(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220913BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 370
A61N5/10
(21)【出願番号】P 2021135794
(22)【出願日】2021-08-23
(62)【分割の表示】P 2018080153の分割
【原出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】大久保 翔平
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131618(JP,A)
【文献】国際公開第2010/070737(WO,A1)
【文献】特開平07-185017(JP,A)
【文献】特開2016-198203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0257718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入された状態で、X線とは異なる治療用放射線を前記被検体に対して照射する治療用線源を備える治療装置とともに使用され、
前記被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記被検体を透過したX線を検出する検出部と、
前記検出部によって検出されたX線に基づいて画像を形成する画像形成部と、
を備える放射線撮影装置であって、
前記画像形成部は、前記X線照射部から照射されて前記被検体を透過したX線に対して、前記被検体内に挿入された前記治療用線源から照射されるγ線が重畳された画像から、前記治療用線源から照射されるγ線の影響を除去して、前記被検体を透過したX線による画像を形成するように構成されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記画像形成部は、前記X線照射部から照射されて前記被検体を透過したX線に対して、前記被検体内に配置された前記治療用線源から照射されるγ線が重畳されたX線・γ線画像の輝度値から、前記X線照射部からX線が照射されない状態で前記治療用線源から照射されたγ線に基づいて形成されたγ線画像の輝度値を差分することによって、前記被検体を透過したX線による画像を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に放射線源(治療用線源)を挿入して、放射線源から照射される放射線により患部の治療を行う治療装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる治療装置には、X線を用いた放射線撮影装置が設けられているが、この放射線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線照射部と、被検体を透過したX線を検出する検出部と、該検出部によって検出されたX線に基づいて画像を形成する画像形成部とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の放射線撮影装置においては、治療用線源から放射線が照射された状態で、被検体にX線を照射して画像を撮影すると、検出部は、X線照射部からのX線に加えて、治療用線源から照射される放射線(例えば、γ線)も検出してしまう。このため、画像形成部により形成される画像には、治療用線源からの放射線が影響を及ぼしてしまい、この画像では、治療用線源の形態(形状)を視認し得るものの、被検体の形態(例えば、骨格の形状等)が視認し難くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、治療用線源からの放射線の影響を除去した画像を形成することによって被検体の形態を高精度に撮影することができる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、被検体内に挿入された状態で、X線とは異なる治療用放射線を前記被検体に対して照射する治療用線源を備える治療装置とともに使用され、前記被検体にX線を照射するX線照射部と、前記被検体を透過したX線を検出する検出部と、前記検出部によって検出されたX線に基づいて画像を形成する画像形成部と、を備える放射線撮影装置であって、前記画像形成部は、前記X線照射部から照射されて前記被検体を透過したX線に対して、前記被検体内に挿入された前記治療用線源から照射されるγ線が重畳された画像から、前記治療用線源から照射されるγ線の影響を除去して、前記被検体を透過したX線による画像を形成するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検体内に挿入された治療用線源から照射されるγ線が重畳された画像から、治療用線源から照射されるγ線の影響を除去して、被検体を透過したX線による画像を形成するようにしたため、被検体の形態を高精度に撮影することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放射線撮影装置の全体構成を示す模式図である。
