(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】転がり軸受、車両、機械、プレス成形品の製造方法、転がり軸受の製造方法、車両の製造方法及び機械の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/16 20060101AFI20220913BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20220913BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20220913BHJP
F16C 19/30 20060101ALI20220913BHJP
F16C 33/54 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B21D28/16
B21D28/00 B
B21D28/02 Z
F16C19/30
F16C33/54 A
F16C33/54 Z
(21)【出願番号】P 2022535506
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2022002646
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021010178
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠司
(72)【発明者】
【氏名】関口 学
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0291160(US,A1)
【文献】特開2007-216293(JP,A)
【文献】特開2020-193652(JP,A)
【文献】特開2006-247738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/16
B21D 28/00
B21D 28/02
F16C 19/30
F16C 33/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属素材をパンチングして第1ピースを得る工程であり、前記第1ピースは、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面は、前記パンチングにおいて前記第1面の縁部に形成されたダレを有する、前記工程と、
第1ダイと第2ダイとの間に前記第1ピースを挟んだ状態で
かつ前記第1ダイの押圧面が前記第1ピースの前記ダレを拘束した状態で、
軸方向に沿った側面が形成されるように前記第1ピースの前記第2面の縁部を
前記軸方向に潰して第2ピースを得る工程であり、前記第2ピースは、前記ダレが形成された前記第1面を有する第1部分と、前記縁部が窪んだ前記第2面を有する第2部分と、を有する、前記工程と、
プレス加工を用いて前記第2ピースをトリミングする工程であり、前記第1部分における前記縁部の少なくとも一部を除去することを含む、工程と、
を備える、プレス成形品の製造方法。
【請求項2】
前記トリミングは、前記第1面における前記ダレが形成された領域の一部が残るように、前記第2ピースにおける前記縁部の少なくとも一部を除去すること、を有する、
請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1ダイは、前記第1ピースの前記第1面に面して配され、
前記第2ダイは、前記第1ピースの前記第2面に面して配され、
前記第1ダイは、前記第1面に面する
前記押圧面を有し、
前記押圧面は、前記第1ピースの前記第1面の縁部に形成された前記ダレに面する湾曲面を有する、
請求項1又は2に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項4】
金属素材をパンチングして第1ピースを得る工程であり、前記第1ピースは、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面は、前記パンチングにおいて前記第1面の縁部に形成されたダレを有する、前記工程と、
第1ダイと第2ダイとの間に前記第1ピースを挟んだ状態でかつ前記第1ダイが前記第1ピースの前記ダレを拘束した状態で、前記第1ピースの前記第2面の縁部を潰して第2ピースを得る工程であり、前記第2ピースは、前記ダレが形成された前記第1面を有する第1部分と、前記縁部が窪んだ前記第2面を有する第2部分と、を有する、前記工程と、
プレス加工を用いて前記第2ピースをトリミングする工程であり、前記第1部分における前記縁部の少なくとも一部を除去することを含む、工程と、
を備え、
前記第1部分における前記縁部の少なくとも一部を除去するための前記トリミングの方向は、前記第2面の縁部を潰す方向と同じである、
プレス成形品の製造方法。
【請求項5】
前記トリミングは、前記第1面における前記ダレが形成された領域の一部が残るように、前記第2ピースにおける前記縁部の少なくとも一部を除去すること、を有する、
請求項4に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項6】
前記第1ダイは、前記第1ピースの前記第1面に面して配され、
前記第2ダイは、前記第1ピースの前記第2面に面して配され、
前記第1ダイは、前記第1面に面する押圧面を有し、
前記押圧面は、前記第1ピースの前記第1面の縁部に形成された前記ダレに面する湾曲面を有する、
請求項4又は5に記載のプレス成形品の製造方法。
【請求項7】
プレス成形品と、複数個の転動体と、を備えた転がり軸受の製造方法であって、
請求項1~
6のうちのいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法により、前記プレス成形品を製造する工程と、
前記製造されたプレス成形品と、前記複数個の転動体とを用いて転がり軸受を組み立てる工程と、
を備える、転がり軸受の製造方法。
【請求項8】
転がり軸受を備えた車両の製造方法であって、
請求項
7に記載の転がり軸受の製造方法により、前記転がり軸受を製造する工程を備える、
車両の製造方法。
【請求項9】
転がり軸受を備えた機械の製造方法であって、
請求項
7に記載の転がり軸受の製造方法により、前記転がり軸受を製造する工程を備える、
機械の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
6のうちのいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法により製造されたプレス成形品と、複数個の転動体と、を備えた転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形品、転がり軸受、車両、機械、プレス成形品の製造方法、転がり軸受の製造方法、車両の製造方法及び機械の製造方法に関する。
本願は、2021年1月26日に出願された特願2021-010178号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
自動車用変速機や冷凍機用コンプレッサなどの各種回転機械装置の回転支持部分には、転がり軸受の一種であるスラストころ軸受を組み込んで、回転軸などの回転部材に加わるスラスト荷重を支承することが行われている。
【0003】
図16は、特開平11-344029号公報(特許文献1)に記載された従来構造のスラストころ軸受の1例を示している。スラストころ軸受100は、1対のスラストレース101a、101bと、複数本のころ102と、保持器103とを備える。
【0004】
1対のスラストレース101a、101bのそれぞれは、全体が円環平板形状を有しており、軸方向に関して対向する一方の面に、スラスト軌道面104a、104bを有する。複数本のころ102は、略円柱形状を有しており、それぞれの中心軸を放射方向に向けた状態で、1対のスラスト軌道面104a、104b同士の間に配置されている。保持器103は、円周方向に関して等間隔にポケット105を有しており、それぞれのポケット105の内側に、ころ102を転動自在に保持している。
【0005】
図17に示すように、従来構造のスラストころ軸受100を構成するスラストレース101a(101b)は、略矩形状の断面形状を有している。スラストレース101a(101b)は、軸方向に関して一方側(
図17の上側)の面のうち、径方向中間部に平坦面状のスラスト軌道面104a(104b)を有しており、径方向両側の端部に面取り部(R面取り)106を有している。R面取りを有する従来構造のスラストレース101a(101b)においては、スラストレース101a(101b)の径方向幅L
0に対するスラスト軌道面104a(104b)の径方向幅Lxの割合を大きくできる。したがって、スラストころ軸受100の小型化を図るなどの面で有利になる。なお、
図17に示すスラストレース101a(101b)は、軸方向に関して他方側(
図17の下側)の面のうちの径方向両側の端部にも面取り部106を有している。
【0006】
従来構造のスラストレースは、
図18に示すような工程を経て造られている。
