(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220913BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220913BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20220913BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220913BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220913BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220913BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20220913BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M4/13
H01M4/64 A
H01M10/0587
H01M50/531
H01M50/586
H01M50/591 101
(21)【出願番号】P 2021513605
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015213
(87)【国際公開番号】W WO2020209176
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019074186
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】西家 大貴
(72)【発明者】
【氏名】徳川 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】堀越 吉一
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-156093(JP,A)
【文献】特開2015-35250(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 4/64
H01M 4/13
H01M 50/586
H01M 50/591
H01M 10/052
H01M 10/0587
H01M 50/531
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1の電極と、
帯状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた帯状のセパレータと、
を含む巻回構造の電極体と、
電解質と
を備える電池であって、
前記第1の電極および前記第2の電極のうち最内周に位置する電極は、
第1の主面と第2の主面とを有する集電体と、
前記電極の巻回中心側の端部に第1の集電体露出部が設けられるように、前記第1の主面に形成された第1の活物質層と、
前記電極の巻回中心側の端部に第2の集電体露出部が設けられるように、前記第2の主面に形成された第2の活物質層と、
第1の絶縁部材と、
第2の絶縁部材と
を備え、
前記第1の絶縁部材は、前記第1の活物質層と前記第1の集電体露出部との境界、および前記第1の集電体露出部を覆い、
前記第2の絶縁部材は、前記第2の活物質層と前記第2の集電体露出部との境界、および前記第2の集電体露出部を覆い、
前記第1の絶縁部材および前記第2の絶縁部材は、前記集電体を挟んで重ね合わされ、
前記電極の短手方向における前記第1の絶縁部材および前記第2の絶縁部材の幅が、前記電極の短手方向における前記電極の幅より大きく、
前記電極の巻回中心側の端と前記第1の活物質層の端との間の第2の主面上に前記第2の絶縁部材があり、
前記電極の巻回中心側の端と前記第2の活物質層の端との間の第1の主面上に前記第1の絶縁部材がある
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記第1の絶縁部材と前記第2の絶縁部材の巻回中心側の端の位置ずれ量が、3.0mm以下である請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電極は、
前記第1の集電体露出部の巻回中心側の端部が前記第1の絶縁部材により覆われずに露出した第3の集電体露出部と、
前記第2の集電体露出部の巻回中心側の端部が前記第2の絶縁部材により覆われずに露出した第4の集電体露出部と
を有し、
前記第3の集電体露出部と前記第4の集電体露出部が前記電極の厚み方向に重なっている部分の長さは、5mm以下である請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記電極体は、扁平状を有し、
前記電極は、前記第1の主面に前記第1の活物質層が形成されず、前記第1の主面が前記第1の集電体露出部となっているのに対して、前記第2の主面に前記第2の活物質層が形成されている片面電極部を有し、
前記片面電極部は、湾曲部を有し、
前記第1の集電体露出部のうち前記片面電極部の前記湾曲部に対応する領域は、前記第1の絶縁部材により覆われている請求項1から3のいずれか記載の電池。
【請求項5】
前記集電体の幅が、5mm以上25mm以下である請求項1から4のいずれか記載の電池。
【請求項6】
前記集電体の厚みが、5μm以上15μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
前記第1の電極は正極であり、
前記第2の電極は負極であり、
前記正極は、該正極の最外周側に設けられた正極タブを備え、
前記負極は、該負極の最外周側に設けられた負極タブを備える請求項1から6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
前記電極は、正極である請求項1から7のいずれかに記載の電池。
【請求項9】
前記電極体および前記電解質を収容する金属缶をさらに備え、
前記電極体の最外周には、負極が巻かれており、
前記負極は、負極集電体と負極活物質層とを有し、
露出した前記負極集電体が前記金属缶の内側面と接触している請求項1から8のいずれかに記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯状の正極と負極とが帯状のセパレータを介して巻回された巻回構造の電池は広く用いられている。この巻回構造の電池では、正極集電体露出部と負極集電体露出部との電気的接触を抑制するために絶縁部材(絶縁テープ)が備えられている。
【0003】
例えば特許文献1には、巻回中心側に正極露出領域21DSを有し、正極露出領域21DSのうち、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域に絶縁テープ27が設けられている、扁平状を有する巻回構造の二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された二次電池では、正極21の巻き始めにおいて、正極21の挿入安定性が低いため、巻回不良が発生するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、巻回不良の発生を抑制することができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明は、
帯状の第1の電極と、