【
図3】治療用線源およびアプリケータを示す図である。
【
図4】第1画像、第2画像および合成画像を示す図である。
【
図5】治療用線源の移動状態および停止状態を判別する方法を説明するための図である。
【
図6】治療用線源の移動時間(移動距離)および停止時間を算出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の放射線撮影装置について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る放射線撮影装置の全体構成を示す模式図、
図2は治療装置の全体構成を示す模式図、
図3は治療用線源およびアプリケータを示す図、
図4は第1画像、第2画像および合成画像を示す図、
図5は治療用線源の移動状態および停止状態を判別する方法を説明するための図、
図6は治療用線源の移動時間(移動距離)および停止時間を算出する方法を説明するための図である。
【0011】
なお、各図では、その特徴を判り易くするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。また、以下に例示される材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
放射線撮影装置1は、
図1に示すように、被検体10の患部を放射線により治療する治療装置100とともに使用される。この放射線撮影装置1は、被検体10を載置する載置部2と、X線を用いて被検体10の撮影を行う撮影部3と、画像を表示する表示部4とを有している。
【0013】
放射線撮影装置1では、載置部2に被検体10を載置した状態で、放射線による治療開始前の被検体10の第1画像と、治療中の被検体10の第2画像とを撮影部3により撮影する。そして、使用者(医師等)は、表示部4に表示された第1画像および第2画像を確認しつつ、治療装置100を用いて被検体10に対して放射線による治療を行う。
【0014】
まず、放射線撮影装置1の説明に先立って、治療装置100について説明する。
【0015】
治療装置100は、
図2に示すように、X線と異なる治療用の放射線を照射する治療用線源110と、治療用線源110に接続されたワイヤ120と、ワイヤ120を送出する送出機構130とを備えている。
【0016】
図3に示すように、治療用線源110は、被検体10に留置されたアプリケータ(ほぼ円筒形状をなす誘導具)140を介して、被検体10内に挿入(誘導)されるように構成されている。また、アプリケータ140には、放射線量を測定する線量計(図示せず)や、アプリケータ140を被検体10に対して固定するバルーンカテーテル(図示せず)等が配置される。このようなアプリケータ140は、送出機構130に線源移送チューブ150を介して接続されている。
【0017】
治療用線源110は、被検体10内に挿入された状態で使用され、被検体10の内部から患部(例えば、腫瘍組織)に放射線を照射することができる。治療用の放射線としては、例えばγ線、α線、β線等が挙げられる。中でも、治療用の放射線は、γ線であることが好ましい。γ線は、患部(特に、腫瘍組織)に対する治療効果が高い。また、撮影部3が備える後述するFPD32は、X線に加え、いずれの前記放射線も検出可能であるが、特にγ線を高い感度で検出することができる。このため、治療用の放射線としてγ線を用いれば、第2画像において治療用線源110の位置を正確に把握することができる。γ線を照射可能な治療用線源110には、その内部に放射性同位元素(例えば、192-Ir、60-Co等)が密封されている。
【0018】
さらに、送出機構130には、治療計画用ワークステーション160が接続されている。治療計画用ワークステーション160では治療計画が作成され、送出機構130は、治療計画用ワークステーション160から送信された治療計画データに基づいて、ワイヤ120を送出する。すなわち、ワイヤ120の送出量は、送出機構130により自動制御される。
【0019】
また、送出機構130は、治療計画データに基づいて、ワイヤ120を停止させる。これにより、被検体10内の所望の位置で、所望の時間の間、治療用線源110から患部に対して放射線が照射される。送出機構130は、同様に繰り返して作動することにより、複数の位置で、治療用線源110から患部に対して放射線が照射される。
【0020】
次に、放射線撮影装置1の各部について順次説明する。
【0021】
載置部2は、被検体10を載置する天板21と、天板21上に配置された再構成ボックス22と、天板21を変位させる変位機構23とを備えている。
