(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20220913BHJP
【FI】
G01N21/3581
(21)【出願番号】P 2017169811
(22)【出願日】2017-09-04
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510193027
【氏名又は名称】有限会社スペクトルデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】小川 千隼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】内田 清孝
(72)【発明者】
【氏名】碇 智文
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537630(JP,A)
【文献】特開2016-080452(JP,A)
【文献】特開2016-080655(JP,A)
【文献】特開2017-040484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00- 21/01
G01N 21/17- 21/61
G01J 1/02- 1/06
G01J 1/42
G01J 5/00- 5/90
G01R 29/08
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00- 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長帯域
として0.3THz以上の成分を含むテラヘルツ電磁波を
、射出範囲を限って回折を生じさせるようにして、検出対象に向けて発信する発信部と、
前記発信部から発信され前記検出対象を経たテラヘルツ電磁波
について、前記発信部における回折を利用して、前記所定波長帯域のうち0.3THzよりも高周波側の成分を受信する受信部と
を備え、
前記所定波長帯域と、前記所定波長帯域のうち前記受信部で受信する
0.3THzよりも高周波側の成分と、前記発信部から発信する際
に射出範囲が限られたビーム径とに応じて、光軸に沿ったテラヘルツ電磁波の進路における前記発信部から前記受信部までの距離を
、0.3THzよりも高周波側と0.3THz以下の低周波側とでの進行に伴う前記ビーム径の広がり度合の差に基づき定めた、検出装置。
【請求項2】
前記発信部から前記受信部までのテラヘルツ電磁波の進路中に配置され、前記所定波長帯域のうち高周波側の成分を抽出する抽出部をさらに備える、請求項
1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記発信部から発信されるテラヘルツ電磁波のうち光軸中心側の成分を取り出す、請求項
2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記抽出部は、テラヘルツ電磁波の一部を反射する反射部材を有する、請求項
2及び3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記発信部から前記受信部までの距離を3.6m以上とし、
前記反射部材は、
テラヘルツ電磁波の透過及び反射を行うビームスプリッターを通過した成分により前記検出対象の表面をスキャンするスキャン型ミラーであ
り、
前記受信部は、前記ビームスプリッターにおいて反射される戻り光の成分を受信する、請求項
4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記抽出部は、前記検出対象の検出位置の前段に設けられ、前記検出対象に向けてテラヘルツ電磁波を集光させる検出対象用集光レンズを有する、請求項
2~5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記抽出部は、前記検出対象の検出位置の後段に設けられ、前記検出対象を経たテラヘルツ電磁波を前記受信部に向けて集光させる受信部用集光レンズを有する、請求項
2~6のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記抽出部は、テラヘルツ電磁波の一部の成分を通過させるとともに他の成分を遮蔽する絞りを有する、請求項
2~7のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波長帯域の電磁波(テラヘルツ電磁波)を利用して対象物の状態を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の状態を検出するに際してテラヘルツ波長帯域の電磁波(テラヘルツ電磁波)を利用するものとして、例えば、ミラーやレンズを用いてテラヘルツビームを撮像対象に向けて走査させて画像を生成する画像生成装置が知られている(特許文献1参照)。なお、テラヘルツ電磁波の利用については、非破壊検査等の各種検査や、高分子化合物の分析への適用等、種々の可能性があると考えられている。
