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特許7140320医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 E
A61N5/10 F
A61N5/10 H
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2017244073
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019107397
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 富美
(72)【発明者】
【氏名】柳川 幸喜
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-503937(JP,A)
【文献】国際公開第2016/046870(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/061827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得する取得部と、
前記透視画像に含まれる位置に関する誤差を補正するための1つ以上の補正値に基づき前記透視画像のなかで前記被検体のターゲット位置の特定に用いられる1か所以上の所定領域の画像を補正するが、前記透視画像のなかで前記所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像は補正しない補正部と、
前記補正部により補正された画像に基づき前記ターゲット位置を特定する特定部と、
前記特定部により特定された前記ターゲット位置を基に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力する出力制御部と、
を備える医用装置。
【請求項2】
前記所定領域は、前記透視画像のなかで前記ターゲット位置を含む領域である、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、所定の対象が照射可能範囲に収まる場合に前記照射許可信号を出力し、
前記所定領域は、前記照射可能範囲よりも大きな領域である、
請求項1または請求項2に記載の医用装置。
【請求項4】
前記補正値は、前記撮影部の据え付け誤差に基づく、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項5】
前記補正部により補正された画像を表示する画面を表示部に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、所定の対象が照射可能範囲に収まる場合に前記照射許可信号を出力し、
前記表示制御部は、前記補正部により補正された画像に、前記照射可能範囲を重畳して表示させる、
請求項5に記載の医用装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記画面のなかで前記所定領域外に対応する領域には、前記取得部により取得されて補正されていない透視画像を表示させる、
請求項5または請求項6に記載の医用装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記画面のなかで前記所定領域外に対応する領域には、前記取得部により取得された透視画像は表示させない、
請求項5または請求項6に記載の医用装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記1つ以上の補正値に基づき、前記補正部による補正前の前記所定領域の画像の画像座標と、前記補正部による補正後の前記所定領域の画像の画像座標との対応関係を求めておき、前記画面のなかで前記所定領域外に対応して表示される補正されていない画像、または前記画像のなかで補正前の前記所定領域の外縁に対応する線との間に空白を空けずに補正後の前記所定領域の画像を表示させる、
請求項7または請求項8に記載の医用装置。
【請求項10】
前記補正部は、前記透視画像のなかで前記所定領域よりも大きな領域を補正し、
前記表示制御部は、前記画面のなかで前記所定領域外に対応して表示される補正されていない画像、または前記画像のなかで補正前の前記所定領域の外縁に対応する線との間に空白を空けずに前記補正部により補正された画像を表示させる、
請求項7または請求項8に記載の医用装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記画面のなかで、前記補正部により補正された画像と、前記所定領域外に対応して表示される補正されていない画像または前記画像のなかで補正前の前記所定領域の外縁に対応する線との間に、空白を表示する、または、補正されていない画像を表示する、
請求項7または請求項8に記載の医用装置。
【請求項12】
前記補正部により補正された画像に基づき前記被検体のターゲットに関する学習を行う学習部を更に備え、
前記特定部は、前記学習部により学習された前記ターゲットに関する情報に基づき、前記ターゲット位置を特定する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項13】
前記出力制御部は、所定の対象が照射可能範囲に収まる場合に前記照射許可信号を出力し、
前記表示制御部は、前記表示部に、前記照射可能範囲を前記透視画像に重畳表示させ、前記照射許可信号を出力する際に前記照射可能範囲を示す枠の色を変更させる、
請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項14】
前記出力制御部は、所定の対象が照射可能範囲に収まる場合に前記照射許可信号を出力し、
前記表示制御部は、前記表示部に、前記照射可能範囲を前記透視画像に重畳表示させ、前記照射許可信号を出力する際に、前記照射可能範囲の内側領域と外側領域のいずれかの色彩または輝度を変更させる、
請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項15】
前記照射許可信号を出力する際に、音または振動で通知する通知部を更に備える
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の医用装置。
【請求項16】
医用装置が、
被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得し、
前記透視画像に含まれる位置に関する誤差を補正するための1つ以上の補正値に基づき前記透視画像のなかで前記被検体のターゲット位置の特定に用いられる1か所以上の所定領域の画像を補正し、前記透視画像のなかで前記所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像は補正せず、
前記補正された画像に基づき前記ターゲット位置を特定し、
前記特定された前記ターゲット位置を基に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力する、
医用装置の制御方法。
【請求項17】
医用装置の制御コンピュータに、
被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得させ、
前記透視画像に含まれる位置に関する誤差を補正するための1つ以上の補正値に基づき前記透視画像のなかで前記被検体のターゲット位置の特定に用いられる1か所以上の所定領域の画像を補正させ、前記透視画像のなかで前記所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像は補正させず、
前記補正させた画像に基づき前記ターゲット位置を特定させ、
