(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】圧縮空気供給システムの自動運転制御方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
F04B49/06 341L
(21)【出願番号】P 2019189754
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179589
【氏名又は名称】酒匂 健吾
(72)【発明者】
【氏名】新井 秀廣
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143541(JP,A)
【文献】特開2013-076336(JP,A)
【文献】特開2009-221977(JP,A)
【文献】特開2011-106333(JP,A)
【文献】特開2013-024163(JP,A)
【文献】特開2000-283051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気供給システムの自動運転制御方法であって、
前記圧縮空気供給システムは、
1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、
複数台の台数制御用空気圧縮機と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機と、前記ベース運転用空気圧縮機および/または前記台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気を使用する負荷部とを接続する、供給部と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機の運転状態を制御して、前記負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する、制御装置、
とをそなえ、
前記ベース運転用空気圧縮機が、吸入絞り弁を有
し、
前記供給圧力が設定範囲超となる際に、前記制御装置が、
(c)前記台数制御用空気圧縮機を順次停止する、
(d)前記吸入絞り弁により、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行
い、
前記台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の多い順番に設定する、
圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項2】
前記供給圧力が設定範囲未満となる際に、前記制御装置が、
(a)前記吸入絞り弁により、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
(b)前記台数制御用空気圧縮機を順次起動する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行う、請求項1に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項3】
前記台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を、前記台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、設定する、請求項
2に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項4】
前記台数制御用空気圧縮機の起動順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、請求項
2または
3に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項5】
前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の起動順位を累積運転時間の短い順番に設定する、請求項
4に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項6】
前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の停止順位を累積運転時間の長い順番に設定する、請求項
1~5のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項7】
前記台数制御用空気圧縮機がいずれも、電動モータ駆動である、請求項1~
6のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項8】
圧縮空気供給システムの自動運転制御方法であって、
前記圧縮空気供給システムは、
1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、
複数台の台数制御用空気圧縮機と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機と、前記ベース運転用空気圧縮機および/または前記台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気を使用する負荷部とを接続する、供給部と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機の運転状態を制御して、前記負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する、制御装置、
とをそなえ、
前記ベース運転用空気圧縮機が、吸入絞り弁を有し、
前記供給圧力が設定範囲超となる際に、前記制御装置が、
(c)前記台数制御用空気圧縮機を順次停止する、