【0003】
テラヘルツ電磁波を使用するに際して、例えば上記のような画像生成における解像度の向上等を図るには、検出に際しての空間分解能を高めたいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、対象物の検出において、空間分解能の向上を図ることができる検出装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための検出装置は、所定波長帯域のテラヘルツ電磁波を検出対象に向けて発信する発信部と、発信部から発信され検出対象を経たテラヘルツ電磁波を受信する受信部とを備え、受信部が、所定波長帯域のうち、高周波側の成分を受信するように構成されている。
【0007】
上記検出装置では、所定波長帯域のテラヘルツ電磁波のうち高周波側の成分を受信部において受信するように構成されていることで、検出対象の検出における空間分解能の向上を図ることができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、回折を利用して所定波長帯域のうち高周波側の成分を受信するようにしている。この場合、回折を利用して低周波側の成分が減衰されることで、高効率に高周波側の成分を受信できる。
【0009】
本発明の別の側面では、受信部は、回折を利用して所定波長帯域のうち高周波側の成分を受信する位置にある。この場合、受信部の位置を高周波側の成分を受信できるようにすることで、高効率に高周波側の成分を検出できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、発信部から受信部までのテラヘルツ電磁波の進路中に配置され、所定波長帯域のうち高周波側の成分を抽出する抽出部をさらに備える。この場合、抽出部により、高周波側の成分の受信を確実にできる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、抽出部は、発信部から発信されるテラヘルツ電磁波のうち光軸中心側の成分を取り出す。この場合、光軸中心側の成分を取り出すことで、所定波長帯域のうち直進性の高い高周波側の成分の抽出ができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、抽出部は、テラヘルツ電磁波の一部を反射する反射部材を有する。この場合、反射部材を利用して、高い高周波側の成分の抽出ができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、反射部材は、検出対象の表面をスキャンするスキャン型ミラーである。この場合、スキャン型ミラーを利用して、高い高周波側の成分の抽出ができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、抽出部は、検出対象の検出位置の前段に設けられ、検出対象に向けてテラヘルツ電磁波を集光させる検出対象用集光レンズを有する。この場合、検出対象用集光レンズを利用して、高い高周波側の成分の抽出ができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、抽出部は、検出対象の検出位置の後段に設けられ、検出対象を経たテラヘルツ電磁波を受信部に向けて集光させる受信部用集光レンズを有する。この場合、受信部用集光レンズを利用して、高い高周波側の成分の抽出ができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、抽出部は、テラヘルツ電磁波の一部の成分を通過させるとともに他の成分を遮蔽する絞りを有する。この場合、絞りを利用して、高い高周波側の成分の抽出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る検出装置について一例を概念的に説明するための図である。
【
図2】(A)~(C)は、テラヘルツ電磁波の特性と成分抽出に関して説明するための図である。
【
図3】一変形例の検出装置について説明するための図である。
【
図4】他の一変形例の検出装置について説明するための図である。
【
図5】検出装置を利用した非破壊検査の一例について説明するための図である。
【
図6】検出装置を利用した非破壊検査の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る検出装置について一例を概念的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、第1実施形態に係る検出装置について一例を説明する。
図1は、検出装置の概略構成の一例を示す図である。本実施形態の一態様としての検出装置100は、テラヘルツ電磁波を送受信することで検出対象についての検出を行う装置であり、例えば、検出対象を非破壊検査における対象物あるいはその一部とすることで、対象物の破損の状況の検査に利用可能である。
