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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/29 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021156843
(22)【出願日】2021-09-27
(62)【分割の表示】P 2018111309の分割
【原出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2021193755
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】助川 貴
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良太
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 千尋
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0158591(US,A1)
【文献】特開2019-110212(JP,A)
【文献】特開2019-135763(JP,A)
【文献】特開2012-094585(JP,A)
【文献】特開2017-126715(JP,A)
【文献】特開2014-207368(JP,A)
【文献】特開2014-203862(JP,A)
【文献】特開2016-092390(JP,A)
【文献】特開2011-223025(JP,A)
【文献】特開2014-099587(JP,A)
【文献】特開2018-93010(JP,A)
【文献】特開2018-78202(JP,A)
【文献】特開2005-057104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に延びる形状の巻芯部と、前記巻芯部の延びる方向の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の延びる方向の第2端に設けられた第2鍔部とを有するコアと、
前記第1鍔部に設けられた第1電極部および第2電極部と、
前記第2鍔部に設けられた第3電極部および第4電極部と、
前記巻芯部に巻回され、前記第1電極部と前記第3電極部とに電気的に接続された第1ワイヤと、前記第2電極部と前記第4電極部とに電気的に接続された第2ワイヤとを含むコイルと
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部は、それぞれ、前記巻芯部側を向く内面と、前記内面と反対側を向く外面と、前記内面と前記外面とを接続する下面と、前記下面と反対側を向く上面と、前記内面と前記外面とを接続し前記下面と前記上面とを接続する2つの側面とを有し、
前記第1電極部は、前記下面上に設けられる下面側下地電極と、前記外面上に設けられる外面側下地電極とを有し、前記外面側下地電極は、前記下面側下地電極の前記外面側の端部上から前記外面上に延びる形状であり、
前記外面側下地電極は、前記2つの側面に交差する方向の両側において、端縁を有し、前記外面側下地電極の両側の前記端縁は、前記側面から離れた位置に存在し
前記下面側下地電極の前記幅方向の寸法は、前記外面側下地電極の前記幅方向の寸法よりも大きい、コイル部品。
【請求項2】
前記下面側下地電極は、焼結体であり、前記外面側下地電極は、金属膜である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1電極部は、前記下面側下地電極および前記外面側下地電極を覆う金属被膜を有する、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記金属被膜は、Ni層およびSn層を含む、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記金属被膜は、Cu層を含む、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記Cu層、前記Ni層および前記Sn層は、内側から外側に順に並ぶ、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記金属被膜は、最外層にPd層またはAu層を含む、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記下面側下地電極は、ガラスとAgを含む、請求項1から7の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項9】
前記外面側下地電極は、NiCu層を含む、請求項1から8の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項10】
前記外面側下地電極は、NiCr層を覆うNiCu層を含む、請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第2電極部、前記第3電極部および前記第4電極部は、それぞれ、前記第1電極部と同様の構成を有する、請求項1から10の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1鍔部および前記第2鍔部は、それぞれ、前記内面と前記外面とを接続し前記下面と前記上面とを接続する側面を有し、前記第1鍔部は、前記上面と前記外面との間および前記上面と前記側面との間に、面取り部を有する、請求項1から11の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第1鍔部は、前記内面と前記上面との間に、前記面取り部よりも小さい小面取り部を有する、請求項12に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記第1鍔部の前記外面には、前記下面側から前記上面側に延びる溝部が形成されており、
前記外面側下地電極は、前記溝部に埋め込まれている、請求項1から13の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項15】
前記第2鍔部は、前記第1鍔部と同様の構成を有する、請求項12から14の何れか一つに記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤを含む巻線型のコイル部品としては、特開2014-216525号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このコイル部品は、巻芯部を含むコアと、巻芯部に巻回されたコイルと、コアの下面に設けられコイルに電気的に接続された電極部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-216525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のコイル部品において、より小型にすると、実装基板へ実装する際、実装はんだの付着量も少なくなるため、コイル部品と実装基板との固着力が低下する。
【0005】
そこで、本開示の課題は、コイル部品と実装基板との固着力が向上するコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるコイル部品は、
一定方向に延びる形状の巻芯部と、前記巻芯部の延びる方向の第1端に設けられた第1鍔部と、前記巻芯部の延びる方向の第2端に設けられた第2鍔部とを有するコアと、
前記第1鍔部に設けられた第1電極部および第2電極部と、
前記第2鍔部に設けられた第3電極部および第4電極部と、
前記巻芯部に巻回され、前記第1電極部と前記第3電極部とに電気的に接続された第1ワイヤと、前記第2電極部と前記第4電極部とに電気的に接続された第2ワイヤとを含むコイルと
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部は、それぞれ、前記巻芯部側を向く内面と、前記内面と反対側を向く外面と、前記内面と前記外面とを接続する下面と、前記下面と反対側を向く上面とを有し、
前記第1電極部は、前記下面上に設けられる下面側下地電極と、前記外面上に設けられる外面側下地電極とを有し、前記外面側下地電極は、前記下面側下地電極の前記外面側の端部上から前記外面上に延びる形状である。
【0007】