先ず、プレスによる打ち抜き工程により、金属板から円環平板状のブランクを打ち抜く。次いで、研削工程(平面研削)により、ブランクの表面を平滑にし、旋削工程により、ブランクの各部の寸法を調整する。具体的には、ブランクの打ち抜き方向前方側の面の内周縁部及び外周縁部に生じたダレ(shear drop)、並びに、ブランクの打ち抜き方向後方側の面の内周縁部及び外周縁部に生じたバリなどを除去し、ブランクの4つの角部に面取りを形成する。次いで、熱処理を施した後、研削工程により、熱処理によって生じるうねりなどの変形を取り除く。そして、バレル仕上工程を経て、最後に検査及び包装工程を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来構造のスラストレースは、プレス成形品の一種であり、軸方向一方側の面(軸面)を、径方向中間部に配置されたスラスト軌道面と、径方向両側の端部に配置された面取り部とから構成している。このため、スラストころ軸受の運転状況によっては、スラスト軌道面の径方向両側の端部に作用する接触面圧(エッジ応力)が過大になり、軸受寿命の低下を招く可能性がある。
【0009】
また、上述した従来より知られたスラストレースの製造方法は、打ち抜き加工によって生じたダレなどの変形を除去するために、熱処理工程前に、研削加工などの削りカスの発生を伴う除去加工(後処理)を行う必要がある。このため、削り代の分だけ、製品であるスラストレースよりも板厚の大きい金属板(素材)を使用する必要があり、スラストレースの歩留まりが悪くなる。また、加工工数が増え、スラストレースの加工コストが嵩む原因になる。
【0010】
そこで、本発明者らは、打ち抜き加工によって生じるダレを、研削加工などの除去加工以外の方法により小さくする方法について研究を重ね、プレス加工(せん断加工)を利用した次の第1の方法~第3の方法について検討を行った。
【0011】
第1の方法は、打ち抜き加工時に使用するパンチとダイとの間のクリアランスを小さくする方法である。第1の方法によれば、打ち抜き加工によって生じるダレを小さく抑えることができる。ただし、第1の方法は、大きなプレス荷重が必要になるため、金型の寿命が短くなるといった問題、及び、ブランクに二次せん断面が発生するといった問題を生じる。
【0012】
第2の方法は、打ち抜き加工によって生じたブランクの切り口(内周面及び外周面)を、シェービング加工により複数回削り取る方法である。第2の方法によれば、打ち抜き加工によって生じたダレを小さくすることができる。ただし、第2の方法は、工程数が多くなるといった問題、及び、糸状の削りカスが発生し、製品であるスラストレースに打痕が付きやすくなるといった問題を生じる。
【0013】
第3の方法は、ファインブランキング又はセミファインブランキングにより、材料の延性を向上させた状態で打ち抜きする方法である。第3の方法によれば、せん断面を良好にすることはできるが、打ち抜きによって生じるダレを小さく抑える効果は小さい。また、第3の方法は、ブランクに湾曲が発生しやすくなるといった問題、及び、専用の設備が必要になるといった問題を生じる。
【0014】
せん断加工を利用した第1の方法及び第2の方法はいずれも、打ち抜き加工によって生じるダレを小さくすることができるが、代わりに別の問題を生じることから、採用することは難しい。また、第3の方法によっては、打ち抜き加工によって生じるダレを十分に小さくすることはできない。
【0015】
本発明の態様は、軸面に荷重が作用した場合に、軸面の径方向両側の端部に作用する接触面圧が過大になることを抑制できる、プレス成形品を提供することを目的とする。また、本発明の態様は、打ち抜き加工によって生じるダレを、研削加工などの削りカスの発生を伴う除去加工を行うことなく小さくできる、プレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様において、プレス成形品の製造方法は、金属素材をパンチングして第1ピースを得る工程であり、前記第1ピースは、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面は、前記パンチングにおいて前記第1面の縁部に形成されたダレを有する、前記工程と;第1ダイと第2ダイとの間に前記第1ピースを挟んだ状態で、前記第1ピースの前記第2面の縁部を潰して第2ピースを得る工程であり、前記第2ピースは、前記ダレが形成された前記第1面を有する第1部分と、前記縁部が窪んだ前記第2面を有する第2部分と、を有する、前記工程と;プレス加工を用いて前記第2ピースをトリミングする工程であり、前記第1部分における前記縁部の少なくとも一部を除去することを含む、工程と;を備える。
【0017】
本発明の一態様において、プレス成形品と、複数個の転動体と、を備えた転がり軸受の製造方法は、上記のプレス成形品の製造方法により、前記プレス成形品を製造する工程と;前記製造されたプレス成形品と、前記複数個の転動体とを用いて転がり軸受を組み立てる工程と;を備える。
【0018】
本発明の一態様において、転がり軸受を備えた車両の製造方法は、上記の転がり軸受の製造方法により、前記転がり軸受を製造する工程を備える。
【0019】
本発明の一態様において、転がり軸受を備えた機械の製造方法は、上記の転がり軸受の製造方法により、前記転がり軸受を製造する工程を備える。
【0020】
本発明の一態様において、転がり軸受は、上記のプレス成形品の製造方法により製造されたプレス成形品と、複数個の転動体と、を備える。
【0021】
本発明の一態様において、プレス成形品は、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する側面と、前記第1面と前記側面との角の近傍において、プレス加工の痕跡である、前記第1面の縁部に形成された第1ダレと、前記第2面と前記側面との角の近傍において、別のプレス加工の痕跡である、前記第2面の縁部に形成された第2ダレと、を備える。
【0022】
一例において、プレス成形品は、平板形状を有する。例えば、プレス成形品は、円環平板形状、又は円板形状を有する。他の例において、プレス成形品は、別の形状を有することができる。
【0023】
本発明の一態様において、プレス成形品は、軸方向一方側の第1面と、軸方向他方側の第2面と、を有し、前記第1面は、内周縁部に備えられた第1内周側ダレと、外周縁部に備えられた第1外周側ダレと、前記第1内周側ダレと前記第1外周側ダレとの間に備えられた、平坦面状の第1平坦部と、をそれぞれ有し、前記第2面は、内周縁部に備えられた第2内周側ダレと、外周縁部に備えられた第2外周側ダレと、前記第2内周側ダレと前記第2外周側ダレとの間に備えられた、平坦面状の第2平坦部と、をそれぞれ有する。
【0024】
本発明の一態様において、転がり軸受は、上記のプレス成形品と、複数個の転動体と、を備える。
【0025】
本発明の一態様において、車両は、上記のプレス成形品を備える。
【0026】
本発明の一態様において、機械は、上記のレス成形品を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様におけるプレス成形品によれば、軸方向面に荷重が作用した場合にも、軸方向面の径方向両側の端部に作用する接触面圧が過大になることを抑制できる。また、本発明の一態様におけるプレス成形品の製造方法によれば、打ち抜き加工によって生じるダレを、研削加工などの削りカスの発生を伴う除去加工を行うことなく小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1の(A)部は、第1実施形態にかかるスラストころ軸受の半部断面図であり、(B)部は、スラストころ軸受の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、スラストレースの製造工程を示す、フローチャートである。
【
図4】
図4は、スラストレースの製造工程のうち、打ち抜き工程を説明するために示す、断面模式図である。
【
図5】
図5は、スラストレースの製造工程のうち、打ち抜き工程で造られた第1中間素材を示す、断面模式図である。
【
図6】
図6は、スラストレースの製造工程のうち、潰し工程を説明するために示す、断面模式図である。
【
図8】
図8は、スラストレースの製造工程のうち、潰し程で造られた第2中間素材を示す、断面模式図である。
【
図9】
図9は、スラストレースの製造工程のうち、トリミング工程を説明するために示す、断面模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態にかかるスラストレースの製造工程のうち、プレスにより行う工程を示す、フローチャートである。
【
図11】
図11は、スラストレースの製造工程のうち、プレスにより行う工程を説明する図である。
【
図16】
図16は、従来構造の1例のスラストころ軸受を示す、断面図である。
【
図17】
図17は、従来構造の1例のスラストレースを示す、断面図である。
【
図18】
図18は、従来から知られたスラストレースの製造工程を示す、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態について、
図1~
図9を用いて説明する。
【0030】
〔スラストころ軸受の全体構成〕
本実施形態において、スラストころ軸受1は、転がり軸受の一種であり、斜板式コンプレッサや自動車用変速機などに組み込まれる。スラストころ軸受1は、
図1の(A)部及び(B)部に示すように、1対のスラストレース2a、2bと、複数本のころ3と、保持器4とを備える。なお、
図1(B)には、一方のスラストレース2bを省略して示している。ただし、回転軸などの回転部材にスラスト軌道面を直接形成する場合には、本発明のスラストころ軸受は、1枚のスラストレースと、複数本のころと、保持器とから構成することができる。
【0031】
1対のスラストレース2a、2bのそれぞれは、鉄系合金などの金属製で、全体が円環平板形状を有している。1対のスラストレース2a、2bは、同軸に配置されており、軸方向に関して互いに対向する一方の面(軸面)に、スラスト軌道面5a、5bを有する。本例では、1対のスラストレース2a、2bのそれぞれが、本発明のプレス成形品に相当する。