【0019】
検出装置100は、所定波長帯域のテラヘルツ電磁波TWを検出対象DTに向けて発信する発信部Txと、発信部Txから発信され検出対象DTを経たテラヘルツ電磁波である反射成分RWを受信する受信部Rxと、所定波長帯域のテラヘルツ電磁波TWの成分のうち高周波側の成分TWaを抽出する抽出部EXとしての集光レンズCL1とを備える。ここでは、一例として、発信部Txから発信されるテラヘルツ電磁波TWの波長帯域は、周波数を0.1~2THzとする帯域であるものとする。これに対応して、受信部Rxは、周波数を0.1~2THzとする帯域の電磁波を受信可能となっている。
【0020】
発信部Txは、既述のように、周波数を0.1~2THzとする波長帯域すなわち150~3000μmの波長帯域のテラヘルツ電磁波TWを、光軸AXの方向を進行方向の中心として発信する電磁波発信装置である。
【0021】
受信部Rxは、テラヘルツ電磁波TWの波長帯域にある成分を受光可能な電磁波受信装置或いは電磁波測定装置である。受信部Rxは、テラヘルツ電磁波TWの進路中のうち、検出対象DTよりも後段に位置し、テラヘルツ電磁波TWのうち、検出対象DTで反射された反射成分RWを受信する。なお、図示では、1つの受信部Rxとしているが、受信側を複数の受信部で構成する、あるいは、1つの受信部Rxの中に複数の受光素子を備えて構成する、といったことも可能である。複数とすることで、反射成分RWの変化状況をより的確に捉えることができる。
【0022】
集光レンズCL1は、発信部Txから受信部Rxまでのテラヘルツ電磁波TWの進路中のうち、受信部Rxの直近前段に配置され、検出対象DTで反射された成分を受信部Rxに向けて集光させる受信部用集光レンズである。すなわち、集光レンズCL1も、検出対象DTよりも後段に位置している。
【0023】
また、受信部Rx及び集光レンズCL1をまとめて1つの光学系と見た場合の光軸BXは、光軸AXに対してやや傾斜して交差している。すなわち、発信部Txと受信部Rxとで非同軸な系となっている。光軸AXと光軸BXとの交差位置及びその周辺が、検出対象DTについての検出が可能な領域となる。ここでは、この領域を検出位置ARとする。
【0024】
見方を変えると、検出位置ARの範囲内に検出対象DTを移動させる、あるいは、検出装置100を動かして検出対象DTが検出位置ARの範囲内にある状態にすることで、検出対象DTに対してテラヘルツ電磁波TWを当てることが可能になる。
【0025】
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る検出装置100の動作について説明する。まず、発信部Txは、周波数を0.1~2THzとする波長帯域のテラヘルツ電磁波TWを発信する。
【0026】
発信されたテラヘルツ電磁波TWのうち、光軸AX上及びその近傍を通る成分(光軸AXの中心側の成分)が検出対象DTを照射し、一部の反射成分RWが集光レンズCL1により集光されて受信部Rxにおいて受信される。
【0027】
ここで、例えば検出装置100の発信部Txにおいて、開口等により射出範囲が限られた状態で光軸AXの延びる方向を中心方向としてテラヘルツ電磁波TWが発信されることで回折が生じる。上記波長帯域のような電磁波では、周波数を0.1~2THzとするうちの低周波側の電磁波ほど回折現象の影響が大きい。すなわち、図示のように、テラヘルツ電磁波TWの成分のうち、高周波側の成分TWaは、回折現象の影響が小さく直進性が高いため、発信部Txからの距離が延びてもあまり射出時のビーム径から広がらない状態が維持される。これに対して、低周波側の成分TWbは、発信部Txからの距離が延びるほど回折の影響でビーム径が広がっていき、光軸AXの中心側での強度が減衰する。特に、周波数0.3THz以下(波長が1mm以上)の成分については、回折の影響が大きいと考えられ、ある程度の距離を取ることで、光軸AXの中心側では、低周波側の成分TWbの十分な低減が可能となる。
【0028】
テラヘルツ電磁波を使用するに際して、例えば上記のような画像生成における解像度の向上等を図るには、検出に際しての空間分解能を高める必要があり、そのためには、できるだけ高周波側のテラヘルツ電磁波を利用したいという要請がある。しかしながら、現存するテラヘルツ電磁波の発信装置では、発信される波長帯域が比較的低周波側に成分のピークがあるものが多い。また、バンドパスフィルタ―を利用することで、発信されるテラヘルツ電磁波のうち低周波側の成分をカットする、といったことも考えられるが、テラヘルツ波長帯域のバンドパスフィルタ―については、高周波側の波長帯域の成分まである程度以上減衰させてしまうものとなっている。また、そもそも、バンドパスフィルタ―を用いた場合、部品の追加をすることとなり、コスト等の面でも不利となる。
【0029】