本開示のコイル部品によれば、下面上の下面側下地電極に加え、下面側下地電極の上から外面上に延びる外面側下地電極を別に有することで、実装時に実装はんだが下面から外面に沿って濡れ上がってフィレットを形成することができ、コイル部品と実装基板との固着力が向上する。特に、本開示のコイル部品は、固着力を向上するにあたって、小型化に適し、低コストであり、設計自由度が高く、製造容易な構成を備える。
【0008】
また、コイル部品の一実施形態では、前記下面側下地電極は、焼結体であり、前記外面側下地電極は、金属膜である。
【0009】
前記実施形態によれば、下面側下地電極は、焼結体であるので、下面側下地電極自体の強度や耐衝撃性を確保できるとともに、下面側下地電極と第1鍔部との固着力を確保できる。一方、外面側下地電極は、金属膜であるので、薄膜化可能となり、実装基板における実装面積への影響を低減できる。
【0010】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1電極部は、前記下面側下地電極および前記外面側下地電極を覆う金属被膜を有する。
【0011】
前記実施形態によれば、下面側下地電極と外面側下地電極が金属被膜により一体化され、実装信頼性が向上する。
【0012】
また、コイル部品の一実施形態では、前記金属被膜は、Ni層およびSn層を含む。
【0013】
前記実施形態によれば、第1電極部のはんだ濡れ性と耐食性が向上する。
【0014】
また、コイル部品の一実施形態では、前記金属被膜は、Cu層を含む。
【0015】
前記実施形態によれば、第1電極部に発生する応力が緩和されるとともに、耐食性がさらに向上する。
【0016】
また、コイル部品の一実施形態では、前記Cu層、前記Ni層および前記Sn層は、内側から外側に順に並ぶ。
【0017】
前記実施形態によれば、第1電極部に発生する応力が緩和されるとともに、はんだ濡れ性と耐食性が向上する。
【0018】
また、コイル部品の一実施形態では、前記金属被膜は、最外層にPd層またはAu層を含む。
【0019】
前記実施形態によれば、第1電極部の耐食性が向上し、金属被膜を薄くすることができる。
【0020】
また、コイル部品の一実施形態では、前記下面側下地電極は、ガラスとAgを含む。
【0021】
前記実施形態によれば、下面側下地電極自体の強度や耐衝撃性をより確保できるとともに、下面側下地電極と鍔部の固着力をより確保できる。
【0022】
また、コイル部品の一実施形態では、前記外面側下地電極は、NiCu層を含む。
【0023】
前記実施形態によれば、外面側下地電極が薄膜であっても高い靭性が確保され、実装面積への影響が低減されつつ、耐熱衝撃性が向上する。
【0024】
また、コイル部品の一実施形態では、前記外面側下地電極は、NiCr層を覆うNiCu層を含む。
【0025】
前記実施形態によれば、下層のNiCr層により、外面側下地電極と第1鍔部との密着性が向上する。また、第1電極部が金属被膜を含む場合、上層のNiCu層により、外面側下地電極と金属被膜との密着性が向上する。
【0026】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第2電極部、前記第3電極部および前記第4電極部は、それぞれ、前記第1電極部と同様の構成を有する。
【0027】
前記実施形態によれば、第2電極部、第3電極部および第4電極部が、それぞれ、第1電極部と同様の構成を有することで、コイル部品と実装基板との固着力がさらに向上し、設計の自由度および製造の容易性がさらに向上する。
【0028】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1鍔部および前記第2鍔部は、それぞれ、前記内面と前記外面とを接続し前記下面と前記上面とを接続する側面を有し、前記第1鍔部は、前記上面と前記外面との間および前記上面と前記側面との間に、面取り部を有する。
【0029】
前記実施形態によれば、第1鍔部の上面と第2鍔部の上面に板部材を接着する場合、少なくとも第1鍔部の面取り部に接着剤のたまり場ができ、接着剤が少なくとも第1鍔部の外面側や側面側に漏れにくくなる。
【0030】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1鍔部は、前記内面と前記上面との間に、前記面取り部よりも小さい小面取り部を有する。
【0031】
前記実施形態によれば、第1鍔部の上面と第2鍔部の上面に板部材を接着する場合、磁束が集中しやすい少なくとも第1鍔部の内面側の上面端部において、板部材との接続面積が増加するとともに磁路長が短縮化され、インダクタンス値の低減が抑制される。
【0032】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1鍔部の前記外面には、前記下面側から前記上面側に延びる溝部が形成されており、前記外面側下地電極は、前記溝部に埋め込まれている。
【0033】
前記実施形態によれば、外面側下地電極が外面において不要に伸びて形成されることを抑制でき、隣接する電極部が外面側下地電極を介して接続されることを低減できるため、さらなる小型化が可能となる。
【0034】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第2鍔部は、前記第1鍔部と同様の構成を有する。
【0035】
前記実施形態によれば、第2鍔部は、第1鍔部と同様の構成を有するため、上記の効果がさらに効果的に発揮される。
【発明の効果】
【0036】
本開示の一態様であるコイル部品によれば、コイル部品と実装基板との固着力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】コイル部品の第1実施形態を示す下面側からみた斜視図である。
図2A】Z撚りの撚り線部の拡大図である。
図2B】S撚りの撚り線部の拡大図である。
図3】コイル部品の簡略断面図である。
図4】コイル部品の第1鍔部の簡略断面図である。
図5】第1鍔部の好ましい形態を示す簡略断面図である。
図6】第1鍔部の好ましい形態を示す簡略断面図である。
図7】撚り線部を形成する方法を説明する説明図である。
図8】コイル部品の梱包形態を示す簡略図である。
図9】コイル部品の第2実施形態を示す簡略断面図である。
図10】コイル部品の第3実施形態を示す簡略下面図である。
図11A】実施例1のバンク領域を示す簡略断面図である。
図11B】実施例2のバンク領域を示す簡略断面図である。
図11C】実施例3のバンク領域を示す簡略断面図である。
図12A】比較例1のバンク領域を示す簡略断面図である。
図12B】比較例2のバンク領域を示す簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示の一態様を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、コイル部品の第1実施形態を示す下面側からみた斜視図である。図1に示すように、コイル部品1は、コア10と、コア10に巻回されたコイル20と、コア10に設けられコイル20が電気的に接続され、外部端子となる第1電極部31、第2電極部32、第3電極部33および第4電極部34と、コア10に取り付けられた板部材15とを備える。
【0040】
コア10は、一定方向に延びる形状であってコイル20が巻回された巻芯部13と、巻芯部13の延びる方向の第1端に設けられ、当該方向と直交する方向に張り出す第1鍔部11と、巻芯部13の延びる方向の第2端に設けられ、当該方向と直交する方向に張り出す第2鍔部12とを有する。コア10の材料としては、例えば、フェライトの焼結体や、磁性粉含有樹脂の成型体などの磁性体が好ましく、アルミナや、樹脂などの非磁性体であってもよい。なお、以下では、コア10の下面を、実装基板に実装される面とし、コア10の下面と反対側の面を、コア10の上面とする。
【0041】
第1鍔部11は、巻芯部13側を向く内面111と、内面111と反対側を向く外面112と、内面111と外面112とを接続する下面113と、下面113と反対側を向く上面114と、内面111と外面112とを接続し下面113と上面114とを接続する2つの側面115とを有する。同様に、第2鍔部12は、巻芯部13側を向く内面121と、内面121と反対側を向く外面122と、下面123と、上面124と、2つの側面125とを有する。第2鍔部12の下面123、上面124、側面125は、それぞれ第1鍔部11の下面113、上面114、側面115と同じ方向に向いている。なお、下面、上面は説明上のものであり、実際に鉛直方向下方、上方と対応していなくてもよい。
【0042】