帯状の第2の電極と、
第1の電極と第2の電極との間に設けられた帯状のセパレータと、
を含む巻回構造の電極体と、
電解質と
を備える電池であって、
第1の電極および第2の電極のうち最内周に位置する電極は、
第1の主面と第2の主面とを有する集電体と、
電極の巻回中心側の端部に第1の集電体露出部が設けられるように、第1の主面に形成された第1の活物質層と、
電極の巻回中心側の端部に第2の集電体露出部が設けられるように、第2の主面に形成された第2の活物質層と、
第1の絶縁部材と、
第2の絶縁部材と
を備え、
第1の絶縁部材は、第1の活物質層と第1の集電体露出部との境界、および第1の集電体露出部を覆い、
第2の絶縁部材は、第2の活物質層と第2の集電体露出部との境界、および第2の集電体露出部を覆い、
第1の絶縁部材および第2の絶縁部材は、集電体を挟んで重ね合わされ、
電極の短手方向における第1の絶縁部材および第2の絶縁部材の幅が、電極の短手方向における電極の幅より大きく、
電極の巻回中心側の端と第1の活物質層の端との間の第2の主面上に第2の絶縁部材があり、
電極の巻回中心側の端と第2の活物質層の端との間の第1の主面上に第1の絶縁部材がある
ことを特徴とする電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻回不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3Aは、正極の巻回中心側の端部の構成の一例を示す展開図である。
図3Bは、
図3AのIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6A、
図6B、
図6C、
図6Dはそれぞれ、変形例に係る正極の巻回中心側の端部の構成例を示す展開図である。
図6Eは、比較例1に係る正極の巻回中心側の端部の構成を示す展開図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(電池の例)
2 第2の実施形態(電子機器の例)
【0011】
<1 第1の実施形態>
[電池の構成]
まず、
図1、
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る非水電解質二次電池(以下単に「電池」という。)の構成の一例について説明する。電池は、
図1に示すように、扁平状を有している。電池は、正極タブ31および負極タブ32が取り付けられ、扁平状を有する巻回型の電極体20と、電解質としての電解液(図示せず)と、これらの電極体20および電解液を収容するケース10とを備える。電池をその主面に垂直な方向から平面視すると、電池は長方形状を有している。
【0012】
(ケース)
ケース10は、直方体状の薄型の電池缶であり、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されている。ケース10は、収容部11と、蓋部12とを備える。収容部11は、電極体20を収容する。収容部11は、主面部11Aと、主面部11Aの周縁に設けられた壁部11Bとを備える。主面部11Aは電極体20の主面を覆い、壁部11Bは電極体20の側面および端面を覆う。壁部11Bのうち、電極体20の一方の端面(正極タブ31および負極タブ32が取り出される側の端面)に対向する部分には、正極端子13が設けられている。正極タブ31は、正極端子13に接続されている。負極タブ32は、ケース10の内側面に接続されている。蓋部12は、収容部11の開口を覆う。収容部11の壁部11Bの頂部と蓋部12の周縁部とは、溶接または接着剤等により接合されている。
【0013】
(正極タブ、負極タブ)
正極タブ31および負極タブ32は、例えば、Al、Cu、Niまたはステンレス鋼等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状等とされている。
【0014】
(電極体)
図2に示すように、電極体20は、対向する一対の平坦部20Aと、この一対の平坦部20Aとの間に設けられ、対向する一対の湾曲部20Bとを有する。電極体20は、帯状を有する正極21と、帯状を有する負極22と、帯状を有する2枚のセパレータ23A、23Bと、正極21上に設けられた絶縁部材25A1、25A2、25B1、25B2と、負極22上に設けられた絶縁部材26B1、26B2とを備える。
【0015】
セパレータ23A、23Bは、正極21と負極22との間に交互に設けられている。電極体20は、正極21と負極22とをセパレータ23Aまたはセパレータ23Bを介して積層し、扁平状かつ渦巻状になるように長手方向に巻回された構成を有している。電極体20は、正極21が最内周電極となり、負極22が最外周電極となるように巻回されている。最外周電極である負極22は、巻止テープ24により固定されている。正極21、負極22およびセパレータ23A、23Bには、電解液が含浸されている。第1の実施形態において、正極21は、本発明の「第1の電極」の一具体例に相当し、負極22は、本発明の「第2の電極」の一具体例に相当する。
【0016】
正極タブ31、負極タブ32はそれぞれ、正極21、負極22の最外周側に設けられている。このような構成を採用することで、正極タブ31、負極タブ32がそれぞれ、正極21、負極22の最内周側に設けられている場合に比べて、平坦部20Aの平坦性を向上することができる。したがって、ケース10と電極体20との間の隙間の発生を抑制することができる。したがって、電池の体積エネルギー密度を向上することができる。
【0017】
(正極)
正極21は、内側面(第1の面)21S1および外側面(第2の面)21S2を有する正極集電体21Aと、正極集電体21Aの内側面21S1に設けられた正極活物質層21B1と、正極集電体21Aの外側面21S2に設けられた正極活物質層21B2とを備える。本明細書において、“内側面”とは、巻回中心側に位置する面を意味し、“外側面”とは、巻回中心とは反対側に位置する面を意味する。
【0018】
正極21の巻回中心側の端部(以下単に「中心側端部」という。)の内側面21S1には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21Aの内側面21S1が露出した正極集電体露出部21C1が設けられている。正極21の中心側端部の外側面21S2には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21Aの外側面が露出した正極集電体露出部21C2が設けられている。巻回方向における正極集電体露出部21C1の長さは、例えば、巻回方向における正極集電体露出部21C2の長さよりも約1周長くなっている。すなわち、正極21には、正極活物質層21B1および正極活物質層21B2のうち、正極活物質層21B2のみが正極集電体21Aに設けられている片面電極部が、例えば約1周設けられている。正極集電体露出部21C1は、本発明の「第1の集電体露出部」の一具体例に相当し、正極集電体露出部21C2は、本発明の「第2の集電体露出部」の一具体例に相当する。
【0019】