これに対して、本実施形態では、上記のように、回折現象を利用して、テラヘルツ電磁波TWを長距離で伝搬させることにより、低周波をカットし、高分解能化を実現している。
【0030】
すなわち、発信部Txから検出対象DT(あるいは検出位置AR)までの距離D1や、検出対象DT(あるいは検出位置AR)から受信部Rxまでの距離D2を長くするとともに、光軸AXや光軸BXの中心側の成分を抽出することで、受信部Rxにおいて、所定波長帯域のテラヘルツ電磁波TWのうち、高周波側の成分TWaをより多く受信することができるようにしている
【0031】
また、集光レンズCL1について、検出対象DTを反射した反射成分RWのうち、光軸BX上及びその近傍を通る成分(光軸BXの中心側の限られた範囲の成分)を集光させている、という機能を有する観点で、受信部Rxにおいて、所定波長帯域のテラヘルツ電磁波TWのうち、高周波側の成分TWaを抽出する抽出部EXとして機能していると捉えることができる。
【0032】
以下、
図2(A)~2(C)を参照して、テラヘルツ電磁波の性質等についてさらに説明する。
【0033】
まず、
図2(A)は、水蒸気や回折の影響を加味したテラヘルツ電磁波の成分についての透過率或いは残存率について例示するためのグラフであり、横軸に周波数、縦軸に成分の透過率又は残存率を示している。このうち、曲線X1は、テラヘルツ電磁波の周波数ごとの空気中における水蒸気(ここでは、湿度50%としている。)に対する透過率について示している。グラフから、全般的に低周波の成分ほど水蒸気に吸収されずに多く透過する傾向にあり、相対的に低周波側の成分が多く残ってしまうことが分かる。一方、曲線X2は、発信部Txから光軸AXに沿ったある程度の距離(図示の例では発信部Txから7mの位置)における光軸AX上での
回折に対するテラヘルツ電磁波の成分の透過率を示している。すなわち、曲線X2は、回折による損失を算出して透過率に換算したもの(回折透過率)を示している。これについては、既述のように、回折による影響の少ない高周波側の成分ほど多く残るものとなっている。また、図示を省略するが、回折透過率に関しては、相対的に高周波側の成分ほど多く残る傾向については、発信部Txからの距離が遠くなるほど強くなる。曲線X3は、水蒸気の影響を示す曲線X1と、回折の影響を示す曲線X2とを合わせたものである。したがって、この曲線X3が、水蒸気及び回折の影響を加味した場合での、発信部Txから光軸AXに沿ったある程度の距離の位置における成分の残存率を示している。見方を変えると、発信部Txから受信部Rxに至るまでの距離を経た後の成分の残存率を示している。曲線X3を見ると分かるように、ある程度の距離を経ると、特に、0.3THz以下の成分の残存率が少なくなっていると言える。
【0034】
一方、
図2(B)では、発信部Txで発信されるテラヘルツ電磁波の周波数ごとの強度を曲線C1で示し、受信部Rxにおける受信時のテラヘルツ電磁波の周波数ごとの感度を曲線C2で示している。なお、
図2(B)のグラフでは、双方のピークをともに1としている。これらから、検出装置100における発信部Txと受信部Rxとを組み合わせたテラヘルツ電磁波の検出スペクトル(理想上あるいは両者間の距離をゼロとしたときの検出スペクトル)が、曲線C3として示される。
【0035】
図2(B)に対して、上記した
図2(A)の事項、すなわち水蒸気や
回折を加味した周波数ごとの成分の残存率に関する事項を考慮すると、
図2(C)に示すようなテラヘルツ電磁波の検出スペクトル(実際の検出スペクトル)が得られる。ここでは、受信部Rxを発信部Txの光軸AX上に配置し、発信部Txから受信部Rxまでの距離を0.6mとした場合の曲線Q1と、3mとした場合の曲線Q2と、7mとした場合の曲線Q3とを例示している。つまり、曲線Q3は、
図2(A)に示した曲線X3を、
図2(B)に示した曲線C3にかけ合わせたものに相当する。この図において曲線Q1~Q3を比較すると、長距離にするほど、全体的に減衰があるものの、高周波側の成分がより多く残るものとなっている、すなわち高周波側の成分の相対的比率が上がっていることが分かる。特に、0.3THz以下の領域DD1において、距離延長に伴う減衰が顕著である。
【0036】
以上のように、本実施形態では、検出装置100において、発信部Txから受信部Rxまでの距離をある程度確保することで、回折を利用して低周波側の成分TWbを減衰させ、相対的に高周波側の成分TWaをより多く含む光軸AX上及びその近傍を通る成分(光軸AXの中心側の成分)を利用して検出を行うものとしている。この際、さらに、高周波側の成分TWaをより多く含む光軸AX上及びその近傍を通る成分を抽出するための抽出部EXを設けている。以上によって、高周波側の成分を受信するように構成し、検出対象の検出における空間分解能の向上を図ることを可能にしている。
【0037】
以下、
