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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気自動車
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20220913BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20220913BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20220913BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/26
B60K6/46
B60K1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021521716
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2019021663
(87)【国際公開番号】W WO2020240804
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠一
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133019(JP,A)
【文献】特開2013-51848(JP,A)
【文献】特許第3843702(JP,B2)
【文献】特開2001-97052(JP,A)
【文献】特開2013-82339(JP,A)
【文献】特開2015-204688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-20/50
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電気自動車であって、
内燃機関と、
前記内燃機関と機械的に接続された発電機と、
駆動輪と機械的に接続されたモータジェネレータと、
前記発電機及び前記モータジェネレータに電気的に接続されたインバータと、を備え、
前記インバータのインバータハウジングが前記モータジェネレータのMGハウジングに固定され、
前記インバータと前記発電機とがワイヤリングハーネスで電気的に接続され、
前記ワイヤリングハーネスの一端が挿通される発電機開口が前記発電機の発電機ハウジングに開口され、
前記ワイヤリングハーネスの他端が挿通されるインバータ開口が前記インバータハウジングに開口され、
前記インバータ開口からの前記ワイヤリングハーネスの一端の導出方向が、前記発電機に向かう第一方向であり、
前記発電機開口からの前記ワイヤリングハーネスの他端の導出方向が、前記第一方向とは異なる第二方向であり、
前記インバータ開口が、前記発電機開口に対して前記第二方向にオフセットされており、
前記ワイヤリングハーネスの少なくとも一部が、前記発電機ハウジングと前記インバータハウジングの間に延在しており、
前記第二方向が、前記発電機の回転軸の軸方向と平行であり、
前記発電機開口が、前記発電機ハウジングに形成された、前記インバータに向けて突出する端子箱に開口されている、ハイブリッド電気自動車。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド電気自動車であって、
前記インバータ開口が、前記インバータハウジングの前記内燃機関に最も近い外面上に開口され、
前記端子箱が、前記軸方向に沿って、前記発電機ハウジング上の前記インバータ開口から最も遠い側に配置されている、ハイブリッド電気自動車。
【請求項3】
請求項に記載のハイブリッド電気自動車であって、
前記インバータ開口が、前記インバータハウジング上の前記モータジェネレータから最も遠い側に配置されている、ハイブリッド電気自動車。
【請求項4】
請求項に記載のハイブリッド電気自動車であって、
前記インバータが、前記インバータハウジング内に、前記発電機用の発電機パワーモジュールと、前記モータジェネレータ用のMGパワーモジュールと、前記発電機パワーモジュール及び前記MGパワーモジュールに電気的に接続された平滑コンデンサとを備えており、
前記平滑コンデンサが、前記発電機パワーモジュール及び前記MGパワーモジュールよりも前記モータジェネレータの近くに配置され、
前記発電機パワーモジュール及び前記MGパワーモジュールが、前記平滑コンデンサに対して前記モータジェネレータの反対側に並べて配置され、
前記軸方向から見て、前記平滑コンデンサが前記ワイヤリングハーネスと重ならない、ハイブリッド電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ハイブリッド電気自動車の第一及び第二モータジェネレータ並びにインバータを開示している。第一及び第二モータジェネレータは、それらの回転軸が平行となるように近接して配置されている。第一モータジェネレータは、主として内燃機関の出力によって発電を行う。第二モータジェネレータは主として車両の駆動輪を駆動する。さらに、インバータも、第一及び第二モータジェネレータに近接して配置されている。第一及び第二モータジェネレータは、それぞれ、インバータとワイヤリングハーネスによってインバータと電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第3843702号公報
