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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/122 20190101AFI20220913BHJP
   B60L 53/38 20190101ALI20220913BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20220913BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220913BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220913BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220913BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B60L53/122
B60L53/38
H02J50/90
H02J50/10
B60M7/00 X
B60L5/00 B
H02J7/00 301D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019078981
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020178437
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布谷 誠
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070463(JP,A)
【文献】特開2015-136281(JP,A)
【文献】特開2016-146689(JP,A)
【文献】特開2013-110822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0139358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 5/00
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60M 7/00
H02J 7/00
H02J 50/10
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続される1次側コイルを有する送電パッドと、2次側コイルを含む共振回路を有し前記送電パッドから非接触で電力が供給される受電パッドと、を備えた非接触給電システムであって、
前記送電パッドから前記受電パッドへと供給されている電力である送電力を測定する送電力測定器が設けられており、
前記交流電源の周波数は、基準周波数と、前記基準周波数よりも高い待機周波数と、の間で切り替え可能であり、
前記受電パッドは前記送電パッドに対して移動可能であり、
前記受電パッドの移動範囲のうち、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの間の相互インダクタンスが最も高くなる基準位置からズレた位置に受電パッドが存在する場合に、前記交流電源の周波数は前記待機周波数に設定され、
前記交流電源の周波数が前記待機周波数に設定されている状態で、前記受電パッドが前記基準位置へ向かって移動して、前記送電力測定器によって測定されている前記送電力が予め定められた基準送電力を下回った場合に、前記交流電源の周波数が前記基準周波数に向けて変更されること
を特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記受電パッドは前記送電パッドから供給される電力によって充電される蓄電池に接続されており、
前記蓄電池へと充電される電力である充電力を測定する充電力測定器が設けられており、
前記交流電源の周波数が前記待機周波数に設定されている状態で、前記充電力測定器によって測定されている前記充電力が予め定められた基準充電力を下回った場合に、前記交流電源の周波数が前記基準周波数に向けて変更されること
を特徴とする請求項1に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムに関するものであり、特に送電パッドから受電パッドへ非接触で電力が供給される非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車などの、電源を備えた車両は、電力を動力源として走行することができる。また、荷役運搬作業用のフォークリフトにも、電力を動力源とするものがある。こうした電力を動力源とする車両の電源として、外部から与えられた電気エネルギーを蓄積可能な蓄電池が用いられることがある。そして、この蓄電池への充電(電気エネルギーの蓄積)を行うために非接触方式による電力の伝送システム(非接触給電システム)が用いられることがある。特許文献1には非接触給電システムの一例(非接触給電装置)が記載されており、この非接触給電装置では、地表に固定された送電パッド内に送電コイルが設けられ、車両の底部に取り付けられた受電パッド内に受電コイルが設けられる。