前記特定させた前記ターゲット位置を基に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
重粒子線などの治療ビームを患者(被検体)に照射する治療装置が知られている。被検体の患部、すなわち治療ビームが照射される箇所は、呼吸や心拍、腸の動きなど(以下、これらを纏めて「呼吸など」と称する)によって移動する場合がある。これに対応する治療法として、ゲーテッド照射法や追尾照射法が知られている。
【0003】
呼吸によって移動する患部に治療ビームを照射する場合、被検体の呼吸位相と同期させて照射を行う必要がある。呼吸位相同期の手法として、被検体の身体に取り付けたセンサの出力値を利用して呼吸位相を把握する手法(外部呼吸同期)と、被検体の透視画像に基づいて呼吸位相を把握する手法(内部呼吸同期)とがある。呼吸位相同期のための処理は、治療装置に制御信号を出力する医用装置によって行われる。医用装置は、例えば治療装置と有線または無線で通信することで、治療装置を制御する。
【0004】
ところで、医用装置は、刻々と変化する被検体のターゲットの位置を時間的に大きな遅れなく把握する必要がある。ただし、医用装置に限らず電子機器の情報処理速度には、物理的な制約がある。このため、従来の技術では、透視画像に補正が必要な場合、情報処理が追いつかず、被検体のターゲットの位置を大きな遅れなく把握することが難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-144000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、透視画像に補正が必要な場合でも被検体のターゲットの位置を大きな遅れなく把握することができる医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用装置は、取得部と、補正部と、特定部と、出力制御部とを持つ。前記取得部は、被検体に電磁波を照射して撮影することで透視画像を生成する撮影部から、前記被検体の透視画像を取得する。前記補正部は、1つ以上の補正値に基づき前記透視画像のなかで前記被検体のターゲット位置の特定に用いられる1か所以上の所定領域の画像を補正するが、前記透視画像のなかで前記所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像は補正しない。前記特定部は、前記補正部により補正された画像に基づき前記ターゲット位置を特定する。前記出力制御部は、前記特定部により特定された前記ターゲット位置を基に、前記被検体に治療ビームを照射する治療装置に照射許可信号を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、透視画像に補正が必要な場合でも被検体のターゲットの位置を大きな遅れなく把握することができる医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態の医用装置100を含む治療システム1の構成図。
図2】透視画像TIに重畳された探索領域RおよびテンプレートTの一例を示す図。
図3】透視画像TIのなかで探索領域Rのみに対してアライメント補正が行われる例を示す図。
図4】医用装置100の入力・表示部120により表示されるインターフェース画像IMの一例を示す図。
図5】領域A1-1に表示される透視画像TI-1の一例を示す図である。
図6】領域A1-1に表示される透視画像TI-1の別の一例を示す図である。
図7】医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)。
図8】第1ボタンB1、第2ボタンB2、および第3ボタンB3の表示態様の変化を示す図。
図9】第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の内容を示す図。
図10】医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)。
図11】第2の実施形態の医用装置100Aを含む治療システム1の構成図。
図12】医用装置100Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の医用装置、医用装置の制御方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0011】
(第1の実施形態)
<構成>
図1は、第1の実施形態の医用装置100を含む治療システム1の構成図である。治療システム1は、例えば、治療装置10と、医用装置100とを備える。
【0012】
治療装置10は、例えば、寝台11と、放射線源12-1、12-2と、検出器13-1、13-2と、照射門14と、センサ15と、治療装置側制御部20とを備える。以下、符号におけるハイフンおよびこれに続く数字は、いずれの放射線源および検出器の組による透視用の放射線、或いは透視画像であるかを示すものとする。また、適宜、符号におけるハイフンおよびこれに続く数字を省略して説明を行う。
【0013】
寝台11には、治療を受ける被検体Pが固定される。放射線源12-1は、被検体Pに対して放射線r-1を照射する。放射線源12-2は、放射線源12-1とは異なる角度から、被検体Pに対して放射線r-2を照射する。放射線r-1およびr-2は、電磁波の一例であり、例えばX線である。以下、これを前提とする。
【0014】
放射線r-1は、検出器13-1によって検出される。放射線r-2は、検出器13-2によって検出される。検出器13-1および13-2は、例えばフラット・パネル・ディテクタ(FPD;Flat Panel Detector)、イメージインテンシファイア、カラーイメージインテンシファイアなどである。検出器13-1は、放射線r-1のエネルギーを検出してデジタル変換し、透視画像TI-1として医用装置100に出力する。検出器13-2は、放射線r-2のエネルギーを検出してデジタル変換し、透視画像TI-2として医用装置100に出力する。図1では、2組の放射線源および検出器を示したが、治療装置10は、3組以上の放射線源および検出器を備えてもよい。なお、以下では、放射線源12-1、12-2および検出器13-1、13-2を、撮影部30と総称する。
【0015】
照射門14は、治療段階において、被検体Pに対して治療ビームBを照射する。治療ビームBには、例えば、重粒子線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線などのいずれか1つ以上が含まれる。図1では、1つの照射門14のみを示したが、治療装置10は複数の照射門を備えてもよい。
【0016】
センサ15は、被検体Pの外部呼吸位相を認識するためのセンサであり、被検体Pの身体に取り付けられる。センサ15は、例えば、圧力センサである。センサ15の検出結果は、医用装置100に出力される。
【0017】
治療装置側制御部20は、医用装置100からの制御信号に応じて、放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2、および照射門14を動作させる。
【0018】
医用装置100は、例えば、統括制御部110と、入力・表示部120と、入力操作取得部122と、表示制御部124と、取得部128と、探索領域設定部130と、補正部131と、参照画像作成部132と、画像処理部136と、ターゲット位置特定部140と、出力制御部150と、記憶部160とを備える。統括制御部110、入力操作取得部122、表示制御部124、取得部128、探索領域設定部130、補正部131、参照画像作成部132、画像処理部136、ターゲット位置特定部140、および出力制御部150は、例えば、少なくとも一部が、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部160に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。これらは、後述する参照画像作成部132A(第2の実施形態)およびターゲット特定部140B(第3の実施形態)についても同様である。
