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特許7140300車載アクチュエータ制御方法、及び車載アクチュエータ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】車載アクチュエータ制御方法、及び車載アクチュエータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/17 20160101AFI20220913BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220913BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20220913BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20220913BHJP
【FI】
B60W20/17
B60W10/06 900
B60K6/46
B60W40/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022505273
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028172
(87)【国際公開番号】W WO2022018814
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】秋山 秀勝
(72)【発明者】
【氏名】澤田 孝信
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-138187(JP,A)
【文献】特開2009-269530(JP,A)
【文献】特開2008-144859(JP,A)
【文献】特開2019-104462(JP,A)
【文献】特開2019-034736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
B60W 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源となる車載アクチュエータの動作を制御する車載アクチュエータ制御方法であって、
車両の車輪の角加速度又はこれに相関するパラメータからロードノイズの大きさを数値化したロードノイズ値を推定するロードノイズ値推定工程と、
前記ロードノイズ値の推定状態が適正となる適正推定状態であるか否かを判定する推定状態判定工程と、
前記ロードノイズ値及び前記推定状態に基づいて、前記車両の暗騒音が相対的に大きい高暗騒音状態であるか相対的に小さい低暗騒音状態であるかを判定する暗騒音状態判定工程と、
判定された前記車両の暗騒音の状態に応じて前記車載アクチュエータの出力を調節する出力調節工程と、を含み、
前記暗騒音状態判定工程では、
前記推定状態が前記適正推定状態であると判断した場合には、前記ロードノイズ値と所定の閾値との大小に応じて前記車両の暗騒音が前記高暗騒音状態であるか前記低暗騒音状態であるかを判定し、
前記推定状態が前記適正推定状態では無いと判断した場合には、前記ロードノイズ値に関わらず前記車両の暗騒音が前記低暗騒音状態であると判断し、
前記出力調節工程では、
前記車両の暗騒音が前記高暗騒音状態であると判断した場合には、前記車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に大きくなるように該車載アクチュエータの出力を設定し、
前記車両の暗騒音が前記低暗騒音状態であると判断した場合には、前記車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に小さくなるように該車載アクチュエータの出力を設定する、
車載アクチュエータ制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車載アクチュエータ制御方法であって、
前記推定状態判定工程では、
前記車両の機械ブレーキが作動している場合に、前記ロードノイズ値の推定状態が前記適正推定状態ではないと判断する、
車載アクチュエータ制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載アクチュエータ制御方法であって、
前記推定状態判定工程では、
前記車輪がスリップしている場合に、前記ロードノイズ値の推定状態が前記適正推定状態ではないと判断する、
車載アクチュエータ制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車載アクチュエータ制御方法であって、
前記推定状態判定工程では、
前記車両の加速度が該車両の急減速又は急加速を判断する観点から定まる所定加速度よりも大きい場合に、前記車輪がスリップしていると判断する、
車載アクチュエータ制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載の車載アクチュエータ制御方法であって、
前記推定状態判定工程では
前記車両に搭載される走行駆動源の駆動力が該車両の急減速又は急加速を判断する観点から定まる所定駆動力よりも大きい場合に、前記車輪がスリップしていると判断する、
車載アクチュエータ制御方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の車載アクチュエータ制御方法であって、
前記車両は、要求出力に応じて発電機を駆動してバッテリを充電し該バッテリから走行用の駆動モータに電力を供給するシリーズハイブリッド車両として構成され、前記車載アクチュエータは前記発電機を駆動するエンジンとして構成され、
前記出力調節工程では、
前記車両の暗騒音の状態に応じて、前記エンジンを始動させるための前記要求出力の閾値である始動閾値及び/又は前記エンジンを停止させるための前記要求出力の閾値である停止閾値を設定し、
前記要求出力が前記始動閾値以上となると前記エンジンの始動を判断し、
前記要求出力が前記停止閾値以下となると前記エンジンの停止を判断し、
前記車両の暗騒音が前記高暗騒音状態であると判断した場合には、前記始動閾値を相対的に小さい第1始動閾値に設定し、及び/又は前記停止閾値を相対的に小さい第1停止閾値に設定し、
前記車両の暗騒音が前記低暗騒音状態であると判断した場合には、前記始動閾値を相対的に大きい第2始動閾値に設定し、及び/又は前記停止閾値を相対的に大きい第2停止閾値に設定する、
車載アクチュエータ制御方法。
【請求項7】
騒音源となる車載アクチュエータの動作を制御する車載アクチュエータ制御装置であって、
車両の車輪の角加速度又はこれに相関するパラメータからロードノイズの大きさを数値化したロードノイズ値を推定するロードノイズ値推定部と、
前記ロードノイズ値の推定状態が、基準を超える推定精度となる適正推定状態であるか否かを判定する推定状態判定部と、
前記ロードノイズ値及び前記推定状態に基づいて、前記車両の暗騒音が相対的に大きい高暗騒音状態であるか相対的に小さい低暗騒音状態であるかを判定する暗騒音状態判定部と、
判定された前記車両の暗騒音の状態に応じて前記車載アクチュエータの出力を調節する出力調節部と、を有し、
前記暗騒音状態判定部は、
前記推定状態が前記適正推定状態であると判断した場合には、前記ロードノイズ値と所定の閾値との大小に応じて前記車両の暗騒音が前記高暗騒音状態であるか前記低暗騒音状態であるかを判定し、
前記推定状態が前記適正推定状態では無いと判断した場合には、前記ロードノイズ値の大きさに関わらず前記車両の暗騒音が前記低暗騒音状態であると判断し、
前記出力調節部は、
前記車両の暗騒音が前記高暗騒音状態であると判断した場合には、前記車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に大きくなるように該車載アクチュエータの出力を設定し、
前記車両の暗騒音が前記低暗騒音状態であると判断した場合には、前記車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に小さくなるように該車載アクチュエータの出力を設定する、
車載アクチュエータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載アクチュエータ制御方法、及び車載アクチュエータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2015-38516Aでは、走行中のタイヤの振動の時系列波形から路面の状態を推定する路面状態推定方法が提案されている。
【発明の概要】
【0003】
上記JP2015-38516Aに記載された既存の路面状態の推定に用いるタイヤの振動の時系列波形には、車輪に作用する外乱要素(機械ブレーキの作動又は車輪のスリップなど)に起因する微小振動が含まれることとなる。この外乱要素により、上記時系列波形から真に路面状態を表す波形成分を抽出することが難しくなるため、路面状態の推定精度が低下する。
【0004】
一方、本発明者らは、鋭意研鑽の結果、路面状態からいわゆるロードノイズ(路面とタイヤの間の衝突又は摩擦で生じる騒音)の大きさを推定し、ロードノイズの大きくなるタイミングで騒音源となる車載のアクチュエータ(コンプレッサ、ファン、及びエンジンなど)の出力を上げて、騒音により乗員に与える不快感を低減する制御方法を開発するに至っている。
【0005】
しかし、上述のように既存の路面状態の推定方法では、車輪に作用する外乱要素に起因して誤差を生じるところ、ロードノイズの大きさの推定値にも誤差が生じる恐れがある。このように誤差が生じた推定値を用いると、実際にはロードノイズの大きさが小さいにもかからず車載アクチュエータの出力を増大させてしまい、乗員に騒音による不快感を与える恐れがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、車載のアクチュエータの動作に伴う騒音によって乗員に不快感を与えることをより確実に防止することにある。
【0007】
