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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】逆浸透膜の損傷検査方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/10 20060101AFI20220913BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B01D65/10
B01D61/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022520815
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014666
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2021052866
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 賢司
(72)【発明者】
【氏名】中辻 宏治
(72)【発明者】
【氏名】高畠 寛生
(72)【発明者】
【氏名】下田 真也
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-254358(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103551045(CN,A)
【文献】特開2007-260497(JP,A)
【文献】特開2011-20047(JP,A)
【文献】特開2018-167207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色剤を含む被処理水を逆浸透膜に供給し染色した染色膜について、前記染色膜の少なくとも透過側の染色領域の有無から、逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する、逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項2】
前記染色膜に、さらに、下記(i)および(ii)の少なくともいずれか一方の洗浄を行うことにより前記染色膜の表面に残留した前記染色剤を含む被処理水を洗浄し、前記染色膜の少なくとも透過側の染色領域の有無から、前記逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する、請求項1に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(i)洗浄用水を該洗浄用水の浸透圧以上の圧力で加圧供給手段によって供給し、前記洗浄用水を濃縮水と透過水に分離する。
(ii)界面活性剤を5質量%以上含有する洗浄剤で掛け流し洗浄する。
【請求項3】
逆浸透膜を複数枚準備し2つ以上の群に分けて、前記2つ以上の群のうち1つの群には、少なくとも請求項1または2に記載の逆浸透膜の損傷検査方法を行い、残りの群のうちの1つ以上の群には、逆浸透膜を前洗浄した後に請求項1または2に記載の逆浸透膜の損傷検査方法を行い、各群の検査結果比較から損傷要因を特定する、逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項4】
前記残りの群のうちの1つ以上の群における前記逆浸透膜の前洗浄方法が、下記(iii)~(V)のうちの少なくとも1つである、請求項3に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(iii)pH4未満の溶液、pH10以上の溶液およびキレート剤を0.5wt%以上含有する溶液からなる群から選択される少なくとも1つの溶液を用いて前記逆浸透膜を前記溶液に1時間以上浸漬する。
(iv)前記溶液を該溶液の浸透圧以上の圧力で加圧供給手段によって前記逆浸透膜へ供給し、前記溶液を濃縮水と透過水とに分離する。
(v)前記逆浸透膜を前記溶液で掛け流し洗浄する。
【請求項5】
前記染色膜の透過側と原水側の染色領域の有無を比較することで、逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する、または損傷要因を特定する、請求項1または2に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項6】
前記染色膜の前記透過側と前記原水側の染色領域の比率から、損傷要因を物理的損傷と化学的損傷に分類する、請求項5に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項7】
前記染色膜の前記透過側の染色領域から、前記逆浸透膜の損傷率を特定する、請求項1~6のいずれか1項に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項8】
前記染色膜の少なくとも透過側の検査領域と、該検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から、前記逆浸透膜の損傷率を特定する、請求項7に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項9】
前記染色膜の少なくとも透過側を画像化手段によって画像化し、前記染色膜の少なくとも透過側画像の検査領域と、該検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から、前記逆浸透膜の損傷率を特定する、請求項8に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項10】
前記染色比率が、前記染色膜の少なくとも透過側画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の、総面積と総画素数のいずれかの比率であり、下記の判定1と判定2のいずれかにより前記逆浸透膜の損傷率を特定する、請求項9に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(判定1)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総面積[mm]/検査領域の総面積[mm])×100
(判定2)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
【請求項11】
標準となる使用前の逆浸透膜Bと検査対象である使用後の逆浸透膜Aを用い、前記逆浸透膜Aの平均膜損傷速度を下記の判定3により特定する、請求項10に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(判定3)
使用後の逆浸透膜Aの平均膜損傷速度[%/日]=(逆浸透膜Aの損傷率[%]-逆浸透膜Bの損傷率[%])/逆浸透膜Aの通水期間[日]
【請求項12】
前記染色剤として、分子サイズの異なる染色剤を2種類以上用いる、請求項1~11のいずれか1項に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【請求項13】