【0019】
以下、医用装置100の各部の機能について説明する。医用装置100の説明において、透視画像TIに対する処理として説明されたものは、特に注記が無い限り、透視画像TI-1、TI-2の双方に対して並行して実行されるものとする。統括制御部110は、医用装置100の機能を統括的に制御する。
【0020】
入力・表示部120は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイなどの表示装置と、操作者による入力操作を受け付ける入力装置とを含む。入力・表示部120は、表示装置と入力装置が一体に形成されたタッチパネルであってもよいし、マウスやキーボードなどの入力デバイスを備えてもよい。入力・表示部120は、「表示部」の一例である。
【0021】
入力操作取得部122は、入力・表示部120に対してなされた操作(タッチ、フリック、スワイプ、クリック、ドラッグ、キー入力など)の内容を認識し、認識した操作の内容を統括制御部110に出力する。表示制御部124は、統括制御部110からの指示に応じて、入力・表示部120に画像を表示させる。
【0022】
表示制御部124は、例えば、後述する治療の各段階の開始指示を受け付けるためのインターフェース画面を入力・表示部120に表示させる。さらに、表示制御部124は、治療ビームBの照射前の確認段階、および治療ビームBの照射段階において、被検体Pや治療装置10、医用装置100の状態を示す画面を入力・表示部120に表示させる。ここで、画像を表示させることには、演算結果に基づいて画像の要素を生成することと、予め作成された画像の要素を表示画面に割り当てることとが含まれる。
【0023】
取得部128は、撮影部30から透視画像TIを取得する。また、取得部128は、センサ15の検出値を取得する。さらに、取得部130は、医用検査装置(不図示)から被検体Pの三次元ボリュームデータを取得する。三次元ボリュームデータの一例は、三次元CT(Computed Tomography)画像である。本実施形態では、時系列の三次元CT画像を「4DCT画像」と称する。
【0024】
探索領域設定部130は、取得部128により取得された透視画像TIに対して探索領域を設定する。探索領域は、取得部128により取得された透視画像TIのなかで後述するターゲット位置が探索される領域である。補正部131は、取得部128により取得された透視画像TIに対して補正(アライメント補正)を行う。ターゲット位置の特定に透視画像TIの全部または一部を参照画像として使用する場合、参照画像作成部132は、補正部131により補正された透視画像TIに基づいて、マーカレス追跡に使用される参照画像を生成する。なお、これらの内容については、詳しく後述する。
【0025】
画像処理部136は、デフォーマブルレジストレーション、DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)画像生成などの画像処理を行う。デフォーマブルレジストレーションとは、時系列の三次元ボリュームデータに対して、ある時点の三次元ボリュームデータについて指定された位置情報を、他の時点の三次元ボリュームデータに展開する処理である。DRR画像とは、三次元ボリュームデータに対して仮想的な放射線源から放射線を当てることを仮定した場合に、この放射線源に対応して三次元ボリュームデータから生成される仮想的な透視画像である。
【0026】
ターゲット位置特定部140は、補正部131により補正された透視画像TIに基づきターゲット位置を特定する。例えば、ターゲット位置特定部140は、補正部131により補正された透視画像TIにおけるターゲット位置を特定する。「ターゲット」とは、被検体Pの患部、すなわち治療ビームBが照射される部位であってもよいし、マーカあるいは被検体Pの特徴箇所であってもよい。特徴箇所とは、横隔膜や心臓、骨など、透視画像TIにおいて周囲の箇所との差異が比較的鮮明に現れるため、透視画像TIをコンピュータが解析することで位置を特定しやすい箇所である。「ターゲット位置」とは、ターゲットの位置である。すなわち、ターゲット位置は、被検体Pの患部の位置でもよいし、マーカあるいは被検体Pの特徴箇所の位置であってもよい。ターゲット位置は、一点であってもよいし、二次元または三次元の広がりを持つ領域であってもよい。
【0027】
出力制御部150は、ターゲット位置特定部140により特定されたターゲット位置に基づいて、治療装置10に照射許可信号を出力する。例えば、ゲーテッド照射法の場合、出力制御部150は、ターゲット位置特定部140により特定されたターゲット位置がゲーティングウインドウ内に収まる場合に、治療装置10にゲートオン信号を出力する。ゲーティングウインドウとは、二次元平面または三次元空間において設定される領域である。ゲーティングウインドウとは、このゲーティングウインドウ内にターゲット位置が収まる場合に治療ビームBが照射されても良いことを示す領域であり、「照射可能範囲」の一例である。ゲートオン信号とは、治療装置10が被検体Pに治療ビームBを照射することを指示する信号である。ゲートオン信号は、「照射許可信号」の一例である。治療装置10は、ゲートオン信号が入力されている場合、治療ビームBを照射し、ゲートオン信号が入力されていない場合、治療ビームBを照射しない。なお、照射可能範囲は、固定的に設定されるものに限らず、患部の移動に追従して移動するものであってもよい。
【0028】
記憶部160は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどにより実現される。記憶部160には、前述したプログラムの他、時系列の三次元ボリュームデータ、透視画像TI、センサ15の出力値などが格納される。
【0029】
次に、医用装置100のいくつかの機能部について詳しく説明する。
<探索領域設定部130>
探索領域設定部130は、取得部128により取得された透視画像TIに対する探索領域の位置および大きさを設定する。図2は、透視画像TIに重畳された探索領域RおよびテンプレートTの一例を示す図である。なお図2では、説明の便宜上、補正部131により補正されていない画像を示している。ただし、ターゲット位置PTの探索は、実際には後述するように補正部131により補正された画像に基づき行われる。
【0030】
ここで、呼吸などによるターゲット位置PTの移動は、透視画像TIのなかである範囲内に限られる。このため、探索領域設定部130は、透視画像TIのなかで一部の領域のみを探索領域Rとして設定する。本実施形態では、探索領域Rは、ターゲット位置PTを含む領域である。探索領域Rは、「ターゲット位置の特定のために用いられる領域」の一例である。例えば、探索領域Rは、マーカレス追跡において、参照画像作成部132により生成された参照画像を用いて、ターゲット位置特定部140によりターゲット位置PTが判定される領域の一例である。本実施形態では、探索領域Rは、マーカレス追跡において、参照画像作成部132により生成されたテンプレートTを用いて、ターゲット位置特定部140によるテンプレートマッチングによりターゲット位置PTが探索される領域である。テンプレートTは、「マーカレス追跡に使用される参照画像」の一例である。ただし、「マーカレス追跡に使用される参照画像」は、テンプレートマッチングに用いられるテンプレートTに限定されない。例えば、テンプレートマッチングではなく、機械学習によるマーカレス追跡が行われる場合は、機械学習の学習済みモデルに入力情報として入力される画像が「マーカレス追跡に使用される参照画像」の一例に該当する。この場合、「ターゲット位置特定部140によりターゲット位置PTが判定される領域」の一例には、機械学習によりターゲット位置PTが判定される領域が該当する。