【0032】
複数本のころ3は、高炭素クロム軸受鋼などの金属製で、略円柱形状を有している。複数本のころ3は、それぞれの中心軸を放射方向に向けた状態で、1対のスラスト軌道面5a、5b同士の間に配置されている。なお、ころ3には、ニードルが含まれる。
【0033】
保持器4は、銅系合金などの金属製で、円周方向に関して等間隔にポケット6を有している。それぞれのポケット6の内側には、ころ3を転動自在に保持している。保持器4は、それぞれが断面U字形で全体が円輪状の1対の金属板4a、4bを組み合わせて構成されている。
【0034】
次に、スラストレース2a、2bの具体的な構造について説明する。ただし、本例のスラストころ軸受1においては、1対のスラストレース2a、2bは互いに同じ構成を有しているため、以下の説明は、一方のスラストレース2aのみを対象として行い、他方のスラストレース2bについての説明は省略する。
【0035】
〈スラストレースの構造説明〉
本例のスラストレース2aは、プレス成形品であり、
図2に示すように、略矩形状の断面形状を有している。スラストレース2aは、スラストレース2bと対向する軸方向一方側(
図2の上側)に、円輪状の第1面7を有し、軸方向他方側(
図2の下側)に、円輪状の第2面8を有する。なお、スラストレース2aの軸方向は、スラストレース2aの板厚方向と一致する。スラストレース2aは、第1面7と、第1面7の反対側の面である第2面8と、第1面7と第2面8とを接続する側面49A、49Bと、第1面7と側面49A、49Bとの角の近傍において、プレス加工の痕跡である、第1面7の縁部に形成された第1ダレ9、10と、第2面8と側面49A、49Bとの角の近傍において、別のプレス加工の痕跡である、第2面8の縁部に形成された第2ダレ12、13と、を備える。一例において、面49Aは、第1ダレ10につながったせん断面と、第2ダレ13につながった別のせん断面とを有する。また、面49Bは、第1ダレ9につながったせん断面と、第2ダレ12につながった別のせん断面とを有する。第1ダレ9、10は、第1のプレス加工で形成されたダレの一部が第2のプレス加工によってトリミングされた追加痕跡を含む。追加痕跡は、ダレ9、10の表面観察、側面49A、49Bの表面観察、対象物の断面の観察、対象物の組成分析等に基づき確認可能である。
【0036】
スラストレース2aの第1面7は、第1内周側ダレ9と、第1外周側ダレ10と、第1平坦部(非研削面)11とを含む。
【0037】
第1内周側ダレ9は、少なくとも一部が湾曲した母線形状(輪郭)を有しており、第1面7の内周縁部に備えられている。第1内周側ダレ9の母線形状(輪郭)は、径方向内側に向かうほど軸方向他方側に向かう方向に曲線状に傾斜している。ダレ9は、縁(角)に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ9の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。第1内周側ダレ9の母線形状は、前記
図17に示した従来構造のスラストレース101a(101b)の内周縁部に備えられた面取り部106に比べて、緩やかな傾斜を有しており、軸方向他方側への落ち込み量(変位量)が小さい。第1内周側ダレ9は、後述するように、プレスによる打ち抜き工程で形成された、第1内周側ダレ20の一部(径方向外側部分)である。
【0038】
一例において、スラストレース2aの径方向幅をL0とし、スラストレース2a軸方向幅をH0とし、第1内周側ダレ9の径方向幅をL1iとし、第1内周側ダレ9の軸方向幅をH1iとした場合に、L1i/L0は、0.03以上0.26以下、好ましくは0.035以上0.26以下である。また、H1i/H0は、0.0025以上0.005以下である。他の例において、L1i/L0及びH1i/H0は、上記とは異なる値に設定できる。
【0039】
第1外周側ダレ10は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有しており、第1面7の外周縁部に備えられている。第1外周側ダレ10の母線形状は、径方向外側に向かうほど軸方向他方側に向かう方向に曲線状に傾斜している。ダレ10は、縁(角)に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ10の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。第1外周側ダレ10の母線形状は、前記
図17に示した従来構造のスラストレース101a(101b)の外周縁部に備えられた面取り部106に比べて、緩やかな傾斜を有しており、軸方向他方側への落ち込み量が小さい。第1外周側ダレ10は、後述するように、プレスによる打ち抜き工程で形成された、第1外周側ダレ21の一部(径方向内側部分)である。
【0040】
一例において、第1外周側ダレ10の径方向幅をL1oとし、第1外周側ダレ10の軸方向幅をH1oとした場合に、L1o/L0は、0.03以上0.26以下、好ましくは0.035以上0.26以下である。また、H1o/H0は、0.0025以上0.005以下である。他の例において、L1o/L0及びH1o/H0は、上記とは異なる値に設定できる。
【0041】
第1平坦部11は、スラスト軌道面5aとして使用される面であり、第1面7の径方向中間部に備えられている。すなわち、第1平坦部11は、スラストころ軸受1の使用状態で、ころ3の円筒面状の外周面が転走(接触)する面である。第1平坦部11は、直線状の母線形状を有しており、平坦面状に構成されている。なお、第1平坦部11には、後述するように、研削加工(平面研削)が施されていないため、研削加工を施した場合のような完全な平坦面でなく、実質的な平坦面である。第1平坦部11は、後述するように、素材である金属板15の面の一部によって構成される。
【0042】
一例において、第1平坦部11(スラスト軌道面5a)の径方向幅をLxとした場合に、Lx/L0は、0.47以上0.93以下である。他の例において、Lx/L0は、上記とは異なる値に設定できる。
【0043】
スラストレース2aの第2面8は、第2内周側ダレ12と、第2外周側ダレ13と、第2平坦部14とを含む。
【0044】
第2内周側ダレ12は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有しており、第2面8の内周縁部に備えられている。第2内周側ダレ12の母線形状は、径方向内側に向かうほど軸方向一方側に向かう方向に曲線状に傾斜している。ダレ12は、縁(角)に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ12の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。第2内周側ダレ12の母線形状は、前記
図17に示した従来構造のスラストレース101a(101b)の内周縁部に備えられた面取り部106に比べて、緩やかな傾斜を有しており、軸方向一方側への落ち込み量が小さい。第2内周側ダレ12は、後述するように潰し工程で形成される。
【0045】
一例において、第2内周側ダレ12の径方向幅をL2iとし、第2内周側ダレ12の軸方向幅をH2iとした場合に、L2i/L0は、0.03以上0.26以下、好ましくは0.035以上0.26以下である。また、H2i/H0は、0.0025以上0.005以下である。他の例において、L2i/L0及びH2i/H0は、上記とは異なる値に設定できる。
【0046】
第2外周側ダレ13は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有しており、第2面8の外周縁部に備えられている。第2外周側ダレ13の母線形状は、径方向外側に向かうほど軸方向一方側に向かう方向に曲線状に傾斜している。ダレ13は、縁(角)に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ13の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。第2外周側ダレ13の母線形状は、前記
図17に示した従来構造のスラストレース101a(101b)の外周縁部に備えられた面取り部106に比べて、緩やかな傾斜を有しており、軸方向一方側への落ち込み量が小さい。第2外周側ダレ13は、後述するように潰し工程で形成される。
【0047】
本例では、第2外周側ダレ13の径方向幅をL2oとし、第2外周側ダレ13の軸方向幅をH2oとした場合に、L2o/L0は、0.03以上0.26以下、好ましくは0.035以上0.26以下である。また、H2o/H0は、0.0025以上0.005以下である。他の例において、L2o/L0及びH2o/H0は、上記とは異なる値に設定できる。
【0048】
第2平坦部14は、スラストレース2aを添設するバックアップ面に支承される面であり、第2面8の径方向中間部に備えられている。すなわち、第2平坦部14は、スラストころ軸受1の使用状態で、他の部材によって支承される被支承面である。第2平坦部14は、直線状の母線形状を有しており、平坦面状に構成されている。なお、第2平坦部14についても、後述するように、研削加工(平面研削)が施されていないため、研削加工を施した場合のような完全な平坦面でなく、実質的な平坦面である。第2平坦部14と、第1平坦部11(スラスト軌道面5a)とは、互いに平行である。第2平坦部14は、後述するように、素材である金属板15の軸方向面の一部によって構成される。
【0049】
