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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220913BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021501113
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2019000223
(87)【国際公開番号】W WO2020170000
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 公洋
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 晋
(72)【発明者】
【氏名】石井 聡一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03385688(EP,A1)
【文献】特開2013-084800(JP,A)
【文献】特開平04-337427(JP,A)
【文献】特開昭59-017357(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203984(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力を直流電力または交流電力に変換する電力変換回路と、
絶縁性材料で構成され、前記電力変換回路が載置される樹脂製のベース部材と、
前記ベース部材との間に前記電力変換回路を収容するカバー部材と、
前記ベース部材の内部に設けられ、前記電力変換回路を冷却するための冷媒を流通させる冷媒流路と、
前記ベース部材に設けられ、前記冷媒流路内を流通する前記冷媒の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記温度センサは、少なくともサーミスタを含む導電部材を有し、
前記導電部材のすべてが、前記ベース部材において前記電力変換回路が載置された面から突出して形成された樹脂壁で囲われる、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記樹脂壁は、前記温度センサの一部であって前記導電部材を収容する筐体部として構成され、
前記筐体部は、樹脂製の前記ベース部材に一体形成される、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記筐体部は、前記冷媒流路内に突出する突出部を有し、
前記サーミスタは、前記突出部に収容される、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記導電部材は、前記サーミスタを収容する金属筐体部を含み、
前記温度センサは、前記ベース部材に載置された状態で、前記金属筐体部の一部が前記ベース部材を貫通して前記冷媒流路内に突出するように構成される、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置において、
前記温度センサは、前記ベース部材の内部に設けられた前記冷媒流路において、前記電力変換回路が配置される位置の上流に配置される、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP5471685Bでは、冷媒を用いて半導体モジュールを冷却する電力変換装置において、冷却対象である半導体モジュールの温度を制御するために、冷媒が流れる冷却チューブに温度センサを設置して、冷媒の温度を常時モニタする構成が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
ここで、冷却対象である半導体モジュールの温度制御を正確に行うために、温度センサを半導体モジュールにできるだけ近づけたいという要求がある。このような要求を満足するためには、温度センサを電力変換装置の内部に配置することが考えられる。しかしながら、温度センサを電力変換装置の内部に配置する場合には、電力変換装置を構成する電子部品と温度センサとの間に所定の絶縁距離を確保する必要があるため、電力変換装置のサイズが大きくなるという課題がある。
【0004】