本発明の車両の制御方法は、騒音源となる車載アクチュエータの動作を制御する車載アクチュエータ制御方法であって、車両の車輪の角加速度又はこれに相関するパラメータからロードノイズの大きさを数値化したロードノイズ値を推定するロードノイズ値推定工程と、ロードノイズ値の推定状態が適正となる適正推定状態であるか否かを判定する推定状態判定工程と、ロードノイズ値及び推定状態に基づいて、車両の暗騒音が相対的に大きい高暗騒音状態であるか相対的に小さい低暗騒音状態であるかを判定する暗騒音状態判定工程と、判定された車両の暗騒音の状態に応じて車載アクチュエータの出力を調節する出力調節工程と、を含む。特に、暗騒音状態判定工程では、推定状態が適正推定状態であると判断した場合には、ロードノイズ値と所定の閾値との大小に応じて車両の暗騒音が高暗騒音状態であるか低暗騒音状態であるかを判定する。そして、推定状態が適正推定状態では無いと判断した場合には、ロードノイズ値に関わらず車両の暗騒音が低暗騒音状態であると判断する。さらに、出力調節工程では、車両の暗騒音が前記高暗騒音状態であると判断した場合には、車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に大きくなるように該車載アクチュエータの出力を設定する。一方、車両の暗騒音が低暗騒音状態であると判断した場合には、車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に小さくなるように該車載アクチュエータの出力を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態による車載アクチュエータ制御方法が実行されるシリーズハイブリッド車両の構成を説明する図である。
図2図2は、車載アクチュエータ制御方法に係る処理を実行するコントローラの機能を示すブロック図である。
図3図3は、路面判定部の機能示すブロック図である。
図4A図4Aは、スリップ判定処理における前後G検出値の0点校正を説明するフローチャートである。
図4B図4Bは、スリップ判定処理におけるスリップフラグの設定を説明するフローチャートである。
図4C図4Cは、前後G検出値、前後G推定値、及び車両のスリップの間の相互関係を説明する図である。
図5図5は、推定状態判定処理を説明するフローチャートである。
図6A図6Aは、非作動化フラグを設定する処理を説明するフローチャートである。
図6B図6Bは、非作動化フラグをクリアする処理を説明するフローチャートである。
図7図7は、始動フラグ設定処理を説明するフローチャートである。
図8図8は、停止フラグ設定処理を説明するフローチャートである。
図9図9は、始動閾値及び停止閾値を定めるマップの一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態に係る制御結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る車載アクチュエータ制御方法(特にエンジン始動・停止許可制御方法)が適用されるシリーズハイブリッド車両(以下、単に「車両100」とも称する)に共通する構成を説明するブロック図である。
【0011】
図1に示すように、車両100は、エンジン(内燃機関)1と、発電機2と、バッテリ3と、電動の駆動モータ4と、ギア5と、車軸6と、車輪7と、コントローラ50と、を備えるいわゆるシリーズハイブリッド車両として構成される。すなわち、車両100では、要求出力Prに応じて、エンジン1により発電機2を駆動してバッテリ3を充電し該バッテリ3から走行用の駆動モータ4に電力を供給する。なお、本実施形態では制御対象となる車載アクチュエータに、エンジン1、発電機2、及び駆動モータ4が含まれる。
【0012】
エンジン1は、増速機(図示せず)を介して発電機2に機械的に連結され、発電機2は、バッテリ3に対して送受電可能に接続されている。
【0013】
駆動モータ4は、ギア5を介して車軸6に機械的に連結され、車軸6は車輪7に機械的に連結される。駆動モータ4の駆動力(又は回生力)は、ギア5及び車軸6を介して車輪7に伝達される。したがって、車輪7の回転速度(すなわち車両100の加速又は減速)は駆動モータ4の駆動力(又は回生力)によって調節される。
【0014】
特に、本実施形態の車両100には、車両100に搭載されたブレーキペダルに対する操作に応じて車両100を制動させる機械式ブレーキに加え、車両100に搭載されたアクセルペダルに対する踏み込み量が減少すると当該減少量に応じて駆動モータ4を回生させることで制動力を得る回生ブレーキが搭載されている。
【0015】
コントローラ50は、本実施形態に係る車載アクチュエータ制御方法としてのエンジン制御方法に係る処理を含む車両100の制御を統括するようにプログラムされたコンピュータである。より詳細には、コントローラ50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)から成るハードウェア構成に、車載アクチュエータ制御方法を構成する処理を実行するためのプログラムを備えることで構成される。なお、コントローラ50は、一台のコンピュータハードウェアに上記プログラムを実装させることで実現しても良いし、複数台のコンピュータハードウェアに上記プログラムを分散させて実装させることで実現しても良い。具体的な例として、コントローラ50の機能は、車両100に搭載されたバッテリコントローラ、車両コントローラ、及びモータコントローラなどの各種コンピュータにより実現することができる。
【0016】
コントローラ50は、図示しない各種センサ又は他のコントローラ類から受信する各種パラメータを入力として、上記エンジン制御方法を実行する。具体的に、コントローラ50は、バッテリ3の充電率(SOC:State Of Charge)の検出値(以下、「バッテリSOC」とも称する)、車輪7の回転速度の検出値(以下、「車輪速w」とも称する)、車両100に搭載されたステアリングに対する操舵角の検出値(以下、「ステアリング角度θ」とも称する)、前後G(重力加速度に対する車両100の前進方向又は後退方向における加速度の比)の検出値(以下、「前後G検出値」とも称する)、横滑り防止システム(VDC:Vehicle Dynamics Control)の作動を示すフラグ(以下、「VDC作動フラグfvdc」とも称する)、TCS(Traction Control System)の作動を示すフラグ(以下、「TCS作動フラグftcs」とも称する)、ABS(Anti-lock Brake System)の作動の有無を示すフラグ(以下、「ABS作動フラグfabs」とも称する)、CAN(Controller Area Network)通信の有効性を示すフラグ(以下、「CAN有効フラグfcan」とも称する)、車両100に搭載された機械ブレーキの作動(ブレーキペダルに対する操作)が行われていることを示すフラグ(以下、「ブレーキペダル操作フラグfb」とも称する)、駆動モータ4の回転数の推定値(以下、「モータ回転数Nm」とも称する)、並びに車両100に搭載されたアクセルペダルに対する操作量(以下、「アクセル開度APO」とも称する)を入力として取得する。
【0017】
なお、本実施形態において、アクセル開度APOが車両100(特に駆動モータ4)に対して要求される出力(主に車両100の走行により消費される電力)の大きさを規定する。特に、本実施形態において、コントローラ50は、アクセル開度APOが所定値以上である場合に駆動モータ4に正の駆動力を要求する力行制御を実行し、所定値未満である場合に駆動モータ4に負の駆動力(すなわち、回生制動力)を要求する回生制御を実行する。すなわち、アクセル開度APOが所定値以上である場合には車両100に要求される出力は正値となり、アクセル開度APOが所定値未満である場合には車両100に要求される出力は負値となる。以下の説明では、記載の簡略化の観点から、この車両100に要求される出力(正値又は負値)を「要求出力Pr」と称する。
【0018】
図2は、コントローラ50の機能を説明するブロック図である。図示のように、コントローラ50は、車速演算部20と、目標駆動力演算部22と、路面判定部24と、音振始動判定部26と、始動/停止フラグ設定部27と、目標発電動作点設定部28と、を備える。
【0019】
車速演算部20は、モータ回転数Nmに基づいて車両100の車速vを演算する。車速演算部20は、演算した車速vを目標駆動力演算部22及び路面判定部24に出力する。
【0020】
目標駆動力演算部22は、車速演算部20からの車速v及びアクセル開度APO(要求出力Pr)に基づいて、駆動モータ4に設定する駆動力の目標値(以下、「目標モータトルクTm」とも称する)を演算する。目標駆動力演算部22は、演算した目標モータトルクTmを、路面判定部24及び駆動モータ4(より詳細には図示しないモータインバータ)に出力する。
【0021】
路面判定部24は、車輪速w、ステアリング角度θ、前後G検出値、VDC作動フラグfvdc、TCS作動フラグftcs、ABS作動フラグfabs、CAN有効フラグfcan、ブレーキペダル操作フラグfb、及びアクセル開度APOに基づいて、路面レベルLeを設定する。
【0022】
ここで、路面レベルLeは、車両100の走行時において当該車両100の暗騒音の状態を指標化したパラメータである。特に、路面レベルLeは、車輪速w(より詳細には後述の角加速度A)から演算される路面の粗さの程度を数値化した推定値(以下、「ロードノイズ値」とも称する)、及び当該ロードノイズ値の推定状態が適正となる適正推定状態であるか否かを指標化したパラメータとして設定される。より具体的に、本実施形態の路面レベルLeは、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態ではない場合に相当する「0」、及びロードノイズ値の大きさを所定段階ごとにレベリングした「1」~「4」により構成される。特に、本実施形態では、路面レベルLeの大きさは車両100の暗騒音が相対的に大きい状態であるか、或いは小さい状態であるかを推定するための指標として用いる。より詳細には、路面レベルLeが「0」~「2」であるときに暗騒音の状態が低暗騒音状態と推定し、路面レベルLeが「3」~「4」であるときに暗騒音の状態が高暗騒音状態と推定する。
【0023】
以下では、路面判定部24による路面レベルLeの設定に係る処理の詳細を説明する。
【0024】
図3は、路面判定部24の機能を示すブロック図である。図示のように、路面判定部24は、角加速度分散値演算部241と、スリップ判定部242と、推定状態判定部243と、分散値補正部244と、路面レベル設定部245と、を含む。
【0025】
角加速度分散値演算部241は、車輪速wに基づいて車輪7の角加速度Aの分散値(以下、「角加速度分散値var_A」とも称する)を演算する。具体的に、角加速度分散値演算部241は、車輪速wに対して時間の1階微分を演算することで角加速度Aを求める。そして、角加速度分散値演算部241は、角加速度Aをサンプリングしてその分散を角加速度分散値var_Aとする。以下では、この分散値を「角加速度分散値var_A」とも称する。