一例において、第2平坦部14の径方向幅をLyとした場合に、Ly/Lxは0.6以上1.0以下である。また、Ly/L0は、0.47以上0.93以下である。他の例において、Ly/Lx及びLy/L0は、上記とは異なる値に設定できる。
【0050】
本例のスラストレース2aは、第1面7に備えられた第1平坦部11と、第2面8に備えられた第2平坦部14とのうち、第1平坦部11を、スラストころ軸受1の使用状態で、ころ3の円筒面状の外周面が転走するスラスト軌道面5aとし、第2平坦部14を被支承面としているが、本発明を実施する場合に、第1平坦部11を被支承面とし、第2平坦部14をスラスト軌道面5aとして使用することもできる。
【0051】
〈スラストレースの製造方法〉
次に、スラストレース2aの製造方法の1例について、
図3~
図9を参照して、工程順に説明する。
【0052】
本例では、
図3に示すように、打ち抜き工程、潰し工程、トリミング工程、熱処理工程、バレル仕上工程、検査及び包装工程の順に行い、素材である金属板15からスラストレース2aを製造する。本例の製造方法は、従来から知られたスラストレースの製造方法において、熱処理工程前に行われていた、研削加工などの削りカスの発生を伴う除去加工(後処理)は行わない。
【0053】
また、本例の製造方法は、打ち抜き工程、潰し工程及びトリミング工程のそれぞれで行うプレス加工を、トランスファー型を用いたトランスファー加工により行う。なお、打ち抜き工程については、歩留まりを考慮して、別のプレス加工機で行うこともできる。この場合には、千鳥配置状に板取りしてスクラップの発生を抑制することができる。このように、打ち抜き工程を別のプレス加工機により行う場合には、打ち抜き工程で得られる後述の第1中間素材(第1ピース)19は、トランスファーやロボット等により、潰し工程へと搬送する。
【0054】
《打ち抜き工程》
本例では、素材(初期材料)として、鉄系合金製の金属板(鋼板)15を使用する。具体的には、金属板15は、たとえばSPCC、SPCE材などの冷間圧延鋼板(みがき鋼板)、機械構造用炭素鋼製の板材、クロムモリブデン鋼製の板材であり、焼き入れが可能であり、所望の硬さや表面平滑性などの機械的性質を有している。金属板15は、一定の厚さを有しており、かつ、高い平滑性を有する。金属板15の表面粗さは、後に実施するバレル仕上加工によってスラスト軌道面5a(5b)として使用可能となるように、一例において、Rmax≦2μm、好ましくは、Rmax≦1.5μmとしている。他の例において、Rmaxは別の値に設定できる。
【0055】
本例では、
図4に示すように、金属板15を第1下型(下ダイ)16上に載置し、図示しないストリッパにより金属板15を第1下型16に対して押さえ付けた状態で、第1上型(打ち抜きパンチ、第1パンチ)18により金属板15を、第1下型16に備えられた円筒状の第1ダイ孔16aに押し込むにようにして円環状に打ち抜く。また、図示の例では、金属板15を、第1ダイ孔16aの内側に配置した第1ダイクッション16bにより下方から支持した状態で、金属板15を打ち抜く。第1パンチ18を用いて金属板15をパンチングする。これにより、金属板15から、円環平板形状を有する第1中間素材(第1ピース)19を得る。第1ピース19は、第1面(7)と、第1面(7)の反対側の面である第2面(8)と、を有し、第1面(7)は、打ち抜き(パンチング)において第1面(7)の縁部に形成されたダレ(20、21)を有する。
【0056】
第1中間素材(第1ピース)19は、
図5に示すように、打ち抜き方向前方に位置する軸方向一方側(
図5の下側)の面(第1面、第1軸面)に、第1内周側ダレ20と、第1外周側ダレ21と、第1平坦部11とを有する。また、第1中間素材19は、打ち抜き方向後方に位置する軸方向他方側(
図5の上側)の面(第2面、第2軸面)に、第2内周側バリ部22と、第2外周側バリ部23と、第2平坦部24とを有する。なお、打ち抜き方向前方とは、第1上型18が金属板15を打ち抜く際の進行方向前方である、
図5の下向きを指し、打ち抜き方向後方とは、第1上型18が金属板15を打ち抜く際の進行方向とは反対方向である、
図5の上向きを指す。
【0057】
第1内周側ダレ20は、金属板15を円環状に打ち抜く際に生じたダレである。一例において、ダレ20は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有し、第1中間素材19の軸方向一方側の面の内周縁部に備えられている。第1内周側ダレ20の母線形状は、径方向内側に向かうほど軸方向他方側に向かう方向に曲線状に傾斜している。ダレ20は、縁に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ20の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。第1内周側ダレ20の径方向外側部分の母線形状は、第1内周側ダレ9の母線形状と同様の形状を有する。一例において、第1内周側ダレ20の径方向幅及び軸方向幅は、第1内周側ダレ9の径方向幅及び軸方向幅よりもいずれも大きい。第1内周側ダレ20は、従来のスラストレースの製造方法においては、熱処理工程前に除去されていたダレに相当する。
【0058】
第1外周側ダレ21は、金属板15を円環状に打ち抜く際に生じたダレである。一例において、ダレ21は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有し、第1中間素材19の軸方向一方側の面の外周縁部に備えられている。第1外周側ダレ21の母線形状は、径方向外側に向かうほど軸方向他方側に向かう方向に曲線状に傾斜している。ダレ21は、縁に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ21の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。第1外周側ダレ21の径方向内側部分の母線形状は、第1外周側ダレ10の母線形状と同様の形状を有する。第1外周側ダレ21の径方向幅及び軸方向幅は、第1外周側ダレ10の径方向幅及び軸方向幅よりもいずれも大きい。第1外周側ダレ21は、従来のスラストレースの製造方法においては、熱処理工程前に除去されていたダレに相当する。
【0059】
第1平坦部11は、研削加工などの除去加工が実質的に施されていない、金属板15の軸方向一方側(打ち抜き方向前方側)の面を含む。言い換えれば、金属板15の軸方向一方側の面の一部を、実質的にそのままの状態で(加工を施すことなく)第1平坦部11としている。第1平坦部11は、直線状の母線形状を有しており、平坦面状に構成されている。
【0060】
第2内周側バリ部22は、金属板15を円環状に打ち抜く際に生じたバリであり、第1中間素材19の軸方向他方側の面の内周縁部に備えられている。第2内周側バリ部22は、第2平坦部24よりも軸方向他方側に向けて突出している。第2内周側バリ部22は、従来のスラストレースの製造方法においては、熱処理工程前に除去されていた部分である。
【0061】
第2外周側バリ部23は、金属板15を円環状に打ち抜く際に生じたバリであり、第1中間素材19の軸方向他方側の面の外周縁部に備えられている。第2外周側バリ部23は、第2平坦部24よりも軸方向他方側に向けて突出している。第2外周側バリ部23は、従来のスラストレースの製造方法においては、熱処理工程前に除去されていた部分である。
【0062】
第2平坦部24は、研削加工などの除去加工が実質的に施されていない、金属板15の軸方向他方側(打ち抜き方向後方側)の面を含む。言い換えれば、金属板15の軸方向他方側の面の一部を、実質的にそのままの状態で(加工を施すことなく)第2平坦部24としている。第2平坦部24は、直線状の母線形状を有しており、平坦面状に構成されている。第2平坦部24は、第1平坦部11よりも内径が小さく、かつ、第1平坦部11よりも外径が大きい。すなわち、第2平坦部24の径方向幅は、第1平坦部11の径方向幅よりも大きい。
【0063】
《潰し工程(コイニング工程)》
本例では、プレスによる打ち抜き工程の後に、プレスによる潰し工程(コイニング工程)を行う。潰し工程は、
図6及び
図7に示すように、打ち抜き工程で得られた第1中間素材(第1ピース)19を、第2上型(プッシュパンチ、第1ダイ)25と第2下型(第2ダイ)26とにより軸方向に押し潰すことにより行う。
【0064】
第2上型25は、
図7に示すように、先端面である下面に、全体が円輪状の押圧面27を有している。押圧面27は、第1中間素材19の軸方向一方側の面の全面に倣うように設定された母線形状を有している。押圧面27は、径方向中間部に平坦押圧面(平坦面)27aを有しており、径方向内側部に内周側湾曲押圧面(湾曲面)27bを有しており、径方向外側部に外周側湾曲押圧面(湾曲面)27cを有している。平坦押圧面27aは、第1平坦部11に接触するように、直線状の母線形状を有する。内周側湾曲押圧面27bは、第1内周側ダレ20に接触するように、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有する。外周側湾曲押圧面27cは、第1外周側ダレ21に接触するように、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有する。第2上型(第1ダイ)25は、第1中間素材(第1ピース)19の第1面(7)に面して配され、第2下型(第2ダイ)26は、第1中間素材(第1ピース)19の第2面(8)に面して配される。第2上型(第1ダイ)25は、第1面(7)に面する押圧面27を有する。押圧面27は、第1中間素材(第1ピース)19の第1面(7)の縁部に形成されたダレ20、21に面する湾曲面27b、27cを有する。
