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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】導電層付きフィルムおよびタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
G06F3/041 495
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019509681
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011518
(87)【国際公開番号】W WO2018180926
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2017065227
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上岡 耕司
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昭典
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅仁
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-110769(JP,A)
【文献】特開2016-072246(JP,A)
【文献】特開2013-196997(JP,A)
【文献】特開2013-028695(JP,A)
【文献】特開2015-021022(JP,A)
【文献】特開2013-101759(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158825(WO,A1)
【文献】特開2005-330421(JP,A)
【文献】特開2006-001968(JP,A)
【文献】特開2013-174643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)式で定義されるイミド基濃度が20.0%以上36.5%以下であるポリイミドを含む樹脂膜上に、導電性粒子を含有する導電層を有する導電層付きフィルムであって、
前記樹脂膜と前記導電層との間にガスバリア層を有する、
ことを特徴とする導電層付きフィルム。
(イミド基部分の分子量)/(ポリイミドの繰返し単位の分子量)×100[%]・・・(I)
【請求項2】
前記樹脂膜のガラス転移温度は250℃以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の導電層付きフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドは、下記一般式(1)で表される構造単位を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の導電層付きフィルム。
【化1】
(一般式(1)において、Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の4価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の4価の有機基を示す。Rは、炭素数4~40の2価の有機基を示す。)
【請求項4】
前記ポリイミドは、下記一般式(2)で表される構造単位を含む、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【化2】
(一般式(2)において、Rは、炭素数4~40の4価の有機基を示す。Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の2価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の2価の有機基、または、下記一般式(3)で表される2価の有機基を示す。)
【化3】
(一般式(3)において、Xは、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~3の2価の炭化水素基である。ArおよびArは、各々独立に、炭素数4~40の2価の芳香族基を示す。)
【請求項5】
前記ポリイミドは、下記一般式(4)で表される構造単位を主成分とし、かつ、下記一般式(5)で表される構造単位を全構造単位の5mol%以上30mol%以下含む、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【化4】
(一般式(4)、(5)において、Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の4価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の4価の有機基を示す。R13は、下記一般式(6)で表される2価の有機基を示す。R14は、下記構造式(7)または下記構造式(8)で表される構造である。)
【化5】
(一般式(6)において、R15~R22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の1価の有機基を示す。Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の2価の有機基、エステル結合、アミド結合、およびスルフィド結合の中から選ばれる構造である。)
【化6】
【請求項6】
前記ポリイミドは、前記ポリイミドを構成する酸二無水物残基およびジアミン残基のうち少なくとも一つの中に、下記一般式(9)で表される繰り返し構造を含有する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【化7】
(一般式(9)において、R23およびR24は、各々独立に、炭素数1~20の1価の有機基を示す。mは、3~200の整数である。)
【請求項7】
前記ポリイミドはトリアミン骨格を含む、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【請求項8】
前記ガスバリア層は、珪素酸化物、珪素窒化物、珪素酸窒化物および珪素炭窒化物のうち少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア層は、SiOxNy(x、yは、0<x≦1、0.55≦y≦1および0≦x/y≦1を満たす値である。)で表される成分を含む、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【請求項10】
前記ガスバリア層は、2層以上に積層された無機膜であり、
前記無機膜のうち前記導電層と接する層は、SiOz(zは、0.5≦z≦2を満たす値である。)で表される成分で形成される、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【請求項11】
前記導電性粒子は銀粒子である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【請求項12】
前記導電層上に、下記構造式(10)で表される構造を2つ以上有するカルド系樹脂を含むアルカリ可溶性樹脂から形成される絶縁層を有する、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載の導電層付きフィルム。
【化8】
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載の導電層付きフィルムを有し、
前記導電層は配線層である、
ことを特徴とするタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層付きフィルム、タッチパネル、導電層付きフィルムの製造方法およびタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイルやタブレット等の機器において、デザイン性や利便性、耐久性の観点から、フレキシブル化が嘱望されている。しかしながら、機器のフレキシブル化には種々の課題があり、まだ実用には到っていない。
【0003】
その中でも、主たる課題は、機器に用いられる導電層付きフィルムの曲げ耐性、視認性および導電性の向上である。従来、導電層付きフィルムとしては、視認性向上の観点から、ITO等の透明導電金属からなる薄膜が広く用いられてきた。例えば、特許文献1、2には、耐熱性に優れたポリイミドフィルム上に、ITOからなる薄膜を形成した透明導電性フィルムが開示されている。その薄膜をエッチングによりパターン加工することで、視認性と導電性とに優れた導電層付きフィルムを得ることができる。しかしながら、ITO配線は、剛直で脆いため、曲げ耐性が低く、曲げるとクラックが発生するという課題があった。
【0004】
そのため、ITOに替わる透明導電層として、金属メッシュ配線、金属ナノワイヤー配線、カーボンナノチューブ配線といった、種々の配線技術が提案されてきた。中でも、曲げ耐性、視認性、高導電性を兼ね備える透明導電層として、金属メッシュ配線が注目を浴びている。
【0005】
金属メッシュ配線は、視認できない程度に細い金属配線をメッシュパターンに形成することにより得られる。例えば、金、銀、銅等の、電気抵抗値の小さい金属を用いることにより、導電性の良好な配線を得ることができる。さらに、フォトリソグラフィーによるパターン加工が可能で、かつ柔軟性に優れた有機成分を、配線中に適量含有させることにより、配線の曲げ耐性を向上させることができる。このような金属メッシュ配線は、フレキシブル化にも十分対応できる。
【0006】
このような金属メッシュ配線の形成方法としては、例えば、導電性の金属粒子(以下、導電性粒子と適宜いう)と有機成分とからなる導電ペーストを用い、スクリーン印刷、インクジェット、フォトリソグラフィー等によりパターニングする方法が挙げられる。しかしながら、視認できないほどの微細パターンを形成するためには、導電性粒子の粒径をナノサイズまで小さくする必要がある。そのような導電性粒子は、室温でも融着して凝集しやすいという問題があった。また、導電性粒子の表面が有機成分と反応して、導電ペーストの保存安定性が低下するという問題があった。さらに、フォトリソグラフィーを用いてパターン加工する場合、導電性粒子は光反射性を有しており、これが露光光を散乱させることから、微細パターンを形成することが困難であるという問題があった。
【0007】
これに対し、被覆層を有する導電性粒子を用いて、上記の問題を解決する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。被覆層によって導電性粒子の表面活性を低下させて、導電性粒子同士の反応および導電性粒子同士と有機成分との反応のうち少なくとも一方を抑制することができる。また、フォトリソグラフィーを用いた場合でも、露光光の散乱を抑制し、配線を高精度にパターン加工することができる。被覆された導電性粒子は、200℃程度の高温で加熱することにより、被覆層を容易に除去することができる。そのため、配線に十分な導電性を発現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-186936号公報
【文献】特許第5773090号公報
【文献】特開2013-196997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に開示された技術は、導電性粒子の被覆層を除去するために、酸素の存在下で200℃程度の加熱が必要であった。そのため、基板には高い耐熱性および耐酸化性が要求され、実質的に、ガラス基板しか適用できなかった。当然のことながら、ガラス基板を用いてフレキシブル化に対応することは困難である。さらに、耐熱性に優れたフィルムを用いた場合であっても、酸素の存在下での加熱によるフィルムの着色により色目が低下するという問題や、フィルムの寸法精度が低下して位置ずれが発生し、モアレと呼ばれる外観不良が発生するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、導電層形成時の黄変を抑制し、かつ導電層の寸法精度に優れた導電層付きフィルム、タッチパネル、導電層付きフィルムの製造方法およびタッチパネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、イミド基濃度が特定の範囲であるポリイミドを含む樹脂膜(ポリイミド樹脂膜)と、導電層との間に、ガスバリア層を有する構成とすることで、導電層の加熱時にポリイミド樹脂膜が酸素と接触することを防ぎ、ポリイミド樹脂膜の色目および寸法精度の低下を抑制できることを見出した。
【0012】
すなわち、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る導電層付きフィルムは、下記(I)式で定義されるイミド基濃度が20.0%以上36.5%以下であるポリイミドを含む樹脂膜上に、導電性粒子を含有する導電層を有する導電層付きフィルムであって、前記樹脂膜と前記導電層との間にガスバリア層を有する、ことを特徴とする。

(イミド基部分の分子量)/(ポリイミドの繰返し単位の分子量)×100[%]
・・・(I)
【0013】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記樹脂膜のガラス転移温度は250℃以上である、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ポリイミドは、下記一般式(1)で表される構造単位を含む、ことを特徴とする。
【0015】
【化1】
(一般式(1)において、Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の4価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の4価の有機基を示す。Rは、炭素数4~40の2価の有機基を示す。)
【0016】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ポリイミドは、下記一般式(2)で表される構造単位を含む、ことを特徴とする。
【0017】
【化2】
(一般式(2)において、Rは、炭素数4~40の4価の有機基を示す。Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の2価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の2価の有機基、または、下記一般式(3)で表される2価の有機基を示す。)
【0018】
【化3】
(一般式(3)において、Xは、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~3の2価の炭化水素基である。ArおよびArは、各々独立に、炭素数4~40の2価の芳香族基を示す。)
【0019】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ポリイミドは、下記一般式(4)で表される構造単位を主成分とし、かつ、下記一般式(5)で表される構造単位を全構造単位の5mol%以上30mol%以下含む、ことを特徴とする。
【0020】
【化4】
(一般式(4)、(5)において、Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の4価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の4価の有機基を示す。R13は、下記一般式(6)で表される2価の有機基を示す。R14は、下記構造式(7)または下記構造式(8)で表される構造である。)
【0021】
【化5】
(一般式(6)において、R15~R22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の1価の有機基を示す。Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の2価の有機基、エステル結合、アミド結合、およびスルフィド結合の中から選ばれる構造である。)
【0022】
【化6】
【0023】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ポリイミドは、前記ポリイミドを構成する酸二無水物残基およびジアミン残基のうち少なくとも一つの中に、下記一般式(9)で表される繰り返し構造を含有する、ことを特徴とする。
【0024】
【化7】
(一般式(9)において、R23およびR24は、各々独立に、炭素数1~20の1価の有機基を示す。mは、3~200の整数である。)