本発明は、温度センサを電力変換装置の内部に配置する場合において、電力変換装置の大型化を伴わずに、電力変換装置を構成する電子部品と温度センサとの間の絶縁を確保することができる技術を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様における電力変換装置は、入力電力を直流電力または交流電力に変換する電力変換回路と、電力変換回路が載置される樹脂製のベース部材と、ベース部材との間に電力変換回路を収容するカバー部材と、ベース部材の内部に設けられ、電力変換回路を冷却するための冷媒を流通させる冷媒流路と、ベース部材に設けられ、冷媒流路内を流通する冷媒の温度を検出する温度センサと、を備える。この温度センサは、少なくともサーミスタを含む導電部材を有し、導電部材のすべてが、ベース部材において電力変換回路が載置された面から突出して形成された樹脂壁で囲われる。
【0006】
本発明の実施形態については、添付された図面とともに以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の電力変換装置を説明する図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、サブパーツを説明する図である。
図4図4は、第1実施形態の電力変換装置の変形例1を説明する図である。
図5図5は、変形例1において金属カバーと金属プレートとの接合態様を説明する図である。
図6図6は、第1実施形態の電力変換装置の変形例2を説明する図である。
図7図7は、第2実施形態の電力変換装置を説明する図である。
図8図8は、第3実施形態の電力変換装置を説明する図である。
図9図9は、従来の電力変換装置を示す斜視図である。
図10図10は、従来の電力変換装置を説明する図である。
図11図11は、従来の温度センサを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態の電力変換装置100を説明するための概略構成図である。
【0009】
電力変換装置100は、パワーモジュール2と、制御基板3と、平滑コンデンサ4と、樹脂製のベース部材5と、金属カバー7と、温度センサ8とを含んで構成される。また、ベース部材5は、その内部に冷媒が流通可能な冷媒流路6を備える。電力変換装置100は、例えばモータを備える車両に搭載され、該モータへの電力供給手段である車載用電力変換器として機能する。
【0010】
パワーモジュール2、制御基板3、及び平滑コンデンサ4は、主に、入力電力を所定の電力に変換して出力するために必要な電子部品であって、これら電子部品で構成される電気回路は、例えばインバータである。以下では、これらの電子部品をまとめて電力変換回路1とも称する。電力変換回路1は、不図示の電気端子(入力端子)を介して外部電源に電気的に接続されるとともに、他の電気端子(出力端子)を介して、図示しないモータに接続される。そして、電力変換回路1は、上記の外部電源から供給された直流電力を交流電力に変換してモータへ、又は、モータから供給された交流電力を直流電力へ変換して外部電源へ供給する。また、本実施形態の電力変換回路1が備える各種電子部品のうち、少なくともパワーモジュール2はベース部材5の一面(図1で示す本実施形態では上面)に載置され、不図示の固定用ボルト等でベース部材5に固定される。
【0011】
ベース部材5は、電力変換回路1を冷却する冷却器としての機能を有する。ベース部材5は、絶縁性材料で形成される。本実施形態のベース部材5は、電気絶縁性の樹脂であって、強度を考慮して、例えばポニフェニレンサルファイド(PPS)樹脂や、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等が採用される。
【0012】
ベース部材5は、その内部に冷媒(例えば、冷却水)が流通可能な冷媒流路(冷媒配管部)6を備える。冷媒流路6を流通する冷却水として、本実施形態では、例えばロングライフクーラント(LLC)冷媒が採用される。ベース部材5は、一面に載置された電力変換回路1(特に、パワーモジュール2)と、内部に形成された冷媒流路6を流れる冷却水との間で熱交換させることにより、電力変換回路1を冷却する。
【0013】
温度センサ(水温センサ)8は、電力変換装置100の内部において、冷媒流路6の内部を流通する冷媒の温度を検出(測定)するように構成される。そして、電力変換装置100は、温度センサ8の検出値に基づいて、電力変換回路1の温度が適正な温度範囲に収まるように冷却水の温度を制御する。本実施形態の温度センサ8の詳細については、図2、3等を参照して後述する。
【0014】
金属カバー7は、電力変換装置100において、ベース部材5との間に配置された電力変換回路1及び温度センサ8を収容する筐体として機能する。本実施形態の金属カバー7は、例えばアルミ等の金属で形成される。金属カバー7は、凹部を有し、当該凹部に電力変換回路1が収容されるようにして、ベース部材5の上面に不図示の固定用ボルト等を用いて固定される。このようにして、本実施形態の電力変換装置100においては、金属カバー7とベース部材5とが、電力変換回路1を収容する筐体として機能するように構成される。なお、ベース部材5は、上述の冷却機能だけでなく、電力変換回路1を収容する筐体の一部としての機能を兼ね備える。