【0022】
被検体10は、気管等の管腔臓器を治療する場合には、脚を延ばして臥床した状態で天板21上に配置される。また、被検体10は、前立腺等に細い管を穿刺して治療する場合には、脚を曲げて臥床した状態で天板21上に配置される。
【0023】
再構成ボックス22は、天板21に対して被検体10を位置決めする位置決め機構を構成する。これにより、治療開始前から治療終了時にわたって、被検体10の変位(体位および位置の変化)を防止または抑制することができる。
【0024】
また、再構成ボックス22は、放射線撮影装置1の構造的な歪み等に起因して生じる可能性がある画像の歪みを補正する機能も備える。具体的には、再構成ボックス22の上面、底面および側面には、十字状のワイヤが配置されており、このワイヤを撮影部3で撮影することにより、画像の歪みを補正することができる。
【0025】
撮影部3は、X線を照射するX線管(X線源)31と、X線管31から照射され、被検体10を透過したX線を検出するFPD(検出器)32と、X線管31とFPD32とを対向配置した状態で支持するC型アーム(支持部材)33とを備えている。
【0026】
X線管31は、図示しない高電圧発生部に接続されており、高電圧が印加されることにより、X線を発生させる。
【0027】
FPD(フラットパネルディテクタ)32は、その内部に設けられたX線変換部(マトリクス状に配置された複数の半導体X線検出素子等)により、X線管31から照射され、被検体10を透過したX線を検出して電荷に変換する。この電荷は、FPD32内の各画素の蓄積容量に一旦保持され、各画素毎に呼び出された後、後述する画像処理部6に信号として出力される。なお、X線および治療用の放射線を検出可能であれば、FPD32以外の検出器を用いてもよい。
【0028】
C型アーム33は、図示しない変位機構により、天板21に対して移動および回転可能に構成されている。かかる構成により、放射線撮影装置1は、撮影部3により被検体10の関心領域を撮影し、3次元画像または断層画像を取得することができる。関心領域は、被検体10のうち、治療のために撮影の対象となる領域である。本明細書中において、第1画像および第2画像とは、被検体10の同一の関心領域の画像である。なお、アーム(支持部材)の形状は、C型に限らず、U型、Ω型等であってもよい。
【0029】
表示部4は、1つまたは複数のディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ)で構成されている。
【0030】
放射線撮影装置1は、載置部2、撮影部3および表示部4に接続された制御部5を有している。制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等で構成されたコンピュータである。制御部5は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、放射線撮影装置1を構成する各部の作動を制御する。
【0031】
また、放射線撮影装置1は、制御部5に接続された画像処理部6、記憶部7および報知部8を有している。
【0032】
画像処理部6は、CPUまたはGPU(Graphics Processing Unit)等で構成されたコンピュータである。この画像処理部6は、所定の画像処理プログラムを実行する画像形成部61および位置調整部62を備えている。
【0033】
画像処理部61は、FPD32により検出されたX線に基づいて画像(3次元画像または断層画像)を形成するように構成されている。位置調整部62は、C型アーム33の位置情報(位置座標)に基づいて、第1画像と第2画像との位置調整を行うように構成されている。画像処理部6で形成された画像は、制御部5により送信されるとともに、表示部4に表示される。
【0034】
さらに、画像処理部6は、第1画像および第2画像の少なくとも一方に、サイズ調整、コントラスト増強および色変換のうちの少なくとも1つの画像処理を行うように構成することもできる。なお、画像処理部6は、制御部5と同一のハードウェア(CPU)に画像処理プログラムを実行させることにより、制御部5と一体的に構成されてもよい。
【0035】
記憶部7は、制御プログラムおよび画像処理プログラムを記憶している。また、記憶部7は、画像処理部6で形成された画像データを、C型アーム33の位置情報と関連付けて保存するように構成されている。報知部8は、使用者に対して音や光源の点滅等により、放射線による治療中の異常を報知(警告)するように構成されている。
【0036】
次に、放射線撮影装置1の作用(使用方法)について説明する。
【0037】
放射線撮影装置1は、治療装置100と組み合わせて、例えば、遠隔操作密閉小線源治療法(Remote After Loading System:RALS)と呼ばれる治療に用いることができる。
【0038】