【0031】
ターゲット位置PTの移動範囲は、治療計画の計画段階で求められ、記憶部160に記憶されている。また、記憶部160には、探索領域Rの設定において、ターゲット位置PTの移動範囲に付加されるマージンに関する情報が記憶されている。探索領域設定部130は、記憶部160に記憶されたターゲット位置PTの移動範囲およびマージンに関する情報に基づき、透視画像TIの一部の領域を探索領域Rとして設定する。また設定した探索領域Rは、手動で変更できる。なお、ここで記載した探索領域Rの設定の方法は一例であり、例えば、入力・表示部120を用いて手動で矩形領域を入力・設定したり、入力・表示部120に、探索領域Rの候補を複数表示させ手動で選択・設定するなど、種々の方法が適用可能であり、適切に探索領域Rが設定されれば良く、ここに記載した方法に限るものではない。
【0032】
<補正部131>
撮影部30の基準位置に対して撮影部30の実際の位置がずれている場合、三次元ボリュームデータから得られるDRR画像と、撮影部30から取得される透視画像TIとが細部において一致しない可能性がある。撮影部30の基準位置とは、例えば、撮影部30が本来配置される設計位置(放射線源12-1、12-2および検出器13-1、13-2が本来配置される設計位置)である。撮影部30の実際の位置がずれているとは、例えば、治療装置10の設置場所に対する撮影部30の据え付け誤差(放射線源12-1、12-2および検出器13-1、13-2の据え付け誤差)が存在する場合などである。
【0033】
補正部131は、撮影部30の基準位置に対して撮影部30の実際の位置がずれている場合、撮影部30の基準位置に対する撮影部30のずれ量に応じた1つ以上の補正値に基づき、透視画像TIを補正する。すなわち、補正部131は、撮影部30の位置ずれに起因してDRR画像と透視画像TIと間に生じる違いを無くすまたは減らすように、透視画像TIを補正する。以下、この補正を「アライメント補正」と称する。
【0034】
ここで、撮影部30の基準位置に対する撮影部30のずれ量、または当該ずれ量に応じて透視画像TIの補正に用いられる1つ以上の補正値は、予め測定または算出されて記憶部160に記憶されている。このようなずれ量または補正値は、例えば、寸法が既知の基準体を撮影部30により撮影することで得られた透視画像TIと、上記医用検査装置により上記基準体を撮影した三次元ボリュームデータから得られるDRR画像とを比較することで求めることができる。
【0035】
ただし、DRR画像と透視画像TIとが一致しない理由は、上記例に限定されない。撮像部30の据え付け誤差に代えて、または撮像部30の据え付け誤差に加えて、撮像部30以外のずれ量(例えば、建屋の経年変化)を吸収できるような補正を意味してもよい。
【0036】
本実施形態では、補正部131は、後述する各種の治療段階のなかでリアルタイムまたはそれに近い情報処理が必要でない段階(例えば準備段階)では、撮影部30から取得された透視画像TIの全領域に対してアライメント補正を行う。一方で、補正部131は、後述する各種の治療段階のなかでリアルタイムまたはそれに近い情報処理が必要である段階(例えば確認段階および治療段階)では、撮影部30から取得された透視画像TIの一部の領域のみに対してアライメント補正を行う。すなわち、補正部131は、リアルタイムまたはそれに近い情報処理が必要である場合、透視画像TIのなかで被検体Pのターゲット位置PTの特定に用いられる所定領域の画像に対してアライメント補正を行うとともに、透視画像TIのなかで所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像に対してはアライメント補正を行わない。本実施形態では、上記所定領域は、透視画像TIのなかでターゲット位置特定部140によりターゲット位置PTが探索される探索領域Rである。別の観点で見ると、上記所定領域は、ゲーティングウインドウとその周囲を含む領域である。すなわち、上記所定領域は、ゲーティングウインドウの外形よりも大きな領域である。なお、補正部131は、透視画像TIのなかで複数個所の所定領域を補正してもよい。
【0037】
図3は、補正部131により透視画像TIのなかで探索領域Rのみに対してアライメント補正が行われる例を示す図である。図中の(a)は、補正部131によるアライメント補正が行われる前の透視画像TIを示す。一方で、図中の(b)は、補正部131によるアライメント補正が行われた後の透視画像TIを示す。図中の(b)に示すように、透視画像TIのなかで一部の領域(探索領域R)のみに対してアライメント補正が行われた場合、アライメント補正が行われた領域と、アライメント補正が行われていない領域(アライメント補正が行われた領域の外側の領域)との境界に段差のようなずれが現れる。
【0038】
<表示制御部124>
表示制御部124は、補正部131により補正された画像を表示する画面を、入力・表示部120に表示させる。本実施形態では、表示制御部124は、補正部131により補正された画像に、ゲーティングウインドウを重畳して表示させる。なお、表示制御部124の機能については、詳しく後述する。
【0039】
<治療の流れ>
以下、治療システム1における治療の流れについて説明する。治療システム1は、例えば、計画段階、位置決め段階、準備段階、確認段階、治療段階の複数の段階に分けて行われる。また、治療システム1は、例えば、内部呼吸同期であるマーカレス追跡およびマーカ追跡、外部呼吸同期の3つのモードを切り替えて治療を行うことができる。マーカレス追跡には、テンプレートマッチング法や、機械学習を用いた手法などがある。以下では、テンプレートマッチング法を用いたマーカレス追跡について説明し、照射方法としてゲーテッド照射法を採用するものとして説明する。医用装置100は、テンプレートマッチング法と、機械学習を用いた手法とを切り替え可能であってもよい。
【0040】
[計画段階]
計画段階において、まず、被検体PのCT撮影が行われる。CT撮影では、様々な呼吸位相毎に、様々な方向から被検体Pが撮影される。次に、CT撮影の結果に基づいて4DCT画像が生成される。4DCT画像は、三次元のCT画像(前述した三次元ボリュームデータの一例)を時系列にn個並べたものである。このn個および時系列画像の時間間隔を乗算して求められる期間は、例えば、呼吸位相が1周期分変化する期間をカバーするように設定される。4DCT画像は、記憶部160に格納される。
【0041】
次に、医師や放射線技師などが、n個のCT画像のうち、例えば1つのCT画像に対して、輪郭を入力する。この輪郭は、患部である腫瘍の輪郭や治療ビームBを照射したくない臓器の輪郭などである。次に、例えば画像処理部136が、デフォーマブルレジストレーションによって、n個のCT画像のそれぞれについて輪郭を設定する。この場合、画像処理部136は、例えば、各CT画像に含まれる2つ以上の特徴的な要素の位置がn個のCT画像においてどのように変化するかに基づき、n個のCT画像における患部や臓器の移動を推定し、n個のCT画像において推定された患部や臓器の移動を反映した位置に患部や臓器の輪郭を展開する。
【0042】
次に、治療計画が決定される。治療計画とは、設定された輪郭情報に基づいて、患部がどの位置にあるときに、どこに、どの方向から、どれだけの治療ビームBを照射するかを規定するものであり、ゲーテッド照射法や追尾照射法などの治療法に応じて決定される。なお、計画段階の処理の一部または全部は、外部装置によって実行されてもよい。例えば、4DCT画像を生成する処理は、CT装置によって実行されてもよい。
