(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ティシュペーパーの製造方法およびその方法により製造されたティシュペーパー製品
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A47K10/16 D
A47K10/16 C
(21)【出願番号】P 2021153146
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2018106907の分割
【原出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 健太
(72)【発明者】
【氏名】森本 浩
(72)【発明者】
【氏名】松永 智弘
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-068765(JP,A)
【文献】特開2012-045389(JP,A)
【文献】特開2011-207580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤が添加されたティシュペーパーの製造方法であって、
抄紙工程で製造されたティシュペーパーに保湿剤を塗布する工程を含む塗工工程と、
前記保湿剤が塗布されたティシュペーパーをロール状にした第1ロールを非透水性部材で覆うカバー工程と、
前記覆われた第1ロールに前記保湿剤を馴染ませるエージングを行うため、前記カバー工程の後、前記覆われた第1ロールを設置エリアに所定時間設置したままにしておくエージング工程と、を含み、
前記エージング工程が行われる前記設置エリア内の温度は、前記塗工工程が行われる塗工エリア内の温度よりも低いことを特徴とするティシュペーパーの製造方法。
【請求項2】
前記所定時間は、3時間以上12時間以下であることを特徴とする請求項1に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項3】
前記所定時間は、3時間以上6時間以下であることを特徴とする請求項2に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項4】
前記第1ロールは、前記保湿剤の塗布開始から、60分以内に前記非透水性部材で覆われることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項5】
前記塗工工程は、前記保湿剤が塗布されたティシュペーパーを巻き取ってロール状にする巻取り工程を含み、
前記巻取り工程と前記カバー工程との間に5分以上の間隔を空けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項6】
前記エージング工程において、前記覆われた第1ロールは、前記第1ロールの巻き軸が垂直になるように前記設置エリアに設置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項7】
前記非透水性部材は、袋状となっており、
前記カバー工程において、前記第1ロールは、その巻き軸が垂直になるように前記設置エリア内において板状部材に設置されて、前記袋状の非透水性部材によって覆いかぶせられ、
前記袋状の非透水性部材の開口部が前記板状部材に固定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項8】
前記抄紙工程で製造された1プライのティシュペーパーは、2プライで重ねられた状態で巻かれてロール状になっており、そのロール状のティシュペーパーを第2ロールとしたとき、前記第2ロールの巻径は、1100mm以下であり、前記第2ロールの巻幅は、200mm以上2500mm以下であり、前記第2ロールの巻長さは、1000m以上7000m以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項9】
前記塗工工程は、前記抄紙工程で製造されたティシュペーパーの両面に前記保湿剤を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項10】
前記エージング工程の後のティシュペーパーロールから引き出したティシュペーパーを所望の幅に切断する工程と、前記切断されたティシュペーパーを折り畳む工程と、前記折り畳まれたティシュペーパーの束をカートンに充填する工程と、をさらに含み、
前記折り畳む工程は、ロータリー式またはマルチスタンド式のインターフォルダを含む設備において行われることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項11】
前記非透水性部材は、プラスチック製フィルムで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項12】