【0015】
ここで、従来の電力変換装置が有する課題について図9から図11を参照して説明する。
【0016】
図9は、電動車両に適用される電力変換装置の外観に係る従来構造の一例を示す斜視図である。図示する電力変換装置は、水路配管50と、弱電コネクタ51と、外部弱電配線52と、温度センサ53とを備える。水路配管50は、電力変換装置の内部に形成される冷媒流路に冷媒を外部から導入又は外部へ排出するための配管である。
【0017】
図示するように、電力変換装置に係る従来例では、温度センサ53は、電力変換装置の内部での水漏れリスクを回避するために電力変換装置の外部において水路配管50に設けられ、水路配管50の内部を流通する冷媒の温度を直接検出するように構成されている。検出された温度(水温)に係るデータ信号は、外部弱電配線52と弱電コネクタ51とを経由して、電力変換装置の内部に配置された不図示の制御基板へ伝達される。この場合、電力変換装置に内蔵された冷却対象である電力変換回路と温度センサ53との間の距離が長くなるため、温度センサ53が検出する冷却水温度に基づいて実行される電力変換回路に対する温度制御の精度が低下するという課題がある。
【0018】
また、温度センサ53を電力変換装置の内部に配置する場合でも以下のような課題が生じる。
【0019】
図10は、電力変換装置の内部に係る従来構造の一例を示す図であって、温度センサ53と電力変換装置に内蔵される電子部品(電力変換回路1)との位置関係を説明する図である。本図面で示す従来例では、電力変換装置は、金属製のベース部材54と不図示の金属カバー7との間に、パワーモジュール2、制御基板3、及び強電素子接続部20を含んで構成される電力変換回路1を収容している。ベース部材54は、その内部に電力変換回路1を冷却するための冷媒を流通させるための冷媒流路が設けられる。そして、温度センサ53は、図示するように、電力変換装置の内部において、冷媒流路内を流れる冷媒の温度を検出するように構成される。
【0020】
ここで、従来の温度センサ53の構造について、図11を用いて説明する。図11は、従来の温度センサの構造の一例(温度センサ53)を示す概略構成図である。図11(a)は、温度センサ53の外観を示す斜視図である。図11(b)は、温度センサ53の内部構造を説明する図である。図11で示すように、温度センサ53は、オスコネクタ部12と、金属筐体部13とで構成される。金属筐体部13は例えば真鍮で構成される。そして、金属筐体部13の先端側(オスコネクタ部12の逆側)の端部(先端部)近傍の内部空間には、温度変化により抵抗値が変化する電子部品であるサーミスタ17が配置される。また、金属筐体部13の先端側の内部空間には、サーミスタ17を取り囲むようにエポキシ材又はグリス等で構成される伝熱材(封止材)18が充填されている。そして、温度センサ53は、少なくともその先端部が冷媒流路内に配置されることにより、サーミスタ17の抵抗値の変化から冷媒流路内を流通する冷媒の温度を検出できるように構成される。なお、サーミスタ17の温度変化に関する信号は、メスコネクタ16を介して、制御基板3へ伝達される。
【0021】
図10で示すように、従来例では、電力変換装置の内部において温度センサ53を電力変換回路の近傍に配置している。しかしながら、従来の温度センサ53は、真鍮等の導電体で構成される金属筐体部13を有しているため、電力変換回路1を構成する導電部品との絶縁性を確保するために必要な所定の部品間距離を設ける必要がある。図10を参照すれば、従来の温度センサ53を電力変換装置の内部に配置する場合には、電力変換回路1が備える導電性部品のうち温度センサ53と最も近い位置に配置される部品(本例では強電素子接続部20)との間に、絶縁性を確保するために必要な所定の部品間距離19を設ける必要がある。その結果、従来では、電力変換装置の内部に温度センサ53を配置すると、所定の部品間距離19に応じて電力変換装置のサイズが大きくなるという課題がある。
【0022】
以上が従来の電力変換装置の課題である。このような従来の電力変換装置に対して、本願発明に係る電力変換装置100によれば従来の上記課題を解決することができる。以下、本願発明の第1実施形態に係る電力変換装置100の詳細について図2等を参照して説明する。
【0023】
図2は、図1のA-A断面図であって、第1実施形態の電力変換装置100が備える温度センサ8の詳細を説明する図である。
【0024】