RALS治療法は、子宮、気管および胆管のような管腔臓器に発生した腫瘍組織を治療するために適用される。また、RALS治療法では、管腔臓器以外にも、前立腺や舌等に発生した腫瘍組織に対して、直接、細い管を穿刺して治療を行うこともできる。なお、RALS治療法では、治療用線源110を腫瘍組織のごく近傍に数分から15分程度停止させることにより、放射線が腫瘍組織に効果的に照射されるので、腫瘍組織以外の部位(正常組織)に放射線が照射されるのを抑制することが可能になる。
【0039】
図1~
図4を参照して、RALS治療法の一般的な手順について説明する。
【0040】
まず、
図1に示すように、再構成ボックス22により被検体10を天板(治療台)21の適切な位置に配置(位置決め)する。その後、
図2に示すように、天板21に臥床した被検体10に対して、アプリケータ140を挿入し、例えばバルーンカテーテル等によりアプリケータ140を被検体10に固定する。
【0041】
次に、アプリケータ140に、治療用線源110の停留経路(移動・停止の経路)を規定するためのカテーテル(図示せず)を配置する。この状態で、C型アーム33を被検体10の体軸方向に回転軸を中心にして回転させる等して撮影部3により、アプリケータ140が挿入された状態の被検体10(関心領域)を撮影する。FPD32で検出された信号は、画像処理部6(画像形成部61)に送信され、治療開始前の第1画像(CTライク画像)P1が形成される。ここで、CTライク画像とは、撮影部3のC型アーム33を180°+α°で回転させることで形成される断層画像である。このCTライク画像を形成(生成)する手法には、特開2002-263094号公報に記載の手法を採用することができる。
【0042】
この第1画像P1のデータは、C型アーム33の位置情報と関連付けて記憶部7に記憶されるとともに、治療計画用ワークステーション160に送信される。
【0043】
次に、治療計画用ワークステーション160は、第1画像P1からアプリケータ140の内部での治療用線源110の配置や、線源評価点(照射された線量を評価するための被検体10の位置)、投与線量(投与される予定の線量)を決定して、線量計算を行う。
【0044】
治療計画用ワークステーション160により算出された線量評価点における線量や、リスク臓器(治療対象の腫瘍組織の近傍に位置する正常な臓器)に対する線量が、使用者(医師等)により確認された後、治療計画データが送出機構130に送信される。なお、治療計画データには、治療用線源110の送出量、治療用線源110の停止位置および治療用線源110の停止時間等が含まれる。
【0045】
次に、送出機構130は、治療計画用ワークステーション160から送信された治療計画データに基づいて、治療用線源110に取り付けられたワイヤ120を送出する。これにより、治療用線源10が被検体10内に挿入される。そして、被検体10内の所望の位置で、所望の時間の間、治療用線源110から腫瘍組織に対して放射線が照射される。これにより、腫瘍組織に対して放射線による治療が行われる。この際、治療用線源110の被検体10内での実際の位置を確認すべく、撮影部3により被検体10(関心領域)を2方向(Z方向およびY方向)から撮影する。FPD32で検出された信号は、画像処理部6(画像形成部61)に送信され、治療中の第2画像(透視画像または撮影画像)P2が形成される。
【0046】
ここで、治療用線源110から放射線が照射された状態で、被検体10にX線を照射して画像を撮影すると、FPD32は、X線管31からのX線に加えて、治療用線源110から照射される放射線(例えば、γ線)も検出してしまう。すなわち、画像形成部61により形成される画像には、治療用線源110からの放射線が影響を及ぼしてしまう。その結果、この画像では、治療用線源110の形態(形状)を視認し得るものの、被検体10の形態(例えば、骨格の形状等)が視認し難くなる。以下、この画像を「X線・γ線画像」と言う。
【0047】
そこで、本実施の形態では、例えば、次のようにして、X線・γ線画像からγ線(治療用の放射線)の影響を除去することにより、第2画像P2を形成する。
【0048】
まず、X線管31からX線が照射されない状態において、被検体10への治療用線源110の挿入動作時中に、治療用線源110から照射されたγ線をFPD32により検出する。そして、画像形成部61は、X線管31からX線が照射されない状態で、FPD32に検出された治療用線源110からのγ線に基づいて画像(以下、この画像を「γ線画像」と言う)を形成する。具体的には、画像形成部61は、治療用線源110を被検体10に挿入する治療装置100から伝達される治療用線源110の移動終了の信号に基づいて、γ線画像を形成する。
【0049】
