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特許7140271セラミック基板の製造方法及びセラミック基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】セラミック基板の製造方法及びセラミック基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20220913BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20220913BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L23/12 D
H01L23/08 C
H05K1/03 610D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021511245
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008258
(87)【国際公開番号】W WO2020202943
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019068269
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 弘毅
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/114974(WO,A1)
【文献】特開2015-170756(JP,A)
【文献】特開2009-141368(JP,A)
【文献】国際公開第2008/018227(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/129340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/08
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部を有するセラミック基板の製造方法であって、
セラミックグリーンシートと、焼成時の平面収縮率が前記セラミックグリーンシートよりも小さい収縮抑制グリーンシートとを用意し、前記収縮抑制グリーンシートの上に前記セラミックグリーンシートを積層してマザー積層体を形成する工程と、
前記マザー積層体の焼成後に前記凹部が形成される凹部形成予定領域をプレス加工することで、焼成前の前記マザー積層体に前記凹部を形成する工程と、を有し、
前記マザー積層体を形成する工程において、前記凹部形成予定領域と重ならない位置で、かつ、焼成後に個片の前記セラミック基板に分割される分割予定ラインと重なる位置に、前記収縮抑制グリーンシート及び前記セラミックグリーンシートのうち少なくとも1枚以上に穴部を形成する工程を含み、
前記凹部を形成する工程において、前記穴部は、前記収縮抑制グリーンシート及び前記セラミックグリーンシートの流動により内壁が密着して、前記分割予定ラインで前記マザー積層体は一体に形成される
セラミック基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミック基板の製造方法であって、
前記収縮抑制グリーンシートは、板状セラミック充填部材を含む
セラミック基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のセラミック基板の製造方法であって、
前記板状セラミック充填部材は、板状アルミナである
セラミック基板の製造方法。
【請求項4】
搭載面を有する基板底部と、
前記基板底部の上に設けられ、前記搭載面を囲む壁部と、を有するセラミック基板であって、
前記基板底部は、
セラミック層と、焼成時の平面収縮率が前記セラミック層よりも小さい収縮抑制層とを有し、前記収縮抑制層の上に前記セラミック層が積層され、
前記壁部は、少なくとも前記セラミック層を有し、
前記セラミック層及び前記収縮抑制層の層間を示す粒界の配向が、前記搭載面及び前記壁部の内壁に沿って湾曲し、
前記基板底部の前記搭載面及び前記壁部の内壁面は、前記セラミック層で形成され、
前記基板底部の前記搭載面と反対側の面は、前記搭載面及び前記壁部と重なる領域に亘って平坦であり、前記収縮抑制層で形成される
セラミック基板。
【請求項5】
搭載面を有する基板底部と、
前記基板底部の上に設けられ、前記搭載面を囲む壁部と、を有するセラミック基板であって、
前記基板底部は、
セラミック層と、板状セラミック充填部材の含有率が前記セラミック層より高い収縮抑制層とを有し、前記収縮抑制層の上に前記セラミック層が積層され、
前記壁部は、少なくとも前記セラミック層を有し、
前記セラミック層及び前記収縮抑制層の層間を示す粒界の配向が、前記搭載面及び前記壁部の内壁に沿って湾曲し、
前記基板底部の前記搭載面及び前記壁部の内壁面は、前記セラミック層で形成され、
前記基板底部の前記搭載面と反対側の面は、前記搭載面及び前記壁部と重なる領域に亘って平坦であり、前記収縮抑制層で形成される
セラミック基板。
【請求項6】
請求項に記載のセラミック基板であって、
前記板状セラミック充填部材は、板状アルミナである