正極21の巻回外周側の端部(以下単に「外周側端部」という。)の内側面21S1には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21Aの内側面21S1が露出した正極集電体露出部21D1が設けられている。正極21の外周側端部の外側面21S2には、正極活物質層21B2が設けられず、正極集電体21Aの外側面21S2が露出した正極集電体露出部21D2が設けられている。正極集電体露出部21D2のうち平坦部20Aに対応する部分には、正極タブ31が接続されている。巻回方向における正極集電体露出部21D1の長さは、例えば、巻回方向における正極集電体露出部21D2の長さとほぼ同一になっている。巻回方向における正極集電体露出部21C1、21C2、21D1、21D2の長さとは、電極体20を解きほぐした場合の長手方向の正極集電体露出部21C1、21C2、21D1、21D2の長さを意味する。
【0020】
本明細書において、正極21の中心側端部とは、正極21の巻回中心側の端(先端)と、正極21の内側面の中心側端部と、正極21の外側面の中心側端部とを含む部分を意味する。正極21の外周側端部とは、正極21の巻回外周側の端(先端)と、正極21の内側面の外周側端部と、正極21の外側面の外周側端部とを含む部分を意味する。
【0021】
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。正極集電体21Aの幅W
cが、5mm以上25mm以下であることが好ましい。正極集電体21Aの幅W
cが5mm以上であると、正極21の中心側端部の剛性を高めることができるので、巻回時の正極21の挿入安定性を向上することができる。具体的には、巻回時に正極21の中心側端部を2枚のセパレータ23A、23B間に挿入する際に(
図4参照)、正極21の中心側端部が湾曲することを抑制するとともに、2枚のセパレータ23A、23B間に折れ曲がった状態等で挿入されることを抑制することができる。したがって、巻回不良(巻ずれ)の発生を抑制することができる。一方、正極集電体21Aの幅W
cが25mm以下であると、従来より電池サイズを小型化できる。
【0022】
正極集電体21Aの厚みTcが、5μm以上15μm以下であることが好ましい。正極集電体21Aの厚みTcが5μm以上であると、正極21の中心側端部の剛性を高めることができるので、正極集電体21Aの幅Wcが5mm以上である場合と同様の効果を得ることができる。一方、正極集電体21Aの厚みTcが15μm以下であると、電池のエネルギー密度の低下を抑制することができる。
【0023】
正極21は、内側面21S1が露出し正極集電体露出部21C1となっているのに対して、外側面21S2に正極活物質層21B2が形成されている片面電極部を中心側端部に有している。この片面電極部は、湾曲部を有している。正極集電体露出部21C1のうち片面電極部の湾曲部に対応する領域21Rは、絶縁部材25A1で覆われている。これにより、電池をプレスする工程において、絶縁部材25A1により片面電極部の湾曲部を正極集電体21Aの内側面21S1側から支持することができる。したがって、電池をプレスする工程において片面電極部の湾曲部にかかるストレスを軽減することができる。よって、微小ショート系不良の発生を抑制することができる。
【0024】
正極活物質層21B1、21B2は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質を含む。正極活物質層21B、21B2は、必要に応じてバインダーおよび導電剤のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0025】
(正極活物質)
正極活物質としては、Liを吸蔵、放出できるものであればよい。例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素とを含むリチウム含有化合物が好ましい。
【0026】
(バインダー)
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、およびこれら樹脂材料のうちの1種を主体とする共重合体等からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0027】
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェン等からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素材料を用いることができる。
【0028】
(負極)
負極22は、内側面(第1の面)22S1および外側面(第2の面)22S2を有する負極集電体22Aと、負極集電体22Aの内側面22S1に設けられた負極活物質層22B1と、負極集電体22Aの外側面22S2に設けられた負極活物質層22B2とを備える。
【0029】
負極22の中心側端部の内側面22S1には、負極活物質層22B1が設けられず、正極集電体21Aの内側面22S1が露出した負極集電体露出部22C1が設けられている。負極22の中心側端部の外側面22S2には、負極活物質層22B2が設けられず、負極集電体22Aの外側面が露出した負極集電体露出部22C2が設けられている。巻回方向における負極集電体露出部22C1の長さは、例えば、巻回方向における負極集電体露出部22C2の長さとほぼ同一になっている。
【0030】
負極22の外周側端部の内側面22S1には、負極活物質層22B1が設けられず、正極集電体21Aの内側面22S1が露出した負極集電体露出部22D1が設けられている。負極22の外周側端部の外側面22S2には、負極活物質層22B2が設けられず、負極集電体22Aの外側面22S2が露出した負極集電体露出部22D2が設けられている。負極集電体露出部22D1のうち平坦部20Aに対応する部分には、負極タブ32が接続されている。なお、正極タブ31および負極タブ32は同一の平坦部20Aの側に設けられている。
【0031】
本明細書において、負極22の中心側端部および外周側端部とは、正極21の中心側端部および外周側端部と同様の意味で用いられる。
【0032】
巻回方向における負極集電体露出部22D1の長さは、巻回方向における負極集電体露出部22D2の長さよりも約1周長くなっている。すなわち、負極22には、負極活物質層22B1および負極活物質層22B2のうち、負極活物質層22B1のみが負極集電体22Aに設けられている片面電極部が、例えば約1周設けられている。巻回方向における負極集電体露出部22C1、22C2、22D1、22D2の長さとは、電極体20を解きほぐした場合の長手方向の負極集電体露出部22C1、22C2、22D1、22D2の長さを意味する。
【0033】
負極22の最外周には、負極集電体22Aの内側面22S1および外側面22S2の両方が露出した部分(すなわち正極21の両面に負極集電体露出部22D1および負極集電体露出部22D2が設けられている部分)が、例えば約1周にわたって設けられている。これにより、負極集電体露出部22D2とケース10の内側面とが電気的に接触する。しがって、負極22とケース10との間の抵抗を低減することができる。
【0034】
負極集電体22Aは、例えば、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。負極活物質層22B1、22B2は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極活物質を含む。負極活物質層22B1、22B2は、必要に応じてバインダーおよび導電剤のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0035】
(負極活物質)
