(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20220913BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220913BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20220913BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220913BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220913BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20220913BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
B60C3/04 Z
B60C11/00 H
B60C11/03 Z
B60C11/03 100B
C08K3/013
C08K5/548
C08L21/00
(21)【出願番号】P 2022542290
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2021029615
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2020169923
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健宏
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特許第6863504(JP,B1)
【文献】特許第6863503(JP,B1)
【文献】特許第6919744(JP,B1)
【文献】特開2020-158709(JP,A)
【文献】特開2018-123260(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143380(WO,A1)
【文献】特開2019-194282(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2108527(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/013
C08K 5/548
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記タイヤの最大負荷能力W
L(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/W
L)が0.0150以下であり、
タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、
前記トレッドは、ゴム成分、フィラー、およびシランカップリング剤を含有するゴム組成物からなる少なくとも1層のゴム層を有し、
周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件で測定した前記ゴム組成物の15℃から30℃におけるtanδの平均値が0.20以下であるタイヤ。
(π/4)×(Dt
2/Wt)≧1700 ・・・(1)
【請求項2】
前記タイヤ重量G(kg)に対する、周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した前記ゴム組成物の30℃におけるtanδの比(30℃におけるtanδ/G)が0.010超である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した前記ゴム組成物の30℃におけるtanδが0.28以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物の比重が1.270以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム成分に含まれるスチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴム中の総スチレン含有量が60質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記シランカップリング剤が、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつ前記アルコキシシリル基を構成するケイ素原子と硫黄原子との間に介在する炭素原子数が6以上であるポリスルフィド化合物を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向溝によって仕切られた、一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置するセンター陸部を有し、
少なくとも1つの前記陸部において、トレッド面への開口面積が0.1~15mm
2の小穴を1個以上有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をS
ceとしたとき、S
ce/Srが0.35~0.80である、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向溝と、幅方向溝とを有し、任意にサイプを有していてもよく、
前記タイヤの周方向の長さをLa、前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb1および前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、La/Lbが0.10~0.30である、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、Sg/Stが0.15~0.35である、請求項9記載のタイヤ。
【請求項11】
Sg1/Stが0.09~0.16であり、Sg2/Stが0.08~0.14である、請求項10記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤが路面上の突起物を乗り越えるときや、このタイヤがポットホールに落ち込んだときに、タイヤのサイド部(ビード等)が大きく変形することがある。通常、ビードの周りには、カーカスプライが位置しているが、ビードの部分の変形によりカーカスプライに引張応力が負荷され、その結果カーカスプライに含まれるコードが切断されることが起こりうる。このコードの切断を伴う損傷は、ピンチカットと称される。
【0003】
特許文献1には、耐ピンチカット性能を向上させることを目的としたタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、タイヤ重量が大きい方が荷重耐久性および耐ピンチカット性能が高い例が示されている。しかしながら、今後は、タイヤ重量を小さくしつつ、耐ピンチカット性能を高めることが求められると考えられる。
【0006】
本開示は、低燃費性能および耐ピンチカット性能がバランスよく改善されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意検討した結果、タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、タイヤサイズ、およびトレッドを構成するゴム組成物のtanδを所定の範囲とすることにより、低燃費性能および耐ピンチカット性能がバランスよく改善されたタイヤが得られることが見出された。
【0008】
すなわち、本開示は、トレッドを備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下であり、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、前記トレッドは、ゴム成分、フィラー、およびシランカップリング剤を含有するゴム組成物からなる少なくとも1層のゴム層を有し、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件で測定した前記ゴム組成物の15℃から30℃におけるtanδの平均値が0.20以下であるタイヤに関する。
(π/4)×(Dt2/Wt)≧1700 ・・・(1)
【発明の効果】
【0009】
タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、タイヤサイズ、およびトレッドを構成するゴム組成物のtanδを所定の範囲とした本開示のタイヤは、低燃費性能および耐ピンチカット性能がバランスよく改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】トレッドを平面に押し付けたときのタイヤの接地面の模式図である。
【
図2】タイヤの断面における、タイヤ断面幅Wt、タイヤ断面高さHt、およびタイヤ外径Dtを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態であるタイヤは、トレッドを備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下(好ましくは0.0145以下、より好ましくは0.0140以下、さらに好ましくは0.0135以下、特に好ましくは0.0130以下)であり、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、前記トレッドは、ゴム成分、フィラー、およびシランカップリング剤を含有するゴム組成物からなる少なくとも1層のゴム層を有し、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件で測定した前記ゴム組成物の15℃から30℃におけるtanδの平均値が0.20以下(好ましくは0.19以下、より好ましくは0.18以下)であるタイヤである。
(π/4)×(Dt2/Wt)≧1700 ・・・(1)
【0012】
タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、タイヤサイズ、およびトレッドを構成するゴム組成物のtanδが上記の要件を満たすことで、得られたタイヤは、低燃費性能および耐ピンチカット性能がバランスよく改善される。その理由については、理論に拘束されることは意図しないが、以下のように考えられる。
【0013】
最大負荷能力に対して重量の軽いタイヤは、路面からの入力を緩和しにくいため、タイヤのサイド部の変形を生じさせやすく、縁石等の突起を乗り越えた際のサイド部での損傷や低燃費性能の悪化を招く懸念がある。そこで、かかる最大負荷能力に対して重量の軽いタイヤにおいて、上記式(1)の値を1700以上とし、タイヤの横方向面積に対するトレッド部の幅を小さくすることで、トレッド部由来の発熱を低下させることができる。これにより、タイヤにおいて、もっとも発熱に寄与の高いトレッド部の発熱による温度上昇を抑えることができ、タイヤの温度、サイド部の温度が高くなることを防ぎ、耐ピンチカット性能が低下することを防止しつつ、低燃費性能の悪化を抑えることができると考えられる。
【0014】
また、上記の軽いタイヤの転動時は、従来よりも振動の周波数が高周波であり、かつ微小変形と考えられるので、常温よりも低い温度から常温付近の損失正接tanδの平均値(本開示では、15℃から30℃における損失正接tanδの平均値)を所定の値より小さくすることにより、トレッド部由来の発熱をより低減させることが可能となり、耐ピンチカット性能と低燃費性能をより向上させることができると考えられる。
【0015】
本開示において、タイヤ断面幅Wt(mm)、タイヤ断面高さHt(mm)、およびタイヤ外径Dt(mm)は、タイヤが正規リムに装着され、内圧が250kPa以上となるようにタイヤに空気が充填され、かつ無負荷の状態で測定される。なお、「タイヤ断面幅」は、前記の状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。なお、規格に定められていないタイヤの場合には、前記の正規リムは、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、すなわち、リム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムのうち、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0016】
本開示のタイヤは、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
(π/4)×(Dt2/Wt)≧1700 ・・・(1)
【0017】
ここで、Dtが大きくなると式(1)の値は大きくなり、逆に小さくなれば同値は小さくなる一方、Wtが大きくなると式(1)の値は小さくなり、逆に小さくなれば同値は大きくなる関係にあるから、この点に着目して、DtとWtを調節することで、DtとWtが式(1)を満たすように調節することができる。
【0018】
式(1)の値は、1750以上が好ましく、1800以上がより好ましく、1900以上がさらに好ましく、1950以上がさらに好ましく、2000以上が特に好ましい。また、式(1)の値は、2800以下が好ましく、2700以下がより好ましく、2600以下がさらに好ましい。
【0019】
式(1)を満たすタイヤサイズとしては、具体的には、145/60R18、145/60R19、155/55R18、155/55R19、155/70R17、155/70R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/65R19、165/70R18、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/55R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20等が挙げられる。
【0020】
本明細書において最大負荷能力WL(kg)は、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ断面高さをHt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、下記式(2)および(3)により算出される値であり、JATMA規格で定められるロードインデックス(LI)に基づく最大負荷能力よりも50kg~100kgほど小さい値となる。なお、タイヤ断面高さをHtは、ビード部底面からトレッド最表面までの距離であり、タイヤの外径とリム径の呼びとの差の1/2である。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt ・・・(2)
WL=0.000011×V+100 ・・・(3)
【0021】
本明細書において「タイヤ重量」はG(kg)で表す。ただし、Gはリムの重量を含まないタイヤ単体の重量である。また、タイヤ内宮部に制音材、シーラント、センサーなどを取り付けた場合には、Gはこれらの重量を含む値である。なお、タイヤ重量Gは常法により変動させることができ、すなわち、タイヤを構成する材質の比重を大きくする、比重の大きい材料の量を多くする、あるいは、タイヤの各部材の厚さを大きくすることにより大きくすることができ、その逆により小さくすることもできる。
【0022】
本開示に係るタイヤは、最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下であり、0.0145以下が好ましく、0.0140以下がより好ましく、0.0135以下がさらに好ましく、0.0130以下が特に好ましい。一方、G/WLの下限値は特に限定されないが、例えば、0.0080以上、0.0090以上、0.0100以上とすることができる。
【0023】
最大負荷能力WL(kg)は、本開示の効果をより良好に発揮する観点から、300以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上がさらに好ましい。また、最大負荷能力WL(kg)は、本開示の効果をより良好に発揮する観点から、例えば、1300以下、1200以下、1100以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、650以下とすることができる。なお、最大負荷能力WLは、前記のタイヤが占める空間の仮想体積Vを大きくすることにより大きくすることができ、その逆により小さくすることもできる。
【0024】
前記タイヤ重量G(kg)に対する、周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した前記ゴム組成物の30℃におけるtanδの比(30℃におけるtanδ/G)は、0.010超が好ましく、0.015超がより好ましく、0.020超がさらに好ましく、0.022超がさらに好ましく、0.024超がさらに好ましく、0.026超が特に好ましい。タイヤ重量が軽くなるにつれて、路面凹凸による衝撃が緩和されにくくなり、衝撃が加わる際は、転動時よりも変形が大きくなる傾向がある。タイヤ重量G(kg)に対する前記ゴム組成物の30℃におけるtanδの比(30℃におけるtanδ/G)を前記の範囲とすることにより、タイヤ重量に応じて前記ゴム組成物の30℃におけるtanδを高めることとなる。その結果、本開示のゴム層によりエネルギーを吸収しやすくし、カーカスプライに負荷される引張応力を緩和することで、耐ピンチカット性能が改善されると考えられる。一方、30℃におけるtanδ/Gの上限値は特に限定されないが、例えば、0.070未満、0.060未満、0.050未満、0.045未満、0.040未満、0.037未満、0.034未満とすることができる。