前記染色剤の分子量が、300以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜の損傷検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の枯渇が深刻になりつつあり、これまで利用されてこなかった水資源の活用が検討され、特に最も身近でそのままでは利用できなかった海水から飲料水などを製造する技術、いわゆる“海水淡水化”、さらには下廃水を浄化し、処理水を再生する再利用技術が注目されてきている。海水淡水化は、従来、水資源が極端に少なく、かつ、石油による熱資源が非常に豊富である中東地域で蒸発法を中心に実用化されてきた。最近では、逆浸透膜法の技術進歩による信頼性の向上やコストダウンが進み、中東地域において、逆浸透膜法海水淡水化プラントが実用化されている。下廃水再利用においても、内陸や海岸沿いの都市部や工業地域で、水源がないような地域や排水規制のために放流量が制約されているような地域で逆浸透膜法が適用されている。特に、シンガポールでは、国内で発生する下水を処理後、逆浸透膜で飲料水レベルの水質にまで再生し、水不足に対応している。
【0003】
海水淡水化や下廃水再利用に適用される逆浸透膜法は、塩分などの溶質を含んだ水に浸透圧以上の圧力を加えて逆浸透膜を透過させることで、脱塩された水を得る造水方法である。この技術は例えば海水、かん水から飲料水を得ることも可能であるし、また、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などにも用いられてきた。
【0004】
しかしながら、各種水処理プラントにおける通常運転中に逆浸透膜が高圧下に長期間晒されたり、取水した原水水質に応じた前処理を適用しても残留した被処理水中の異物や、運転中に発生したスケール、ファウラントが逆浸透膜の膜面に接触したりすることで、逆浸透膜の膜面に物理的損傷が発生するため、定期的に逆浸透膜の膜面の物理的損傷の有無を調査して、物理的損傷が発生していた際は、損傷要因への対応策を至急講じる必要がある。
【0005】
逆浸透膜の膜面の物理的損傷の有無を調査する方法としては、調査対象の逆浸透膜平膜のスキン層側に染色液(ベーシックバイオレット1(東京化成工業社製)の溶解液)を線速0.1~0.2cm/秒でクロスフローさせ、運転圧力1.5MPaにて30分以上加圧通水させ、目視にて評価用膜に染色領域が存在しないか観察する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/063975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、各種水処理プラントにおいて使用された逆浸透膜の供給側(スキン層側)にスケールやファウラントが付着していると、染色液により供給側の付着物自体が染色され、また、被処理水中に残留した酸化性物質との接触により、逆浸透膜の基本性能を発現する機能層の主成分であるポリアミドが酸化劣化していると、染色液により機能層全体が染色されてしまい、膜面の損傷部と非損傷部を、染色領域と非染色領域として判別することが困難となることが問題視されていた。
【0008】
そこで本発明は、極めて簡便に、かつ迅速に、逆浸透膜の膜面に生じた物理的損傷の有無または物理的損傷の程度を判定し、膜面損傷率と損傷要因を高い精度で特定可能な、逆浸透膜の膜損傷検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は次の構成をとる。
<1>染色剤を含む被処理水を逆浸透膜に供給し染色した染色膜について、前記染色膜の少なくとも透過側の染色領域の有無から、逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する、逆浸透膜の損傷検査方法。
<2>前記染色膜に、さらに、下記(i)および(ii)の少なくともいずれか一方の洗浄を行うことにより前記染色膜の表面に残留した前記染色剤を含む被処理水を洗浄し、前記染色膜の少なくとも透過側の染色領域の有無から、前記逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する、前記<1>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(i)洗浄用水を該洗浄用水の浸透圧以上の圧力で加圧供給手段によって供給し、前記洗浄用水を濃縮水と透過水に分離する。
(ii)界面活性剤を5質量%以上含有する洗浄剤で掛け流し洗浄する。
<3>逆浸透膜を複数枚準備し2つ以上の群に分けて、前記2つ以上の群のうち1つの群には、少なくとも前記<1>または<2>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法を行い、残りの群のうちの1つ以上の群には、逆浸透膜を前洗浄した後に前記<1>または<2>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法を行い、各群の検査結果比較から損傷要因を特定する、逆浸透膜の損傷検査方法。
<4>前記残りの群のうちの1つ以上の群における前記逆浸透膜の前洗浄方法が、下記(iii)~(V)のうちの少なくとも1つである、前記<3>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(iii)pH4未満の溶液、pH10以上の溶液およびキレート剤を0.5wt%以上含有する溶液からなる群から選択される少なくとも1つの溶液を用いて前記逆浸透膜を前記溶液に1時間以上浸漬する。
(iv)前記溶液を該溶液の浸透圧以上の圧力で加圧供給手段によって前記逆浸透膜へ供給し、前記溶液を濃縮水と透過水とに分離する。
(v)前記逆浸透膜を前記溶液で掛け流し洗浄する。
<5>前記染色膜の透過側と原水側の染色領域の有無を比較することで、逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する、または損傷要因を特定する、前記<1>または<2>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
<6>前記染色膜の前記透過側と前記原水側の染色領域の比率から、損傷要因を物理的損傷と化学的損傷に分類する、前記<5>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
<7>前記染色膜の前記透過側の染色領域から、前記逆浸透膜の損傷率を特定する、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
<8>前記染色膜の少なくとも透過側の検査領域と、該検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から、前記逆浸透膜の損傷率を特定する、前記<7>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
<9>前記染色膜の少なくとも透過側を画像化手段によって画像化し、前記染色膜の少なくとも透過側画像の検査領域と、該検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から、前記逆浸透膜の損傷率を特定する、前記<8>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