(d)前記吸入絞り弁により、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行い、
前記台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、
圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項9】
前記供給圧力が設定範囲未満となる際に、前記制御装置が、
(a)前記吸入絞り弁により、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
(b)前記台数制御用空気圧縮機を順次起動する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行う、請求項8に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項10】
前記台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を、前記台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、設定する、請求項9に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項11】
前記台数制御用空気圧縮機の起動順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、請求項9または10に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項12】
前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の起動順位を累積運転時間の短い順番に設定する、請求項11に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項13】
前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の停止順位を累積運転時間の長い順番に設定する、請求項8~12のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【請求項14】
前記台数制御用空気圧縮機がいずれも、電動モータ駆動である、請求項8~13のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気供給システムの自動運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所、化学工場等の種々の工場では、機械装置の駆動および冷却などの目的で、圧縮空気供給システムを設置している場合がある。このような圧縮空気供給システムでは、通常、複数の空気圧縮機で生成した圧縮空気を、配管などから構成される供給部において集合させた後、圧縮空気の使用設備(以下、負荷部ともいう)に供給している。
【0003】
このような圧縮空気供給システムについて、従来、システム全体での寿命延長を図る観点から、空気圧縮機の負荷を平準化させるための制御方法に係る技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、
「複数台のコンプレッサと、
前記複数台のコンプレッサのうちの任意の複数台の前記コンプレッサを運転台数制御対象として独立して稼動制御する制御ユニットと、
前記複数台のコンプレッサのうちの他の任意の複数台の前記コンプレッサを常時稼動対象として稼動制御する常時ONユニットと、
前記複数のコンプレッサにおける前記制御ユニット及び前記常時ONユニットに対する任意の組み合わせを操作する制御盤と、
を備え、
前記操作盤を用いて、前記複数のコンプレッサの全てを平均的に使用して前記複数のコンプレッサの寿命を平準化するために、前記複数台のコンプレッサのうち、どの前記コンプレッサを前記制御ユニットにより運転台数を制御し、どの前記コンプレッサを前記常時ONユニットにより常時運転するかの組み合わせを変化させながら使用側の必要空気量に対応して運転される前記コンプレッサを選択制御することを特徴とするコンプレッサ運転台数拡張制御方法。」
が開示されている。
【0005】
特許文献2には、
「圧縮空気を生成する複数の空気圧縮機と、
前記空気圧縮機で生成された圧縮空気を集気して負荷へ供給する供給部と、
前記供給部で計測した前記圧縮空気の圧力を示す空気圧の変化に応じて、前記空気圧縮機の運転状態を切替制御することにより、前記空気圧を調整する空気圧縮機制御装置とを備え、
前記空気圧縮機制御装置は、
前記空気圧縮機ごとに前記切替制御の対象として選択する優先順位が予め設定されている運転設定データを記憶する記憶部と、
前記運転設定データの優先順位に基づいて前記空気圧縮機のうちから前記切替制御の対象となる空気圧縮機を選択し、選択した当該空気圧縮機の運転状態を、前記空気圧の変化に応じて、前記圧縮空気を吐出するロード状態または前記圧縮空気を吐出しないアンロード状態へ切替制御する切替制御部と
を含むことを特徴とする圧縮空気供給システム。」
が開示されている。
【0006】
特許文献3には、
「エアー供給ラインに対してベース運転用コンプレッサと、台数制御用コンプレッサと、微圧制御用コンプレッサを夫々複数並列設置し、エアー供給ラインの負荷変動に応じて前記微圧制御用コンプレッサの2台が無負荷運転状態になると、所定時間後に前記台数制御用コンプレッサのうちの1台を停止させると共に、前記微圧制御用コンプレッサを無負荷運転状態から負荷運転状態にすることを特徴とする複数台のコンプレッサの運転方法。」
が開示されている。
【0007】
特許文献4には、