【0025】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ポリイミドはトリアミン骨格を含む、ことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ガスバリア層は、珪素酸化物、珪素窒化物、珪素酸窒化物および珪素炭窒化物のうち少なくとも一つを含む、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ガスバリア層は、SiOxNy(x、yは、0<x≦1、0.55≦y≦1および0≦x/y≦1を満たす値である。)で表される成分を含む、ことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記ガスバリア層は、2層以上に積層された無機膜であり、前記無機膜のうち前記導電層と接する層は、SiOz(zは、0.5≦z≦2を満たす値である。)で表される成分で形成される、ことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記導電性粒子は銀粒子である、ことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る導電層付きフィルムは、上記の発明において、前記導電層上に、下記構造式(10)で表される構造を2つ以上有するカルド系樹脂を含むアルカリ可溶性樹脂から形成される絶縁層を有する、ことを特徴とする。
【0031】
【化8】
【0032】
また、本発明に係るタッチパネルは、上記の発明のいずれか一つに記載の導電層付きフィルムを有し、前記導電層は配線層である、ことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る導電層付きフィルムの製造方法は、支持基板上に、ポリイミドを含む樹脂膜を形成する樹脂膜形成工程と、前記樹脂膜の上にガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、前記ガスバリア層の上に導電層を形成する導電層形成工程と、前記支持基板から前記樹脂膜を剥離する剥離工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る導電層付きフィルムの製造方法は、上記の発明において、前記導電層形成工程は、表面の少なくとも一部に被覆層を有する導電性粒子を含有する導電性組成物を用いて前記導電層を形成する、ことを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る導電層付きフィルムの製造方法は、上記の発明において、前記樹脂膜形成工程は、前記支持基板上のポリイミド樹脂組成物を、酸素濃度が1000ppm以下である雰囲気下において300℃以上500℃以下の温度で加熱して、前記樹脂膜を形成し、前記導電層形成工程は、前記ガスバリア層上の導電性組成物を、酸素濃度が15%以上である雰囲気下において100℃以上300℃以下の温度で加熱して、前記導電層を形成する、ことを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係るタッチパネルの製造方法は、上記の発明のいずれか一つに記載の導電層付きフィルムの製造方法を用いたタッチパネルの製造方法であって、前記導電層形成工程は、前記導電層として配線層を形成する工程である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、導電層形成時の黄変を抑制し、かつ導電層の寸法精度に優れた導電層付きフィルム、タッチパネル、導電層付きフィルムの製造方法およびタッチパネルの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムの一構成例を示す模式断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの一構成例を示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの一構成例を示す模式断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る導電層付きフィルム、タッチパネル、導電層付きフィルムの製造方法およびタッチパネルの製造方法について、好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0040】
<導電層付きフィルム>
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、ポリイミドを含む樹脂膜上に、導電性粒子を含有する導電層を有する導電層付きフィルムであって、これらの樹脂膜と導電層との間にガスバリア層を有する。本実施の形態において、この樹脂膜は、下記(I)式で定義されるイミド基濃度が20.0%以上36.5%以下であるポリイミドを含むものとなっている。
(イミド基部分の分子量)/(ポリイミドの繰返し単位の分子量)×100[%]
・・・(I)
【0041】
図1は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムの一構成例を示す模式断面図である。図1に示すように、この導電層付きフィルム11は、樹脂膜1と、ガスバリア層2と、導電層3Aとを備える。樹脂膜1は、上述したように、(I)式で定義されるイミド基濃度が20.0%以上36.5%以下となっているポリイミドを含むポリイミド樹脂膜である。ガスバリア層2は、樹脂膜1の上に形成される。導電層3Aは、導電性粒子を含有する導電性の層であり、ガスバリア層2の上に形成される。
【0042】
このような構成を有する導電層付きフィルム11において、ガスバリア層2は、図1に示すように、樹脂膜1と導電層3Aとの間に介在している。これにより、ガスバリア層2は、導電層3Aを加熱形成する際の酸素が樹脂膜1と接触することを防止することができる。この結果、酸素存在下での加熱による樹脂膜1の色目の低下(例えば黄変による色目の低下)が抑制される。特に図1には図示しないが、導電層付きフィルム11は、導電層3Aの上に、絶縁層をさらに備えていてもよい。
【0043】
図2は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの一構成例を示す平面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの一構成例を示す模式断面図である。図3には、図2における破線I-I’でのタッチパネル10の断面図が図示されている。このタッチパネル10は、本実施の形態に係る導電層付きフィルム11を含むタッチパネルである。図2、3に示すように、タッチパネル10は、樹脂膜1と、ガスバリア層2と、第一の配線層3と、第一の絶縁層4と、第二の配線層5と、第二の絶縁層6とを備える。
【0044】
樹脂膜1およびガスバリア層2は、図1に示した導電層付きフィルム11と同様のものである。第一の配線層3は、導電層付きフィルム11の導電層3Aの一適用例である。すなわち、タッチパネル10は、導電層付きフィルム11として、樹脂膜1と、ガスバリア層2と、第一の配線層3とを含んでいる。
【0045】
図2、3に示すように、第一の配線層3は、樹脂膜1上のガスバリア層2の上に、所望の配線パターンをなすように形成される。第一の絶縁層4は、第一の配線層3のうちの電極部分以外を覆うように、第一の配線層3およびガスバリア層2の上に形成される。第二の配線層5は、第一の配線層3とは異なる配線層であり、第一の絶縁層4およびガスバリア層2の上に、所望の配線パターンをなすように形成される。タッチパネル10において、第一の配線層3と第二の配線層5とは、第一の絶縁層4によって絶縁されている。第二の絶縁層6は、第二の配線層5のうちの電極部分以外を覆うように、第二の配線層5および第一の絶縁層4の上に形成される。
【0046】
(樹脂膜(ポリイミド樹脂膜))
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムに用いられる樹脂膜(例えば図1に示す樹脂膜1)は、上述した(I)式で定義されるイミド基濃度が20.0%以上36.5%以下であるポリイミドを含む。
【0047】
ポリイミドは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるので、各モノマー(ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物)の分子量が大きくなると、得られるポリイミドのイミド基濃度は小さくなる。イミド基濃度が20.0%よりも低くなると、イミド基によるポリイミド分子間の相互作用が弱くなり、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)が低下する。導電層付きフィルムにおいて、基板となる樹脂膜(ポリイミド樹脂膜)のガラス転移温度が低いと、ガスバリア層および導電層の形成時に加えられる熱に、この樹脂膜が耐えられない。この結果、導電層付きフィルムの十分な寸法精度(例えば導電層の寸法精度)が得られない。また、イミド基濃度が36.5%よりも大きくなると、イミド基によるポリイミド分子間の相互作用が強くなりすぎるため、樹脂膜中においてポリイミド分子が結晶化する。この結果、導電層付きフィルムの視認性が悪化する。
【0048】
本発明では、イミド基濃度を20.0%以上36.5%以下の範囲内の濃度とすることで、耐熱性と透明性とのバランスの取れたポリイミド樹脂(導電層付きフィルムの樹脂膜を構成するポリイミド)を得ることができる。イミド基濃度は、以下の方法で計算して求まる値である。
【0049】
イミド基部分の分子量は、ポリイミドの繰り返し単位に含まれる、(-CO-N-CO-)部分の分子量である。イミド基1つあたりの分子量は、70.03である。また、ポリイミドの繰返し単位の分子量は、1つの繰り返し単位を構成するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンに由来する部分の分子量である。これらのことから、上述した(I)式に基づいてイミド基濃度を算出することができる。ポリイミド中に繰り返し単位が複数存在する場合は、それぞれの繰り返し単位のイミド基濃度を求めた後、各繰り返し単位の含有割合を掛けたもの同士を足し合わせた値を、ポリイミドのイミド基濃度とする。
【0050】
例えば、下記の構造式(A)で表されるポリイミドの場合、イミド基部分の分子量は、点線で囲んだ箇所の分子量である。この場合、イミド基部分の分子量は、140.06(=70.03×2)となる。また、繰り返し単位の分子量は、372.11となる。したがって、イミド基濃度は、上述した(I)式に基づいて、37.8%(=(140.06/372.11)×100)となる。
【0051】
【化9】
【0052】
また、複数の繰り返し単位が存在する、下記の構造式(B)で表されるポリイミドの場合、繰り返し単位G1のイミド基濃度は、上述した(I)式に基づいて、37.8%(=(140.06)/(372.11)×100)である。繰り返し単位G2のイミド基濃度は、上述した(I)式に基づいて、23.4%(=(140.06)/(598.66)×100)である。また、繰り返し単位G1の含有数mと繰り返し単位G2の含有数nとは、m:n=90:10の関係にある。したがって、ポリイミドのイミド基濃度は、36.4%(=37.8%×0.90+23.4%×0.10)となる。
【0053】
【化10】
【0054】
本発明において、ポリイミドを含む樹脂膜のガラス転移温度(Tg)は、250℃以上であることが好ましい。何故ならば、樹脂膜の上にガスバリア層や導電層を形成する時の加熱工程で、この樹脂膜の変形が抑えられ、この結果、導電層の加工時の寸法精度がより向上するからである。ポリイミドを含む樹脂膜のガラス転移温度は、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが特に好ましい。
【0055】
樹脂膜のガラス転移温度の測定方法としては、熱機械分析装置を用いた測定法(TMA法)が挙げられる。本発明においては、膜厚が10μm~20μmであり、幅が15mmであり、長さが30mmである樹脂膜小片を長さ方向に巻いて、直径が3mmであり、高さが15mmである円筒状のサンプルにし、このサンプルを、窒素気流下、圧縮モードで昇温レート5℃/minで加熱したときのTMA曲線の変曲点を樹脂膜のガラス転移温度とする。
【0056】
本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、下記一般式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0057】
【化11】
【0058】
一般式(1)において、Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の4価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の4価の有機基を示す。Rは、炭素数4~40の2価の有機基を示す。
【0059】
ポリイミドが一般式(1)で表される構造単位を含むことにより、ポリイミドの熱膨張係数(CTE)が低くなる。そのため、ポリイミドを、導電層形成等のプロセスのために支持基板上に製膜した際、ポリイミドの反りが小さくなり、導電層の加工において寸法精度を向上させることができる。
【0060】
一般式(1)におけるRは、酸成分の構造を表す。Rにおける脂環構造は、一部の水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。脂環構造を有する酸二無水物としては、特に限定されないが、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘプタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4.3.0]ノナン-2,4,7,9-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4.4.0]デカン-2,4,7,9-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4.4.0]デカン-2,4,8,10-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.3.0.0<2,6>]ウンデカン-3,5,9,11-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-カルボキシメチル-2,3,6-トリカルボン酸二無水物、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、オクタヒドロナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、テトラデカヒドロアントラセン-1,2,8,9-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボンサン無水物、“リカシッド”(登録商標)BT-100(以上、商品名、新日本理化社製)、およびこれらの誘導体等が例示される。
【0061】
一般式(1)におけるRは、下記の構造式(11)~(16)で表される6つの構造の中から選ばれた1種類以上であることが好ましい。
【0062】
【化12】
【0063】
これら6つの構造のうち、市販されており手に入れやすいという観点およびジアミン化合物との反応性の観点から、Rは、下記の構造式(17)~(19)で表される構造であることがより好ましい。Rにこれらのような構造を与える酸二無水物としては、例えば、1S,2S,4R,5R-シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物(例えば、和光純薬工業社製、製品名「PMDA-HH」)、1R,2S,4S,5R-シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物(例えば、和光純薬工業社製、製品名「PMDA-HS」)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、これらの酸二無水物は、単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
【化13】
【0065】
一般式(1)において、Rは、ジアミン成分の構造を表す。Rに用いられるジアミン化合物としては、特に限定されないが、芳香族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、または脂肪族ジアミン化合物が挙げられる。
【0066】
芳香族ジアミン化合物としては、特に限定されないが、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス{4-(4-アミノフェノキシフェニル)}スルホン、ビス{4-(3-アミノフェノキシフェニル)}スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3-アミノフェニル-4-アミノベンゼンスルホナート、4-アミノフェニル-4-アミノベンゼンスルホナート、あるいはこれらの化合物の芳香族環の一部をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジアミン化合物が挙げられる。
【0067】
脂環式ジアミン化合物としては、特に限定されないが、シクロブタンジアミン、イソホロンジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビスメチルアミン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1,3-ジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-(3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビシクロへキサン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビシクロへキサン、あるいはこれらの化合物の脂肪族環の一部をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジアミン化合物が挙げられる。