形成されたγ線画像は、記憶部7に自動的に取り込まれて保存される。また、治療装置100による治療用線源110の移動および終了(停止)は、それぞれ、複数回行われる場合がある。すなわち、被検体10の複数の位置で治療用線源110を停止させて治療を行う場合がある。この場合、治療用線源110の移動を終了させる毎に、画像形成部61で形成されたγ線画像が自動的に取り込まれて保存される。
【0050】
なお、γ線画像を形成(撮影)している最中に、X線管31からX線が照射されてしまうと、γ線画像にX線の影響が重畳してしまう。この場合、γ線画像の形成を中断し、X線管31からのX線が終了した後、γ線画像の形成を再開する。これにより、X線の影響が重畳していないγ線画像を得ることが可能になる。
【0051】
また、画像形成部61は、X線管31からX線が照射されていない状態で、定期的に、比較的高頻度で検出されたγ線に基づいてγ線画像を形成し、記憶部7に保存するようにしてもよい。この場合、例えば、保存されたγ線画像のうち、最新のγ線画像をγ線の影響を除去するためのγ線画像として用いることができる。
【0052】
次に、治療装置100により治療用線源110の移動が終了した状態で(すなわち、治療用線源110を停止させた状態で)、被検体10に対してX線管31からX線が照射される。このとき、FPD32は、X線管31から照射されるX線に加えて、治療用線源110から照射されるγ線も検出する。このため、画像形成部61に形成されるX線・γ線画像には、γ線の影響が重畳されている。
【0053】
そこで、画像形成部61は、X線管31から照射されて被検体10を透過したX線に対して、被検体10内に配置された治療用線源110から照射されるγ線が重畳されたX線・γ線画像の輝度値(画素値)から、X線管31からX線が照射されない状態で治療用線源110から照射されたγ線に基づいて形成されたγ線画像の輝度値(画素値)を差分する。これにより、画像形成部61は、被検体10を透過したX線によるX線画像(第2画像P2)を形成することができる。具体的には、X線・γ線画像における各画素の輝度から、γ線画像における各画素の輝度を差分する。これにより、γ線の影響が除去された明確な第2画像P2を形成することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、制御部5が、記憶部7に記憶された第1画像P1を読み出した後、
図4に示すように、画像形成部61において第1画像P1のデータと第2画像P2のデータとが合成される。ここで、第2画像P2と合成する第1画像P1は、好ましくはボリュームレンダリング画像である。このボリュームレンダリング画像は、治療計画用のCTライク画像の生成時に取得された3Dボリュームデータから、ボリュームレンダリング法により再構成された画像である。以下、第2画像P2と合成する第1画像P1を、第1画像(ボリュームレンダリング画像)P1’と記載する。具体的には、画像形成部61が、第1画像P1’の各画素の輝度値(各画素値)に、対応する第2画像P2の各画素の輝度値(各画素値)を加算する。これにより、第1画像P1’と第2画像P2とが重ね合わされた合成画像P3が形成される。その後、制御部5は、この合成画像P3を表示部4に表示するように制御する。
【0055】
本発明では、同一の放射線撮影装置1(撮影部3)により、治療開始前の第1画像P1と治療中の第2画像P2とを撮影するため、被検体10の変位(体位および位置の変化)を防止することができる。よって、放射線撮影装置1は、第1画像P1’と第2画像P2とを正確かつ容易に整合させ得る。その結果、本実施形態では、正確に位置合わせ(位置調整)された合成画像P3が形成される。これにより、使用者(医師等)は、被検体10(腫瘍組織)と治療用線源110との位置関係を正確に把握することができ、精度の高い放射線による治療を行うことができる。また、従来の方法に比べて、被検体10の被爆量を抑えることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、再構成ボックス11により、被検体10の天板21に対する位置決めがなされるため、被検体10の変位防止効果をより向上させることができる。なお、被検体10を天板21に対して位置決めすることができれば、位置決め機構には、再構成ボックス22以外の構成を採用することもできる。
【0057】
加えて、本実施形態では、位置調整部62がC型アーム33の位置情報に基づいて、第1画像P1’と第2画像P2との位置調整を行うように構成されているので、第1画像P1’と第2画像P2とをより正確かつ容易に整合させて、重ね合わすことができる。
【0058】
また、放射線による治療は、比較的長い時間行われるため、制御部5は、被検体10のX線による被爆量を最小限にすべく、X線管31から照射するX線の強度を設定することが好ましい。すなわち、制御部5は、第2画像P2を撮影する際のX線の強度が第1画像P1を撮影する際のX線の強度より低くなるように設定することが好ましい。これにより、被検体10に対するX線による被爆量を低減させ、被検体10に対する安全性を高めることができるが、一方で、第2画像P2における被検体10の形態がさらに視認し難くなる。したがって、このようなケースに本発明を適用すれば、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0059】