【0003】
例えば送電パッドが車両の駐車スペースの地表に設けられていれば、車両が駐車スペースにて駐車された際に、送電パッドの送電コイルと受電パッドの受電コイルとが向かい合うことになる。すると、外部電源に接続されている送電コイルから受電コイルへと電磁誘導により電力が伝送されて、受電コイルに接続されている車両の蓄電池に電気エネルギーが蓄積される。このようにして車両の蓄電池へと非接触方式による充電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5839232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の非接触給電システムにおいては、送電パッドと受電パッドとが互いに正確に位置合わせされなければ効率的な給電が行われないという問題があった。非接触給電システムにおいては基本的に、送電コイルに流れる交流電流の周波数が、受電コイルを含む共振回路の共振周波数と一致することで、受電側にて発生する電力損失が最小限になるよう設計される。ここで、共振周波数の値は共振回路に含まれる受電コイルの相互インダクタンスに依存するため、共振周波数は送電コイルと受電コイルとの相互関係によって変動する可能性がある。特に受電コイルを含む受電パッドの位置や大きさ等が設計上想定されているものと異なっていると、共振周波数は設計上想定されている値からズレてしまい、効率的な給電が行われなくなってしまう。
【0006】
特許文献1においては送電パッドと受電パッドとの間に補助パッドが設けられることで、両パッドで形状または大きさが異なっていても送電効率の低下が抑えられるようになっている。しかし、特許文献1においても、両パッドの位置関係については、受電パッドが送電パッドに対して真正面かつ正規距離(設計上想定されている距離)に位置する状態で給電が行われることが想定されている。
【0007】
実際の非接触給電システムにおいては、受電パッドが最終的には送電パッドの真正面かつ正規距離に位置するとしても、受電パッドがその位置に至るまでの間、受電パッドが送電パッドへと接近する過程においては、給電の効率が十分でない期間がある。
【0008】
例えば、図5左側に示すように、送電パッド80が地表に固定されており、受電パッド90がその送電パッド80に向けて水平方向に移動して接近していく場合について考える。図5右側に示すような、受電パッド90が送電パッド80の鉛直上方に正規距離(設計上想定されている距離)を空けて位置して、送電パッド80に対し真正面に向かい合う状態(以下、この状態の受電パッド90の位置を基準位置と呼ぶ)において最も効率よく給電が行われるように非接触給電システムが設計されているとすると、送電パッド80には、基準位置での受電パッド90の共振周波数と一致する周波数の交流電流が流される。しかし、受電パッド90が基準位置に到達していない図5左側の状態においては、送電パッド80と受電パッド90との間の磁束結合が弱くなり、受電パッド90に含まれる受電コイルのインダクタンスが、基準位置よりも小さくなる。すると、受電パッド90の共振周波数は送電パッド80に流されている交流電流の周波数と異なる値になってしまう。そのため、受電パッド90が基準位置からズレた状態にある図5左側の状態においては、図5右側の基準位置に比べ、送電パッド80から受電パッド90への給電の効率が低下してしまう。
【0009】
図5では受電パッド90が水平方向に移動する場合について考えたが、図6に示すように、受電パッド90が鉛直方向に移動する場合にも同様の問題点がある。すなわち、図6左側に示すように、受電パッド90が基準位置よりも上方に位置する状態から、下降して図6右側の基準位置へと至る場合、図6左側に示す送電パッド80と受電パッド90との間が大きく離れている状態においては、送電パッド80と受電パッド90との間の磁束結合が弱くなり、送電パッド80から受電パッド90への給電の効率が低下してしまう。
【0010】
以上のように、従来の非接触給電システムにおいては、送電パッド80と受電パッド90とが互いに真正面に向かい合い、かつ正規距離になるよう正確に位置合わせされなければ、効率的な給電が行われないという問題があった。また受電パッド90が移動して最終的には最も効率よく給電の行われる基準位置へ至るとしても、その移動の過程の間は効率的な給電が行われない。
【0011】