温度センサ8は、図示するように、センサ筐体部23と、その内部に収容されるサブパーツ29とから構成される。また、センサ筐体部23は、オスコネクタ部12と、本体部11と、冷媒流路6内に突出する部分である突出部30と、を含んで構成される。また、図示するように、本実施形態の温度センサ8を構成するセンサ筐体部23は、樹脂製のベース部材5と一体形成される。
【0025】
図3は、サブパーツ29の構成の一例を説明する概略構成図である。サブパーツ29は、サーミスタ17と、リード線24と、信号端子25と、樹脂カバー28とを含んで構成される。なお、サーミスタ17、リード線24、及び信号端子25は導電部材である。
【0026】
サーミスタ17は、温度変化により抵抗値が変化する電子部品である。検出対象の温度に応じて変化するサーミスタ17の抵抗値に関する信号は、リード線24、信号端子25、及び後述のメスコネクタ16を介して制御基板3へ伝達される。また、樹脂カバー28は、サーミスタ17およびリード線24と電気的に接続される信号端子25を保持するとともに、センサ筐体部23の内部における所定位置に保持されるように構成される。
【0027】
図2に戻って説明を続ける。上述したとおり、温度センサ8は、センサ筐体部23及びサブパーツ29を含んで構成される。図示するように、センサ筐体部23(オスコネクタ部12、本体部11、及び突出部30)は、樹脂製のベース部材5と一体に構成される。すなわち、本実施形態の電力変換装置100では、温度センサ8が備えるサブパーツ29に係る導電部材が絶縁性材料で形成された樹脂壁で囲われるように構成される。当該樹脂壁は、温度センサ8の一部であって、サブパーツ29を収容するセンサ筐体部23として構成される。
【0028】
本実施形態のセンサ筐体部23は、ベース部材5と金属カバー7(図1参照)との間に形成される空間にベース部材5の一面(本実施形態ではパワーモジュール2が載置される面と同一の面)から突出して形成された筒状(円筒形状)の部分を含んで構成される。オスコネクタ部12は、本体部11と連続して形成される筒状の部分であって、メスコネクタ16と嵌合可能に形成される。突出部30は、ベース部材5の内部に形成された冷媒流路6内に突出して形成された円柱状の部分であって、その内部には空間が形成される。当該空間は、筒状に形成されたオスコネクタ部12及び本体部11の内部空間と連続するように形成される。
【0029】
そして、センサ筐体部23を構成するオスコネクタ部12、本体部11、及び突出部30の内部において連続する空間にサブパーツ29が組み付けられることによって温度センサ8が構成される。
【0030】
サブパーツ29は、サーミスタ17が突出部30の内部空間に位置し、信号端子25がオスコネクタ部12の内部空間に位置するように組み付けられるのが好ましい。本実施形態のサブパーツ29は、図示するように、サーミスタ17が突出部30の内部空間に位置し、信号端子25の一部、樹脂カバー28の一部、及びリード線24が本体部11の内部空間に位置し、信号端子25のメスコネクタ16と接続する側の一部及び樹脂カバー28の一部がオスコネクタ部12の内部空間に位置するように組み付けられる。これにより、本実施形態の温度センサ8は、ベース部材5と一体に形成されながらも、サーミスタ17が収容された先端部分(突出部30)を温度検出対象である冷媒が流通する冷媒流路6内に配置するとともに、測定した温度に関する信号をオスコネクタ部12に嵌合されるメスコネクタ16を介して制御基板3に伝達することができる。
【0031】
なお、センサ筐体部23におけるオスコネクタ部12、本体部11、及び突出部30のそれぞれの境目は特に限定されない。本実施形態とは、一例として、センサ筐体部23の一端側であってメスコネクタ16と嵌合可能な部分を有する部分をオスコネクタ部12とし、センサ筐体部23の他端側であって冷媒流路6に突出する部分を突出部30とし、オスコネクタ部12と突出部30との間であって、少なくともベース部材5のパワーモジュール2が載置される面と同一の面においてベース部材5から立ち上がる部分を有する部分を本体部11と称する。
【0032】
また、本体部11および突出部30の内部空間、換言すれば、温度センサ8の内部において樹脂カバー28よりも突出部側(冷媒流路側)の空間には、伝熱材18が充填される。伝熱材18は、エポキシ材あるいはグリス等の熱伝導性を備える材料(封止材)である。これにより、サーミスタ17は、冷媒流路6内において突出部30と冷却水とが接した状態において、冷却水の熱が伝熱材18を介してより伝達しやすくなるので、当該冷媒の温度をより好適に検出することができる。
【0033】