「1台の駆動源に複数台のコンプレッサーをそれぞれクラッチを介して連結し、これら複数台のコンプレッサーを負荷に応じて選択的に運転するようにした装置において、前記コンプレッサーの少なくとも累積運転時間に基づいて定められるダメージ係数を、前記複数台のコンプレッサー相互間で等しくするように前記クラッチを断続制御するコンプレッサーの運転台数制御方法。」
が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5238306号公報
【文献】特開2011-106333号公報
【文献】特開2002-235674号公報
【文献】特開平6-272669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、空気圧縮機には、吸入絞り弁(インレットガイドベーン)を有するものがある。吸入絞り弁は、空気圧縮機の吸入口にくさび状のベーン(翼)を取り付けたものであり、その角度を変えることにより、インペラ入口の空気に対して、インペラの回転方向と同じ向きに予旋回(ひねり)を加えることが可能である。また、吸入絞り弁の開度を調整することによって、空気圧縮機の起動・停止を行わなくとも、空気圧縮機の出力(圧縮空気の供給量)を調整することが可能である。
【0010】
近年、圧縮空気供給システムに、このような吸入絞り弁を有する空気圧縮機(以下、吸入絞り弁付き空気圧縮機ともいう)が組み込まれる場合がある。そのため、吸入絞り弁付き空気圧縮機を組み込んだ圧縮空気供給システムにも適用できる圧縮空気供給システムの自動運転制御方法、特には、システム全体での寿命延長を図りつつ、運転効率を高めることが可能な圧縮空気供給システムの自動運転制御方法の開発が望まれている。
【0011】
しかし、特許文献1~4の技術についてはいずれも、吸入絞り弁付き空気圧縮機を組み込んだ圧縮空気供給システムへの適用は考慮されていない。また、これらの技術では、必ずしも空気圧縮機の十分な負荷平準化がなされず、システム全体での寿命延長が図れない場合があった。
【0012】
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたものであって、吸入絞り弁付き空気圧縮機を組み込んだ圧縮空気供給システムにおいて、システム全体での寿命延長を図りつつ、運転効率を高めることが可能な圧縮空気供給システムの自動運転制御方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、空気圧縮機の負荷平準化によって、システム全体での寿命延長を図ることが可能な圧縮空気供給システムの自動運転制御方法を提供することを目的とする。
なお、「ベース運転用空気圧縮機」とは、常時運転を想定した空気圧縮機である。
また、「台数制御用空気圧縮機」とは、負荷部における圧縮空気の使用量の変動に応じて、起動・停止を行うことを想定した空気圧縮機である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、以下の知見を得た。
(1)設置費用および(機器の交換費用を含む)メンテナンス費用などを考慮すると、圧縮空気供給システムにおける空気圧縮機を、1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、複数台の台数制御用空気圧縮機とから構成することが有利である。
また、特に、ベース運転用空気圧縮機に、吸入絞り弁付き空気圧縮機を採用することが有利である。
(2)吸入絞り弁付き空気圧縮機は、通常、最大負荷時が最高効率点となるよう設計されている。そのため、ベース運転用空気圧縮機に、吸入絞り弁付き空気圧縮機を採用した圧縮空気供給システムにおいて、システム全体の運転効率を高めるには、ベース運転用空気圧縮機(吸入絞り弁付き空気圧縮機)の最大負荷での運転時間を長時間化することが有効である。
そのため、負荷部における圧縮空気の使用量の変動によって、負荷部への圧縮空気の供給圧力(以下、単に供給圧力ともいう)が設定範囲外となる際、例えば、供給圧力が設定範囲未満となる際には、まず、吸入絞り弁(の開度調整)によりベース運転用空気圧縮機からの圧縮空気の供給量を調整し(増加させ)、ベース運転用空気圧縮機を最大負荷としても、供給圧力が設定範囲内に回復しない場合に、台数制御用空気圧縮機を順次起動するという制御を行うことが有利である。
また、供給圧力が設定範囲超となる際には、台数制御用空気圧縮機を順次停止し、それでも、供給圧力が設定範囲内に回復しない場合に、吸入絞り弁(の開度調整)によって、ベース運転用空気圧縮機からの圧縮空気の供給量を調整する(減少させる)という制御を行うことが有利である。
(3)台数制御用空気圧縮機の負荷平準化を図るには、台数制御用空気圧縮機の累積運転回数および累積運転時間に基づき、起動順位および停止順位を設定することが有効である。
また、空気圧縮機、および、空気圧縮機を駆動させるための電動モータにかかる負荷は、定常運転時よりも起動時の方が大きい。そのため、上記の起動順位および停止順位を設定するに際しては、累積運転回数を重視することが特に有利である。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
【0014】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.圧縮空気供給システムの自動運転制御方法であって、
前記圧縮空気供給システムは、
1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、
複数台の台数制御用空気圧縮機と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機と、前記ベース運転用空気圧縮機および/または前記台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気を使用する負荷部とを接続する、供給部と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機の運転状態を制御して、前記負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する、制御装置、