<10>前記染色比率が、前記染色膜の少なくとも透過側画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の、総面積と総画素数のいずれかの比率であり、下記の判定1と判定2のいずれかにより前記逆浸透膜の損傷率を特定する、前記<9>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(判定1)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総面積[mm]/検査領域の総面積[mm])×100
(判定2)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
<11>標準となる使用前の逆浸透膜Bと検査対象である使用後の逆浸透膜Aを用い、前記逆浸透膜Aの平均膜損傷速度を下記の判定3により特定する、前記<10>に記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
(判定3)
使用後の逆浸透膜Aの平均膜損傷速度[%/日]=(逆浸透膜Aの損傷率[%]-逆浸透膜Bの損傷率[%])/逆浸透膜Aの通水期間[日]
<12>前記染色剤として、分子サイズの異なる染色剤を2種類以上用いる、前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
<13>前記染色剤の分子量が、300以上である、前記<1>~<12>のいずれか1つに記載の逆浸透膜の損傷検査方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極めて簡便に、かつ迅速に、逆浸透膜の膜面に生じた物理的損傷の有無および/または程度を判定し、膜面損傷率と損傷要因を高い精度で特定可能である。また、特定した損傷要因への対応策を至急講じることで、水処理プラントにおける逆浸透膜の安定運転を可能とし、安定的かつ安価に淡水を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜加圧染色フローを示す図である。
図2図2は、第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜の大気圧下での染色方法を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜加圧染色後の膜面洗浄フローを示す図である。
図4図4は、第1実施形態または第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜染色後の染色膜透過側画像の一例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜加圧染色後の染色膜透過側画像を二値化処理し、検査領域内に含まれる染色領域を黒、非染色領域を白で示す二値化処理画像である。
図6図6は、最も一般的なスパイラル型逆浸透膜エレメントの部分分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
尚、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
【0013】
本発明の逆浸透膜の損傷検査方法は、染色剤を含む被処理水を逆浸透膜に供給し染色した染色膜について、染色膜の少なくとも透過側の染色領域の有無から、逆浸透膜の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する。
【0014】
第1実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜染色フローを図1に示す。図1に示したように、第1実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法では、被処理水タンク1に貯留した被処理水2に染色剤を所定濃度になるよう添加する。その後、被処理水供給ライン3に備える加圧供給手段4で被処理水の浸透圧以上の圧力に昇圧させた後、損傷検査対象とする逆浸透膜5を取り付けた逆浸透膜評価セル6に染色剤を含む被処理水2を供給し、逆浸透膜5で染色剤を含む被処理水を濃縮水7と透過水8に分離する。
【0015】
濃縮水7は、濃縮水循環バルブ101を開、濃縮水排水バルブ201を閉とし、濃縮水ライン9を通して被処理水タンク1に還流し、透過水8は透過水循環バルブ102を開、透過水排水バルブ202を閉とし、透過水ライン10を通して被処理水タンク1に還流する。また、被処理水を加圧供給手段4で昇圧させた後の供給圧力は、被処理水供給ライン3に備える圧力計11で測定して所定圧力に調整し、濃縮水7の流量は、濃縮水ライン9に備える濃縮水流量計12で測定して所定流量に調整する。逆浸透膜加圧染色条件を設定後、一定時間、染色剤を含む被処理水2を逆浸透膜5から透過させて、逆浸透膜5の物理的損傷部に生じる被処理水混入流13と、非損傷部に生じる逆浸透膜透過流14が混合された透過水8を得る。そして、逆浸透膜5の物理的損傷部に生じる被処理水混入流13により、物理的損傷部が存在する場合のみ逆浸透膜透過側が染色されるため、逆浸透膜透過側の染色領域の有無から逆浸透膜5の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する。
【0016】
被処理水に用いられる溶媒としては、例えば、純水、蒸留水、水道水、海水、雨水、工業用水、井戸水等が挙げられるが、染色時に膜の物理的損傷および化学的損傷を生じさせないため、染色剤以外の成分を含まない純水がより好ましい。
【0017】
被処理水の供給圧力としては、被処理水を濃縮水と透過水に効率よく分離する観点から、0.2~8.0MPaであるのが好ましく、0.4MPa以上がより好ましく、また、5.5MPa以下がより好ましい。
【0018】
濃縮水の流量は、染色を効率よく行う観点から、0.1~10L/minであるのが好ましく、1L/min以上がより好ましく、また、5L/min以下がより好ましい。
【0019】
第1実施形態における逆浸透膜の染色条件については特に制限されるものではないが、例えば以下の条件で実施する。
<染色条件>
・染色剤および添加濃度:メチルバイオレット水溶液 500mg/L
・被処理水供給圧力:0.4MPa(被処理水の浸透圧以上とする)
・濃縮水流量:3.5L/min
・加圧染色時間:15分
・膜サンプル(サイズ):逆浸透膜 円形平膜(直径75mm)
【0020】
逆浸透膜評価セル6の個数については特に制限されるものではないが、例えば逆浸透膜評価セルを直列、あるいは並列で複数個備えることで、一度に複数の逆浸透膜を検査でき、検査効率が向上するため好ましい。
【0021】
また、第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜染色は、図2に示すように、所定濃度の染色剤を含む被処理水2を損傷検査対象の逆浸透膜5に大気圧下で供給し、所定の時間静置する。そして、逆浸透膜5の物理的損傷部に生じる染色剤溶液混入により、物理的損傷部が存在する場合のみ逆浸透膜透過側が染色されるため、逆浸透膜透過側の染色領域の有無から逆浸透膜5の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を検査する。
【0022】
染色剤を含む被処理水の濃度は、染色領域の色の濃さ観点から、1.0mg/L~3000mg/Lであるのが好ましく、300mg/L以上がより好ましく、また、1000mg/L以下がより好ましい。
【0023】
静置時間は、染色領域の色の濃さの観点から、1~180分であるのが好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましく、また、120分以下がより好ましく、60分以下がさらに好ましい。