板部材15は、第1鍔部11の上面114と第2鍔部12の上面124とに接着剤により取り付けられる。板部材15の材料は、例えば、コア10と同じである。コア10と板部材15は、ともに磁性体であるとき、閉磁路を構成し、インダクタンスの取得効率が向上する。
【0043】
第1鍔部11は、下面113側に、2つの足部を有し、一方の足部に、第1電極部31が設けられ、他方の足部に、第2電極部32が設けられている。第2鍔部12は、下面123側に、2つの足部を有し、第1電極部31が設けられた足部と同じ側にある一方の足部に、第3電極部33が設けられ、第2電極部32が設けられた足部と同じ側にある他方の足部に、第4電極部34が設けられている。図1に示すように、下面113、下面123は、それぞれ足部の下面部分から足部間の股部の斜面部分を通って股部の下面部分を含む部分を指す。なお、以下では、第1電極部31、第2電極部32、第3電極部33および第4電極部34をまとめて説明する場合に、電極部31~34と記載する場合がある。
【0044】
コイル20は、巻芯部13に巻回された第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を含む。すなわち、コイル20のコイル軸は、巻芯部の延びる方向と一致する。第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、例えば銅などの金属からなる導線がポリウレタンやポリアミドイミドなどの樹脂からなる被膜で覆われた絶縁被膜付導線である。第1ワイヤ21は、一端が第1電極部31と、他端が第3電極部33と電気的に接続されている。第2ワイヤ22は、一端が第2電極部32と、他端が第4電極部34と電気的に接続されている。第1ワイヤ21および第2ワイヤ22と、電極部31~34とは、例えば熱圧着、ろう付け、溶接などによって接続される。
【0045】
第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、巻芯部13に対して、同じ方向に巻回されている。これにより、コイル部品1では、差動信号など第1ワイヤ21と第2ワイヤ22とに逆相の信号が入力されれば、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22により発生する磁束が打ち消し合い、インダクタとしての働きが弱まり、当該信号を通過させる。一方、外来ノイズなど第1ワイヤ21と第2ワイヤ22とに同相の信号が入力されれば、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22により発生する磁束が強め合い、インダクタとしての働きが強まり、当該ノイズの通過を遮断する。したがって、コイル部品1は、差動信号などのディファレンシャルモードの信号の通過損失を低下しつつ、外来ノイズなどのコモンモードの信号を減衰させるコモンモードチョークコイルとして機能する。
【0046】
コイル部品1は、実装基板に実装される際、第1鍔部11の下面および第2鍔部12の下面が実装基板に対向する。このとき、巻芯部13が第1端から第2端に延びる方向と、実装基板の主面は平行となる。すなわち、コイル部品1は、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22のコイル軸が実装基板と平行となる横巻型である。
【0047】
(コイル20の詳細構成)
コイル20は、巻芯部13に巻回された巻回領域Z1と、巻芯部13に巻回されていない非巻回領域Z2とを有する。より詳細には、非巻回領域Z2は、巻回領域Z1の両側のそれぞれに位置し、巻芯部13から離れて電極部31~34に接続される領域である。
【0048】
コイル20の巻回領域Z1には、撚り線部25が存在する。図2A図2Bは、撚り線部25の拡大図である。図2Aは、Z撚りの撚り線部25aを示し、図2Bは、S撚りの撚り線部25bを示す。Z撚りの撚り線部25aの撚り方向とS撚りの撚り線部25bの撚り方向は、逆方向である。図2A図2Bに示すように、撚り線部25は、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた部分である。撚り線部25では、2本のワイヤ間の相対的な差異(線路長、浮遊容量の偏りなど)が小さくなるので、コイル部品1内でディファレンシャルモード信号がコモンモード信号に変換されて出力される、あるいはその逆に変換されて出力されるなどのモード変換出力が低減し、モード変換特性を良好なものとすることができる。なお、図2A図2Bの撚り線部25では、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22は密着して撚り合わされているが、互いの間隔が空いた箇所が存在していてもよく、全体的に間隔が空いたまま撚り合わされていてもよい。コイル部品1では、コイル20の巻回領域Z1がほぼ撚り線部25となっている。なお撚り線部25の撚り方向はZ撚りであってもよいし、S撚りであってもよいし、後述するようにZ撚りとS撚りとが混在していてもよい。
【0049】
図3は、コイル部品1の簡略断面図である。図3は、巻芯部13の第1端131から第2端132にかけて、巻芯部13の中心を通り、巻芯部13が延びる方向に沿った、コイル20および巻芯部13の断面の一部を示す図である。図3では、簡略化のため、撚り線部25を単線で示し、その断面は単なる一つの円形で表現されている。また、図3では、コイル20の巻芯部13の第1端131側から数えたターン序数を数字で示す。つまり、コイル20の巻回領域Z1では、撚り線部25が、巻芯部13の第1端131から第2端132に向かって、第1ターンから第28ターンの合計28ターン巻回されている。
【0050】
図3に示すように、コイル20の撚り線部25は、巻芯部13に連続して複数ターン巻回された第1層と、第1層から連続して第1層上に巻回された第2層と、を含む5つのバンク領域B1,B2,B3,B4,B5を有する。第1バンク領域B1、第2バンク領域B2、第3バンク領域B3、第4バンク領域B4および第5バンク領域B5は、巻芯部13の第1端131から第2端132に向かって順に配置され、隣り合うバンク領域は、互いに離隔している。ただし、第1バンク領域B1、第2バンク領域B2、第3バンク領域B3、第4バンク領域B4および第5バンク領域B5は、互いに間隔を空けずに密接していてもよい。なお、以下では、第1バンク領域B1、第2バンク領域B2、第3バンク領域B3、第4バンク領域B4および第5バンク領域B5をまとめて説明する場合に、第1から第5バンク領域B1~B5と記載する場合がある。
【0051】
第1から第5バンク領域B1~B5の第1層は、それぞれ、巻芯部13に直接に巻回され、第2層は、第1層上に直接に巻回される。具体的に述べると、第1バンク領域B1において、第1層は、巻芯部13に連続して巻回された第1ターンから第4ターンの4ターンにより構成され、第2層は、第1層の第4ターンから連続し、第1層の第3ターン上および第4ターン上に巻回された第5ターンの1ターンにより構成される。第2バンク領域B2において、第1層は、巻芯部13に連続して巻回された第6ターンから第9ターンの4ターンにより構成され、第2層は、第1層の第9ターンから連続し、第1層の第7ターン上から第9ターン上にかけて連続して巻回された第10ターンから第11ターンの2ターンにより構成される。第3バンク領域B3において、第1層は、巻芯部13に連続して巻回された第12ターンから第15ターンの4ターンにより構成され、第2層は、第1層の第15ターンから連続し、第1層の第13ターン上から第15ターン上にかけて連続して巻回された第16ターンから第17ターンの2ターンにより構成される。第4バンク領域B4において、第1層は、巻芯部13に連続して巻回された第18ターンから第21ターンの4ターンにより構成され、第2層は、第1層の第21ターンから連続し、第1層の第19ターン上から第21ターン上にかけて連続して巻回された第22ターンから第23ターンの2ターンにより構成される。第5バンク領域B5において、第1層は、巻芯部13に連続して巻回された第24ターンから第26ターンの3ターンにより構成され、第2層は、第1層の第26ターンから連続し、第1層の第24ターン上から第26ターン上にかけて連続して巻回された第27ターンから第28ターンの2ターンにより構成される。
【0052】
ここで、コイル部品1では、上記のように、第1から第4バンク領域B1~B4は、上層(第2層)のターン数は、上層の直下の下層(第1層)のターン数よりも、2ターン以上少ない疎巻となっている。具体的に述べると、第1バンク領域B1において、第1層のターン数は、4ターンであり、第2層のターン数は、1ターンである。第2、第3、第4バンク領域B2,B3,B4において、第1層のターン数は、4ターンであり、第2層のターン数は、2ターンである。なお、第5バンク領域B5においては、第1層のターン数は、3ターンであり、第2層のターン数は、2ターンであり、第2層のターン数は、第1層のターン数よりも、1ターン少ない。