なお、突出部30の形状は強度等を考慮して適宜設定されてよい。ただし、強度が満足されることを前提とすれば、冷却水の温度がサーミスタ17により正確に伝達されるように出来る限り薄く形成される方が好ましい。また、突出部30は、冷媒流路6内の冷却水がより抵抗なく流通できるように形成されることが好ましい。例えば突出部30を楕円に形成し、その長軸を冷却水が流れる方向と一致させるように配置してもよい。
【0034】
このような構成により、温度センサ8は、冷媒流路6を流れる冷却水が電力変換装置100の内部(ベース部材5と金属カバー7との間の空間)に侵入するリスクを伴うことなく、電力変換装置100の内部において冷媒流路6を流通する冷却水の温度を検出することできる。
【0035】
また、温度センサ8が備えるサーミスタ17や信号端子25等を含む導電部材は、絶縁性材料の樹脂からなるセンサ筐体部23で囲われているので、電力変換装置100の内部に配置される電子部品(図示では、特にパワーモジュール2の強電素子接続部20)と温度センサ8との間の絶縁性を所定の部品間距離19(図10参照)を設けずに確保することができる。その結果、電力変換装置100の内部において、絶縁性確保のための部品間距離19を要さずにパワーモジュール2等を含む電力変換回路1のより近傍に温度センサ8を配置することができるので、電力変換装置100の内部レイアウトの自由度を向上させるとともに、電力変換装置100を小型化することができる。また、温度センサ8を温度制御対象である電力変換回路1の近傍に配置することができるので、温度センサ8が検出する冷却水温度に基づいて実行される電力変換回路1に対する温度制御の精度を向上させることができる。また、温度センサ8が電力変換装置100の内部に配置されることで、図9に示す外部弱電配線52が不要となるので、弱電コネクタ51の信号ピンの削減及びコストの低減を図ることもできる。
【0036】
以上が第1実施形態の電力変換装置100の詳細である。以下では、第1実施形態の電力変換装置100の変形例について説明する。
【0037】
(変形例1)
図4は、電力変換装置100の変形例1を説明する図である。上述した電力変換装置100は、電力変換装置100の土台部分として冷媒流路6を有するベース部材5を備えているが、電力変換装置100はこのような構成に限られない。電力変換装置100は、図4で示す変形例1のように構成されてもよい。
【0038】
図4で示す変形例1では、ベース部材5の外側にアルミ等の金属で形成された金属プレート31が配置される。金属プレート31は、金属カバー7と組み付けられることで、変形例1の電力変換装置100の外装(筐体)の一部を構成する。金属プレート31と金属カバー7との組み付け方法は、図5を参照して説明する。
【0039】
図5は、金属プレート31と金属カバー7との組み付け方法の一例を説明する図である。図5で示される部分は、図4の二点鎖線丸部分に相当する。
【0040】
変形例1の金属プレート31と金属カバー7とは、ボルト33を用いて固定される。その際、ボルト33は、図示するように、金属プレート31の外から挿入され、ベース部材5の端部に備わる金属カラー(スペーサ)部34を貫通して金属カバー7に螺合される。これにより、ベース部材5は、金属プレート31と金属カバー7との間に固定されるとともに、ベース部材5に載置されるパワーモジュール2等の電力変換回路1が金属プレート31と金属カバー7との間に収容される。電力変換装置100がこのように構成されることによって、電力変換装置100は、金属プレート31と金属カバー7とで構成される金属筐体によって、内部に収容する電力変換回路1に対するEMCシールド性能を確保することができる。また、ベース部材5と金属カバー7との間に、シール部材32として、ニトリルゴム(NBR)やエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などのゴム材料、又は、液状ガスケット(FIPG)等を使用することで、電力変換装置100の筐体シール性能も確保することができる。
【0041】
(変形例2)
図6は、電力変換装置100の変形例2を説明する図である。上述した電力変換装置100では、ベース部材5を電力変換装置100の下側に土台部分として配置する構成を開示しているが、電力変換装置100はこのような構成に限られない。電力変換装置100は、図6で示す変形例2のように構成されてもよい。
【0042】
すなわち、電力変換装置100を搭載する際の方向(上下左右方向)は特に限定されず、図6で示すように、ベース部材5を上側に配置することも可能である。このように、電力変換装置100は、例えば電動車両に適用される場合に当該電動車両における所望のレイアウトに応じて自由に配置することができる。
【0043】