画像処理部6は、さらに、合成画像P3を表示部4に表示するのに先立って(具体的には、合成画像P3を形成するのに先立って)、第1画像P1’および第2画像P2の少なくとも一方に、サイズ調整、コントラスト増強および色変換のうちの少なくとも1つの画像処理を行うようにしてもよい。これにより、被検体10と治療用線源110との位置関係がより正確に反映された合成画像P3を形成することや、被検体10の形態をより正確に確認することができる。その結果、被検体10に対してより精度の高い放射線による治療を行うことができる。
【0060】
ここで、RALS治療法では、被検体10にアプリケータ140を挿入した状態で治療開始前の第1画像P1を撮影することが一般的である。これは、第1画像P1’と第2画像P2との位置調整を、アプリケータ140の形態(形状)に基づいて行うためである。
【0061】
これに対して、本発明によれば、前述したように、第1画像P1’と第2画像P2とを正確かつ容易に整合させ得る。このため、第1画像P1’と第2画像P2との位置調整にアプリケータ140の形態(形状)を敢えて用いる必要がない。すなわち、第1画像P1としてアプリケータ140を被検体10内に挿入する前に撮影される画像を用いることができる。これにより、アプリケータ140を被検体10に留置する時間を短縮することができ、よって被検体10の負担を軽減することもできる。
【0062】
また、制御部5は、さらに、第2画像P2に基づいて、被検体10に対する治療用線源110の位置を判別するとともに、治療用線源110の移動時間、停止時間および移動距離のうちの少なくとも1つを算出するようにしてもよい。
【0063】
まず、
図5を参照して、治療用線源110の移動時間および停止時間を算出する方法について説明する。
【0064】
本実施形態では、まず、第2画像P2に基づいて、被検体10に対する治療用線源110の位置が判別(確認)される。これは、例えば、治療用線源110の形態(形状)や、第2画像P2における治療用線源110の輝度値と周辺の組織の輝度値とを比較することにより行われる。
【0065】
また、治療内容の記録のために、治療用線源110の位置を確認するために使用された第2画像P2は、記憶部7に自動的に記憶するようにしてもよい。
【0066】
次に、制御部5は、治療用線源110が停止状態か移動状態であるかを判別することにより、治療用線源110の移動時間および停止時間を算出する。
【0067】
具体的には、制御部5(画像形成部61)は、治療用線源110による治療中の全ての第2画像P2を取得する。そして、制御部5は、現在のフレームの第2画像P2における治療用線源110の位置(
図5中点線で示す。)とを比較する。その結果、現在のフレームの第2画像P2と過去のフレームの第2画像P2とにおいて、治療用線源110の位置が実質的に変化していなければ、治療用線源110が停止していると判別される。一方、現在のフレームの第2画像P2とにおいて、治療用線源110の位置が変化していれば、治療用線源110が移動していると判別される。
【0068】
そして、本実施形態では、治療用線源110が停止している状態の第2画像P2のフレーム数とフレームレートとに基づいて、治療用線源110の停止時間が算出される。一方、治療用線源110が移動している状態の第2画像P2のフレーム数とフレームレートとに基づいて、治療用線源110の移動時間が算出される。なお、フレームとは、動画のもとになる静止画の1コマのことである。また、フレームレート(単位:fps)とは、動画において、単位時間あたりに処理されるフレーム数(静止画像数、コマ数)である。
【0069】
例えば、
図6に示すように、治療用線源110が移動している状態の第2画像P2(移動開始(t1)から移動終了(t2)までの第2画像P2)のフレーム数がN1[枚]であり、フレームレートがM[fps]であれば、治療用線源110の移動時間tは、フレーム数とフレームレートとの商(t=N1/M)により算出される。
【0070】
一方、治療用線源110が停止している状態の第2画像P2(移動の終了(t2)から移動の開始(t3)までの第2画像P2)のフレーム数がN2[枚]であり、フレームレートがM[fps]であれば、治療用線源110の停止時間tは、フレーム数とN2とフレームレートMとの商(t=N2/M)により算出される。
【0071】