【0024】
第2実施形態における逆浸透膜の染色条件については特に制限されるものではないが、例えば以下の条件で実施する。また、染色剤溶液を膜面に均一に供給するため、図2に示したように、染色剤を含む被処理水2を供給した膜面に樹脂フィルム15を載せてもよい。
<染色条件>
・染色剤および添加濃度:メチルバイオレット水溶液 500mg/L
・染色時間:15分
・膜サンプル(サイズ):逆浸透膜 円形平膜(直径75mm)
【0025】
また、第1実施形態あるいは第2実施形態による逆浸透膜の染色後、膜表面に染色剤を含む被処理水が残留してしまい、染色領域と非染色領域の判別が困難な場合は、純水などの洗浄用水を被処理水として用いて染色膜の表面を洗浄するのが好ましい。
【0026】
染色膜の洗浄方法としては、下記(i)および(ii)の少なくともいずれか一方の洗浄を行うことが好ましい。
(i)洗浄用水を該洗浄用水の浸透圧以上の圧力で加圧供給手段によって供給し、前記洗浄用水を濃縮水と透過水に分離する。
(ii)界面活性剤を5質量%以上含有する洗浄剤で掛け流し洗浄する。
【0027】
上記(i)の洗浄方法について、逆浸透膜染色後の膜面洗浄フローを図3に示す。図3に示した通り、洗浄用水22を被処理水タンク1に貯留し、被処理水供給ライン3に備える加圧供給手段4で洗浄用水22の浸透圧以上の圧力に昇圧させた後、染色後の逆浸透膜25を取り付けた逆浸透膜評価セル6に供給し、逆浸透膜25で洗浄用水22を濃縮水7と透過水8に分離する。
【0028】
濃縮水7は、濃縮水循環バルブ101を閉、濃縮水排水バルブ201を開とし、濃縮水ライン9を通して系外へ排水し、透過水8は透過水循環バルブ102を閉、透過水排水バルブ202を開とし、透過水ライン10を通して系外へ排水する。また、洗浄用水を加圧供給手段4で昇圧させた後の供給圧力は、被処理水供給ライン3に備える圧力計11で測定して所定圧力に調整し、濃縮水7の流量は、濃縮水ライン9に備える濃縮水流量計12で測定して所定流量に調整する。逆浸透膜洗浄条件を設定後、膜表面に残留した染色剤を含む被処理水が混ざることで着色した濃縮水7の色が被処理水と同じ色になるまで、5分以上膜表面を洗浄する。
【0029】
染色後の逆浸透膜の洗浄条件については特に制限されるものではないが、例えば以下の条件で実施する。
<洗浄条件>
・被処理水:洗浄用水(純水など)
・被処理水供給圧力:0.15MPa(被処理水の浸透圧以上とする)
・濃縮水流量:3.5L/min
・洗浄時間:5分以上
・膜サンプル(サイズ):逆浸透膜 円形平膜(直径75mm)
【0030】
洗浄用水については特に制限されるものではないが、染色に使用した染色剤を含む被処理水より染色剤濃度が低いことが好ましく、染色剤により染色膜を追加染色することなく、膜表面に残留した染色剤を含む被処理水のみを洗浄可能である。特に、染色に使用した染色剤を含む被処理水の染色剤濃度の好ましくは1/100以下、より好ましくは1/10,000以下の洗浄用水を被処理水として使用することで、効果的に、かつ効率よく膜表面に残留した染色剤を含む被処理水のみを洗浄可能である。例えば、染色に使用した染色剤(メチルバイオレット)を含む被処理水の染色剤濃度が500mg/Lの場合は、染色剤濃度が500mg/Lより低い、好ましくは5mg/L以下、より好ましくは0.05mg/L以下の洗浄用水を使用することで、効果的に、かつ効率よく膜表面に残留した染色剤を含む被処理水のみを洗浄可能である。
【0031】
染色剤の濃度測定方法については特に制限されるものではないが、例えば、JIS K 0115:2020吸光光度分析通則に記載の吸光光度分析法、JIS K 0127:2013イオンクロマトグラフィー通則に記載のイオンクロマトグラフィー、JIS K 0116:2014発光分光分析通則に記載のICP発光分光分析などで測定可能である。
【0032】
さらに、洗浄用水中の次亜塩素酸イオンが遊離塩素相当で0.01mg/L以下であることが好ましく、次亜塩素酸イオンの漂白作用により染色膜の染色領域を消失させることなく、膜表面に残留した染色剤を含む被処理水のみを洗浄可能である。
【0033】
遊離塩素の濃度測定方法については特に制限されるものではないが、DPD(N,N-ジエチルパラフェニレンジアミン)試薬発色による吸光光度法、比色法、ヨウ素法、電流法(ポーラログラフ法)などで測定可能である。
【0034】
洗浄用水として、例えば純水など、染色剤と次亜塩素酸イオンのどちらも含まない水を使用することで、染色剤により染色膜を追加染色することなく、かつ次亜塩素酸イオンの漂白作用により染色膜の染色領域を消失させることなく、膜表面に残留した染色剤を含む被処理水のみを洗浄可能である。
【0035】
次に上記(ii)の洗浄方法について説明する。第1実施形態および第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜染色後の膜面洗浄を実施後も、膜表面に染色剤を含む被処理水が残留している場合は、さらに界面活性剤を5質量%以上含有する洗浄剤で掛け流し洗浄することで、膜表面に残留した染色剤を含む被処理水を十分に除去できるため好ましい。界面活性剤の種類については特に制限されるものではないが、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤のいずれも使用可能である。
洗浄剤中の界面活性剤の濃度は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度以上であるのが好ましく、例えばアニオン界面活性剤の一種であるラウリル硫酸ナトリウムであれば0.23質量%以上であるのが好ましく、また、上限は30質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0036】
界面活性剤の濃度測定方法については特に制限されるものではないが、JIS K 3362:2008家庭用合成洗剤試験方法に記載のイオン交換クロマトグラフ法およびアルミナカラムクロマトグラフ法、りんタングステン酸バリウム法などの重量分析、またはJIS K 3362:2008家庭用合成洗剤試験方法に記載の分相滴定法、フェロシアン化カリウム法、ブロモフェノールブルー法などの滴定法、またはJIS K 0102:2013工場排水試験方法に記載の吸光光度分析法、水道法に記載の高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、電位差測定法、蛍光分光分析法で濃度測定可能である。
【0037】
また、前記逆浸透膜を複数枚準備し2つ以上の群に分けて、それぞれ異なる処理を施した後に、第1実施形態あるいは第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法を実施することで、各群の検査結果比較から損傷要因を特定することができる。2つ以上の群のうち1つの群には、少なくとも第1実施形態または第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法を行い、2つ以上の群のうちの残りの群の1つ以上の群には、逆浸透膜を前洗浄した後に第1実施形態または第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法を行い、各群の検査結果比較から損傷要因を特定することが好ましい。
【0038】