【発明の概要】
【0004】
しかし、第一モータジェネレータとインバータとを接続するワイヤリングハーネスは、高電圧の交流三相電力のためのものであるので太く、かつ、短く直線的に配索されている。このため、第一モータジェネレータに入力される内燃機関の振動が、第一モータジェネレータのロータやベアリングを介してワイヤリングハーネスに伝達される。さらに、短く直線的に配索されたワイヤリングハーネスは、撓まないので当該振動をインバータに伝達する。このように、内燃機関の振動がインバータに伝達されるため、インバータの部品には耐振動性が要求される。この結果、インバータのサイズが大きくなってしまう。
【0005】
従って、本発明の目的は、内燃機関の振動のインバータへの伝達を好適に抑止することのできるハイブリッド電気自動車を提供することにある。
【0006】
本発明の特徴によるハイブリッド電気自動車は、内燃機関と機械的に接続された発電機と、駆動輪と機械的に接続されたモータジェネレータとを備えている。発電機は、ワイヤリングハーネスによってインバータに電気的に接続されている。発電機のハウジングには、ワイヤリングハーネスの一端が挿通される発電機開口が開口されている。インバータのハウジングには、ワイヤリングハーネスの他端が挿通されるインバータ開口が開口されている。インバータ開口からは、発電機に向かう第一方向に、ワイヤリングハーネスの一端が導出されている。発電機開口からは、ワイヤリングハーネスの他端が、第一方向とは異なる第二方向に導出されている。インバータ開口は、発電機開口に対して第二方向にオフセットされており、ワイヤリングハーネスの少なくとも一部が発電機ハウジングとインバータハウジングの間に延在している。第二方向は、発電機の回転軸の軸方向と平行であり、発電機開口が、発電機ハウジングに形成された、インバータに向けて突出する端子箱に開口されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るハイブリッド電気自動車の模式的構成図である。
図2図2は、上記ハイブリッド電気自動車における発電機及びインバータを示す正面図である。
図3図3は、図2中のIII-III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図3を参照しつつ実施形態に係るハイブリッド電気自動車について説明する。
【0009】
本実施形態のハイブリッド電気自動車[hybrid electric vehicle](HEV)1は、図1に示されるように、車両の前部[front section]のエンジンコンパートメント内に、内燃機関(ICE)2と、発電機[generator]3と、モータジェネレータ[motor-generator](MG)4と、インバータ5とを備えている。発電機3は、ギアボックス6を介してICE2と機械的に接続されている。MG4は、ギアボックス6を介して駆動輪[driving wheels](前輪)7と機械的に接続されている。インバータ5は、発電機3及びMG4の双方と電気的に接続されている。インバータ5は、高電圧バッテリ8とも電気的に接続されている。なお、図示されていないが、HEV1は、補機用の低電圧(12V)バッテリも備えている。低電圧バッテリは、インバータ5に内蔵されたDC/DCコンバータを介して、高電圧バッテリ8と電気的に接続されている。DC/DCコンバータからの出力は、低電圧バッテリを充電したり、補機に直接供給される。
【0010】
本実施形態のHEV1は、シリーズハイブリッドシステムを採用しており、ICE2の出力(駆動力)は駆動輪7に伝達されることはなく、ギアボックス6内の増速ギアセットを介して発電機3に伝達される。即ち、発電機3は、ICE2と機械的に接続されている。発電機3によって発電された電力は、インバータ5を介して、MG4又は(及び)高電圧バッテリ8に供給される。高電圧バッテリ8に蓄えられた電力をMG4に供給することもできる。本実施形態のICE2は、その出力でHEV1を駆動することはなく、発電にのみ用いられる。従って、ICE2は、発電装置の一部として機能している。
【0011】
MG4の出力(駆動力)は、ギアボックス6内の減速ギアセット及びドライブシャフトを介して、駆動輪7に伝達される。即ち、MG4は、駆動輪7と機械的に接続されている。さらに、HEV1の減速時にMG4で回生発電された電力も、インバータ5を介して高電圧バッテリ8に供給され得る。なお、上述したように、ギアボックス6内には、増速ギアセット及び減速ギアセットが収納されているが、それらの間でギアの噛み合いはない。
【0012】