セラミック基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の製造方法及びセラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装する実装基板や、電子部品を収納するパッケージとしてセラミック基板が用いられる。特許文献1に記載されているセラミック基板(電子部品収納用パッケージ)では、セラミックグリーンシートの上面をプレス加工して、凹部を加工することによって、焼成後のセラミック基板に凹部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-170756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、プレス加工において、セラミックグリーンシートの凹部が形成される領域と、凹部が形成されない領域とで、セラミックグリーンシートに加えられる圧力が異なる。これにより、凹部が加工されたセラミックグリーンシートでは、平面内で密度の分布が生じる。このため、焼成後のセラミック基板において、反りが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、反りを好適に抑制することが可能なセラミック基板の製造方法及びセラミック基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面のセラミック基板の製造方法は、上面に凹部を有するセラミック基板の製造方法であって、セラミックグリーンシートと、焼成時の平面収縮率が前記セラミックグリーンシートよりも小さい収縮抑制グリーンシートとを用意し、前記収縮抑制グリーンシートの上に前記セラミックグリーンシートを積層してマザー積層体を形成する工程と、前記マザー積層体の焼成後に前記凹部が形成される凹部形成予定領域をプレス加工することで、焼成前の前記マザー積層体に前記凹部を形成する工程と、を有する。
【0007】
本発明の一側面のセラミック基板は、搭載面を有する基板底部と、前記基板底部の上に設けられ、前記搭載面を囲む壁部と、を有するセラミック基板であって、前記基板底部は、セラミック層と、焼成時の平面収縮率が前記セラミック層よりも小さい収縮抑制層とを有し、前記収縮抑制層の上に前記セラミック層が積層され、前記壁部は、少なくとも前記セラミック層を有し、前記セラミック層及び前記収縮抑制層の層間を示す粒界の配向が、前記搭載面及び前記壁部の内壁に沿って湾曲する。
【0008】
本発明の一側面のセラミック基板は、搭載面を有する基板底部と、前記基板底部の上に設けられ、前記搭載面を囲む壁部と、を有するセラミック基板であって、前記基板底部は、セラミック層と、板状セラミック充填部材の含有率が前記セラミック層より高い収縮抑制層とを有し、前記収縮抑制層の上に前記セラミック層が積層され、前記壁部は、少なくとも前記セラミック層を有し、前記セラミック層及び前記収縮抑制層の層間を示す粒界の配向が、前記搭載面及び前記壁部の内壁に沿って湾曲する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反りを好適に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のセラミック基板を有するパッケージの構成を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II’断面図である。
図3図3は、セラミック基板の製造方法を説明するための説明図である。
図4図4は、収縮抑制グリーンシートの構成を模式的に示す断面図である。
図5図5は、マザー積層体を示す平面図である。
図6図6は、焼成後のマザー積層体を模式的に示す断面図である。
図7図7は、第2実施形態のセラミック基板の製造方法を説明するための説明図である。
図8図8は、第2実施形態のマザー積層体を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のセラミック基板の製造方法及びセラミック基板の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施の形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のセラミック基板を有するパッケージの構成を示す平面図である。図2は、図1のII-II’断面図である。なお、図1は、パッケージ100の蓋体2を除いたセラミック基板1の平面図を示す。
【0013】
図1に示すように、パッケージ100はセラミック基板1を有する。セラミック基板1は、基板底部10と、壁部12とを有する。壁部12は、基板底部10の搭載面10aを囲んで枠状に設けられている。言い換えると、セラミック基板1は、上面に凹部20が設けられている。セラミック基板1は、平面視で、矩形状である。なお、以下の説明において、平面視とは、搭載面10aに垂直な方向から見た場合の配置関係を示す。
【0014】
電子部品200は、セラミック基板1の凹部20内に収納される。具体的には、電子部品200は、水晶振動子である。基板底部10の搭載面10aには電子部品200を実装するための台座14が設けられている。台座14は、搭載面10aの隅部付近に設けられ、壁部12から離隔して配置される。また、基板底部10の搭載面10aには支持部16が設けられる。支持部16は、台座14と反対側に配置される。電子部品200の一端側は、台座14の上に接合部材18により接合される。電子部品200の他端側は、支持部16の上側に位置する。電子部品200は、搭載面10a、支持部16及び壁部12の内壁面12bと離れて配置される。
【0015】
図2に示すように、台座14の上面には、電子部品200と電気的に接続される接続電極22が設けられる。また、セラミック基板1の下面には、底面電極24、25が設けられている。接続電極22と底面電極24とは、基板底部10に設けられたビア23を介して電気的に接続される。
【0016】