【0025】
周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した前記ゴム組成物の30℃におけるtanδは、0.28以下であることが好ましい。
【0026】
前記ゴム組成物の比重は、低燃費性能および操縦安定性の観点から、1.270以下が好ましく、1.250以下がより好ましく、1.220以下がさらに好ましく、1.200以下が特に好ましい。
【0027】
前記ゴム成分に含まれるスチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴム中の総スチレン含有量は、60質量%以下であることが好ましい。
【0028】
前記ゴム成分は、変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを含有することが好ましい。
【0029】
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつ前記アルコキシシリル基を構成するケイ素原子と硫黄原子との間に介在する炭素原子数が6以上であるポリスルフィド化合物を含有することが好ましい。
【0030】
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向溝によって仕切られた、一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置するセンター陸部を有し、少なくとも1つの前記陸部において、トレッド面への開口面積が0.1~15mm2の小穴を1個以上有することが好ましい。なお、本開示において、「小穴」とは、トレッド内から延在しトレッド踏面へ開口するものをいう。
【0031】
前記陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をSceとしたとき、Sce/Srは、0.35~0.80であることが好ましい。
【0032】
前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向溝と、幅方向溝とを有し、任意にサイプを有していてもよく、前記タイヤの周方向の長さをLa、前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb1および前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、La/Lbが0.10~0.30であることが好ましい。
【0033】
前記トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、Sg/Stは、0.15~0.35であることが好ましい。Sg1/Stは0.09~0.16が好ましく、Sg2/Stは0.08~0.14が好ましい。
【0034】
本開示の一実施形態であるトレッドを含むタイヤの作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本開示を説明するための例示であり、本開示の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0035】
図1に、トレッドを平面に押し付けたときの接地面の模式図を示す。本開示に係るタイヤを構成するトレッド10は、
図1に示すように、タイヤ周方向Cに連続して延びる(
図1の例では、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる)周方向溝1と、幅方向に延びる横溝21およびサイプ22、23とを有する。
【0036】
トレッド10は、周方向Cに連続して延びる複数の周方向溝1を有している。
図1においては、周方向溝1は3本設けられているが、周方向溝の数は特に限定されず、例えば2本~5本であってもよい。また、周方向溝1は、本開示では、周方向に沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、周方向に沿って波状や正弦波状やジクザク状に延びていてもよい。
【0037】
トレッド10は、タイヤ幅方向Wで、複数の周方向溝1によって仕切られた陸部2を有している。ショルダー陸部11は、周方向溝1とトレッド端Teとの間に形成された一対の陸部である。センター陸部12は、一対のショルダー陸部11の間に形成された陸部である。
図1においては、センター陸部12は2つ設けられているが、センター陸部の数は特に限定されず、例えば1つ~5つであってもよい。
【0038】
陸部2には、横溝(幅方向溝)および/またはサイプが設けられていることが好ましい。
図1においては、ショルダー陸部11には、末端が周方向溝1に開口している複数のショルダー横溝21と、片端が周方向溝1に開口している複数のショルダーサイプ22とが設けられ、センター陸部12には、片端が周方向溝1に開口している複数のセンターサイプ23が設けられている。本開示では、センター陸部12を横断し、両端が周方向溝に開口するような横溝(幅方向溝)およびサイプを有しないことが好ましい。
【0039】
陸部2は、小穴を1個以上有することが好ましい。
図1では、センター陸部12において、小穴24が、センターサイプ23のタイヤ幅方向部分およびタイヤ周方向部分と、当該センターサイプ23とタイヤ周方向に隣り合うセンターサイプ23で囲まれる陸部分に2個配設されている。小穴のトレッド面への開口面積Sは、0.1~15mm
2が好ましく、0.5~10mm
2がより好ましく、1.0~7.0mm
2がさらに好ましく、1.5~5.0mm
2が特に好ましい。前記開口面積の小穴を設けることにより、他性能に悪影響を与えず、トレッド部の表面積を大きくすることが可能となるため、トレッド部での放熱性が良化し、タイヤ及びサイド部での温度上昇を抑制することが可能となると考えられる。
【0040】
センター陸部12において、タイヤの周方向Cの長さLa(mm)に対する小穴24の総数N(N/La)は、0.05~2.0が好ましく、0.1~1.0が好ましく、0.2~0.8がさらに好ましい。
【0041】
周方向溝1の最深部の深さは、3.0~10.0mmが好ましく、4.0~9.0mmが好ましく、5.0~8.0mmがさらに好ましい。また、小穴24の最深部の深さは、周方向溝1の最深部の深さの30~90%が好ましく、40~80%がより好ましい。
【0042】
なお、本明細書において、周方向溝、幅方向溝を含め「溝」は、少なくとも2.0mmよりも大きい幅の凹みをいう。一方、本明細書において、「サイプ」は、幅が2.0mm以下、好ましくは0.5~1.5mmの細い切り込みをいう。
【0043】
また、本開示のタイヤは、陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をSceとしたとき、Sce/Srは、0.35以上が好ましく、0.40以上がより好ましく、0.42以上がさらに好ましく、0.44以上が特に好ましい。また、Sce/Srは、0.80以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましく、0.55以下が特に好ましい。Sce/Srを上記の範囲とすることにより、トレッド部のセンター領域での剛性が最適化され、衝撃が伝わった際にトレッド部においても衝撃が吸収できるようになり、サイド部での過度な変形が抑制されると考えられる。
【0044】
本開示のタイヤは、トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、Sg/Stは、0.15以上が好ましく、0.18以上がより好ましく、0.21以上がさらに好ましい。また、Sg/Stは、0.35以下が好ましく、0.33以下がより好ましく、0.31以下がさらに好ましい。
【0045】
Sg1/Stは、0.09以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.11以上がさらに好ましい。また、Sg1/Stは、0.16以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.14以下がさらに好ましい。