【0026】
ここで、角加速度分散値var_Aは、角加速度Aのばらつきを表し、これは車両100の走行路面の粗さ(ロードノイズ値)に相関するパラメータである。このため、角加速度分散値var_Aは、路面レベルLeを定めるロードノイズ値の大きさを推定する指標として用いることができる。なお、角加速度分散値var_Aに代えて、標準偏差及び二乗平均平方根などの角加速度Aのばらつきに相関する任意の統計量をロードノイズ値の推定指標として演算しても良い。そして、角加速度分散値演算部241は、演算した角加速度分散値var_Aを分散値補正部244に出力する。
【0027】
スリップ判定部242は、車速演算部20からの車速v及び前後G検出値を入力として、スリップ判定処理を実行する。スリップ判定処理は、車両100の特定の走行シーン(停車時から発進直後の低速走行状態)において、車両100のスリップが発生している(又はその発生が予測される)ことを示すスリップフラグfslを設定する処理である。特に、本実施形態においてスリップ判定処理は、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態であるか否かを判断する要素の一つとして実行されるものである。特に、スリップ判定処理は、車両100が上述のTCS又はVDCの作動をともなうスリップに至ってはいないものの、角加速度分散値var_Aに基づくロードノイズ値の推定精度が低下する程度のスリップの発生を検知する観点から実行される。
【0028】
図4A及び図4Bは、スリップ判定処理を説明するためのフローチャートである。特に、図4Aは前後G入力調整に係る処理の流れを示しており、図4Bはスリップフラグfslの設定に係る処理の流れを示している。なお、図4A及び図4Bに係る処理は相互に並列に実行することができる。
【0029】
先ず、図4Aに示すようステップS110において、スリップ判定部242は、車両100が停車しているか否かを判定する。具体的に、スリップ判定部242は、車速vが0又は実質的に0となる状態が継続する時間をカウントし、当該時間が予め定められた停車判断基準時間に到達した場合に、車両100が停車していると判断する。スリップ判定部242は、車両100が停車していないと判断すると、本ルーチンを終了する。一方、スリップ判定部242は、車両100が停車していると判断するとステップS120以降の処理を実行する。
【0030】
ステップS120において、スリップ判定部242は、前後G検出値に対して0点校正を実行する。すなわち、スリップ判定部242は、車両100が停車しているときに取得した前後G検出値から0を減じた差分を演算して記憶領域に記憶させる。そして、スリップ判定部242は、以降の制御タイミングにおいて図示しないGセンサ(例えば歪ゲージ式又は静電容量式)から入力される検出値から上記差分を減じた値を前後G検出値として取得する。
【0031】
図4Bに示すようステップS130において、スリップ判定部242は、車両100が低速走行状態であるか否かを判定する。具体的に、スリップ判定部242は、車速vが予め定められる低速判定閾値以下であるか否かを判定する。
【0032】
そして、スリップ判定部242は、車両100が低速走行状態ではないと判断すると、スリップフラグfslを「0」に設定して本ルーチンを終了する。一方、スリップ判定部242は、車両100が低速走行状態であると判断すると、ステップS140以降の処理を実行する。
【0033】
ステップS140において、スリップ判定部242は、車速vから前後G推定値を演算する。具体的に、スリップ判定部242は、車速vを時間微分して加速度aを演算し、加速度aから前後G推定値を演算する。
【0034】
そして、ステップS150において、スリップ判定部242は、停車時の値で校正した前後G検出値と車速vから演算した前後G推定値の差が所定基準値より大きいか否かを判定する。ここで、所定基準値は、車両100のスリップが生じていると判断できる程度に、車速v(実際の車輪7の回転数に相当)から推定される前後G推定値が実際に車両100に作用する慣性力に基づく前後G検出値に対して離れているか否かという観点から好適な値に設定される。
【0035】
図4Cは、前後G検出値、前後G推定値、及び車両100のスリップの間の相互関係を説明する図である。なお、図4Cのグラフにおける横軸には前後G推定値(モータ回転数Nmの時間微分値に相当)を示し、縦軸には前後G検出値を示す。また、破線L1及び実線L2は、それぞれスリップ非発生時及びスリップ発生時における前後G推定値と前後G検出値の関係を表す。また、点線L3は、前後G推定値と前後G検出値が相互に同一となる直線を表している。
【0036】
図4Cから理解されるように、スリップ非発生時(破線L1)には前後G推定値と前後G検出値が相互に等しくなる。一方、スリップ発生時には、車輪7の回転数の変化率(モータ回転数Nmの変化率)はタイヤと路面のグリップ状態が維持されていることを前提とした値からずれることとなる。このため、スリップ発生時には、モータ回転数Nmから演算される車速vに基づいて定められた前後G推定値(実線L2)は、Gセンサで検出された前後G検出値(モータ回転数Nmとは無関係に検出された値)に対してずれることとなる。したがって、図4Bで説明したように前後G推定値及び前後G検出値の相互のずれを参照することによって、車両100におけるスリップを好適に検知することができる。
【0037】
そして、スリップ判定部242は、ステップS150の判断結果が肯定的である場合に、車両100のスリップフラグfslを「1」に設定する。一方、スリップ判定部242は、ステップS150の判断結果が否定的である場合に、車両100のスリップフラグfslを「0」に設定する。
【0038】
図3に戻り、スリップ判定部242は、設定したスリップフラグfslを推定状態判定部243に出力する。
【0039】
推定状態判定部243は、車輪速w、車速v、目標モータトルクTm、ブレーキペダル操作フラグfb、アクセル開度APO、VDC作動フラグfvdc、TCS作動フラグftcs、ABS作動フラグfabs、CAN有効フラグfcan、及びスリップフラグfslを入力として、ロードノイズ値の推定状態が適正となる適正推定状態であるか否かを判断する推定状態判定処理を実行する。特に、本実施形態の推定状態判定処理では、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態である場合に適正推定フラグfopが「1」に設定され、適正推定状態でない場合に適正推定フラグfopが「0」に設定される。以下、推定状態判定処理の詳細を説明する。
【0040】
図5は、推定状態判定処理を説明するフローチャートである。
【0041】
図示のように、先ず、ステップS200において、推定状態判定部243は、ブレーキペダル操作フラグfb、アクセルオフフラグfac、VDC作動フラグfvdc、TCS作動フラグftcs、及びABS作動フラグfabsの全てが「0」に設定されている否かを判定する。なお、アクセルオフフラグfacは、アクセルペダルに対する操作(車両100に対する駆動力要求)が行われていないと判断される場合に「1」に設定されるフラグである。具体的に、推定状態判定部243は、アクセルオフフラグfacをアクセル開度APOが予め定められる所定値以下である場合に「1」に設定し、アクセル開度APOが所定値を超える場合に「0」に設定する。
【0042】
そして、推定状態判定部243は、これらのフラグ値の少なくとも1つが「1」であると判断すると、ステップS270に進み、適正推定フラグfopを「0」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、ブレーキペダルに対する操作が検出される場合、アクセルペダルに対する操作が検出されない場合、VDCが作動している場合、TCSが作動している場合、及びABSが作動している場合の何れかに該当すると、角加速度Aの演算値に誤差が含まれることが想定されるため、ロードノイズ値の推定状態が適正でないと判断されることとなる。
【0043】
一方、推定状態判定部243は、上記ステップS200の判定において全てのフラグ値が「0」であると判断すると、ステップS210の処理を実行する。
【0044】
ステップS210において、推定状態判定部243は、目標モータトルクTmが第1トルク閾値Tm_th1以上且つ第2トルク閾値Tm_th2以下であるか否かを判定する。そして、推定状態判定部243は、当該判定の結果が否定的である場合には、ステップS270に進み、適正推定フラグfopを「0」に設定して本ルーチンを終了する。一方、推定状態判定部243は、当該判定の結果が肯定的である場合には、ステップS220の処理を実行する。
【0045】
ここで、第1トルク閾値Tm_th1及び第2トルク閾値Tm_th2は、それぞれ、ロードノイズ値の推定精度を確保する観点から定められる目標モータトルクTmの下限値及び上限値である。なお、第1トルク閾値Tm_th1及び第2トルク閾値Tm_th2は、予め実験的に定められる固定値に設定しても良いし、車両100の走行状態などに応じて変化する可変値に設定しても良い。
【0046】
特に、第1トルク閾値Tm_th1及び第2トルク閾値Tm_th2を車速vに応じた可変値としても良い。また、例えばある制御タイミングにおいてステップS210の判定結果が否定的であった場合に、後の制御タイミングにおける当該判定の際に異なる第1トルク閾値Tm_th1又は第2トルク閾値Tm_th2を用いる構成としても良い。すなわち、第1トルク閾値Tm_th1及び第2トルク閾値Tm_th2に対して所定のヒステリシスを設定しても良い。
【0047】
次に、ステップS220において、推定状態判定部243は、車速vが第1車速閾値v_th1以上且つ第2車速閾値v_th2以下であるか否かを判定する。そして、推定状態判定部243は、当該判定の結果が否定的である場合には、ステップS270に進み、適正推定フラグfopを「0」に設定して本ルーチンを終了する。一方、推定状態判定部243は、当該判定の結果が肯定的である場合には、ステップS230の処理を実行する。
【0048】
ここで、第1車速閾値v_th1及び第2車速閾値v_th2は、それぞれ、ロードノイズ値の推定精度を確保する観点から定められる車速vの下限値及び上限値である。なお、第1車速閾値v_th1及び第2車速閾値v_th2は、予め実験的に定められる固定値に設定しても良いし、車両100の走行状態などに応じて変化する可変値に設定しても良い。特に、第1車速閾値v_th1及び第2車速閾値v_th2に対し、上記第1トルク閾値Tm_th1及び第2トルク閾値Tm_th2と同様に所定のヒステリシスを設定しても良い。
