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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】混用染色布帛及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 1/18 20060101AFI20220913BHJP
   D06P 3/79 20060101ALI20220913BHJP
   D06P 3/54 20060101ALI20220913BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20220913BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
D06P1/18
D06P3/79 B
D06P3/54 Z
D06M13/256
D06M15/53
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019136148
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021021148
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土肥 政文
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106283717(CN,A)
【文献】特表2008-502820(JP,A)
【文献】特開2009-073963(JP,A)
【文献】特開昭61-266684(JP,A)
【文献】特開平05-230386(JP,A)
【文献】特公昭50-021595(JP,B1)
【文献】特開2003-129375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
D06M 13/256
D06M 15/53
D06M 101/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、該繊維基材に付着した界面活性剤とを含む、混用染色布帛であって、
前記界面活性剤が、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤を含み、
当該混用染色布帛が、アゾ系染料によって染色されており、
前記アゾ系染料が、下記一般式(1)又は(2)で示される染料である、混用染色布帛。
【化1】

[式(1)及び(2)中、
11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8であり、
13、R14、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は、アミド基若しくはスルホンアミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、
15及びR25は、ニトロ基又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示す。]
【請求項2】
前記アゾ系染料が、下記一般式(1A)又は(2A)で示される染料である、請求項1に記載の混用染色布帛。
【化2】

[式(1A)及び(2A)中、
11a、R12a、R21a及びR22aは、それぞれ独立に、炭素数2~5の炭化水素基、又は、エステル基若しくはシアノ基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~5であり、
24aは、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は、アミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、
26aは、水素原子、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。]
【請求項3】
前記アゾ系染料が、C.I.Disperse Blue 148、C.I.Disperse Red 73、及び、C.I.Disperse Red 167:1からなる群より選ばれる1種以上の染料である、請求項1又は2に記載の混用染色布帛。
【請求項4】
当該混用染色布帛の経糸方向の定荷重時伸度が15.0%以上であり、緯糸方向の定荷重時伸度が10.0%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の混用染色布帛。
【請求項5】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の混用染色布帛。
【請求項6】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、該繊維基材に付着した界面活性剤とを含む混用布帛を、アゾ系染料を含む染料液により70℃以上100℃未満の温度で染色して混用染色布帛を得る工程を備え、
前記界面活性剤が、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤を含み、
前記アゾ系染料が下記一般式(1)又は(2)で示される染料である、混用染色布帛の製造方法。
【化3】

[式(1)及び(2)中、
11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8であり、
13、R14、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は、アミド基若しくはスルホンアミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、
15及びR25は、ニトロ基又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混用染色布帛及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維からなる布帛は、極めてソフトな風合いを備えており、種々の衣料又は資材等に用いられている。ポリトリメチレンテレフタレート繊維を、pH8.5~10の範囲で、かつ、120℃近傍の染色温度で、吸尽染色することで、濃色又は極濃色に染色可能なことが知られている(特許文献1)。
【0003】