上記の問題に鑑み、本発明は、受電パッドが基準位置からズレた位置にあっても効率的な給電を行うことが可能な非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る実施形態の一例における非接触給電システムは、交流電源に接続される1次側コイルを有する送電パッドと、2次側コイルを含む共振回路を有し前記送電パッドから非接触で電力が供給される受電パッドと、を備えた非接触給電システムであって、前記交流電源の周波数は、基準周波数と、前記基準周波数よりも高い待機周波数と、の間で切り替え可能であり、前記受電パッドは前記送電パッドに対して移動可能であり、前記受電パッドの移動範囲のうち、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの間の磁束結合が最も大きくなる基準位置からズレた位置に受電パッドが存在する場合に、前記交流電源の周波数は前記待機周波数に設定され、前記受電パッドが前記基準位置へ向かって移動すると前記交流電源の周波数が前記基準周波数に向けて変更されることを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、前記送電パッドから前記受電パッドへと供給されている電力である送電力を測定する送電力測定器が設けられており、前記交流電源の周波数が前記待機周波数に設定されている状態で、前記送電力測定器によって測定されている前記送電力が予め定められた基準送電力を下回った場合に、前記交流電源の周波数が前記基準周波数に向けて変更されるようになっているとよい。
【0014】
あるいは、前記受電パッドは前記送電パッドから供給される電力によって充電される蓄電池に接続されており、前記蓄電池へと充電される電力である充電力を測定する充電力測定器が設けられており、前記交流電源の周波数が前記待機周波数に設定されている状態で、前記充電力測定器によって測定されている前記充電力が予め定められた基準充電力を下回った場合に、前記交流電源の周波数が前記基準周波数に向けて変更されるようになっているとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る実施形態の一例における非接触給電システムによれば、受電パッドが基準位置からズレた位置に存在する場合は、送電側の交流電源の周波数が、基準周波数よりも高い、基準位置からズレた位置での給電に適した待機周波数に向けて変更されるので、基準位置からズレた位置においても効率的な給電が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の一例に係る非接触給電システムとして、地面に設置された送電パッドから車両に設けられた受電パッドへと送電が行われる形態を示す図。
図2図1の非接触給電システムにおける送電パッドおよび受電パッドの回路図。
図3図1の非接触給電システムにおいて受電パッドが基準位置からズレた位置に存在する場合を模式的に示す図。
図4図1の非接触給電システムにおいて受電パッドが基準位置に存在する場合を模式的に示す図。
図5】従来の非接触給電システムにおいて、受電パッドが送電パッドに対して水平方向に移動する様子を示す図。
図6】従来の非接触給電システムにおいて、受電パッドが送電パッドに対して鉛直方向に移動する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明の実施形態の一例を示す。この非接触給電システム10では送電パッド20が地面に設置されており、車両50の下面に設けられた受電パッド30へ、この送電パッド20から非接触で送電(電力の供給)が行われる。そして、受電パッド30へ供給された電力は、受電パッド30に接続されている車両50の車載バッテリ52(蓄電池)へと充電される。図1において車両50は矢印で示す図中右方向へと移動しており、図中に示す時点では受電パッド30は送電パッド20に対してズレた(正確に位置合わせされていない)位置にあるが、車両50の移動につれて受電パッド30は送電パッド20へと水平方向に接近してゆき、やがて受電パッド30は送電パッド20に対して対向した位置へと至る。
【0018】
図2に送電パッド20および受電パッド30の回路図を示す。送電パッド20には交流電源22が接続されており、送電パッド20に含まれる1次側コイル24は交流電源22から交流電流を供給されて、周囲に交番磁界を形成する。
【0019】
受電パッド30は2次側コイル34および共振コンデンサ36を含む共振回路32(ここではLC直列共振回路)を有しており、2次側コイル34が1次側コイル24により形成される交番磁界と相互作用することで、共振回路32に2次電流が発生する。受電パッド30には整流回路37および定電圧回路38が含まれており、共振回路32で発生する2次電流(交流)が整流回路37によって直流に変換され、定電圧回路38によって所定の電圧に調節されて車載バッテリ52へ流れ込むことにより、充電が行われる。ここで、整流回路37としてはダイオードや平滑コンデンサを含む回路(例えばダイオードブリッジ回路)を用いることができる。また定電圧回路38としては例えばコイル、ダイオード、そして間欠的に開閉される半導体スイッチング素子(トランジスタ等)を含むスイッチング回路を用いることができる。
【0020】
図2に示す送電パッド20から受電パッド30への非接触での電力供給においては、送電側における交流電源22の交流周波数が、受電側における共振回路32の共振周波数と一致するときに、最も効率的に給電が行われる。その共振周波数fは、共振回路32の共振コンデンサ36の容量をC、2次側コイル34のインダクタンスをLとするとき、f=ω/2π=1/(2π√(LC))(ωは角周波数)で表される。
【0021】