【0049】
次に、ステップS230において、推定状態判定部243は、上記スリップ判定処理において設定されたスリップフラグfslが「0」であるか否かを判定する。推定状態判定部243は、当該判定結果が否定的である場合に、ステップS270に進み、適正推定フラグfopを「0」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、この場合、車両100のスリップによりロードノイズ値を推定するための角加速度Aの演算値に誤差が含まれる可能性があると判断されることとなる。一方、推定状態判定部243は、スリップフラグfslが「0」であると判断すると、ステップS240の処理を実行する。
【0050】
ステップS240において、推定状態判定部243は、CAN有効フラグfcanが「1」であるか否かを判定する。推定状態判定部243は、CAN有効フラグfcanが「1」ではないと判断すると、ステップS270に進み、適正推定フラグfopを「0」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、この場合、角加速度Aを演算するための車輪速wなどの入力パラメータを正常に取得できないことが想定され、ロードノイズ値の推定精度が低下する可能性があると判断されることとなる。一方、推定状態判定部243は、CAN有効フラグfcanが「1」であると判断すると、ステップS250の処理を実行する。
【0051】
ステップS250において、推定状態判定部243は、分散サンプル数が一定値以上であるか否かを判定する。具体的に、推定状態判定部243は、上記ステップS200~ステップS250の判定結果が全て肯定的であることを検知したタイミングを基点として、上述した角加速度分散値var_Aを好適に演算する観点から十分な数の角加速度Aの演算値が得られているか否かを判定する。
【0052】
そして、推定状態判定部243は、分散サンプル数が一定値以上ではないと判断すると、ステップS270に進み、適正推定フラグfopを「0」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、この場合、ロードノイズ値の推定精度を確保する観点から適切な角加速度分散値var_Aを定めるための入力データ数(より詳細には検出される車輪速wの数)が不足していると判断され、適正推定フラグfopが「0」に設定される。一方、推定状態判定部243は、分散サンプル数が一定値以上であると判断すると、ステップS260の処理を実行する。なお、ステップS250の判定においては、ある制御タイミングにおいて当該判定結果が否定的であった場合に分散サンプル数が確保されるまで(すなわち、当該判定結果が肯定的になるまで)の時間待機するディレイ処理を採用しても良い。
【0053】
そして、上記ステップS200~ステップS250の判定結果が全て肯定である場合に、ステップS260において、推定状態判定部243は、適正推定フラグfopを「1」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、本実施形態では、上記ステップS200~ステップS250の判定結果が全て肯定的である場合に、ロードノイズ値の推定精度が一定以上に確保されると判断され、適正推定フラグfopが「1」に設定されることとなる。
【0054】
図3に戻り、推定状態判定部243は、設定した適正推定フラグfopを路面レベル設定部245に出力する。
【0055】
一方、分散値補正部244は、車速v、ステアリング角度θ、及び角加速度分散値var_Aを入力として、当該角加速度分散値var_Aを補正する。具体的に、分散値補正部244は、車速v及びステアリング角度θに応じた補正係数を定めたテーブルを用いて、角加速度分散値var_Aを補正する。特に、本実施形態では、車速v又はステアリング角度θが大きいほど角加速度分散値var_Aが減少するように補正を行う。なお、この車速v及びステアリング角度θに基づく角加速度分散値var_Aの補正に代えて、又はこれとともに、後述する路面レベル設定部245における路面レベルLeを設定する処理において、角加速度分散値var_Aと比較する閾値を車速v及びステアリング角度θに応じて補正する構成を採用しても良い。
【0056】
この補正の意義に説明する。ステアリング操作が行われている場合には、ステアリング操作が行われていない場合に比べて、車輪7が微小にスリップすることとなり、そのため凹凸がある路面において凸部を車輪7が乗り越える際において車輪7の角加速度Aの分散が想定よりも大きくなりやすい。そこで、ステアリング操作が行われている場合には、ロードノイズ値の推定精度を維持する観点から、角加速度分散値var_Aを車速vの大きさに応じて減少させる補正を行う。そして、分散値補正部244は、補正後の角加速度分散値var_A_cを路面レベル設定部245に出力する。
【0057】
路面レベル設定部245は、角加速度分散値var_A_c及び適正推定フラグfopを入力として、上述した路面レベルLeを設定する。特に、路面レベル設定部245は、適正推定フラグfopが「0」に設定されている場合(すなわち、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態では無い場合)には、角加速度分散値var_A_cに関わらず、路面レベルLeを「0」に設定する。
【0058】
一方、路面レベル設定部245は、適正推定フラグfopが「1」に設定されている場合(ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態である場合)には、ロードノイズ値(すなわち、角加速度分散値var_A_c)の大きさに応じて路面レベルLeを「1」~「4」に設定する。より詳細には、路面レベル設定部245は、角加速度分散値var_A_cに3つの閾値を設定し、当該3の閾値によりそれぞれ画定される4つの角加速度分散値var_A_cの範囲に、路面レベルLeとして「1」、「2」、「3」、及び「4」をそれぞれ割り当てる。そして、路面レベル設定部245は、設定した路面レベルLeを音振始動判定部26に出力する。
【0059】
なお、本実施形態では、路面レベルLeが「0」、「1」、又は「2」に設定される場合が低暗騒音状態に相当し、「3」又は「4」に設定される場合が高暗騒音状態に相当する。
【0060】
図2に戻り、音振始動判定部26は、路面レベルLe、適正推定フラグfop、及び車速vを入力として、路面レベルLeの大きさに応じて、エンジン1を始動させるべき要求出力Prの値(以下、「始動閾値Pr_sth」とも称する)又はエンジン1を停止させるべき要求出力Prの値(以下、「停止閾値Pr_eth」とも称する)を調節する制御(以下、「音振始動制御」とも称する)有効にするか否かを判定するための音振始動判定処理を実行する。特に、本実施形態の推定状態判定処理では、音振始動判定処理を実行すべき場合には非作動化フラグfnoが「0」に設定され、実行すべきでない場合には「1」に設定される。以下、音振始動判定処理の詳細を説明する。なお、本実施形態では、車両100の始動時(イグニッションスイッチがオンとなる時)において、非作動化フラグfnoの初期値は「0」又は「1」の何れかに設定されていることを前提とする。
【0061】
図6A及び図6Bは、音振始動判定処理を説明するフローチャートである。特に図6Aは、音振始動制御の作動を無効化すべく非作動化フラグfnoを「1」に設定する判断(非作動化フラグ設定判断)を説明するフローチャートである。また、図6Bは、図6Aの処理に基づいて設定された非作動化フラグfnoをクリアする判断(非作動化フラグクリア判断)を説明するフローチャートである。
【0062】
先ず、図6Aに示す非作動化フラグ設定判断では、ステップS300において、音振始動判定部26は、適正推定フラグfopが「1」に設定されているか否かを判定する。そして、音振始動判定部26は、適正推定フラグfopが「1」であると判断すると、ステップS310以降の処理を実行する。
【0063】
ステップS310において、音振始動判定部26は、制御単位距離duを設定する。ここで、制御単位距離duは、予め設定される演算周期Δt(例えば10ms)の間に車両100が走行する距離である。すなわち、制御単位距離duは、車速vに演算周期Δtを乗じて得られる値として定義されるものであり、車速vの大きさに応じた可変量である。
【0064】
ステップS320において、音振始動判定部26は、路面判定積算走行距離Dを演算する。具体的に、先ず、音振始動判定部26は、車両100の始動時(例えば、イグニッションスイッチがオンとなるタイミング)から現在の制御周期までにおける車両100の総走行距離を取得する。そして、音振始動判定部26は、車両100の始動時から現在の制御周期までにおいて適正推定フラグfopが「1」に設定されている状態で車両100が走行した距離である適正推定時走行距離を演算する。より詳細には、音振始動判定部26は、適正推定フラグfopが「1」に設定されている制御回数に上記制御単位距離duを乗じることで、路面判定積算走行距離Dを求める。
【0065】
ステップS330において、音振始動判定部26は、悪路走行積算距離Dbaを演算する。具体的に、音振始動判定部26は、車両100の始動時から現在の制御周期までにおいて、適正推定フラグfopが「1」に設定され且つ路面レベルLeが「3」又は「4」に設定されている制御回数に上記制御単位距離duを乗じることで、悪路走行積算距離Dbaを求める。
【0066】
そして、ステップS340において、音振始動判定部26は、悪路継続率Rbcを演算する。具体的に、音振始動判定部26は、悪路走行積算距離Dbaを路面判定積算走行距離Dで除して悪路継続率Rbcを求める。
【0067】
次に、ステップS350において、音振始動判定部26は、車両100が所定の規定走行距離D_thに亘って走行した状態で、悪路継続率Rbcが所定の悪路継続率閾値Rbc_th以上となったか否かを判定する。具体的に、音振始動判定部26は、予め規定した制御回数に上記制御単位距離duを乗じて規定走行距離D_thを演算する。そして、音振始動判定部26は、規定走行距離D_thの間の走行中における制御周期中に悪路継続率Rbcが悪路継続率閾値Rbc_th以上となるか否かを判定する。なお、悪路継続率閾値Rbc_thは、車両100の走行路が「悪路」であるか「良路」であるかの判定(路面レベルLeに基づく判定)において、誤判定が継続しているか否かを判断する観点から好適な値に設定される。