【0043】
ここで、腫瘍の輪郭で区画される領域や、その領域の重心、或いは被検体Pの特徴箇所の位置などがターゲット位置PTとなる。更に、治療計画において、ターゲット位置PTがどの位置にあれば治療ビームBを照射してよいかが決定される。デフォーマブルレジストレーションによって輪郭が設定された際に、ターゲット位置PTに対してマージンが自動的に、または手動で設定され、マージンを反映させてゲーティングウインドウが設定される。このマージンは、装置や位置決めの誤差などを吸収するためのものである。
【0044】
[位置決め段階]
位置決め段階においては、寝台位置の調整が行われる。被検体Pは寝台11に寝かされ、シェルなどで固定される。まず、寝台位置の粗い調整が行われる。この段階において、作業者が、被検体Pの位置と姿勢を目視で確認し、照射門14からの治療ビームBが当たりそうな位置へ寝台11を動かす。これにより、寝台11の位置が粗く調整される。次に、寝台位置を細かく調整するために利用する画像が撮影される。例えば、3D-2Dレジストレーションが行われる場合は透視画像TIが撮影される。透視画像TIは、例えば被検体Pが息を吐き切ったタイミングで撮影される。寝台11の位置は粗く調整済みであるため、透視画像TIには、被検体Pのターゲット付近が写っている。例えば、透視画像TIは、補正部131によってアライメント補正が行われて用いられる。
【0045】
3D-2Dレジストレーションが行われる場合、この段階において、放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2、および被検体Pの治療計画情報を使用して三次元ボリュームデータからDRR画像が生成される。DRR画像と透視画像TIに基づいて寝台移動量が算出され、寝台11が移動させられる。透視画像TIの撮影、補正部131による補正、寝台移動量算出、寝台11の移動を繰り返すことで、寝台11の位置が細かく調整される。
【0046】
[準備段階]
位置決め段階が終了すると、準備段階に移行する。まず4DCT画像から各位相のDRR画像が作成される。DRR画像の作成は4DCT画像撮影以降であればいつ実施してもよい。このとき、治療計画において設定されたゲーティングウインドウを射影した位置がDRR画像上のゲーティングウインドウとして設定される。準備段階では、まず参照画像を作成するための透視画像TIの撮影が行われる。透視画像TIは、例えば、被検体Pの2呼吸分をカバーするように撮影される。また、透視画像TIは、補正部131によりアライメント補正が行われる。以下、アライメント補正が行われた透視画像TIも、単に「透視画像TI」と称される。また、被検体Pが深呼吸を行う間、被検体Pの外部呼吸波形が、透視画像TIと同期してセンサ15により取得される。取得された外部呼吸波形は、表示制御部124により入力・表示部120に表示される。撮影された透視画像TIには、外部呼吸波形から求められる被検体Pの呼吸位相に基づく追跡値が対応付けられる。
【0047】
また、この段階において、DRR画像とDRR画像上のターゲット位置PTの情報から、透視画像TIとターゲット位置PTとの関係が学習され、さらに、医師によるターゲット位置PTの修正が受け付けられる。そして、ターゲット位置PTが学習された透視画像TIの中から、追跡値に基づいて、一つ以上のテンプレートT(参照画像)が選択される。例えば、テンプレートTは、透視画像T1の一部を切り出すことで得られる。テンプレートTは、透視画像TIの特徴的な一部を切り出したものであってよい。また、テンプレートTは、透視画像TIから切り出された画像に対して、濃淡を強くするなど所定の処理が行われることで得られてもよい。ターゲット位置PTの学習は、計画段階から治療段階までの間の、いずれのタイミングで実施されてもよい。例えば、被検体Pの2呼吸分の透視画像TIうち、前半の1呼吸分の透視画像TIからテンプレートTを作成した場合、そのテンプレートTを使用して、後半の1呼吸分の透視画像TIでターゲットの追跡ができるか確認してもよい。その際、表示制御部124はDRR画像上に設定されたゲーティングウインドウを透視画像TI上に表示してもよい。
【0048】
[確認段階]
そして、再度、透視画像TIの撮影が開始される。ターゲット位置特定部140は、時系列で入力される透視画像TIに対してテンプレートTとのマッチングを行い、透視画像TIに対してターゲット位置PTを割り付ける。表示制御部124は、透視画像TIを動画として入力・表示部120に表示させながら、ターゲット位置PTが割り付けられた透視画像TIのフレームにターゲット位置PTを重畳表示させる。この結果、医師などによりターゲット位置PTの追跡結果が確認される。
【0049】
この際に、表示制御部124はDRR画像上に設定されたゲーティングウインドウを透視画像TI上に表示する。出力制御部150は、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内に収まっているか否かを判定する。治療段階では、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号が治療装置10に出力されるのであるが、準備段階では、ゲートオン信号の出力の有無が統括制御部110を介して表示制御部124に伝えられる。表示制御部124は、動画の表示に併せてゲートオン信号の出力の有無を入力・表示部120に表示させる。この結果、医師などによりゲートオン信号の出力タイミングが確認される。
【0050】
[治療段階]
治療段階では、出力制御部150が、透視画像TI-1、TI-2の双方に関して、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウ内に収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する。これによって、治療ビームBが被検体Pの患部に照射され、治療が行われる。なお、ターゲット位置PTが患部の位置である場合には、追跡したターゲット位置がゲーティングウィンドウ内に収まっている場合に治療ビームBが照射される。この場合、ターゲットは、「所定の対象」の一例である。また、ターゲット位置PTが被検体Pの特徴箇所の位置である場合には、予め学習されたターゲット位置PTと患部の位置との関係に基づいて、ターゲット位置PTから導出された患部の位置がゲーティングウィンドウ内に収まっている場合に治療ビームBが照射される。この場合、患部は、「所定の対象」の一例である。なお、これらの複合手法によって患部の位置に治療ビームBが照射されてもよい。すなわち、ターゲット位置PTとして患部の位置と、特徴箇所の位置とをそれぞれ設定しておき、患部が第1ゲーティングウインドウに収まり、特徴箇所が第2ゲーティングウインドウに収まる場合に治療ビームBを照射するようにしてもよい。
【0051】
<表示画像、フローチャート>
以下、上記説明した治療の流れをサポートするための、医用装置100の処理について説明する。
【0052】
図4は、医用装置100の入力・表示部120の画面に表示されるインターフェース画像IMの一例を示す図である。インターフェース画像IMは、例えば、領域A1-1、A1-2、A2、A3、A4、A5、A6、およびA7を含む。
【0053】
領域A1-1では、透視画像TI-1に対してゲーティングウインドウGWやターゲット位置PTが重畳表示される。領域A1-2では、透視画像TI-2に対してゲーティングウインドウGWおよびターゲット位置PTが重畳表示される。領域A2には、各種グラフなどが表示される。これらA1-1およびA1-2に表示される透視画像TIは、例えば、補正部131により探索領域Rの画像に対してアライメント補正が行われた画像である。
【0054】