負極活物質としては、Liを吸蔵、放出できるものであればよい。例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。さらにまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0036】
(バインダー)
バインダーとしては、正極活物質層21B1、21B2と同様のものを用いることができる。
【0037】
(導電剤)
導電剤としては、正極活物質層21B1、21B2と同様のものを用いることができる。
【0038】
(セパレータ)
セパレータ23A、23Bは、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23A、23Bは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)等)、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂、または、これらの樹脂をブレンドした樹脂からなる多孔質膜によって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0039】
(電解液)
電解液は、いわゆる非水電解液であり、有機溶媒(非水溶媒)と、この有機溶媒に溶解された電解質塩とを含む。電解液が、電池特性を向上するために、公知の添加剤を含んでいてもよい。なお、電解液に代えて、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含む電解質層を用いるようにしてもよい。この場合、電解質層は、ゲル状となっていてもよい。
【0040】
有機溶媒としては、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレン等の環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性をさらに向上させることができるからである。
【0041】
有機溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸メチルプロピル等の鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0042】
有機溶媒としては、さらにまた、2,4-ジフルオロアニソールまたは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4-ジフルオロアニソールは放電容量をさらに向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性をさらに向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0043】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト-O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、またはLiBr等が挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0044】
(絶縁部材)
絶縁部材25A1、25A2、25B1、25B2、26B1、26B2は、例えば矩形のフィルム状を有し、一方の面に接着面を有している。より具体的には、絶縁部材25A1、25A2、25B1、25B2、26B1、26B2は、基材と、基材上に設けられた接着層とを備える。なお、本明細書において、粘着(pressure sensitive adhesion)は接着(adhesion)の一種と定義する。この定義に従えば、粘着層は接着層の一種と見なされる。また、フィルムには、シートも含まれるものと定義する。絶縁部材25A1、25A2、25B1、25B2、26B1、26B2としては、例えば、絶縁テープが用いられる。
【0045】
(正極に設けられた絶縁部材)
正極21の短手方向における絶縁部材25A1、25A2の幅は、同一であり、正極21の短手方向における正極集電体21Aの幅よりも大きい。絶縁部材25A1、25A2はそれぞれ、正極集電体21Aの両長辺の側から両辺部がはみ出すように正極集電体露出部21C1、21C2に設けられている。絶縁部材25A1、25A2は、正極集電体21Aを挟んで重ね合わされている。このように絶縁部材25A1、25A2が重ね合わされていることで、正極21の中心側端部の剛性を高めることができるので、巻回時の正極21の挿入安定性を向上することができる。絶縁部材25A1は、本発明の「第1の絶縁部材」の一具体例に相当し、絶縁部材25A2は、本発明の「第2の絶縁部材」の一具体例に相当する。
【0046】
正極21の短手方向における絶縁部材25B1、25B2の幅は、同一であり、正極21の短手方向における正極集電体21Aの幅よりも大きい。絶縁部材25B1、25B2はそれぞれ、正極集電体21Aの両長辺の側から両辺部がはみ出すように正極集電体露出部21D1、21D2に設けられている。絶縁部材25B1、25B2は、正極集電体21Aを挟んで重ね合わされている。
【0047】
絶縁部材25A1は、正極集電体露出部21C1および正極活物質層21B1間の境界にある段差部と、正極集電体露出部21C1とを覆っている。絶縁部材25A2は、正極集電体露出部21C2および正極活物質層21B2間の境界にある段差部と、正極集電体露出部21C2とを覆っている。
【0048】
絶縁部材25A1は、正極集電体露出部21C1と負極活物質層22B2が対向する領域、および正極集電体露出部21C1と負極集電体露出部22C2が対向する領域に設けられている。絶縁部材25A2は、正極集電体露出部21C2と負極活物質層22B1が対向する領域、および正極集電体露出部21C2と負極集電体露出部22C1が対向する領域に設けられている。
【0049】
絶縁部材25A1が、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B2の巻回中心側の端との間の内側面21S1上にある。すなわち、絶縁部材25A1の巻回中心側の端は、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B2の巻回中心側の端との間の区間に位置する。絶縁部材25A2が、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B1の巻回中心側の端との間の外側面21S2上にある。すなわち、絶縁部材25A2の巻回中心側の端は、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B1の巻回中心側の端との間の区間に位置する。
【0050】
正極21は、正極集電体露出部21C1の中心側端部が絶縁部材25A1により覆われずに露出した正極集電体露出部21C3、および正極集電体露出部21C2の中心側端部が絶縁部材25A2により覆われずに露出した正極集電体露出部21C4を有している。
【0051】
図3A、
図3Bは、正極21の中心側端部の構成の一例を示す展開図である。絶縁部材25A1と絶縁部材25A2の巻回中心側の端(先端)の位置は、ずれている。巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さは、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さより長い。巻回方向における正極集電体露出部21C3、21C4の長さとは、電極体20を解きほぐした場合の長手方向の正極集電体露出部21C3、21C4の長さを意味する。すなわち、電極体20を解きほぐした状態において、長手方向における正極21の巻回中心側の端から絶縁部材25A1の巻回中心側の端までの距離が、長手方向における正極21の巻回中心側の端から絶縁部材25A2の巻回中心側の端までの距離よりも長い。