【0068】
脂肪族ジアミン化合物としては、特に限定されないが、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン等のアルキレンジアミン類、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミン類、および1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等のシロキサンジアミン類が挙げられる。
【0069】
これらの芳香族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、および脂肪族ジアミン化合物は、単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
また、本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、下記一般式(2)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0071】
【化14】
【0072】
一般式(2)において、Rは、炭素数4~40の4価の有機基を示す。Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の2価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の2価の有機基、または、下記一般式(3)で表される2価の有機基を示す。
【0073】
【化15】
【0074】
一般式(3)において、Xは、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~3の2価の炭化水素基である。ArおよびArは、各々独立に、炭素数4~40の2価の芳香族基を示す。
【0075】
ポリイミドが一般式(2)で表される構造単位を含むことにより、ポリイミドの熱膨張係数が低くなる。そのため、ポリイミドを、導電層形成等のプロセスのために支持基板上に製膜した際、ポリイミドの反りが小さくなり、導電層の加工において寸法精度を向上させることができる。
【0076】
一般式(2)におけるRは、酸成分の構造を表す。Rに用いられる酸二無水物としては、特に限定されないが、前述の脂環構造を有する酸二無水物の他に、芳香族酸二無水物および脂肪族酸二無水物が挙げられる。
【0077】
芳香族酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシフタル酸二無水物、2,3,3’,4’-オキシフタル酸二無水物、2,3,2’,3’-オキシフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンズフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,6-ジフルオロプロメリット酸二無水物、1-トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,6-ジトリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、4,4’-((9H-フルオレニル)ビス(4,1-フェニレンオキシカルボニル))ジフタル酸二無水物、“リカシッド”(登録商標)TMEG-100(商品名、新日本理化社製)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0078】
脂肪族酸二無水物としては、特に限定されないが、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0079】
一般式(2)において、Rは、ジアミン成分の構造を表す。Rに用いられるジアミン化合物、すなわち、脂環構造を有するジアミン化合物としては、特に限定されないが、シクロブタンジアミン、イソホロンジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビスメチルアミン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1,3-ジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-(3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビシクロへキサン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビシクロへキサン、あるいはこれらの化合物の脂肪族環の一部をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジアミン化合物が挙げられる。
【0080】
一般式(3)で表される構造を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0081】
本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、下記一般式(4)で表される構造単位を主成分とし、かつ、下記一般式(5)で表される構造単位を当該ポリイミドの全構造単位の5mol%以上30mol%以下含むことが好ましい。
【0082】
【化16】
【0083】
一般式(4)、(5)において、Rは、単環式もしくは縮合多環式の脂環構造を有する、炭素数4~40の4価の有機基、または、単環式の脂環構造を有する有機基が直接もしくは架橋構造を介して相互に連結された、炭素数4~40の4価の有機基を示す。R13は、下記一般式(6)で表される2価の有機基を示す。R14は、下記の構造式(7)または下記の構造式(8)で表される構造である。
【0084】
【化17】
【0085】
一般式(6)において、R15~R22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の1価の有機基を示す。Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の2価の有機基、エステル結合、アミド結合、およびスルフィド結合の中から選ばれる構造である。
【0086】
【化18】
【0087】
なお、構造式(8)中のオキサゾール環は、構造式(7)で表される構造から脱水閉環して生成される。
【0088】
ここで、「一般式(4)で表される構造単位を主成分とする」とは、一般式(4)で表される構造単位を、ポリイミドの全構造単位の合計量のうち、50mol%以上有することを意味する。ポリイミドが、一般式(4)で表される構造単位を主成分とすることにより、ポリイミドの熱膨張係数が低くなる。そのため、ポリイミドを、導電層形成等のプロセスのために支持基板上に製膜した際、ポリイミドの反りが小さくなり、導電層の加工において寸法精度を向上させることができる。
【0089】
なお、ポリイミドの全構造単位の合計量とは、具体的には、一般式(4)および一般式(5)で表される構造単位の合計量(mol基準)である。ポリイミドが一般式(4)および一般式(5)で表される構造単位以外の構造を含む場合は、上記合計量とは、一般式(4)および一般式(5)で表される構造単位と、一般式(4)および一般式(5)で表される構造単位以外の構造との合計量(mol基準)である。
【0090】
本発明において、一般式(4)で表される構造単位の含有量は、ポリイミドの全構造単位の70mol%以上であることがさらに好ましい。
【0091】
また、ポリイミドが、一般式(5)で表される構造単位を、全構造単位の5mol%以上30mol%以下含むことによって、樹脂膜の透明性を向上させつつポリイミドの熱膨張係数を低く保つことができる。これにより、導電層のパターン加工性を保ちつつ、導電層付きフィルム(延いては、これを含むタッチパネル)の色目を改善することができる。ポリイミド中の一般式(5)で表される構造単位(繰り返し構造単位)の含有量は、ポリイミドの全構造単位の10mol%以上25mol%以下であることが、さらに好ましい。
【0092】
一般式(4)および一般式(5)におけるRは、一般式(1)におけるRと同じであり、脂環構造を有する酸成分の構造を表す。Rの好ましい具体例は、上記の通りである。一般式(4)中のR13および一般式(5)中のR14は、ジアミン成分の構造を表す。
【0093】
13に一般式(6)で表される構造を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’,3,3’-テトラメチルベンジジン、4,4-ジアミノベンズアニリド、4-アミノ安息香酸-4-アミノフェニル、3,4-ジアミノベンズアニリド、4,4-ジアミノベンゾフェノン、3,3-ジアミノベンゾフェノン、あるいはこれらの化合物の芳香族環の一部をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジアミン化合物が挙げられる。
【0094】
13は、入手のし易さ、透明性、ポリイミドの熱膨張係数の低減の観点から、例えば、下記の構造式(20)~(23)で表される4つの構造の中から選ばれる1種類以上であることが好ましい。
【0095】
【化19】
【0096】
本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、本発明の効果を妨げない範囲で、他の構造単位を含んでもよい。他の構造単位としては、ポリアミド酸の脱水閉環体であるポリイミド、ポリヒドロキシアミドの脱水閉環体ポリベンゾオキサゾール等が挙げられる。他の構造単位に用いられる酸二無水物としては、前述の芳香族酸二無水物または脂肪族酸二無水物が挙げられる。
【0097】
また、本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、このポリイミドを構成する酸二無水物残基およびジアミン残基のうち少なくとも一つの中に、下記一般式(9)で表される繰り返し構造を含有することが好ましい。
【0098】
【化20】
【0099】
一般式(9)において、R23およびR24は、各々独立に、炭素数1~20の1価の有機基を示す。mは、3~200の整数である。
【0100】
ポリイミドが、酸二無水物残基およびジアミン残基のうち少なくとも一つの中に、一般式(9)で表される構造を含むことにより、このポリイミドを導電層形成等のプロセスのために支持基板上に製膜した際、ポリイミド樹脂膜の残留応力が低減される。そのため、ポリイミドの反りが小さくなり、導電層の加工において寸法精度を向上させることができる。
【0101】
ところで、導電層付きフィルムにおいては、フィルム上に静電気が発生し静電気放電(ESD)による断線が生じるという問題がある。これに対し、一般式(9)で表される構造を含むポリイミドは誘電率が低いため、このようなポリイミドを含む樹脂膜を備えた導電層付きフィルムでは、これを用いたタッチパネル等のデバイス中に電荷が蓄積しづらく、ESD耐性が高くなる。したがって、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、上述したように一般式(9)で表される繰り返し構造を含むことが好ましい。
【0102】
一般式(9)中のR23およびR24によって示される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の1価の炭化水素基、炭素数1~20の1価のアミノアルキル基、アルコキシ基、エポキシ基等を挙げることができる。
【0103】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。炭素数1~20のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。炭素数3~20のシクロアルキル基としては、炭素数3~10のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数6~20のアリール基としては、炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0104】
炭素数1~20の1価のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0105】
23およびR24は、これらの中でも、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、または炭素数6~10の芳香族基であることが好ましい。何故ならば、得られるポリイミド樹脂膜の耐熱性がより高く、残留応力がより低いからである。ここで、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基は、特に好ましくはメチル基である。炭素数6~10の芳香族基は、特に好ましくはフェニル基である。
【0106】
一般式(9)中のmは、好ましくは10~200の整数であり、より好ましくは20~150の整数であり、さらに好ましくは30~100の整数であり、特に好ましくは35~80の整数である。mが3以上である場合、ポリイミド樹脂膜の残留応力が低減されやすい。mが200以下である場合、ポリイミドを得るための組成物である、ポリイミド前駆体と溶媒とからなるワニスの白濁を抑制できる。
【0107】
一般式(9)で表される繰り返し構造を含む酸二無水物の具体例としては、特に限定されないが、X22-168AS(信越化学社製、数平均分子量1,000)、X22-168A(信越化学社製、数平均分子量2,000)、X22-168B(信越化学社製、数平均分子量3,200)、X22-168-P5-8(信越化学社製、数平均分子量4,200)、DMS-Z21(ゲレスト社製、数平均分子量600~800)等が挙げられる。
【0108】
一般式(9)で表される繰り返し構造を含むジアミンの具体例としては、特に限定されないが、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学社製;X22-1660B-3(数平均分子量4,400)、X22-9409(数平均分子量1,300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製;X22-161A(数平均分子量1,600)、X22-161B(数平均分子量3,000)、KF8012(数平均分子量4,400)、東レダウコーニング社製;BY16-835U(数平均分子量900)、チッソ社製;サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙げられる。
【0109】
また、本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドは、トリアミン骨格を含むことが好ましい。ポリイミドがトリアミン骨格を含むことにより、このポリイミドの強靭性を向上させ、後工程の収率を向上させることができる。
【0110】
トリアミン化合物の具体例には、脂肪族基を有さないものとして、2,4,4’-トリアミノジフェニルエーテル(TAPE)、1,3,5―トリス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TAPOB)、トリス(4-アミノフェニル)アミン、1,3,5―トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,4,4’―トリアミノジフェニルエーテル等を挙げることができる。また、トリアミン化合物の具体例には、脂肪族を有するものとして、トリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)、トリス(3-アミノプロピル)アミン等を挙げることができる。これらの中でも、特に耐熱性向上の観点から、2,4,4’-トリアミノジフェニルエーテル、1,3,5―トリス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることが好ましい。
【0111】
本発明の導電層付きフィルムに用いられる樹脂膜の厚みは、導電層付きフィルムの強靭性(延いてはタッチパネルの強靱性)を向上させるという観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。一方、導電層付きフィルムの透明性をより向上させるという観点から、樹脂膜の厚みは、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0112】
本発明の導電層付きフィルムに用いられる樹脂膜の波長450nmにおける透過率は、タッチパネルの画質を向上させるという観点から、85%以上であることが好ましい。また、150~350℃で熱処理した後の樹脂膜の波長450nmにおける透過率は、80%以上であることが好ましい。
【0113】
本発明の導電層付きフィルムに用いられる樹脂膜は、上記ポリイミドまたはその前駆体に、必要に応じて有機溶剤、界面活性剤、レベリング剤、密着改良剤、粘度調整剤、酸化防止剤、無機顔料、有機顔料、染料等を配合してなる樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0114】