【0065】
第2下型26は、円筒形状の第2ダイ孔26aを有する。第2ダイ孔26aの内周縁部の直径は、第1中間素材19の第2平坦部24の内径よりも大きく、第2ダイ孔26aの外周縁部の直径は、第1中間素材19の第2平坦部24の外径よりも小さい。このため、第2ダイ孔26aの径方向幅は、第1中間素材19の第2平坦部24の径方向幅よりも小さい。
【0066】
本例では、第1金型(第1ダイ)に相当する第2上型25を、打ち抜き工程における打ち抜き方向前方側に対応する第1中間素材19の軸方向一方側(
図6及び
図7の上側)に配置し、第2金型(第2ダイ)に相当する第2下型26を、打ち抜き工程における打ち抜き方向後方側に対応する第1中間素材19の軸方向他方側(
図6及び
図7の下側)に配置する。具体的には、第1中間素材19を、第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21が形成された軸方向一方側の面を上側に向け、かつ、第2内周側バリ部22及び第2外周側バリ部23が形成された軸方向他方側の面を下側に向けた状態で、第2下型26上に載置し、第1中間素材19の上方に第2上型25を配置する。また、この状態で、第2ダイ孔26aの内側に配置した第2ダイクッション26bにより、第1中間素材19の軸方向他方側の面を支持する。
【0067】
第1中間素材19をセットした後は、第2上型25を第2下型26に近づけるように下方に移動させることで、第2上型25の押圧面27と、第2下型26の上面のうち第2ダイ孔26aの開口部の径方向内側及び径方向外側にそれぞれ隣接する部分との間で、第1中間素材19を挟み込む。これにより、第1中間素材19の軸方向他方側部分のうち、第2内周側バリ部22を含む内周側部分及び第2外周側バリ部23を含む外周側部分を軸方向に押し潰す。そして、第1中間素材19の径方向中間部を、第2ダイ孔26aの内側に軸方向他方側に向けて搾出する(押し出す)。第1ダイ25と第2ダイ26との間に第1ピース19を挟んだ状態で、第1ピース19の第2面(8)の縁部を潰す。これにより、
図8に示すような第2中間素材(第2ピース)28を得る。第2ピース28は、ダレ20、21が形成された第1面(7)を有する第1部分51と、縁部が窪んだ第2面(8)を有する第2部分52と、を有する。
【0068】
第2中間素材28は、軸方向一方側(
図8の上側)の半部に大幅部29を有し、軸方向他方側(
図8の下側)の半部に、大幅部29よりも径方向幅の小さい小幅部30を有する。小幅部30は、大幅部29よりも大きな内径を有しており、かつ、大幅部29よりも小さな外径を有している。第1中間素材19の軸方向他方側の面に備えられていた第2内周側バリ部22及び第2外周側バリ部23は、第1中間素材19の軸方向他方側部分の内周側部分及び外周側部分を軸方向に押し潰した際に消滅し、大幅部29の一部となる。一例において、第2中間素材(第2ピース)28における第2部分52の厚み(窪みの深さ)は、第2ピース28の全体の厚みの1/5以上かつ4/5以下である、又は1/4以上かつ3/4以下である、又は1/3以上かつ2/3以下である。これらのレンジは、プレス成形品の品質向上及び/又は潰し工程とトリミング工程とのバランスを最適化する上で有利である。例えば、第2ピース28における第2部分52の厚みは、第2ピース28の全体の厚みの、約1/5、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4、又は4/5である。この値は、ピースの素材や形状等に応じて適宜に設定可能である。他の例において、第2ピース28における第2部分52の厚みは、上記とは異なる値に設定できる。
【0069】
第2中間素材28(大幅部29)の軸方向一方側の面は、第1内周側ダレ20と、第1外周側ダレ21と、第1平坦部11とを含む。つまり、第2中間素材28の軸方向一方側の面は、第1中間素材19の軸方向一方側の面から実質的に変化していない。
【0070】
これに対し、第2中間素材28(小幅部30)の軸方向他方側の面は、第2内周側ダレ12と、第2外周側ダレ13と、第2平坦部14とを含む。
【0071】
第2内周側ダレ12は、第1中間素材19の径方向中間部を第2ダイ孔26aの内側に搾出する際に生じたダレであり、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有し、第2中間素材28(小幅部30)の軸方向他方側の面の内周縁部に備えられている。
【0072】
第2外周側ダレ13は、第1中間素材19の径方向中間部を第2ダイ孔26aの内側に搾出する際に生じたダレであり、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有し、第2中間素材28(小幅部30)の軸方向他方側の面の外周縁部に備えられている。
【0073】
本例では、
図7に示したように、第2上型25の押圧面27を、第1中間素材19の軸方向一方側の面に合致した母線形状を有するものとし、第1中間素材19の軸方向一方側の面に備えられた第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21を、押圧面27により拘束して(抱え込んで)潰し加工を行う。このため、第1中間素材19の径方向中間部を搾出する際に、第1中間素材19に曲げ変形を生じにくくすることができる。したがって、第2内周側ダレ12及び第2外周側ダレ13を小さくすることができる。具体的には、打ち抜き加工時に生じた第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21に比べて、径方向幅及び軸方向幅をいずれも十分に小さくすることができる。
【0074】
第2平坦部14は、第1中間素材19の軸方向他方側の面に備えられた第2平坦部24の径方向中間部(内周側部分及び外周側部分を除いた部分)を含む。このため、第2平坦部14は、研削加工などの除去加工が実質的に施されていない、金属板15の軸方向他方側(打ち抜き方向後方側)の面を含む。第2平坦部14は、直線状の母線形状を有しており、平坦面状に構成されている。
【0075】
《トリミング工程(内外縁取り工程)》
本例では、プレスによる潰し工程の後に、プレスによるトリミング工程を行う。トリミング工程は、
図9に示すように、潰し工程で得られた第2中間素材(第2ピース)28を第3下型31上に載置し、図示しないストリッパにより第2中間素材28の軸方向一方側の面を押さえ付けた状態で、第3上型(第2パンチ)33により第2中間素材28を、円筒形状を有する第3ダイ孔31aに押し込むことにより行う。図示の例では、第3ダイ孔31aの内側に配置した第3ダイクッション31bにより、第2中間素材28の軸方向他方側の面を支持しながら行う。第3ダイ孔31aの内周縁部の直径は、第2中間素材28の小幅部30の内径とほぼ同じであり、第3ダイ孔31aの外周縁部の直径は、第2中間素材28の小幅部30の外径とほぼ同じである。プレス加工を用いた第2中間素材(第2ピース)のトリミングは、第2ピース28における第1部分51の縁部の少なくとも一部を除去することを含む。
【0076】
本例のトリミング工程では、第3下型31の上面のうち、第3ダイ孔31aの開口部の径方向内側及び径方向外側にそれぞれ隣接する部分により、第2中間素材28の大幅部29のうちで、小幅部30から径方向内側に張り出した矩形状の断面形状を有する内径側張出部34、及び、小幅部30から径方向外側に張り出した矩形状の断面形状を有する外径側張出部35を、それぞれ円環状のスクラップとして除去する。外径側張出部35の除去と内径側張出部34の除去とは、同時に行うこともできるし、タイミングをずらして行うこともできる。トリミングは、第1面(7)におけるダレ20、21が形成された領域の一部が残るように、第2中間素材(第2ピース)28における縁部の少なくとも一部を除去する。ダレ20、21が形成された領域において、縁に近い領域が除去され、縁から離れた領域が残される。
【0077】
大幅部29から内径側張出部34及び外径側張出部35をそれぞれ除去することにより、大幅部29の径方向幅は、小幅部30の径方向幅と略同じになる。また、第2中間素材28(大幅部29)の軸方向一方側の面の内周縁部に備えられていた第1内周側ダレ20は、径方向内側部から径方向中間部にわたる範囲が除去されることで径方向外側部分のみが残り、第1内周側ダレ9となる。また、第2中間素材28(大幅部29)の軸方向一方側の面の外周縁部に備えられていた第1外周側ダレ21は、径方向外側部から径方向中間部にわたる範囲が除去されることで径方向内側部分のみが残り、第1外周側ダレ10となる。この結果、軸方向一方側の面が、第1内周側ダレ9と第1外周側ダレ10と第1平坦部11とから構成され、軸方向他方側の面が、第2内周側ダレ12と第2外周側ダレ13と第2平坦部14とから構成された、スラストレース2aが得られる。
【0078】
《熱処理工程》
トリミング工程により得られたスラストレース2aに、浸炭窒化焼き入れ処理又は浸炭焼き入れ処理などの焼き入れ処理、及び、焼き戻し処理などの熱処理を行う。これにより、スラストレース2aの硬度をHv600~Hv800程度まで高くする。
【0079】
《バレル仕上工程》
バレル仕上工程では、熱処理後のスラストレース2aを、コンパウンド又はメディアとともに容器に入れ、該容器を回転又は振動させる。これにより、スラストレース2aの表面に生じた酸化スケールを除去する。また、バレル仕上工程により、スラストレース2aのバリ取りを行えるとともに、表面粗さを改善することもできる。
【0080】
《検査・包装工程》