次に、図2及び図3を参照して、発電機3、MG4及びインバータ5、並びに、発電機3とインバータ5とを電気的に接続するワイヤリングハーネス(以下、単にハーネスと呼ぶ)9について説明する。図2は、車両前方から見た発電機3及びインバータ5である。図2には、ギアボックス6も図示されており、図中のP1がICE2とギアボックス6との締結面であり、図中のP2がギアボックス6と発電機3との締結面である。締結面P2は、ギアボックス6とMG4との締結面でもある。発電機3の(図2中の)奥側にMG4が配設されている。図3は、図2中のIII-III線断面図である。インバータ5は、発電機3及びMG4の上方に、それらに近接して配設されている。
【0013】
発電機3のハウジング3H(発電機ハウジング)は、アルミ合金製であり、円筒状の本体[main body]3Cと、円筒と箱とを一体化させた形状のエンドキャップ3Bとからなる。本体3C及びエンドキャップ3Bはボルトによって互いに剛結されている[rigidly attached]。本体3Cは、ギアボックス6ともボルトによって剛結されている。発電機ハウジング3Hの内部には、発電機3のステータやロータが内蔵されている。発電機ハウジング3Hは、ベアリングを介して、ロータの回転軸[rotary shaft]3Sを回転可能に保持している。回転軸3Sの一端はギアボックス6の内部に延伸され、上述した増速ギアセットによってロータが回転される。
【0014】
発電機ハウジング3Hは、基本的には円柱形状を有しているが、その左側(HEV1の正面から見た図2中の右側:ギアボックス6に対して反対側)の部分は、円柱から立方体が突出された形状を有しており、端子箱3Tを形成している。端子箱3Tは、インバータ5に向けて突出されている。従って、発電機3の右側(図2中左側)の部分とインバータ5との間には空間が形成されている。端子箱3Tの内部には、内部のステータコイルと接続された端子が配設されている。端子箱3Tの内部で、ハーネス9の一端に設けられた端子と発電機3の端子とが電気的に接続される。端子箱3Tのギアボックス6に面する外面には、発電機ハウジング3Hからハーネス9の一端を導出するための発電機開口3Oが開口されている。即ち、ハーネス9の一端は、発電機開口3Oに挿通される。発電機3は高電圧の三相交流発電機であり、ハーネス9は複数の太い電線を束ねたものである。
【0015】
MG4のハウジング4H(MGハウジング)も、アルミ合金製であり、円筒形状を有している。ただし、MGハウジング4Hの右側(図2中左側)の端部には、ギアボックス6との締結のためにフランジが形成されている。MGハウジング4Hは、このフランジでギアボックス6とボルトによって剛結されている。また、このフランジには、後述するインバータ5のハウジング5H(インバータハウジング)の一部(下部ハウジング5L)が一体的に[monolithically]形成されている。MGハウジング4Hの内部には、MG4のステータやロータが内蔵されている。MGハウジング4Hは、ベアリングを介して、ロータの回転軸を回転可能に保持している。回転軸の一端はギアボックス6の内部に延伸され、上述した増速ギアセットを介してドライブシャフトを回転する。図2中の左側には、右前輪7のドライブシャフトが接続される、ギアボックス6の接続部が示されている。この接続部は、ICE2よりも車両の後方側に位置している。
【0016】
インバータハウジング5Hも、アルミ合金製で、箱形状を有している。インバータハウジング5Hは、上部ハウジング5Uと下部ハウジング5Lとで構成されている。上部ハウジング5U及び下部ハウジング5Lはボルトによって互いに剛結されている。即ち、インバータハウジング5Hは、MGハウジング4Hに剛的に固定されている。インバータハウジング5Hの内部には、発電機3のためのパワーモジュール5G(発電機パワーモジュール)、MG4のためのパワーモジュール5M(MGパワーモジュール)及び平滑コンデンサ5Cなどの電子部品が収納されている。発電機パワーモジュール5Gは、ハーネス9を介して、発電機3と電気的に接続されている。MGパワーモジュール5Mも、MG4と電気的に接続されている。発電機パワーモジュール5G及びMGパワーモジュール5Mの双方が、平滑コンデンサ5Cと電気的に接続されている。
【0017】
平滑コンデンサ5Cは、発電機パワーモジュール5G及びMGパワーモジュール5MよりもMG4の近くに配置されている。より具体的には、平滑コンデンサ5Cは、インバータハウジング5Hの内部底面に固定されている。発電機パワーモジュール5G及びMGパワーモジュール5Mは、平滑コンデンサ5Cに対してMG4の反対側に並べて配置されている。より具体的には、発電機パワーモジュール5G及びMGパワーモジュール5Mは、インバータハウジング5Hの内部上面に固定されている。平滑コンデンサ5Cは、発電機パワーモジュール5G及びMGパワーモジュール5Mの双方に利用されるので、配線長を考慮して両者の中央に配置されている。
【0018】
