(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】施肥装置付き移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 19/02 20060101AFI20220913BHJP
A01C 15/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A01C19/02 Z
A01C19/02 A
A01C15/00 D
(21)【出願番号】P 2019119048
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 英希
(72)【発明者】
【氏名】名本 学
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-198562(JP,A)
【文献】特開2016-086762(JP,A)
【文献】特開2015-112026(JP,A)
【文献】特開2009-213420(JP,A)
【文献】特開2002-058315(JP,A)
【文献】特開平11-178415(JP,A)
【文献】米国特許第04523280(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 19/02
A01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(10)に搭載したエンジン(20)で走行装置(30)と植付け装置(100)及び施肥装置(70)を駆動する施肥装置付き移植機において、前記走行装置(30)へ駆動力を伝動するトランスミッション機構(42)の副変速を行う副変速レバーの変速位置を検出する副変速レバーセンサ(23)が中立を検出しないと、試運転モータ(200)の起動スイッチ(210)をオンしても起動しないように前記試運転モータ(200)をコントローラー(400)で制御したことを特徴とする施肥装置付き移植機
。
【請求項2】
前記施肥装置(70)の肥料ホッパー(240)上部に肥料袋(38)を載置する肥料袋受台(35)を設けたことを特徴とする請求項1
に記載の施肥装置付き移植機。
【請求項3】
前記施肥装置(70)の前記肥料ホッパー(240)の供給口上部に前記肥料袋受台(35)を設け、該肥料袋受台(35)の底部に肥料が通過する網(37)を張ったことを特徴とする請求項
2に記載の施肥装置付き移植機。
【請求項4】
前記肥料袋受台(35)の底部に前記肥料袋(38)を切る袋切刃(36)を設けたことを特徴とする請求項
2または
3に記載の施肥装置付き移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機などの移植機で苗の移植と同時に施肥を行う施肥装置付き移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
施肥装置を搭載した施肥装置付き移植機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この移植機に搭載された施肥装置は移植機の走行に伴って施肥装置の肥料繰り出し機構が駆動されて所定散布量の肥料が移植苗の周囲に施肥されるようにしている。
【0003】
施肥装置の肥料繰り出し機構は、計量溝が設けられた計量軸が回転して散布量を決めているので、計量軸の回転数で散布量が変動するが、粒状肥料には粒径の違いや湿度の違いがあるために肥料ホッパーへの供給時によって計量軸の回転が同じであっても散布量が変動する。
【0004】
このために、車体が圃場を走行して移植作業を行う移植機では移植を始める前に施肥装置の肥料繰り出し機構を駆動して肥料の試し繰り出しを行って散布量の確認を行う必要があって、施肥装置の計量軸のみを駆動する試運転モータを駆動して肥料の試し繰り出しを行うことが考えられるが、施肥装置のメイン駆動と試運転モータの駆動をマッチさせなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体に搭載したエンジンの動力で走行装置と施肥装置を駆動する移植機で、施肥装置の肥料繰り出し機構を駆動する試運転モータを設けて、走行を停止して行う肥料の試し繰り出し作業を安全に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
第1の本発明は、車体(10)に搭載したエンジン(20)で走行装置(30)と植付け装置(100)及び施肥装置(70)を駆動する施肥装置付き移植機において、前記走行装置(30)へ駆動力を伝動するトランスミッション機構(42)の副変速を行う副変速レバーの変速位置を検出する副変速レバーセンサ(23)が中立を検出しないと、試運転モータ(200)の起動スイッチ(210)をオンしても起動しないように前記試運転モータ(200)をコントローラー(400)で制御したことを特徴とする施肥装置付き移植機である。