ポリ塩化ビニル繊維は、防炎性、保温性及び速乾性に優れており、種々の衣料又は資材等に用いられている。ポリ塩化ビニル繊維を、カチオン性化合物と酸性染料とを用い、100℃近傍で染色することで、濃色に染色可能なことが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-055673号公報
【文献】特公昭50-21595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含む混用布帛は、それぞれの繊維の利点を兼ね備えることができることから、種々の用途で使用が検討されている。
【0006】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含む混用布帛は、意匠性向上の観点から、濃色に染色されていることが望ましい。しかしながら、高温条件(例えば、100℃超)で混用布帛を染色すると、濃色に混用布帛を染色することができる一方、ソフトな風合いが失われ、また、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とで色合いが異なる場合があった。そのため、混用布帛に求められる特性(例えば、風合い、色合い)を満たす観点から、染色条件は、低温(例えば、100℃未満)であることが望ましいと考えられていた。しかしながら、低温条件(例えば、100℃未満)で混用布帛を染色すると、混用布帛が十分に濃色にならない場合があり、低温条件で混用布帛を濃色に染色するために、キャリヤー剤(例えば、パラフェニルフェノール)を用いて混用布帛を染色すると、耐光堅牢度が低下する場合があった。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含みながら、低温で濃色に染色され、かつ、耐光堅牢度にも優れる混用染色布帛及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、該繊維基材に付着した界面活性剤とを含む、混用染色布帛であって、界面活性剤が、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤を含み、当該混用染色布帛が、アゾ系染料によって染色されており、アゾ系染料が、下記一般式(1)又は(2)で示される染料である、混用染色布帛に関する。
【化1】

[式(1)及び(2)中、
11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8であり、
13、R14、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は、アミド基若しくはスルホンアミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、
15及びR25は、ニトロ基又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示す。]
【0009】
アゾ系染料は、下記一般式(1A)又は(2A)で示される染料であることが好ましい。
【化2】

[式(1A)及び(2A)中、
11a、R12a、R21a及びR22aは、それぞれ独立に、炭素数2~5の炭化水素基、又は、エステル基若しくはシアノ基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~5であり、
24aは、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は、アミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、
26aは、水素原子、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。]
【0010】
アゾ系染料は、C.I.Disperse Blue 148、C.I.Disperse Red 73、及び、C.I.Disperse Red 167:1からなる群より選ばれる1種以上の染料であることが好ましい。
【0011】
混用染色布帛の経糸方向の定荷重時伸度は、15.0%以上であってよく、緯糸方向の定荷重時伸度は10.0%以上であってよい。
【0012】
界面活性剤は、アニオン界面活性剤を更に含んでいてよい。
【0013】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、該繊維基材に付着した界面活性剤とを含む混用布帛を、アゾ系染料を含む染料液により70℃以上100℃未満の温度で染色して混用染色布帛を得る工程を備え、界面活性剤が、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤を含み、アゾ系染料が下記一般式(1)又は(2)で示される染料である、混用染色布帛の製造方法に関する。
【化3】

[式(1)及び(2)中、
11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8であり、
13、R14、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は、アミド基若しくはスルホンアミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、該官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、
15及びR25は、ニトロ基又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示す。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含みながら、低温で濃色に染色され、かつ、耐光堅牢度にも優れる混用染色布帛及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<混用染色布帛>
本実施形態の混用染色布帛は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、繊維基材に付着した界面活性剤とを含む。混用染色布帛は、アゾ系染料によって染色されている。
【0017】