本発明の導電層付きフィルムに用いられる樹脂膜を得る方法の1つは、得ようとするポリイミドに対応する前駆体であるポリアミド酸をイミド閉環させることである。イミド化の方法としては、特に限定されず、熱イミド化や化学イミド化が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂膜の耐熱性、可視光領域での透明性の観点から、熱イミド化が好ましい
【0115】
ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸シリルエステル等のポリイミド前駆体は、ジアミン化合物と、酸二無水物またはその誘導体との重合反応により合成することができる。酸二無水物の誘導体としては、酸二無水物のテトラカルボン酸、そのテトラカルボン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステルまたはテトラエステル、酸塩化物等が挙げられる。具体的には、酸二無水物の誘導体として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等でエステル化された構造のものが挙げられる。上記重合反応の反応方法は、目的のポリイミド前駆体が製造できれば特に制限はなく、公知の反応方法を用いることができる。
【0116】
上記重合反応の具体的な反応方法としては、所定量の全てのジアミン成分および溶剤を反応器に仕込み、ジアミンを溶解させた後、所定量の酸二無水物成分を仕込み、室温~80℃で0.5~30時間撹拌する方法等が挙げられる。
【0117】
本発明において、導電層付きフィルムの樹脂膜に用いられるポリイミドおよびポリイミド前駆体は、分子量を好ましい範囲に調整するために、末端封止剤により両末端を封止してもよい。酸二無水物と反応する末端封止剤としては、モノアミンや1価のアルコール等が挙げられる。また、ジアミン化合物と反応する末端封止剤としては、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物、二炭酸エステル類、ビニルエーテル類等が挙げられる。また、ポリイミドまたはポリイミド前駆体の両末端に末端封止剤を反応させることにより、これらの両末端に末端基として種々の有機基を導入することができる。末端封止剤には、公知の化合物を用いることができる。
【0118】
酸無水物基側の末端封止剤の導入割合は、酸二無水物成分に対して、0.1~60モル%の範囲内であることが好ましく、0.5~50モル%の範囲内であることがより好ましい。また、アミノ基側の末端封止剤の導入割合は、ジアミン成分に対して、0.1~100モル%の範囲内であることが好ましく、0.5~70モル%の範囲内であることがより好ましい。ポリイミドまたはポリイミド前駆体の両末端に複数の末端封止剤を反応させることにより、これらの両末端に複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0119】
ポリイミド前駆体やポリイミドに導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出することができる。例えば、末端封止剤が導入されたポリマーを酸性溶液に溶解し、ポリマーの構成単位であるアミン成分と酸無水成分とに分解する。これらをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMRを用いて測定することにより、末端封止剤を容易に検出することができる。その他に、末端封止剤が導入されたポリマーを直接、熱分解ガスクロマトグラフィー(PGC)や赤外スペクトル、H NMRスペクトルおよび13C NMRスペクトル等の測定に供しても、末端封止剤を容易に検出可能である。
【0120】
ポリイミドを含む樹脂膜を得るための組成物(以下、「ポリイミド樹脂組成物」という)には、ポリイミドまたはポリイミド前駆体の他にも、適当な成分が含まれていてもよい。ポリイミド樹脂組成物に含まれていてもよい成分としては、特に限定されないが、紫外線吸収剤、熱架橋剤、無機フィラー、界面活性剤、内部剥離剤、着色剤等が挙げられる。これらは、それぞれ公知の化合物を用いることができる。
【0121】
本発明において、例えば、「炭素数4~40の4価の有機基」とは、炭素数が4~40である4価の有機基を意味する。炭素数を規定している他の基についても、これと同様である。
【0122】
(ガスバリア層)
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、図1に図示したガスバリア層2に例示されるように、ガスバリア層を有する。本発明におけるガスバリア層とは、基板となる樹脂膜上に形成され、樹脂膜と環境中の気体とが直接接触することを防ぐ機能を有する層のことをいう。導電性粒子を含有する導電層を樹脂膜上に形成する際に、酸素の存在下、200℃以上の高温が樹脂膜にかかる。そのため、ガスバリア層がないと、樹脂膜に熱酸化による黄変が発生し、これに起因して、導電層付きフィルムの色目が悪化する。樹脂膜と導電層との間にガスバリア層を形成することで、酸素雰囲気下での加熱時に樹脂膜と酸素とが接触するのを防ぐことができる。そうして、黄変の無い色目が優れた導電層付きフィルムを得ることができる。
【0123】
ガスバリア層を構成する材料としては、導電層形成時に酸素の透過を防ぐものであれば、有機材料であっても無機材料であってもよいが、酸素バリア性の観点から無機材料が好ましい。この無機材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物および金属炭窒化物が挙げられる。これらに含まれる金属元素としては、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、カルシウム(Ca)等が挙げられる。
【0124】
特に、ガスバリア層は、珪素酸化物、珪素窒化物、珪素酸窒化物および珪素炭窒化物のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。何故ならば、これらの材料をガスバリア層の形成に用いることで、均一で緻密なガスバリアの膜が得やすくなり、ガスバリア層の酸素バリア性がより向上するからである。
【0125】
また、酸素バリア性がより向上するという観点から、ガスバリア層は、SiOxNyで表される成分を含むことが好ましい。x、yは、0<x≦1、0.55≦y≦1、0≦x/y≦1を満たす値である。
【0126】
ガスバリア層は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の、気相中より材料を堆積させて膜を形成する気相堆積法により、作製することができる。中でも、より均一で酸素バリア性の高い膜が得られることから、スパッタリング法もしくはプラズマCVD法を用いるのが好ましい。
【0127】
ガスバリア層の層数に制限は無く、1層だけでもよいし、2層以上の多層でもよい。ガスバリア層が多層膜である場合の例としては、1層目がSiNからなり且つ2層目がSiOからなるガスバリア層や、1層目がSiONからなり且つ2層目がSiOからなるガスバリア層等が挙げられる。
【0128】
本発明においては、ガスバリア層が2層以上に積層された無機膜であり、その無機膜のうち導電層と接する層が、SiOz(zは、0.5≦z≦2を満たす値である。)で表される成分で形成されることが好ましい。何故ならば、導電層加工時(特にフォトリソグラフィーを利用した場合の現像時)におけるガスバリア層の耐薬品性が向上し、また、導電層のパターン加工性および寸法精度の向上、残渣の抑制等の効果が得られるからである。
【0129】
ガスバリア層の合計の厚みは、酸素バリア性向上の観点から、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。一方、導電層付きフィルムの曲げ耐性を向上させるという観点から、ガスバリア層の合計の厚みは、1μm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0130】
(導電層)
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、図1に図示した導電層3Aに例示されるように、導電性粒子を含有する導電層を有する。導電層は、線幅が0.1~9μmである網目構造を有することが好ましい。線幅が0.1~9μmである網目構造を導電層が有することにより、導電層の導電性および視認性を向上させることができる。導電層の網目構造の線幅は、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。一方、導電層の網目構造の線幅は、7μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましい。
【0131】
また、導電層の膜厚は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。一方、導電層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
【0132】
導電層に含まれる導電性粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属粒子、および炭素を有する金属粒子が挙げられる。炭素を有する金属粒子とは、例えば、カーボンブラックと金属との複合体である。この導電性粒子として、これらを2種類以上用いてもよい。中でも、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金またはアルミニウムの金属粒子、および、炭素を有する金属粒子が好ましく、銀粒子がより好ましい。
【0133】
導電性粒子の1次粒子径は、所望の導電性を有する微細な導電パターンを形成するため、10~200nmであることが好ましく、10~60nmであることがより好ましい。ここで、導電性粒子の1次粒子径は、導電層の断面を走査型電子顕微鏡により観察して無作為に100個の粒子を選択し、各粒子の1次粒子径を測定して、それらの算術平均値をとることにより算出する。なお、各粒子の1次粒子の粒子径は、1次粒子において最も径の長い部分と短い部分との算術平均値とする。
【0134】
導電層中における導電性粒子の含有量は、導電性を向上させるという観点から、20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。一方、この導電性粒子の含有量は、パターン加工性を向上させるという観点から、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0135】
また、導電層は、有機化合物を0.1~80質量%含有することが好ましい。導電層が有機化合物を0.1質量%以上含有することにより、導電層に柔軟性を付与し、導電層の曲げ耐性をより向上させることができる。導電層中の有機化合物の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。一方、導電層が有機化合物を80質量%以下含有することにより、導電性を向上させることができる。導電層中の有機化合物の含有量は、50質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0136】
導電層に含まれる有機化合物としては、アルカリ可溶性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。ここで、(メタ)アクリル系共重合体とは、(メタ)アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体をいう。
【0137】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、チオフェノール(メタ)アクリレート、ベンジルメルカプタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0138】
他のモノマーとしては、炭素-炭素二重結合を有する化合物が挙げられ、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン等のアミド系不飽和化合物、(メタ)アクリロニトリル、アリルアルコール、酢酸ビニル、シクロヘキシルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルが挙げられる。
【0139】
アルカリ可溶性樹脂に、アルカリ可溶性を付与するカルボキシル基を導入するためには、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、これらの酸無水物等を、上記(メタ)アクリル系モノマーと共重合する方法が挙げられる。
【0140】
(メタ)アクリル系共重合体は、硬化反応の速度を大きくするという観点から、側鎖または分子末端に炭素-炭素二重結合を有することが好ましい。炭素-炭素二重結合を有する官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。
【0141】
アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸当量は、400~1,000g/molであることが好ましい。アクリル可溶性樹脂のカルボン酸当量は、酸価を測定することにより算出することができる。また、アルカリ可溶性樹脂の二重結合当量は、硬度と耐クラック性とを高いレベルで両立できるため、150~10,000g/molであることが好ましい。アクリル可溶性樹脂の二重結合当量は、ヨウ素価を測定することにより算出することができる。
【0142】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000~100,000であることが好ましい。重量平均分子量を上記範囲内のものとすることにより、アルカリ可溶性樹脂の良好な塗布特性が得られ、導電層をパターン形成する際における現像液へのアルカリ可溶性樹脂の溶解性も良好となる。ここで、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値を言う。
【0143】
また、導電層は、有機スズ化合物および金属キレート化合物のうち少なくとも一つを含有してもよい。導電層が有機スズ化合物および金属キレート化合物のうち少なくとも一つを含有することにより、導電層とガスバリア層との密着をより向上させることができる。特に、金属キレート化合物は、有機スズ化合物と比較して、環境負荷をかけずに密着性向上効果が得られることからより好ましい。有機スズ化合物および金属キレート化合物には、公知の化合物を用いることができる。
【0144】
導電層中における有機スズ化合物および金属キレート化合物の合計含有量は、基板密着性をより向上させるという観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。一方、これら有機スズ化合物および金属キレート化合物の合計含有量は、導電層の導電性を向上させ、より微細なパターンを形成するという観点から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0145】
導電層は、他に、分散剤、光重合開始剤、モノマー、光酸発生剤、熱酸発生剤、溶剤、増感剤、可視光に吸収を有する顔料および染料のうち少なくとも一つ、密着改良剤、界面活性剤、重合禁止剤等を含有することが好ましい。
【0146】
また、本発明における導電層は、導電性組成物を用いて、形成することができる。この導電性組成物に含まれる成分としては、例えば、導電性粒子、アルカリ可溶性樹脂、有機スズ化合物、金属キレート化合物、分散剤、光重合開始剤、モノマー、光酸発生剤、熱酸発生剤、溶剤、増感剤、可視光に吸収を有する顔料および染料のうち少なくとも一つ、密着改良剤、界面活性剤または重合禁止剤等が挙げられる。
【0147】
導電性組成物が含有する導電性粒子は、その粒子表面の少なくとも一部に被覆層を有することが好ましい。これにより、導電性粒子の表面活性を低下させて、導電性粒子同士の反応および導電性粒子と有機成分との反応のうち少なくとも一方を抑制し、導電性粒子の分散性を向上させることができる。さらに、導電層の加工にフォトリソグラフィーを用いた場合でも、露光光の散乱を抑制し、導電層を高精度にパターン加工することができる。一方、この導電性粒子表面の被覆層は、酸素の存在下、150~350℃程度の高温で加熱することにより容易に除去され得る。この結果、導電性組成物中の導電性粒子は、導電層の十分な導電性を発現することができる。
【0148】
導電性粒子表面の被覆層は、炭素および炭素化合物のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。この被覆層が炭素および炭素化合物のうち少なくとも一つを含むことにより、導電性組成物中での導電性粒子の分散性をさらに向上させることができる。
【0149】
導電性粒子表面に、炭素および炭素化合物のうち少なくとも一つを含む被覆層を形成する方法としては、例えば、熱プラズマ法により、メタンガス等の炭素を有する反応性ガスと、導電性粒子とを接触させる方法(特開2007-138287号公報に記載の方法)等が挙げられる。
【0150】
(絶縁層)