ここで、2次側コイル34のインダクタンスLは送電パッド20と受電パッド30との位置関係によって変化するため、共振周波数fもそれに伴い変化する。図3に、送電パッド20が受電パッド30へと接近する過程における様子を示す。ここでは送電パッド20と受電パッド30との位置関係を説明し易くするため、図1に表れている車両50や図2に示す回路図などの詳細を省略して模式的な図としている。
【0022】
図3においては、受電パッド30は送電パッド20の真正面には向かい合っておらず、1次側コイル24と2次側コイル34との間での磁束の結合が十分でなく、インダクタンスLは小さい。以下、本実施形態においては図3に示す受電パッド30の位置をズレ位置、ズレ位置におけるインダクタンスをズレ位置インダクタンスL1と表記する。
【0023】
図3に示す状態から受電パッド30が水平方向に移動していくと、受電パッド30はやがて送電パッド20の真正面かつ送電パッド20に対して所定の正規距離だけ離れた位置へと至る。その様子を図4に示す。図4に示す状態においては、1次側コイル24と2次側コイル34との間で磁束が十分に結合し、インダクタンスがズレ位置インダクタンスL1よりも大きくなる。後述するように、構造上の制約によって、この受電パッド30の位置が、受電パッド30の移動範囲のうち、1次側コイル24と2次側コイル34との間の磁束結合が最も大きくなる位置となる場合がある。以下、図4における受電パッド30の位置を基準位置、この基準位置におけるインダクタンスを基準位置インダクタンスL0(L0>L1)と表記する。
【0024】
基本的に受電パッド30と送電パッド20とが接近するほど磁束結合は大きくなるが、実際には構造上の制約により、受電パッド30と送電パッド20とはある程度以上には接近できない。例えば図1に示すように受電パッド30が車両50の下面に取り付けられて設けられている場合は、受電パッド30は鉛直方向の位置が固定されており、鉛直方向には送電パッド20に向けて移動することができない。そのため、図4に示す状態のような、2次側コイル34を含む受電パッド30が1次側コイル24を含む送電パッド20に対して鉛直方向にわずかに間隔(正規距離)を空けた位置が、受電パッド30の移動範囲のうち、1次側コイル24と2次側コイル34との間の磁束結合が最も大きくなる基準位置となる。
【0025】
このような、受電パッド30の移動範囲のうち、1次側コイル24と2次側コイル34との間の磁束結合が最も大きくなる基準位置においては、図2に示す共振回路32の共振周波数は基準位置インダクタンスL0を用いてf=1/(2π√(L0・C))と表すことができる。したがって、これに等しい基準周波数f0=1/(2π√(L0・C))=(2π)-1・(L0・C)-1/2の交流電流を1次側コイル24に流せば(交流電源22の周波数を基準周波数f0に設定すれば)、基準位置においては効率よく給電が行われる。
【0026】
しかし、図1に示すように車両50に取り付けられた受電パッド30が車両50の走行とともに基準位置へ向けて移動する過程においては、受電パッド30は図3に示すようなズレ位置を経由する。また、車両50は受電パッド30が正確に基準位置へ位置決めされるように停車するとは限らない。仮に送電パッド20の近くに、受電パッド30が基準位置に位置決めされるように車止めが設けられていたとしても、運転者の技量によっては基準位置からズレた位置で停車してしまう可能性がある。またそもそも車止めが設けられていない場合もあり、そのような場合には運転者が基準位置への位置決めを正確に行うことは困難である。
【0027】
上述のように、受電パッド30が基準位置へ向けて移動する過程や、基準位置への位置決めが正確に行われない場合においては、受電パッド30は図3に示すようなズレ位置にある。ズレ位置においては2次側コイル34のインダクタンスは基準位置インダクタンスL0よりも小さいズレ位置インダクタンスL1であるため、図2に示す共振回路32の共振周波数も、基準周波数f0とは異なる値となる。そのため、交流電源22の周波数が常に基準周波数f0であったとすると、ズレ位置においては送電側の交流周波数と受電側の共振周波数が一致せず、給電の効率が低下してしまう。
【0028】
そこで本実施形態においては、交流電源22を、出力する交流電流の周波数を切り替えることが可能なもの(例えば周波数切り替え機能付きの電源装置)としておく。そして、受電パッド30がズレ位置に存在する場合には、交流電源22の周波数を、基準周波数f0よりも高い待機周波数f1に設定する。この待機周波数f1は、ズレ位置において給電の効率が高くなるような値に設定される。具体的にはズレ位置における共振周波数を待機周波数f1とするのがよいが、前述のように、共振回路32の共振周波数はf=1/(2π√(LC))で表され、ズレ位置のインダクタンスL1は基準位置のインダクタンスL0よりも小さいため、ズレ位置における共振周波数を待機周波数f1とすると、f1=1/(2π√(L1・C))となり、基準周波数f0=1/(2π√(L0・C))=(2π)-1・(L1・C)-1/2よりも高い値となる(f1>f0)。
【0029】
例えば図2における共振コンデンサ36の容量Cが0.07μF、図3に示すズレ位置におけるズレ位置のインダクタンスL1が47.5μH、図4に示す基準位置における基準位置インダクタンスL0が50μHであるとする。その場合、基準周波数f0は約85kHz、待機周波数f1は87.28kHzとなる。