繊維基材は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維以外の繊維(他の繊維)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。他の繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維等の化学繊維、綿等の天然繊維が挙げられる。繊維基材は、織物であっても、編物であってもよい。
【0018】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の混率(混用率)は、例えば、50~85%であってよい。ポリ塩化ビニル繊維の混率は、例えば、15~50%であってよい。他の繊維を含む場合には、他の繊維の混率は、例えば、5~30%であってよい。混率は、例えば、JIS L 1030-1及びJIS L 1030-2の繊維製品の混用率試験方法を用いることにより測定される。
【0019】
混用染色布帛は、混用染色布帛中のポリトリメチレンテレフタレート繊維部分及びポリ塩化ビニル繊維部分の色調を、JIS L 0804 変退色用グレースケールによりそれぞれ判定(1級(淡色)から5級(濃色)までの0.5級刻みで判定)した際に、それぞれが、3.5級(3-4級ということもある)以上であり、例えば、少なくとも一方が4級以上であってもよく、好ましくは、それぞれが4.5級(4-5級ということもある)以上である。
【0020】
(経糸方向の定荷重時伸度)
混用染色布帛の経糸方向の定荷重時伸度は、ソフトな風合いにより優れる観点から、15.0%以上、16.0%以上、17.0%以上、18.0%以上、又は19.0%以上であってよく、30.0%以下、28.0%以下、25.0%以下、23.0%以下、又は21.0%以下であってよい。混用染色布帛の経糸方向の定荷重時伸度は、ソフトな風合いにより優れる観点から、例えば、15.0~30.0%、16.0~28.0%、17.0~25.0%、18.0~23.0%、又は19.0~21.0%であってよい。経糸方向の定荷重時伸度は、経糸方向20.0cm、緯糸方向5.0cmの測定布の経糸方向の一端を固定し、もう一方の端部に0.20kgの荷重をかけた際の伸び率(荷重時の測定布の経糸方向長さ(cm)-20.0cm)/20.0cm×100)を意味する。経糸方向の定荷重時伸度は、例えば、染色時の温度を調整することにより、上記範囲内に制御することができる。
【0021】
(緯糸方向の定荷重時伸度)
混用染色布帛の緯糸方向の定荷重時伸度は、ソフトな風合いにより優れる観点から、10.0%以上、12.0%以上、14.0%以上、又は15.0%以上であってよく、25.0%以下、22.0%以下、19.0%以下、又は17.0%以下であってよい。混用染色布帛の緯糸方向の定荷重時伸度は、ソフトな風合いにより優れる観点から、例えば、10.0~25.0%、12.0~22.0%、14.0~19.0%、又は15.0~17.0%であってよい。緯糸方向の定荷重時伸度は、緯糸方向20.0cm、経糸方向5.0cmの測定布の緯糸方向の一端を固定し、もう一方の端部に0.20kgの荷重をかけた際の伸び率(荷重時の測定布の緯糸方向長さ(cm)-20.0cm)/20.0cm×100)を意味する。緯糸方向の定荷重時伸度は、例えば、染色時の温度を調整することにより、上記範囲内に制御することができる。
【0022】
混用染色布帛において、経糸方向の定荷重時伸度が15.0%以上、緯糸方向の定荷重時伸度が10.0%以上であることが好ましい。この場合、混用染色布帛がソフトな風合いにより一層優れたものとなる。
【0023】
<界面活性剤>
界面活性剤は、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤を含む。HLB値は、低温でより一層濃色に染色可能となる観点から、例えば、4~8であってよく、5~7であってよい。
【0024】
HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンクロルフェニルエーテル(例えば、HLB値が6であるポリオキシエチレンクロルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ステアリン酸グリセリル、POE(5)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、POE(5)ベヘニルエーテル、トリオレイン酸デカグリセリル、POE(6)ソルビットミツロウ、POE(2)セチルエーテル、POE(2)ステアリルエーテル、POE(42)POP(67)グリコール、テトラオレイン酸POE(6)ソルビット、POE(4)ステアリルエーテル、ショ糖ステアリン酸エステル(モノエステル50%)が挙げられる。
【0025】
界面活性剤は、本発明の効果がより一層優れたものとなる観点から、アニオン界面活性剤を更に含むことが好ましい。アニオン界面活性剤は、特に限定されないが、上記ノニオン界面活性剤と相溶性のよいものが好ましい。相溶性は、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを水中で混合したときに、濁り及び沈殿を生じるか否かで判定でき、濁り及び沈殿が生じない場合、相溶性が良好であると判断できる。
【0026】
アニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩であるセッケン、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ)、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、イケポンT(商品名)、エアロゾルOT(商品名)及び高級アルコールリン酸エステル塩が挙げられる。
【0027】
アニオン界面活性剤に対するノニオン界面活性剤の質量比(ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤)は、5/1~20/1であってよく、10/1~18/1であってよく、12/1~16/1であってよい。
【0028】
界面活性剤の付着量は、繊維基材100質量部に対して、0.01質量部以上、又は0.9質量部以上であってよく、40.0質量部以下、又は12.6質量部以下であってよい。
【0029】
界面活性剤の同定は、混用染色布帛を水溶液中で130℃で加熱することで、抽出液を得て、得られた抽出液をIR、ガスクロマトグラフィーで分析することにより行うことができる。なお、界面活性剤のHLB値としては、同定された界面活性剤のHLB値についての文献値を用いることができ、文献値がない場合には、当該界面活性剤の化学式に基づいてグリフィン法で計算した計算値を用いることができる。