【0053】
前記コイル部品1によれば、コイル20は、第2層を含むバンク領域B1~B5を有するので、撚り線部25が巻芯部13に1層分巻回された構成と比較して、同じ巻芯部13の長さに対して撚り線部25のターン数を増やすことができ、小型化又は高インダクタンス化を実現することができる。
【0054】
また、第1から第4バンク領域B1~B4は、第2層のターン数が第1層のターン数よりも、2ターン以上少ない疎巻であるので、撚り線部25の重なりによって発生する線間容量を低減でき、モード変換特性の悪化を抑制することができる。
【0055】
したがって、小型化又は高インダクタンス化を実現しつつ、モード変換特性の悪化を抑制することができる。
なお、通常、小型化又は高インダクタンス化の観点からは、巻芯部13へのコイル20の巻回効率を向上するため、第2層は可能な限り多くのターン数で巻回されることが望ましい。また、現実的には、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22の巻回形状の安定性から、図3に示すように、第2層は、第1層の隣接するターン間で形成される窪み上に巻回される。したがって、実現可能な範囲で第2層を可能な限り多く巻回する場合、第5バンク領域B5のように、第2層が第1層よりも1ターン少なく巻回される密巻となる。
一方で、コイル部品1では、上記思想とは異なり、第1から第4バンク領域B1~B4は、第2層のターン数が第1層のターン数よりも2ターン以上少ない疎巻である。つまり、コイル部品1の構成は、巻芯部13へのコイル20の巻回効率を多少犠牲にしても、撚り線部25の重なりによって発生する線間容量を低減し、モード変換特性の悪化を抑制した方が、有用な特性が得られる、という本願発明者らの新しい発見に基づいて初めて想到されるものである。
【0056】
また、コイル部品1では、図3に示すように、第1から第4バンク領域B1~B4において、第2層は、第1層の最終ターン側にずれている。具体的に述べると、第1から第4バンク領域B1~B4において、それぞれの第2層は、第1層の最終ターン、すなわち第1層のうち、第1層と第2層を接続する部分の直前で巻芯部に巻回されたターンである、第1バンク領域B1の第4ターン、第2バンク領域B2の第9ターン、第3バンク領域B3の第15ターン、第4バンク領域B4の第21ターン側にずれている。これにより、第1層と第2層を接続する撚り線部25の長さを短くでき、第1層と第2層を接続する撚り線部25で発生する線間容量を低減できる。また、第2層が、第1層のうち、第2層とターン序数の近い側に、近づくため、撚り線部25全体の合成線間容量を低減できる。
【0057】
特に、コイル部品1では、第1から第4バンク領域B1~B4において、第2層は、第1層の最終ターン上に巻回された部分を含む。具体的には、第1バンク領域B1,B2,B3,B4において、第2層はそれぞれ、第4ターン上に巻回された第5ターン、第9ターン上に巻回された第11ターン、第15ターン上に巻回された第17ターン、第21ターン上に巻回された第23ターンを含む。これにより、第1層と第2層を接続する撚り線部25の長さをより短くでき、第1層と第2層を接続する撚り線部25で発生する線間容量をより低減できる。また、第2層の一部が、第1層のうち、第2層とターン序数の最も近い最終ターン上に巻回されるため、撚り線部25全体の合成線間容量をより低減できる。
【0058】
また、コイル部品1では、第1バンク領域B1において、最上層である第2層のターン数は、1ターンである。これにより、最上層で発生する線間容量をより低減できる。
【0059】
また、コイル部品1では、第1から第4バンク領域B1~B4において、第1層のターン数は、5ターン以下である。第1層のターン数を5ターン以下とすることで、第1層と第2層のターン序数の差異を小さくすることができるため、撚り線部25の全体の合成線間容量をより低減できる。
【0060】
また、コイル部品1では、撚り線部25は、巻芯部13に沿って第1から第4バンクB1~B4を含む複数のバンク領域B1~B5を有する。複数のバンク領域B1~B5を有することで、撚り線部25が巻芯部13に1層分巻回された構成と比較して、同じ巻芯部13の長さ対して、撚り線部25のターン数をより増やすことができ、更なる小型化又は高インダクタンス化を実現することができる。また、全体のターン数が、複数のバンク領域B1~B5に分割されるので、各バンク領域において、第1層のターン数が少なくなる。これにより、第1層と第2層のターン序数の差異を小さくすることができるため、撚り線部25の全体の合成線間容量をより低減できる。
【0061】
また、コイル部品1では、両端の第1、第5バンク領域B1,B5を除く第2から第4バンク領域B2~B4の形状は、同一である。これにより、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の間の容量に発生する方向性をより低減できる。なお、複数のバンク領域の少なくとも2つのバンク領域の形状が、同一であれば、第1ワイヤと第2ワイヤの間の容量に発生する方向性を低減できる。
【0062】
また、コイル部品1では、第1から第5バンク領域B1~B5の層数は、それぞれ、2層であり、両端の第1、第5バンク領域B1,B5を除く第2から第4バンク領域において、第1層のターン数は、4ターンであり、第2層のターン数は、2ターンである。したがって、線間容量の低減と製造効率の低下の抑制とのバランスを取ることができる。
【0063】
また、コイル部品1では、コイル20の巻回領域Z1の非巻回領域Z2と隣接する部分では、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22は、互いに撚りがほどかれている。これにより、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22に応力がかかる巻回始端又は巻回終端において、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の間隔を空けることが可能となり、ワイヤの断線やワイヤ間のショートなどのワイヤの破損の発生を低減できる。
【0064】
さらに、コイル部品1では、好ましくは、撚り線部25は、撚り方向が反転する反転部を有し、これによれば、撚り線部25における撚りの重畳を低減し、ワイヤの信頼性を向上できる。また、撚り線部25の反転部は、複数あり、隣り合う反転部同士の間隔が等しい箇所が存在することが好ましく、これによれば、撚り線部25の線間容量や、実装基板とワイヤの間の容量の偏りを低減できる。具体的に述べると、撚り線部25は、第1から第5バンク領域B1~B5の各間において、反転部を有することで、反転部を偶数個としてもよい。また、このとき、隣り合う反転部同士の間隔はターン数で約6ターンずつとなり、等しくなる。なお、上記のように「隣り合う反転部同士の間隔」とは撚り線部25のターン数を基準とする。
【0065】
なお、コイル部品1では、撚り線部25の1ターンあたりの撚り回数は、整数である。これにより、1ターンあたりに撚り線部25が360°の倍数だけ回転するので、撚り線部25の状態(撚りの節および腹の数および位置、ワイヤ同士の位置関係など)が各ターンで同様となり、安定した巻回形状となる。また、撚り線部25の1ターンあたりの撚り回数は、例えば4回であるが、これに限られず、1~3回であってもよいし、5回以上であってもよい。
【0066】
なお、撚り線部25の反転部は、奇数個であってもよく、これによれば、コイル部品1の製造時に、巻芯部13に撚り線部25を巻回する際の撚り線部25の撚り方向の出現回数が均等となる、すなわちZ撚りの撚り線部25の数と、S撚りの撚り線部25の数が等しくなるので、第1ワイヤ21、第2ワイヤ22におけるキンクの発生を低減できる。
【0067】
(電極部31~34の詳細構成)
図1図4に示すように、第1電極部31は、下面113上に設けられる下面側下地電極311と、外面112上に設けられる外面側下地電極312とを有する。外面側下地電極312は、下面側下地電極311の外面112側の端部上から外面112上に延びる形状である。
【0068】