とをそなえ、
前記ベース運転用空気圧縮機が、吸入絞り弁を有し、
前記供給圧力が設定範囲未満となる際に、前記制御装置が、
(a)前記吸入絞り弁により、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
(b)前記台数制御用空気圧縮機を順次起動する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行う、
および/または、
前記供給圧力が設定範囲超となる際に、前記制御装置が、
(c)前記台数制御用空気圧縮機を順次停止する、
(d)前記吸入絞り弁により、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行う、
圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0015】
2.前記台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を、前記台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、設定する、前記1に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0016】
3.前記台数制御用空気圧縮機の起動順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、前記1または2に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0017】
4.前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の起動順位を累積運転時間の短い順番に設定する、前記3に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0018】
5.前記台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の多い順番に設定する、前記1~4のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0019】
6.前記台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、前記1~4のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0020】
7.前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の停止順位を累積運転時間の長い順番に設定する、前記5または6に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0021】
8.前記台数制御用空気圧縮機がいずれも、電動モータ駆動である、前記1~7のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0022】
9.圧縮空気供給システムの自動運転制御方法であって、
前記圧縮空気供給システムは、
1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、
複数台の台数制御用空気圧縮機と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用と、前記ベース運転用空気圧縮機および/または前記台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気を使用する負荷部とを接続する、供給部と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機の運転状態を制御して、前記負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する、制御装置、
とをそなえ、
前記台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を、前記台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、設定する、圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0023】
10.前記台数制御用空気圧縮機の起動順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、前記9に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0024】
11.前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の起動順位を累積運転時間の短い順番に設定する、前記10に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0025】
12.前記台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の多い順番に設定する、前記9~11のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0026】
13.前記台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の少ない順番に設定する、前記9~11のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0027】