【0030】
<アゾ系染料>
アゾ系染料は、下記一般式(1)又は(2)で示される染料である。以下、本明細書において、下記一般式(1)で表される染料を第1の染料、下記一般式(2)で表される染料を第2の染料とも称する。混用染色布帛は、第1の染料及び第2の染料のいずれか一方又は両方のアゾ系染料で染色されていてよい。
【化4】
【0031】
式(1)及び(2)中、R11、R12、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数2~8の炭化水素基、又は、エステル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~8である。
【0032】
式(1)及び(2)中、R13、R14、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基、又は、アミド基若しくはスルホンアミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3である。
【0033】
式(1)及び(2)中、R15及びR25は、ニトロ基又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。
【0034】
式(2)中、R26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を示す。
【0035】
(置換基R11、R12、R21、R22
11、R12、R21又はR22としての炭素数2~8の炭化水素基は、例えば、炭素数2~5の炭化水素基であってよい。R11、R12、R21又はR22としての炭素数2~8の炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8の炭化水素基、炭素数2~8のアルケニル基が挙げられる。R11、R12、R21及びR22における炭素数2~8のアルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基が挙げられる。R11及びR12における炭素数2~8のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。
【0036】
11、R12、R21又はR22としての官能基含有基中の官能基は、炭化水素基に結合していてもよい。R11、R12、R21及びR22における官能基含有基としては、例えば、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキロイルオキシアルキル基、シアノアルキル基が挙げられる。R11、R12、R21又はR22としての官能基含有基の例としては、例えば、メトキシカルボニルエチル基(-CH-CH-C(=O)-O-CH)、アセチルオキシエチル基(-CH-CH-O-C(=O)-CH)、シアノエチル基(-CH-CH-CN)が挙げられる。
【0037】
(置換基R13、R14、R23、R24
13、R14、R23又はR24としての炭素数1~3の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルケニル基が挙げられる。R13、R14、R23及びR24における炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R13及びR14における炭素数1~3のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられる。R13、R14、R23又はR24としての官能基含有基中の官能基は、炭化水素基に結合していてもよい。R13、R14、R23及びR24における官能基含有基としては、例えば、-NH-C(=O)-X(但し、Xは、炭素数1~6のアルキル基(例えば、-CH))、-NH-SO-Y(但し、Yは、炭素数1~6のアルキル基(例えば、-CH))が挙げられる。
【0038】
(置換基R15、R25
15又はR25としての炭素数1~3の炭化水素基は、例えば、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルケニル基が挙げられる。R15又はR25における炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R15及びR25における炭素数1~3のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0039】
(置換基R26、R27
26又はR27としてのハロゲン原子としては、例えば、臭素、塩素が挙げられる。
【0040】
[第1の染料]
第1の染料は、上記一般式(1)で表される染料を1種単独で含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含む染料混合物であってもよい。式(1)における、R13及びR14は水素原子、R15はニトロ基であってよい。第1の染料は、例えば、低温でより一層濃色に染色される観点から、下記一般式(1A)で表される染料であってよい。
【化5】
【0041】
式(1A)中、R11a及びR12aは、それぞれ独立に、炭素数2~5の炭化水素基、又は、エステル基若しくはシアノ基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~5である。
【0042】
式(1A)におけるR11a及びR12aの一方が炭素数2~5の炭化水素基で、他方がエステル基と炭化水素基とからなる官能基含有基であってよく、一方がエチル基で、他方がアルコキシカルボニルアルキル基(例えば、メトキシカルボニルエチル基)であってよい。一般式(1A)で表される染料は、例えば、低温でより一層濃色に染色できる観点から、下記式(1B)で表される染料であってよい。下記式(1B)で表される染料のカラーインデックス名はDisperse Blue 148である。
【化6】
【0043】
[第2の染料]
第2の染料は、上記一般式(2)で表される染料を1種単独で含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含む染料混合物であってもよい。式(2)におけるR23は水素原子、R27は水素原子、R25はニトロ基であってよい。第2の染料は、例えば、低温でより一層濃色に染色できる観点から、式(2A)で表される染料であってよい。