壁部12の上面12aには、メタライズ層3が設けられている。蓋体2は、メタライズ層3を介してセラミック基板1に接合される。これにより、基板底部10と、壁部12と、蓋体2とで囲まれた空間が気密封止される。
【0017】
次に、セラミック基板1の製造方法について説明する。図3は、セラミック基板の製造方法を説明するための説明図である。図3に示すように、セラミック基板1の製造方法は、複数のセラミックグリーンシート51と複数の収縮抑制グリーンシート52とを用意し、複数の収縮抑制グリーンシート52の上に、複数のセラミックグリーンシート51を積層してマザー積層体5を形成する工程(ステップST1)を含む。なお、図3では図示を省略するが、複数のセラミックグリーンシート51のそれぞれには、ビア23や、接続電極22、底面電極24、25等の各種電極が形成される。
【0018】
セラミックグリーンシート51は、酸化アルミニウム(Al)を主成分とするセラミック粉末と、有機バインダ及び熱可塑性樹脂等の樹脂材料とを含む。セラミックグリーンシート51は、例えば、ドクターブレードやリップコータ等により塗布形成される。
【0019】
収縮抑制グリーンシート52は、焼成前後の寸法で比較した、平面視した主面に平行な方向における自体の焼成収縮率、すなわち平面収縮率が1%未満である特性を有する。収縮抑制グリーンシート52は、セラミックグリーンシート51よりも平面収縮率が小さい。図4は、収縮抑制グリーンシートの構成を模式的に示す断面図である。図4に示すように、収縮抑制グリーンシート52は、フィラーとしての主成分であるセラミック粉末の形状に比べて板形状に近い板状セラミック充填部材66と、有機バインダ及び熱可塑性樹脂等の樹脂材料67とを含む。板状セラミック充填部材66は、例えば板状アルミナである。なお、板状セラミック充填部材66の最大長さ寸法は、主成分であるセラミック粉末の最大長さ寸法より2倍以上であることが好ましく、3倍以上がより好ましい。
【0020】
収縮抑制グリーンシート52は、例えば、ドクターブレードやリップコータ等により塗布形成される。これにより、複数の板状セラミック充填部材66の配向は、収縮抑制グリーンシート52の面内方向に揃う。これにより、収縮抑制グリーンシート52は、セラミックグリーンシート51よりも平面収縮率を小さくすることができる。なお、収縮抑制グリーンシート52は、球状アルミナを有していてもよい。複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、各層毎に板状セラミック充填部材66及び球状アルミナの配合比率が異なっていてもよい。
【0021】
図5は、マザー積層体を示す平面図である。図5に示すように、マザー積層体5において、分割予定ライン53、54はマトリクス状に設けられる。分割予定ライン53、54は、マザー積層体5が焼成後に個片のセラミック基板1に分割される予定の仮想線である。つまり、分割予定ライン53、54で囲まれた領域が、1つのセラミック基板1に対応する。マザー積層体5には、分割予定ライン53、54と重なる位置に、分割用の溝が形成されてもよい。個片のセラミック基板1に分割する設備装置に、例えばローラーブレイク機を用いてもよく、ダイサーを用いてもよい。
【0022】
図3に示すように、マザー積層体5は、壁部形成予定領域55と、凹部形成予定領域56とを有する。壁部形成予定領域55は、マザー積層体5の焼成、分割後にセラミック基板1の壁部12が形成される予定の領域である。凹部形成予定領域56は、マザー積層体5の焼成、分割後にセラミック基板1の凹部20が形成される予定の領域である。複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、壁部形成予定領域55及び凹部形成予定領域56に亘って連続して設けられる。
【0023】
次に、図3に示すように、加圧治具8は、マザー積層体5の凹部形成予定領域56をプレス加工することで、マザー積層体5に凹部20を形成する(ステップST2)。加圧治具8は、上型81と下型82とを有する。マザー積層体5は、下型82と上型81との間に配置される。上型81は、ベース83と、凸部84とを有する。
【0024】
上型81はマザー積層体5の上面側からプレス加工する。これにより、まず、マザー積層体5の凹部形成予定領域56が凸部84により加圧される。凸部84から加えられる圧力により、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、凸部84の形状に沿って変形する。すなわち、凹部形成予定領域56の複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が薄くなるとともに、矢印Aに示す方向に押し出されて、壁部形成予定領域55側に流動する。壁部形成予定領域55では、凹部形成予定領域56よりも厚くなる。
【0025】
さらに、上型81が加圧することで、マザー積層体5が凸部84の下面及び側面を覆うように変形し、壁部形成予定領域55がベース83の下面83aに接する。複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、凸部84の下面、側面及びベース83の下面83aに沿って湾曲する。これにより、マザー積層体5に凸部84の形状が転写される。
【0026】
凹部形成予定領域56には、壁部形成予定領域55よりも大きい圧力が加えられる。これにより、凹部形成予定領域56と壁部形成予定領域55とで、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52には密度の分布が生じる。
【0027】