バレル仕上工程の後は、スラストレース2aの寸法検査や外観検査などを行う。そして、検査に合格したスラストレース2aを包装し、完成品のスラストレース2aを得る。
【0081】
上述のようにして製造されたスラストレース2aは、同様の製造方法により製造された他のスラストレース2bと、複数本のころ3と、保持器4とを組み合わせて組み立てることで、本例のスラストころ軸受1を得ることができる。
【0082】
以上のような構成を有し、上述のような工程を経て製造される本例のスラストレース2a(2b)によれば、スラスト軌道面5a(5b)にころ3からスラスト荷重が作用した場合にも、スラスト軌道面5a(5b)の径方向両側の端部に作用する接触面圧が過大になることを抑制できる。
すなわち、本例では、スラスト軌道面5a(5b)として使用する第1平坦部11の径方向両側に、従来構造のスラストレースにおいて備えられていた面取り部よりも母線形状の傾斜が緩やかな(軸方向の落ち込み量の小さい)、第1内周側ダレ9及び第1外周側ダレ10をそれぞれ有している。このため、スラストころ軸受1の運転状況が厳しくなった場合にも、スラスト軌道面5a(5b)の径方向両側の端部に作用する接触面圧(エッジ応力)が過大になることを抑制できる。この結果、スラストころ軸受1の軸受寿命の低下を抑制できる。
【0083】
また、第2平坦部14をスラスト軌道面5a(5b)として使用した場合にも、第2平坦部14の径方向両側に備えられた第2内周側ダレ12及び第2外周側ダレ13は、従来構造のスラストレースにおいて備えられていた面取り部よりも傾斜の緩やかな(軸方向の落ち込み量の小さい)母線形状を有している。このため、スラストころ軸受1の運転状況が厳しくなった場合にも、スラスト軌道面5a(5b)の径方向両側の端部に作用する接触面圧(エッジ応力)が過大になることを抑制できる。
【0084】
さらに、本例のスラストレース2aの製造方法によれば、打ち抜き加工によって生じるダレを、研削加工などの削りカスの発生を伴う除去加工を行わずに小さくできる。
すなわち、本例では、打ち抜き工程で生じた第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21のそれぞれを、一部分(第1内周側ダレ20の径方向外側部分、第1外周側ダレ21の径方向内側部分)を残して、プレスによるトリミング工程により除去することができる。このため、打ち抜き工によって生じたダレ(第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21)を、研削加工などの除去加工を行うことなく小さくできる。したがって、スラストレース2aの歩留まりを向上することができる。また、除去加工を行う必要がないため、スラストレース2aの加工コストを抑えることができる。
【0085】
また、本例の製造方法においては、潰し工程により、トリミング工程で除去する部分の板厚を十分に小さくしているため、トリミング工程に大きなプレス荷重は不要である。このため、使用する金型(第3上型33及び第3下型31)の寿命を十分に確保できる。また、トリミング工程では、せん断面となるスラストレース2aの内周面及び外周面に、二次せん断面が発生することもない。
【0086】
本例の製造方法は、打ち抜き工程で生じた第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21のそれぞれを、1回のトリミング工程で除去することができるため、シェービング加工を採用した場合のように、工程数が多くなることもない。さらに、糸状の削りカスが生じることもないため、製品であるスラストレース2aに打痕が付くのを防止することもできる。
【0087】
本例の製造方法は、打ち抜き工程により得られる第1中間素材19、潰し工程によって得られる第2中間素材28、及び、トリミング工程によって得られるスラストレース2aのいずれにも、ファインブランキングやセミファインブランキングを実施した場合のような湾曲が発生することはない。さらに、本例の製造方法は、一般的なプレス加工機により実施することが可能であり、専用の設備は不要である。
【0088】
したがって、本例の製造方法によれば、前述した第1の方法~第3の方法により生じる問題を生じることなく、打ち抜き加工によって生じるダレを小さくできる。
【0089】
また、本例の製造方法では、潰し工程で使用する第2上型25の押圧面27を、第1中間素材19の軸方向一方側の面に合致した母線形状を有するものとし、第1中間素材19の軸方向一方側の面に備えられた第1内周側ダレ20及び第1外周側ダレ21を、押圧面27により拘束して潰し加工を行う。このため、第2平坦部14の径方向両側に形成される第2内周側ダレ12及び第2外周側ダレ13を小さくすることもできる。したがって、第2平坦部14をスラスト軌道面として使用する場合にも、第2面8に除去加工を実施する必要がない。
【0090】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、
図10~
図15を用いて説明する。
【0091】
本例では、実施の形態の第1例で説明したスラストレース2a(2b)を、実施の形態の第1例とは異なる製造方法で製造する方法について説明する。本例のスラストレース2a(2b)の製造方法は、実施の形態の第1例の製造方法に対し、プレス加工により行う工程のみが異なる。具体的には、実施の形態の第1例では、プレス加工をトランスファー加工により行う場合について説明したが、本例では、プレス加工を順送加工により行う。プレス加工後に行う、熱処理工程、バレル仕上工程、検査及び包装工程については、実施の形態の第1例と同じであるため、以下、プレスによる順送加工に関してのみ説明する。
【0092】
本例の製造方法は、コイル状に巻かれている帯状素材である金属板36を間欠送り(
図11の右向きに順送)して、図示しない順送金型に備えられた各加工ステージにおいて、金属板36を加工することにより、スラストレース2a(2b)を得る。金属板36は、コイル状に巻かれている点を除いて、実施の形態の第1例の製造方法で使用した金属板15と同じである。
【0093】
本例の製造方法は、
図10に示すように、パイロット孔形成工程ST1と、外周側ダレ形成工程(アワーグラス抜き工程)ST2と、ランス抜き工程ST3と、内周側ダレ形成工程(センター孔抜き工程)ST4と、外周側潰し工程ST5と、内周側潰し工程ST6と、内周側トリミング工程ST7と、外周側トリミング工程(切り離し工程)ST8とを備える。
【0094】
《パイロット孔形成工程ST1》
パイロット孔形成工程ST1は、金属板36の幅方向両側の端部に、1対のパイロット孔37を穿孔する工程である。パイロット孔37には、各加工ステージにおいて、図示しないパイロットピンが挿入され、金属板36の正確な位置決めがなされる。
【0095】
《外周側ダレ形成工程ST2》
外周側ダレ形成工程ST2は、金属板36のうち、1対のパイロット孔37同士の間部分に、金属板36の長さ方向に関して互いに反対方向を向いた2つのC字状の円弧溝38a、38bを連続させてなる、アワーグラス39を打ち抜く(トリム加工する)工程である。2つの円弧溝38a、38bのそれぞれの内周縁部は、スラストレース2aの外径の半分よりもわずかに大きい曲率半径を有する。
【0096】
これにより、
図12に示すように、金属板36のうちで、円弧溝38a、38bの径方向内側に隣接する部分に、円弧溝38a、38bに沿って外周側ダレ40を形成する。外周側ダレ40は、打ち抜き方向後方側に位置する、金属板36の一方側の面に形成される。また、金属板36の長さ方向に隣接する1対のアワーグラス39同士の間に1対のつなぎ部41が形成される。金属板36の打ち抜き方向(打ち抜くか又は抜き上げるか)は、後工程である外周側潰し工程ST5及び内周側潰し工程ST6の潰し方向、並びに、加工設備の仕様等を考慮して決定する。
なお、金属板36の一方側の面とは、金属板36の板厚方向に関して一方側に位置する面を指し、金属板36の他方側の面とは、金属板36の板厚方向に関して他方側に位置する面を指す。
【0097】
外周側ダレ40は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有している。外周側ダレ40の母線形状は、径方向外側に向かう(円弧溝38a、38bに近づく)ほど、打ち抜き方向前方側に向かう(金属板36の他方側の面に近づく)方向に曲線状に傾斜している。ダレ40は、縁に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ40の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。外周側ダレ40の径方向内側部分の母線形状は、第1外周側ダレ10の母線形状と同様の形状を有する。外周側ダレ40の径方向幅及び軸方向幅は、第1外周側ダレ10の径方向幅及び軸方向幅よりもいずれも大きい。
【0098】
《ランス抜き工程ST3》
ランス抜き工程ST3は、金属板36の長さ方向に隣接した1対のパイロット孔37同士の間部分で、かつ、つなぎ部41の近傍に、円弧状のスリット(捨て穴)であるランス42を打ち抜く(トリム加工する)工程である。ランス42は、後に実施する外周側潰し工程ST5で、金属板36の送りピッチと順送金型の中心(加工ステージの中心)とがずれるのを防止する役割を有する。外周側潰し工程において、金属板36の送りピッチと順送金型の中心とのずれを防止できれば、ランス抜き工程は省略することもできる。
【0099】
《内周側ダレ形成工程ST4》