前記プラスチック製フィルムは、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含むことを特徴とする請求項11に記載のティシュペーパーの製造方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のティシュペーパーの製造方法により製造されたティシュペーパーをカートンに充填したティシュペーパー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿剤が添加されたティシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌触りを良くするため、保湿剤を添加されたティシュペーパーが広く使用されている。
【0003】
当該ティシュペーパーの製造としては、原反ロールから引き出された連続シートに対して保湿剤を塗布して巻き取り、塗布後のロール状の連続シートを所定時間設置し保湿剤を連続シートに馴染ませ、その後製品幅に裁断され折り畳まれることによって、保湿剤が添加されたティシュペーパーが製造される。この製造については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、保湿剤を上記連続シートに馴染ませる上記工程が行われる、上記連続シートを設置するエリア内の温度と、上記保湿剤を塗布する工程が行われるエリア内の温度とが適正化されていないと、保湿剤が不必要に揮発するおそれがある。
【0006】
これらの点について、特許文献1に記載された発明では考慮されておらず、ティシュペーパーに保湿剤を馴染ませる最適な方法は依然として改良の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、ティシュペーパーから保湿剤が不必要に揮発することを抑制することが可能なティシュペーパーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるティシュペーパーの製造方法は、保湿剤が添加されたティシュペーパーの製造方法であって、抄紙工程で製造されたティシュペーパーに保湿剤を塗布する工程を含む塗工工程と、前記保湿剤が塗布されたティシュペーパーをロール状にした第1ロールを非透水性部材で覆うカバー工程と、前記覆われた第1ロールに前記保湿剤を馴染ませるエージングを行うため、前記カバー工程の後、前記覆われた第1ロールを設置エリアに所定時間設置したままにしておくエージング工程と、を含み、前記エージング工程が行われる前記設置エリア内の温度は、前記塗工工程が行われる塗工エリア内の温度よりも低いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるティシュペーパー製品は、本発明によるティシュペーパーの製造方法により製造されたティシュペーパーをカートンに充填したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ティシュペーパーから保湿剤が不必要に揮発することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、ティシュペーパーの製造方法のうち塗工工程を行う装置のブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、ティシュペーパーの製造方法のフローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるティシュペーパーの製造方法の一実施形態について、
図1および
図2を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本形態の態様に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態によるティシュペーパーの製造方法は、抄紙工程、塗工工程、カバー工程、エージング工程、およびカートン充填工程の5つの工程を含むものである。
【0014】
抄紙工程を行う抄紙装置(抄紙手段)は、抄紙原料から複数の第1次原反ロールを製造する。
【0015】
本発明では、抄紙原料としてのパルプスラリーに含まれるパルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)のような化学パルプが挙げられる。また、木材パルプとしては、例えば、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)のような半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)のような機械パルプが挙げられる。非木材パルプとしては、例えば、コットンリンターやコットンリントのような綿系パルプ、麻、麦わら、バガスのような非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。脱墨パルプとしては、例えば、古紙を原料とし、脱墨することで得られるパルプが挙げられる。なお、パルプ成分には、上記のパルプのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。パルプ成分としては、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。中でも、パルプ成分としては、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)とを併用することがより好ましい。
【0016】