【0030】
受電パッド30が送電パッド20へと接近していく場合の周波数の変遷について説明する。まず送電パッド20は、それに接続されている交流電源22の周波数が待機周波数f1に設定された状態で受電パッド30の接近を待機する。受電パッド30が送電パッド20へと接近していく過程で、受電パッド30は図3に示すようなズレ位置に存在する期間があるが、交流電源22の周波数が待機周波数f1であることにより、このズレ位置においても効率的な給電が行われる。
【0031】
そして、受電パッド30がさらに送電パッド20へと接近して図4に示す基準位置へ近づいた際には、交流電源22の周波数が基準周波数f0に向けて変更される。これにより基準位置においても効率的な給電が行われる。このように、本実施形態によれば受電パッド30が送電パッド20の真正面に正確に位置合わせされた基準位置(図4)において効率的な給電が行われるだけでなく、受電パッド30が基準位置からズレた位置(図3)においても効率的な給電が行われる。
【0032】
そのため、例えば図1に示すような車両50に受電パッド30が取り付けられているような場合、運転者が車両50を送電パッド20に対してうまく位置決めできなかった場合でも効率的な給電を行うことができる。また、運転者が正しく位置決めを行える場合でも、受電パッド30が基準位置で停止しているときだけではなくその基準位置へと接近していく過程においても効率的な給電が行われるため、車載バッテリ52が満充電となるまでに基準位置で車両50を停止させなければならない期間を短縮することができる。
【0033】
ところで、受電パッド30が基準位置へ近づいたかどうかをどのように判断するかについては、光学センサや撮像機器により受電パッド30の空間的位置を測定するという方法もあるが、非接触給電システム内で授受されている電力の大きさの変動を測定するという方法もある。
【0034】
例えば、送電パッド20側に電力計を設けておく。具体的には1次側コイル24に印加されている電圧を測定する電圧計および流れている電流を測定する電流計を設け、これらが示す電圧値および電流値から、送電パッド20側から供給されている電力(送電力)の値を測定できる装置を設けておく。この電力計は測定値(送電力)の変動を交流電源22へと通知できるようになっていることが好ましい。例えば交流電源22の出力電圧が300V固定(なお、出力電圧が低下する可能性を考慮しなくてよいならば電圧計はなくともよい)で、待機周波数f1(例えば87.28kHz)で送電している場合に、20Aの電流が送電パッド20側の回路に流れているとする。つまり、送電パッド20はズレ位置の送電パッド20に対して300(V)×20(A)=6(kW)の電力(これを以下基準送電力と呼ぶ)で受電パッド30への供給を行っているものとする。
【0035】
ここで、電圧が固定であれば、電力は回路の抵抗値またはインピーダンス絶対値(電流と電圧の比)に反比例する。受電パッド30がズレ位置から基準位置へ向かって移動すると、受電パッド30の共振回路32の共振周波数は待機周波数f1から基準周波数f0に変化するため、送電パッド20側の周波数が待機周波数f1のままでは共振回路32は共振を起こさなくなり、インピーダンス絶対値が増加する。したがって測定される送電力の値が基準送電力(6kW)から低下する。その際、電力計は送電力が基準送電力を下回ったことを交流電源22へ通知する。送電力が基準送電力を下回ったことを確認した交流電源22は、周波数を基準周波数f0(例えば85kHz)に向けて変更(再設定)する。これにより、基準位置でも引き続き効率的な給電が行われる。
【0036】
なお上記の基準送電力の値6kWは一つの例であり、実際には適用される回路における回路特性に応じて任意に設定してよい。また受電パッド30が送電パッド20から極端に離れている場合には当然ながら送電力は基準送電力よりも低いので、そのような場合に周波数が基準周波数f0に設定されてしまわないように、送電力が一度基準送電力に達した後で、基準送電力を下回った場合に基準周波数f0へ向けての変更が行われるようにするのが好ましい。
【0037】
もう一つの例としては、受電パッド30側に電力計を設けておくという方法がある。具体的には車載バッテリ52に印加される充電電圧と、車載バッテリ52へと流れ込む充電電流をそれぞれ測定する電圧計および電流計と、これらが示す電圧値および電流値から、車載バッテリ52(蓄電池)へと充電される電力(充電力)の値を測定できる装置を設けておく。この電力計は測定値(充電力)の変動を交流電源22へと(無線通信などにより)通知できるようになっていることが好ましい。例えば車載バッテリ52の正極-負極間に印加されている電圧が24V、流れ込んでいる電流が20Aであり、2次側コイル34が待機周波数f1(例えば87.28kHz)で40Vの交流電流として送電パッド20側から受け取った電力が、整流回路37および定電圧回路38を経て24(V)×20(A)=480(W)の電力(これを以下基準充電力と呼ぶ)として車載バッテリ52への充電を行っているものとする。
【0038】