14.前記台数制御用空気圧縮機において累積運転回数が同じものが複数ある場合、該累積運転回数が同じである台数制御用空気圧縮機の停止順位を累積運転時間の長い順番に設定する、前記12または13に記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【0028】
15.前記台数制御用空気圧縮機がいずれも、電動モータ駆動である、前記9~14のいずれかに記載の圧縮空気供給システムの自動運転制御方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、システム全体での寿命延長を図りつつ、運転効率を高めることが可能となるので、メンテナンス費用や機器の交換費用などを含めた運転コストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】圧縮空気供給システムの例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を、以下の実施形態に基づき説明する。
本発明の一実施形態は、圧縮空気供給システムの自動運転制御方法であって、
前記圧縮空気供給システムは、
1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、
複数台の台数制御用空気圧縮機と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機と、前記ベース運転用空気圧縮機および/または前記台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気を使用する負荷部とを接続する、供給部と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機の運転状態を制御して、前記負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する、制御装置、
とをそなえ、
前記ベース運転用空気圧縮機が、吸入絞り弁を有し、
前記供給圧力が設定範囲未満となる際に、前記制御装置が、
(a)前記吸入絞り弁によって、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
(b)前記台数制御用空気圧縮機を順次起動する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行う、
および/または、
前記供給圧力が設定範囲超となる際に、前記制御装置が、
(c)前記台数制御用空気圧縮機を順次停止する、
(d)前記吸入絞り弁によって、前記ベース運転用空気圧縮機から前記供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
という優先順位で、前記供給圧力を前記設定範囲内に回復させる制御を行う、というものである。
【0032】
上記の実施形態を、第1の実施形態として、
図1に示す圧縮空気供給システムに適用した場合を例として、説明する。
図中、符号1はベース運転用空気圧縮機、2は台数制御用空気圧縮機、3は供給部、4は負荷部、5は制御装置である。
【0033】
[第1の実施形態]
図1に示す圧縮空気供給システムは、並列に配置された5台のベース運転用空気圧縮機(1AB、2AB、3AB、4ABおよび5AB)と、並列に配置された5台の450kW ACの台数制御用空気圧縮機(1AC、2AC、3AC、4ACおよび5AC)とを有する。
この圧縮空気供給システムでは、設置費用および(機器の交換費用を含む)メンテナンス費用などの観点から、ベース運転用空気圧縮機には吸入絞り弁付き空気圧縮機を、台数制御用空気圧縮機には吸入絞り弁を有さない空気圧縮機(以下、吸入絞り弁なし空気圧縮機ともいう)をそれぞれ採用している。
【0034】
なお、ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機の型式は特に限定されず、例えば、軸流方式や遠心方式のターボ型、往復方式や回転方式の容積型のいずれの形式の空気圧縮機でも用いることができる。ただし、一般的な吸入絞り弁付き空気圧縮機の型式は、ターボ型である。
また、ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機の駆動方式も特に限定されず、例えば、電動モータ駆動などが挙げられる。
特に、台数制御用空気圧縮機の駆動方式については、全台、電動モータ駆動である場合に、本発明の効果がより大きく享受される。というのは、電動モータにより駆動される空気圧縮機では、起動時に電動モータに大きな電流が流れる。そのため、起動時におけるダメージは特に大きく、結果的に、後述する台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位の設定による負荷平準化の効果も、大きくなるからである。
【0035】
また、この圧縮空気供給システムでは、ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気が、供給部で集合され、その後、負荷部に供給される。
供給部は、配管などから構成され、ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機と、負荷部とを接続する。
【0036】
さらに、この圧縮空気供給システムは、ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機の運転状態を自動で制御して、負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する制御装置を有する。