本実施形態では、パルプスラリーは、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)70質量%と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量%との混合物を用意し、この混合物0.1質量部に対して水99.9質量部を添加し調製したものである。
【0017】
また、本実施形態では、第1次原反ロールに巻かれた連続シート(原紙)は、上記パルプスラリーを、2層抄きツインワイヤーフォーマーを用いて抄造した後、脱水および乾燥することで得られるものであって、坪量が15.1g/m2のものである。
【0018】
図1に本実施形態に係る、ティシュペーパーの製造方法のうち塗工工程を行う塗工装置(塗工手段)1のブロック図を示す。塗工装置1は、複数の第1次原反ロールから引き出された(または繰り出された)連続シート(1プライのティシュペーパー)を重ねるプライ工程を行うプライ部(プライ手段)RPと、プライされた連続シートに対して保湿剤を塗布する塗布工程を行う塗布部(塗布手段)2とを含んで構成される。
【0019】
本実施形態では、塗工工程において、抄紙工程にて抄紙された2本の第1次原反ロールW
R1を塗工エリアに移動させ、
図1に示すように、塗工装置1にセットする。第1次原反ロールW
R1に巻かれた連続シートW
1は、プライするときに内側になる内側面(すなわち接着面)F
Bと、外側になる外側面F
Fとを有する。そして、塗工装置1は、
図1に示すように、巻戻しリールR
U1aによって第1次原反ロールW
R1aから加工速度V
Uaで繰り出された1層の連続シートW
1の内側面F
Bと、巻戻しリールR
U1bによって第1次原反ロールW
R1bから加工速度V
Ubで繰り出された1層の連続シートW
1の内側面F
Bと、をプライ部R
Pにおいて重ね合わせ、第1層F
1と第2層F
2とを有する2層の積層連続シート(2プライのティシュペーパー)W
2を製造する。次に、塗工装置1は、
図1に示すように、プライされた積層連続シートW
2に対して、塗布部2において、保湿剤を塗布する。保湿剤の塗布後、塗工装置1は、巻取りリールR
Wによって、保湿剤が塗布された積層連続シートW
2を巻き取り、第2次原反ロールW
R2を製造する。その後、当該第2次原反ロールW
R2は、後述のエージング用カバー部材で覆われることが可能な大きさにカットされる。このカットされたロールを、以下「第1ロール」という。
【0020】
本発明では、保湿剤としては、例えば、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、オオムギエキス、オレンジエキス、海藻エキス、カミツレエキス、キューカンバエキス、コンフリーエキス、ゴボウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シソエキス、セージエキス、デュークエキス、冬虫夏草エキス、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、ブドウ葉エキス、フユボダイジュエキス、プルーンエキス、ヘチマエキス、ボタンピエキス、マイカイエキス、モモノハエキス、ユリエキス、リンゴエキス、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、ジメチルシリコーン、シリコーン油、変性シリコーン、大豆油、椿油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、ヤシ油、ラノリン、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、ショ糖、ソルビトール、フルクトース、マルトース、マルチトール、マンノース、ミツロウ、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、ラムノース、キシロビオース、キシロオリゴ糖、チューベローズポリサッカライド、トリサッカライド、トレハロース、可溶性コラーゲン、グリチルリチン、コンドロイチン硫酸、ジグリセリン、スクワラン、セラミド類似化合物、トリグリセリン、尿素、ビタミンCリン酸エステルカルシウム塩、ビタミンE、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒノキチオール、流動パラフィン、ワセリン、多価アルコール等が挙げられる。これらの保湿剤の中でも、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、コンフリーエキス、シソエキス、セージエキス、セラミド類似化合物、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、フユボダイジュエキス、ボタンピエキス、ヒマシ油、ホホバ油、ラノリン、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、ラムノース、キシロオリゴ糖、可溶性コラーゲン、グリセリン、コンドロイチン硫酸、スクワラン、尿素および多価アルコールが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。中でも、保湿剤は、グリセリンを含むことが好ましい。保湿剤には、上記化合物のうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本実施形態では、保湿剤として、グリセリン85質量%と水15質量%とを含有するものを使用した。そして、当該構成の保湿剤を、オフセットグラビア方式を用いて2プライの原紙に塗布した。