【化7】
【0044】
式(2A)中、R21a及びR22aは、それぞれ独立に、炭素数2~5の炭化水素基、又は、エステル基若しくはシアノ基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が2~5であり、R24aは、水素原子、炭素数1~3の炭化水素基、又は、アミド基と炭化水素基とからなる官能基含有基を示し、官能基含有基中の炭化水素基の総炭素数が1~3であり、R26aは、水素原子、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。
【0045】
式(2A)におけるR21a及びR22aの一方が炭素数2~5の炭化水素基で、他方がシアノ基と炭化水素基とからなる官能基含有基であってよく、一方がエチル基で、他方がシアノアルキル基(例えば2-シアノエチル基(-CH-CH-CN))であってよい。式(2A)におけるR21a及びR22aは、それぞれ独立に、エステル基と炭化水素基とからなる官能基含有基であってよく、アセトキシアルキル基(例えば、2-アセトキシエチル基(-CH-CH-O-C(=O)-CH))であってよい。
【0046】
一般式(2A)で表される染料は、例えば、低温でより一層濃色に染色される観点から、R21a及びR22aの一方がエチル基で、他方が2-シアノエチル基であり、R24aが水素原子であり、R26aがシアノ基である、下記式(2B-1)で表される染料であってよい。一般式(2A)で表される染料は、低温でより一層濃色に染色される観点から、R21a及びR22aが2-アセトキシエチル基であり、R24aがアセトアミド基(-NH-C(=O)-CH)であり、R26aが塩素原子である、下記式(2B-2)で表される染料であってよい。下記式(2B-1)で表される染料のカラーインデックス名は、Disperse Red 73である。下記式(2B-2)で表される染料のカラーインデックス名は、Disperse Red 167:1である。
【0047】
【化8】
【0048】
第2の染料は、低温でより一層濃色に染色される観点から、下記式(2B-1)で表される染料(C.I.Disperse Red 73)及び下記式(2B-2)で表される染料(C.I.Disperse Red 167:1)の染料混合物であることが好ましい。
【0049】
式(2B-1)で表される染料の質量と、式(2B-2)で表される染料の質量との比(2B-1:2B-2)は、例えば、1:99~99:1であってよく、20:80~80:20であってよい。
【0050】
アゾ系染料の付与量は、例えば、繊維基材の全質量基準で、0.01~30.0%owf、0.5~8%owf、1.0~5%owf、又は1.5~2.5%owfであってよい。
【0051】
<キャリヤー剤>
本実施形態の混用染色布帛は、キャリヤー剤を含んでいなくてよい。キャリヤー剤は、染色助剤であり、膨潤剤とも称される。本実施形態の混用染色布帛によれば、キャリヤー剤を含まなくても、低温で濃色に染色することが可能である。ここで、「キャリヤー剤を含まない」とは、混用染色布帛を、n-ヘキサン、エチルアルコール等の溶剤に浸漬して、混用染色布帛への付着物を抽出した抽出液を作製し、この抽出液を用いてガスクロマトグラフィー分析を行った際に、キャリヤー剤が検出されないことをいう。キャリヤー剤としては、ジフェニル、ジフェニルエステル、ヒドロキシジフェニル(例えば、パラフェニルフェノール)、ナフトールエステル、メチルナフタレン、N-アルキルフタルイミド、フェノールエーテル、芳香族ハロゲン化合物(例えば、クロロベンゼン)、安息香酸誘導体を挙げられる。
【0052】
<混用染色布帛の製造方法>
[染色工程]
本実施形態の混用染色布帛の製造方法は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、該繊維基材に付着した界面活性剤とを含む混用布帛(界面活性剤付着混用布帛)を、アゾ系染料を含む染料液により70℃以上100℃未満の温度で染色して混用染色布帛を得る工程(染色工程)を備える。染色工程において、界面活性剤は、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤を含む。界面活性剤については上述したとおりであってよい。アゾ系染料は、上記一般式(1)又は(2)で示される染料である。
【0053】
本実施形態の製造方法により得られる混用染色布帛は、濃色に染色され、かつ、耐光堅牢度に優れることに加えて、染色条件が低温(100℃未満)であるため、ソフトな風合いに優れている。更に、本実施形態の製造方法は、幅広い染色条件(染料の濃度条件)を許容することができる。
【0054】
アゾ系染料を含む染料液は、溶媒を含んでいてよい。染色液の溶媒としては、例えば、水及びポリエチレングルコールが挙げられる。染料液は、分散剤を含んでいなくてよい。分散剤の例としては、ポリオキシアルキレン・スチレンオキサイド付加物の硫酸化物又は脂肪酸エステル;スチレン化フェノール・エチレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル;及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルの脂肪酸エステルが挙げられる。分散剤を含まない染料液においては、染料が界面活性剤付着混用布帛に付着しやすくなり、より濃色な染色が可能になると考えられる。
【0055】
界面活性剤付着混用布帛を染色する方法としては、例えば、界面活性剤付着混用布帛を染色液に浸漬する方法、及びスプレー等により界面活性剤付着混用布帛に対して染色液を塗布する方法が挙げられる。
【0056】
染色液に浸漬する方法により、界面活性剤付着混用布帛を染色する場合、界面活性剤付着混用布帛の質量と染色液の質量との比(界面活性剤付着混用布帛の質量:染色液の質量)である浴比は、例えば、1:4~1:40であってもよい。
【0057】
染色工程におけるアゾ系染料の付与量は、繊維基材の質量を基準として、0.1~30.0%owfであってもよく、0.5~25.0%owfであってもよく、1.0~20.0%owfであってもよい。
【0058】