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、導電層上に、アルカリ可溶性樹脂から形成される絶縁層を有することが好ましい。本発明におけるアルカリ可溶性とは、0.045質量%の水酸化カリウム水溶液(100g)に対して、25℃で0.1g以上溶解することをいう。アルカリ可溶性樹脂から形成される絶縁層は、フォトリソグラフィーによりパターン加工することができ、それにより導電層の導通のための開口部を形成できるため、好ましい。
【0151】
また、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、導電層上に、前述の(メタ)アクリル系共重合体を含むアルカリ可溶性樹脂から形成される絶縁層を有することが好ましい。何故ならば、アルカリ可溶性樹脂中の(メタ)アクリル系共重合体により、絶縁層の柔軟性が高まるからである。
【0152】
さらに、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、導電層上に、下記の構造式(10)で表される構造を2つ以上有するカルド系樹脂を含むアルカリ可溶性樹脂から形成される絶縁層を有することが好ましい。何故ならば、カルド系樹脂が絶縁層の疎水性を高め、これにより、絶縁層の絶縁性を向上させることができるからである。
【0153】
【化21】
【0154】
カルド系樹脂は、例えば、エポキシ化合物と、ラジカル重合性基を含有する有機酸との反応物を、さらに酸二無水物と反応させることにより得ることができる。エポキシ化合物とラジカル重合性基を含有する有機酸との反応、およびエポキシ化合物と酸二無水物との反応に用いる触媒としては、例えば、アンモニウム系触媒、アミン系触媒、リン系触媒、クロム系触媒等が挙げられる。アンモニウム系触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等が挙げられる。アミン系触媒としては、例えば、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールもしくはジメチルベンジルアミン等が挙げられる。リン系触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。クロム系触媒としては、例えば、アセチルアセトネートクロム、塩化クロム等が挙げられる。また、エポキシ化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0155】
【化22】
【0156】
ラジカル重合性基を含有する有機酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、テトラヒドロフタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、p-ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0157】
酸二無水物としては、硬化膜の耐薬品性向上の観点から、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が好ましい。また、酸二無水物の分子量を調整するという目的で、酸二無水物の一部を酸無水物に置き換えたものを使用することもできる。
【0158】
また、構造式(10)で表される構造を2つ以上有するカルド系樹脂としては、市販品を好ましく用いることができる。このカルド系樹脂の市販品としては、例えば、「WR-301(商品名)」(ADEKA社製)、「V-259ME(商品名)」(新日鉄住金化学社製)、「オグゾールCR-TR1(商品名)」、「オグゾールCR-TR2(商品名)」、「オグゾールCR-TR3(商品名)」、「オグゾールCR-TR4(商品名)」、「オグゾールCR-TR5(商品名)」、「オグゾールCR-TR6(商品名)」(以上、大阪ガスケミカル社製)等が挙げられる。
【0159】
(メタ)アクリル系共重合体およびカルド系樹脂の重量平均分子量は、それぞれ、塗布特性を向上させるという観点から、2,000以上であることが好ましい。また、これらの重量平均分子量は、それぞれ、絶縁層のパターン形成における現像液への絶縁層の溶解性を向上させるという観点から、200,000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPCで測定されるポリスチレン換算値を言う。
【0160】
また、絶縁層が(メタ)アクリル系共重合体およびカルド系樹脂をともに含有する場合、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw(A1))と、カルド系樹脂の重量平均分子量(Mw(A2))との比(Mw(A2)/Mw(A1))は、層分離を抑制して均一な硬化膜を形成するという観点から、0.14以上であることが好ましい。一方、この比(Mw(A2)/Mw(A1))は、層分離を抑制して均一な硬化膜を形成するという観点から、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
【0161】
本発明における絶縁層は、アルカリ可溶性樹脂を含む絶縁性組成物を用いて、形成することができる。この絶縁性組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、所望の膜厚や用途により任意に選択することができるが、固形分の100質量部に対して、10質量部以上、70質量部以下とすることが一般的である。
【0162】
上記の絶縁性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有してもよい。上記の絶縁性組成物がヒンダードアミン系光安定剤を含有することで、絶縁層の着色をより低減することができるとともに、絶縁層の耐侯性を向上させることができる。
【0163】
上記の絶縁性組成物は、さらに必要に応じて、多官能モノマー、硬化剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、密着改良剤、溶剤、界面活性剤、溶解抑止剤、安定剤、消泡剤等の添加剤を含有することもできる。
【0164】
<タッチパネル>
本発明の実施の形態に係るタッチパネルは、図2、3に図示したタッチパネル10に例示されるように、本発明の導電層付きフィルムを有するものである。本発明において、導電層付きフィルムの導電層は、タッチパネルの配線層(例えば図2、3に示した第一の配線層3)である。本発明のタッチパネルは、図2、3に例示したように、ガスバリア層上の配線層(第一の配線層)の上に絶縁層(第一の絶縁層)を有し、この絶縁層上に第二の配線層を有する。本発明のタッチパネルは、さらに、上記第二の配線層の、第一の絶縁層と接している面と反対側(すなわち上面側)に、第二の絶縁層を有してもよい。本発明のタッチパネルは、このように第二の絶縁層を有することにより、大気中の水分が第二の配線層に到達することを抑制することができる。この結果、タッチパネルの信頼性をより向上させることができる。
【0165】
本発明のタッチパネルにおいて、第一の絶縁層および第二の絶縁層は、それぞれ同じ材料で構成されていてよいし、異なる材料で構成されていてもよい。また、第一の絶縁層および第二の絶縁層の膜厚は、絶縁性をより向上させるという観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。一方、第一の絶縁層および第二の絶縁層の膜厚は、これらの透明性をより向上させるという観点から、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
【0166】
このようなタッチパネルに適用される導電層付きフィルム(すなわち本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルム)の厚みは、1~40μmであることが好ましい。導電層付きフィルムの厚みをこの範囲内の厚みとすることにより、導電層付きフィルムの製造工程における破れや反り等の不具合を抑制し、導電層付きフィルムの歩留まり(延いてはタッチパネルの歩留まり)を向上させることができる。また、本発明のタッチパネルをフレキシブルタッチパネルとして使用した際の折り曲げに対する形状の追随性が格段に向上する。本発明において、タッチパネルの厚みは、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。一方、タッチパネルの厚みは、30μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
【0167】
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムは、国際照明委員会1976に規定される、L*a*b*表色系によるb*の値が、-5~5であることが好ましい。b*の値をこの範囲内の値とすることにより、導電層付きフィルムおよびこれを用いたタッチパネルの過度な色度調整が不要となり、この結果、ディスプレイの視認性をより向上させることができる。本発明において、b*の値は、-4~4であることがより好ましく、-3~3であることがさらに好ましい。
【0168】
<導電層付きフィルムを含むタッチパネルの製造方法>
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの製造方法は、この導電層付きフィルムの製造方法を用いたものである。この導電層付きフィルムの製造方法は、樹脂膜形成工程と、ガスバリア層形成工程と、導電層形成工程と、剥離工程と、を少なくとも含む。樹脂膜形成工程は、支持基板上に、ポリイミドを含む樹脂膜を形成する工程である。ガスバリア層形成工程は、この樹脂膜の上にガスバリア層を形成する工程である。導電層形成工程は、このガスバリア層の上に導電層を形成する工程である。剥離工程は、この支持基板から、上記ガスバリア層および導電層等が形成された後の樹脂膜を剥離する工程である。本発明において、タッチパネルの製造方法は、導電層付きフィルムの製造方法における導電層形成工程として、配線層形成工程を含む。配線層形成工程は、上記ガスバリア層の上に、導電層として配線層を形成する工程である。
【0169】
図4は、本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムを含むタッチパネルの製造方法の一例を示す工程図である。本実施の形態におけるタッチパネルの製造方法では、樹脂膜形成工程と、ガスバリア層形成工程と、第一の配線層形成工程と、第一の絶縁層形成工程と、第二の配線層形成工程と、第二の絶縁層形成工程と、剥離工程とが、この順に順次行われる。
【0170】
詳細には、まず、樹脂膜形成工程において、図4の状態S1に示すように、支持基板7上に、前述のポリイミドを含む樹脂膜1が形成される。次に、ガスバリア層形成工程において、図4の状態S2に示すように、この樹脂膜1上にガスバリア層2が形成される。次に、第一の配線層形成工程において、図4の状態S3に示すように、このガスバリア層2の上に第一の配線層3が形成される。次に、第一の絶縁層形成工程において、図4の状態S4に示すように、ガスバリア層2の上に、この第一の配線層3を覆うように第一の絶縁層4が形成される。次に、第二の配線層形成工程において、図4の状態S5に示すように、第一の絶縁層4の上(本実施の形態ではガスバリア層2および第一の絶縁層4の上)に第二の配線層5が形成される。次に、第二の絶縁層形成工程において、図4の状態S6に示すように、ガスバリア層2の上に、この第二の配線層5を覆うように第二の絶縁層6が形成される。その後、剥離工程において、図4の状態S7に示すように、樹脂膜1とガスバリア層2との積層構造体が、そのカット端面8でカットされる。ついで、この積層構造体の樹脂膜1が支持基板7から機械剥離される。このようにして、タッチパネル10が得られる。以下、これらの各工程について詳細に説明する。
【0171】
(樹脂膜形成工程)
樹脂膜形成工程は、上述したように、支持基板7上に、ポリイミドを含む樹脂膜1を形成する工程である。この樹脂膜形成工程は、前述のポリイミド樹脂組成物を支持基板7上に塗布する塗布工程と、この支持基板7上のポリイミド樹脂組成物を乾燥するプリベーク工程と、この乾燥後のポリイミド樹脂組成物をキュアするキュア工程とを含むことが好ましい。
【0172】
支持基板7としては、例えば、シリコンウェハ、セラミックス基板、有機系基板等が挙げられる。セラミックス基板としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等のガラス基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等が挙げられる。有機系基板としては、例えば、エポキシ基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等が好適に挙げられる。
【0173】
ポリイミド樹脂組成物を支持基板7上に塗布する方法としては、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーターを用いた塗布、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディップコート等が挙げられる。
【0174】
プリベーク工程およびキュア工程における加熱方法としては、例えば、ホットプレート、熱風乾燥機(オーブン)、減圧乾燥、真空乾燥または赤外線照射による加熱等が挙げられる。
【0175】
プリベーク工程におけるポリイミド樹脂組成物のプリベークの温度および時間は、対象とするポリイミド樹脂組成物の組成や、乾燥する塗布膜(ポリイミド樹脂組成物の塗布膜)の膜厚によって適宜決定すればよい。例えば、本発明におけるプリベーク工程では、50~150℃の温度範囲で10秒~30分間、塗布膜を加熱することが好ましい。
【0176】
キュア工程におけるポリイミド樹脂組成物のキュアの雰囲気、温度および時間は、対象とするポリイミド樹脂組成物の組成や、キュアする塗布膜(ポリイミド樹脂組成物の塗布膜)の膜厚によって適宜決定すればよい。加熱による膜の黄変を抑制するという観点から、このキュア工程では、支持基板7上のポリイミド樹脂組成物の塗布膜を、酸素濃度が1000ppm以下である雰囲気下において300℃以上500℃以下の温度で、5~180分間、加熱して、樹脂膜1を形成することが好ましい。
【0177】
(ガスバリア層形成工程)
ガスバリア層形成工程は、上述したように、樹脂膜1の上にガスバリア層2を形成する工程である。このガスバリア層形成工程におけるガスバリア層2の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の、気相中より材料を堆積させて膜を形成する気相堆積法が挙げられる。中でも、より均一で酸素バリア性の高い膜(ガスバリア層2)が得られることから、スパッタリング法もしくはプラズマCVD法を用いるのが好ましい。
【0178】
本発明で樹脂膜1に好ましく用いられるポリイミド樹脂はガラス転移温度が高いので、ガスバリア層2を形成するときの基板温度(支持基板7の温度)を上げることも可能である。基板温度が高いほど、ガスバリア層2の結晶性が向上するので、ガスバリア性能が向上する。一方、ガスバリア層2の製膜温度が高すぎると、ガスバリア層2の曲げ耐性が低下する。これらの観点から、ガスバリア層2の製膜温度の下限としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、ガスバリア層2の製膜温度の上限としては、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
【0179】
(第一の配線層形成工程)
第一の配線層形成工程は、上述したように、ガスバリア層2の上に第一の配線層3を形成する工程である。この第一の配線層形成工程は、前述の導電性組成物をガスバリア層2上に塗布する塗布工程と、この導電性組成物の塗布膜を乾燥するプリベーク工程と、この乾燥した塗布膜(プリベーク膜)を露光および現像してメッシュパターンを形成する工程(露光工程および現像工程)と、このパターン形成したプリベーク膜をキュアするキュア工程とを含むことが好ましい。
【0180】
特に、第一の配線層形成工程においては、表面の少なくとも一部に被覆層を有する導電性粒子を含有する導電性組成物を用いて第一の配線層3を形成することが好ましい。何故ならば、表面の少なくとも一部に被覆層を有する導電性粒子が露光工程において露光光の散乱を抑制し、これにより、第一の配線層3の配線を高精度にパターン加工することができるからである。
【0181】
第一の配線層形成工程において、導電性組成物をガスバリア層2上に塗布する方法、および、導電性組成物の塗布膜を対象とするプリベーク工程およびキュア工程における乾燥方法としては、上述した樹脂膜形成工程のポリイミド樹脂組成物において例示した方法が挙げられる。
【0182】
導電性組成物の塗布膜の露光工程で用いる光源としては、例えば、水銀灯のj線、i線、h線、g線が好ましい。導電性組成物の塗布膜の現像工程で用いる現像液としては、公知の現像液を用いることができる。例えば、この現像液として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ性物質を水に溶解したアルカリ水溶液が挙げられる。この現像液は、これらに、エタノール、γーブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の水溶性有機溶剤を適宜加えたものであっても構わない。また、この現像工程によって導電性組成物の塗布膜のより良好な導電性パターンを得るためには、これらのアルカリ性現像液に、さらに、非イオン系界面活性剤等の界面活性剤を、現像液中での含有量が0.01~1質量%となるように添加することも好ましい。