具体的に述べると、下面側下地電極311は、下面113のうち一方の足部の下面部分全面と、その周囲の内面111、外面112および側面115の下面113側の一部とを覆うように一方の足部上に設けられる。外面側下地電極312は、下面側下地電極311の外面112側の端部上に重なり、当該端部上から上面114側に向かって外面112上の中ほどまで延びる形状となっている。言いかえると、外面側下地電極312は、第1鍔部11の外面112上の中ほどから下面113に向かって延び、下面側下地電極311の外面112側の端部上に乗り上げる形状となっている。
【0069】
前記コイル部品1によれば、下面113上の下面側下地電極311に加え、下面側下地電極311の上から外面112上に延びる外面側下地電極312を別に有することで、実装時に実装はんだが下面113から外面112に沿って濡れ上がってフィレットを形成することができ、コイル部品1と実装基板との固着力が向上する。特に、コイル部品1を小型にすると、実装はんだの量も少なくなるが、フィレットを形成することができるため、コイル部品1と実装基板との固着力を向上できる。また、従来の下面側下地電極311に本実施形態の外面側下地電極312を追加することで、本実施形態を実現できるため、既存の設備を流用でき、コイル部品1の製造にかかる追加負担を少なくできる。また、下面側下地電極311と外面側下地電極312とのそれぞれに対して、設計、製造を独立に行うことができ、設計の自由度および製造の容易性が向上する。したがって、コイル部品1は、固着力を向上するにあたって、小型化に適し、低コストであり、設計自由度が高く、製造容易な構成を備える。
【0070】
なお、コイル部品1では、コイル20が、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22が互いに撚り合わされた撚り線部25を有しており、この場合に、上記第1電極部31の構成はより効果的である。すなわち、撚り線部25を巻芯部13に巻回する場合、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22を撚り合わせずに巻芯部13に巻回するときと比較して、ターン間に隙間が生じやすく、同じターン数を巻回するために必要な巻芯部13の長さは大きくなる。したがって、コイル20が撚り線部25を有する場合は、巻芯部13の長さを確保するため、第1鍔部11、第2鍔部12の長さが犠牲となり、電極部31~34の面積も小さくなりがちであるため、上記固着力の向上効果は効果的である。
【0071】
なお、コイル部品1では、下面側下地電極311は、焼結体であり、外面側下地電極312は、金属膜である。下面側下地電極311は、例えば、ディップ工法により塗布されたAgガラスペーストなどの導電性ペーストを焼付した焼結体である。外面側下地電極312は、例えば、スパッタリングにより形成された金属膜である。
【0072】
これによれば、下面側下地電極311は、焼結体であるので、下面側下地電極311自体の強度や耐衝撃性を確保できるとともに、下面側下地電極311と第1鍔部11との固着力を確保できる。一方、外面側下地電極312は、金属膜であるので、薄膜化可能となり、実装基板における実装面積への影響を低減できる。
【0073】
好ましくは、下面側下地電極311は、ガラスとAgを含む。これによれば、下面側下地電極311自体の強度や耐衝撃性をより確保できるとともに、下面側下地電極311と第1鍔部11の固着力をより確保できる。
【0074】
好ましくは、外面側下地電極312は、NiCu層を含む。これによれば、外面側下地電極312が薄膜であっても高い靭性が確保され、実装面積への影響が低減されつつ、耐熱衝撃性が向上する。なお、外面側下地電極312は、NiCu層の下層の第1鍔部11上にNiCr層を含むことが好ましく、すなわちNiCr層を覆うNiCu層を含む構成であることが好ましい。これによれば、下層のNiCr層により、外面側下地電極312と第1鍔部11との密着性が向上する。
【0075】
好ましくは、第1電極部31は、図4の仮想線に示すように、金属被膜313を有する。金属被膜313は、下面側下地電極311および外面側下地電極312を覆う。これによれば、下面側下地電極311と外面側下地電極312が金属被膜313により一体化され、実装信頼性が向上する。また、外面側下地電極312が上層のNiCu層を含む場合、上層のNiCu層により、外面側下地電極312と金属被膜313との密着性が向上する。
【0076】
好ましくは、金属被膜313は、Ni層およびSn層を含む。これによれば、第1電極部31のはんだ濡れ性と、実装時に実装はんだへの第1ワイヤ21や下地電極311,312の溶出を抑制する耐食性が向上する。このとき、金属被膜313は、好ましくは、さらにCu層を含む。これにより、第1電極部31に発生する応力が緩和されるとともに、耐食性がさらに向上する。
【0077】
このとき、Cu層、Ni層、Sn層は、内側から外側に順に並ぶことが好ましい。これによれば、第1電極部31に発生する応力が緩和されるとともに、はんだ濡れ性と耐食性が向上する。より詳細には、最外層に配置されたSn層は実装時の実装はんだの濡れ性を向上するとともに、第1ワイヤ21の第1電極部31への接続性を向上させる。Sn層と下地電極311,312との間に配置されたNi層は、実装時の実装はんだへの下地電極311,312の溶出を低減する。Ni層の下層に配置されたCu層は、比較的硬いNi層の下部において比較的柔らかい緩衝層となり、第1電極部31に発生する応力が緩和されるとともに、下地電極311,312に代わってCu層が実装はんだに溶出することで、耐食性が向上する。また、Cu層はNi層の下層(Ni層と下地電極311,312との間)に限られず、例えばNi層の上層(Ni層とSn層との間)にあってもよい。これにより、第1ワイヤ21に代わってCu層が実装はんだに溶出することで、第1ワイヤ21についての耐食性が向上する。
【0078】
ただし、金属被膜313は上記の構成に限られず、例えば、金属被膜313は、最外層にPd層またはAu層を含む構成であってもよい。これによれば、第1電極部31のはんだ濡れ性と耐食性が向上する。また、これによって、Cu層、Sn層のいずれかまたはその両方を削除することができ、金属被膜313を薄くすることができる。
【0079】
上記では、第1電極部31の構成について説明したが、コイル部品1では、第2電極部32、第3電極部33および第4電極部34は、それぞれ、第1電極部31と同様の構成を有する。これによれば、第2電極部32、第3電極部33および第4電極部34が、それぞれ、第1電極部31と同様の構成を有することで、コイル部品と実装基板との固着力がさらに向上し、設計の自由度および製造の容易性がさらに向上する。ただし、上記構成に限られず、電極部31~34のいずれか2つやいずれか3つが同様の構成を有していてもよい。なお、少なくとも電極部31~34のいずれか1つが上述の構成を満たしていればよい。
【0080】
(第1鍔部11および第2鍔部12の詳細構成)
図5に示すように、好ましくは、第1鍔部11は、上面114と外面112との間に第1面取り部116を有し、上面114と2つの側面115との間に第2面取り部117を有する。第1、第2面取り部116,117は、上に凸となる曲面形状に面取りされている部分である。これによれば、第1鍔部11の上面114と第2鍔部12の上面124に板部材15を接着する場合、第1鍔部11の第1、第2面取り部116,117に接着剤のたまり場ができ、接着剤が第1鍔部11の外面112側や側面115側に漏れにくくなる。なお、第1、第2面取り部116,117は、下に凸となる曲面形状や、平面形状に面取りされていてもよい。
【0081】
また、好ましくは、第1鍔部11は、内面111と上面114との間に稜線118を有する。稜線118は、面取りされていない部分である。これによれば、第1鍔部11の上面114と第2鍔部12の上面124に板部材15を接着する場合、磁束が集中しやすい第1鍔部11の内面111側の上面114端部において、板部材15との接続面積が増加するとともに磁路長が短縮化され、インダクタンス値の低減が抑制される。なお、内面111と上面114との間に、稜線118の代わりに、第1、第2面取り部116,117の幅よりも小さい小面取り部を設けてもよい。これによっても、稜線118と同様に、磁路長が短縮化され、インダクタンス値の低減が抑制される。なお、「面取り部が小さい」とは、例えば、面取り部が曲面形状である場合は、当該曲面の曲率半径が小さいことを意味し、平面形状である場合は、当該平面を横断する長さが小さいことを意味する。
【0082】