第2の本発明は、前記施肥装置(70)の肥料ホッパー(240)上部に肥料袋(38)を載置する肥料袋受台(35)を設けたことを特徴とする第1の本発明の施肥装置付き移植機である。
第3の本発明は、前記施肥装置(70)の前記肥料ホッパー(240)の供給口上部に前記肥料袋受台(35)を設け、該肥料袋受台(35)の底部に肥料が通過する網(37)を張ったことを特徴とする第2の本発明の施肥装置付き移植機である。
第4の本発明は、前記肥料袋受台(35)の底部に前記肥料袋(38)を切る袋切刃(36)を設けたことを特徴とする第2または第3の本発明の施肥装置付き移植機である。
本発明に関連する第1の発明は、車体10に搭載したエンジン20で走行装置30と植付け装置100及び施肥装置70を駆動する施肥装置付き移植機において、施肥装置70の肥料繰出しユニット71を駆動する試運転モータ200を設け、走行装置30へ駆動力を伝動するトランスミッション機構42の変速位置を検出する変速センサ24が動力伝動を行わない中立を検出しないと試運転モータ200の起動スイッチ210をオンしても起動しないように試運転モータ200をコントローラー400で制御したことを特徴とする施肥装置付き移植機などとする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、車体10に搭載したエンジン20で走行装置30と植付け装置100及び施肥装置70を駆動する施肥装置付き移植機において、走行装置30へ駆動力を伝動するトランスミッション機構42の副変速を行う副変速レバーの変速位置を検出する副変速レバーセンサ23が中立を検出しないと、試運転モータ200の起動スイッチ210をオンしても起動しないように試運転モータ200をコントローラー400で制御したことを特徴とする施肥装置付き移植機などとする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、車体10に搭載したエンジン20で走行装置30と植付け装置100及び施肥装置70を駆動する施肥装置付き移植機において、植付け装置100を昇降する植付け装置昇降装置90のフロートが接地したことを検出する接地センサ25が接地を検出すると試運転モータ200の起動スイッチ210をオンしても起動しないように試運転モータ200をコントローラー400で制御したことを特徴とする施肥装置付き移植機などとする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、施肥装置70の肥料ホッパー240上部に肥料袋38を載置する肥料袋受台35を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1から第3の何れかの発明の施肥装置付き移植機などとする。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、施肥装置70の肥料ホッパー240の供給口上部に肥料袋受台35を設け、肥料袋受台35の底部に肥料が通過する網37を張ったことを特徴とする本発明に関連する第4の発明の施肥装置付き移植機などとする。
【0013】
本発明に関連する第6の発明は、肥料袋受台35の底部に肥料袋38を切る袋切刃36を設けたことを特徴とする本発明に関連する第4または第5の発明の施肥装置付き移植機などとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明で、副変速レバーセンサ23が中立を検出した状態で試運転モータ200が起動するので、走行装置30が駆動されない状態で試運転モータ200施肥装置70の肥料繰り出し機構が駆動されるので、安全である。
本発明に関連する第1の発明で、苗の移植作業を開始する前に行う施肥装置70の肥料の試し繰り出し作業は走行装置30を完全に停止した状態で行うことで安全を図れるが、変速センサ24が中立を検出すると、エンジン20の駆動力が走行装置30に伝動されることなく、確実に車体10が停止した状態で起動スイッチ210をオンすると試運転モータ200を駆動して施肥装置70で肥料の試し繰り出しを行えて、安全である。
【0015】
本発明に関連する第2の発明で、副変速レバーセンサ23が中立を検出した状態で試運転モータ200が起動するので、走行装置30が駆動されない状態で試運転モータ200施肥装置70の肥料繰り出し機構が駆動されるので、安全である。
【0016】
本発明に関連する第3の発明で、植付け装置100の植付け装置昇降装置90を降下して接地センサ25がフロートの接地を検出すると、車体10が走行を開始する可能性があるために試運転モータ200を駆動せず、安全である。
【0017】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第1から第3の何れかの発明の効果に加えて、肥料ホッパー240に肥料を供給する際に重い肥料袋38を肥料袋受台35に載せた状態で肥料供給作業が行えるので、作業負荷が軽減する。