【0068】
特に、悪路継続率閾値Rbc_thは、音振始動制御の作動を有効にした場合に、エンジン1の作動時間が長くなり燃費の低下につながるか否かを判断する観点から設定される。より詳細には、車両100が「悪路」を走行しているという誤判定が一定期間以上維持されて音振始動制御の作動が有効とされる状態(エンジン1の始動されやすく又は停止しにくい状態)が継続することで、バッテリSOCが上昇してエンジン1の始動と停止が頻繁に繰り返されることが想定される。したがって、悪路継続率閾値Rbc_thはこのような事態を抑制する観点から好適な値に設定される。
【0069】
そして、音振始動判定部26は、規定走行距離D_thに亘って悪路継続率Rbcが悪路継続率閾値Rbc_th以上であると判断すると、ステップS360に進み、非作動化フラグfnoを「1」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、この場合、音振始動制御が無効とされる。一方、音振始動判定部26は、上記判定結果が否定的である場合に、ステップS370に進み、非作動化フラグfnoを維持したまま本ルーチンを終了する。
【0070】
一方、ステップS300において、音振始動判定部26は、適正推定フラグfopが「1」ではないと判断すると(「0」であると判断すると)、ステップS340の処理に移行する。すなわち、今回の制御周期において、ロードノイズ値の推定状態が適正でないと判断される場合には、音振始動判定部26は、ステップS320における路面判定積算走行距離Dの演算及びステップS330における悪路走行積算距離Dbaの演算を実行せずに、悪路継続率Rbcを演算する。
【0071】
これにより、ロードノイズ値の推定状態が適正でない状態で車両100の走行が継続した場合には、当該走行に係る距離分を路面判定積算走行距離Dの演算対象から除外することができ、演算される悪路継続率Rbcの精度の低下を抑制することができる。より詳細には、ロードノイズ値の推定状態が適正でない状態における距離が路面判定積算走行距離Dに加わることで、悪路継続率Rbcが想定される値よりも低く演算されることで、誤判定に基づいて音振始動制御の作動と非作動が切り替わる現象が抑制される。
【0072】
なお、音振始動判定部26は、非作動化フラグfnoが「1」から「0」に切り替わった以降の制御周期において、上記ステップS320において演算される路面判定積算走行距離Dを0にリセットするように構成されることが好ましい。これにより、車両100が始動から比較的長距離を走行するシーンにおいて、路面判定積算走行距離Dが大きな値となり、悪路走行積算距離Dbaを路面判定積算走行距離Dで除して得られる悪路継続率Rbcの変化率が小さくなることが抑制される。結果として、悪路継続率Rbcに基づいた誤判定の精度をより向上させることができる。
【0073】
次に、図6Bに示す非作動化フラグクリア判断について説明する。
【0074】
先ず、ステップS380において、音振始動判定部26は、非作動化フラグfnoが「1」に設定されているか否かを判定する。そして、音振始動判定部26は、非作動化フラグfnoが「1」ではないと判断すると(「0」であると判断すると)、本ルーチンを終了する。一方、音振始動判定部26は、非作動化フラグfnoが「1」であると判断すると、ステップS381以降の処理を実行する。
【0075】
ステップS381において、音振始動判定部26は、規定走行距離D_thに亘って走行した状態で良路継続率Rgcが所定の良路継続率閾値Rgc_th以上となったか否かを判定する。具体的に、音振始動判定部26は、上記ステップS350における処理と同様の方法で規定走行距離D_thを演算する。そして、音振始動判定部26は、規定走行距離D_thの間の走行中における制御周期中に良路継続率Rgcが良路継続率閾値Rgc_th以上となるか否かを判定する。
【0076】
ここで、良路継続率Rgcは、良路走行積算距離Dgcを上記路面判定積算走行距離Dで除して得られる値である。また、良路走行積算距離Dgcは、路面レベルLeが「0」~「2」の何れかに設定された制御回数に上記制御単位距離duを乗じることで演算することができる。なお、良路継続率Rgcを、1(全体の路面判定積算走行距離D相当)からステップS340で求めた悪路継続率Rbcを減算することにより求めても良い。さらに、良路継続率閾値Rgc_thは、非作動化フラグfnoをクリアできる程度に路面レベルLeに基づく良路判断が継続していると判断する(すなわち、誤判定に基づく悪路走行判断が生じていないと判断する)観点から好適な値に設定される。
【0077】
特に、良路継続率閾値Rgc_thは、上述した誤判定に基づく悪路判断に基づいて音振始動制御が実行されることを抑制する観点から設定される非作動化フラグfnoがいつまでも「1」に設定されることに起因して、必要なシーンにおいてもエンジン1が作動しないという事態を抑制する観点から好適な値に設定される。
【0078】
そして、音振始動判定部26は、規定走行距離D_thに亘って良路継続率Rgcが良路継続率閾値Rgc_th以上であると判断すると、ステップS382に進み、非作動化フラグfnoを「0」に設定して本ルーチンを終了する。すなわち、この場合、音振始動制御が無効状態から有効状態に切り替わる。一方、音振始動判定部26は、上記判定結果が否定的である場合に、ステップS383に進み、非作動化フラグfnoを維持したまま本ルーチンを終了する。
【0079】
図2に戻り、音振始動判定部26は、設定した非作動化フラグfnoを始動/停止フラグ設定部27に出力する。
【0080】
始動/停止フラグ設定部27は、バッテリSOC、非作動化フラグfno、及び目標モータトルクTmを入力として、エンジン1を始動させるための始動フラグfst(通常始動フラグfust及び悪路始動フラグfbst)と、停止させるための停止フラグfen(通常停止フラグfuen及び悪路停止フラグfben)を設定する始動/停止フラグ設定処理(始動フラグ設定処理及び停止フラグ設定処理)を実行する。
【0081】
図7は、始動フラグ設定処理を説明するフローチャートである。
【0082】
先ず、ステップS410及びステップS420において、始動/停止フラグ設定部27は、通常始動閾値Pr_suth及び悪路始動閾値Pr_sbthを設定する。
【0083】
ここで、通常始動閾値Pr_suthは、バッテリSOCを適正範囲に維持しながら、エンジン1をできるだけ運転効率の良い運転点(最適燃費点に近い運転点)で動作させる観点から定まる始動タイミングを規定する要求出力Prの値として設定される。したがって、本実施形態の通常始動閾値Pr_suthは、要求出力Pr、車速v、及びバッテリSOCを変数とするマップの形態で予め準備される。
【0084】
一方、悪路始動閾値Pr_sbthは、バッテリSOCが適正範囲を超えない範囲において、通常始動閾値Pr_suthが設定される場合に比べてよりエンジン1を始動させ易くする観点から定まる、始動タイミングを規定する要求出力Prの値として設定される。すなわち、悪路始動閾値Pr_sbthは、通常始動閾値Pr_suth以下の値に設定され、要求出力Pr、車速v、及びバッテリSOCを変数とするマップの形態で予め準備される。
【0085】
次に、ステップS430において、始動/停止フラグ設定部27は、非作動化フラグfnoが「1」であるか否かを判定する。そして、始動/停止フラグ設定部27は、非作動化フラグfnoが「1」であると判断した場合(音振始動制御が無効の場合)にはステップS440の処理に移行する。
【0086】
ステップS440において、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが通常始動閾値Pr_suth以上であるか否かを判定する。そして、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが通常始動閾値Pr_suth以上であると判断すると、ステップS460において始動フラグfstとして通常始動フラグfustをセットして本処理を終了する。
【0087】
一方、始動/停止フラグ設定部27は、ステップS430で非作動化フラグfnoが「0」であると判断した場合(音振始動制御が有効の場合)にはステップS450の処理に移行する。
【0088】
ステップS450において、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが悪路始動閾値Pr_sbth以上であるか否かを判定する。そして、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが悪路始動閾値Pr_sbth以上であると判断すると、ステップS470において始動フラグfstとして悪路始動フラグfbstをセットして本処理を終了する。
【0089】
以上説明した始動フラグ設定処理によれば、音振始動制御が有効である場合には、要求出力Prが通常始動閾値Pr_suthよりも小さい悪路始動閾値Pr_sbth以上のときに始動フラグfst(悪路始動フラグfbst)がセットされることとなる。
【0090】
図8は、停止フラグ設定処理を説明するフローチャートである。
【0091】
先ず、ステップS510及びステップS520において、始動/停止フラグ設定部27は、通常停止閾値Pr_euth及び悪路停止閾値Pr_ebthを設定する。
【0092】
ここで、通常停止閾値Pr_euthは、エンジン1を停止(発電を停止)してもバッテリSOCを十分に確保することのできる停止タイミングを規定する要求出力Prの値として設定される。通常停止閾値Pr_euthは、要求出力Pr、車速v、及びバッテリSOCを変数とするマップの形態で予め準備される。
【0093】
一方、悪路停止閾値Pr_ebthは、バッテリSOCを適正範囲内に維持できる範囲でエンジン1をより停止させにくくする停止タイミングを規定する要求出力Prの値として設定される。すなわち、悪路停止閾値Pr_ebthは通常停止閾値Pr_euth以下の値に設定され、要求出力Pr、車速v、及びバッテリSOCを変数とするマップの形態で予め準備される。
【0094】
ステップS530において、始動/停止フラグ設定部27は、始動フラグfstとして悪路始動フラグfbstが設定されているか否かを判定する。そして、始動/停止フラグ設定部27は悪路始動フラグfbstが設定されていると判断するとステップS550の処理に移行し、設定されていないと判断するとステップS540の処理に移行する。