次に、加圧治具8を取り外すことで、凹部20を有するマザー積層体5が得られる(ステップST3)。マザー積層体5の凹部形成予定領域56及び壁部形成予定領域55は、いずれも複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が積層されて構成される。
【0028】
次に、マザー積層体5を所定の温度で焼成する(ステップST4)。これにより、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が一体に焼結されて、焼成後のマザー積層体9が得られる。焼成後のマザー積層体9は、上面に複数の凹部20が形成される。言い換えると、焼成後のマザー積層体9は、分割後に個片のセラミック基板1となる基板底部10と、壁部12と、が複数配列される。
【0029】
本実施形態のセラミック基板1の製造方法によれば、マザー積層体5において、複数のセラミックグリーンシート51は複数の収縮抑制グリーンシート52の上に積層されている。このため、複数の収縮抑制グリーンシート52により、複数のセラミックグリーンシート51の焼成時の平面方向の収縮が抑制される。この結果、マザー積層体5は、焼成時に厚み方向の収縮が支配的となる。
【0030】
これにより、本実施形態では、焼成前のマザー積層体5において、凹部形成予定領域56と壁部形成予定領域55とで密度の分布が生じた場合であっても、焼成後のマザー積層体9の反りの発生を抑制することができる。この結果、焼成後のマザー積層体9を分割することで形成されるセラミック基板1の反りを抑制することができる。
【0031】
図6は、焼成後のマザー積層体を模式的に示す断面図である。図6に示すように、焼成後のマザー積層体9は、複数のセラミック層91及び複数の収縮抑制層92を有する。セラミック層91は、セラミックグリーンシート51が焼結されて形成される層である。収縮抑制層92は、収縮抑制グリーンシート52が焼結されて形成される層である。すなわち、収縮抑制層92は、板状セラミック充填部材66の含有率がセラミック層91より高い。基板底部10は、収縮抑制層92と、収縮抑制層92の上に設けられたセラミック層91と、を有する。壁部12は、少なくともセラミック層91を有する。
【0032】
複数のセラミック層91及び複数の収縮抑制層92の層間を示す粒界58の配向は、プレス加工での複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の流動により、搭載面10a、壁部12の内壁面12b及び上面12aに沿って湾曲する。
【0033】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のセラミック基板の製造方法を説明するための説明図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0034】
第2実施形態では、上述した第1実施形態とは異なり、マザー積層体5において、穴部61が設けられている構成を説明する。より具体的には、図7に示すように、セラミック基板1の製造方法は、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52に穴部61を形成し、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52を積層してマザー積層体5を形成する工程(ステップST11)を含む。
【0035】
穴部61は、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の、それぞれ、凹部形成予定領域56と重ならない位置であって、かつ、分割予定ライン54と重なる位置に形成される。すなわち、複数の穴部61は、マザー積層体5の壁部形成予定領域55に設けられる。複数の穴部61は、マザー積層体5の上面から下面まで貫通して設けられる。
【0036】
図8は、マザー積層体を拡大して示す平面図である。なお、図8では、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52を積層後、プレス加工前のマザー積層体5を示す。図8に示すように、複数の穴部61は、平面視でそれぞれ円形状であり、分割予定ライン53、54に沿って配列される。より具体的には、複数の穴部61は、分割予定ライン53と分割予定ライン54との交点と重なる位置に設けられる。また、複数の穴部61は、交点の間において、分割予定ライン53、54と重なる位置にも設けられる。
【0037】
次に、図7に示すように、加圧治具8は、マザー積層体5の凹部形成予定領域56をプレス加工することで、マザー積層体5に凹部20を形成する(ステップST12)。凸部84から加えられる圧力により、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、凸部84の形状に沿って変形する。すなわち、凹部形成予定領域56のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が薄くなるとともに、矢印Aに示す方向に押し出されて、壁部形成予定領域55側に流動する。壁部形成予定領域55では、凹部形成予定領域56よりも厚くなり、セラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の流動により穴部61の幅が小さくなる。
【0038】
さらに、上型81が加圧することで、マザー積層体5が凸部84の下面及び側面を覆うように変形し、壁部形成予定領域55がベース83の下面83aに接する。これにより、マザー積層体5に凸部84の形状が転写される。また、凹部形成予定領域56の複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の流動により、穴部61の内壁が密着し、分割予定ライン54でマザー積層体5は一体に形成される。