【0018】
本発明に関連する第5の発明で、本発明に関連する第4の発明の効果に加えて、肥料袋受台35うえで肥料袋38の口を空けてそのまま網37を通して肥料を肥料ホッパー240に供給出来て肥料供給作業が楽になる。
【0019】
本発明に関連する第6の発明で、本発明に関連する第4または第5の発明の効果に加えて、肥料袋受台35上で肥料袋38をずらせて袋切刃36で袋に穴を開けてそのまま肥料を肥料ホッパー240に供給出来て肥料供給作業が楽になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】動力伝達系および制御系のブロック図である。
【
図5】田植機の試運転モータ近傍の部分正面図である。
【
図6】田植機の試運転モータ近傍の部分右側面図である。
【
図7】田植機の肥料繰出しロール部材近傍の部分断面図である。
【
図8】田植機の肥料試し繰出し手動ハンドル近傍の部分正面図(その一)である。
【
図9】田植機の肥料試し繰出し手動ハンドル近傍の部分正面図(その二)である。
【
図10】田植機の肥料試し繰出しスイッチ近傍の部分右側面図である。
【
図11】田植機の第二モータ近傍の部分正面図である。
【
図12】田植機の第二モータ近傍の部分左側面図である。
【
図13】田植機のモニターパネル近傍の部分平面図である。
【
図14】田植機の施肥量表示ラベルプレート近傍の部分左側面図である。
【
図15】本発明における実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレート近傍の部分平面図である。
【
図16】別の実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレート近傍の部分左側面図である。
【
図17】別の実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレートの目盛りとポテンショメーターの開度との間の関係を示すグラフの説明図である。
【
図18】肥料ホッパーの蓋を肥料袋受台とした実施例である。
【
図19】肥料ホッパーの上部に肥料袋受台を設けた実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態として移植機の一例である田植機を詳細に説明する。
【0022】
最初に、
図1から
図3を参照しながら、本実施形態の田植機の構成および動作について具体的に説明する。
【0023】
ここに、
図1は本発明における田植機の左側面図であり、
図2は田植機の平面図であり、
図3は動力伝達系および制御系のブロック図である。
【0024】
図1および
図2においては、8条植えの乗用型ポット苗用田植機が示されており、植付け装置100は4個の植付けユニット110を有し、各々の植付けユニット110は左右一対の2個の植付け具111を有する。理解を容易にするために、車体左側のマーカー80については、二つの状態が同時に示されている。
【0025】
もちろん、田植機は、8条植えの乗用型ポット苗用田植機に限らず、たとえば、10条植えの乗用型マット苗用田植機であってもよい。
【0026】
最初に説明されるのは、田植機の基本的な構成および動作で、試運転モータ200の制御などについては、後に詳細に説明する。
【0027】
運転ユニット50は、エンジンカバー21の上方に設けられた座席52を有する。
【0028】
座席52の前方には、前輪31を操作するための操舵ハンドル51が設けられている。そして、エンジンカバー21の左右両側には、水平なステップフロア53が設けられている。さらに、操舵ハンドル51の左右両側には、予備苗載台101が設けられている。
【0029】
走行装置30は、左右の前輪31と左右の後輪32からなり車体10を走行させる装置である。
【0030】
整地装置60は、整地ローター61で圃場を整地し、フロートで移植面を均す装置で植付け装置100と一体に昇降する。
【0031】
マーカー80は、つぎの植付け作業の目安となるマークを圃場へ形成する、車体10へ収納可能に取付けられたマーカーである。
【0032】
植付け装置100は、植付け装置昇降装置90を介して車体10の後側へ取付けられている。施肥装置70の本体は、車体10の上側へ取付けられている。
【0033】
メインフレーム11へ取付けられたエンジン20の回転動力は、HST(Hydro Static Transmission)機構41などを介してトランスミッション機構42などへ伝達される。トランスミッション機構42において変速された回転動力は、走行装置30の前輪31および後輪32などにおいて利用される走行動力と、植付け装置100の植付けユニット110などにおいて利用される外部取出動力とに分岐される。
【0034】