界面活性剤付着混用布帛を染色する際の温度(染色温度)は70℃以上100℃未満である。染色温度が、上記範囲内であることにより、柔らか曲がり長さの増加が抑制される。染色温度は、例えば、柔らか曲がり長さの増加がより抑制され、ソフトな風合いが維持されやすくなる観点から、75℃以上、80℃以上、85℃以上、又は90℃以上であってよく、98℃以下、又は96℃以下であってよい。
【0059】
上記染色温度に保持する時間(染色時間)は、例えば、10分間以上、又は30分間以上であってよく、60分間以下又は50分間以下であってよい。
【0060】
染色工程は、濃色に染色しやすい観点から、界面活性剤付着混用布帛を上述した染色温度の染料液に浸漬させることにより行われてよい。
【0061】
染色工程後、混用染色布帛に対して、冷却、ソーピング、洗浄、乾燥等を行ってよい。混用染色布帛を洗浄することにより、混用染色布帛に固着していない、界面活性剤及び/又は染料を除去することができる。混用染色布帛の洗浄は、例えば、洗浄液で洗浄することにより実施される。洗浄液としては、例えば、水が挙げられる。洗浄液は、アルカリ剤、界面活性剤及び還元剤等を含んでいてもよい。混用染色布帛の乾燥は、例えば、混用染色布帛を50℃以上100℃未満で、1~60分間保持することにより実施してよい。
【0062】
[界面活性剤付着工程]
本実施形態の混用染色布帛の製造方法は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含む繊維基材に界面活性剤を付着させる工程(界面活性剤付着工程)を更に備えていてよい。
【0063】
界面活性剤付着工程は、例えば、繊維基材を界面活性剤を含む処理液と接触させることにより行われてよい。処理液に用いる界面活性剤が、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とを含む場合、HLB値が3~9であるノニオン界面活性剤が、溶媒(例えば、水)に溶解し易くなり、処理液中に均一に分散し易いと考えられる。したがって、繊維基材に均一にノニオン界面活性剤が付着し易く、色ムラ及び汚れが低減され易いと考えられる。
【0064】
処理液は、溶媒を含んでいてもよい。処理液の溶媒としては、例えば、水及びポリエチレングルコールが挙げられる。処理液は、溶媒及び界面活性剤以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、浴中柔軟剤、平滑剤及び緩衝剤が挙げられる。処理液は、分散剤を含んでいなくてよい。分散剤の例としては、上記例示したものが挙げられる。分散剤を含まない処理液においては、界面活性剤が繊維基材(布帛)に付着しやすくなり、より濃色な染色が可能になると考えられる。
【0065】
処理液中の界面活性剤の濃度は、低温でより一層濃色に染色しやすくなる観点から、例えば、1~30g/Lであってもよく、2~15g/Lであってもよく、3~7g/Lであってもよい。
【0066】
処理液を用いて繊維基材に界面活性剤を付着させる方法としては、例えば、繊維基材を処理液に浸漬する方法、及びスプレー等により繊維基材に対して処理液を塗布する方法が挙げられる。
【0067】
処理液に浸漬する方法により、繊維基材に界面活性剤を付着させる場合、繊維基材の質量と処理液の質量との比(繊維基材の質量:処理液の質量)である浴比は、1:1~1:100であってもよい。繊維基材を処理液に浸漬させる時間は、1~30分間であってもよい。繊維基材を処理液に浸漬させる際の浴(処理液)の温度は、10~80℃であってよい。
【0068】
界面活性剤付着工程において、界面活性剤の付着量は、繊維基材100質量部に対して、0.01~40.0質量部であってよく、0.9~12.6質量部であってよい。
【0069】
界面活性剤付着工程後、処理液に染料を添加して、上述した染色工程における染色液としてもよい。
【0070】
<混用布帛の染色方法>
本実施形態の混用布帛の染色方法は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びポリ塩化ビニル繊維を含む繊維基材と、該繊維基材に付着した界面活性剤とを含む混用布帛を、アゾ系染料を含む染料液により70℃以上100℃未満の温度で染色する工程(染色工程)を含む。これにより、低温(100℃未満)で、混用布帛の濃色な染色が可能になるとともに、耐光堅牢度にも優れる混用染色布帛を得ることができる。本実施形態の混用布帛の染色方法は、染色工程の前に、界面活性剤付着工程を含んでいてよい。染色工程及び界面活性剤付着工程については上述したとおりであってよい。
【実施例
【0071】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
<混用布帛の準備>
ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含む繊維基材(混用布帛)を準備した。ポリトリメチレンテレフタレート繊維の混率は54%、ポリ塩化ビニル繊維の混率は24%、ポリエステル繊維の混率は22%であった。混率は、JIS L 1030-1及びJIS L 1030-2の繊維製品の混用率試験方法により測定された値である。
【0073】
<染料の準備>
次に示す染料を準備した。
・C.I.Disperse Blue 148(D.B.148)
・C.I.Disperse Red 73(D.R.73)とC.I.Disperse Red 167:1(D.R.167:1)との混合染料(商品名:Foron Red RD-E、アークロマジャパン株式会社製)
・C.I.Disperse Red 343(D.R.343)
・C.I.Disperse Orange 61(D.O.61)とC.I.Disperse Violet 93:1(D.V.93:1)とC.I.Disperse Blue 291:1(D.B.291:1)との染料混合物(商品名:Kayalon Polyester Black ECXN 300%、日本化薬株式会社社製)
・C.I.Disperse Blue 106(D.B.106)
・C.I.Disperse Orange 29(D.O.29)
・C.I.Disperse Blue 77(D.B.77)
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
<混用染色布帛の製造及び評価>
実施例1