以上、第1実施形態の電力変換装置100は、入力電力を直流電力または交流電力に変換する電力変換回路1と、電力変換回路1が載置される樹脂製のベース部材5と、ベース部材5との間に電力変換回路1を収容するカバー7(カバー部材)と、ベース部材5の内部に設けられ、電力変換回路1を冷却するための冷媒を流通させる冷媒流路6と、ベース部材5に設けられ、冷媒流路6内を流通する冷媒の温度を検出する温度センサ8と、を備える。この温度センサ8は、少なくともサーミスタ17を含む導電部材を有し、導電部材の少なくとも一部は、絶縁性材料で形成された樹脂壁で囲われる。これにより、温度センサ8が備える導電部材が絶縁性材料の樹脂からなる樹脂壁で囲われるので、電力変換装置100の内部に配置される電子部品(上述の説明では、特にパワーモジュール2の強電素子接続部20)と温度センサ8との間の絶縁性を所定の部品間距離19(図10参照)を設けずに確保することができる。その結果、電力変換装置100のサイズが大きくなることを伴わずに、温度センサ8を電力変換装置100の内部に配置することができる。
【0044】
また、第1実施形態の電力変換装置100によれば、樹脂壁は、温度センサ8の一部であって導電部材(信号端子25、リード線24、及びサーミスタ17)を収容するセンサ筐体部23(筐体部)として構成され、センサ筐体部23は、樹脂製のベース部材5に一体形成される。これにより、温度センサ8のセンサ筐体部23において、特に冷媒流路6に突出している部分(突出部30)がベース部材5と一体に構成されるので、冷媒流路6を流通する冷却水が電力変換装置100の内部へ侵入するリスクを排除することができる。また、温度センサ8が備える導電部材が絶縁性材料の樹脂からなるセンサ筐体部23内に確実に収容されるので、電力変換装置100の内部に配置される電子部品と温度センサ8との間の絶縁性を所定の部品間距離19(図10参照)を要さずに確保することができ、温度センサ8の配置位置をパワーモジュール2の位置により近づけることができる。
【0045】
また、第1実施形態の電力変換装置100によれば、センサ筐体部23は、冷媒流路6内に突出する突出部30を有し、サーミスタ17は、突出部30に収容される。これにより、温度センサ8が備えるサーミスタ17と冷媒流路6を流れる冷却水との距離をより近づけることができるとともに、冷却水と突出部30を介して接触する面積を大きくすることができるので、冷却水の温度をより精度よく検出することができる。
【0046】
〈第2実施形態〉
第2実施形態の電力変換装置200について説明する。
【0047】
図7は第2実施形態の電力変換装置200の構成例を説明する図であって、電力変換装置200における図1のA-A断面図に相当する箇所の概略断面図である。本実施形態の電力変換装置200では、電力変換装置200の内部における温度センサ8の配置に特徴がある。なお、図中で示す矢印は、冷媒流路6内における冷却水の流れる方向を示す。
【0048】
ここで、電力変換装置200に収容されたパワーモジュール2を冷却するための冷媒流路6において、パワーモジュール2が配置される位置を流れる冷却水には、パワーモジュール2の熱に起因する熱流が発生する。図7が示すように、例えば本実施形態では、パワーモジュール2が配置された位置における冷媒流路6に、パワーモジュール2と冷却水との熱交換の効率を高めることを目的とする放熱フィン27が設けられており、放熱フィン27からパワーモジュール2を熱源とする熱流(波矢印参照)が発生する。
【0049】
従って、第2実施形態の温度センサ8は、パワーモジュール2を冷却するための冷却水が流れる冷媒流路6において、パワーモジュール2が配置される位置の上流側に配置される。これにより、温度センサ8は、冷媒流路6を流れる冷却水の温度をパワーモジュール2に起因する熱流の影響を受けることなく、より正確に測定することができるので、温度センサ8が測定する冷却水温度に基づいて実行される電力変換回路1に対する温度制御の精度を向上させることができる。
【0050】
以上、第2実施形態の電力変換装置200によれば、温度センサ8は、ベース部材5の内部に設けられた冷媒流路6において、電力変換回路1が配置される位置の上流に配置される。これにより、冷媒流路6を流れる冷却水であって、パワーモジュール2に起因する熱流の影響を受けていない冷却水の温度を測定することができるので、冷却水の温度をより正確に測定することが可能となり、温度センサ8が測定する冷却水温度に基づいて実行される電力変換回路1に対する温度制御の精度を向上させることができる。
【0051】
〈第3実施形態〉
第3実施形態の電力変換装置300について説明する。
【0052】