【0052】
絶縁部材25A1と絶縁部材25A2の巻回中心側の端(先端)の位置ずれ量Xは、3.0mm以下、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。巻回中心側の端(先端)の位置ずれ量Xが3.0mm以下であると、正極21の両長辺側から露出する絶縁部材25A1または絶縁部材25A2の接着面の面積を低減することができる。したがって、巻回時に正極21の中心側端部を2枚のセパレータ23A、23B間に挿入する際に(
図4参照)、正極21の両長辺側から露出した絶縁部材25A1または絶縁部材25A2の接着面がセパレータ23Aまたはセパレータ23Bに貼り付き、正極21の中心側端部に折れ曲がり等が発生することを抑制することができる。したがって、巻回時の正極21の挿入安定性を向上し、巻回不良(巻ずれ)の発生を抑制することができる。
【0053】
正極集電体露出部21C3と正極集電体露出部21C4が正極21の厚み方向に重なっている部分の長さY(以下単に「両面集電体露出部の長さY」という。)は、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、さらにより好ましくは3mm以下である。両面集電体露出部の長さYが5mm以下であると、正極21の中心側端部の剛性を高めることができるので、巻回時の正極21の挿入安定性を向上することができる。具体的には、巻回時に正極21の中心側端部を2枚のセパレータ23A、23B間に挿入する際に(
図4参照)、正極21の中心側端部が湾曲し、2枚のセパレータ23A、23B間に折れ曲がった状態等で挿入さることを抑制することができる。したがって、巻回不良(巻ずれ)の発生を抑制することができる。
【0054】
絶縁部材25B1は、正極集電体露出部21D1および正極活物質層21B1間の境界にある段差部と、正極集電体露出部21D1とを覆っている。絶縁部材25B2は、正極集電体露出部21D2および正極活物質層21B2間の境界にある段差部と、正極集電体露出部21D2とを覆っている。なお、絶縁部材25B2は、正極集電体露出部21D2と共に正極タブ31も覆っている。
【0055】
絶縁部材25B1は、正極集電体露出部21D1と負極活物質層22B2が対向する領域、および正極集電体露出部21D1と負極集電体露出部22D2が対向する領域に設けられている。絶縁部材25B2は、正極集電体露出部21D2と負極活物質層22B2が対向する領域、および正極集電体露出部21D2と負極集電体露出部22D1が対向する領域に設けられている。
【0056】
正極21は、正極集電体露出部21D1の外周側端部が絶縁部材25B1により覆われずに露出した正極集電体露出部21D3、および正極集電体露出部21D2の外周側端部が絶縁部材25B2により覆われずに露出した正極集電体露出部21D4を有している。
【0057】
(負極に設けられた絶縁部材)
絶縁部材26B1は、負極集電体露出部22D1のうち、負極タブ32が設けられている部分および正極集電体露出部21D4に対向する部分を覆っている。絶縁部材26B1が、負極集電体露出部22D1のうち一つの平坦部20Aに対応する部分のほぼ全体を覆っていてもよい。
【0058】
絶縁部材26B2は、負極集電体露出部22D2のうち、負極タブ32と対向する部分および正極集電体露出部21D3に対向する部分を覆っている。絶縁部材26B2が、負極集電体露出部22D1のうちの一つの平坦部20Aに対応する部分のほぼ全体を覆っていてもよい。
【0059】
[巻回装置の構成]
次に、
図4を参照して、上述した構成を有する電極体20を作製する巻回装置40の構成の一例について説明する。巻回装置40は、巻芯41と、一対のニップローラ42A、42Bと、一対のニップローラ43A、43Bと、カッター(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備える。巻芯41は、扁平状を有し、2つのセパレータ23A、23Bの一端を保持可能に構成されている。巻芯41は、回転可能に構成されており、正極21、負極22およびセパレータ23A、23Bを巻回する。一対のニップローラ42A、42Bは、正極21を挟持可能に構成されている。一対のニップローラ43A、43Bは、負極22を挟持可能に構成されている。カッターは、正極21、負極22およびセパレータ23A、23Bを切断する。制御装置は、巻回装置40の全体を制御する。
【0060】
[電池の製造方法]
次に、本発明の第1の実施形態に係る電池の製造方法の一例について説明する。
【0061】
(正極の作製工程)
正極21は次のようにして作製される。まず、例えば、正極活物質と、バインダーと、導電剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21B1、21B2を形成し、正極21を得る。この際、正極21の一端に正極集電体露出部21C1、21C2が形成され、正極21の他端に正極集電体露出部21D1、21D2が形成されるように、正極合剤スラリーの塗布位置を調整する。
【0062】
次に、正極21の他端に設けられた正極集電体露出部21D2に正極タブ31を溶接により取り付ける。次に、正極21の一端に設けられた正極集電体露出部21C1、21C2にそれぞれ絶縁部材25A1、25A2をそれぞれ貼り合わせると共に、正極21の他端に設けられた正極集電体露出部21D1、21D2にそれぞれ絶縁部材25B1、25B2をそれぞれ貼り合わせる。
【0063】
(負極の作製工程)
負極22は次のようにして作製される。まず、例えば、負極活物質と、バインダーとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN-メチル-2-ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22B1、22B2を形成し、負極22を得る。この際、負極22の一端に負極集電体露出部22C1、22C2が形成され、負極22の他端に負極集電体露出部22D1、22D2が形成されるように、負極合剤スラリーの塗布位置を調整する。
【0064】
次に、負極22の他端に設けられた負極集電体露出部22D1に負極タブ32を溶接により取り付ける。次に、負極22の他端に設けられた正極集電体露出部21D1、21D2にそれぞれ絶縁部材26B1、26B2をそれぞれ貼り合わせる。
【0065】
(電極体の作製工程)
巻回型の電極体20は、上述の巻回装置40を用いて次のようにして作製される。まず、作業者が制御装置を操作し、巻取り動作を開始すると、巻回装置40は、2枚のセパレータ23A、23Bを巻芯41に向けて搬送し、巻芯41により2枚のセパレータ23A、23Bの一端をそれぞれチャッキングし、2枚のセパレータ23A、23BがV字状になった状態に保持する。続いて、巻回装置40は、ニップローラ42A、42Bを介して正極21を所定の位置に配置する。
【0066】