ノニオン界面活性剤として、HLB値が6であるポリオキシエチレンクロルフェニルエーテルを6.5g/L、アニオン界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ソーダを0.5g/L含む処理液を得た。すなわち、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を7.0g/Lの濃度で含み、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との質量比(ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤)が13/1である処理液を得た。
【0077】
混用布帛を、処理液からなる浴(浴比1:30)に、40℃にて30分間浸漬して、界面活性剤を付着させた。これにより界面活性剤付着混用布帛を得た。浸漬中、浴は撹拌した。
【0078】
C.I.Disperse Blue 148を水に溶解して得た染料水溶液を、浸漬処理後の処理液に添加して染色液を得た。染料の量は2.0%owfとなるように調整した。
【0079】
界面活性剤付着混用布帛を、染色液からなる浴中に、95℃で50分間保持した。次いで、染色液からなる浴を70℃まで冷却し、ソーピング及び水洗を行った。水洗後、脱水、95℃で20分間加熱することにより乾燥して、実施例1の混用染色布帛を得た。
【0080】
実施例1のポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリ塩化ビニル繊維とを含む混用染色布帛(以下、「測定布」ということもある)について、以下の方法で、経糸方向伸度、緯糸方向伸度、濃色性、柔らか曲がり長さ及び耐光堅牢度を評価した。
【0081】
(経糸方向伸度)
測定布を、経糸方向20.0cm、緯糸方向5.0cmとなるように裁断した。次いで、経糸方向の一端を固定し、もう一方の端部に0.20kgの荷重をかけた際の測定布の経糸方向の長さを測定し、(荷重時の測定布の経方向長さ(cm)-20.0cm)/20.0cm×100、により経糸方向伸度(%)を算出した。
【0082】
(緯糸方向伸度)
測定布を、緯糸方向20.0cm、経糸方向5.0cmとなるように裁断した。次いで、緯糸方向の一端を固定し、もう一方の端部に0.20kgの荷重をかけた際の測定布の経緯糸方向の長さを測定し、(荷重時の測定布の緯方向長さ(cm)-20.0cm)/20.0cm×100、により緯糸方向伸度(%)を算出した。
【0083】
(濃色性)
測定布中のポリトリメチレンテレフタレート繊維部分及びポリ塩化ビニル繊維部分の色調を、それぞれJIS L 0804 変退色用グレースケールにより判定(1級(淡色)から5級(濃色)までの0.5級刻みで判定)した。ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調及びポリ塩化ビニル繊維部分の色調のいずれもが4.5級(4-5級ともいう)以上の場合に「◎」、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調及びポリ塩化ビニル繊維部分の色調のいずれもが3.5級(3-4級ともいう)以上であり、かつ、少なくともいずれか一方が4級以下の場合に「〇」、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調及びポリ塩化ビニル繊維部分の色調の少なくともいずれか一方が3級以下の場合に「×」と評価した。
【0084】
(柔らか曲がり長さ)
測定布を、経糸方向10.0cm、緯糸方向50.0cmとなるように裁断した。次いで、測定布を布置台の端部に置き、布置台上からせり出すように測定布を緯糸方向に徐々にスライドさせた。次いで、測定布が90度垂れ下った時点での、測定布の布置台からせり出した部分の長さを測定した。柔らか曲がり長さが80.0mm以下である場合、ソフトな風合いに優れていると、判断される。
【0085】
(耐光堅牢度)
JIS L 0842 第3露光法に準拠して、測定布の耐光堅牢度を測定した。耐光堅牢度の評価は、以下の基準に基づいて実施した。
〇:測定布中のポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の耐光堅牢度が4級以上(4~8級)
×:測定布中のポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の耐光堅牢度が4級未満
【0086】
実施例1の混用染色布帛を、水溶液中で130℃で加熱して抽出液を得て、得られた抽出液をIRで分析することにより、界面活性剤の存在を確認した。
【0087】
実施例1の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、4.5級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、4.5級であった。
【0088】
実施例2
C.I.Disperse Blue 148に代えて、C.I.Disperse Red 73とC.I.Disperse Red 167:1との混合染料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の混用染色布帛を製造及び評価を行った。実施例1と同様に、実施例2の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。実施例2の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分及びポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、それぞれ4.5級であった。
【0089】
実施例3
C.I.Disperse Blue 148に代えて、C.I.Disperse Red 343を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、実施例3の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。実施例3の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、4級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、4級であった。
【0090】
実施例4