図8は、第3実施形態の電力変換装置300の構成例を説明する図であって、電力変換装置200における図1のA-A断面図に相当する箇所の概略断面図である。本実施形態の電力変換装置300は、冷却水の温度を測定する温度センサとして従来の温度センサ53(図10参照)が採用されるとともに、当該温度センサ53の少なくとも一部を囲う樹脂壁22を備える点に特徴がある。
【0053】
具体的には、図8が示すように、本実施形態の温度センサ53は、ベース部材5のパワーモジュール2が載置される面と同一の面においてパワーモジュール2の近傍に配置される。そして、温度センサ53は、金属筐体部13のオスコネクタ部12とは逆側の先端であって、少なくともサーミスタ17が収容される部分(図11(b)参照)が、ベース部材5を貫通して冷媒流路6内に突出するように構成される。
【0054】
換言すれば、本実施形態のベース部材5は、パワーモジュール2が載置される位置の近傍において冷媒流路6と連通する貫通孔を備えており、ベース部材5に温度センサ53が載置される際には、温度センサ53の金属筐体部13の先端が当該貫通孔を貫通して冷媒流路6内に突出するように構成される。なお、温度センサ53は、金属筐体部13に設けられたタップ部14がベース部材5の所定位置に螺合すること等により固定される。
【0055】
また、ベース部材5に温度センサ53を固定する際には、シール材15を用いてシール性能を確保している。シール材15は、ニトリルゴム(NBR)や、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などのゴム材料、又は、銅シールワッシャー等が用いられる。
【0056】
そして、本実施形態の温度センサ53の周囲には、ベース部材5と一体に構成(一体形成)された樹脂壁22が設けられる。樹脂壁22は、少なくとも金属筐体部13の周囲を囲うように構成される。本実施形態の樹脂壁22の高さは、少なくとも、金属筐体部13の最も高い位置と、電力変換回路1が備える電子部品のうち金属筐体部13に最も近い部分(本実施形態では、パワーモジュール2の強電素子接続部20)とを結ぶ線(図中の点線参照)を超える高さに設定される。
【0057】
このように、電力変換装置300の内部において、温度センサ53の少なくとも金属筐体部13が樹脂壁22に囲われることにより、電力変換回路1が備える電子部品と温度センサ53との間の絶縁性を所定の部品間距離19(図19参照)を設けずに確保することができる。その結果、電力変換装置300の内部において、部品間距離19を要さずにパワーモジュール2を含む電力変換回路1の近傍に温度センサ53を配置することができるので、温度センサ53が検出する冷却水温度に基づいて実行される電力変換回路1に対する温度制御の精度を向上させることができるとともに、電力変換装置300を従来に比べて小型化することができる。また、温度センサ53が電力変換装置300の内部に配置されることで、図9に示す外部弱電配線52が不要となり、弱電コネクタ53の信号ピンの削減及びコストの低減を図ることができる。
【0058】
以上、第3実施形態の電力変換装置300によれば、導電部材は、サーミスタ17を収容する金属筐体部13を含み、温度センサ53は、ベース部材5に載置された状態で、金属筐体部13の一部がベース部材5を貫通して冷媒流路6内に突出するように構成される。これにより、温度センサ53が備える金属筐体部13が絶縁性材料の樹脂からなる樹脂壁22で囲われるので、電力変換装置300の内部に配置される電子部品と温度センサ53との間の絶縁性を所定の部品間距離19(図10参照)を設けずに確保することができる。その結果、電力変換装置300のサイズが大きくなることを伴わずに、温度センサ53を電力変換装置300の内部に配置することができるので、従来に比べて電力変換装置300を小型化することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、上記実施形態及び変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態及び変形例の具体的構成に限定する趣旨ではない。本発明は、上述した実施形態及び変形例に限定されることはなく、様々な変形や応用が可能である。
【0060】
例えば、ベース部材5と一体形成されると説明したセンサ筐体部23及び樹脂壁22は、ベース部材5と必ずしも継ぎ目なく(接合されることなく)一体に成型される必要はない。センサ筐体部23及び樹脂壁22とベース部材5とは、別個に成形された後に二次接着や機械的接合により接合されてもよい。
【0061】
また、センサ筐体部23等の形状は図面で表された形状に限定されない。上述した技術的特徴を備える限り、強度等を考慮して適宜変更されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11