【0046】
Sg2/Stは、0.08以上が好ましく、0.09以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。また、Sg1/Stは、0.14以下が好ましく、0.13以下がより好ましい。
【0047】
接地面積に対する全溝面積、周方向溝の合計面積、ならびに幅方向溝およびサイプの合計面積の割合を上記範囲とすることにより、トレッド部の表面積を増やして、放熱性を高めつつ、トレッド部の剛性が最適化されると考えられる。
【0048】
なお、本明細書において、小穴のトレッド面への開口面積S、陸部全体の面積Sr、センター陸部の合計面積Sce、周方向溝の合計面積Sg1、並びに幅方向溝およびサイプの合計面積Sg2は、タイヤを正規リムに装着させ、内圧250kPaを保持させた後、最大負荷能力WL(kg)を負荷してトレッドを平面に押し付けたときの接地形状から計算される。接地形状は、タイヤを正規リムに装着させ、内圧250kPaを保持させた後、例えば、トレッド10にインクを塗布し、最大負荷能力WL(kg)を負荷して厚紙等に垂直に押し付け、(キャンバー角は0°)、トレッド10に塗布されたインクを転写することにより得られる。また、得られた接地形状の外輪により得られる面積を、全て小穴および溝を埋めた状態でのトレッド部の接地面積をStとする。
【0049】
本開示のタイヤは、タイヤの周方向Cの長さをLa、幅方向溝21の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lb1およびサイプ22、23の幅方向Wのエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、La/Lbは、0.10以上が好ましく、0.12以上がより好ましく、0.13以上がさらに好ましく、0.14以上が特に好ましい。また、La/Lbは、0.30以下が好ましく、0.27以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましく、0.23以下が特に好ましい。幅方向溝21およびサイプ22、23のエッジ成分の長さと、タイヤの周方向Cの長さLaとの関係を上記範囲とすることによって、トレッド10の変形を所定範囲とし、陸部11、12の面積を所定以上に確保することができ、本開示の効果をより向上させることができる。
【0050】
なお、幅方向溝21およびサイプ22、23の「幅方向Wのエッジ成分の長さ」とは、幅方向溝21およびサイプ22、23の幅方向Wの投影長さ(幅方向成分および周方向成分のうち、幅方向成分)をいう。
【0051】
本開示のトレッド部は、少なくとも1層のゴム層を有している。該ゴム層は、単一のゴム層により形成されていてもよく、外面がトレッド面を構成するゴム層(第一層、キャップゴム層)の半径方向内側に、さらに1以上のゴム層を有していてもよい。ゴム層が2層以上によって構成されている場合、2層以上のゴム層のうち少なくとも1つが上述した所定のゴム組成物によって構成されていればよいが、第一層(キャップゴム層)に、上述した所定のゴム組成物を使用することが好ましい。
【0052】
本開示のゴム組成物を、第一層(キャップゴム層)として配置した場合は、路面への追従性が良好となり乗り心地性能を向上させるとともに、路面との摩擦による発熱を低減することで耐ピンチカット性能を向上させることができると考えられる。また、本開示のゴム組成物を、キャップゴム層の半径方向内側に隣接する第二のゴム層(第二層)として配置した場合は、路面からのゴム層の遠い位置に柔らかいゴム層(本開示のゴム組成物によって構成された第二層)が存在することになり、前記陸部のせん断による変形が生じた際に、前記ゴム層に変形を集中させ、発熱性の低いゴム層で効率的に変形させることができるため、耐ピンチカット性能を向上させることができると考えられる。
【0053】
本開示のトレッド部は、タイヤ内周面に、シーラント層、スポンジ等の制音体、その他電子部品等を備えていてもよい。この場合、前記タイヤ重量G(kg)は、シーラント層、スポンジ等の制音体、その他電子部品等を含めた総重量とする。
【0054】
本開示のゴム組成物の15℃から30℃における損失正接tanδの平均値tanδAは、ウェットグリップ性能の観点から、0.12以上が好ましく、0.13以上がより好ましく、0.14以上がさらに好ましい。また、低燃費性能の観点からは、0.20以下であり、0.19以下が好ましく、0.18以下がより好ましい。なお、本開示のゴム組成物の前記tanδAは、15℃~30℃の間で、3℃よりも小さい温度間隔で、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件でtanδを測定し、得られた数値を平均化することにより求めることができる。
【0055】
本開示のゴム組成物の、周波数10Hz、初期歪5%、振幅±1.0%の条件で測定した30℃におけるtanδは、低燃費性能の観点から、0.28以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.22以下がさらに好ましく、0.20以下が特に好ましい。また、ウェットグリップ性能の観点からは、0.11以上が好ましく、0.12以上がより好ましく、0.13以上がさらに好ましい。
【0056】
<ゴム成分>
本開示に係るゴム成分は、ブタジエン系ゴムを含有することが好ましい。ブタジエン系ゴムとしては、ブタジエン骨格を有するポリマーであれば特に制限されないが、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられ、SBRおよびBRからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、SBRおよびBRを含有することがより好ましい。
【0057】
ゴム成分中のブタジエン系ゴム(好ましくはSBRおよび/またはBR)の含有量は、本開示の効果の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0058】
(SBR)
SBRとしては特に限定されず、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。なかでもS-SBRが好ましく、変性S-SBRがより好ましい。
【0059】
変性SBRとしては、通常この分野で使用される官能基が導入された変性SBRが挙げられる。上記官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基が挙げられる。また、変性SBRとしては、水素添加されたもの、エポキシ化されたもの、スズ変性されたもの等を挙げることができる。
【0060】
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
【0061】
前記で列挙されたSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記で列挙されたSBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ZSエラストマー(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0062】
SBRのスチレン含量は、トレッド部での減衰性の確保およびウェットグリップ性能の観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐摩耗性能の観点からは、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される。
【0063】
SBRのビニル含量は、シリカとの反応性の担保、ゴム強度や耐摩耗性能の観点から10モル%以上が好ましく、13モル%以上がより好ましく、16モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル含量は、温度依存性の増大防止、ウェットグリップ性能、破断伸び、および耐摩耗性能の観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0064】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から15万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、250万以下が好ましく、200万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0065】