【0183】
キュア工程における導電性組成物の塗布膜(パターン形状をなすプリベーク膜)のキュアの雰囲気、温度および時間は、導電性組成物の組成や、キュアする塗布膜(導電性組成物の塗布膜)の膜厚によって適宜決定すればよい。このキュア工程では、例えば、空気中、100~300℃の温度範囲で、5~120分間、導電性組成物の塗布膜を加熱することが好ましい。特に、表面に被覆層を有する導電性粒子を第一の配線層3が含有している場合、この導電性粒子表面の被覆層を確実に除去し、十分な導電性を発現させるために、このキュア工程では、ガスバリア層2上の導電性組成物の塗布膜を、酸素濃度が15%以上である雰囲気下において100℃以上300℃以下の温度で加熱して、第一の配線層3を形成することが好ましい。
【0184】
特に、黄変が少なく導電性に優れたタッチパネル10を得るために、タッチパネル10の製造方法では、酸素濃度が1000ppm以下である雰囲気下において300℃以上500℃以下の温度でポリイミド樹脂組成物を加熱してポリイミドを含む樹脂膜1を形成する樹脂膜形成工程と、酸素濃度が15%以上である雰囲気下において100℃以上300℃以下の温度で導電性組成物を加熱して配線層(例えば第一の配線層3)を形成する配線層形成工程とを含むことが好ましい。
【0185】
(第一の絶縁層形成工程)
第一の絶縁層形成工程は、上述したように、ガスバリア層2の上に第一の配線層3を覆うように第一の絶縁層4を形成する工程である。この第一の絶縁層形成工程は、前述の絶縁性組成物を第一の配線層3上に塗布する塗布工程と、この絶縁性組成物の塗布膜を乾燥するプリベーク工程と、この乾燥した塗布膜(プリベーク膜)を露光および現像してパターンを形成する工程(露光工程、現像工程)と、このパターン形成したプリベーク膜(絶縁膜)をキュアするキュア工程とを含むことが好ましい。この第一の絶縁層形成工程に含まれる各工程は、上述した第一の配線層形成工程の場合と同様に行うことができる。
【0186】
(第二の配線層形成工程、第二の絶縁層形成工程)
第二の配線層形成工程は、上述したように、第一の絶縁層4の上に第二の配線層5を形成する工程である。この第二の配線層形成工程において、第二の配線層5は、上述した第一の配線層3と同様の方法にて形成できる。第二の絶縁層形成工程は、上述したように、第二の配線層5を覆うように第二の絶縁層6を形成する工程である。この第二の絶縁層形成工程において、第二の絶縁層6は、上述した第一の絶縁層4と同様の方法にて形成できる。
【0187】
タッチパネル10の製造方法において、第二の配線層5の上には、第二の絶縁層6を形成していなくてもよいが、上述したように第二の絶縁層6を形成していることが好ましい。何故ならば、第二の絶縁層6を形成することにより、大気中の水分が第二の配線層5に到達することを抑制し、これにより、タッチパネル10の耐湿熱性を向上させることができるからである。
【0188】
(剥離工程)
剥離工程は、上述したように、支持基板7から樹脂膜1を剥離する工程である。この剥離工程において支持基板7からポリイミドを含む樹脂膜1を剥離する方法としては、例えば、支持基板7の裏面から樹脂膜1にレーザーを照射して剥離する方法、タッチパネル10を取り出す前の支持基板7(以下、タッチパネル付き支持基板と適宜いう)を、0~80℃に保った溶剤および精製水のうち少なくとも一つ等に10秒~10時間浸漬して剥離する方法、樹脂膜1を上面よりカットし、カット端面8より機械剥離する方法等が挙げられる。中でも、タッチパネル10の信頼性への影響を考慮すると、カット端面8より機械剥離する方法が好ましい。
【0189】
また、上述の剥離工程は、タッチパネル付き支持基板に直接行ってもよいし、タッチパネル付き支持基板に保護フィルムや透明粘着層(OCA:Optical Clear Adhesive)を貼合した後、行ってもよい。さらには、OCAを介して、タッチパネル付き支持基板をディスプレイ基板等の部材に貼合した後に、このタッチパネル付き支持基板からの樹脂膜1の剥離(すなわちタッチパネル10の取り出し)を行うことも、貼合精度の観点から好ましい。
【0190】
本発明の実施の形態に係るタッチパネルは、ポリイミドを含む樹脂膜が配線層形成時に黄変することがガスバリア層によって抑制されるため、視認性が良い。また、配線層形成時の樹脂膜の寸法変化がガスバリア層によって抑制されるため、寸法精度に優れたタッチパネルを提供することができる。本発明の実施の形態に係るタッチパネルは、スマートフォンやタブレット型端末等のディスプレイ用部材として好適に用いられる。
【0191】
<導電層付きフィルムの製造方法>
本発明の実施の形態に係る導電層付きフィルムの製造方法は、樹脂膜形成工程と、ガスバリア層形成工程と、導電層形成工程と、剥離工程と、を少なくとも含む。これらの工程のうち、樹脂膜形成工程、ガスバリア層形成工程および剥離工程は、図4の状態S1、S3、S7に例示されるように、上述したタッチパネルの製造方法と同様である。導電層形成工程は、ガスバリア層の上に導電層を形成する工程である。この導電層形成工程は、上述したタッチパネルの製造方法における第一の配線層形成工程の第一の配線層を導電層に置き換えた工程と同様である。本発明において、この導電層形成工程は、表面の少なくとも一部に被覆層を有する導電性粒子を含有する導電性組成物を用いて導電層を形成する工程であることが好ましい。また、この導電層形成工程は、ガスバリア層上の導電性組成物を、酸素濃度が15%以上である雰囲気下において100℃以上300℃以下の温度で加熱して、導電層を形成する工程であることが好ましい。
【0192】
また、導電層付きフィルムの製造方法は、ガスバリア層の上に、導電層を覆うように絶縁層を形成する絶縁層形成工程を含んでいてもよい。この絶縁層形成工程は、例えば、上述したタッチパネルの製造方法における第一の絶縁層形成工程と同様の手法によって行うことができる。この絶縁層形成工程によって導電層の上に絶縁層を形成することにより、大気中の水分が導電層に到達することを抑制することができ、これにより、導電層付きフィルムの耐湿熱性を向上させることができる。
【実施例
【0193】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。まず、下記の実施例および比較例で用いた材料、行った測定および評価について説明する。
【0194】
(酸二無水物)
下記の実施例および比較例では、酸二無水物として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、信越化学社製の両末端酸無水物変性メチルフェニルシリコーンオイル(X22-168-P5-B)が必要に応じて用いられる。
【0195】
(ジアミン化合物)
下記の実施例および比較例では、ジアミン化合物として、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン(CHDA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3,3’-DDS)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(m-BAPS)、信越化学社製の両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(X22-1660B-3)が必要に応じて用いられる。
【0196】
(溶剤)
下記の実施例および比較例では、溶剤として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γブチロラクトン(GBL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)が必要に応じて用いられる。
【0197】
(アルカリ可溶性樹脂)
下記の実施例および比較例では、アルカリ可溶性樹脂ARが必要に応じて用いられる。アルカリ可溶性樹脂ARは、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=54/23/23(モル%)からなる共重合体のカルボキシル基に対して、0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたものである。このアルカリ可溶性樹脂ARの重量平均分子量(Mw)は、29,000である。
【0198】
(導電性粒子)
下記の実施例および比較例では、導電性粒子として、導電性粒子A-1、A-2が必要に応じて用いられる。導電性粒子A-1は、表面炭素被覆層の平均厚みが1nmであり、1次粒子径が40nmである銀粒子(日清エンジニアリング社製)とした。導電性粒子A-2は、1次粒子径が0.7μmである銀粒子(三井金属鉱業社製)とした。
【0199】
(第1作製例:ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスの作製)
第1作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるポリイミド樹脂膜製膜用ワニス(以下、「ワニス」と適宜略記する)の作製例について説明する。
【0200】
(合成例1)
ワニスの合成例1では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(9.37g(30.2mmol))と、TFMB(9.67g(30.2mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例1のワニスとした。この合成例1のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、23.5である。
【0201】
(合成例2)
ワニスの合成例2では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、CBDA(7.23g(36.9mmol))と、TFMB(11.81g(36.9mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例2のワニスとした。この合成例2のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、29.2である。
【0202】
(合成例3)
ワニスの合成例3では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(13.92g(44.8mmol))と、CHDA(5.12g(44.8mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例3のワニスとした。この合成例3のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、35.8である。
【0203】
(合成例4)
ワニスの合成例4では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、BPDA(11.70g(39.8mmol))と、BSAA(2.30g(4.42mmol))と、CHDA(5.04g(44.1mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例4のワニスとした。この合成例4のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、36.3である。
【0204】
(合成例5)
ワニスの合成例5では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、CBDA(6.68g(34.1mmol))と、TFMB(9.27g(28.9mmol))と、HFHA(3.09g(5.11mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例5のワニスとした。この合成例5のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、27.7である。
【0205】
(合成例6)
ワニスの合成例6では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(8.75g(28.2mmol))と、TFMB(8.93g(27.9mmol))と、X22-1660B-3(1.36g(0.309mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例6のワニスとした。この合成例6のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、23.4である。
【0206】
(合成例7)
ワニスの合成例7では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(10.58g(34.1mmol))と、3,3’-DDS(8.46g(34.1mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例7のワニスとした。この合成例7のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、26.8である。
【0207】
(合成例8)
ワニスの合成例8では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、BPDA(13.72g(46.6mmol))と、CHDA(5.32g(46.6mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例8のワニスとした。この合成例8のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、37.7である。
【0208】
(合成例9)
ワニスの合成例9では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(7.95g(25.6mmol))と、m-BAPS(11.09g(25.6mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例9のワニスとした。この合成例9のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、19.8である。
【0209】
(合成例10)
ワニスの合成例10では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(3.97g(12.8mmol))と、PMDA(2.79g(12.8mmol))と、TFMB(8.11g(25.3mmol))と、X22-1660B-3(1.18g(0.282mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例10のワニスとした。この合成例10のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、25.4である。
【0210】
(合成例11)
ワニスの合成例11では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(7.85g(25.3mmol))と、X22-168-P5-B(1.18g(0.282mmol))と、TFMB(8.20g(25.6mmol))と、NMP(100g)とを入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例11のワニスとした。この合成例11のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、23.4である。
【0211】
(合成例12)
ワニスの合成例12では、乾燥窒素気流下、200mL4つ口フラスコに、ODPA(3.97g(12.8mmol))と、BPDA(3.77g(12.8mmol))と、TFMB(8.11g(25.3mmol))と、X22-1660B-3(1.18g(0.282mmol))と、NMP(100g)を入れて、60℃で加熱撹拌した。この加熱攪拌を8時間行い、その後、この加熱攪拌したものを室温まで冷却して、合成例12のワニスとした。この合成例12のワニスを用いて作製できるポリイミドのイミド基濃度は、23.3である。
【0212】
(第2作製例:導電性組成物の作製)
第2作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられる導電性組成物AE-1、AE-2の調製について説明する。この第2作製例では、導電性粒子A-1(80g)と、DIC社製の界面活性剤“DISPERBYK”(登録商標)21116(4.06g)と、PGMEA(98.07g)と、DPM(98.07g)とを混合し、これらの混合物に対し、ホモジナイザーにて、1200rpm、30分間の処理を施した。さらに、高圧湿式メディアレス微粒化装置ナノマイザー(ナノマイザー社製)を用いて、この処理後の混合物を分散して、銀含有量が40質量%である銀分散液L1を得た。また、導電性粒子A-1に代えて導電性粒子A-2を用いたこと以外は上記と同様の操作を行い、これにより、銀分散液L2を得た。
【0213】