内周側ダレ形成工程ST4は、金属板36の長さ方向に関して隣接して配置された1対のアワーグラス39(円弧溝39a、39b)同士の間部分に、円孔(センター孔)43を穿孔する工程である。円孔43の直径は、スラストレース2aの内径よりもわずかに小さい。
【0100】
これにより、
図13に示すように、金属板36のうちで、円孔43の径方向外側に隣接する部分に、円孔43に沿って内周側ダレ44を形成する。また、内周側ダレ44は、打ち抜き方向後方側に位置する、金属板36の一方側の面に形成される。つまり、内周側ダレ44及び外周側ダレ40はともに、金属板36の一方側の面に形成される。
【0101】
内周側ダレ44は、少なくとも一部が湾曲した母線形状を有している。内周側ダレ44の母線形状は、径方向内側に向かう(円孔43に近づく)ほど、打ち抜き方向前方側に向かう(金属板の他方側の面に近づく)方向に曲線状に傾斜している。ダレ44は、縁(角)に向かうに従って基準面(軸方向に垂直な面)に対する傾斜(傾斜角)が大きくなる面形状を有する。ダレ44の表面は、縁から比較的遠い領域において、基準面に対する傾斜が比較的小さく、縁に比較的近い領域において、基準面に対する傾斜が比較的大きい。内周側ダレ44の径方向外側部分の母線形状は、第1内周側ダレ9の母線形状と同様の形状を有する。内周側ダレ44の径方向幅及び軸方向幅は、第1内周側ダレ9の径方向幅及び軸方向幅よりもいずれも大きい。
【0102】
《外周側潰し工程ST5》
外周側潰し工程ST5は、金属板36の他方側の面のうちで、金属板36の板厚方向に関して外周側ダレ40及びつなぎ部41と整合する部分を含む円環状部分を、金属板36の板厚方向に押し潰して、
図14に示すような、外周側環状凹溝45を形成する工程である。具体的には、金属板36の他方側の面のうちで、外周側ダレ40の径方向外側部分から径方向中間部にわたる範囲と、金属板36の板厚方向に整合する部分を押し潰す。また、本例では、金属板36の一方側の面を押圧する図示しない上型の押圧面を、外周側ダレ40の母線形状に合致した母線形状を有するものとし、外周側ダレ40を拘束して潰し加工を行う。
【0103】
これにより、金属板36の他方側の面のうち、外周側環状凹溝45の径方向内側には、金属板36の板厚方向に関して他方側に向けて搾出された、略円筒面状の外周面形状を有する外側搾出部46が形成される。外側搾出部46の軸方向他方側の面の外周縁部には、第2外周側ダレ13が形成される。また、本工程は、形成される外側搾出部46の外径が、外周側ダレ40の内周縁の直径よりも少しだけ大きくなるように、金属板36の他方側の面を押圧する図示しない下型(ダイ孔)の寸法を規制して行う。
【0104】
《内周側潰し工程ST6》
内周側潰し工程ST6は、金属板36の他方側の面のうちで、金属板36の板厚方向に関して内周側ダレ44と整合する部分を含む円環状部分を、金属板36の板厚方向に押し潰して、
図15に示すような、内周側環状凹溝47を形成する工程である。具体的には、金属板36の他方側の面のうちで、内周側ダレ44の径方向内側部分から径方向中間部にわたる範囲と、金属板36の板厚方向に整合する部分を押し潰す。また、本例では、金属板36の一方側の面を押圧する図示しない上型の押圧面を、内周側ダレ44の母線形状に合致した母線形状を有するものとし、内周側ダレ44を拘束して潰し加工を行う。
【0105】
これにより、金属板36の他方側の面のうち、内周側環状凹溝47の径方向外側には、金属板36の板厚方向に関して他方側に向けて搾出された、略円筒面状の内周面形状を有する内側搾出部48が形成される。内側搾出部48の軸方向他方側の面の内周縁部には、第2内周側ダレ12が形成される。また、第2内周側ダレ12と第2外周側ダレ13との間部分には、金属板36の他方側の面から構成される、直線状の母線形状を有し、かつ、平坦面状の第2平坦部14が形成される。また、本工程は、形成される内側搾出部48の内径が、内周側ダレ44の外周縁の直径よりも少しだけ小さくなるように、金属板36の他方側の面を押圧する図示しない下型(ダイ孔)の寸法を規制して行う。
【0106】
《内周側トリミング工程ST7》
内周側トリミング工程ST7は、金属板36のうちで、金属板36の板厚方向に関して内周側環状凹溝47と整合する部分(
図15の斜格子模様部分)を、円環状のスクラップとして除去する工程である。これにより、内周側ダレ44は、径方向内側部から径方向中間部にわたる範囲が除去されることで径方向外側部分のみが残り、第1内周側ダレ9となる。
【0107】
《外周側トリミング工程(切り離し工程)ST8》
外周側トリミング工程ST8は、金属板36のうちで、金属板36の板厚方向に関して外周側環状凹溝45と整合する部分(
図14の斜格子模様部分)を、円環状のスクラップとして除去する工程である。これにより、外周側ダレ40は、径方向外側部から径方向中間部にわたる範囲が除去されることで径方向内側部分のみが残り、第1外周側ダレ10となる。また、第1外周側ダレ10と第1内周側ダレ9との間部分には、金属板36の一方側の面から構成される、直線状の母線形状を有し、かつ、平坦面状の第1平坦部11が形成される。この結果、軸方向一方側の面が、第1内周側ダレ9と第1外周側ダレ10と第1平坦部11とから構成され、軸方向他方側の面が、第2内周側ダレ12と第2外周側ダレ13と第2平坦部14とから構成された、スラストレース2aが、金属板36から切り離される。スラストレース2aは、第1面7と、第1面7の反対側の面である第2面8と、第1面7と第2面8とを接続する側面49A、49Bと、第1面7と側面49A、49Bとの角の近傍において、プレス加工の痕跡である、第1面7の縁部に形成された第1ダレ9、10と、第2面8と側面49A、49Bとの角の近傍において、別のプレス加工の痕跡である、第2面8の縁部に形成された第2ダレ12、13と、を備える。一例において、面49Aは、第1ダレ10につながったせん断面と、第2ダレ13につながった別のせん断面とを有する。また、面49Bは、第1ダレ9につながったせん断面と、第2ダレ12につながった別のせん断面とを有する。第1ダレ9、10は、第1のプレス加工で形成されたダレの一部が第2のプレス加工によってトリミングされた追加痕跡を含む。追加痕跡は、ダレ9、10の表面観察、側面49A、49Bの表面観察、対象物の断面の観察、対象物の組成分析等に基づき確認可能である。
【0108】
以上のような本例の製造方法によっても、打ち抜き加工によって生じるダレを、除去加工を行うことなく小さくできる。したがって、スラストレース2aの歩留まりを向上することができる。また、除去加工を行う必要がないため、スラストレース2aの加工コストを抑えることができる。本発明を実施する場合には、矛盾が生じない限りにおいて、各工程の順番を変更したり、複数の工程を同時に行ったりすることができる。また、本発明は、1列取りに限らず、複数列取りで行うこともできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0109】
本発明のプレス成形品は、実施の形態の各例で示したスラストレース以外にも適用可能である。また、上述した製造方法は、転がり軸受の製造方法の他、転がり軸受を備える各種の機械(たとえばコンプレッサなどの一般機械や工作機械など)の製造方法にも適用可能である。また、転がり軸受を備える、自動車、鉄道車両などの車両の製造方法にも適用可能である。このような機械の製造方法及び車両の製造方法によれば、プレス成形品の歩留まりが向上し、プレス成形品の加工コストを抑えられるため、機械及び車両に関して、生産性の向上及び低コスト化を図れる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0111】
本発明を実施する場合に、素材となる金属板の材質や硬度、表面粗さなどは、実施の形態の各例で説明したものに限定されない。また、本発明を実施する場合に、トリミング工程後に実施する熱処理工程の方法についても、実施の形態の各例で説明したものに限定されず、従来から知られている方法を適宜採用することができる。また、本発明のプレス成形品の製造方法を実施する場合に、実施の形態の各例で説明した工程以外にも、熱処理によって生じたうねりなどを除去するために研削工程を実施したり、その他の工程を実施したりすることもできる。また、本発明を実施する場合に、本発明のプレス成形品であるスラストレースと、本発明のプレス成形品以外のスラストレースとを組み合わせて、スラストころ軸受を構成することもできる。
【0112】
一実施形態において、プレス成形品の製造方法は、金属素材をパンチングして第1ピース(19、55)を得る工程であり、前記第1ピース(19、55)は、第1面(7)と、前記第1面(7)の反対側の面である第2面(8)と、を有し、前記第1面(7)は、前記パンチングにおいて前記第1面(7)の縁部に形成されたダレ(20、21、40、44)を有する、前記工程と;第1ダイ(25)と第2ダイ(26)との間に前記第1ピース(19、55)を挟んだ状態で、前記第1ピース(19、55)の前記第2面(8)の縁部を潰して第2ピース(28、56)を得る工程であり、前記第2ピース(28、56)は、前記ダレ(20、21、40、44)が形成された前記第1面(7)を有する第1部分(51、57)と、前記縁部が窪んだ前記第2面(8)を有する第2部分(52、58)と、を有する、前記工程と;プレス加工を用いて前記第2ピース(28)をトリミングする工程であり、前記第1部分(51、57)における前記縁部の少なくとも一部を除去することを含む、工程と;を備える。
【0113】
一例において、前記トリミングは、前記第1面(7)における前記ダレが形成された領域の一部が残るように、前記第2ピース(28、56)における前記縁部の少なくとも一部を除去すること、を有する。
【0114】
