して、アッパーカバー60がロアハウジング30と連結されている。
【0073】
ロアハウジング30とアッパーカバー60とがヒンジ34を介して連結されているので、部品点数を削減することができる。また、ヒンジ34が複数の電線11の外方に位置することにより複数の電線11が保護されるので、電線11自体に外力が加えられることが抑制される。
【0074】
本実施形態によれば、アッパーカバー60は、ロアハウジング30に組み付けられた状態で、後方から端子12と係合する端子係合部63を有する。
【0075】
端子係合部63が、延び方向の後方から端子12に係合しているので、電線11に加えられた外力が曲がり部35を越えて、電線接続部20まで到達したとしても、端子12が後方に移動することが抑制されるようになっている。これにより、端子12が、ロアハウジング30およびアッパーカバー60に強固に保持されるようになっている。
本実施形態によれば、アッパーカバー60の下面には、ロアハウジング39とアッパーカバー60とが組み付けられた状態で、ロアハウジング39との間でバスバー50を挟むバスバー保持部64が設けられている。これにより、ロアハウジング39とアッパーカバー60とを組み付けるという簡易な操作によりバスバー50を保持できる。
【0076】
本実施形態によれば、電線保持部37は、電線11を挿通させる孔状に形成されている。
【0077】
孔状をなす電線保持部37に電線11が挿通されることにより、電線11を前後方向に沿って確実に保持することができる。また、電線11のうち、少なくとも電線保持部37内に配された部分を外力から保護することができる。
【0078】
本実施形態によれば、電線接続部20は、前後方向に沿って延びるとともに複数の電線11の1本を挟持する上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bと、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bの外側に配されるとともに前後方向に沿って移動可能なスライド部16と、を有し、スライド部16は、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bに複数の電線11の1本が挟まれた状態で、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを電線11に向けて加圧する上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bを有する。
【0079】
上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bが上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bに押圧されることによって電線11と端子12とが接続されているので、電線11の外周にバレルを圧着する際に必要とされる金型が不要となり、ジョイントコネクタ10の製造コストを低減できる。
【0080】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2が
図10から
図11を参照しつつ説明される。本実施形態にかかるジョイントコネクタ70には、ロアハウジング30と、アッパーカバー60とを連結するヒンジが設けられておらず、ロアハウジング30とアッパーカバー60とは、別部品として構成される。
【0081】
本実施形態においては、
図11に示されるように、ロアハウジング30とアッパーカバー60とが、図示しない治具によって前後方向に並べられた状態で、電線11がアッパーカバー60の電線保持部37内に挿通されると共に、ロアハウジング30のキャビティ29に収容された端子12の内部に挿入される。
【0082】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3が
図12から
図15を参照しつつ説明される。本実施形態にかかるジョイントコネクタ80は、ロアハウジング81と、ロアハウジング81に上方から組み付けられるアッパーカバー82と、ロアハウジング81に配されるバスバー83と、ロアハウジング81に配される端子84と、を備える。
【0084】
[ロアハウジング81]
図12に示されるように、ロアハウジング81は、上下方向に扁平な直方体形状をなしている。ロアハウジング81には、前後方向に貫通する複数(本実施形態では4つ)のキャビティ85が左右方向に並んで形成されている。ロアハウジング81の前後方向の中央位置付近には、上方に切り欠かれた切り欠き部86が設けられている。切り欠き部86から、キャビティ85が上方に露出している。
【0085】
図13に示されるように、ロアハウジング81の前端部にはバスバー83が前方から挿入されるバスバー挿入孔87が、左右方向に細長く延びて形成されている。バスバー挿入孔87上下方向の高さ寸法は、バスバー83の厚さ寸法と同じか、またはわずかに大きく形成されている。