走行動力の一部は左右の前輪ファイナルケースへ伝達されて左右一対の前輪31を駆動し、走行動力の残りが左右の後輪ギヤケース43へ伝達されて左右一対の後輪32を駆動する。そして、後輪ギヤケース43へ伝達された走行動力の一部は、整地装置60および施肥装置70へ伝達される。
【0035】
次に、
図3から
図7を主として参照しながら、本実施の形態の田植機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0036】
ここに、
図4は田植機の施肥装置70近傍の部分正面図であり、
図5は試運転モータ200近傍の部分正面図であり、
図6は田植機の試運転モータ200近傍の部分右側面図であり、
図7は田植機の肥料繰出しロール部材231近傍の部分断面図である。
【0037】
試運転モータ200は、エンジン20により発生された動力を利用して施肥作業を行う施肥装置70の駆動を補助するモータで、施肥装置70の施肥駆動軸部材230は、通常の施肥作業においてはエンジン20により発生された動力により駆動されるが、肥料試し繰出し作業においては試運転モータ200により発生された動力により駆動が補助される。
【0038】
施肥駆動軸部材230から各々の肥料繰出しロール部材231への動力伝達は、植付け作業を行う植付けユニット110を選択するための部分条クラッチのオンオフと連動してオンオフされる。
【0039】
図5の如く、試運転モータ200は、肥料カプセルとも呼ばれる肥料ホッパー240の中に残っている肥料を施肥作業後に手動で排出するための肥料排出レバー250と干渉しないように肥料排出レバー250のレバー支点の下方に取付けられている。
【0040】
肥料の比重などは肥料の種類に依存するので、たとえば、肥料が有機肥料である場合において、肥料繰出しロール部材231の回転速度が遅過ぎると、肥料が肥料繰出しロール部材231の凹部231aへ十分に充填されないことがある。したがって、施肥作業における現実の施肥量が設定された施肥量数値より過度に少なくならないように、肥料試し繰出し作業における試運転モータ200のモータ速度は、施肥作業における肥料繰出しロール部材231の回転速度となるように調整され、コントローラー400で制御される。
【0041】
駆動ギヤ部221、従動ギヤ部222およびカウンターギヤ部223を介して伝達された試運転モータ200の動力は、施肥駆動軸部材230および肥料繰出しロール部材231と同軸で入力される。
【0042】
コントローラー400には、副変速レバーの変速位置を示す副変速レバーセンサ23の変速位置が入力し、主変速レバーで変速されるトランスミッション機構42の変速位置が入力し、植付け装置100と共に昇降するフロートの接地信号が接地センサ25で入力する。そして、副変速レバーセンサ23が中立か変速センサ24が中立か接地センサ25が接地を検出している場合は、起動スイッチ210をオンしても試運転モータ200を起動させず、肥料試し繰出しが行えない。
【0043】
図8および9に示されているように、肥料試し繰出し手動ハンドル260は、試運転モータ200が故障している場合において施肥駆動軸部材230の延長された六角軸部材230aへ取付けられる、カウンターギヤ部223と噛合する鍔部材261を有するハンドルである。
【0044】
ここに、
図8および9は、田植機の肥料試し繰出し手動ハンドル260近傍の部分正面図(その一および二)である。
【0045】
作業者が肥料試し繰出し手動ハンドル260により毎分60回転の理想的な回転速度で施肥駆動軸部材230を正確に回転させることは必ずしも容易ではないが、たとえば、非接触式の近接センサとして設けられた回転センサ225を利用することにより、試運転モータ200に理想的な回転速度で施肥駆動軸部材230を正確に回転させることは容易である。
【0046】
試運転モータ200と、駆動ギヤ部221、従動ギヤ部222およびカウンターギヤ部223と、ワンウェイクラッチ224と、回転センサ225とは、めっきボルトのようなボルト部材251aおよび差込み部材251bなどを利用して取付けられる単一の試運転モータユニットとして、肥料排出レバー250を設けるための肥料排出レバーガイド251へ取外し可能に取付けられている。したがって、試運転モータ200が故障している場合において、このような試運転モータユニットはユニット取外しなどにより無効化され、肥料試し繰出し手動ハンドル260は施肥駆動軸部材230などへ容易に取付けられる。
【0047】
コントローラー400は、施肥作業の開始時におけるエンジン動力アシストを行う場合においても試運転モータ200を駆動させる。
【0048】
施肥作業の開始時においては、肥料ホッパー240における肥料圧縮などにともなう大きな最大駆動開始負荷が発生することがある。このため、試運転モータ200によるエンジン動力アシストが行われなければ、施肥駆動軸部材230がエンジン20により発生された動力のみによりスムーズに駆動されないことがあり、大きな最大駆動開始負荷に対処するために、エンジン20の側から試運転モータ200の側への動力伝達を抑制する比較的に大きなワンウェイクラッチ224がしばしば必要である。