次に、巻回装置40が、巻芯41を回転し、2枚のセパレータ23A、23Bを巻芯41に巻き取る。2枚のセパレータ23A、23Bが規定量巻き取られたら、巻回装置40が、V字状に保持された2枚のセパレータ23A、23Bの間に正極21の一端を挿入し、巻芯41により正極21を巻き取る。この際、絶縁部材25A1と絶縁部材25A2の巻回中心側の端(先端)の位置ずれ量Xが3.0mm以下であると、上述したように、正極21の両長辺側から露出した絶縁部材25A1または絶縁部材25A2の接着面がセパレータ23Aまたはセパレータ23Bに貼り付き、正極21の端部に折れ曲がり等が発生することを抑制することができる。
【0067】
次に、巻回装置40が、セパレータ23Aに沿わせて、巻き取られる2枚のセパレータ23A、23Bの間に負極22を挿入し、巻芯41により負極22を巻き取る。その後、正極21、負極22およびセパレータ23A、23Bが巻芯41により規定量を巻き取られたら、正極21、負極22およびセパレータ23A、23Bをカッターにより切断する。これにより、電極体20が得られる。
【0068】
(封止工程)
電極体20はケース10により次のようにして封止される。まず、収容部11の収容部11に電極体20と電解液を収容する。この際、正極タブ31を、収容部11に設けられた正極端子13に接続し、負極タブ32をケース10の内側面に接続する。次に、蓋部12で収容部11の開口を覆い、収容部11と蓋部12の周縁部を溶接または接着剤等により接合し、ケース10により電極体20を封止する。これにより、電池が得られる。次に、必要に応じて、ヒートプレスにより電池を成型するようにしてもよい。
【0069】
[効果]
第1の実施形態に係る電池では、正極21の中心側端部に設けられた絶縁部材25A1、25A2は、正極集電体21Aを挟んで重ね合わされている。絶縁部材25A1の巻回中心側の端は、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B2の巻回中心側の端との間の区間に位置する。また、絶縁部材25A2の巻回中心側の端は、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B1の巻回中心側の端との間の区間に位置する。これにより、正極21の中心側端部の剛性を高めることができる。また、正極21の両長辺側から露出する絶縁部材25A1または絶縁部材25A2の接着面の面積を低減することができる。このため、巻回時に正極21の中心側端部を2枚のセパレータ23A、23B間に挿入する際に(
図4参照)、正極21の両長辺側から露出した絶縁部材25A2の接着面がセパレータ23Aに貼り付き、正極21の端部に折れ曲がり等が発生することを抑制することができる。したがって、巻回時の正極21の挿入安定性を向上し、巻回不良(巻ずれ)の発生を抑制することができる。すなわち、巻回工程の歩留りを改善することができる。
【0070】
<2 第2の実施形態>
第2の実施形態では、上述の第1の実施形態に係る電池を備える電子機器について説明する。
【0071】
以下、
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る電子機器100の構成の一例について説明する。電子機器100は、電子機器本体の電子回路110と、電池パック120とを備える。電池パック120は、正極端子123aおよび負極端子123bを介して電子回路110に対して電気的に接続されている。電子機器100は、電池パック120を着脱自在な構成を有していてもよい。
【0072】
電子機器100としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォン等)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、電子ペーパ等)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナーまたは信号機等が挙げられるが、これらに限定されるものでなない。
【0073】
(電子回路)
電子回路110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部等を備え、電子機器100の全体を制御する。
【0074】
(電池パック)
電池パック120は、組電池121と、充放電回路122とを備える。電池パック120が、必用に応じて組電池121および充放電回路122を収容する外装材(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。
【0075】
組電池121は、複数の二次電池121aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の二次電池121aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、
図5では、6つの二次電池121aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。二次電池121aとしては、上述の第1の実施形態に係る電池が用いられる。
【0076】
ここでは、電池パック120が、複数の二次電池121aにより構成される組電池121を備える場合について説明するが、電池パック120が、組電池121に代えて1つの二次電池121aを備える構成を採用してもよい。
【0077】
充放電回路122は、組電池121の充放電を制御する制御部である。具体的には、充電時には、充放電回路122は、組電池121に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器100の使用時)には、充放電回路122は、電子機器100に対する放電を制御する。
【0078】
外装材としては、例えば、金属、高分子樹脂またはこれらの複合材料等より構成されるケースを用いることができる。複合材料としては、例えば、金属層と高分子樹脂層とが積層された積層体が挙げられる。
【0079】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0080】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0081】
また、上述の実施形態にて例示した化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。また、上述の実施形態で段階的に記載された数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。また、上述の実施形態に例示した材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
上述の実施形態では、巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さは、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さより長い場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
例えば、
図6Aに示すように、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さが、巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さより長くてもよい。すなわち、電極体20を解きほぐした状態において、長手方向における正極21の巻回中心側の端から絶縁部材25A2の巻回中心側の端までの距離が、長手方向における正極21の巻回中心側の端から絶縁部材25A1の巻回中心側の端までの距離よりも長くてもよい。