制御装置は、例えば、ベース運転用空気圧縮機および/または台数制御用空気圧縮機の運転制御を行う制御回路と、ベース運転用空気圧縮機および/または台数制御用空気圧縮機の運転制御モードならびに圧縮空気の供給圧力の設定範囲を入力(設定)する制御盤と、負荷部への圧縮空気の供給圧力を検出する圧力センサと、を有する。
また、制御装置は、台数制御用空気圧縮機の累積運転回数および累積運転時間を記録および読み出しするカウンタを、さらに有していてもよい。
【0037】
なお、負荷部への圧縮空気の供給圧力の検出位置は、特に限定されず、例えば、
図1に示すように、集合管部(ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気の集合位置よりも下流側の位置)とすればよい。
【0038】
そして、第1の実施形態に係る圧縮空気供給システムの自動運転制御方法では、上記の制御装置によって、負荷部における圧縮空気の使用量の変動によって、供給圧力が設定範囲外となる際、例えば、供給圧力が設定範囲未満となる際には、吸入絞り弁(の開度調整)により、ベース運転用空気圧縮機からの圧縮空気の供給量を調整し(増加させ)、ベース運転用空気圧縮機を最大負荷としても、供給圧力が設定範囲内に回復しない場合に、台数制御用空気圧縮機を順次起動するという制御を、行うことが重要である。
【0039】
すなわち、発明者らが検討した結果、ベース運転用空気圧縮機に吸入絞り弁付き空気圧縮機を採用した圧縮空気供給システムにおいて、システム全体の運転効率を高めるには、ベース運転用空気圧縮機(吸入絞り弁付き空気圧縮機)の最大負荷での運転時間を極力長時間化することが有効であることがわかった。
【0040】
そのためには、供給圧力が設定範囲未満となる際に、制御装置により、
(a)吸入絞り弁によって、ベース運転用空気圧縮機から供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
(b)台数制御用空気圧縮機を順次起動する、
という優先順位で、供給圧力を設定範囲内に回復させる制御を行う、ことが重要である。
(なお、上記(a)により、供給圧力が設定範囲内に回復した場合には、上記(b)は省略する。また、ベース運転用空気圧縮機が全台最大負荷の時に供給圧力が設定範囲未満となる場合には、上記(a)は省略して、上記(b)を行う。)
同様の観点から、供給圧力が設定範囲超となる際には、台数制御用空気圧縮機を順次停止し、それでも、供給圧力が設定範囲内に回復しない場合に、吸入絞り弁(の開度調整)によって、ベース運転用空気圧縮機からの圧縮空気の供給量を調整する(減少させる)という制御を行う。
すなわち、供給圧力が設定範囲超となる際には、制御装置により、
(c)台数制御用空気圧縮機を順次停止する、
(d)吸入絞り弁によって、ベース運転用空気圧縮機から供給部への圧縮空気の供給量を調整する、
という優先順位で、供給圧力を設定範囲内に回復させる制御を行う、ことが重要である。
(なお、上記(c)により、供給圧力が設定範囲内に回復した場合には、上記(d)は省略する。また、台数制御用空気圧縮機が全台停止している時に供給圧力が設定範囲超となる場合には、上記(c)は省略して、上記(d)を行う。)
なお、運転回数は、台数制御用空気圧縮機の起動から停止までの一連の工程が終了した段階で、1回とカウントする。
【0041】
特に、台数制御用空気圧縮機が起動した状態で、圧縮空気の供給が過剰となった場合、上記の制御を行わないと、台数制御用空気圧縮機を運転させたまま、吸入絞り弁により、ベース運転用空気圧縮機からの圧縮空気の供給量を減少させることになる。すなわち、ベース運転用空気圧縮機を低効率点で運転させながら、台数制御用空気圧縮機の運転を継続するという、システム全体の運転効率が低い状態が維持される。
そのため、吸入絞り弁付き空気圧縮機を組み込んだ圧縮空気供給システムでは、上記の優先順位で出力調整を行うことが重要となる。
【0042】
また、
図1に示す圧縮空気供給システムにおいて、上記の制御を行ったところ、ベース運転用空気圧縮機(吸入絞り弁付き空気圧縮機)の最大負荷での運転時間が長時間化され、システム全体の運転効率が高くなることを確認した。また、台数制御用空気圧縮機の起動・停止回数も低減したので、システム全体の寿命延長も図られる。
【0043】
なお、圧縮空気の負荷部への供給圧力の設定範囲は、圧縮空気供給システムや負荷部の仕様に応じて、適宜、設定すればよい。例えば、
図1の圧縮空気供給システムでは、圧縮空気の負荷部への供給圧力の設定範囲を6.4±0.5kgf/cm
2-G(627.6±49.0kPa-G)としている。Gは、ゲージ圧を意味する。
【0044】
また、上記(b)における台数制御用空気圧縮機の起動順位、および/または、上記(c)における台数制御用空気圧縮機の停止順位については、台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、設定することが好適である。
特に、空気圧縮機(電動モータも含む)にかかる負荷は、定常運転時よりも起動時の方が大きい。そのため、上記の起動順位および停止順位を設定するに際しては、累積運転回数を優先することが好適である。
【0045】
例えば、上記(b)における台数制御用空気圧縮機の起動順位を、累積運転回数の少ない順番とし、さらに、累積運転回数が同じものについては、累積運転時間の短い順番とすることがより好適である。
また、上記(c)における台数制御用空気圧縮機の停止順位は、上記(b)における台数制御用空気圧縮機の起動順位と逆の順位、すなわち、累積運転回数の多い順番とし、そのうえで、累積運転回数が同じものについては、累積運転時間の長い順番に設定としてもよい(以下、停止順位の設定モード1ともいう)。
【0046】
ただし、停止順位の設定モード1の場合、例えば、台数制御用空気圧縮機が全台運転しているときに、(負荷部における圧縮空気の使用量が比較的多い範囲内で)負荷部における圧縮空気の使用量の増減が断続的に発生すると、累積運転回数の少ない台数制御用空気圧縮機は停止されずに連続運転される一方、累積運転回数の多い台数制御用空気圧縮機が、起動・停止を繰り返すことになる。