残りの群のうちの1つ以上の群における逆浸透膜の前洗浄方法としては、特に制限されるものではなく、膜面の目詰まりを除去するのに適した処理が用いられるが、例えば、下記(iii)~(V)のうちの少なくとも1つであるのが好ましい。
(iii)pH4未満の溶液、pH10以上の溶液およびキレート剤を0.5wt%以上含有する溶液からなる群から選択される少なくとも1つの溶液を用いて前記逆浸透膜を前記溶液に1時間以上浸漬する。
(iv)前記溶液を被処理水の浸透圧以上の圧力で加圧供給手段によって前記逆浸透膜へ供給し、前記溶液を濃縮水と透過水とに分離する。
(v)前記逆浸透膜を前記溶液で掛け流し洗浄する。
【0039】
具体的に、逆浸透膜を下記AとBの群に分けてそれぞれ異なる処理を施した後で、各群に第1実施形態あるいは第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法を実施し、AとBの群の損傷検査結果を比較することで損傷要因を特定することができる。
A:事前に処理を実施しない逆浸透膜。
B:pH4未満の溶液に1時間以上浸漬した逆浸透膜。
Aの群の逆浸透膜は、Bの群の逆浸透膜に対する比較対象として用いるため、何も処理を実施しないことが好ましい。
【0040】
逆浸透膜染色により、逆浸透膜透過側が染色されるのと同時に、逆浸透膜供給側も染色される。このとき、物理的損傷箇所が染色されるだけでなく、水処理プラントにおいて使用された逆浸透膜など、逆浸透膜供給側にスケールやファウラントが付着していると供給側付着物自体が染色され、また、酸化性物質との接触により逆浸透膜の基本性能を発現する機能層の主成分であるポリアミドが酸化劣化していると、機能層全体が染色される。
【0041】
本発明の逆浸透膜の損傷検査方法では、染色膜の少なくとも透過側の染色領域から、逆浸透膜の損傷率を特定するのが好ましい。水処理プラントにおいて使用された逆浸透膜の損傷率を特定することで、水処理プラントにおける物理的損傷の発生リスクを把握することが可能となる。
【0042】
さらに、染色膜の透過側と供給側の染色領域を比較することで、逆浸透膜の損傷率および損傷要因を特定することが可能となる。また、逆浸透膜の損傷要因を特定して対応策を至急講じることで、水処理プラントにおける逆浸透膜の安定運転を可能とし、安定的かつ安価に淡水を得ることも可能となる。
【0043】
ここで、第1実施形態あるいは第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜染色後の染色膜透過側画像の一例を図4に示す。逆浸透膜5の損傷率は染色膜の少なくとも透過側の検査領域300と、検査領域内に含まれる染色領域301の染色比率から特定可能である。染色膜の少なくとも透過側の検査領域内に含まれる染色領域の判定方法については特に制限されるものではないが、例えば、染色膜の少なくとも透過側を画像化手段によって画像化し、染色膜の少なくとも透過側画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から、逆浸透膜の損傷率を特定する。さらに、染色比率についても特に制限されるものではないが、例えば、染色膜の少なくとも透過側画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の、総面積と総画素数のいずれかの比率とし、下記の判定1と判定2のいずれかにより逆浸透膜の損傷率を特定することが好ましい。
(判定1)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総面積[mm]/検査領域の総面積[mm])×100
(判定2)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
【0044】
本画像化手段を用いた逆浸透膜の損傷検査方法により、極めて簡便に、かつ迅速に逆浸透膜の膜面に生じた物理的損傷の膜面損傷率を高い精度で特定し、水処理プラントにおける物理的損傷の発生リスクを定量的に把握可能である。逆浸透膜染色により染色された逆浸透膜供給側の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から特定可能だが、水処理プラントにおいて使用された逆浸透膜など、逆浸透膜供給側にスケールやファウラントが付着していると供給側付着物自体が染色され、また、酸化性物質との接触により逆浸透膜の基本性能を発現する機能層の主成分であるポリアミドが酸化劣化していると、機能層全体が染色されてしまい、膜面の損傷部と非損傷部を、染色領域と非染色領域として判別することが困難となるため、逆浸透膜透過側の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の染色比率から特定することが好ましい。
【0045】
また、標準となる使用前の逆浸透膜Bと検査対象である使用後の逆浸透膜Aを用い、使用後の検査対象である逆浸透膜Aの平均膜損傷速度を下記の判定3により特定可能である。
(判定3)
逆浸透膜Aの平均膜損傷速度[%/日]=(逆浸透膜Aの損傷率[%]-逆浸透膜Bの損傷率[%])/逆浸透膜Aの通水期間[日]
【0046】
検査対象である逆浸透膜Aと標準の逆浸透膜Bについては、例えば、2本の逆浸透膜エレメントの内、1本を水処理プラントにおいて通水使用し、通水使用後の逆浸透膜エレメントから逆浸透膜Aを取り出し、もう一方の通水使用前の逆浸透膜エレメントから逆浸透膜Bを取り出す。水処理プラントにおいて逆浸透膜を使用する際、使用前の逆浸透膜を標準の逆浸透膜Bとし、一定期間使用後の逆浸透膜を検査対象とする逆浸透膜Aとして、本損傷検査方法により逆浸透膜Aの損傷率と標準の逆浸透膜Bの損傷率を特定することで、標準の逆浸透膜Bに対する検査対象である逆浸透膜Aの平均膜損傷速度が特定できる。これにより、水処理プラントを一定期間運転中の物理的損傷の発生リスクを把握し、必要に応じた前処理改善などの対応策を講じることができ、さらに、各水処理プラントにおける平均膜損傷速度を比較することで、物理的損傷の発生リスクを水処理プラント同士で比較できる。
【0047】
ここで、画像化手段については特に制限されるものではないが、例えば、カメラやCSI方式スキャナ、CCD方式スキャナなどの撮影機器によりフルカラーで画像化する。特にCCD方式スキャナにより撮影することで、カメラ撮影時の手振れの影響を受けにくく、またCSI方式スキャナ撮影時より被写界深度が深く逆浸透膜の表面の凹凸の影響を受けにくいだけでなく、モアレも生じにくく、画像内のコントラストのばらつきが少なく、鮮明な画像が撮影できるため好ましい。
【0048】
また、カメラやCSI方式スキャナ、CCD方式スキャナなどの撮影機器により画像化する際の画質や保存形式の画像化条件については特に制限されるものではない。画質については、より高画素数に設定することで染色膜の染色領域と非染色領域の境界をより高精度に決定できるため、染色膜画像の縦の画素数×横の画素数を200dpi(dots per inchの略)×200dpi(あるいは200ppi(pixel per inchの略)×200ppi)以上、好ましくは400dpi×400dpi(あるいは400ppi×400ppi)以上、より好ましくは600dpi×600dpi(あるいは600ppi×600ppi)以上に設定して画像化するのが効果的である。一方で、画質を過剰に高画素数に設定すると、逆浸透膜の表面の凹凸模様が撮影されてしまい、染色膜の染色領域と逆浸透膜の表面の凹凸模様を判別するのが困難になる恐れがあるため、染色膜画像の縦の画素数×横の画素数を1,000dpi×1,000dpi(あるいは1,000ppi×1,000ppi)以下に設定して画像化するのが好ましい。