インバータハウジング5Hのギアボックス6(即ち、ICE2)に最も近く、かつ、MG4から最も遠い部分が外方(上方)に突出されており、この突出部にインバータハウジング5Hからハーネス9の他端を導出するためのインバータ開口5Oが開口されている。即ち、ハーネス9の他端はインバータ開口5Oに挿通される。言い換えれば、インバータ開口5Oは、インバータハウジング5HのICE2に最も近い外面上の、インバータハウジング5H上のMG4から最も遠い側に配置されている。
【0019】
なお、発電機ハウジング3Hの右側(図2中左側)が第一ブラケット10によってMGハウジング4H(下部ハウジング5L)に固定され、かつ、その左側(図2側)が第二ブラケット11によってMGハウジング4Hに固定されている。第一ブラケット10及び第二ブラケット11は、アルミ合金よりも金属としては柔軟なスチール製であり、若干であるが撓む板材である。(アルミ系金属[アルミ合金]は振動耐久性及び減衰性が鉄系金属[スチール]より低い。)従って、第一ブラケット10及び第二ブラケット11は、発電機3の振動を減衰してMG4に伝達させにくい。
【0020】
ハーネス9はインバータ開口5Oと発電機開口3Oとの間に延在するが、その一端のインバータ開口5Oからの導出方向を第一方向D1(図2及び図3参照)とし、その他端の発電機開口3Oからの導出方向を第二方向D2(図2参照)とする。第一方向D1は、インバータ開口5Oから発電機3に向かう方向である。第二方向D2は、本実施形態では、発電機3の回転軸3Sの軸方向[axial direction]DS(図2参照)と平行である。即ち、第一方向D1と第二方向D2とは互いに異なる。より具体的には、本実施形態では、第一方向D1と第二方向D2とは直角である。従って、インバータ開口5Oと発電機開口3Oとの間に延在するハーネス9は必然的に湾曲し、直線的に延在することはない。ハーネス9の湾曲部は、撓むことができるので、発電機3からインバータ5への振動の伝達を抑止できる(振動を吸収できる)。
【0021】
さらに、図2に示されるように、インバータ開口5Oは、端子箱3Tに開口された発電機開口3Oに対して、第二方向D2にオフセットされている。言い換えれば、インバータ開口5Oの位置は、第二方向D2に沿って、発電機開口3Oの位置とは異なる。即ち、インバータ開口5Oと発電機開口3Oとは同一面上には存在しない。従って、ハーネス9を長くすることができ、発電機3からインバータ5への振動の伝達をより効果的に抑止できる。また、それらをオフセットさせることで、ハーネス9の湾曲の曲率半径を大きくできる。さらに、ハーネス9の少なくとも一部は発電機3インバータ5との間の空間を通って延在する。従って、ハーネス9が長くてもこの空間を有効に利用できるので好ましい。この空間を有効に利用することで、ハイブリッドシステムユニットの高さを抑えて小型化できる。
【0022】
なお、第二方向D2が軸方向DSと平行でなくても、第一方向D1と第二方向D2とが異なればハーネス9は必然的に湾曲される。ハーネス9が湾曲されれば、上述した振動を吸収できる。しかし、発電機3に向かう第一方向D1と発電機開口3Oが形成された端子箱3Tのインバータ5に向けた突出方向と考慮すると、湾曲されたハーネス9のスムーズな配索の観点から第二方向D2は軸方向DSに平行であることが好ましい。特に、インバータ開口5Oを発電機開口3Oに対して第二方向D2にオフセットして、ハーネス9を長くする場合は、発電機3インバータ5との間の空間を有効に利用できるので好ましい。本実施形態では、さらに、発電機開口3Oが形成される端子箱3Tを軸方向DSに沿ってインバータ開口5Oから最も遠い側に配置することで、ハーネス9をできるだけ長くできるので好ましい。
【0023】
また、インバータ開口5Oは、インバータハウジング5H上のMG4から最も遠い外方(上方)に突出された部分に開口されている。これにより、ハーネス9を長くでき、かつハーネス9の湾曲の曲率半径を大きくすることができる。上述したように、ハーネス9は太いので、曲げにくいので大きな曲率半径はハーネス9の配索を容易にする。また、大きな曲率半径はハーネス9に過大な応力を作用させない。
【0024】
上述したハーネス9の配索は、車両前方から見た位置関係に関するするものであった。本実施形態では、さらに、図3に示されるように、軸方向DSから見て、平滑コンデンサ5Cがハーネス9と重ならないように、ハーネス9が配索されている。平滑コンデンサ5Cがハーネス9と重ならないので、軸方向DSから見て、第一方向D1に沿ってインバータ開口5Oと発電機開口3Oとが近接して配置され、即ち、インバータハウジング5Hと発電機ハウジング3H(端子箱3T)とが近接して配置される。本実施形態では、さらに、端子箱3Tを避けるようにインバータハウジング5Hの底が変形されており、これは両者が重ならないからこそできる構成である。この構成によって、ハイブリッドシステムユニットの高さを抑えることができ、システムを小型化できる。なお、インバータハウジング5Hと発電機ハウジング3H(端子箱3T)とを近接して配置しても、ハーネス9は第二方向D2にも配策されるので、ハーネス9を湾曲させて、かつ、長くすることができ、振動伝達を防止できる。