図3を参照して、一変形例の検出装置について説明する。図示の例では、高周波側の成分を抽出する抽出部EXとして、テラヘルツ電磁波TWの一部の成分を通過させるとともに他の成分を遮蔽する絞りSTを設けている。この場合、回折により周辺側へ広がった成分を確実に遮断して高周波側の成分を多く含むものを抽出できる。なお、図示では、検出対象DT(あるいは検出位置AR)の直近前段に絞りSTを設けているが、この他にも種々の場所への配置が考えられる。
【0038】
以下、
図4を参照して、他の一変形例の検出装置について説明する。図示の例では、高周波側の成分TWaを抽出する抽出部EXとして、光軸AX上において、検出対象DT(あるいは検出位置AR)の前段に集光レンズCL2を設けている。すなわち、集光レンズCL2は、検出対象DTに向けてテラヘルツ電磁波TWのうち光軸AXの中心側にある成分を集光させることで高周波側の成分TWaを抽出する検出対象用集光レンズである。なお、この例では、受信部Rxは、光軸AX上において、検出対象DTの後段に配置されている。したがって、受信部Rxは、集光レンズCL2から検出対象DTに向けて照射され、検出対象DTを通過した成分を検出する。
【0039】
以下、
図5等を参照して、本実施形態に係る検出装置を利用した非破壊検査の一例について説明する。
図5は、検出装置を非破壊検査のための装置(非破壊検査装置)として使う場合の一例を示す図である。ここでは、検出装置200において、1つの発信部Txに対して、複数の受信部Rx1,Rx2,Rx3…を設けた構成とする。具体的に説明すると、図示のように、非破壊検査装置500は、本体装置として、1つの発信部Txと一列に並んだ複数の受信部Rx1,Rx2,Rx3…とで構成される検出装置200と、これらの動作制御をする主制御部500aとを備え、筐体SCの窓WNを介して、検出対象としてのコンクリート壁面CWに対して、発信部Txからテラヘルツ電磁波TWを発信し、コンクリート壁面CWからの反射成分(反射信号)RWを複数の受信部Rx1,Rx2,Rx3…でそれぞれ受信する。主制御部500aは、これらの動作制御を行うともに、各複数の受信部Rx1,Rx2,Rx3…での受信結果の変化に基づいて、コンクリート壁面CWにクラックが存在するか否かを確認するためのものであり、例えばCPUや、記憶装置等で構成される。
【0040】
以下、
図6のフローチャートを参照して、検出装置を利用した非破壊検査の動作の一例について説明する。
【0041】
非破壊検査装置500の主制御部500aは、電源がオンされる等動作可能な状態になり、例えばスタートスイッチ等(図示略)から検査開始の信号を受けると、まず、発信部Txからコンクリート壁面CWに対してテラヘルツ電磁波TWを発信する(ステップS1)。次に、主制御部500aは、コンクリート壁面CWからの反射成分RW(テラヘルツ反射信号)を複数の受信部Rx1,Rx2,Rx3…でそれぞれ受信し(ステップS2)、これらの間での受信強度を比較する(ステップS3)。さらに、主制御部500aは、ステップS3での比較結果から、クラックの発生において見られる特徴的な変化が観測されたかを確認する(ステップS4)。ステップS4において、特徴的な変化が観測された場合(ステップS4:YES)、主制御部500aは、コンクリート壁面CWの検知範囲にクラックがあったと判断する(ステップS5a)。一方、ステップS4において、特徴的な変化が観測されなかった場合(ステップS4:No)、主制御部500aは、コンクリート壁面CWの検知範囲にクラックがなかったと判断する(ステップS5b)。ステップS5a又はステップS5bの判断を終えると、主制御部500aは、例えば終了スイッチ等(図示略)から検査終了の信号を受けたか否かを検出し(ステップS6)、検査終了の信号を受けていなければ(ステップS6:No)、ステップS1からの動作を繰り返して検査を継続し、検査終了の信号を受けていれば(ステップS6:Yes)、動作を終了する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る検出装置は、例えば非破壊検査のための装置として利用が可能である。
【0043】
〔第2実施形態〕
以下、
図7を参照しつつ、第2実施形態に係る検出装置について説明する。なお、本実施形態に係る検出装置は、第1実施形態の検出装置100の変形例であり、共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施形態では、抽出部EXとして、テラヘルツ電磁波TWの一部を反射する反射部材を設けており、特に、当該反射部材として、検出対象DTの表面をスキャンするスキャン型ミラーを用いている点において、第1実施形態と異なっている。また、
図7に示す場合では、例えば
図1の場合と異なり、発信部Txと受信部Rxとで同軸な系となっている。
【0045】
以下、