ついで、有機化合物としてアルカリ可溶性樹脂AR(20g)と、金属キレート化合物としてALCH(0.6g)と、光重合開始剤としてNCI-831(2.4g)と、PE-3A(12.0g)とを混合したものに、PGMEA(132.6g)と、DPM(52.6g)とを添加し、撹拌した。これにより、導電性組成物用の有機液L3を得た。なお、ALCHは、川研ファインケミカル社製の金属キレート化合物(エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート)である。NCI-831は、ADEKA社製の光重合開始剤である。その後、上述したように得られた銀分散液L1、L2と有機液L3とをそれぞれ表1に示す割合で混合し、これにより、導電性組成物AE-1、AE-2を得た。
【0214】
【表1】
【0215】
(第3作製例:絶縁性組成物の作製)
第3作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられる絶縁性組成物OA-1、OA-2の調製について説明する。この第3作製例では、クリーンボトルに、上述した構造式(10)で表される構造を2つ以上有するカルド系樹脂として新日鉄住友化学社製のV-259ME(50.0g)と、架橋性モノマーとして日本化成社製のTAIC(18.0g)と、架橋性モノマーとして東亞合成社製のM-315(10.0g)と、エポキシ化合物として大阪ガスケミカル社製のPG-100(20.0g)と、光重合開始剤としてBASF社製のOXE-01(0.2g)とを混合し、これらの混合物を1時間撹拌した。これにより、絶縁性組成物OA-1を得た。また、上記のカルド系樹脂(V-259ME)に代えてアルカリ可溶性樹脂ARを用いたこと以外は上記と同様の操作を行い、これにより、絶縁性組成物OA-2を得た。
【0216】
(第4作製例:ポリイミド樹脂膜の作製)
第4作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるポリイミド樹脂膜T1の作製について説明する。この第4作製例では、基板としての6インチのミラーシリコンウェハに、東京エレクトロン社製の塗布現像装置(Mark-7)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるように、第1作製例のワニス(合成例1~12のいずれかのワニス)をスピン塗布した。その後、このワニスの塗布膜に対し、Mark-7のホットプレートを用いて、140℃の温度で4分のプリベーク処理を行った。これによって得られたプリベーク膜を、光洋サーモシステム社製のイナートオーブン(INH-21CD)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minの昇温レートで350℃まで昇温し、30分間保持した。その後、このプリベーク膜を5℃/minの降温レートで50℃まで冷却し、これにより、ポリイミド樹脂膜T1を作製した。続いて、このポリイミド樹脂膜T1(基板に貼り付いた状態のもの)をフッ酸に1~4分間浸漬して、ポリイミド樹脂膜T1を基板から剥離し、風乾してポリイミド樹脂膜T1(単体)を得た。
【0217】
(第5作製例:ガラス基板付きのポリイミド樹脂膜の作製)
第5作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるポリイミド樹脂膜T2の作製について説明する。この第5作製例では、縦50mm×横50mm×厚さ1.1mmのガラス基板(テンパックス)に、ミカサ社製のスピンコーター(MS-A200)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるように、第1作製例のワニス(合成例1~12のいずれかのワニス)をスピン塗布した。その後、このワニスの塗布膜に対し、大日本スクリーン社製のホットプレート(D-SPIN)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク処理を行った。これによって得られたプリベーク膜を、光洋サーモシステム社製のイナートオーブン(INH-21CD)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minの昇温レートで350℃まで昇温し、30分間保持した。その後、このプリベーク膜を5℃/minの降温レートで50℃まで冷却し、これにより、矩形のガラス基板上に貼り付いた状態のポリイミド樹脂膜T2を作製した。
【0218】
(第6作製例:ガラス基板付きのポリイミド樹脂膜の作製)
第6作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるポリイミド樹脂膜T3の作製について説明する。この第6作製例では、外径13インチのガラス基板(旭硝子社製のAN-100)上に、ミカサ社製のスピンコーター(1H-360S)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるように、、第1作製例のワニス(合成例1~12のいずれかのワニス)をスピン塗布した。その後、このワニスの塗布膜に対し、ホットプレートを用いて、140℃の温度で4分のプリベーク処理を行った。これによって得られたプリベーク膜を、光洋サーモシステム社製のイナートオーブン(INH-21CD)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minの昇温レートで350℃まで昇温し、30分間保持した。その後、このプリベーク膜を5℃/minの降温レートで50℃まで冷却し、これにより、円形のガラス基板上に貼り付いた状態のポリイミド樹脂膜T3を作製した。
【0219】
(第7作製例:シリコン基板付きのポリイミド樹脂膜の作製)
第7作製例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるポリイミド樹脂膜T4の作製について説明する。この第6作製例では、1/4に切断した4インチのシリコン基板に、ミカサ社製のスピンコーター(MS-A200)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク後の膜厚が5±0.5μmになるように、第1作製例のワニス(合成例1~12のいずれかのワニス)をスピン塗布した。その後、このワニスの塗布膜に対し、大日本スクリーン社製のホットプレート(D-SPIN)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク処理を行った。これによって得られたプリベーク膜を、光洋サーモシステム社製のイナートオーブン(INH-21CD)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minの昇温レートで300℃まで昇温し、30分間保持した。その後、このプリベーク膜を5℃/minの降温レートで50℃まで冷却し、これにより、シリコン基板上に貼り付いた状態のポリイミド樹脂膜T4を作製した。
【0220】
(第1測定例:光透過率(T)の測定)
第1測定例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられる光透過率の測定について説明する。この第1測定例では、第5作製例のポリイミド樹脂膜T2の、波長450nmにおける光透過率を、島津製作所社製の紫外可視分光光度計(MultiSpec1500)を用いて測定した。
【0221】
(第2測定例:ヘイズ値の測定)
第2測定例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるヘイズ値の測定について説明する。この第2測定例では、第5作製例のポリイミド樹脂膜T2のヘイズ値(%)を、スガ試験機社製の直読ヘーズコンピュータ(HGM2DP、C光源)を用いて測定した。なお、このヘイズ値としては、3回測定の平均値を用いた。
【0222】
(第3測定例:ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数(CTE)の測定)
第3測定例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられるガラス転移温度および線膨張係数の測定について説明する。この第3測定例では、第4作製例のポリイミド樹脂膜T1のガラス転移温度および線膨張係数を、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の熱機械分析装置(EXSTAR6000TMA/SS6000)を用いて、窒素気流下、圧縮モードで測定した。この測定のサンプルについては、ポリイミド樹脂膜T1から幅15mm×長さ30mmの小片を切り出し、この小片をその長手方向に巻き、直径3mm、高さ15mmの白金コイルに通して円筒状にしたものを用いた。昇温方法は、以下の条件にて行った。第1段階では、5℃/minの昇温レートで150度までサンプルを昇温して、サンプルの吸着水を除去した。第2段階では、5℃/minの降温レートで室温までサンプルを空冷した。第3段階では、5℃/minの昇温レートでサンプルの本測定を行い、ポリイミド樹脂膜T1のガラス転移温度を求めた。また、第3段階では、50~200℃におけるサンプルの線膨張係数の平均値を求め、これをポリイミド樹脂膜T1の線膨張係数とした。
【0223】
(第4測定例:残留応力の測定)
第4測定例では、下記の実施例および比較例において適宜用いられる残留応力の測定について説明する。この第4測定例では、東朋テクノロジー社製の残留応力測定装置(FLX-3300-T)を用いて、厚さが625μm±25μmである6インチのシリコンウェハの曲率半径rを予め測定した。そのシリコンウェハの上に、東京エレクトロン社製の塗布現像装置(Mark-7)を用いて、140℃の温度で4分のプリベーク後の膜厚が15±0.5μmになるように、第1作製例のワニス(合成例1~12のいずれかのワニス)をスピン塗布した。その後、このワニスの塗布膜に対し、Mark-7のホットプレートを用いて、140℃の温度で4分のプリベーク処理を行った。これによって得られたプリベーク膜を、光洋サーモシステム社製のイナートオーブン(INH-21CD)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、3.5℃/minの昇温レートで350℃まで昇温し、30分間保持した。その後、このプリベーク膜を5℃/minの降温レートで50℃まで冷却し、これにより、ポリイミド樹脂膜の付いたシリコンウェハを作製した。このシリコンウェハを150℃で10分間乾燥させた後、前述の残留応力測定装置を用いて、このシリコンウェハの曲率半径rを測定した。そして、下記の(II)式により、このシリコンウェハとポリイミド樹脂膜との間に生じた残留応力σ(Pa)
を求めた。

σ=Eh/6[(1/r)-(1/r)]t (II)
【0224】
(II)式において、Eは、シリコンウェハの二軸弾性係数(Pa)である。hは、シリコンウェハの厚さ(m)である。tは、ポリイミド樹脂膜の膜厚(m)である。rは、ポリイミド樹脂膜作製前のシリコンウェハの曲率半径(m)である。rは、ポリイミド樹脂膜作製後のシリコンウェハの曲率半径(m)である。なお、シリコンウェハの二軸弾性係数Eは、1.805×10-11(Pa)として求めた。
【0225】
(評価例1~12)
評価例1~12では、上述した合成例1~12の各ワニスについて、第4作製例~第7作製例の方法でポリイミド樹脂膜T1~T4を作製し、第1測定例~第4測定例の方法で光透過率、ヘイズ値、ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数および残留応力の測定を行った。評価例1~12の結果は、表2に示す。
【0226】
【表2】
【0227】
次に、下記の実施例および比較例で行ったタッチパネルの評価方法について説明する。
【0228】
(導電性評価)
タッチパネルの導電性評価では、各実施例および各比較例において、タッチパネルの第一の配線層まで作製した基板について、表面抵抗測定機(“ロレスタ”(登録商標)-FP、三菱油化社製)により表面抵抗値ρs(Ω/□)を測定し、表面粗さ形状測定機(“サーフコム”(登録商標)1400D、東京精密社製)により配線部分の膜厚t(cm)を測定し、両値を乗算することにより、体積抵抗率(μΩ・cm)を算出した。得られた体積抵抗率を用い、以下の評価基準に従ってタッチパネルの導電性を評価した。この評価では、評価結果がレベル2以上である場合を合格とした。
【0229】
導電性評価の評価基準において、体積抵抗率が60μΩ・cm未満である場合は、レベル5である。体積抵抗率が60μΩ・cm以上80μΩ・cm未満である場合は、レベル4である。体積抵抗率が80μΩ・cm以上100μΩ・cm未満である場合は、レベル3である。体積抵抗率が100μΩ・cm以上150μΩ・cm未満である場合は、レベル2である。体積抵抗率が150μΩ・cm以上である場合は、レベル1である。
【0230】
(導電性組成物の残渣評価)
タッチパネルの導電性組成物の残渣評価では、各実施例および各比較例において、タッチパネルの第一の配線層まで作製した基板の未露光部分について、第一の配線層形成前後の波長400nmにおける透過率を、紫外可視分光光度計(島津製作所社製「MultiSpec-1500(商品名)」)を用いて測定した。そして、第一の配線層形成前の透過率をT0とし、第一の配線層形成後の透過率をTとしたときに、式(T0-T)/T0で表される透過率変化を算出した。得られた透過率変化の値を用い、以下の評価基準に従ってタッチパネルの導電性組成物の残渣を評価した。この評価では、評価結果がレベル2以上である場合を合格とした。
【0231】
導電性組成物の残渣評価の評価基準において、透過率変化の値が1%未満である場合は、レベル5である。透過率変化の値が1%以上2%未満である場合は、レベル4である。透過率変化の値が2%以上3%未満である場合は、レベル3である。透過率変化の値が3%以上4%未満である場合は、レベル2である。透過率変化の値が4%以上である場合は、レベル1である。
【0232】
(色目(b*)評価)
タッチパネルの色目(b*)評価では、各実施例および各比較例において、タッチパネルの第二の絶縁層まで作製した基板を用い、下記の方法により積層基板の色目を評価した。
【0233】
タッチパネルの第二の絶縁層まで作製した基板について、分光光度計(CM-2600d、コニカミノルタ社製)を用いて、ガラス基板側から全反射光の反射率を測定し、CIE(L*,a*,b*)色空間にて色特性b*を測定した。得られた色特性b*を用い、以下の評価基準に従ってタッチパネルの色目を評価した。この評価では、評価結果がレベル2以上である場合を合格とした。なお、光源としてはD65光源を用いた。
【0234】
色目評価の評価基準において、色特性b*が-2≦b*≦2である場合は、レベル5である。色特性b*が-3≦b*<-2または2<b*≦3である場合は、レベル4である。色特性b*が-4≦b*<-3または3<b*≦4である場合は、レベル3である。色特性b*が-5≦b*<-4または4<b*≦5である場合は、レベル2である。色特性b*がb*<-5または5<b*である場合は、レベル1である。
【0235】
(耐湿熱性評価)
タッチパネルの耐湿熱性評価では、各実施例および各比較例において作製したタッチパネルについて、以下の方法により耐湿熱性を評価した。
【0236】
耐湿熱性の測定には、絶縁劣化特性評価システム“ETAC SIR13”(楠本化成社製)を用いた。タッチパネルの第一の配線層および第二の配線層の各端部にそれぞれ電極を取り付け、85℃、85%RH条件に設定された高温高湿槽内にタッチパネルを入れた。槽内環境が安定してから5分間経過後、これら第一の配線層および第二の配線層の電極間に電圧を印加し、絶縁抵抗の経時変化を測定した。第一の配線層を正極とし、第二の配線層を負極として、10Vの電圧を印加し、500時間の抵抗値を5分間隔で測定した。測定した抵抗値が10の5乗以下に達したとき、絶縁不良のため短絡と判断して、印圧を停止し、それまでの試験時間を短絡時間とした。得られた短絡時間を用い、以下の評価基準に従ってタッチパネルの耐湿熱性を評価した。この評価では、評価結果がレベル2以上である場合を合格とした。
【0237】
耐湿熱性評価の評価基準において、短絡時間が1000時間以上である場合は、レベル5である。短絡時間が500時間以上1000時間未満である場合は、レベル4である。短絡時間が300時間以上500時間未満である場合は、レベル3である。短絡時間が100時間以上300時間未満である場合は、レベル2である。短絡時間が100時間未満である場合は、レベル1である。
【0238】
(寸法精度評価)
タッチパネルの寸法精度評価では、各実施例および各比較例において作製したタッチパネルについて、以下の方法により寸法精度を評価した。
【0239】
積層基板の中心で第一の配線層のメッシュ交差部と第二の配線層のメッシュ交差部が重なる設計部において、水平方向のずれを測定した。得られた「ずれ」の測定値を用い、以下の評価基準に従ってタッチパネルの寸法精度を評価した。この評価では、評価結果がレベル2以上である場合を合格とした。
【0240】
寸法精度評価の評価基準において、ずれが1μm未満である場合は、レベル5である。ずれが1μm以上2μm未満である場合は、レベル4である。ずれが2μm以上3μm未満である場合は、レベル3である。ずれが3μm以上5μm未満である場合は、レベル2である。ずれが5μm以上である場合は、レベル1である。