ゴム成分中のSBRの含有量は、トレッド部での減衰性の確保およびウェットグリップ性能の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また、トレッド部の発熱抑制による耐ピンチカット性能向上の観点からは、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
【0066】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50質量%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90質量%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。変性BRとしては、上記SBRで説明したのと同様の官能基等で変性されたBRが挙げられる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで、耐摩耗性能を向上させることができる。シス含量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。なお、本明細書において、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0068】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル含量が、好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.8%モル以下であり、シス含量が、好ましくは95質量%以上、より好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0069】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0070】
変性BRとしては、末端および/または主鎖がケイ素、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む官能基によって変性された変性ブタジエンゴム(変性BR)が好適に用いられる。
【0071】
その他の変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)等が挙げられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。
【0072】
前記で列挙されたBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0074】
ゴム成分中のBRの含有量は、耐摩耗性能および耐ピンチカット性能の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。また、ウェットグリップ性能の観点からは、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
【0075】
本開示において「スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴム中の総スチレン含有量」とは、SBRのスチレン含量に、SBRおよびBRの総含有量に対するSBRの含有量(SBR/(SBR+BR))を乗じた値を意味する。本開示に係るゴム成分において、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴム中の総スチレン含有量を8質量%以上とすることにより、ウェットグリップ性能を担保することができる。好ましくは12質量%以上、より好ましくは16質量%以上である。また、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴム中の総スチレン含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
【0076】
(他のゴム成分)
ゴム成分は、本開示の効果に影響を与えない範囲で、ブタジエン系ゴム以外の他のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、イソプレン系ゴム、スチレンイソプレンゴム(SIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられ、イソプレン系ゴムが好ましい。
【0077】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム等を、変性NRとしてはエポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等を、変性IRとしてはエポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等を挙げることができる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
イソプレン系を含有する場合のゴム成分中の含有量は、トレッド部での減衰性の確保の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。一方、イソプレン系のゴム成分中の含有量の下限は特に制限されないが、例えば1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上とすることができる。
【0079】
<フィラー>
本開示に係るゴム組成物は、フィラーとして、シリカを含有することが好ましく、カーボンブラックおよびシリカを含有することがより好ましい。また、フィラーは、カーボンブラックおよびシリカのみからなるフィラーとしてもよい。
【0080】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、分散性、低燃費性能、破壊特性および耐ピンチカット性能の観点からは、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2:2017「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」のA法に準じて測定される値である。
【0082】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐候性や補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、トレッド部の発熱抑制による耐ピンチカット性能向上の観点からは、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8質量部以下が特に好ましい。
【0083】
(シリカ)
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、140m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、170m2/g以上が特に好ましい。また、発熱性および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0085】
シリカの平均一次粒子径は、20nm以下が好ましく、18nm以下がより好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましい。シリカの平均一次粒子径が前期の範囲であることによって、シリカの分散性をより改善でき、補強性、破壊特性、耐摩耗性をさらに改善できる。なお、シリカの平均一次粒子径は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0086】
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、トレッド部での減衰性の確保およびウェットグリップ性能の観点から、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましく、70質量部以上が特に好ましい。また、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点、およびトレッド部の発熱抑制による耐ピンチカット性能向上の観点からは、120質量部以下が好ましく、110質量部以下がより好ましく、105質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0087】
(その他のフィラー)