すなわち、台数制御用空気圧縮機が全台停止する前に、再度、負荷部における圧縮空気の使用量が増加すると、停止中の累積運転回数の多い台数制御用空気圧縮機を再度起動させることになって、結果的に、累積運転回数の多い台数制御用空気圧縮機の起動・停止回数が増加する。
よって、このような断続的な負荷部における圧縮空気の使用量の増減の発生が想定される場合には、台数制御用空気圧縮機の停止順位を、累積運転回数の少ない順番に設定することが、圧縮機の負荷平準化の観点からより好適である。この場合にも、台数制御用空気圧縮機の累積運転回数が同じものについては、累積運転時間の長い順番に設定することが好適である(以下、停止順位の設定モード2ともいう)。
なお、停止順位の設定モード1の際に上記した負荷部における圧縮空気の使用量の増減が断続的に発生する場合には、オペレータが手動介入して、累積運転回数の少ない台数制御用空気圧縮機を停止させることにより、累積運転回数の多い台数制御用空気圧縮機の連続的な起動・停止を回避することが可能である。
【0047】
例えば、表1の場合、累積運転回数が最も少ないNo.1 ACが、起動順位:1位となる。
次に、累積運転回数が少ないものは、No.3 ACおよびNo.4 ACとなる。この場合、累積運転時間の短いNo.4 ACが起動順位:2位となり、No.3 ACが起動順位:3位となる。
次に、累積運転回数が少ない順に、No.5 ACが起動順位:4位、No.2 ACが起動順位:5位となる。
停止順位については、停止順位の設定モード1の場合、No.2 AC、No.5 AC、No.3 AC、No.4 AC、No.1 ACの順となる。
また、停止順位の設定モード2の場合、No.1 AC、No.3 AC、No.4 AC、No.5 AC、No.2 ACの順となる。
なお、累積運転回数および累積運転時間の両方が同じとなる場合には、任意に、例えば、機器番号の若い順に、起動順位および停止順位を設定すればよい。
【0048】
【0049】
このようにして台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を設定することにより、自動で圧縮機負荷の平準化が図られる。
また、上記のようなベース運転用空気圧縮機の最大負荷での運転時間を長時間化する制御を行うと、台数制御用の空気圧縮機の起動・停止をより高い頻度で行う必要が生じる場合がある。
よって、このような場合には、台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を設定することが、圧縮機負荷の平準化、ひいてはシステム全体の寿命延長を図るうえで、重要となる。
【0050】
[第2の実施形態]
また、本発明の別の実施形態(以下、第2の実施形態ともいう)は、圧縮空気供給システムの自動運転制御方法であって、
前記圧縮空気供給システムは、
1台または複数台のベース運転用空気圧縮機と、
複数台の台数制御用空気圧縮機と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用と、前記ベース運転用空気圧縮機および/または前記台数制御用空気圧縮機で生成した圧縮空気を使用する負荷部とを接続する、供給部と、
前記ベース運転用空気圧縮機および前記台数制御用空気圧縮機の運転状態を制御して、前記負荷部への圧縮空気の供給圧力を調整する、制御装置、
とをそなえ、
前記台数制御用空気圧縮機の起動順位および停止順位を、前記台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づき、設定する、というものである。
【0051】
第2の実施形態では、基本的に、ベース運転用空気圧縮機および台数制御用空気圧縮機とも、吸入絞り弁なしの空気圧縮機により構成される。そのため、負荷部への圧縮空気の供給圧力の調整は、台数制御用空気圧縮機の起動・停止のみで行うことになる。
よって、第2の実施形態では、台数制御用空気圧縮機における累積運転回数および累積運転時間に基づいて設定し、空気圧縮機の負荷の平準化を図ることが重要となる。
【0052】
また、上述したように、空気圧縮機(電動モータも含む)にかかる負荷は、定常運転時よりも起動時の方が大きい。そのため、台数制御用空気圧縮機における起動順位および停止順位を設定するに際しては、やはり累積運転回数を重視することが重要となる。
【0053】
また、台数制御用空気圧縮機の起動順位については、上記した第1の実施形態と同様、累積運転回数の少ない順番とし、そのうえで、累積運転回数が同じものについては、累積運転時間の短い順番とすることが好適である。
さらに、台数制御用空気圧縮機の停止順位についても、上記した第1の実施形態と同様、停止順位の設定モード1または停止順位の設定モード2とすることが好適である。
【0054】
また、実際のシステムにおいても、台数制御用空気圧縮機の起動順位を上記のように設定し、かつ、停止順位を、停止順位の設定モード1または2により設定することで、台数制御用空気圧縮機の起動・停止回数が平準化され、それに伴い、圧縮機の負荷平準化、ひいては、システム全体としての寿命延長に有効に寄与することを確認した。
特に、停止順位を停止順位の設定モード2により設定した場合には、より有効に台数制御用空気圧縮機の起動・停止回数が平準化され、圧縮機の負荷平準化、ひいては、システム全体としての寿命延長により有効に寄与することを確認した。
【0055】
なお、上記以外の構成は、基本的に、第1の実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0056】
1:ベース運転用空気圧縮機
2:台数制御用空気圧縮機
3:供給部
4:負荷部
5:制御装置