【0049】
本実施の形態においては、施肥作業の開始時における数秒間は、試運転モータ200によるエンジン動力アシストが行われるので、施肥駆動軸部材230はスムーズに駆動され、大きな最大駆動開始負荷に対処するためのワンウェイクラッチ224はもちろん不要である。このようなハイブリッド駆動はワンウェイクラッチ224の摩耗抑制、および動力伝達系の駆動部品サイズのコンパクト化によるコストダウンを実現するので、ユーザーアピール効果も期待される。
【0050】
エンジン20の側から試運転モータ200の側への動力伝達を抑制するワンウェイクラッチ224のみならず、試運転モータ200の側からエンジン20の側への動力伝達を抑制するワンウェイクラッチも利用されることが望ましい。
【0051】
施肥装置70は、4個の肥料繰出しユニット71を有する。
【0052】
4個の肥料繰出しユニット71は、車体左右方向において並んで設けられている。
【0053】
4個の肥料繰出しユニット71の各々は、左右一対の2個の肥料ホッパー240、および施肥ホース出口241から肥料を繰出すための左右一対の2個の肥料繰出しロール部材231を有する。
【0054】
施肥作業の前の肥料試し繰出しを行う場合において、コントローラー400は、4個の肥料繰出しユニット71の内、最も右の肥料繰出しユニット71のみに肥料を繰出させるための設定を実行する。
【0055】
最も右の肥料繰出しユニット71の近傍には、肥料試し繰出しのための肥料試し繰出しスイッチ210が設けられている。
【0056】
最も右の肥料繰出しユニット71は、本発明における所定の肥料繰出しユニットの一例である。
【0057】
なお、変形例の実施の形態においては、施肥作業の前の肥料試し繰出しを行う場合において、コントローラー400は、4個の肥料繰出しユニット71の内、最も左の肥料繰出しユニット71のみに肥料を繰出させるための設定を実行してもよく、最も左の肥料繰出しユニット71の近傍には、肥料試し繰出しのための肥料試し繰出しスイッチ210が設けられていてもよい。
【0058】
図10に示されているように、肥料試し繰出しスイッチ210は、降車して肥料試し繰出しスイッチ210を操作する作業者の手の高さなどを考慮し、高い操作性および視認性を有するように肥料排出レバーガイド251の車体左右方向における外側面に設けられている。
【0059】
ここに、
図10は、田植機の肥料試し繰出しスイッチ210近傍の部分右側面図である。
【0060】
肥料試し繰出しスイッチ210には、たとえば、肥料試し繰出し作業の実行時においてオンされ、肥料試し繰出し作業の非実行時においてオフされるパイロットランプ211が内蔵されている。
【0061】
最も右の肥料繰出しユニット71のみに肥料を繰出させるために、試運転モータ200の負担が増大しないように、最も右の肥料繰出しユニット71の2個の肥料繰出しロール部材231のみが回転させられてもよいし、8個の肥料繰出しロール部材231の全てが回転させられるが、最も右の肥料繰出しユニット71の2個の施肥ホース出口シャッターのみが閉止されずに開放されてもよい。
【0062】
肥料試し繰出し作業で施肥ホース出口241に装着された肥料受け袋により受けられた肥料の量は、作業者の目視により認識されてもよいし、重量センサなどを利用して自動的に測定されてモニターパネル410などに表示されてもよい。最も右の肥料繰出しユニット71のみに肥料を繰出させる場合においても、4個の肥料繰出しユニット71の全てに肥料を繰出させる場合における肥料の量が肥料繰出しユニット総数との乗算により算出されて表示されることが望ましい。
【0063】
肥料試し繰出しスイッチ210が一回操作されると、コントローラー400は施肥量確認の前の肥料充填処理のために試運転モータ200を駆動させる。
【0064】
より具体的には、作業者がモニターパネル410などを利用することにより肥料試し繰出しモードの選択を行うと、最も右の植付けユニット110を選択するための部分条クラッチのみがオンされ、パイロットランプ211は0.9秒のオン期間および0.1秒のオフ期間を有する点滅周期でゆっくり点滅する。そして、降車した作業者が肥料試し繰出しスイッチ210を一回操作すると、パイロットランプ211は連続的にオンされ、肥料が肥料繰出しロール部材231の表面に設けられた多数の凹部231aへ確実に充填されて肥料繰出し精度が向上するように、肥料繰出しロール部材231が1回転された後、パイロットランプ211は試運転モータ200の駆動停止にともない毎分3回の点滅周期で再び点滅する。
【0065】
作業者は、肥料試し繰出しで施肥ホース出口241に装着された肥料受け袋により受けられた少しの肥料を、たとえば、肥料ホッパー240へ戻す。