【0022】
なお、本実施形態では、塗工装置1がプライ工程を行う手段を含んでいるがこの限りでなく、本発明では、塗工装置1がプライ工程を行う手段を含まずに、塗布工程とプライ工程とを別々に行ってもよい。つまり、先にプライ工程によって2層にされた積層連続シートを巻き取り、巻き取ったロールを塗工エリアに移動させ、当該ロールから引き出した積層連続シートに対して保湿剤を塗布してもいい。この際、抄紙工程で製造された1プライのティシュペーパー(連続シート)は、2プライで重ねられた状態で巻かれてロール状になっている。本発明では、そのロール状のティシュペーパーを第2ロールとしたとき、当該第2ロールの巻径は、1100mm以下であることが好ましく、巻幅(ロール幅)は、200mm以上2500mm以下であることが好ましく、巻長さ(ロール長)は、1000m以上7000m以下であることが好ましい。本実施形態では、当該第2ロールの巻幅は1200mmであり、巻長さは5000mである。
【0023】
また、本実施形態では、塗布部2によって、積層連続シートW2の片面だけ保湿剤が塗布されているが、本発明では、積層連続シートW2の両面に保湿剤が塗布されてもよい。この構成により、ティシュペーパー全体に保湿剤を馴染ませる速度が速くなり、生産性を向上させることができる。
【0024】
本発明では、塗工工程は、保湿剤が塗布された連続シートを巻き取ってロール状にする巻取り工程を含むが、その巻取り工程とカバー工程との間に5分以上30分以内の間隔を空ける。これは、第1ロールにおいて、最も外側に位置するシート、つまり、後述のエージング用の非透水性部材に接触する可能性が高いシートの保湿剤を適度に揮発させ、非透水性部材で覆いやすくするためである。本実施形態では、上記巻取り工程とカバー工程との間隔(つまり、塗布終了(巻き取り後)からカバー開始までの時間)は10分である。
【0025】
保湿剤が塗布された第1ロールは、エージングエリア(以下、「設置エリア」ともいう)に移動され、その巻き軸が垂直になるようにパレットに設置され、パレットに載せたまま、床面または棚に保管される。
【0026】
本発明では、パレットに設置された第1ロールは、非透水性部材(例えば、プラスチック製フィルム)で胴巻きにして覆われうる。しかし、本発明では、この限りでなく、パレットに設置された第1ロールは、袋状の非透水性部材(プラスチック製フィルム)でかぶせられ、当該袋の開口をパレットに固定されることが好ましい。この構成により、胴巻きと比較して、第1ロールに対する密封性が向上し、保湿剤の揮発を抑制することができる。本実施形態では、上記非透水性部材は袋状になっており、後述のとおり、上記非透水性部材の素材はポリプロピレンである。また、本発明では、第1ロールは、エージングエリアではなく、上記塗工エリアやその他のエリアにおいて、非透水性部材に覆われてもよい。
【0027】
本発明に係る、第1ロールを覆う非透水性部材は、プラスチック製フィルムが好ましい。ここで、プラスチック製フィルムに機能を付与するために添加される添加剤等の低分子量成分は、プラスチック製フィルムの表面に表出しブリードする可能性があり、当該添加剤の臭いが、ティシュペーパーに移るおそれがある。本実施形態では、後述するように、エージング時間を3~12時間にすることで、当該添加剤の臭いの移りを抑制している。上記添加剤は、例えば、プラスチック製フィルムを柔らかくするために添加されている可塑剤や安定剤が挙げられる。
【0028】
本発明では、上記非透水性部材は、例えば、プラスチック製フィルムで構成されており、上記プラスチック製フィルムは、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどを含む。上記プラスチック製フィルムは、PP(ポリプロピレン)またはPE(ポリエチレン)を含むことが好ましい。本実施形態では、上記非透水性部材の素材はポリプロピレンである。プラスチック製フィルムは、例えば、厚さ0.02mmのもので構成されうる。また、上記可塑剤の例としては、特に限定されないが、例えばPPランダム共重合体等が挙げられる。
【0029】
また、本発明では、カットされた第1ロールは、塗布部2による保湿剤の塗布開始から、60分以内にカバー部において非透水性部材で覆われ始める。これは、エージングエリアに移動する際に、保湿剤が不必要に揮発するのを抑制するためである。本明細書および特許請求の範囲において、「覆う」とは、いわゆる、物の上や外側に他の物をかぶせる意味の「覆う」のほか、「包む」や、「密封する」を含むものとして参照される。本実施形態では、カットされた第1ロールは、塗布部2による保湿剤の塗布開始から、50分以内にカバー部において非透水性部材で覆われ始める。
【0030】