C.I.Disperse Blue 148に代えて、C.I.Disperse Orange 61と C.I.Disperse Violet 93:1とC.I.Disperse Blue 291:1との染料混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、実施例4の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。実施例4の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、4級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、4.5級であった。
【0091】
実施例5
染料の量を、2.0%owfに代えて、0.5%owfとなるように調整したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、実施例5の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。実施例5の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、4.5級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、4.5級であった。
【0092】
比較例1
C.I.Disperse Blue 148に代えて、C.I.Disperse Blue 106を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、比較例1の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。比較例1の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、3級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、3.5級であった。
【0093】
比較例2
C.I.Disperse Blue 148に代えて、C.I.Disperse orange 29を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、比較例2の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。比較例2の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、3級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、3.5級であった。
【0094】
比較例3
C.I.Disperse Blue 148に代えて、C.I.Disperse blue 77を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、比較例3の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。比較例3の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、3級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、3.5級であった。
【0095】
比較例4
HLB値が6であるノニオン界面活性剤、及び、アニオン界面活性剤を含む処理液に代えて、キャリヤー剤であるパラフェニルフェノール(商品名:キャリヤジン50、日成化成株式会社製)を含む処理液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の混用染色布帛の製造及び評価を行った。比較例4の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、4.5級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、4.5級であった。
【0096】
比較例5
HLB値が6であるノニオン界面活性剤、及び、アニオン界面活性剤を含む処理液に代えて、HLB値が11であるノニオン界面活性剤(明成化学工業株式会社製、商品名:ディスパーGS-1000)を含む処理液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、比較例5の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。比較例5の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、2級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、3級であった。
【0097】
比較例6
染料の量を、2.0%owfに代えて、0.5%owfとなるように調整した以外は、比較例4と同様にして、比較例6の混用染色布帛の製造及び評価を行った。比較例4の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、2.5級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、3.5級であった。
【0098】
参考例1
界面活性剤付着混用布帛を、染色液からなる浴中に、95℃で50分間に代えて、120℃で50分間保持したこと以外は、比較例1と同様にして、参考例1の混用染色布帛の製造及び評価を行った。実施例1と同様に、参考例1の混用染色布帛中の界面活性剤の存在を確認した。参考例1の混用染色布帛中、ポリトリメチレンテレフタレート繊維部分の色調は、JIS L 0804 変退色用グレースケールに基づいて、4.5級であり、ポリ塩化ビニル繊維部分の色調は、同グレースケールに基づいて、4.5級であった。
【0099】
実施例の混用染色布帛が、低温(100℃未満)で濃色に染色され、かつ、耐光堅牢度にも優れることが示された(実施例1~5と、比較例1~6との対比)。染料濃度を変更しても、低温で濃色に染色され、かつ耐光堅牢度に優れていたことから、幅広い染色条件を許容可能であることが示された(実施例1及び実施例5参照)。高温(120℃)で染色した参考例1の混用布帛は、濃色に染色されたものの、ソフトな風合いに劣っていた(参考例1と比較例1との対比)。
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】