図6に示すように、好ましくは、第1鍔部11の外面112には、下面113側から上面114側に延びる溝部11aが形成され、外面側下地電極312は、溝部11aに埋め込まれている。これによれば、外面側下地電極312や外面側下地電極312上の金属被膜313が外面112において不要に伸びて形成されることを抑制でき、隣接する第1電極部31および第2電極部32が外面側下地電極312や金属被膜313を介して接続されることを低減できるため、さらなる小型化が可能となる。
【0083】
上記では、第1鍔部11の構成について説明したが、コイル部品1では、第2鍔部12は、第1鍔部11と同様の構成を有する。これによれば、第2鍔部12は、第1鍔部11と同様の構成を有するため、上記の効果がさらに効果的に発揮される。なお、少なくとも第1鍔部11および第2鍔部12のいずれかが上述の構成を満たしていればよい。
【0084】
(各部分の詳細構成)
(板部材15)
板部材15は、長さが約3.3mm、幅が約2.6mm、厚みが約0.7mmである。板部材15の厚みは0.3~2.0mmが好ましく、0.3mm以上であることにより、インダクタンス値を確保でき、2.0mm以下であることにより、低背化を実現できる。板部材15は化学的に洗浄されていることが好ましく、これによりコア10との接着に用いる接着剤の濡れ性や、コア10と板部材15の固着力が向上する。板部材15の下面の平坦度は5μm以下であることが好ましく、これにより、第1鍔部11、第2鍔部12との間に発生する隙間が低減され、インダクタンス値の低下が抑制される。板部材15の長さ及び幅はコア10の長さ及び幅よりも約0.1mm大きいことが好ましく、板部材15のコア10への接着時に発生し易い長さ方向及び幅方向のずれに対して、第1鍔部11、第2鍔部12と重なる接続面積が確保され、安定して閉磁路が形成されることにより、インダクタンス値の低下が抑制される。
【0085】
(コア10)
コア10の巻芯部13は、第1端131から第2端132に向かって延びる形状であり、巻芯部13の延びる方向に直交する横断面は、六角形状となっている。ただし、横断面は四角形状などの他の多角形状や、円状、楕円状、これらを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0086】
コア10は長さが約3.2mm、幅が約2.5mm、厚みが約1.7mmである。なお、長さは第1鍔部11及び第2鍔部12の外面112,122同士の間の距離であり、幅は第1鍔部11の第1側面115と第2側面115との間の距離であり、厚みは第1鍔部11の下面113と上面114との間の距離である。コア10は第1、第2鍔部11,12の下面113,123から巻芯部13下端までの距離(スタンドオフ)が約0.7mmである。スタンドオフは0.50~1.50mmが好ましく、0.50mm以上であることにより、実装基板とワイヤ21,22との間に発生する浮遊容量が低減される。また、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22との分離部と、ワイヤ21,22の電極部31~34への熱圧着部との距離が確保されるので、当該分離部で発生する応力が緩和され、ワイヤ21,22の断線や被膜破壊によるワイヤ間ショートなどが低減される。また、スタンドオフが1.50mm以下であることにより、低背化が実現され、板部材15の厚みが確保される。なお、長さ方向及び幅方向は、いずれもコイル部品1が実装される実装基板に平行な方向であって、巻芯部13の延びる方向を長さ方向とし、長さ方向に直交する方向を幅方向とする。また、高さ方向は、実装基板に直交する方向であり、長さ方向、幅方向及び高さ方向は互いに直交する。
【0087】
コア10は化学的に洗浄されていることが好ましく、これにより板部材15との接着に用いる接着剤の濡れ性や、コア10と板部材15の固着力が向上する。第1鍔部11、第2鍔部12の板部材15と対向する面は平坦度が5μm以下となることが好ましく、板部材15との間に発生する隙間が低減され、インダクタンス値の低下が抑制される。第1鍔部11、第2鍔部12の外面112,122、側面115,125及び上面114,124の各間の稜線は面取りされることが好ましい。これにより第1鍔部11、第2鍔部12の外面側、側面側の上面端部で板部材15との接着に用いる接着剤のたまり場ができ、接着剤が第1鍔部11、第2鍔部12の外面側や側面側に漏れにくくなる。一方、内面111,121と側面115,125との間の稜線、内面111,121と上面114,124との間の稜線は面取りされていないことが好ましく、これにより、磁束が集中しやすい第1鍔部11、第2鍔部12の内面側の上面端部について、板部材15との接続面積が増加するとともに磁路長が短縮化され、インダクタンス値の低減が抑制される。巻芯部13の厚みは約0.6mmである。巻芯部13の厚みは1mm以下とすることが好ましく、これによりスタンドオフと板部材15の厚みが同時に確保される。
【0088】
(第1と第2ワイヤ21,22)
第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、Cu、Ag、Auなどの良導体の導体線と、導体線を被覆するイミド変成ポリウレタン、ポリイミドアミド、フッ素系樹脂などの樹脂の被膜で構成されている。例えば、導体線の線径は30μm、被膜は10μmである。導体径は15~100μm、被膜は8~20μm程度が好ましい。被膜の表面は活性剤などが塗布されていてもよい。
【0089】
(コイル部品1の製造方法)
以下にコイル部品1の製造方法について説明する。コイル部品1の製造方法は、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22を第1撚り方向、例えばZ撚り方向に撚り合わせて第1撚り線部25a(図2A参照)を形成する工程と、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22を第1撚り方向と逆の第2撚り方向、例えばS撚り方向に撚り合わせて第2撚り線部25b(図2B参照)を形成する工程と、第1撚り線部25aをコア10の巻芯部13に巻回して第1コイル部品1a(図8参照)を製造する工程と、第2撚り線部25bをコア10の巻芯部13に巻回して第2コイル部品1b(図8参照)を製造する工程とを備える。これによれば、第2コイル部品1bと撚り線部25の撚り方向が逆方向である第1コイル部品1aの混在が許容されるため、コイル部品1の製造時に常に一定の方向に巻線ノズルを公転させ続ける必要が無くなり、第1ワイヤ21、第2ワイヤ22におけるキンクの発生を低減できる。
【0090】
具体的に述べると、図7に示すように、第1撚り線部25aを形成する工程では、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を保持する巻線ノズル60を自転させずにコア10の巻芯部13の周囲において(つまり、巻芯部13の軸Lを中心として)第1の方向、例えば時計回りに公転させる。一方、第2撚り線部25bを形成する工程では、巻線ノズル60を自転させずにコア10の巻芯部13の周囲において第1の方向とは逆の方向、例えば反時計回りに公転させる。これによれば、第1撚り線部25aを形成する工程と、第2撚り線部25bを形成する工程で、巻線ノズル60が逆の方向に公転されるため、第1ワイヤ21、第2ワイヤ22にねじれが残りにくい。
【0091】
また、上記製造方法において、撚り線部25の反転部は、偶数個であることが好ましい。これによれば、コイル部品1の製造時に、最初と最後に巻芯部13へ巻回される撚り線部25の撚り方向が同じとなるため、製造単位ごとに第1ワイヤ21、第2ワイヤ22のねじれが残りやすい。したがって、上記製造方法によって、撚り線部25の撚り方向が逆方向であるコイル部品1の混在が許容されることによる、第1ワイヤ21、第2ワイヤ22におけるキンクの発生低減効果がより一層効果的となる。
【0092】
(コイル部品の梱包形態)
図8は、コイル部品1の梱包形態を示す簡略図である。図8に示すように、複数のコイル部品1は、テーピングリール40に梱包されている。テーピングリール40は、テープ41とテープ41が巻回されたリール42とを有する。テープ41は、長手方向に沿って配列されそれぞれに複数のコイル部品1の一つが収納された複数のポケット411を有する。テーピングリール40におけるコイル部品1の入り数は例えば8000個である。
【0093】
ここで、ポケット411には、上記コイル部品1の製造方法で製造された第1コイル部品1aと、第2コイル部品1bとが混在して収納されている。すなわち、テーピングリール40では、複数のコイル部品1には、撚り線部25aの撚り方向が、第2コイル部品1bの撚り線部25bの撚り方向と逆方向である第1コイル部品1aが存在する。これによれば、第2コイル部品1bと撚り線部25の撚り方向が逆方向である第1コイル部品1aの混在が許容されるため、コイル部品1の製造時に常に一定の方向に巻線ノズルを公転させ続ける必要が無くなり、第1ワイヤ21、第2ワイヤ22におけるキンクの発生を低減できる。