非透水性部材によって覆われた第1ロールは、エージングエリアにおいて、保湿剤を馴染ませるエージングを行うため、カバー工程の後、設置エリアに所定時間設置したままにしておかれる。本発明では、当該所定時間は、本発明の効果を有効に発揮する上で、3時間以上12時間以下であることが好ましく、3時間以上6時間以下であることがより好ましい。本実施形態では、当該所定時間は4時間である。
【0031】
エージング工程が行われる設置エリア内の温度は、塗工工程が行われる塗工エリア内の温度よりも低い。これにより、ティシュペーパーから保湿剤が不必要に揮発することを抑制することが可能となっている。
【0032】
カートン充填工程を行うカートン充填装置(カートン充填手段)は、エージング工程の後の第1ロールから引き出したティシュペーパーを所望の幅(例えば、製品幅)に切断(裁断)し、切断されたティシュペーパーを折り畳み、折り畳まれたティシュペーパーの束をカートンに充填する。当該折り畳む工程は、ロータリー式またはマルチスタンド式のインターフォルダを含む設備において行われる。上述したティシュペーパーの製造方法により製造されたティシュペーパーをカートンに充填することで、保湿剤が添加されたティシュペーパー製品が出来上がる。
【0033】
図2は、本実施形態に係る、ティシュペーパーの製造方法のフローである。
【0034】
抄紙工程S1において、抄紙手段は、抄紙原料から第1原反ロールを製造する。
【0035】
塗工工程S2において、塗工手段(塗工装置1)は、塗工エリアに移動させられた2本の第1原反ロールから引き出された1層のティシュペーパーを2層に重ね合わせ、2プライのティシュペーパーの片面(または両面)に保湿剤を塗布し、そして、保湿剤塗布後のティシュペーパーを巻き取ってカットして第1ロールを製造する。
【0036】
カバー工程S3において、保湿剤塗布後の第1ロールをエージングエリアに移動させ、エージングエリア内においてパレットに設置してプラスチック製フィルムで胴巻きにして覆う(または、例えば袋状のプラスチック製フィルムでかぶせ、当該袋の開口をパレットに固定する)。
【0037】
エージング工程S4において、プラスチック製フィルムで覆った第1ロールは、所定時間(例えば、3時間から12時間)、パレットに設置したままにされ、ティシュペーパーに保湿剤を馴染ませる。
【0038】
カートン充填工程S5において、カートン充填手段は、保湿剤を馴染ませた後の第1ロールから引き出したティシュペーパーを、製品幅に裁断した後に、ロータリー式またはマルチスタンド式のインターフォルダによって折り畳みカートンに充填する。
【0039】
従来、保湿剤を添加した保湿ティシュペーパーの製造として、原反ロールから引き出された連続シートに対して保湿剤を塗布して巻き取り、塗布後のロール状の連続シートを所定時間設置し保湿剤を連続シートに馴染ませ、その後製品幅に裁断され折り畳まれることによって、保湿剤が添加されたティシュペーパーが製造されることが、例えば特許文献1に記載されている。
【0040】
ここで、保湿剤を上記連続シートに馴染ませる上記工程が行われる、上記連続シートを設置するエリア内の温度と、上記保湿剤を塗布する工程が行われるエリア内の温度とが適正化されていないと、保湿剤が不必要に揮発するおそれがある。
また、保湿剤を上記連続シートに馴染ませる上記工程において、保湿剤の揮発を抑えるため、塗布後のロール状の連続シートをプラスチック製フィルムで胴巻きにした場合、連続シートに保湿剤を馴染ませる上記時間が長すぎると、巻いたプラスチック製フィルムの臭い(例えば、可塑剤の臭い)が、ティシュペーパーに移るおそれが生じる。一方、上記時間が短いと、保湿剤がティシュペーパーに充分に馴染まない可能性がある。
【0041】
本実施形態によれば、ティシュペーパーから保湿剤が不必要に揮発することを抑制することが可能となる。
加えて、本実施形態によれば、上記非透水性部材が保湿剤塗布後のロール状のティシュペーパーを所定時間覆うので、保湿剤が不必要に揮発することが抑えられ、保湿剤をティシュペーパーに充分に浸透させることが可能となる。また、エージングする時間を一定の範囲に制限することによって、上記非透水性部材の臭いがティシュペーパーに移ることを抑制することが可能となる。
【0042】
また、ティシュペーパー全体に充分に保湿剤が浸透し、ムラなく行き渡るため、肌触り感やしっとり感を向上させることができる。
【0043】
さらに、従来と比較してエージング時間が短いため、製造にかける時間が短縮され、生産性を向上させることが可能となる。
【0044】
<その他>
本発明は、上述した各形態や、各実施例、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【0045】
例えば、上記各形態、各実施例またはその変形例に係るティシュペーパーは、2プライのものであるが、本発明ではこれに限られず、1プライや3プライ以上のものも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
WR1a、WR1b 第1次原反ロール
WR2 第2次原反ロール
RU1a、RU1b 巻戻しリール
RW 巻取りリール
RP プライ部
VUa、VUb 加工速度
W1 連続シート
W2 積層連続シート
FF 積層連続シートの外側面
FB 積層連続シートの内側面
F1 第1層シート
F2 第2層シート
1 塗工装置
2 塗布部