【0049】
染色膜画像ファイルの保存形式については特に制限されるものではないが、例えば、GIF形式(拡張子=.gifなど)、JPEG形式(拡張子=.jpg/.jpeg/.jpe/.jfifなど)、PNG形式(拡張子=.pngなど)、BMPまたはDIB形式(拡張子=.bmp/.dib/.rleなど)、TIFF形式(拡張子=.tif/.tiff/.nskなど)、その他形式(拡張子=.ico/.ai/.art/.cam/.cdr/.cgm/.cmp/.dpx/.fal/.q0/.fpx/.j6i/.mac/.mag/.maki/.mng/.pcd/.pct/.pic/.pict/.pcx/.pmp/.pnm/.psd/.ras/.sj1/.tga/.wmf/.wpg/.xbm/.xpmなど)のいずれかの形式で保存すればよい。保存形式は、高画質・高解像度保持性と汎用性の観点からJPEG形式、PNG形式、BMP形式、TIFF形式が好ましく、中でも高画質・高解像度保持性と汎用性に優れたJPEG形式がより好ましい。
【0050】
染色膜画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の総面積の比率の計算については特に制限されるものではないが、例えば、円形の染色膜を画像化手段によって画像化した染色膜画像において、逆浸透膜染色により染色剤を含む被処理水を透過させた範囲を検査領域とし、検査領域内に含まれる各染色領域を楕円と仮定して染色領域の長径α[mm]と短径β[mm]を測定し、染色領域の面積S[mm]=π(円周率)×α×βを計算し、染色領域の面積S[mm]の総和を検査領域内に含まれる染色領域の総面積[mm]とする。さらに、検査領域の面積S[mm]=π(円周率)×{検査領域の半径R[mm]}を計算して、検査領域の面積S[mm]の総和を検査領域の総面積[mm]とし、判定1に基づいて逆浸透膜の損傷率を特定する。
【0051】
また、染色膜画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の総画素数の比率の計算については特に制限されるものではないが、例えば、円形の染色膜を画像化手段によって画像化した染色膜画像において、逆浸透膜染色により染色剤を含む被処理水を透過させた範囲を検査領域とし、検査領域の総画素数[pixel]の内、逆浸透膜染色により着色された検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]を計測し、判定2に基づいて逆浸透膜の損傷率を特定する。
【0052】
以上のように、染色膜画像の検査領域と、検査領域内に含まれる染色領域の、総面積と総画素数のいずれかの比率とし、判定1と判定2のいずれかにより逆浸透膜の損傷率を特定することで、極めて簡便に、かつ迅速に、水処理プラントにおける物理的損傷の発生リスクを把握できるため好ましい。
【0053】
また、染色膜画像の検査領域内に含まれる染色領域と非染色領域を判別する際、フルカラーの染色膜画像を、0~256階調の光の強度で表現したグレースケール(好ましくは8bitグレースケール)の画像に変換し、二値化処理を予め施しておくことが好ましく、染色膜画像の二値化処理により、検査領域内に含まれる染色領域を黒(白黒反転した場合は白)、非染色領域を白(白黒反転した場合は黒)で表示することで、染色膜画像の検査領域内に含まれる染色領域と非染色領域を容易に判別可能である。第1実施形態または第2実施形態の逆浸透膜の損傷検査方法における逆浸透膜染色後の染色膜透過側画像(図4)を二値化処理し、検査領域内に含まれる染色領域を黒、非染色領域を白で示す二値化処理画像を図5に示す。二値化処理の閾値については、0~256階調の光の強度の内いずれか1点に設定するが、染色膜画像の検査領域内に含まれる最小の染色領域について、過不足を最小としつつ染色領域と判別される0~256階調の光の強度の内いずれか1点に設定することで、染色膜画像の検査領域内に含まれる染色領域と非染色領域を高精度に判別可能である。
【0054】
例えば、逆浸透膜自体の色が白色である染色膜を、CCD方式スキャナにて、縦の画素数×横の画素数を600dpi×600dpiに設定してフルカラーで画像化し、JPEG形式で保存した染色膜画像について、8bitグレースケールの画像に変換し、0~256階調の内、染色領域が256、非染色領域が0と判別する際、二値化処理の閾値を247に設定することで、染色膜画像の検査領域内に含まれる染色領域と非染色領域を高精度に判別可能である。また、例えば、逆浸透膜自体の色が橙色である染色膜を、CCD方式スキャナにて、縦の画素数×横の画素数を600dpi×600dpiに設定してフルカラーで画像化し、JPEG形式で保存した染色膜画像について、8bitグレースケールの画像に変換し、0~256階調の内、染色領域が256、非染色領域が0と判別する際、二値化処理の閾値を238に設定することで、染色膜画像の検査領域内に含まれる染色領域と非染色領域を高精度に判別可能である。
【0055】
本発明を適用可能な、逆浸透膜の素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができる。また、その膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部またはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。
【0056】
また、逆浸透膜は一般的に、逆浸透膜の膜形態に合わせて適切な形態のエレメントとして使用する。本発明の逆浸透膜としては、中空糸膜,管状膜,平膜のいずれでもよく、エレメントとしては、逆浸透膜の両側に実質的な液室を有し、逆浸透膜の一方の表面から他方の表面に液体を加圧透過させることができるものであれば、特に制限されるものではない。平膜の場合は、枠体で支持した複合逆浸透膜を複数枚積層する構造のプレート&フレーム型や、スパイラル型と呼ばれるタイプが一般的であり、これらのエレメントを矩形や円筒状の筐体(圧力容器など)に納めて用いる。また、中空糸膜、管状膜の場合は、複数本の逆浸透膜を筐体内に配置するとともにその端部をポッティングして液室を形成し、エレメントを構成する。そして、液体分離装置としてこのようなエレメントを単体でも複数個を直列または並列に接続して使用する。これらのエレメント形状の中では、スパイラル型が最も代表的である。これは、平膜上の分離膜を被処理水流路材や透過水流路材、さらに必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に集水管の周囲に巻囲する。被処理水流路材には、ネット状やメッシュ状の格子状流路材、溝付シート、波形シート等が使用できる。透過水流路材には、ネット状やメッシュ状の格子状流路材、溝付シート、波形シート等が使用できる。いずれも、分離膜と独立したネットやシートでも構わないし、接着や融着するなどして一体化したものでも差し支えない。
【0057】
最も一般的なスパイラル型逆浸透膜エレメントの部分分解斜視図を図6に示す。このスパイラル型逆浸透膜エレメント501は、一般的に、集水孔502を有する集水管503の周りに、逆浸透膜504と透過水流路材505と被処理水流路材506とを含む逆浸透膜ユニット507がスパイラル状に巻囲されており、その逆浸透膜ユニット507の外側に外装体508が形成されて流体分離素子509が構成されている。この流体分離素子509の端面が露出され、その少なくとも一方の端部に、流体分離素子509がテレスコープ状に変形することを防止するため、テレスコープ防止板510が装着されている。