シリカおよびカーボンブラック以外のフィラーとしては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク等、従来からタイヤ工業において一般的に用いられているものを配合することができる。
【0088】
シリカおよびカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、該シリカの含有率は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
【0089】
フィラーのゴム成分100質量部に対する合計含有量は、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点から、130質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、110質量部以下がさらに好ましく、105質量部以下が特に好ましい。また、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、45質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、65質量部以上がさらに好ましく、75質量部以上が特に好ましい。
【0090】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXT等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましく、下記のポリスルフィド化合物を含有することがより好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
本開示のシランカップリング剤は、アルコキシシリル基および硫黄原子を含み、かつ前記アルコキシシリル基を構成するケイ素原子と硫黄原子との間に介在する炭素原子数が6以上であるポリスルフィド化合物を含有することが好ましく、かかるポリスルフィド化合物のみからなるスルフィド系シランカップリング剤としてもよい。このようなポリスルフィド化合物としては、下記式(I)で表されるポリスルフィド化合物を例示することができる。
【化1】
(式中、xは、硫黄原子の平均個数を表し;mは、6以上の整数を表し;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を表し;R
1、R
2、R
3のうち少なくとも1つ、およびR
4、R
5、R
6のうち少なくとも1つは炭素数1~6のアルコキシ基である)
【0092】
xは、硫黄原子の平均個数を表す。xは、2以上12以下が好ましく、3.5以上12以下がより好ましい。ここで、ポリスルフィド化合物中の硫黄原子の平均個数およびケイ素原子の個数は、蛍光X線により組成物中の硫黄量、珪素量を測定しそれぞれの分子量より換算した値である。
【0093】
mは、6~14が好ましく、6~12がより好ましい。
【0094】
前記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~4がより好ましい。該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0095】
前記アルコキシ基の炭素数は、1~5が好ましく、1~4がより好ましい。該アルコキシ基のアルキル部分は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0096】
R1、R2、R3のうち少なくとも2つ、およびR4、R5、R6のうち少なくとも2つは炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。
【0097】
なお、R1とR2および/またはR4とR5が連結し、それらが結合するケイ素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。例えば、R1のエトキシ基とR2のメチル基が連結して「-O-C2H4-CH2-」という2価の基が形成され、ケイ素原子に結合した構造等が挙げられる。
【0098】
式(I)で表されるポリスルフィド化合物は、例えば、特開2018-65954号公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開2018-65954号公報に記載の、式(I-1)のハロゲン含有機ケイ素化合物、無水硫化ソーダ(Na2S)、さらに必要に応じて硫黄を反応させる。前記反応を行う際、スルフィド鎖の調整のため、任意に硫黄を添加することができ、所望の平均組成式(I)の化合物となるように、平均組成式(I-1)の化合物、無水硫化ソーダ、および硫黄の配合比を決定すればよい。例えば、平均組成式(I)の化合物のxを3.5にしたい場合、無水硫化ソーダ1.0molと、硫黄2.5molと、式(I-1)の化合物2.0molとを反応させればよい。
【0099】
シランカップリング剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する合計含有量は、シリカの分散性を高める観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、4.0質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、20質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、8.0質量部以下が特に好ましい。
【0100】
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量(複数のシランカップリング剤を併用する場合は全ての合計量)は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
【0101】
<樹脂成分>
本開示に係るゴム組成物は、樹脂成分を含有することが好ましい。樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂が挙げられる。これらの石油樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0104】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体、またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0105】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0106】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0107】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0108】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0109】
樹脂成分の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度として定義され得る。
【0110】
樹脂成分としては、乗り心地性能、耐ピンチカット性能およびウェットグリップ性能がバランスよく得られる観点から、芳香族系石油樹脂が好ましく、芳香族ビニル系樹脂がより好ましい。
【0111】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、乗り心地性能およびウェットグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、耐ピンチカット性能の観点からは、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
【0112】
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、オイル、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0113】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルが挙げられる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、オイル芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、および重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0114】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および耐ピンチカット性能の観点からは、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0115】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0116】