【0066】
肥料試し繰出しスイッチ210がさらに一回操作されると、コントローラー400は施肥量確認のために試運転モータ200を駆動させる。
【0067】
より具体的には、作業者が肥料試し繰出しスイッチ210をさらに一回操作すると、パイロットランプ211は連続的にオンされ、肥料繰出しロール部材231があらかじめ定められた回転速度で10回転された後、パイロットランプ211は試運転モータ200の駆動停止にともないオフされる。
【0068】
施肥量確認のための試運転モータ200の駆動後に、コントローラー400は、全ての肥料繰出しユニット71に肥料を繰出させるための設定を実行する。
【0069】
なお、変形例の実施の形態においては、施肥量確認のための試運転モータ200の駆動後に、コントローラー400は、肥料試し繰出しスイッチ210が操作される前の肥料繰出しユニット71に肥料を繰出させるための設定を復元してもよい。
【0070】
肥料試し繰出しモードが終了された後、後述される施肥量調節が必要ならば行われ、肥料試し繰出しモードの選択がさらに行われる。
【0071】
誤動作および事故の発生を抑制するために、肥料試し繰出し命令は、つぎの第一から第七の条件が満足される場合において実行される。
【0072】
第一の条件は、HST主変速レバーの手動レバー操作を無効化するための条件である。つまり、HST機構41においては、HSTトラニオン軸の回転角度はゼロであるように設定され、HST斜板の状態はニュートラル状態に固定される。したがって、肥料試し繰出し命令が実行されるとき、車体10は走行させられない。
【0073】
第二の条件は、植付け装置100の動作を禁止するための条件である。つまり、肥料試し繰出し命令が実行されるとき、最も右の植付けユニット110においてのみならず、残りの植付けユニット110においても、植付け具111は駆動されない。
【0074】
第三の条件は、部分条クラッチの手動オンオフ操作を無効化するための条件である。つまり、電動モータによるワイヤ牽引などを利用することにより、肥料繰出しロール部材231への動力伝達は部分条クラッチのオンオフと連動してオンオフされるので、部分条クラッチの手動オンオフ操作にかかわらず、最も右の植付けユニット110を選択するための部分条クラッチは自動的にオンされ、残りの植付けユニット110を選択するための部分条クラッチは自動的にオフされる。
【0075】
第四の条件は、植付け装置昇降装置90の動作を禁止するための条件である。つまり、肥料試し繰出し命令が実行されるとき、植付け装置昇降装置90は上昇させられず下降もさせられない。
【0076】
第五の条件は、停車ペダルのペダル位置がロック位置であることを保証するための条件である。つまり、肥料試し繰出しスイッチ210が操作されても、停車ペダル位置検出スイッチなどにより検出された停車ペダルのペダル位置がロック位置でなければ、ブザー鳴動などが行われ、肥料試し繰出し命令は実行されない。
【0077】
第六の条件は、施肥ブロワー機構270の動作を保証するための条件である。つまり、肥料試し繰出しスイッチ210が操作されても、施肥ブロワー機構270が送風していなければ、肥料試し繰出し命令は実行されない。
【0078】
第七の条件は、エンジン20の動作を保証するための条件である。つまり、肥料試し繰出しスイッチ210が操作されても、エンジン20が動力を発生していなければ、肥料試し繰出し命令は実行されない。
【0079】
たとえば、第七の条件は必須条件ではなく、肥料試し繰出し命令は第一から第七の条件の一部が満足される場合において実行されてもよい。
【0080】
施肥作業を行う肥料繰出しユニット71を選択するための施肥クラッチが設けられている構成においては、肥料試し繰出し命令が実行されるとき、施肥クラッチオンオフ手動ハンドルなどを利用することにより、少なくとも最も右の肥料繰出しユニット71の施肥クラッチはオンされていなければならない。
【0081】
次に、
図11から13を主として参照しながら、本実施の形態の田植機の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0082】
ここに、
図11は田植機の第二モータ300近傍の部分正面図であり、
図12は田植機の第二モータ300近傍の部分左側面図であり、
図13は田植機のモニターパネル410近傍の部分平面図である。
【0083】
施肥装置70の施肥駆動軸部材230は、上述されたように、通常の施肥作業においてはエンジン20により発生された動力により駆動される。
【0084】
エンジン20により発生された動力は、施肥量調節機構72の施肥量調節ボールねじ72aへ取付けられた施肥量調節揺動アーム支点350aの周りにクランクアームとしての施肥量調節揺動アーム350を揺動させることにより、直線往復運動を発生させ、直線往復運動はワンウェイクラッチ351を介して間欠的な回転運動へ変換される。したがって、施肥駆動軸部材230は、このような間欠的な回転運動により間欠的に駆動される。