【0095】
ステップS540において、始動/停止フラグ設定部27は、車両100が現在、悪路走行中か否かを判定する。具体的に、始動/停止フラグ設定部27は、現在の制御タイミングにおいて設定されている路面レベルLeが「3」以上である場合に悪路走行中と判断し、そうでない場合には良路走行中と判断する。
【0096】
そして、始動/停止フラグ設定部27は、車両100が現在、悪路走行中である判断するとステップS550の処理に移行する一方、良路走行中と判断するとステップS560の処理に移行する。
【0097】
ステップS550において、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが悪路停止閾値Pr_ebth以下であるか否かを判定する。そして、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが悪路停止閾値Pr_ebth以下であると判断すると、停止フラグfenとして悪路停止フラグfbenをセットし(ステップS570)、本処理を終了する。一方、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが悪路停止閾値Pr_ebth以下ではないと判断すると、停止フラグfenをセットせず本処理を終了する。
【0098】
ステップS560において、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが通常停止閾値Pr_euth以下であるか否かを判定する。そして、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが通常停止閾値Pr_euth以下であると判断すると、停止フラグfenとして通常停止フラグfuenをセットし(ステップS580)、本処理を終了する。一方、始動/停止フラグ設定部27は、要求出力Prが通常停止閾値Pr_euth以下ではないと判断すると、停止フラグfenをセットせず本処理を終了する。
【0099】
以上説明した停止フラグ設定処理によれば、始動フラグfstとして悪路始動フラグfbstが設定された場合(悪路始動閾値Pr_sbthでエンジン1が始動する場合)には、停止フラグfenとして悪路停止フラグfbenがセットされる(悪路停止閾値Pr_ebthでエンジン1が停止する)。一方、始動フラグfstとして通常始動フラグfustが設定された場合(通常始動閾値Pr_suthでエンジン1が始動する場合)には、停止時の走行路面が「悪路」であるか「良路」であるかに応じて、悪路停止フラグfben又は通常停止フラグfuenがセットされる。
【0100】
図9には、通常始動閾値Pr_suth、悪路始動閾値Pr_sbth、通常停止閾値Pr_euth、及び悪路停止閾値Pr_ebthを規定するマップの一例を示す。図9に示すマップによれば、悪路始動閾値Pr_sbthは、低・中車速領域(車速vが第2車速閾値v_th2以下の領域)において、悪路始動閾値Pr_sbth及び悪路停止閾値Pr_ebthが通常始動閾値Pr_suth及び通常停止閾値Pr_euthよりも低い値に設定されている。特に、バッテリSOCの変化が許容されやすい易いSOC中間領域(バッテリSOCが変化しても適正範囲から外れにくい領域)に絞って、悪路始動閾値Pr_sbth及び悪路停止閾値Pr_ebthが通常始動閾値Pr_suth及び通常停止閾値Pr_euthよりも低い値に設定し、他のSOC領域においては悪路始動閾値Pr_sbth(悪路停止閾値Pr_ebth)及び通常始動閾値Pr_suth(通常停止閾値Pr_euth)を相互に略同一の値に設定することが好ましい。これにより、音振始動制御が実行されることに起因するバッテリ3の過充電若しくは過放電、又はバッテリSOCが適正範囲の内外を行き来することに起因するエンジン1の頻繁な始動及び停止を抑制することができる。
【0101】
また、悪路始動閾値Pr_sbth及び通常始動閾値Pr_suthはバッテリSOCが低いほど小さい値をとるように設定される。さらに、悪路停止閾値Pr_ebth及び通常停止閾値Pr_euthはバッテリSOCが大きいほど大きい値をとるように設定される。
【0102】
図2に戻り、始動/停止フラグ設定部27は、設定した始動フラグfst及び停止フラグfenを、目標発電動作点設定部28に出力する。
【0103】
目標発電動作点設定部28は、始動フラグfst及び停止フラグfenを入力として、エンジン1の運転点を設定する。具体的に、目標発電動作点設定部28は、始動フラグfst及び停止フラグfenにより規定されるエンジン1の始動タイミング及び停止タイミングに応じて、バッテリSOCを適正範囲に維持できる範囲においてできるだけ燃費を良くすることができるように(最適燃費点に近づくように)、エンジン1の目標回転数Ne及び目標トルクTeを設定する。そして、目標発電動作点設定部28は、設定したエンジン1の目標回転数Ne及び目標トルクTeをそれぞれ、発電機2(特に、図示しない発電機2のインバータ)及びエンジン1(特に、図示しないエンジン制御コントローラ)に出力する。
【0104】
図10は、本実施形態に係る制御方法を車両100の特定の走行シーンに適用した制御結果を説明する図である。図10(a)は音振始動制御が有効とされている区間を示す。また、図10(b)は、バッテリSOCの経時変化を示す。さらに、図10(c)は、要求出力Pr、始動閾値Pr_sth、及び停止閾値Pr_ethの経時変化を示す。特に、悪路始動閾値Pr_sbth及び通常始動閾値Pr_suthをそれぞれ太字の実線及び太字の破線で示し、悪路停止閾値Pr_ebth及び通常停止閾値Pr_euthをそれぞれ細字の実線及び細字の破線で示す。
【0105】
図示のように、時刻t1までにおいては「良路」を走行する状態が継続することで音振始動制御が有効となっている(図6BのステップS381のYes及びステップS382)。そして、時刻t1において、車両100が「悪路」を走行し始めて音振始動制御が開始される。
【0106】
そして、時刻t2において、要求出力Prが悪路始動閾値Pr_sbth以上となると、悪路始動フラグfbstが設定され、エンジン1が始動する(ステップS450のYes、及びステップS470)。これにともない、発電が開始されバッテリSOCが増加し始める。
【0107】
次に、時刻t3において、悪路継続率Rbcが悪路継続率閾値Rbc_thを超え、音振始動制御が無効になる(図6AのステップS350のYes及びステップS360)。そして、要求出力Prが悪路走行中において悪路停止閾値Pr_ebth以下となり、悪路停止フラグfbenが設定され、エンジン1が停止する(ステップS540のYes、ステップS550のYes、及びステップS570)。これにともない、発電が停止してバッテリSOCが減少し始める。
【0108】
以上説明した本実施形態に係る制御方法によれば、車両100の暗騒音が高暗騒音状態である場合(路面レベルLeが「3」又は「4」の場合)に、低暗騒音状態(路面レベルLeが「0」~「2」の場合)よりもエンジン1を始動させ易くする一方、停止をさせにくくする制御が実現される。したがって、車両100の走行時において、エンジン1の騒音により乗員に与える不快感を低減させつつ、要求出力Pr及びバッテリSOCに応じて要求される発電電力量を満たすことができる。
【0109】
[変形例]
次に、上記実施形態で説明した制御方法に対する変形例について説明する。
【0110】
(変形例1)
スリップ判定処理、推定状態判定処理、又は音振始動判定処理の実行と非実行を、車両100の乗員等により操作される所定のスイッチ(イグニッションスイッチなど)で切り替える構成を採用しても良い。例えば、推定状態判定処理に優先して適正推定フラグfopを「0」に設定する構成、又は音振始動判定処理に優先して非作動化フラグfnoを「1」に設定する構成を採用しても良い。これにより、車両100の乗員等が希望に応じてエンジン1を始動させるモードと始動させないモードを選択することができる。
【0111】
(変形例2)
本実施形態の制御方法を適用する車載アクチュエータはエンジン1に限られない。すなわち、ロードノイズ値が小さいときに車両100の乗員が不快と感じる可能性がある程度の一定の動作音(騒音)を発する装置であれば、上記実施形態で説明した制御を若干の修正を加えつつ適用することができる。このような車載アクチュエータとしては、例えば、エアコン、ファン、ナビゲーションシステム、及びオーディオなどが挙げられる。また、他の車載アクチュエータとして、走行中の車両100の周囲にいる者に対して当該車両100の存在を認識させるためにエンジン1の駆動音を模した音を生成する走行音生成器に対して本実施形態の制御方法を適用しても良い。
【0112】
(変形例3)
本実施形態において車両100の暗騒音の大きさの指標となる路面レベルLeは「0」~「4」の5段階に限られない。すなわち、ロードノイズ値そのものと当該ロードノイズ値に対する推定状態に基づいた車両100の暗騒音の大きさの指標となり、高暗騒音状態と低暗騒音状態を切り分けることが可能であるならば任意の段階数に設定することが可能である。また、車両100の暗騒音の大きさの指標を連続量のパラメータで表現しても良い。
【0113】
(変形例4)
ロードノイズ値を演算するための検出パラメータとして車輪7の角加速度Aに代えて、又はこれとともにロードノイズの大きさに相関する他の任意の検出パラメータを採用しても良い。このような検出パラメータとしては、例えば、タイヤの角加速度、マイクなどを用いて直接的に検出された走行音、Gセンサ検出値(路面の状態による加速度の変化に相関)、及びサスペンションの変動量(路面状態による変動)などが挙げられる。
【0114】
(変形例5)
車両100に設定される所定の動作モードに応じて、スリップ判定処理、推定状態判定処理、音振始動判定処理、又はエンジン始動そのものの実行と非実行を切り替える構成を採用しても良い。例えば、所定のスイッチに対する操作によりエンジン1の作動が制限されている場合(マナーモード設定時)、又は車両100の起動時(電源オン時)であってエンジン1の初回始動前の状態には、音振始動判定処理に優先して非作動化フラグfnoを「1」に設定するか、エンジン1の作動そのものを禁止しても良い。
【0115】
[本実施形態の構成及びその作用効果1]