加工助剤としては、未加硫時におけるゴムの低粘度化や離型性の確保を目的とした脂肪酸金属塩や、ゴム成分のミクロな層分離を抑制する観点から広く相溶化剤として市販されているもの等を使用することができる。
【0117】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0118】
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩などの老化防止剤が挙げられる。
【0119】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0120】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0121】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0122】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0123】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0124】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0125】
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤およびグアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0126】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等が挙げられる。これらの加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8.0質量部以下が好ましく、7.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましく、5.0質量部以下が特に好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0128】
本開示に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0129】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
【0130】
[タイヤ]
本開示に係るタイヤは、上記ゴム組成物により構成されるトレッドを備えるものであり、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等が挙げられ、乗用車用タイヤが好ましい。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。また、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以下のものを指す。また、本開示のタイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。
【0131】
上記ゴム組成物から構成されるトレッドを備えたタイヤは、通常の方法により製造することができる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、トレッドを構成する少なくとも1層のゴム層の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【実施例】
【0132】
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0133】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
SBR1:後述の製造例1で製造した変性S-SBR(スチレン含量:40質量%、ビニル含量:25モル%、Mw:100万、非油展品)
SBR2:後述の製造例2で製造した変性S-SBR(スチレン含量:25質量%、ビニル含量:25モル%、Mw:100万、非油展品)
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR(登録商標)150B(シス含量:97質量%、Mw:44万)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックN220(N2SA:115m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:17nm)
シランカップリング剤1:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ社製のNXT-Z45(メルカプト系シランカップリング剤)
シランカップリング剤3:後述の製造例3で製造したポリスルフィド化合物からなるスルフィド系シランカップリング剤
オイル:H&R社製のVivaTec400(TDAEオイル)
樹脂成分:クレイトン社製のSylvares SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS))
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0134】
製造例1:SBR1の合成
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込んだ。スチレンおよび1,3-ブタジエンの比率は、スチレン含量が40質量%となるように調整した。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は80℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加する。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、SBR1を得た。
【0135】
製造例2:SBR2の合成
スチレンおよび1,3-ブタジエンの比率を、スチレン含量が25質量%となるように調整した以外は製造例1と同様の方法で、SBR2を得た。
【0136】
製造例3:シランカップリング剤3の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、無水硫化ソーダ78.0g(1.0モル)、硫黄80.3g(2.5モル)およびエタノール480gを仕込み、80℃に加熱した。その後、混合物中に、6-クロロヘキシルトリエトキシシラン566g(2.0モル)を滴下投入し、80℃にて10時間加熱撹拌した。反応液を、濾過板を用いて加圧濾過し、反応中に生成した塩を除去した。得られた濾液を100℃まで加熱し、10mmHg以下の減圧下でエタノールを留去することで、シランカップリング剤3(硫黄量:18.5質量%、x=3.5、m=6)を得た。
【0137】
(実施例および比較例)
表1~表4に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することで、試験用加硫ゴム組成物を作製した。
【0138】
また、得られた未加硫ゴム組成物を用いて、所定の形状の口金を備えた押し出し機でトレッドの第一層(厚さ:7mm)の形状に合わせて押し出し成形し、トレッドの第二層(厚さ:2mm)および他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、表1~表4に記載の各試験用タイヤを作製した。
【0139】
各試験用タイヤに250kPaの空気を充填したときのタイヤ断面幅Wt(mm)、タイヤ断面高さHt(mm)、およびタイヤ外径Dt(mm)を測定し、最大負荷能力WL(kg)、および式(1)の値((π/4)×(Dt2/Wt))を算出した。また、得られた試験用加硫ゴム組成物および試験用タイヤについて下記の評価を行った。
【0140】
<tanδの測定>