図5は、領域A1-1に表示される透視画像TI-1の一例を示す図である。表示制御部124は、補正部131により探索領域Rの画像に対してアライメント補正が行われた透視画像TI-1を、入力・表示部120の領域A1-1に表示させる。この場合、表示制御部124は、補正部131によりアライメント補正が行われた探索領域Rの画像に、ゲーティングウインドウGWおよびターゲット位置PTが重畳して表示させる。
【0055】
本実施形態では、表示制御部124は、領域A1-1のなかで探索領域Rの外側に対応する領域には、取得部128により取得された画像(アライメント補正が行われていない画像)を表示させる。これにより、医師などは、探索領域Rの外側の領域の状態も確認することができる。またこの場合、上述したように、アライメント補正が行われた領域(探索領域R)と、アライメント補正が行われていない領域(探索領域Rの外側の領域)との境界に段差のようなずれが現れる。医師や放射線技師などは、この段差のようなずれを確認することで、探索領域Rに対してアライメント補正が確かに行われていることを確認することができる。またこの場合、透視画像TIには、探索領域Rの外縁(外形)を示す線Raが表示されてもよい。
【0056】
また、透視画像TIのなかで探索領域Rの画像に対してアライメント補正を行い、入力・表示部120の画面のなかで補正前の探索領域Rに対応する領域にアライメント補正した画像を表示すると、上記画面において探索領域R内に空白が生じる場合がある。例えば、補正部131により補正された探索領域Rの画像と、探索領域Rの外側に対応して表示される補正が行われていない画像との間に空白が生じる場合がある。この場合、表示制御部124は、次の(1)~(3)のうちいずれかの処理を行ってもよい。
【0057】
(1)表示制御部124は、補正部131が用いる1つ以上の補正値に基づき、補正部131による補正前の探索領域Rの画像の画像座標と、補正部131による補正後の探索領域Rの画像の画像座標との対応関係を求めておき、画面のなかで探索領域R外に対応して表示される補正されていない画像との間に空白を空けずに補正後の探索領域Rの画像を表示させる。すなわち、アライメント補正前の画像の画像座標を(u,v)、アライメント補正後の画像座標(x,y)とすると、
x=au+bv
y=cu+dv
の関係があると言える。ここで、a,b,c,dは、アライメント補正の補正値に基づいて求められる値である。すなわち、上記係数(a,b,c,d)を適切に設定することで、アライメント補正後の画像座標の全てに、アライメント補正前の画像座標を対応させることができる。このため、必要に応じて追加的な画像処理(例えば、コピーや、小数画素の場合は平均など)を行うことで、画面のなかでアライメント補正前の探索領域Rに対応する領域を、アライメント補正後の画像で埋めることができる。これにより、画面に上記空白が生じないようにすることができる。
【0058】
ここで、アライメント補正前の画素が探索領域Rに対応する領域からはみ出す場合は、入力表示部120または通知部126により警告を出してユーザに探索領域Rを変更してもらってもよく、自動で探索領域Rを変更してもよく、または探索領域Rに対応する領域からはみ出す部分の計算を省略してもよい。
【0059】
(2)補正部131は、透視画像TIのなかで探索領域Rよりも大きな領域を補正する。そして、表示制御部124は、画面のなかで探索領域R外に対応して表示される補正されていない画像との間に空白を空けずに補正部131により補正された画像を表示させる。すなわち、補正部131は、探索領域Rよりも大きな領域(例えば、探索領域Rよりも予め設定されたx[mm]大きな領域)を補正する。そして、画面のなかでアライメント補正前の探索領域Rに対応する領域の全域に、アライメント補正された画像を表示させる。これにより、画面に上記空白が生じないようにすることができる。
【0060】
(3)表示制御部124は、画面のなかで、補正部131により補正された画像と、所定領域外に対応して表示される補正されていない画像との間に、空白を表示する、または、補正されていない画像を表示する。これらの場合、入力表示部120または通知部126により警告が出力されてよい。
【0061】
なお、図5に示す例において、透視画像TIに補正前の探索領域Rの外縁を示す線Raが表示される場合、上述した(1)~(3)の説明での「画面のなかで探索領域R外に対応して表示される補正されていない画像との間に空白を空けない(または、空白を空ける或いは補正されていない画像を表示する)」とは、「補正前の探索領域Rの外縁を示す線Raとの間に空白を空けない(または、空白を空ける或いは補正されていない画像を表示する)」ことを意味してもよい。
【0062】
一方で、図6は、領域A1-1に表示される透視画像TI-1の別の一例を示す図である。表示制御部124は、領域A1-1のなかで探索領域Rの外側に対応する領域には、取得部128により取得された画像を表示させなくてもよい。この場合、領域A1-1には、例えば探索領域Rの画像が拡大して表示されてもよい。このような構成によれば、透視画像TI-1において探索領域Rの内側と外側の境界部に段差のようなずれがあることを見にくいと感じるユーザに対して、上記ずれが無い画像を表示させることができる。またこの場合、透視画像TIには、探索領域Rの外縁(外形)を示す線Raが表示されてもよい。
【0063】
また、図6に示す例においても、透視画像TIのなかで探索領域Rの画像に対してアライメント補正を行い、入力・表示部120の画面のなかで補正前の探索領域Rに対応する領域にアライメント補正した画像を表示すると、上記画面において探索領域R内に空白が生じる場合がある。図6に示す例の場合、補正部131により補正された探索領域Rの画像と、補正前の探索領域Rの外縁を示す線Raとの間に空白が生じる場合がある。そのため、図6に示す例においても、表示制御部124は、上述した(1)~(3)のうちいずれかの処理を行ってもよい。この場合、上述した(1)~(3)の説明での「画面のなかで探索領域R外に対応して表示される補正されていない画像との間に空白を空けない(または、空白を空ける或いは補正されていない画像を表示する)」とは、「補正前の探索領域Rの外縁を示す線Raとの間に空白を空けない(または、空白を空ける或いは補正されていない画像を表示する)」と読み替えられる。
【0064】
図4に戻り説明を続けると、領域A3には、モードなどの選択を受け付けるセレクトウインドウSW、透視画像TIの撮影開始または撮影停止を指示するための第1ボタンB1、透視画像TIの撮影の一時停止を指示するための第2ボタンB2、治療セッションの終了を指示するための第3ボタンB3、時系列の透視画像TIを遡って確認するためのスライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCA、確認段階が完了したことを確認するためのチェックボックスCBなどが設定される。インターフェース画像IMの各部に対する操作は、例えば、タッチ操作、マウスによるクリック、あるいはキーボード操作などにより行われる。例えば、第1ボタンB1は、タッチ操作またはマウスによるクリックによって操作される。
【0065】
領域A4には、モードに応じた治療段階が、次のステップに進むことを指示するための第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6が設定される。領域A5には、センサ15の出力値に基づく外部呼吸波形のグラフなどが表示される。領域A6には、被検体Pの治療計画情報などを示す画像やテキスト情報が表示される。領域A7では、被検体PのCT画像の断面に対し、X線の照射方向、照射野、治療ビームBの照射方向、ターゲットの輪郭やマーカROI(Region of Interest)が重畳表示される。
【0066】