【0039】
そして、加圧治具8を取り外すことで、凹部20を有するマザー積層体5が得られる(ステップST13)。
【0040】
次に、マザー積層体5を所定の温度で焼成する(ステップST14)。これにより、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が一体に焼結されて、焼成後のマザー積層体9が得られる。
【0041】
第2実施形態のセラミック基板1の製造方法によれば、マザー積層体5に穴部61が設けられているので、プレス加工における複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の流動性を向上させることができる。すなわち、加圧治具8により複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52に圧力が加えられた場合に、穴部61により、凹部形成予定領域56の複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が壁部形成予定領域55側に流動しやすくなる。
【0042】
これにより、第2実施形態では、第1実施形態に比べて、プレス加工における複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の圧力の分布が緩和され、小さい圧力で凹部形成予定領域56及び壁部形成予定領域55を変形させて、凹部20を形成することができる。あるいは、穴部61が形成されない場合に比べて、同じ圧力でより深い凹部20を形成することができる。
【0043】
したがって、プレス加工後のマザー積層体5において、凹部形成予定領域56と壁部形成予定領域55とで、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の密度の差を抑制することができる。この結果、マザー積層体5を焼成、分割後に形成されるセラミック基板1の反りを抑制することができる。
【0044】
また、図8に示すように、複数の穴部61は、凹部形成予定領域56の周囲を囲むように設けられる。より好ましくは、複数の穴部61は、凹部形成予定領域56を挟んで対称となる位置に設けられる。これにより、加圧治具8によりプレス加工する際に、凹部形成予定領域56の複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52が、周囲の壁部形成予定領域55側に均等に流動しやすくなる。
【0045】
上述した第1実施形態及び第2実施形態の構成は適宜変更することができる。例えば、図3において、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、それぞれ2枚ずつ積層されているが、これに限定されない。マザー積層体5は、少なくとも1枚の収縮抑制グリーンシート52を有していればよい。また、収縮抑制グリーンシート52は、3枚以上であってもよい。また、セラミックグリーンシート51も、1枚でもよく、3枚以上でもよい。
【0046】
また、複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52は、異なる厚さを有していてもよい。また、マザー積層体5を構成する複数のセラミックグリーンシート51及び複数の収縮抑制グリーンシート52の合計の数は、4枚に限定されず、5枚以上であってもよく、3枚以下であってもよい。
【0047】
また、凹部20の断面形状は、角部を有する矩形の一部の形状であるがこれに限定されない。凹部20の内壁面12bと搭載面10aとの接続部分が、湾曲した曲面で構成されていてもよい。あるいは、凹部20の搭載面10aが曲面を有して形成されていてもよい。
【0048】
また、穴部61の数や配置、平面視での形状は適宜変更できる。例えば、図8において、隣り合う交点の間に2つ以上の穴部61が配列されていてもよい。あるいは、交点と重なる位置にのみ穴部61が設けられ、隣り合う交点の間に穴部61が配列されていなくてもよい。穴部61の平面視での形状は、円形状に限定されず、矩形状、菱形形状、十字状、多角形状等、他の形状であってもよい。また、複数の穴部61は、マザー積層体5の上面から下面まで貫通して設けられる構成に限定されず、マザー積層体5の上面から中間層のセラミックグリーンシート51まで設けられていてもよい。
【0049】
また、図1及び図2に示す電子部品200は、水晶振動子に限定されず、他の電子部品であってもよい。
【0050】
なお、上記した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 セラミック基板
2 蓋体
3 メタライズ層
5 マザー積層体
8 加圧治具
9 焼成後のマザー積層体
10 基板底部
10a 搭載面
12 壁部
12a 上面
12b 内壁面
14 台座
16 支持部
18 接合部材
20 凹部
22 接続電極
23 ビア
24、25 底面電極
51 セラミックグリーンシート
52 収縮抑制グリーンシート
53、54 分割予定ライン
55 壁部形成予定領域
56 凹部形成予定領域
58 粒界
61 穴部
66 板状セラミック充填部材
67 樹脂材料
81 上型
82 下型
83 ベース
84 凸部
91 セラミック層
92 収縮抑制層
100 パッケージ
200 電子部品
A 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8