【0241】
(ESD(静電気放電)耐性評価)
タッチパネルのESD耐性評価では、各実施例および各比較例において、タッチパネルの第一の配線層まで作製した基板について、ESD試験装置(Compact ESD Simulator HCE-5000、阪和電子工業社製)を用いてESD耐性を評価した。具体的には、第一の配線層の端部に電極を取り付け、100Vから開始して、100Vステップで1回ずつ、連続的に電圧を印加した。電圧印加後のリーク電流の抵抗値について、印加前と比較して10%以上の抵抗値の上昇がみられた場合、配線層の断線とみなし、断線した電圧の100V低い電圧をESD耐電圧とした。
【0242】
(実施例1)
<ポリイミド樹脂膜の形成>
実施例1では、第1作製例で作製した合成例1のワニスを用いて、第6作製例の方法でポリイミド樹脂膜T3を作製した。
【0243】
<ガスバリア層の形成>
実施例1では、 上記のようにして得られたポリイミド樹脂膜T3の上に、SiOからなるターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い、膜厚100nmのSiOからなるガスバリア層を形成した。このときのスパッタリング条件として、圧力は2×10-1Paとし、基板温度は150℃とし、電源は13.56MHzの交流電源とした。
【0244】
<第一の配線層の形成>
実施例1では、第2作製例で作製した導電性組成物AE-1を、上記のポリイミド樹脂膜T3およびガスバリア層を形成した基板上に、スピンコーター(ミカサ社製「1H-360S(商品名)」)を用いて、300rpmで10秒、500rpmで2秒の条件でスピンコートした。その後、この導電性組成物AE-1の塗布膜を、ホットプレート(大日本スクリーン製造社製「SCW-636(商品名)」)を用いて100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。次いで、パラレルライトマスクアライナー(キヤノン社製「PLA-501F(商品名)」)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介して、このプリベーク膜を露光した。その後、このプリベーク膜に対し、自動現像装置(滝沢産業社製「AD-2000(商品名)」)を用いて、0.045質量%の水酸化カリウム水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。このようにパターン加工した基板を、オーブンを用いて、空気中(酸素濃度21%)で、250℃で30分間キュアし、第一の配線層を形成した。
【0245】
<第一の絶縁層の形成>
実施例1では、第3作製例で作製した絶縁性組成物OA-1を、上記の第一の配線層を形成した基板上に、スピンコーターを用いて、650rpmで5秒スピンコートした。その後、この絶縁性組成物OA-1の塗布膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。次いで、パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介して、このプリベーク膜を露光した。その後、このプリベーク膜に対し、自動現像装置を用いて、0.045質量%の水酸化カリウム水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。このようにパターン加工した基板を、オーブンを用いて、空気中(酸素濃度21%)で、250℃で60分間キュアし、第一の絶縁層を形成した。
【0246】
<第二の配線層の形成>
実施例1では、上記のようにして第一の絶縁層を形成した基板上に、この第一の配線層と同様の方法で第二の配線層を形成した。
【0247】
<第二の絶縁層の形成>
実施例1では、上記のようにして第二の配線層を形成した基板上に、上記の第一の絶縁層と同様の方法で第二の絶縁層を形成した。
【0248】
最後に、第一の配線層および第二の配線層を形成した領域の周囲を上面より片刃でカットし、カット端面より機械剥離することで、実施例1のタッチパネルを得た。得られた実施例1のタッチパネルについて、前述の方法により、導電性、導電性組成物の残渣、色目(b*)、耐湿熱性、寸法精度およびESD耐電圧性を評価した。実施例1の評価結果は、後述の表3に示す。
【0249】
(実施例2)
実施例2では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例2のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例2のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(1)の構造単位を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。色目は、配線加工時の黄変により僅かに悪化して評価結果のレベルが「3」となったが、問題なく使用できる範囲であった。
【0250】
(実施例3)
実施例3では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例3のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例3のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(2)の構造単位を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「4」となった。色目は、配線加工時の黄変により僅かに悪化して評価結果のレベルが「3」となったが、問題なく使用できる範囲であった。
【0251】
(実施例4)
実施例4では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例4のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例4のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(2)の構造単位を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。色目は、配線加工時の黄変により僅かに悪化して評価結果のレベルが「3」となったが、問題なく使用できる範囲であった。
【0252】
(実施例5)
実施例5では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例5のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例5のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミドが、一般式(4)で表される構造単位を主成分とし、一般式(5)で表される構造単位を全構造単位の5mol%以上30mol%以下含むため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。
【0253】
(実施例6)
実施例6では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例6のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例6のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(9)で表される繰り返し構造を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。また、ESD耐電圧が向上し、1200Vとなった。
【0254】
(実施例7)
実施例7では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例7のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例7のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜のTgがやや低いため(表2の評価例7参照)、寸法精度が悪化して評価結果のレベルが「2」となったが、使用可能な範囲であった。
【0255】
(実施例8)
実施例8では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例10のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例8のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(9)で表される繰り返し構造を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。また、ESD耐電圧が向上し、1200Vとなった。
【0256】
(実施例9)
実施例9では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例11のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例9のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(9)で表される繰り返し構造を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。また、ESD耐電圧が向上し、1200Vとなった。
【0257】
(実施例10)
実施例10では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例12のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例10のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(9)で表される繰り返し構造を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。また、ESD耐電圧が向上し、1100Vとなった。
【0258】
(実施例11)
実施例11では、ガスバリア層形成の際、ターゲットをSiONからなるターゲットに変更したこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例11のタッチパネルにおいては、ガスバリア層を変更したことで、色目が向上して評価結果のレベルが「5」となった。一方、ガスバリア層を変更したことで、耐薬品性が低下した。それによって、導電組成物残渣および寸法精度は、それぞれ僅かに悪化して評価結果のレベルが「4」となったが、いずれも使用可能な範囲であった。
【0259】
(実施例12)
実施例12では、ガスバリア層形成の際、まず、SiONからなるターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い、膜厚80nmのSiONからなるガスバリア層を形成した。次に、SiOからなるターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下でスパッタリングを行い、膜厚20nmのSiOからなるガスバリア層を形成した。このこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例12のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜側のガスバリア層をSiONとすることで、配線加工時の黄変が抑制され、この結果、色目が向上して評価結果のレベルが「5」となった。また、ガスバリア層のバリア性が向上したことから、耐湿熱性が向上して評価結果のレベルが「5」となった。さらに、配線層側のガスバリア層をSiOとしたことで、導電組成物残渣および寸法精度は、評価結果のレベルが「5」のまま変わらず、良好であった。
【0260】
(実施例13)
実施例13では、導電性組成物を導電性組成物AE-1から導電性組成物AE-2に変更したこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例13のタッチパネルにおいては、導電性組成物AE-2に含まれる導電性粒子(金属微粒子)が被覆されておらず、配線層中で金属微粒子が不均一に凝集した。そのため、導電性が悪化して評価結果のレベルが「3」となったが、使用可能な範囲であった。また、導電組成物残渣および寸法精度は、僅かに悪化して評価結果のレベルがそれぞれ「4」となったが、使用に問題ない範囲であった。
【0261】
(実施例14)
実施例14では、絶縁性組成物を絶縁性組成物OA-1から絶縁性組成物OA-2に変更したこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例14のタッチパネルにおいては、絶縁層が所定のカルド系樹脂を有さないため、耐湿熱性が大きく悪化して評価結果のレベルが「2」となったが、使用可能な範囲であった。導電性、導電組成物残渣および寸法精度は、僅かに悪化して評価結果のレベルがそれぞれ「4」となったが、使用に問題ない可能な範囲であった。
【0262】
(実施例15)
実施例15では、配線層形成の際、パターン加工した基板を、イナートオーブン(光洋サーモシステム社製 INH-21CD)を用いて、窒素気流下(酸素濃度14%)で加熱したこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例15のタッチパネルにおいては、配線層形成時の酸素濃度の変更により、色目は改善して評価結果のレベルが「5」となった。一方、導電性が大きく悪化して評価結果のレベルが「2」となったが、使用可能な範囲であった。寸法精度は、僅かに悪化して評価結果のレベルが「4」となったが、使用に問題ない範囲であった。
【0263】
(実施例16)
実施例16では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例6のワニスを用いたこと以外は、実施例11と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例16のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(9)で表される繰り返し構造を有するため、寸法精度が向上して評価結果のレベルが「5」となった。また、ESD耐電圧が向上し、1300Vとなった。
【0264】
(実施例17)
実施例17では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例6のワニスを用いたこと以外は、実施例12と同様の操作を繰り返した。表3に示すように、実施例17のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミド中に一般式(9)で表される繰り返し構造を有するため、ESD耐電圧が向上し、1300Vとなった。
【0265】
(比較例1)
比較例1では、ガスバリア層を形成せず、ポリイミド樹脂膜上に直接、第一の配線層を形成したこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。比較例1のタッチパネルにおいては、導電組成物残渣、色目および耐湿熱性が大幅に低下し、使用不可のレベル(レベル1)であった。
【0266】
(比較例2)
比較例2では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例8のワニスを用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。比較例2のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミドのイミド基濃度が高く、樹脂膜形成後にヘイズが発生して視認性が大きく損なわれた。このため、比較例2におけるポリイミド樹脂膜は、タッチパネルの基板として適用不可であった。
【0267】
(比較例3)
比較例3では、ポリイミド樹脂膜製膜用ワニスとして合成例9のワニスを用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を繰り返した。比較例2のタッチパネルにおいては、ポリイミド樹脂膜に含まれるポリイミドのイミド基濃度が低く、ポリイミド樹脂膜のTgが低下したため(表2の評価例9参照)、寸法精度が大幅に低下し、使用不可のレベル(レベル1)であった。これらの比較例1~3の各評価結果は、上述した実施例1~17の各評価結果とともに表3に示す。
【0268】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0269】
以上のように、本発明に係る導電層付きフィルム、タッチパネル、導電層付きフィルムの製造方法およびタッチパネルの製造方法は、導電層形成時の樹脂膜の黄変を抑制し且つ導電層の高い寸法精度を確保することができる導電層付きフィルム、タッチパネル、導電層付きフィルムの製造方法およびタッチパネルの製造方法に適している。
【符号の説明】
【0270】
1 樹脂膜
2 ガスバリア層
3 第一の配線層
3A 導電層
4 第一の絶縁層
5 第二の配線層
6 第二の絶縁層
7 支持基板
8 カット端面
10 タッチパネル
11 導電層付きフィルム
図1
図2
図3
図4