本実施形態によれば、騒音源となる車載アクチュエータの動作を制御する車載アクチュエータ制御方法が提供される。この車載アクチュエータ制御方法は、車両100の車輪7の角加速度Aからロードノイズの大きさを数値化したロードノイズ値を推定するロードノイズ値推定工程(角加速度分散値演算部241、及び分散値補正部244)と、ロードノイズ値の推定状態が適正となる適正推定状態であるか否かを判定する推定状態判定工程(図5)と、ロードノイズ値及び推定状態に基づいて、車両100の暗騒音が相対的に大きい高暗騒音状態(路面レベルLe=「3」~「4」)であるか相対的に小さい低暗騒音状態(路面レベルLe=「0」~「2」)であるかを判定する暗騒音状態判定工程(路面レベル設定部245)と、判定された車両100の暗騒音の状態に応じて車載アクチュエータ(エンジン1)の出力を調節する出力調節工程(図7及び図8)と、を含む。
【0116】
そして、暗騒音状態判定工程(音振始動判定処理)では、推定状態が適正推定状態であると判断した場合(図5のステップS200~ステップS240の判定結果が全て肯定的である場合)に、ロードノイズ値と所定の閾値(路面レベルLe=「2」と「3」)との大小に応じて車両100の暗騒音が高暗騒音状態であるか低暗騒音状態であるかを判定する(ステップS300がYes、及びステップS310~ステップS350)。また、暗騒音状態判定工程では、推定状態が適正推定状態では無いと判断した場合(ステップS300がNo)には、ロードノイズ値に関わらず車両100の暗騒音が低暗騒音状態であると判断する(ステップS360)。
【0117】
さらに、上記出力調節工程では、車両100の暗騒音が高暗騒音状態であると判断した場合には、車載アクチュエータの動作に伴う騒音(エンジン1の動作に伴う騒音)が相対的に大きくなるように該車載アクチュエータの出力を設定する。一方、車両100の暗騒音が低暗騒音状態であると判断した場合には、車載アクチュエータの動作に伴う騒音が相対的に小さくなるように該車載アクチュエータの出力を設定する。
【0118】
これにより、車両100の乗員が車載アクチュエータの動作に伴う騒音を認識し難い高暗騒音状態において車載アクチュエータの出力を高くする一方、当該騒音を認識し易い低暗騒音状態において車載アクチュエータの出力を低くする制御が実現される。特に、ロードノイズ値の推定精度(角加速度Aの検出精度)が低い場合には、当該ロードノイズ値に関わらず車両100の暗騒音が低暗騒音状態であると判断することで、誤判定に基づき低暗騒音状態において車載アクチュエータの出力が高く設定される事態を防止することができる。結果として、車載のアクチュエータの動作に伴う騒音によって乗員に不快感を与えることをより確実に防止することができる。
【0119】
なお、本実施形態では、上記車載アクチュエータ制御方法を実行する車載アクチュエータ制御装置(コントローラ50)が提供される。特に、コントローラ50は、ロードノイズ値推定工程を実行するロードノイズ値推定部(角加速度分散値演算部、及び分散値補正部244、及び路面レベル設定部245)と、上記推定状態判定工程を実行する推定状態判定部243、暗騒音状態判定工程を実行する暗騒音状態判定部(路面レベル設定部245)、及び出力調節工程を実行する出力調節部(始動/停止フラグ設定部27又は目標発電動作点設定部28)として機能する。
【0120】
また、本実施形態の推定状態判定工程では、車両100の機械ブレーキが作動している場合に、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態ではないと判断する(ステップS200のNo及びステップS270)。
【0121】
すなわち、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態ではないと判断する具体的なシーンとして、車輪7に作用する摩擦力がロードノイズ値を推定するための角加速度Aに対する外乱要素となる機械ブレーキ作動時を設定することができる。なお、本実施形態の車両100では、制動機能として機械ブレーキの他に、アクセル開度APOの減少量に応じて駆動モータ4の回生力を調節して制動を行う回生ブレーキが搭載されている。このため、制動シーンによっては機械ブレーキよりも回生ブレーキの実行頻度が高いことが想定される。このため、機械ブレーキの作動時を適正推定状態ではないと判断する制御ロジックを採用したとしても、車両100の制動シーンにおいて必ず適正推定状態ではないと判断されるという事態(制動時に常に車載アクチュエータの出力が低く設定されるという事態)が抑制される。
【0122】
さらに、本実施形態の推定状態判定工程では、車輪7がスリップしている場合に、ロードノイズ値の推定状態が適正推定状態ではないと判断する(図4A図4Bのスリップ判定処理)。すなわち、推定状態が適正推定状態ではないと判断する具体的なシーンとして、車輪7の空転による角加速度Aの振動が外乱要素となるスリップ時を設定することができる。
【0123】
また、本実施形態の推定状態判定工程では、車両100の加速度(前後G推定値)が該車両100の急減速又は急加速を判断する観点から定まる所定加速度(前後G検出値)よりも大きい場合に、車輪7がスリップしていると判断する(ステップS150のYes)。すなわち、通常の減速時又は加速時と比べて強い制動力又は駆動力が外乱要素となる急減速時又は急加速時をスリップの恐れがあるシーンとして判断するロジックが実現される。
【0124】
なお、車両100の加速度に代えて、又はこれとともに車両100に搭載される走行駆動源である駆動モータ4の目標モータトルクTmが該車両100の急減速又は急加速を判断する観点から定まる所定駆動力よりも大きい場合に、車輪7がスリップしていると判断する構成を採用しても良い。特に、車両100が勾配路において発進又は停止するシーンにおいては、急減速時又は急加速時であっても減速度又は加速度が比較的小さくなることも想定される。すなわち、走行シーンによっては、減速度又は加速度のみからは急減速時又は急加速時を高精度に特定できないことが想定される。これに対して、目標モータトルクTmは走行路の勾配も含めて設定されるので、勾配路であっても急減速又は急加速に由来する増減が好適に反映される。したがって、勾配路走行時などの特定の走行シーンにおいて、車両100がスリップしている場合をより好適に特定することができる。
【0125】
さらに、本実施形態では、車両100は、要求出力Prに応じて発電機2を駆動してバッテリ3を充電し該バッテリ3から走行用の駆動モータ4に電力を供給するシリーズハイブリッド車両として構成され、車載アクチュエータは発電機2を駆動するエンジン1として構成される。
【0126】
そして、出力調節工程では、判定された車両100の暗騒音の状態(路面レベルLeが「0」~「4」の何れか)に応じて、エンジン1の始動を許可するための要求出力Prの閾値である始動閾値Pr_sthを設定する(図7図9)。また、エンジン1の停止を許可するための要求出力Prの閾値である停止閾値Pr_ethを設定する(図8図9)。
【0127】
特に、要求出力Prが始動閾値Pr_sth以上となるとエンジン1の始動を判断し、要求出力Prが停止閾値Pr_eth以下となるとエンジン1の停止を判断する。
【0128】
そして、車両100の暗騒音が高暗騒音状態(路面レベルLe=「3」~「4」)であると判断した場合には、始動閾値Pr_sthを相対的に小さい第1始動閾値(悪路始動閾値Pr_sbth)に設定する(ステップS430のYes及びステップS440)。また、停止閾値Pr_ethを相対的に小さい第1停止閾値(悪路停止閾値Pr_ebth)に設定する(ステップS540のYes及びステップS550)。一方、車両100の暗騒音が低暗騒音状態(路面レベルLe=「0」~「2」)であると判断した場合には、始動閾値Pr_sthを相対的に大きい第2始動閾値(通常始動閾値Pr_suth)に設定する(ステップS430のNo及びステップS450)。また、停止閾値Pr_ethを相対的に大きい第2停止閾値(通常停止閾値Pr_euth)に設定する(ステップS540のNo及びステップS560)。
【0129】
このように、上記実施形態で説明した制御方法による車載アクチュエータとしてシリーズハイブリッド型の車両100におけるエンジン1を想定し、その出力調整としてエンジン1を始動又は停止させる要求出力Prを変えることで、車両100の走行時において乗員に対して騒音による不快感を与えないようにエンジン1の始動タイミング及び停止タイミングを調節することができる。
【0130】
[本実施形態の構成及びその作用効果2]
本実施形態によれば、上記車載アクチュエータ制御方法及び車載アクチュエータ制御装置の一態様であるエンジン制御方法及びエンジン制御装置が提供される。
【0131】
本実施形態のエンジン制御方法では、要求出力Prに応じて、エンジン1により発電機2を駆動してバッテリ3を充電し該バッテリ3から走行用の駆動モータ4に電力を供給するシリーズハイブリッド型の車両100において、エンジン1を始動させるための要求出力Prの閾値である始動閾値Pr_sthを設定する。そして、このエンジン制御方法は、車両100の暗騒音が相対的に大きい高暗騒音状態(路面レベルLe=「3」~「4」)であるか相対的に小さい低暗騒音状態(路面レベルLe=「0」~「2」)であるかを判定する暗騒音状態判定工程(路面レベル設定部245)と、車両100の暗騒音の状態に応じて始動閾値Pr_sthを設定する始動/停止閾値設定工程(始動フラグ設定処理)と、を含む。
【0132】
そして、始動/停止閾値設定工程では、車両100の暗騒音が高暗騒音状態であると判断された場合には、始動閾値Pr_sthを相対的に小さい第1始動閾値(悪路始動閾値Pr_sbth)に設定し(ステップS430のNo及びステップS450)、車両100の暗騒音が低暗騒音状態であると判断された場合には、始動閾値Pr_sthを相対的に大きい第2始動閾値(通常始動閾値Pr_suth)に設定する(ステップS430のYes及びステップS460)。
【0133】
さらに、本実施形態のエンジン制御方法では、始動/停止閾値設定工程では、車両100の暗騒音の状態に応じて、エンジン1を停止させるための要求出力Prの閾値である停止閾値Pr_ethを設定する(停止フラグ設定処理)。そして、車両100の暗騒音が高暗騒音状態(路面レベルLe=「3」~「4」)であると判断すると、停止閾値Pr_ethを相対的に小さい第1停止閾値(悪路停止閾値Pr_ebth)に設定する(ステップS540のYes及びステップS550)。また、車両100の暗騒音が低暗騒音状態(路面レベルLe=「0」~「2」)であると判断すると、停止閾値Pr_ethを相対的に大きい第2停止閾値(通常停止閾値Pr_euth)に設定する(ステップS540のNo及びステップS560)。