【0094】
なお、上記コイル部品1の製造方法のように、第1コイル部品1aと、第2コイル部品1bでは、コイル20の巻芯部13への巻回方向は逆方向である。すなわち、第1コイル部品1aのコイル20の巻芯部13への巻回方向は、例えば時計回りであり、他の第2コイル部品1bのコイル20の巻芯部13への巻回方向、例えば反時計回りと逆方向である。これによれば、第1コイル部品1aおよび第2コイル部品1bの製造時に、巻線ノズルを公転させる方向を容易に逆方向とできるため、第1ワイヤ21と、第2ワイヤ22とにおけるキンクの発生を容易に低減できる。
第1、第2コイル部品1a,1bの撚り線部が、撚り方向が反転する反転部を有する場合、第1コイル部品1aの撚り線部の撚り方向が、第2コイル部品1bの撚り線部の撚り方向と逆方向であるとは、例えば、第1コイル部品1aの撚り線部の撚り方向が、順に、S撚り、Z撚り、S撚りと変化するとき、第2コイル部品1bの撚り線部の撚り方向が、順に、Z撚り、S撚り、Z撚りと変化する。
【0095】
テーピングリール40では、好ましくは、図8に示すように、第1コイル部品1aが収納されたポケット411が、2つ以上連続して配列されている。例えばコイル部品1の製造過程では、撚り線部25の撚り方向が逆になっているものが、交互に製造される場合であっても、テープ41のポケット411への収納工程では、外観検査や特性検査でNGと判定されたものが排除されてコイル部品1が流動してくるため、通常製造順と収納順は一致しない。したがって、テーピングリール40中のコイル部品1について、撚り線部25の撚り方向が逆になっているものを交互に配列しようとすると、外観検査や特性検査後、テープ41のポケット411への収納工程の前に、撚り方向によってコイル部品1の順序を並べ替える工程、例えば第1コイル部品1aと第2コイル部品1bとを選別、整理させる工程が必要となる。一方、上記のように第1コイル部品1aが収納されたポケット411が、2つ以上連続して配列されていると、第1コイル部品1aを連続してテープ41に収納することが許容されるため、外観検査や特性検査の後、テープ41へのコイル部品1の収納工程の前に、コイル部品1の順序を並べ替える工程が不要となり、テーピングリール40当たりの製造時間を短くできる。
【0096】
特に、テーピングリール40では、第1コイル部品1aが収納されたポケット411の連続して配列される数と、第2コイル部品1bが収納された前記ポケット411の連続して配列される数とが、異なる部分が存在することが好ましい。すなわち、テーピングリール40の製造方法では、第1コイル部品1aおよび第2コイル部品1bを製造する工程と、長手方向に沿って配列された複数のポケット411を有するテープ41を準備する工程と、複数のポケット411の一つに第1コイル部品1aを収納する工程と、複数のポケット411の一つに第2コイル部品1bを収納する工程と、を備え、第1コイル部品1aを収納する工程と、第2コイル部品1bを収納する工程とが不規則に行われる事が好ましい。これによれば、複数のポケット411に、第1コイル部品1aと、第2コイル部品1bとを不規則に収納することが許容されるため、テープ41へのコイル部品1の収納工程の前に、コイル部品1の順序を並べ替える工程が不要となり、テーピングリール40当たりの製造時間を短くできる。
【0097】
また、このようなテーピングリール40から取り出したコイル部品1を実装基板に実装して、電子部品を製造してもよい。つまり、電子部品は、実装基板と、実装基板に実装された複数のコイル部品1とを含む。複数のコイル部品1には、撚り線部25の撚り方向が、他の第2コイル部品1bの撚り線部25の撚り方向と逆方向である第1コイル部品1aが存在する。これによれば、他の第2コイル部品1bと撚り線部25の撚り方向が逆方向である第1コイル部品1aの混在が許容されるため、コイル部品1の製造時に常に一定の方向に巻線ノズルを公転させ続ける必要が無くなり、第1ワイヤ21と、第2ワイヤ22とにおけるキンクの発生を低減できる。
【0098】
(第2実施形態)
図9は、コイル部品の第2実施形態を示す簡略断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、ワイヤの撚り合わせの位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
図9に示すように、第2実施形態のコイル部品1Aでは、コイル20Aの非巻回領域Z2Aの一部から巻回領域Z1Aの全体に渡って、(実線に示す)第1ワイヤ21と(一点鎖線に示す)第2ワイヤ22は、互いに撚り合わされている。つまり、コイル部品1Aでは、コイル20Aの巻回領域Z1Aだけでなく、コイル20Aの非巻回領域Z2Aも撚り線部25を有しており、非巻回領域Z2Aの巻回領域Z1Aと隣接する部分は、撚り線部25である。したがって、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の線路長の差異や第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の線間容量の偏りをより低減でき、モード変換特性の悪化を低減できる。
【0100】
なお、上記のように、コイル20Aの非巻回領域Z2Aも撚り線部25を有するようにするためには、例えば、コイル20Aを巻芯部13に巻回する前に、あらかじめ撚り線部25を形成しておき、すべての撚り線部25を巻回領域Z1Aとせずに、一部の撚り線部25を非巻回領域Z2Aに残せばよい。
【0101】
また、非巻回領域Z2Aは、撚り線部25から続き、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22が互いに撚りがほどかれた非撚り線部26を有し、非撚り線部26では、第1ワイヤ21の長さと第2ワイヤ22の長さは、同じである。したがって、非巻回領域Z2Aまで含めて第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の線路長の差異や第1ワイヤ21と第2ワイヤ22の線間容量の偏りをより低減でき、モード変換特性の悪化をより低減できる。
【0102】
なお、上記のように、非撚り線部26で第1ワイヤ21の長さと第2ワイヤ22の長さを互いに同じとする上で、例えば、あらかじめ形成した撚り線部25を非巻回領域Z2Aで一部撚りほどいてもよい。このとき、撚りほどかれた第1ワイヤ21、第2ワイヤ22には撚りの跡が屈折形状として残っていてもよく、その際は、撚り線部25の最終端から電極部31~34に接続される領域において、第1ワイヤ21と第2ワイヤ22とにおける屈折形状が同じであっても異なっていてもよい。特に、屈折形状が互いに接続される電極部31~34に向かう形状であることが好ましく、これにより接続時に第1ワイヤ21、第2ワイヤ22に応力が発生せず、断線の発生を低減できる。
【0103】
(第3実施形態)
図10は、コイル部品の第3実施形態を示す簡略下面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、撚り線部の撚り回数が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図10に示すように、第3実施形態のコイル部品1Bでは、撚り線部25Bの1ターンあたりの撚り回数は、整数でない。これにより、撚り線部25Bの各ターンにおける第1ワイヤ21と第2ワイヤ22との位置関係が固定化されないため、撚り線部25Bの線間容量や、実装基板とワイヤの間の容量の偏りをより低減できる。なお、図10では、簡略化のため、撚り線部25Bのうち、第1ワイヤ21が第2ワイヤ22よりも外側に位置している部分を白抜きで示し、第2ワイヤ22が第1ワイヤ21よりも外側に位置している部分をハッチングで示す。
【0105】
なお、撚り線部25Bの1ターンあたりの撚り回数は、n1/n2(n2は素数)であることがさらに好ましい。これにより、撚り線部25Bの各ターンにおける第1ワイヤ21と第2ワイヤ23との位置関係が同じ関係に戻るのに必要なターン数がより大きくなり、撚り線部25Bの線間容量や、実装基板とワイヤの間の容量の偏りをより低減できる。
【0106】
(実施例)
本開示のコイル部品における実施例および比較例として、バンク領域において発生する線間容量のシミュレーション結果を以下に説明する。図11A図11B図11C図12A図12Bは、線間容量のシミュレーションを行ったバンク領域の構成を示す図である。