このように、治療用線源110の移動時間および停止時間が制御部5により自動的に算出されるので、使用者(医師等)の負担を軽減することができる。また、第2画像P2に基づいて、治療用線源110の位置、移動時間および停止時間が算出されるので、それらの精度を向上させることができる。特に、制御部5は、第2画像P2のフレーム数とフレームレートとに基づいて、治療用線源110の移動時間および停止時間を算出するので、その算出処理を容易に行うことができる。
【0072】
また、制御部5は、第2画像P2に基づいて算出した治療用線源110の移動時間および停止時間と、治療装置100が有するワイヤ120の送出信号とを比較することが可能である。すなわち、治療装置100(送出機構130)は、ワイヤ120の送出を、ワイヤ120の送出を開始および停止する信号により制御している。制御部5は、ワイヤ120の送出を開始および停止の信号から治療用線源110の移動時間および停止時間を算出することが可能である。そして、制御部5は、第2画像P2から算出された治療用線源110の移動時間および停止時間を、それぞれ、ワイヤ120の送出を開始および停止する信号から算出された治療用線源110の移動時間および停止時間と比較することが可能である。
【0073】
そして、本実施形態では、制御部5により算出された治療用線源110の停止時間と、予め治療計画により定められた治療用線源110の停止時間との差が、所定の値(第1閾値)を超えた場合、報知部8が使用者に異常を報知(警告)するように構成されている。具体的には、報知部8は、音や光源の点滅等により異常を使用者に報知する。なお、表示部4に警告を表示することにより、所定の値を超えたこと(異常)を使用者に報知してもよい。
【0074】
このように、実際に治療用線源110から被検体10の腫瘍組織への放射線の照射時間が、治療計画に予め定められた照射時間から乖離した場合、報知部8(表示部4)による警告が行われる。この警告に基づいて、使用者が被検体10に対する放射線による治療を停止することにより、治療計画と乖離した時間の間、治療用線源110から放射線が被検体10に対して照射されることを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、
図6に示すように、制御部5は、第2画像P2に基づいて治療用線源110の移動距離Lを算出するように構成されている。具体的には、治療用線源110が移動を開始した時点(t1)の第2画像P2における治療用線源110の位置(
図6中点線で示す。)と、治療用線源110が移動を停止した時点(t2)の第2画像P2にける治療用線源110の位置(
図6中実線で示す。)との差分から、治療用線源110の移動距離Lを算出することが可能である。このように、治療用線源110の移動距離Lが制御部5により自動的に算出されるので、使用者(医師等)の負担を軽減することができる。
【0076】
そして、本実施形態では、制御部5により算出された治療用線源110の移動距離Lと、予め治療計画により定められた治療用線源110の移動距離との差が、所定の値(第2閾値)を超えた場合に、報知部8が使用者に異常を放置(警告)するように構成されている。具体的には、報知部8は、音や光源の点滅等により異常を使用者に報知する。なお、表示部4に警告を表示することにより、所定の値を超えたこと(異常)を使用者に報知してもよい。
【0077】
このように、被検体10のある治療部位から次の治療部位までの距離が、予め治療計画により定められた距離と乖離していた場合、報知部8(表示部4)による報知(異常)が行われる。この警告に基づいて、使用者が被検体10に対する放射線による治療を停止することにより、治療用線源110が治療計画と乖離した距離を移動した状態で(すなわち、治療計画で定められた位置とは異なる位置で)、放射線による治療が行われることを抑制することができる。
【0078】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0079】
上記実施形態では、制御部5は、第1画像P1と第2画像P2とを重ね合わせた合成画像P3を表示部4に表示するように制御するが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部5は、第1画像P1と第2画像P2と並べて表示部4に表示するように制御してもよい。この場合、第1画像P1および第2画像P2は、表示部4を構成する単一のディスプレイに同時に表示してもよく、併設された2つのディスプレイに別個に表示するようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、位置調整部62は、第1画像P1’と第2画像P2との位置調整を、C型アーム33の位置情報に基づいて行うが、本発明はこれに限定されない。