以下、インターフェース画像IMの各種機能について、フローチャートを参照しながら説明する。図7は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)である。なお、以降の説明において、医用装置100に対する操作がなされたことを検知する際には、統括制御部110が入力操作取得部122から入力される情報を参照して判断するものとし、都度の説明を省略する。またここでは、マーカレス追跡が選択されたことを前提とする。
【0067】
まず、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS102)。図8は、第1ボタンB1、第2ボタンB2、および第3ボタンB3の表示態様の変化を示す図である。図示するように、第1ボタンB1は、初期状態で、撮影が「OFF」すなわち停止している状態を示すと共に、「撮影開始」の指示を受け付ける態様となっている。第1ボタンB1が操作されると、撮影が「ON」すなわち実行されている状態を示すと共に、「撮影停止」の指示を受け付ける態様に変化する。第1ボタンB1は、これら二つの態様の間で状態遷移する。
【0068】
なお、第2ボタンB2は、初期状態で、操作されると撮影の「一時停止」の指示を受け付ける態様となっている。第2ボタンB2は、操作されると、「撮影再開」の指示を受け付ける態様に変化する。また、第3ボタンB3は、初期状態で、インターフェース画像IMを「閉じる」指示を受け付ける態様となっており、操作されるとインターフェース画像IMの表示が停止され、一連の処理が終了する。
【0069】
第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、テンプレート画像となる透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS104)。出力制御部150は、例えば、k回の呼吸分の透視画像TIを撮影するように治療装置10に指示する。なお、出力制御部150は、第1ボタンB1が再度操作されたときに撮影を終了する指示を治療装置10に出力してもよい。このように、出力制御部150は、入力操作取得部122により取得された入力操作の内容に応じて、治療装置10の撮影部30(放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2)への動作指示を出力する。これによって、医用装置100によって治療装置10を含めた治療システム1の動作を一元的に管理することができ、利便性が向上する。
【0070】
次に、補正部131は、透視画像TIに対してアライメント補正を行う(ステップ105)。このステップ105では、透視画像TIの全領域に対してアライメント補正が行われてもよく、透視画像TIの一部の領域に対してのみアライメント補正が行われてもよい。例えば、補正部131は、透視画像TIに対して探索領域Rがまだ設定されていない場合、透視画像TIの全領域に対してアライメント補正を行う。
【0071】
次に、統括制御部110は、第4ボタンB4の操作によってレジストレーションが指示されたか否かを判定する(ステップS106)。「レジストレーション」とは、テンプレート画像に対してターゲット位置PTを関連付ける動作を意味する。図9は、第4ボタンB4、第5ボタンB5、および第6ボタンB6の内容を示す図である。第4ボタンB4は、レジストレーションの指示を受け付け、第5ボタンB5は、テンプレート作成の指示を受け付け、第6ボタンB6は照射の指示を受け付ける。
【0072】
第4ボタンB4の操作によってレジストレーションが指示されると、統括制御部110は、画像処理部136に指示してDDR画像におけるターゲット位置から透視画像TIにおけるターゲット位置PTを求め、得られたターゲット位置PTを透視画像TIに重畳させて入力・表示部120に表示させるように表示制御部124に指示する(ステップS108)。前述したように、画像処理部136は、計画段階において撮影されたCT画像から作成されたDDR画像や、計画段階以降に撮影された透視画像TIなど、ターゲット位置PTが既知である画像と、透視画像TIとの間で画像の特徴部位をマッチングする処理などを行って、透視画像TIにおけるターゲット位置PTを導出する。透視画像TIとターゲット位置PTの関係は、参照画像作成部132に提供される。また、透視画像TIにターゲット位置PTが重畳した画像は、例えば、インターフェース画像IMの領域A1-1、A1-2に表示される。この状態で、統括制御部110は、ターゲット位置PTの調整を受け付ける(ステップS110)。ターゲット位置PTの調整は、例えば領域A1-1、A1-2に対するドラッグ/ドロップ操作によって行われる。ターゲット位置PTの調整が行われると、統括制御部110は、調整された透視画像TIとターゲット位置PTの関係を参照画像作成部132に提供する。
【0073】
次に、統括制御部110は、第5ボタンB5の操作によってテンプレート作成が指示されたか否かを判定する(ステップS112)。第5ボタンB5の操作によってテンプレート作成が指示されると、統括制御部110は、参照画像作成部132に指示し、テンプレートTの生成に用いる透視画像TIを選択し、例えば透視画像TIの一部を切り出すことでテンプレートTを生成する(ステップS114)。参照画像作成部132は、ターゲット位置PTとが対応づけられたテンプレートTを作成し、記憶部160に記憶させる。
【0074】
次に、統括制御部110は、第6ボタンB6の操作によってゲートオン信号の確認が指示されたか否かを判定する(ステップS116)。ゲートオン信号の確認が指示されると、統括制御部110は、表示制御部124に指示し、チェックボックスCBに「レ」(チェック)を入れた状態に変更させる。(ステップS118)。チェックボックスCBに「レ」が入った状態では、ゲートオン信号の出力タイミングは計算されて表示されるが、実際にゲートオン信号は治療装置10に出力されない。
【0075】
次に、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS120)。第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する。また、統括制御部110は、補正部131に指示し、治療装置10から取得部128により取得された透視画像TIに対してアライメント補正を行う(ステップS121)。このステップ121では、補正部131は、透視画像TIの探索領域Rのみに対してアライメント補正を行う。さらに、統括制御部110は、表示制御部124に指示し、透視画像TIの探索領域Rに対してアライメント補正が行われることで得られた確認画像を入力・表示部120に表示させる(ステップS122)。
【0076】
確認画像は、領域A1-1、A1-2に表示される。確認画像は、動画として再生される透視画像TIに対して、ターゲット位置PTやゲーティングウインドウGWが重畳された画像である(図2参照)。また、出力制御部150は、ターゲット位置PT(所定の対象)がゲーティングウインドウGWに収まっている場合に、ゲートオン信号を表示制御部124に出力し、領域A2に表示させる。医師などは、この確認画像を視認することで、被検体Pの患部などのターゲット位置PTが正しい位置として認識されているかどうか、ターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まるタイミングは適切かどうか、およびゲートオン信号の出力効率などを確認することができる。確認画像は、第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されるまで表示される(ステップS124)。撮影停止が選択された後も、スライドバーやコマ送りスイッチなどが設定されたコントロールエリアCAを操作することで、確認画像を遡って確認することができる。