この場合においても、受電パッド30がズレ位置から基準位置へ向かって移動すると、受電パッド30の共振回路32の共振周波数は待機周波数f1から基準周波数f0に変化するため、送電パッド20側の周波数が待機周波数f1のままでは共振回路32は共振を起こさなくなり、インピーダンス絶対値が増加する。したがって測定される充電力の値が基準充電力(480W)から低下する。その際、電力計は充電力が基準充電力を下回ったことを交流電源22へ通知する。充電力が基準充電力を下回ったことを確認した交流電源22は、周波数を基準周波数f0(例えば85kHz)に向けて変更(再設定)する。これにより、基準位置でも引き続き効率的な給電(および充電)が行われる。
【0039】
なお上記の基準充電力の値480Wは一つの例であり、実際には適用される回路における回路特性に応じて任意に設定してよい。また受電パッド30が送電パッド20から極端に離れている場合には当然ながら充電力は基準充電力よりも低いので、そのような場合に周波数が基準周波数f0に設定されてしまわないように、充電力が一度基準充電力に達した後で、基準充電力を下回った場合に基準周波数f0へ向けての変更が行われるようにするのが好ましい。
【0040】
なお、受電パッド30があまりにも送電パッド20から離れている場合には待機周波数f1であっても給電が行えないので、送電パッド20の近くに受電パッド30が存在しない場合は交流電源22を停止しておき、受電パッド30がある程度送電パッド20へ接近した時点から交流電源22を起動して給電が行われるようにしてもよい。例えば光学センサなどを用いた接近センサを送電パッド20の近傍に設けておき、受電パッド30が送電パッド20の近く(例えば待機周波数f1が受電側の共振周波数と一致することになる位置)まで接近したことを接近センサが感知した時点で交流電源22が待機周波数f1で起動されるように設計するとよい。この場合、待機周波数f1から基準周波数f0への切り替えも、接近センサによる感知(受電パッド30が基準位置に到達したことを感知したか否か)に基づいて行ってもよい。また、給電が完了して受電パッド30が送電パッド20から離れたことを接近センサが感知した際には交流電源22を停止させるようにしてもよい。
【0041】
以上の実施形態においては受電パッド30が水平方向に移動して送電パッド20へと接近していく場合について説明したが、例えば図6に示すような、受電パッド90が送電パッド80へと鉛直方向に移動して接近していく場合であっても、本発明は同様に適用できる。すなわち、受電パッド90の移動範囲内において送電側コイル・受電側コイルの磁束結合が最も大きくなる位置(基準位置)での受電側の共振周波数を基準周波数として、送電側の交流電源の周波数をその基準周波数と基準周波数よりも高い待機周波数との間で切り替え可能にしておく。そして、送電パッド80が基準位置からズレた位置に存在すれば交流電源の周波数を待機周波数とし、送電パッド80が基準位置に近づけば基準周波数に切り替えればよい。
【0042】
また、以上の実施形態においては送電パッド20の交流電源22の周波数を、受電パッド30がズレ位置にあるときは一定の待機周波数f1とし、受電パッド30が特定の条件下(基準位置に近づいたと考えられる時点)で基準周波数f0へ切り替えるものとしたが、交流電源22の周波数は連続的あるいは段階的に変更されるものであってもよい。受電側コイルのインダクタンスの値は、送電側コイル・受電側コイルの相対位置によって変化する。そのため実際には、受電側の共振周波数の値は受電パッド30が送電パッド20(および基準位置)へ近づくにつれて徐々に変化する。よって好ましくは、送電側の周波数も受電側の共振周波数に応じて徐々に変化するものであるとよい。受電パッド30が基準位置へ近づくように移動する間は、受電側の共振周波数は基準周波数に近づくように変化(減少)していくので、送電側の周波数も待機周波数f1から基準周波数f0に向けて(徐々に下がっていくように)変更されればよい。
【0043】
この送電側の周波数がどのように変更されていくかについては、一定の割合で変更されてもよいし、共振周波数の変化の程度に合わせて送電側の周波数が調節されてもよい。例えば充電ステーションなどにおいて図1の車両50が徐行することが求められている場合は、車両50ひいては受電パッド30の移動速度が一定の徐行速度となっていることが予想されるので、受電側の共振周波数も徐行速度に応じた一定の割合で変化すると予想される。そこでこの場合は、周波数の変更割合を徐行速度に合わせたものとしておけばよい。また非接触給電システム10内に、車両50の移動速度を検出できる速度検出器が設けられている場合は、検出された移動速度に応じて周波数の変更の割合を調節すればよい。なお周波数の変更は連続的(周波数が滑らかに減少する)であってもよいし、段階的(何段階かの飛び飛びの周波数へ都度切り替わっていく)であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 非接触給電システム
20 送電パッド
22 交流電源
24 1次側コイル
30 受電パッド
32 共振回路
34 2次側コイル
52 車載バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6