図7を参照して、第2実施形態に係る検出装置300について概要を説明する。本実施形態では、発信部Tx及び受信部Rxのほか、テラヘルツ電磁波TWの透過及び反射を行うビームスプリッターBSと、スキャン型ミラーとしてのガルバノミラーGMと、ガルバノミラーGMからの走査光を検出対象DTに向けて集光させるレンズLSとを備える。
【0046】
図示のように、ビームスプリッターBSは、透過反射面を、発信部Txの光軸AX上に光軸AXに対して45°傾けて配置されている。受信部Rxは、ビームスプリッターBSを基準として発信部Txに対称な位置に配置されており、ビームスプリッターBSにおいて反射される戻り光の成分を受信する。
【0047】
また、ガルバノミラーGMは、発信部Txからある程度の距離を離した状態で、光軸AX上に配置されており、例えば光軸AXに直交する軸を中心に1軸回転(揺動)をする。
【0048】
レンズLSは、ガルバノミラーGMからの走査光を検出対象DTに向けて射出すべく、ガルバノミラーGMと検出対象DTとの間に配置されている。なお、図示の場合では、レンズLS内にテラヘルツ電磁波TWのうちの不要な成分TWbが混在しないように、ケースCAによってレンズLSを保護している。
【0049】
以下、テラヘルツ電磁波TWの進路とともに、検出装置300の動作の概略について説明する。まず、発信部Txから射出されたテラヘルツ電磁波TWは、ビームスプリッターBSを通過後、回折により、低周波側の成分TWbが減衰されつつガルバノミラーGMに向かい、ガルバノミラーGMは、高周波側の成分TWaをより多く含む光軸AXの中心側の成分を検出対象DTに向けて反射させつつ検出対象DTの表面をスキャンする。すなわち、ガルバノミラーGMは、テラヘルツ電磁波TWの成分のうち高周波側の成分を抽出する抽出部EXとして機能する。なお、この際、レンズLSは、ガルバノミラーGMからの走査光である高周波側の成分をより多く含むテラヘルツ電磁波TWを集光させつつ検出対象DTに照射する。検出対象DTでの反射成分RWのうち、直進性の高い高周波側の成分は、上記したテラヘルツ電磁波TWの光路を逆行して、ビームスプリッターBSに到達し、ビームスプリッターBSで反射された成分が受信部Rxにおいて受信される。
【0050】
本実施形態においても、検出装置300において、発信部Txから受信部Rxまでの距離をある程度確保しつつ、光軸AX側の成分を利用して検出を行うものとし、さらに抽出部EXとしてガルバノミラーGMを設けている。以上によって、高周波側の成分を受信するように構成し、検出対象の検出における空間分解能の向上を図ることを可能にしている。
【0051】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0052】
まず、上記実施形態では、テラヘルツ電磁波TWの波長帯域について、周波数を0.1~2THzとする帯域であるものとしているが、これに限らず、種々のテラヘルツ波長帯域を含むのについて本願を適用することができる。特に、回折の影響が大きい帯域を含むものについて本願が利用可能と考えられる。
【0053】
また、回折利用を可能とするための発信部Txから検出対象DT(あるいは検出位置AR)までの距離D1や、検出対象DT(あるいは検出位置AR)から受信部Rxまでの距離D2、あるいは発信部Txから受信部Rxまでの距離等についても種々考えられる。
【0054】
例えば、発信部Txのビーム径が50mmの場合、周波数0.3THz(波長1mm程度)のものが3.6m先で1割程度幅が広がることが分かっている。また、同じ場合で、16mほど先になるとビームの強度が1/10程度にまで下がり、それ以上は下がり方が鈍いことが分かっている。これらのことから、発信部Txから受信部Rxまでの距離を例えば3.6mから16mまでの間で適宜定めるということが考えられる。
【0055】
なお、要請される空間分解能等に応じて、上記距離や波長帯域については、種々の態様とすることが考えられる。
【0056】
また、上記第2実施形態では、スキャン型の反射部材として、ガルバノミラーを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、電磁駆動式、静電方式、圧電方式、熱方式などの各種の駆動方式の光反射面を駆動させるものを適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100,200,300…検出装置、500…非破壊検査装置、500a…主制御部、AR…検出位置、AX…光軸、BS…ビームスプリッター、BX…光軸、C1,C2,C3…曲線、CA…ケース、CL1…集光レンズ(受信部用集光レンズ)、CL2…集光レンズ(検出対象用集光レンズ)、CW…コンクリート壁面、D1,D2…距離、DD1…領域、DT…検出対象、EX…抽出部、GM…ガルバノミラー、LS…レンズ、Q1,Q2,Q3…曲線、RW…反射成分、Rx,Rx1,Rx2,Rx3…受信部、SC…筐体、TW…テラヘルツ電磁波、TWa…高周波側の成分、TWb…低周波側の成分、Tx…発信部、WN…窓、X1,X2,X3…曲線