【0058】
被処理水2はテレスコープ防止板510の被処理水流路512を通って逆浸透膜ユニット507に供給され、膜分離処理されて透過水8と濃縮水7とに分離され、透過水8として集水管503に集められる。
【0059】
ここで、各種水処理プラントにおいて使用されたスパイラル型逆浸透膜エレメント501について本発明の膜損傷検査方法を実施する際、スパイラル型逆浸透膜エレメント501を解体し、スパイラル型逆浸透膜エレメント501を構成する逆浸透膜ユニット507の少なくとも1つについて、その逆浸透膜ユニット507を構成する逆浸透膜504における被処理水分離機能を有する部分から損傷検査対象とする逆浸透膜5をサンプリングする。
【0060】
サンプリング位置については特に制限されるものではないが、集水管503の長手方向に、2ヵ所以上の異なる位置から損傷検査対象とする逆浸透膜5をサンプリングして本発明の膜損傷検査方法を実施することで、スパイラル型逆浸透膜エレメント501の内部における逆浸透膜5の物理的損傷の分布や、損傷率あるいは平均膜損傷速度の分布を把握することが可能である。さらに、各種水処理プラントにおいて複数本、直列あるいは並列に装填して使用されたスパイラル型逆浸透膜エレメント501についても同様に、2本以上の異なるスパイラル型逆浸透膜エレメント501から損傷検査対象とする逆浸透膜5をサンプリングして本発明の膜損傷検査方法を実施することで、各種水処理プラントの装填位置におけるスパイラル型逆浸透膜エレメント501の物理的損傷の分布や、損傷率あるいは平均膜損傷速度の分布を把握することが可能である。
【0061】
また、逆浸透膜の物理的損傷は、逆浸透膜供給側の表面に接する被処理水流路材、あるいは逆浸透膜の被処理水と共に供給されたファウラントやスケール成分などの異物との接触により生じる。例えば、逆浸透膜供給側の被処理水流路材として最も一般的な格子状流路材との接触による物理的損傷は、被処理水の供給圧力上昇により格子状流路材が供給側膜面に押し付けられたり、あるいは供給側膜面における被処理水の線速度上昇により格子状流路材が振動したり、ずれたりすることで生じ、サイズが一定で格子状のパターン(規則性のある模様)を有することを特徴とする。一方で、逆浸透膜の被処理水と共に供給されたファウラントやスケール成分などの異物との接触による物理的損傷は、各種水処理プラントでの通常運転時に被処理水の前処理により除去するファウラントやスケール成分などの異物が、前処理性能の低下などで残留したまま逆浸透膜へ供給されることで生じ、ランダムなパターン(規則性のない模様)を有することを特徴とする。即ち、逆浸透膜の膜面の物理的損傷の有無および物理的損傷の程度の少なくとも一方を調査した際に、染色膜の染色領域のパターンやサイズも調査することで、逆浸透膜の損傷要因を特定可能であり、損傷要因への対応策を至急講じることが可能となる。
【0062】
また、逆浸透膜染色により染色された逆浸透膜供給側の染色領域のパターンやサイズから、逆浸透膜の損傷要因を特定することも可能だが、水処理プラントにおいて使用された逆浸透膜など、逆浸透膜供給側にスケールやファウラントが付着していると供給側付着物自体が染色され、また、酸化性物質との接触により逆浸透膜の基本性能を発現する機能層の主成分であるポリアミドが酸化劣化していると、機能層全体が染色されてしまい、染色領域のパターンやサイズの判別が困難となるため、逆浸透膜透過側の染色領域のパターンやサイズから、逆浸透膜の損傷要因を特定することが好ましい。
【0063】
本発明において、逆浸透膜染色により染色された染色膜の透過側と原水側の染色領域の比率から、損傷要因を物理的損傷と化学的損傷に分類するのが好ましい。
【0064】
逆浸透膜染色において被処理水に添加する染色剤については特に制限されるものではないが、例えば、染料や顔料を被処理水に添加する。添加する染料についても特に制限されるものではないが、例えば、紫色に染まるクリスタルバイオレット、ゲンチャナバイオレット、ピオクタニンブルー、メチルバイオレットなどのトリフェニルメタン系塩基性色素や、赤紫色に染まるローダミンB、黒色に染まる塩基性ブラック、緑色に染まるマラカイトグリン、青色に染まるメチレンブルー、赤茶色に染まるビスマークブロンBなどが挙げられる。また、顔料についても特に制限されるものではないが、無機顔料や有機顔料などが挙げられる。無機顔料についても特に制限されるものではないが、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉などを含む白色顔料、鉛丹、酸化鉄赤などを含む、赤色顔料、黄鉛、亜鉛黄などを含む黄色顔料、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、YInMnブルーなどを含む青色顔料、カーボンブラックなどを含む黒色顔料などが挙げられる。有機顔料についても特に制限されるものではないが、例えば、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、インジゴイド、ジオキサジン、フタロシアニンなどの多環顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合ジスアゾ顔料などのアゾ顔料、レーキ顔料、蛍光顔料などが挙げられる。
【0065】
逆浸透膜染色において被処理水に染色剤を1種類添加することで、物理的損傷部が存在する場合のみ逆浸透膜透過側が染色されるため、逆浸透膜透過側の染色領域の有無から逆浸透膜の物理的損傷の有無または程度を検査できるが、分子量や分子半径など、分子サイズが異なる染色剤を2種類以上、被処理水に添加し、各染色剤による逆浸透膜透過側の染色有無を検査することで、物理的損傷部の最大サイズや最小サイズを判定でき、あるいはサイズ分布を把握できるため好ましい。
【0066】
また、逆浸透膜染色において被処理水に染色剤を2種類以上添加した際、色が混合してしまい、各染色剤による逆浸透膜透過側の染色領域の有無を検査できない場合は、色の異なる染色剤を用いるか、あるいは分子サイズの大きい染色剤から順に1種類添加するごとに逆浸透膜透過側の染色領域の有無を検査することで、各染色剤による逆浸透膜透過側の染色領域の有無の検査が容易になるため好ましい。
【0067】
また、逆浸透膜染色において被処理水に添加する染色剤の分子量については特に制限されるものではないが、分子量が小さすぎると、逆浸透膜の非損傷部の細孔から染色剤が透過してしまい、染色剤による逆浸透膜透過側の染色領域の有無から逆浸透膜の物理的損傷の有無および/または程度を適切に検査できないため、染色剤の分子量は300以上であることが好ましい。
【実施例
【0068】
本発明を実施するための形態に基づく、逆浸透膜の損傷検査方法について、損傷検査を実施した結果を説明する。
【0069】
<実施例1>
逆浸透膜エレメントを使用する水処理プラントαで180日間の通水を行った逆浸透膜エレメントを用いた。
純水に500mg/Lの染色剤(メチルバイオレット)を添加した被処理水を準備し、被処理水タンクに貯留した。被処理水を、被処理水供給ラインに備える供給ポンプで昇圧させた後、損傷検査対象とする膜自体の色が白色の逆浸透膜の円形平膜(直径75mm)を取り付けた逆浸透膜評価セルに、供給圧力0.4MPa、濃縮水流量3.5L/minで15分間供給し、濃縮水と透過水に分離した。その後、被処理水を排水し、被処理水タンクに純水を貯留し、逆浸透膜評価セルに、供給圧力0.15MPa、濃縮水流量3.5L/minで5分間供給し、膜表面に残留した染色剤を含む被処理水が混ざることで着色した濃縮水の色が、純水と同じ色になるまで逆浸透膜の膜面を洗浄した。