【0025】
上述したように、本実施形態のHEV1は、シリーズハイブリッドシステムを採用している。従って、ICE2の振動は、ICE2と機械的に接続されている発電機3の回転軸3Sに伝達される。また、この振動は、ベアリングを介して発電機ハウジング3Hやその内部のステータに伝達される。さらに、この振動は、ステータコイルを介してハーネス9にも伝達されるが、上述したようにハーネス9によって吸収される。なお、本実施形態では、発電機ハウジング3HとMGハウジング4Hとは剛結されていないため、上述した振動がMGハウジング4Hに直接伝達されることはない。従って、ICE2の振動がインバータ5に伝達されるのを好適に抑止できる。この結果、インバータ5の部品に過剰な耐振動性が要求されることがない。
【0026】
本実施形態に係るHEV1によれば、発電機に向かう第一方向D1(インバータ開口5Oからのハーネス9の導出方向)が第二方向D2(発電機開口3Oからのハーネス9の導出方向)と異なっている。従って、ハーネス9必然的に湾曲する。また、インバータ開口5Oが、発電機開口3Oに対して第二方向D2にオフセットされている。従って、ハーネス9を長くすることができる。この結果、ハーネス9でICE2の振動を吸収でき、ICE2の振動がインバータ5に伝達されるのを抑止できる。さらに、ハーネス9の少なくとも一部が、発電機ハウジング3Hとインバータハウジング5Hとの間に延在している。従って、ハーネス9が長くても、発電機ハウジング3Hとインバータハウジング5Hとの間の空間を有効に利用でき、ハイブリッドシステムユニットの高さを抑えて小型化できる。
【0027】
ここで、第二方向D2が発電機3の回転軸3Sの軸方向DSと平行であり、発電機開口3Oがインバータ5に向けて突出する端子箱3Tに開口されている。発電機ハウジング3Hとインバータハウジング5Hとの間の上述した空間を端子箱3Tの横に形成することができ、発電機ハウジング3Hから軸方向DSにハーネス9を当該空間に円滑に導出できる。従って、ハーネス9をスムーズに配索することができる。なお、第一方向D1は発電機3に向く方向であるので、第二方向D2(軸方向DS)と交差する。従って、ハーネス9は、第一方向D1から第二方向D2へとスムーズに湾曲される。
【0028】
また、インバータ開口5Oがインバータハウジング5HのICE2に最も近い外面上に開口され、端子箱3Tが軸方向DSに沿って発電機ハウジング3H上のインバータ開口5Oから最も遠い側に配置されている。従って、インバータ開口5Oと端子箱3Tに形成された発電機開口3Oとの間の軸方向DSに沿った距離をできるだけ長くできる。この結果、ハーネス9を長くでき、上述した振動を効果的に吸収できる。
【0029】
さらに、インバータ開口5Oが、インバータハウジング5H上のMG4から最も遠い側に配置されているので、第一方向D1に沿ってもハーネス9を長くでき、上述した振動をより効果的に吸収できる。また、ハーネス9の第一方向D1から第二方向D2への湾曲の曲率半径を大きくできる。大きな曲率半径は、ハーネス9の配索を容易にし、かつ、ハーネス9に過大な応力を作用させない。
【0030】
インバータハウジング5H内において、発電機パワーモジュール5G及びMGパワーモジュール5Mが、平滑コンデンサ5Cに対してMG4とは反対側に並べて配置されている。そして、軸方向DSから見て、平滑コンデンサ5Cがハーネス9と重ならない。即ち、インバータハウジング5Hと発電機ハウジング3H(端子箱3T)とが第一方向D1に沿って近接して配置されている。従って、ハイブリッドシステムユニットの高さを抑えることができ、システムを小型化できる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されない。上記実施形態では、図2に示されるように、インバータ開口5OをICE2に近い側に配置し、かつ、発電機開口3OをICE2から遠い側に配置した(インバータ開口5O及び発電機開口3OはICE2に向けて開口)。しかし、インバータ開口をICEから遠い側に配置し、かつ、発電機開口をICEに近い側に配置(インバータ開口及び発電機開口はICEとは反対方向に開口)してもよい。このようにしても、発電機3に向かう第一方向D1を第二方向D2と異ならせることで、ハーネス9を必然的に湾曲させることができる。また、ハイブリッドシステムは車両前部以外の場所に搭載されてよい。また、ハイブリッドシステムの搭載向きも上記実施形態での向きに限定されない。
【符号の説明】
【0032】
1 ハイブリッド電気自動車(HEV)
2 内燃機関(ICE)
3 発電機
3H 発電機ハウジング
3O 発電機開口
3S 回転軸
3T 端子箱
4 モータジェネレータ(MG)
4H MGハウジング
5 インバータ
5H インバータハウジング
5O インバータ開口
5G 発電機パワーモジュール
5M MGパワーモジュール
5C 平滑コンデンサ
7 駆動輪
9 ワイヤリングハーネス
D1 第一方向
D2 第二方向
DS 軸方向
図1
図2
図3