例えば、位置調整部62は、第1画像P1’および第2画像P2から被検体10の共通する特徴点を複数抽出し、これらの抽出された特徴点に基づいて、第1画像P1’と第2画像P2との位置調整を行うようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、C型アーム33(支持部材)がX線管31とFPD32とを一体的に回転可能に支持するが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持部材は、天板21に対して、X線管31とFPD32とを相対的にスライド可能に支持してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、制御部5は、治療用線源110が停止(移動)している状態の第2画像P2のフレーム数とフレームレートとに基づいて、治療用線源110の停止(移動)時間を算出するが、本発明はこれに限られない。例えば、制御部5は、治療用線源110が移動を開始した際に撮影された第2画像P2の撮影時刻と、治療用線源110が移動を終了した際に撮影された第2画像P2の撮影時刻とから、治療用線源110の移動時間および停止時間を算出してもよい。
【0083】
具体的には、
図6に示すように、ある時刻でのフレームの第2画像P2における治療用線源110の位置と、他の時刻でのフレームの第2画像P2における治療用線源110の位置とを比較することにより、治療用線源110の停止または移動しているかが判別される。そして、治療用線源110が移動を終了した際に撮影された第2画像P2の撮影時刻(t2)から、治療用線源110の移動を開始した際に撮影された第2画像P2の撮影時刻(t1)を差分することにより、治療用線源110の移動時間(t2-t1)が算出される。また、治療用線源110が移動を開始した際に撮影された第2画像P2の撮影時刻(t3)から、移動を終了した際に撮影された第2画像P2の撮影時刻(t2)を差分することにより、治療用線源110の停止時間(t3-t2)が算出される。
【0084】
また、上記実施形態では、報知部8は、第1閾値を超えた場合と第2閾値を超えた場合との双方の場合に異常を報知するが、本発明はこれに限られない。例えば、放射線撮影装置1には、第1閾値を超えた場合に異常を報知する第1報知部と、第2閾値を超えた場合に異常を報知する第2放置部とを設けるようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、治療計画用ワークステーション160に送信される第1画像P1は、CTライク画像であるが、本発明はこれに限られない。例えば、かかる第1画像P1は、撮影部3により2方向(Z方向およびY方向)から撮影された画像であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、第2画像P2と合成もしくは並べて表示する第1画像P1’は、ボリュームレンダリング画像であるが、本発明はこれに限られない。例えば、かかる第1画像P1’は、サーフェスレンダリング画像、MIP(Maximum Intensity Projection)画像、DRR(Dijital Reconstructed Radiography)画像、MPR(Multi Planar Reconstruction)画像等であってもよい。また、治療計画用ワークステーション160に送信される撮影部3により2方向(Z方向およびY方向)から撮影された画像を、第2画像P2と合成もしくは並べて表示する第1画像P1’として用いることもできる。
【0087】
また、第2画像P2と並べて表示する画像は、第1画像P1’に限らず、第1画像P1であってもよい。さらに、第2画像P2を表示するタイミングで、第1画像P1またはP1’を非表示にするようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、位置調整部62は、第1画像P1’と第2画像P2との位置調整を行うが、本発明はこれに限られない。例えば、位置調整部62は、第1画像P1と第2画像P2との位置調整を行うようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、画像処理部6は、合成画像P3を形成するのに先立って、前述のような画像処理を第1画像P1’に対して行うが、本発明はこれに限られない。例えば、画像処理部6は、画像処理を第1画像P1に対して行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 放射線撮影装置
2 載置部
21 天板
22 再構成ボックス
23 変位機構
3 撮影部
31 X線管(X線照射部)
32 PFD(検出部)
33 C型アーム(支持部材)
4 表示部
5 制御部
6 画像処理部
61 画像形成部
62 位置調整部
7 記憶部
8 報知部
10 被検体
100 治療装置
110 治療用線源
120 ワイヤ
130 送出機構
140 アプリケータ
150 線源移送チューブ
160 治療計画用ワークステーション
P1 第1画像
P2 第2画像
P3 合成画像