加硫後の各ゴム試験片を、各試験用タイヤのトレッド部の各ゴム層から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ2mmで切り出して作製した。各ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件下、15℃~30℃の間で、3℃間隔で損失正接tanδを測定し、得られた数値を平均化することにより、15℃から30℃におけるtanδの平均値tanδAを求めた。また、30℃におけるtanδを、周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した。結果を表1~表4に示す。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
【0141】
<低燃費性能>
各試験用タイヤに250kPaの空気を充填し、JIS D 4234:2009に準拠して各試験用タイヤの転がり抵抗係数を測定した。転がり抵抗係数の逆数の値を、基準比較例(表1および表2では比較例1、表3および表4では比較例9)を100として指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能が良好であることを示す。
【0142】
<耐ピンチカット性能>
各試験用タイヤに250kPaの空気を充填し、排気量が2000ccである自動車に装着した。装着後、車両に荷物を積み込み、正規荷重に相当する縦荷重をタイヤに負荷した。テストコースの路面上に高さ200mmの突起を設け、この車両を走行させて前輪でこの突起を乗り越えさせた。このタイヤを目視で観察して、ピンチカットによる損傷の発生の有無を確認した。車両の速度は40km/hから開始し、速度を0.5km/hずつ段階的に上昇させて、タイヤに損傷が生じた速度を測定し、基準比較例(表1および表2では比較例1、表3および表4では比較例9)を100として指数表示した。指数が大きいほど、ピンチカットが発生し難いことを示す。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
表1~表4の結果より、タイヤの最大負荷能力に対するタイヤ重量、タイヤサイズ、およびトレッドを構成するゴム組成物のtanδを所定の範囲とした本開示のタイヤは、低燃費性能および耐ピンチカット性能がバランスよく改善されていることがわかる。
【0148】
<実施形態>
本開示の実施形態の例を以下に示す。
【0149】
〔1〕トレッドを備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下(好ましくは0.0145以下、より好ましくは0.0140以下、さらに好ましくは0.0135以下、特に好ましくは0.0130以下)であり、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、前記トレッドは、ゴム成分、フィラー、およびシランカップリング剤を含有するゴム組成物からなる少なくとも1層のゴム層を有し、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件で測定した前記ゴム組成物の15℃から30℃におけるtanδの平均値が0.20以下(好ましくは0.19以下、より好ましくは0.18以下)であるタイヤ。
(π/4)×(Dt2/Wt)≧1700 ・・・(1)
〔2〕前記タイヤ重量G(kg)に対する、周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した前記ゴム組成物の30℃におけるtanδの比(30℃におけるtanδ/G)が0.010超(好ましくは0.015超、より好ましくは0.020超、さらに好ましくは0.022超、さらに好ましくは0.024超、特に好ましくは0.026超)である、上記〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1.0%の条件で測定した前記ゴム組成物の30℃におけるtanδが0.28以下(好ましくは0.25以下、より好ましくは0.22以下、さらに好ましくは0.20以下)である、上記〔1〕または〔2〕記載のタイヤ。
〔4〕前記ゴム組成物の比重が1.270以下(好ましくは1.250以下、より好ましくは1.220以下、さらに好ましくは1.200以下)である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔5〕前記ゴム成分に含まれるスチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴム中の総スチレン含有量が60質量%以下(好ましくは8~60質量%、より好ましくは12~50質量%、さらに好ましくは16~40質量%)である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔6〕前記シランカップリング剤が、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつ前記アルコキシシリル基を構成するケイ素原子と硫黄原子との間に介在する炭素原子数が6以上であるポリスルフィド化合物を含有する、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔7〕前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向溝によって仕切られた、一対のショルダー陸部および前記一対のショルダー陸部の間に位置するセンター陸部を有し、少なくとも1つの前記陸部において、トレッド面への開口面積が0.1~15mm2(好ましくは0.5~10mm2、より好ましくは1.0~7.0mm2、さらに好ましくは1.5~5.0mm2)の小穴を1個以上有する、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔8〕前記陸部全体の面積をSr、前記センター陸部の合計面積をSceとしたとき、Sce/Srが0.35~0.80(好ましくは0.40~0.70、より好ましくは0.42~0.60、さらに好ましくは0.44~0.55)である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔9〕前記トレッド部が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向溝と、幅方向溝とを有し、任意にサイプを有していてもよく、前記タイヤの周方向の長さをLa、前記幅方向溝の前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb1および前記サイプの前記幅方向のエッジ成分の長さの合計Lb2の総和をLbとしたとき、La/Lbが0.10~0.30(好ましくは0.12~0.27、より好ましくは0.13~0.25、さらに好ましくは0.14~0.23)である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔10〕前記トレッド部の接地面積をSt、前記周方向溝の合計面積Sg1並びに前記幅方向溝および前記サイプの合計面積Sg2の総和をSgとしたとき、Sg/Stが0.15~0.35(好ましくは0.18~0.33、より好ましくは0.21~0.31)である、上記〔9〕記載のタイヤ。
〔11〕Sg1/Stが0.09~0.16(好ましくは0.10~0.15、より好ましくは0.11~0.14)であり、Sg2/Stが0.08~0.14(好ましくは0.09~0.14、より好ましくは0.10~0.13)である、上記〔10〕記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0150】
1・・・周方向溝
2・・・陸部
10・・・トレッド
11・・・ショルダー陸部
12・・・センター陸部
21・・・ショルダー横溝
22・・・ショルダーサイプ
23・・・センターサイプ
24・・・小穴
【要約】
トレッドを備えたタイヤであって、前記タイヤの最大負荷能力WL(kg)に対するタイヤ重量G(kg)の比(G/WL)が0.0150以下であり、タイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、WtおよびDtが、下記式(1)を満たし、前記トレッドは、ゴム成分、フィラー、およびシランカップリング剤を含有するゴム組成物からなる少なくとも1層のゴム層を有し、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%の条件で測定した前記ゴム組成物の15℃から30℃におけるtanδの平均値が0.20以下であるタイヤ。
(π/4)×(Dt2/Wt)≧1700 ・・・(1)