【0084】
図6Bに示すように、巻回方向における正極集電体露出部21C3と正極集電体露出部21C4の長さが同一であってもよい。すなわち、電極体20を解きほぐした状態において、長手方向における正極21の巻回中心側の端から絶縁部材25A1の巻回中心側の端までの距離と、長手方向における正極21の巻回中心側の端から絶縁部材25A2の巻回中心側の端までの距離とが、同一であってもよい。
【0085】
上述の実施形態では、電極体20が、正極集電体露出部21C1および正極集電体露出部21C2にそれぞれ、絶縁部材25A1、絶縁部材25A2を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図6Cに示すように、電極体20が、正極集電体露出部21C1および正極集電体露出部21C2の両方を覆う1つの絶縁部材25A3を備えるようにしてもよい。この場合、絶縁部材25A3は、正極21の巻回中心側の端で折り返され、正極集電体露出部21C1および正極集電体露出部21C2の全体を覆う。また、絶縁部材25A3は、正極集電体露出部21C1および正極活物質層21B1間の境界にある段差部、および正極集電体露出部21C1および正極活物質層21B2間の境界にある段差部も覆う。
【0086】
上述の実施形態では、正極21が、正極集電体露出部21C1の中心側端部が絶縁部材25A1により覆われずに露出した正極集電体露出部21C3、および正極集電体露出部21C2の中心側端部が絶縁部材25A2により覆われずに露出した正極集電体露出部21C4を有している場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図6Dに示すように、正極集電体露出部21C1の全体が絶縁部材25A1により覆われていると共に、正極集電体露出部21C2の全体が絶縁部材25A2により覆われていてもよい。
【0087】
また、正極集電体露出部21C1の全体が絶縁部材25A1により覆われているのに対して、正極集電体露出部21C2の中心側端部が絶縁部材25A2により覆われずに露出し、正極集電体露出部21C4が形成されていてもよい。また、正極集電体露出部21C2の全体が絶縁部材25A2により覆われているのに対して、正極集電体露出部21C1の中心側端部が絶縁部材25A1により覆われずに露出し、正極集電体露出部21C3が形成されていてもよい。
【0088】
上述の実施形態では、正極21に対して本発明を適用した例について説明したが、負極22に対して本発明を適用するようにしてもよい。この場合には、正極21、負極22およびセパレータ23A、23Bは、負極22が最内周電極となるように巻回される。上記構成においては、負極22が、本発明の「第1の電極」の一具体例に相当し、正極21が、本発明の「第2の電極」の一具体例に相当する。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、上述の実施形態と対応する部分には同一の符号を付して説明する。
【0090】
[実施例1]
(正極の作製工程)
正極21は次のようにして作製された。まず、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合することにより正極合剤としたのち、N-メチル-2-ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。
【0091】
次に、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型し、正極活物質層21B1、21B2を形成することにより、正極21を得た。この際、正極21の両端部の両面にそれぞれ正極集電体露出部21C1、21C2、21D1、21D2が形成されるように、正極合剤スラリーの塗布位置を調整した。正極集電体21Aとしては、表1に示す幅Wcおよび厚みTcを有するものを用いた。
【0092】
次に、巻回後に外周側端部の外側面に位置する正極集電体露出部21D2にアルミニウム製の正極タブ31を溶接して取り付けた。次に、4つの正極集電体露出部21C1、21C2、21D1、21D2にそれぞれ絶縁部材(絶縁テープ)25A1、25A2、25B1、25B2を貼り付けた(
図2参照)。この際、正極21の中心側端部に以下のような構成が形成されるように、巻回後に中心側端部に位置する正極集電体露出部21C1、21C2に貼り付けられる絶縁部材25A1、25A2のサイズおよび貼り付け位置を調整した。すなわち、絶縁部材25A1の巻回中心側の端が、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B2の巻回中心側の端との間の区間に位置し、かつ、絶縁部材25A2の巻回中心側の端は、正極21の巻回中心側の端と正極活物質層21B1の巻回中心側の端との間の区間に位置した。また、巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さは、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さより長くされた。さらに、絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端の位置ずれ量X(
図3A、
図3B参照)および、両面集電体露出部の長さY(
図3A、
図3B参照)が表1に示す値に設定された。
【0093】
(負極の作製工程)
負極22は次のようにして作製された。まず、負極活物質として人造黒鉛粉末97質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して負極合剤としたのち、N-メチル-2-ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。
【0094】
次に、帯状の銅箔からなる負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型し、負極活物質層22B1、22B2を形成することにより、負極22を得た。この際、負極22の両端の両面に負極集電体露出部22C1、22C2、22D1、22D2が形成されるように、負極合剤スラリーの塗布位置を調整した。銅箔としては、幅20mm、厚み6μmを有するものを用いた。次に、巻回後に外周側端部の内側面に位置する負極集電体露出部22D1にニッケル製の負極タブ32を溶接して取り付けた。次に、巻回後に外周側端部に位置する負極集電体露出部22D1、22D2にそれぞれ絶縁部材26B1、26B2を貼り付けた(
図2参照)。
【0095】
(電解液の調製工程)
電解液は次のようにして調製された。まず、炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)とを、質量比がEC:PC=1:1となるようにして混合して混合溶媒を調製した。次に、この混合溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/kgとなるように溶解させて電解液を調製した。
【0096】
(電池の作製工程)
電池は次のようにして作製された。まず、