一例において、前記第1ダイ(25)は、前記第1ピース(19、55)の前記第1面(7)に面して配され、前記第2ダイ(26)は、前記第1ピース(19、55)の前記第2面(8)に面して配され、前記第1ダイ(25)は、前記第1面(7)に面する押圧面(27)を有し、前記押圧面(27)は、前記第1ピース(19、55)の前記第1面(7)の縁部に形成された前記ダレ(20、21、40、44)に面する湾曲面(27b、27c)を有する。
【0115】
一実施形態において、プレス加工品は、第1面(7)と、前記第1面の反対側の面である第2面(8)と、前記第1面(7)と前記第2面(8)とを接続する側面(49A、49B)と、前記第1面(7)と前記側面(49A、49B)との角の近傍において、プレス加工の痕跡である、前記第1面(7)の縁部に形成された第1ダレ(9、10)と、前記第2面(8)と前記側面(49A、49B)との角の近傍において、別のプレス加工の痕跡である、前記第2面(8)の縁部に形成された第2ダレ(12、13)と、を備える。
【0116】
一例において、前記第1ダレ(9、10)は、第1のプレス加工で形成されたダレの一部が第2のプレス加工によってトリミングされた追加痕跡を含む。
【0117】
一実施形態において、プレス成形品(2a、2b)は、円環平板形状を有する。プレス成形品(2a、2b)は、軸方向一方側の第1面(7)と、軸方向他方側の第2面(8)と、を有し、前記第1面(7)は、内周縁部に備えられた第1内周側ダレ面(9)と、外周縁部に備えられた第1外周側ダレ面(10)と、前記第1内周側ダレ面(9)と前記第1外周側ダレ面(10)との間に備えられた、平坦面状の第1非研削面(11)と、をそれぞれ有する。前記第2面(8)は、内周縁部に備えられた第2内周側ダレ面(12)と、外周縁部に備えられた第2外周側ダレ面(13)と、前記第2内周側ダレ面(12)と前記第2外周側ダレ面(13)との間に備えられた、平坦面状の第2非研削面(14)と、をそれぞれ有する。
【0118】
一例において、前記プレス成形品(2a、2b)の径方向幅をL0とし、前記プレス成形品(2a、2b)の軸方向幅をH0とし、前記第1内周側ダレ面(9)の径方向幅をL1iとし、前記第1内周側ダレ面(9)の軸方向幅をH1iとし、前記第1外周側ダレ面(10)の径方向幅をL1oとし、前記第1外周側ダレ面(10)の軸方向幅をH1oとし、前記第2内周側ダレ面(12)の径方向幅をL2iとし、前記第2内周側ダレ面(12)の軸方向幅をH2iとし、前記第2外周側ダレ面(13)の径方向幅をL2oとし、前記第2外周側ダレ面(13)の軸方向幅をH2oとした場合に、L1i/L0は、0.03以上0.26以下であり、H1i/H0は、0.0025以上0.005以下であり、L1o/L0は、0.03以上0.26以下であり、H1o/H0は、0.0025以上0.005以下であり、L2i/L0は、0.03以上0.26以下であり、H2i/H0は、0.0025以上0.005以下であり、L2o/L0は、0.03以上0.26以下であり、H2o/H0は、0.0025以上0.005以下、にできる。
【0119】
一実施形態において、転がり軸受は、上記のプレス成形品と、複数個の転動体と、を備える。
【0120】
一実施形態において、プレス成形品の(トランスファー加工による)製造方法は、素材である金属板を円環状に打ち抜いて、円環平板形状を有する第1中間素材(19)を得る、打ち抜き工程と;前記打ち抜き工程における打ち抜き方向前方側に対応する前記第1中間素材(19)の軸方向一方側に配置された第1金型(第2上型25)と、前記打ち抜き工程における打ち抜き方向後方側に対応する前記第1中間素材(19)の軸方向他方側に配置された第2金型(第2下型26)との間で、前記第1中間素材(19)を軸方向に挟み込み、前記第1中間素材(19)の軸方向他方側部分のうちの内周側部分及び外周側部分を軸方向に押し潰すことで、軸方向一方側に大幅部(29)を有し、軸方向他方側に前記大幅部(29)よりも径方向幅の小さい小幅部(30)を有する、第2中間素材(28)を得る、潰し工程と;前記第2中間素材(28)の前記大幅部(29)のうちで、前記小幅部(30)から径方向内側に張り出した部分(内径側張出部34)及び前記小幅部(30)から径方向外側に張り出した部分(外径側張出部35)をそれぞれ除去する、トリミング工程と;を備える。
【0121】
一例において、前記第1中間素材(19)の軸方向一方側の面は、内周縁部に形成された第1内周側ダレ面形成部(20)と、外周縁部に形成された第1外周側ダレ面形成部(21)と、をそれぞれ有し、前記第1金型(第2上型25)は、前記第1中間素材(19)の軸方向一方側の面のうち、前記第1内周側ダレ面形成部(20)及び前記第1外周側ダレ面形成部(21)を含む部分に合致した母線形状を有する押圧面(27)を有する。
【0122】
別の実施形態において、プレス成形品の(順送加工による)製造方法は、素材である金属板(36)に、前記金属板(36)の長さ方向に関して互いに反対方向を向いた2つの円弧溝(38a、38b(アワーグラス39))を打ち抜くことで、前記金属板(36)の一方側の面のうちで、前記円弧溝(38a、38b)の径方向内側に隣接する部分に、前記円弧溝(38a、38b(アワーグラス39))に沿って外周側ダレ面形成部(40)を形成する、外周側ダレ形成工程と;前記金属板(36)のうちで、前記金属板(36)の長さ方向に隣接して配置された1対の前記外周側ダレ面形成部(40)同士の間に位置する部分に円孔(43)を打ち抜くことで、前記金属板(36)の一方側の面のうちで、前記円孔(43)の径方向外側に隣接する部分に、前記円孔(36)に沿って内周側ダレ面形成部(44)を形成する、内周側ダレ形成工程と;前記金属板(36)の他方側の面のうちで、前記金属板(36)の板厚方向に関して前記外周側ダレ面形成部(40)の径方向外側部分と整合する部分を含む円環状部分を、前記金属板(36)の板厚方向に押し潰して外周側環状凹溝(45)を形成する、外周側潰し工程と;前記金属板(36)の他方側の面のうちで、前記金属板(36)の板厚方向に関して前記内周側ダレ面形成部(44)の径方向内側部分と整合する部分を含む円環状部分を、前記金属板(36)の板厚方向に押し潰して内周側環状凹溝(47)を形成する、内周側潰し工程と;前記金属板(36)のうちで、前記金属板(36)の板厚方向に関して前記内周側環状凹溝(47)と整合する部分を除去する、内周側トリミング工程と;前記金属板(36)のうちで、前記金属板(36)の板厚方向に関して前記外周側環状凹溝(45)と整合する部分を除去する、外周側トリミング工程と、を備える。
【0123】
一実施形態において、プレス成形品と、複数個の転動体と、を備えた転がり軸受の製造方法は、上記のいずれかのプレス成形品の製造方法により、前記プレス成形品を製造する工程と;前記製造されたプレス成形品と、前記複数個の転動体とを用いて転がり軸受を組み立てる工程と;を備える。
【0124】
一実施形態において、転がり軸受を備えた車両の製造方法は、上記の転がり軸受の製造方法により、前記転がり軸受を製造する工程を備える。
【0125】
一実施形態において、転がり軸受を備えた機械の製造方法は、上記の転がり軸受の製造方法により、前記転がり軸受を製造する工程を備える。
【0126】
一実施形態において、プレス成形品は、平板形状を有する。前述した実施形態において、プレス成形品は、円環平板形状を有する。別の実施形態において、プレス成形品は円板形状を有することができる。前述した製造方法を参照して、円板形状のプレス成形品を製造することができることは言うまでもない。他の実施形態において、プレス成形品は、別の形状を有することができる。上記で説明したいずれかの方法を参照して、プレス成形品を製造することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 スラストころ軸受
2a、2b スラストレース(プレス成形品)
3 ころ
4 保持器
4a、4b 金属板
5a、5b スラスト軌道面
6 ポケット
7 第1面
8 第2面
9 第1内周側ダレ
10 第1外周側ダレ
11 第1平坦部(非研削面)
12 第2内周側ダレ
13 第2外周側ダレ
14 第2平坦部(非研削面)
15 金属板
16 第1下型
16a 第1ダイ孔
16b 第1ダイクッション
18 第1上型
19 第1中間素材
20 第1内周側ダレ
21 第1外周側ダレ
22 第2内周側バリ部
23 第2外周側バリ部
24 第2平坦部
25 第2上型
26 第2下型
26a 第2ダイ孔
26b 第2ダイクッション
27 押圧面
27a 平坦押圧面
27b 内周側湾曲押圧面
27c 外周側湾曲押圧面
28 第2中間素材
29 大幅部
30 小幅部
31 第3下型
31a 第3ダイ孔
31b 第3ダイクッション
33 第3上型
34 内径側張出部
35 外径側張出部
36 金属板
37 パイロット孔
38a、38b 円弧溝
39 アワーグラス
40 外周側ダレ
41 つなぎ部
42 ランス
43 円孔
44 内周側ダレ
45 外周側環状凹溝
46 外側搾出部
47 内周側環状凹溝
48 内側搾出部
100 スラストころ軸受
101a、101b スラストレース
102 ころ
103 保持器
104a、104b スラスト軌道面
105 ポケット
106 面取り部
【要約】
プレス成形品の製造方法は、金属素材をパンチングして第1ピース(19、55)を得る工程と、第1ダイ(25)と第2ダイ(26)との間に第1ピース(19、55)を挟んだ状態で、第1ピース(19、55)の第2面(8)の縁部を潰して第2ピース(28、56)を得る工程と、プレス加工を用いて第2ピース(28)をトリミングする工程と、を備える。