【0085】
運転ユニット50には、施肥量調節機構72を利用して行われる施肥量調節のための施肥量調節スイッチ装置310が設けられている。
【0086】
たとえば、モニターパネル410の液晶表示部においてキログラム単位で表示される、4個の肥料繰出しユニット71の全てに肥料を繰出させる場合における施肥量数値は、いわゆるジョグダイアルとして設けられた施肥量調節スイッチ装置310の施肥量調節ダイアル311により設定される。
【0087】
施肥量調節スイッチ装置310が操作されると、コントローラー400は施肥量調節のための第二モータ300を駆動させる。
【0088】
第二モータ300が駆動し、施肥量調節ボールねじ72aが駆動ギヤ部321、従動ギヤ部322およびカウンターギヤ部323を介して供給される動力により回転され車体前後方向においてスライドし、施肥量調節ボールねじ72aへ取付けられた施肥量調節揺動アーム支点350aの位置がポテンショメーター324を利用して調節される。このため、作業者が降車しなくても、施肥量調節揺動アーム350の揺動量は第二モータ300の駆動による施肥量調節揺動アーム支点350aの位置調節で調節されるので、施肥量調節は自動的に行われる。
【0089】
第二モータ300のモータ速度はカウンターギヤ部323を利用して増大され、10から80キログラムの施肥量調節を実現するための施肥量調節揺動アーム支点350aの位置調節はおよそ30秒以内に完了する。
【0090】
車体10が走行していても、作業者による施肥量調節スイッチ装置310の手動操作、またはGPS(Global Positioning System)などを利用する自動設定に基づいて第二モータ300を駆動させることにより、施肥量調節は容易に行われる。
【0091】
たとえば、枕地においては、施肥量が多過ぎると苗倒伏が発生しやすいので、施肥量は少なくすることが望ましい。
【0092】
そして、過去の収穫量と位置とが組み合わされた履歴データに応じて、過去の収穫量がより少ない位置における施肥量がより多くなるように、施肥量調節が自動的に行われる。第二モータ300の性能などを考慮し、負荷に応じたモータ速度で第二モータ300を駆動させ、施肥量調節が間に合わなくならないように、施肥量調節が行われているときの車速は大きくなりすぎないように調節されることが望ましい。
【0093】
モニターパネル410には、GPSのアンテナ感度、および施肥量調節の実行状態に関する情報などが表示されてもよい。いわゆる本機モニターではないタブレット端末装置が作業者の手元にない場合において、施肥作業などが終了された後、本機側に記録されたデータはタブレット端末装置に転送されることが望ましい。
【0094】
図14および15に示されているように、一端がポテンショメーター検出回転支点331へ取付けられた検出アーム332には、施肥量調節ボールねじ72aへ取付けられた検出ピン332bがスライド可能に嵌込まれている検出ピンスライド孔332aが形成されている。
【0095】
ここに、
図14は本発明における実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレート341近傍の部分左側面図であり、
図15は本発明における実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレート341近傍の部分平面図である。
【0096】
検出ピン332bの初期位置をキログラム単位で表現された施肥量表示ラベルプレート341の目盛りと整合させるために、施肥量表示ラベルプレート341の位置は工場出荷時において調節される。
【0097】
施肥量表示ラベル340が貼られている施肥量表示ラベルプレート341の取付けは、2個の施肥量表示ラベルプレート取付け長孔341aへそれぞれ差込まれる2個の施肥量表示ラベルプレート取付け螺子341bを利用して行われている。したがって、このような施肥量表示ラベルプレート341の位置は、施肥量表示ラベル340のガイド取外しなく、容易に調節される。
【0098】
第二モータ300は、上述されたように、運転ユニット50に設けられた施肥量調節スイッチ装置310を利用することにより駆動可能であるのみならず、第二モータ300近傍に設けられた施肥量調節器360を利用することにより駆動可能である。機種仕様に応じて、施肥量調節スイッチ装置310および施肥量調節器360の両方が設けられていてもよいし、施肥量調節スイッチ装置310および施肥量調節器360の一方のみが設けられていてもよい。
【0099】