図4に示す巻回装置40を用いて、正極21、負極22および2枚のセパレータ23A、23Bを巻回して、扁平形状を有する巻回型の電極体20を得た。セパレータ23A、23Bとしては、厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルムを用いた。続いて、電極体20の最外周部に巻止テープ24を貼り付けた。次に、金属缶であるケース10の収容部11に電極体20と電解液を収容した。この際、正極タブ31を、収容部11に設けられた正極端子13に接続し、負極タブ32をケース10の内側面に接続した。次に、蓋部12で収容部11の開口を覆い、収容部11と蓋部12の周縁部を接合することにより、ケース10を封止した。これにより、目的とする電池が得られた。
【0097】
[実施例2]
図6Aに示すように、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さが、巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さより長くなるように、絶縁部材25A1および絶縁部材25A2のサイズを調整した。また、絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端の位置ずれ量Xおよび、両面集電体露出部の長さYを表1に示す値に設定した。これ以外のことは実施例1と同様にして電池を得た。
【0098】
[実施例3]
図6Bに示すように、巻回方向における正極集電体露出部21C3と正極集電体露出部21C4の長さが同一となるように、絶縁部材25A1および絶縁部材25A2のサイズを調整した。また、両面集電体露出部の長さYを表1に示す値に設定した。これ以外のことは実施例1と同様にして電池を得た。
【0099】
[実施例4]
絶縁部材25A1および絶縁部材25A2に代えて、
図6Cに示すように、正極21の巻回中心側の端で折り返され、正極集電体露出部21C1および正極集電体露出部21C2の全体を覆う絶縁部材(絶縁テープ)25A3が用いられた。これ以外のことは実施例1と同様にして電池を得た。
【0100】
[実施例5、9~13]
正極集電体21Aとしては、表2に示す幅Wcおよび厚みTcを有するものを用いた。絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端の位置ずれ量X(
図6B参照)および、両面集電体露出部の長さY(
図6B参照)が表2に示す値となるように、巻回後に中心側端部に位置する2つの正極集電体露出部21C1、21C2に貼り付けられる絶縁部材25A1、25A2のサイズおよび貼り付け位置を調整した。これ以外のことは実施例3と同様にして電池を得た。
【0101】
[実施例6、7、14~17]
正極集電体21Aとしては、表2に示す幅Wcおよび厚みTcを有するものを用いた。絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端の位置ずれ量X(
図3A、
図3B参照)および、両面集電体露出部の長さY(
図3A、
図3B参照)が表2に示す値となるように、巻回後に中心側端部に位置する2つの正極集電体露出部21C1、21C2に貼り付けられる絶縁部材25A1、25A2のサイズおよび貼り付け位置を調整した。これ以外のことは実施例1と同様にして電池を得た。
【0102】
[実施例8]
正極集電体21Aとしては、表2に示す幅Wcおよび厚みTcを有するものを用いた。絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端の位置ずれ量X(
図6A参照)および、両面集電体露出部の長さY(
図6A参照)が表2に示す値となるように、巻回後に中心側端部に位置する2つの正極集電体露出部21C1、21C2に貼り付けられる絶縁部材25A1、25A2のサイズおよび貼り付け位置を調整した。これ以外のことは実施例2と同様にして電池を得た。
【0103】
[比較例1]
図6Eに示すように、絶縁部材25A1の巻回中心側の端が、正極活物質層21B2の形成領域に位置するように、絶縁部材25A1のサイズを調整した。また、絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端の位置ずれ量Xおよび、両面集電体露出部の長さYを表1に示す値に設定した。これ以外のことは実施例1と同様にして電池を得た。
【0104】
(巻回不良の発生率)
巻回不良の発生率は以下のようにして評価した。巻回装置40において巻回型の電極体20を作製する工程において、正極21の一端を巻芯41に向けて挿入したときに絶縁部材25A1または絶縁部材25A2の粘着層露出部がセパレータ23Aまたはセパレータ23Bに接触すると、電極不挿入により巻回装置40が停止した。あるいは、上記工程において、正極21が斜めに挿入されて、巻きズレ不良として検出された。以下の式により、巻回不良の発生率を求めた。
巻回不良の発生率[%]=[(上記電極不挿入が発生した電極体の個数+上記巻きズレ不良が発生した電極体の個数)/(上記工程の電極体の製造個数)]×100
【0105】
表1は、実施例1~4、比較例1の電池の構成および評価結果を示す。
【表1】
【0106】
表2は、実施例5~17の電池の構成および評価結果を示す。
【表2】
【0107】
なお、表1、表2中、“正の位置ずれ量X”は、巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さが、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さより長い状態(
図3B参照)を示す。一方、“負の位置ずれ量X”は、巻回方向における正極集電体露出部21C4の長さが、巻回方向における正極集電体露出部21C3の長さより長い状態(
図6A参照)を示す。
【0108】
表1から以下のことがわかる。
絶縁部材25A1の巻回中心側の端が正極21の中心側端部と正極活物質層21B2の端部との間の区画に位置し、かつ、絶縁部材25A2の巻回中心側の端が正極21の中心側端部と正極活物質層21B1の端部との間の区画に位置することで、巻回不良の発生率を低減することができる。
【0109】
表2から以下のことがわかる。
絶縁部材25A1、25A2の巻回中心側の端(先端)の位置ずれ量Xが-3.0mm≦X≦3.0mmであると、巻回不良の発生率を低減することができる。
両面集電体露出部の長さYが0mm≦Y≦5.0mmであると、巻回不良の発生率を0%に低減することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 ケース
11 収容部
11A 主面部
11B 壁部
12 蓋部
20 電極体
20A 平坦部
20B 湾曲部
21 正極
21A 正極集電体
21B1、21B2 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B1、2B2 負極活物質層
23A、23B セパレータ
24 巻止テープ
25A1、25A2、25B1、25B2、26B1、26B2 絶縁部材
21C1、21C2、21C3、21C4、21D1、21D2、21D3、21D4 正極集電体露出部
22C1、22C2、22D1、22D2 負極集電体露出部
21R 領域
21S1、22S1 内側面
21S2、22S2 外側面
31 正極タブ
32 負極タブ
40 巻回装置
41 巻芯
42A、42B、43A、43B ニップローラ
100 電子機器
120 電池パック