【0070】
染色剤で染色した逆浸透膜の透過側について、CCD方式スキャナにて、縦の画素数×横の画素数を600dpi×600dpiに設定してフルカラーで画像化し、JPEG形式で保存した染色膜画像について、8bitグレースケールの画像に変換し、0~256階調の内、染色領域が256、非染色領域が0と判別されるよう白黒反転し、二値化処理の閾値を247に設定して二値化した。二値化処理後の染色膜画像において、逆浸透膜染色により染色剤を含む被処理水を透過させた範囲を検査領域とし、検査領域の総画素数[pixel]の内、逆浸透膜染色により着色された検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]を計測し、下記の判定2により、逆浸透膜の損傷率を10.9%と特定した。
(判定2)
損傷率[%]=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(184,803/1,693,606)×100
=10.9
【0071】
<実施例2>
実施例1で検査対象とした、逆浸透膜エレメントを使用する水処理プラントαでの通水期間が180日の逆浸透膜Aの損傷率(=10.9%)を特定した後、水処理プラントでの通水期間が0日の未使用の逆浸透膜Zを標準の逆浸透膜として損傷検査を同様に実施し、下記の通り、標準の逆浸透膜Zの損傷率を0.0436%と特定した。
(判定2)
逆浸透膜Zの損傷率[%]
=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(739/1,693,606)×100
=0.0436
また、下記の通り、標準の逆浸透膜Zに対する、検査対象である逆浸透膜Aの平均膜損傷速度を0.0603%/日と特定した。
(判定3)
逆浸透膜Zに対する逆浸透膜Aの平均膜損傷速度[%/日]
=(逆浸透膜Aの損傷率[%]-逆浸透膜Zの損傷率[%])/逆浸透膜Aの通水期間[日]
=(10.9-0.0436)/180
=0.0603
【0072】
<実施例3>
実施例2に加えて、逆浸透膜エレメントを使用する水処理プラントβでの通水期間が30日の逆浸透膜Bの損傷検査を同様に実施し、下記の通り、逆浸透膜Bの損傷率を7.20%、さらに標準の逆浸透膜Zに対する、検査対象である逆浸透膜Bの平均膜損傷速度を0.239%/日と特定した。
そして、標準の逆浸透膜Zに対する、検査対象である逆浸透膜Aおよび逆浸透膜Bの平均膜損傷速度を比較して、水処理プラントβの方が水処理プラントαより物理的損傷の発生リスクが3.96倍(=0.239[%/日]/0.0603[%/日])高いと判定した。
(判定2)
逆浸透膜Bの損傷率[%]
=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(121,991/1,693,606)×100
=7.20
(判定3)
逆浸透膜Zに対する逆浸透膜Bの平均膜損傷速度[%/日]
=(逆浸透膜Bの損傷率[%]-逆浸透膜Zの損傷率[%])/逆浸透膜Bの通水期間[日]
=(7.20-0.0436)/30
=0.239
【0073】
<実施例4>
逆浸透膜エレメントを使用する水処理プラントγでの通水期間が180日間の逆浸透膜Cおよび逆浸透膜Dを準備した。
さらに逆浸透膜DをEDTA1.0wt%水溶液に1晩浸漬した後で、実施例1に記載の方法で染色した。
その後、逆浸透膜Cおよび逆浸透膜Dの損傷率を実施例1と同様の方法で算出した。逆浸透膜Cの損傷率は1.20%であり、逆浸透膜Dの損傷率は3.61%であり、これらを比較した結果、逆浸透膜Dの損傷率の方が大きいことから、水処理プラントγでの逆浸透膜の損傷要因にはファウリングが含まれると特定した。
(判定2)
逆浸透膜Cの損傷率[%]
=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(17,167/1,431,420)×100
=1.20
(判定2)
逆浸透膜Dの損傷率[%]
=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(51,714/1,431,420)×100
=3.61
【0074】
<実施例5>
実施例4で検査対象とした逆浸透膜Cについて、逆浸透膜の供給側を、実施例1の逆浸透膜透過側と同様にCCD方式スキャナにて画像化し、検査することで供給側の損傷率を特定した。透過側の損傷率は1.20%であり、供給側の損傷率は22.4%であった。これらの比較から、供給側の損傷率の方が大きいことから、水処理プラントγでの逆浸透膜の損傷要因には逆浸透膜の物理劣化だけでなく、ファウリングあるいは化学劣化が含まれると特定した。
(判定2)
逆浸透膜Cの透過側の損傷率[%]
=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(17,167/1,431,420)×100
=1.20
(判定2)
逆浸透膜Cの供給側の損傷率[%]
=(検査領域内に含まれる染色領域の総画素数[pixel]/検査領域の総画素数[pixel])×100
=(320,018/1,431,420)×100
=22.4
【0075】
<比較例1>
実施例4,5で検査対象とした逆浸透膜Cの供給側のみについて、染色部を確認したところ、膜面付着物および逆浸透膜の酸化劣化発生部が染色され、物理的損傷部との境界の判別が困難であり、逆浸透膜の損傷率を特定できなかった。
【0076】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は2021年3月26日付で出願された日本特許出願(特願2021-052866)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0077】
1:被処理水タンク
2:被処理水
3:被処理水供給ライン
4:加圧供給手段
5:逆浸透膜
6:逆浸透膜評価セル
7:濃縮水
8:透過水
9:濃縮水ライン
10:透過水ライン
11:圧力計
12:濃縮水流量計
13:被処理水混入流
14:逆浸透膜透過流
15:樹脂フィルム
22:洗浄用水
25:染色後の逆浸透膜
101:濃縮水循環バルブ
102:透過水循環バルブ
201:濃縮水排水バルブ
202:透過水排水バルブ
300:検査領域
301:染色領域
302:非染色領域
501:スパイラル型逆浸透膜エレメント
502:集水孔
503:集水管
504:逆浸透膜
505:透過水流路材
506:被処理水流路材
507:逆浸透膜ユニット
508:外装体
509:流体分離素子
510:テレスコープ防止板
511:被処理水
512:被処理水流路
【要約】
本発明は、極めて簡便に、かつ迅速に、逆浸透膜の膜面に生じた物理的損傷の有無および/または程度を判定し、膜面損傷率と損傷要因を高い精度で特定可能な、逆浸透膜の膜損傷検査方法を提供する。本発明は、染色剤を含む被処理水を逆浸透膜に供給し染色した染色膜について、染色膜の少なくとも透過側の染色領域の有無から、逆浸透膜の物理的損傷の有無および/または程度を検査する逆浸透膜の損傷検査方法を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6