そして、肥料ホッパー240の間のスペースを利用してコンパクトに配置された第二モータ300は、第二モータユニットとして取外し可能に取付けられている。したがって、第二モータ300が故障している場合において、このような第二モータユニットはユニット取外しなどにより無効化され、肥料試し繰出し手動ハンドル260のような施肥量調節手動ハンドルが施肥量調節ボールねじ72aなどへ容易に取付けられる。手動ハンドル位置ずれを防止するためのいわゆる位置決めプレートは施肥量表示ラベル340の採用により不要になるので、このような位置決めプレートとの干渉が発生せず、緊急時における手動ハンドル操作にともなう作業者の負担が抑制される。
【0100】
運転ユニット50のモニターパネル410近傍に設けられた施肥量調節スイッチ装置310は、施肥量調節ダイアル311のみならず、施肥量アップ調節ボタン312および施肥量ダウン調節ボタン313も有する。
【0101】
施肥量アップ調節ボタン312および施肥量ダウン調節ボタン313の機能は第二モータ300近傍に設けられた施肥量調節器360の機能に類似しているが、作業者は降車しないでこれらのボタンを操作することができる。
【0102】
施肥量調節ダイアル311のダイアル位置が連続調節位置に設定されている場合において、施肥量は、施肥量アップ調節ボタン312が押下げられると連続的に増大させられ、施肥量ダウン調節ボタン313が押下げられると連続的に減少させられる。
【0103】
施肥量アップ調節ボタン312または施肥量ダウン調節ボタン313が継続的に押下げられているとき、施肥量数値がモニターパネル410の液晶表示部において表示され、いわゆる苗レール警報音のような断続音による警報音を利用することにより、ブザーの鳴動が行われる。
【0104】
検出ピン332bの位置と施肥量表示ラベルプレート341の上極限値または下極限値の目盛り位置との間の極限値距離がおよそ8ミリメートルを下回ったとき、より短い周期の断続音による警報音を利用することにより、ブザーの鳴動が行われる。
【0105】
施肥量アップ調節ボタン312または施肥量ダウン調節ボタン313が継続的に押下げられてもブザーの鳴動は行われず、このような極限値距離がおよそ8ミリメートルを下回ったとき、ブザーの鳴動が断続音による警報音を利用して初めて行われてもよい。
【0106】
極限値距離がゼロになると、ブザーの鳴動が連続音による警報音を利用して行われるが、施肥量アップ調節ボタン312または施肥量ダウン調節ボタン313が検出ピン332bの折返し移動のために押下げられると、ブザーの鳴動が断続音による警報音を利用して再び行われる。
【0107】
施肥量表示ラベルプレート341の目盛りは、施肥量調節ボールねじ72aの下方に設けられているポテンショメーター検出回転支点331を基準としたポテンショメーター検出角度としてのポテンショメーター324の開度と比例関係を有する、等間隔ピッチ目盛りではない。
【0108】
ポテンショメーター検出回転支点331を基準としたポテンショメーター検出角度は、施肥量表示ラベルプレート341の目盛りとできるだけ整合することが望ましい。
【0109】
したがって、ポテンショメーター検出回転支点331が施肥量表示ラベルプレート341の目盛り方向における中央位置と比べて右側に位置する場合において、施肥量表示ラベルプレート341の目盛りピッチは右側で小さく左側で大きい。
【0110】
図16および17に示されているように、ポテンショメーター検出回転支点331が施肥量表示ラベルプレート341の目盛り方向における中央位置と比べて左側に位置する場合において、施肥量表示ラベルプレート341の目盛りピッチは左側で小さく右側で大きい。
【0111】
ここに、
図16は本発明における別の実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレート341近傍の部分左側面図であり、
図17は本発明における別の実施の形態の田植機の施肥量表示ラベルプレート341の目盛りとポテンショメーター324の開度との間の関係を示すグラフGの説明図である。
【0112】
あらかじめ定められた許容範囲内にあることが要求されるポテンショメーター324のポテンショメーター検出角度は従来の330度より小さい110度であり、分解能も保証されている。
【0113】
図18は、肥料ホッパー240の蓋を水平に開いて肥料袋受台35として肥料袋38を載置可能にした実施例で、肥料袋受台35の受面に袋切刃36を突出して設け、肥料袋受台35を横にずらすことで袋を切って肥料を肥料ホッパー240内へ投入可能にしている。
【0114】
また、
図19は肥料ホッパー240の真上に肥料袋受台35を設け、底部に網37を張って袋切刃36で切り開いた袋穴から網37を通して肥料ホッパー240内へ肥料を投入可能にしている。
【符号の説明】
【0115】
10 車体
20 エンジン
23 副変速レバーセンサ
24 変速センサ
25 接地センサ
30 走行装置
35 肥料袋受台
36 袋切刃
37 網
38 肥料袋
42 トランスミッション機構
60 整地装置
70 施肥装置
90 植付け装置昇降装置
100 植付け装置
200 試運転モータ
210 起動スイッチ
240 肥料ホッパー