【0107】
具体的には、実施例1のバンク領域は、図11Aに示すように、第1層が巻芯部に連続して巻回された第1ターンから第3ターンの3ターン、第2層が第2ターン上および第3ターン上に巻回された第4ターンの1ターンにより構成される。実施例2のバンク領域は、図11Bに示すように、第1層が巻芯部に連続して巻回された第1ターンから第4ターンの4ターン、第2層が第2ターン上および第3ターン上に巻回された第5ターン、第3ターン上および第4ターン上に巻回された第6ターンの2ターンにより構成される。実施例3のバンク領域は、図11Cに示すように、第1層が巻芯部に連続して巻回された第1ターンから第4ターンの4ターン、第2層が第3ターン上および第4ターン上に巻回された第5ターンの1ターンにより構成される。
【0108】
比較例1のバンク領域は、図12Aに示すように、第1層が巻芯部に連続して巻回された第1ターンから第3ターンの3ターン、第2層が第1ターン上および第2ターン上に巻回された第4ターン、第2ターン上および第3ターン上に巻回された第5ターンの2ターンにより構成される。比較例2のバンク領域は、図12Bに示すように、第1層が巻芯部に連続して巻回された第1ターンから第4ターンの4ターン、第2層が第1ターン上および第2ターン上に巻回された第5ターン、第2ターン上および第3ターン上に巻回された第6ターン、第3ターン上および第4ターン上に巻回された第7ターンの3ターンにより構成される。
【0109】
以上のように、実施例1~3のバンク領域においては、第2層のターン数は、第1層のターン数よりも2ターン以上少なく、比較例1,2のバンク領域においては、第2層のターン数は、第1層のターン数よりも1ターンのみ少ない。これら、実施例1~3と比較例1,2のそれぞれについて、第1層と第2層の間に発生する線間容量をシミュレーションによって求めた。表1は上記シミュレーション結果を示すものである。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から分かるように、第1層が3ターンである場合においては、実施例1は比較例1に対して、線間容量を0.08pF(約12%)低減でき、第1層が4ターンである場合においては、実施例2、3は、比較例2に対して、線間容量を、それぞれ0.34(約33%),0.42(約41%)低減できた。
【0112】
(変形例)
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0113】
前記実施形態では、コイル部品を、コモンモードチョークコイルとして用いているが、例えば、トランス、結合インダクタアレイなどの複数のワイヤが巻芯部に巻回される巻線型コイルとして用いてもよい。これらの巻線型コイルにおいても、線間容量の低減は有用である。
【0114】
前記実施形態では、板部材を設けているが、板部材を省くようにしてもよい。前記実施形態では、コイルがワイヤを2本含むが、コイルは複数のワイヤを含めばよく、3本以上としてもよい。この場合、撚り線部も2本のワイヤが撚り合わされた構成に限られず、3本以上のワイヤが撚り合わされた構成となっていてもよい。
【0115】
前記実施形態では、撚り線部を2層巻回してバンク領域を構成しているが、撚り線部を3層以上巻回してバンク領域を構成してもよい。この際、少なくとも巻芯部に直接巻回された第1層と、第1層上に巻回された第2層との関係において、第2層のターン数が、第1層のターン数よりも、2ターン以上少ない疎巻であればよく、第3層以降の層についての構成に限定はない。ただし、第3層以降についても、上層のターン数が直下の下層のターン数よりも2ターン以上少ないことがより好ましく、最上層のターン数が、1ターンであることが好ましい。
【0116】
前記実施形態では、第1から第5バンク領域B1~B5を設け、その内の4つの第1から第4バンク領域B1~B4において、第2層のターン数が、第1層のターン数よりも、2ターン以上少ない疎巻であったが、この構成に限られない。撚り線部は、疎巻のバンク領域を少なくとも一つ有していればよく、例えば、疎巻のバンク領域の数が、1つ以上3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、密巻のバンク領域の数にも限りはなく、すべてのバンク領域が疎巻であってもよいし、密巻のバンク領域の数が、2つ以上あってもよい。また、疎巻のバンク領域と密巻のバンク領域との位置関係も特に限定はなく、密巻のバンク領域が、疎巻のバンク領域を挟む位置にあってもよいし、疎巻のバンク領域に挟まれる位置にあってもよい。また、バンク領域ではない構成が含まれていても良く、例えば、第1層上に撚り線部が巻回されない単層巻き領域や、第1層と第2層とに撚り線部が交互に巻回される領域があってもよい。また、これらの領域の間には間隔があってもなくてもよく、例えば、バンク領域の第1層の最初のターン又は最終ターンに隣接してバンク領域、単層巻き領域、第1層と第2層とに撚り線部が交互に巻回される領域のいずれかがあってもよい。
【0117】
前記実施形態では、疎巻のバンク領域として、第1バンク領域B1は第1層が4ターン、第2層が1ターン、第2から第4バンク領域B1~B4は、第1層が4ターン、第2層が2ターンであったが、疎巻のバンク領域はこれに限られない。具体的には例えば、第1層が3ターン、第2層が1ターンである疎巻のバンク領域であってもよいし、第1層が5ターン以上である疎巻のバンク領域であってもよい。また、疎巻のバンク領域の形状として、第2層が、第1層の最終ターン側にずれた形状に限られず、反対側にずれた形状や、中央揃えの形状であってもよい。なお、撚り線部が密巻のバンク領域を有する場合、密巻のバンク領域は上記同様に特に限定はなく、第1層が2ターンや、4ターン以上であってもよい。
【0118】
前記実施形態では、第1鍔部の内面および第2鍔部の内面は、巻芯部の延びる方向に直交しているが、第1鍔部の内面および第2鍔部の内面は、互いに平行であって、巻芯部の延びる方向に斜めに交差する傾斜部分を有してもよい。これによれば、巻芯部にワイヤを巻回した場合に、傾斜部分に沿ってワイヤを第1~第4電極部に引き出すことができ、巻芯部の巻回に寄与しない部分の低減や、第1、第2鍔部の板部材との接続面積の増加を実現することができる。
【0119】
前記実施形態では、コイルは、複数のワイヤが互いに撚り合わされた撚り線部を有し、撚り線部は、巻芯部に連続して複数ターン巻回された第1層と、第1層から連続して前記第1層上に巻回された第2層と、を含むバンク領域を有し、バンク領域は、第2層のターン数が第1層のターン数よりも、2ターン以上少ない疎巻であったがこれに限られない。例えば、バンク領域が疎巻でない、すなわち第2層のターン数が第1層のターン数よりも1ターン少ない密巻構成であっても良い。また、コイルが、バンク領域や撚り線部を有さない構成であってもよい。
【0120】
前記実施形態では、コイル部品の製造方法として、複数のワイヤを第1撚り方向に撚り合わせて第1撚り線部を形成する工程と、複数のワイヤを第1撚り方向と逆の第2撚り方向に撚り合わせて第2撚り線部を形成する工程と、少なくとも第1撚り線部をコアの巻芯部に巻回する第1コイル製造工程と、少なくとも第2撚り線部をコアの巻芯部に巻回する他のコイル製造工程とを備えたが、これに限られない。例えば、常に同じ撚り方向の撚り線部のみを巻芯部に巻回してもよい。したがって、同様に、テーピングリールに収納される複数のコイル部品または実装基板に実装された複数のコイル部品では、すべてのコイルの巻芯部への巻回方向が同じ方向であってもよい。また、撚り線部を形成する工程は、巻線ノズルを自転させずに巻芯部の周囲において公転させる方法に限られず、あらかじめ撚り合わされた撚り線部を巻芯部に巻回する方法であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
1,1A,1B コイル部品
1a 第1コイル部品
1b 第2コイル部品
10 コア
11 第1鍔部
12 第2鍔部
13 巻芯部
15 板部材
20,20A コイル
21 第1ワイヤ
22 第2ワイヤ
25,25B 撚り線部
25a 第1撚り線部
25b 第2撚り線部
26 非撚り線部
31~34 第1~第4電極部
40 テーピングリール
41 テープ
411 ポケット
42 リール
B1~B4 第1~第4バンク領域
Z1,Z1A 巻回領域
Z2,Z2A 非巻回領域
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B