【0134】
これにより、高暗騒音状態においては低暗騒音状態よりもエンジン1を停止させにくくすることができる。結果として、上述のように高暗騒音状態においてエンジン1を始動させ易くしつつも停止はさせにくい構成となるため、車両100の乗員が騒音を認識し難い高暗騒音状態におけるエンジン1の動作時間をより長くして、発電量(バッテリ3への充電量)をより好適に確保することができる。また、高暗騒音状態が一定期間継続する状況下において、悪路始動閾値Pr_sbthと悪路停止閾値Pr_ebthが相互に近い値となることによる頻繁なエンジン1の始動と停止の繰り返しも抑制される
【0135】
なお、本実施形態では、上記エンジン制御方法を実行するエンジン制御方法(コントローラ50)が提供される。すなわち、コントローラ50は、暗騒音状態判定工程を実行する暗騒音状態判定部(路面レベル設定部245)、及び始動/停止閾値設定工程を実行する始動/停止閾値設定部(始動/停止フラグ設定部27)として機能する。
【0136】
特に、本実施形態の推定状態判定工程では、悪路始動閾値Pr_sbth及び通常始動閾値Pr_suthを、バッテリ3の充電率(バッテリSOC)が低いほど小さい値に設定する。これにより、高暗騒音状態及び低暗騒音状態の双方において、バッテリSOCが適正範囲を下回らないようにエンジン1を始動させることができる。
【0137】
さらに、本実施形態のエンジン制御方法は、車両100の車輪7の角加速度Aからロードノイズの大きさを数値化したロードノイズ値(「1」~「4」の範囲の路面レベルLe)を推定するロードノイズ値推定工程(角加速度分散値演算部241、及び分散値補正部244)をさらに含む。そして、路面レベル設定部245では、ロードノイズ値が所定の閾値(路面レベルLe=「2」と「3」)以上である場合に、車両100の暗騒音が高暗騒音状態であると判断する(ステップS300がYes)。そして、ロードノイズ値に基づく高暗騒音状態の判断が継続した場合(規定走行距離D_thに亘って悪路継続率Rbcが悪路継続率閾値Rbc_th以上となった場合)に、後の制御においてロードノイズ値と上記閾値の大小関係に関わらず、車両100の暗騒音の状態が低暗騒音状態であると判断する(ステップS350のYes及びステップS360)。
【0138】
これにより、車両100の暗騒音の状態が高暗騒音状態であるか低暗騒音状態を、角加速度Aから演算されるロードノイズ値と所定の閾値との大小関係により判断することができる。すなわち、車両100の暗騒音の状態を判断するための具体的な制御ロジックが実現される。その上で、ロードノイズ値が閾値以上となる判断される状態が継続した場合に、以降の制御においては車両100の暗騒音の状態が低暗騒音状態と判断されることとなる。このため、通常始動閾値Pr_suthよりも低い値の悪路始動閾値Pr_sbthに基づいてエンジン1が始動される状態が続くことによる、バッテリ3の過充電又は燃費の低下をより確実に防止することができる。
【0139】
特に、ロードノイズ値に基づく高暗騒音状態の継続の判断を、所定の制御期間(規定走行距離D_th)において車両100が悪路を走行する距離の割合(悪路継続率Rbc)が基準値(悪路継続率閾値Rbc_th)以上となるか否かに基づいて判断する。これにより、車両100の現実の走行シーンを想定してロードノイズ値に関わらず低暗騒音状態と判断するための好適な制御期間を定めることができる。なお、悪路継続率Rbcに代えて、ロードノイズ値が上記閾値以上と判断される状態の継続を、所定の制御期間における悪路走行時間の割合が基準値以上となるか否かに基づいて判断する構成を採用しても良い。
【0140】
そして、本実施形態のエンジン制御方法は、ロードノイズ値の推定状態が適正となる適正推定状態であるか否かを判定する推定状態判定工程(図5)をさらに含む。そして、暗騒音状態判定工程では、推定状態が適正推定状態ではないと判断された制御タイミングを、上記制御期間から除外する(ステップS300のNo)。
【0141】
これにより、車両100の走行シーンなどに応じてロードノイズ値の推定精度が適正に保たれない場合において、誤判定に基づいて上述した高暗騒音状態が継続していていないと判断される事態(結果的に暗騒音の状態が低暗騒音状態である判断される事態)が抑制される。これにより、低暗騒音状態でエンジン1を作動させることで車両100の乗員に不快感を与えることをより確実に防止することができる。
【0142】
なお、本実施形態のエンジン制御方法では、基本的には、バッテリSOCを適正範囲内に維持する発電量が実現されるように始動閾値Pr_sth及び停止閾値Pr_ethが設定される。すなわち、車両100がある走行距離を走行する際に消費するエネルギー量(要求出力Prの積分値)に対して必要な発電量は決まるため、当該発電量に応じたエンジン1の動作時間を確保する必要がある。これに対して、上述のように、高暗騒音状態において始動閾値Pr_sth及び停止閾値Pr_ethをともに低暗騒音状態におけるそれよりも小さくする構成とすることで、必要な発電量を確保するためのエンジン1の動作時間を好適に維持することができる。言い換えると、車両100がエンジン1を作動させずに走行している状態(EV走行)の頻度を維持することができる。
【0143】
特に、本実施形態では、悪路停止閾値Pr_ebth及び通常停止閾値Pr_euthを、バッテリSOCが高いほど大きい値に設定する。これにより、高暗騒音状態及び低暗騒音状態の双方において、バッテリSOCが適正範囲を超えてしまわないようにエンジン1を停止させることができる。
【0144】
さらに、本実施形態のエンジン制御方法は、要求出力Prが始動閾値Pr_sth以上となるとエンジン1の始動指令(始動フラグfst)を生成するエンジン始動判断工程(図7)と、要求出力Prが停止閾値Pr_eth以下となるとエンジン1の停止指令(停止フラグfen)を生成するエンジン停止判断工程(図8)と、を含む。
【0145】
エンジン始動判断工程では、車両100の暗騒音が高暗騒音状態である場合(ステップS430のNo)には、要求出力Prが悪路始動閾値Pr_sbth以上となると悪路始動フラグfbstを生成し(ステップS450のYes、及びステップS470)、車両100の暗騒音が低暗騒音状態である場合(ステップS430のYes)には、要求出力Prが通常始動閾値Pr_suth以上となると通常始動フラグfustを生成する(ステップS440のYes、及びステップS460)。
【0146】
一方、エンジン停止判断工程(始動/停止フラグ設定部27)では、車両100の暗騒音が高暗騒音状態である場合(ステップS530のYes)には、要求出力Prが悪路停止閾値Pr_ebth以下となると悪路停止フラグfbenを生成し(ステップS550のYes、及びステップS570)、車両100の暗騒音が低暗騒音状態である場合(ステップS530のNo)には、要求出力Prが通常停止閾値Pr_euth以下となると通常停止フラグfuenを生成する(ステップS460のYes、及びステップS580)。
【0147】
これにより、高暗騒音状態においては低暗騒音状態よりエンジン1を始動させ易くしつつ、エンジン1を停止させにくくするための具体的な制御ロジックが実現される。
【0148】
また、エンジン始動指令工程では、車両100の暗騒音が高暗騒音状態であると判断される状態が継続した場合(ステップS350のYes及びステップS360)に、後の制御において車両100の暗騒音の状態の判断結果に関わらず、要求出力Prが通常始動閾値Pr_suth以上となると通常始動フラグfustを生成する(ステップS430のYes、ステップS440のYes、及びステップS460)。
【0149】
これにより、高暗騒音状態であるとの判断が一定期間以上継続した場合であっても、実際のエンジン1の始動を当該判断に拘束されることなく、通常始動閾値Pr_suthに基づいてエンジン1を始動させることのできる制御ロジックが実現される。したがって、上述したバッテリ3の過充電及び燃費の悪化を回避することができる。
【0150】
なお、エンジン停止指令工程において、車両100の暗騒音が高暗騒音状態であると判断される状態が継続した場合に、後の制御において車両100の暗騒音の状態の判断結果に関わらず、要求出力Prが通常停止閾値Pr_euth以下となると通常停止フラグfuenを生成する構成を採用しても良い。この構成によっても、バッテリ3の過充電及び燃費の悪化を回避することができる。
【0151】
また、本実施形態のエンジン制御方法におけるエンジン停止指令工程では、要求出力Prが悪路始動閾値Pr_sbth以上となってエンジン1が始動される場合(ステップS530のYes)に、車両100の暗騒音の状態に関わらず要求出力Prが悪路停止閾値Pr_ebth以下となると停止指令(悪路停止フラグfben)を生成する(ステップS550のYes及びステップS570)。一方、要求出力Prが通常始動閾値Pr_suth以上となってエンジン1が始動される場合(ステップS530のNo)には、車両100の暗騒音の状態に応じて要求出力Prが悪路停止閾値Pr_ebth以下又は通常停止閾値Pr_euth以下となると停止フラグfenを生成する(ステップS540~ステップS580)。
【0152】
これにより、高暗騒音状態(特に悪路走行時)において設定される悪路始動閾値Pr_sbthに基づいてエンジン1が始動された場合、停止時の暗騒音の状態に関わらず、高暗騒音状態用の悪路停止閾値Pr_ebthに基づいてエンジン1が停止されることとなる。このため、エンジン1の始動時において相対的に小さい悪路始動閾値Pr_sbth(悪路用)を適用したにも関わらず、停止時には相対的に大きい通常停止閾値Pr_euth(良路用)が適用されることで始動閾値Pr_sth及び停止閾値Pr_ethが相互に近づくことに起因してエンジン1の始動及び停止が頻繁に繰り返される事態が抑制される。
【0153】
一方で、低暗騒音状態(特に良路走行時)において設定される通常始動閾値Pr_suthに基づいてエンジン1が始動された場合には、停止時に本来想定されている通常停止閾値Pr_euthよりも小さい悪路始動閾値Pr_sbthが適用された場合であっても、始動閾値Pr_sth及び停止閾値Pr_ethは相互に一定程度離れている。このため、停止時における車両100の暗騒音の状態に応じて悪路停止閾値Pr_ebth以下又は通常停止閾値Pr_euthを適用し、エンジン1を停止させることができる。
【0154】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10