【0086】
ロアハウジング81の前端部には、バスバー挿入孔87の上方に、複数(本実施形態では4つ)の型抜き孔88が前後方向に延びて形成されている。各型抜き孔88の内部には、端子84と弾性的に係わり合って端子84をキャビティ85内に抜け止め保持するランス89が形成されている。ランス89は、キャビティ85の上壁から前方に延びた形状をなしている。ランス89の前端部と、端子84の筒部90の上壁とが係わり合うようになっている。
【0087】
[端子84]
端子84は、バスバー83に設けられた複数のタブ91が、それぞれ挿入される筒部90と、筒部90の後方に設けられた電線接続部92と、を有する。電線接続部92は、いわゆるバレル形状をなしており、電線11の外周に圧着することにより電線11と端子84とを電気的に接続する。
【0088】
[アッパーカバー82]
アッパーカバー82には、複数(本実施形態では4つ)の電線保持部93が前後方向に延びて形成されている。電線保持部93は、アッパーカバー82を前後方向に貫通する孔状に形成されている。
【0089】
アッパーカバー82には、前後方向の中央位置付近に、ロアハウジング81の切り欠き部86に対応して、弾性変形可能なロック爪94が上下方向に突出して形成されている。ロック爪94が、ロアハウジング81の切り欠き部86の左右両側方に配されると共に、キャビティ85の下端縁に弾性的に係わり合うことにより、ロアハウジング81とアッパーカバー82とが一体に組み付けられるようになっている。
【0090】
図14および
図15に示されるように、ロアハウジング81とアッパーカバー82とが組み付けられた状態において、アッパーカバー82のうちロアハウジング81の切り欠き部86に対応する位置には、下方に突出する端子係合部95が形成されている。端子係合部95は、ロアハウジング81の切り欠き部86からキャビティ85の内部に進入し、端子84の筒部90の後端部に後方から係合するようになっている。これにより、端子84がキャビティ85内において後方に抜け止め保持されるようになっている。
【0091】
図15に示されるように、ロアハウジング81とアッパーカバー82とが組み付けられた状態において、ロアハウジング81の後方から導出された電線11は、上方から前方へと屈曲して、アッパーカバー82の電線保持部93内に挿入されている。これにより、電線11は前後方向に延びた状態でアッパーカバー82内に保持されている。
【0092】
図15に示されるように、ロアハウジング81とアッパーカバー82とが組み付けられた状態で、アッパーカバー82の後端部には、下方に突出する電線押え部96が設けられている。電線押え部96の下端部には曲面97が形成されている。これにより、ロアハウジング81の後端部から後方に導出された電線11が上方に屈曲する際に、曲面97に沿って緩やかに曲がるようになっている。
【0093】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0094】
本実施形態によれば、ロアハウジング81にアッパーカバー82を組み付けることにより、端子84をキャビティ85内に抜け止め状態に保持できるので、端子84をキャビティ85内に強固に保持することができる。
【0095】
<他の実施形態>
(1)電線保持部は溝状であってもよい。
【0096】
(2)電線押え部は省略してもよい。
【0097】
(3)ジョイントコネクタは、2本、3本、または5本以上の電線を接続する構成としてもよい。
【0098】
(4)端子は、1つ、または3つ以上の挟持部を有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10,70,80: ジョイントコネクタ
11: 電線
12,84: 端子
13: 芯線
14: 絶縁被覆
15: 端子本体
16: スライド部
17,90: 筒部(バスバー接続部の一例)
18A: 上側挟持部
18B: 下側挟持部
19: 弾性接触片
20,92: 電線接続部
23A: 上側保持突部
23B: 下側保持突部
25A: 上側加圧部
25B: 下側加圧部
26: 仮係止受け部
27: 本係止受け部
28: 係止突起
29,85: キャビティ
30,81: ロアハウジング
31: 隔壁
32: バスバー載置部
33: ロック受け部
34: ヒンジ
35: 曲がり部
37,93: 電線保持部
46: 治具接触部
47: 誘い込み部
50,83: バスバー
52,91: タブ
53: 中継部
54: 連結部
60,82: アッパーカバー
61: 上壁
63,95: 端子係合部
63F: 前端子係合部
63R: 後端子係合部
64: バスバー保持部
65,96: 電線押え部
66,94: ロック爪
86: 切り欠き部
87: バスバー挿入孔
88: 型抜き孔
89: ランス
97: 曲面