【0077】
第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されると、統括制御部110は、第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されたか否かを判定する(ステップS126)。なお、統括制御部110は、医用装置100が治療装置10から開始信号を受信することによって撮影を開始してもよい。第1ボタンB1の操作によって撮影開始が選択されると、統括制御部110は、チェックボックスCBの「レ」が外されているか否かを判定する(ステップS128)。チェックボックスCBの「レ」が外されていない場合は、ステップS121からステップS126までの処理が再び行われる。チェックボックスCBの「レ」が外されている場合、統括制御部110は、治療を開始するように、表示制御部124、ターゲット位置特定部140および出力制御部150に指示し、出力制御部150は、透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する(ステップS130)。また、統括制御部110は、ステップ128の処理ではチェックボックスCBが外されていないが、撮影途中にチェックボックスCBが外された場合、そのタイミングで出力制御部150がゲートオン信号を出力するようにしてもよい(不図示)。このように、出力制御部150は、インターフェース画像IMにおいて、デフォルト状態を解除状態にする入力操作が入力操作取得部122により取得されたことを条件に、治療装置10にゲートオン信号を出力する。これによって、意図せず治療ビームBが被検体Pに照射されるのを抑制し、治療の信頼性を高めることができる。また、テンプレートの作成が完了すると、準備段階および確認段階の終了操作を要求することなく、入力操作取得部122が治療ビームBの照射段階への開始指示を受け付ける。これによって、医用装置100の操作性を向上させることができる。
【0078】
治療が始まると、統括制御部110は、出力制御部150に指示し、透視画像TIの撮影を治療装置10に指示する。また、統括制御部110は、補正部131に指示し、治療装置10から取得部128により取得された透視画像TIに対してアライメント補正を行う(ステップS131)。このステップ131では、補正部131は、透視画像TIの探索領域Rのみに対してアライメント補正を行う。さらに、統括制御部110は、表示制御部124に指示し、透視画像TIの探索領域Rのみに対してアライメント補正が行われることで得られた治療画像を入力・表示部120に表示させる(ステップS132)。治療画像は、領域A1-1、A1-2に表示される。
【0079】
ターゲット位置特定部140は、透視画像TIとテンプレートTとのマッチングを行い、テンプレートTが合致する透視画像の位置に基づいてターゲット位置PTを特定する。出力制御部150は、ターゲット位置PT(所定の対象)がゲーティングウインドウGW内に収まっている場合にゲートオン信号を治療装置10に出力する(ステップS133)。治療は、第1ボタンB1の操作によって撮影停止が選択されるまで継続する(ステップS134)。なお、医用装置100は、治療装置10から照射完了の信号を受信した場合、或いは、治療装置10において照射終了操作がなされたことを示す信号を治療装置10から受信した場合も、治療を終了してよい。このように、入力操作取得部122により取得された一単位の入力操作(第1ボタンB1の操作)に応じて、出力制御部150が治療装置10の撮影部(放射線源12-1、12-2、検出器13-1、13-2)への動作指示を出力すると共に、医用装置100の特定の機能(ターゲット位置特定部140など)が起動する。これによって、医用装置100によって治療装置10を含めた治療システム1の動作を一元的に管理することができ、利便性が向上する。
【0080】
表示制御部124は、確認画像および治療画像において、ゲートオン信号を出力する際(確認段階では出力する条件が成立した際)に、ゲーティングウインドウGWの色(例えば、ゲーティングウインドウGWの外形を示す枠線の色)を変更するようにしてもよい。例えば、透視画像TI-1とTI-2のいずれにおいてもターゲット位置PT(所定の対象)がゲーティングウインドウGW内に収まっていない場合に第1の色、透視画像TI-1とTI-2のいずれか一方のみにおいてターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に第2の色、透視画像TI-1とTI-2の双方においてターゲット位置PTがゲーティングウインドウGWに収まっている場合に(すなわちゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に)第3の色でゲーティングウインドウGWの枠線を表示してよい。また、透視画像TI-1とTI-2のいずれにおいてもターゲット位置PTがゲーティングウインドウGW内に収まっていない場合には、エラーアイコンを表示してもよい。
【0081】
また、表示制御部124は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、ゲーティングウインドウGWの内側領域と外側領域のいずれかの色彩または輝度を変更してもよい。更に、医用装置100は、ゲートオン信号を出力する条件が成立した場合に、音または振動で通知する通知部126を備えてもよい。
【0082】
また、マーカレス追跡、マーカ追跡、外部呼吸同期などのモードの切り替えは、治療段階において受け付けられるのではなく、準備段階から治療段階にかけての任意のタイミングで受け付けられてよい。また、適宜、処理のやり直しが受け付けられる。例えば、確認画像を表示している場面において、テンプレート画像の撮影からやり直すための操作が受け付けられる。これによって、煩雑な操作を要求することが無くなり、利便性を向上させることができる。
【0083】
また、複数回に分けて治療が行われる場合、前回以前に作成されたテンプレートTを引き継いで治療が行われてもよい。図10は、医用装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)である。図示するように、セレクトウインドウSWにおいてマーカレス追跡が選択された後、統括制御部110は、いずれかの領域において「前回のテンプレートを使用する」ことが選択されたか否かを判定する(ステップS101)。「前回のテンプレートを使用する」ことが選択された場合、ステップS102~S114の処理がスキップされ、ステップS116に処理が進められる。これによって、利便性を向上させると共に、治療の信頼性を向上させることができる。
【0084】
以上のような構成によれば、透視画像TIに補正が必要な場合でも被検体Pのターゲットの位置を時間的に大きな遅れなく把握することができる医用装置100を提供することができる。すなわち、本実施形態の医用装置100の補正部131は、撮影部30の位置ずれなどが存在する場合に、透視画像TIのなかで被検体Pのターゲット位置PTを含む所定領域の画像を補正するが、透視画像TIのなかで前記所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像は補正しない。このような構成によれば、透視画像TIの全体を補正する場合に比べて補正に必要な処理時間を短くすることができる。これにより、透視画像TIに補正が必要な場合でも被検体Pのターゲットの位置を大きな遅れなく把握することができる。
【0085】
本実施形態では、前記所定領域は、透視画像TIのなかでターゲット位置特定部140によりターゲット位置PTが探索される探索領域Rである。このような構成によれば、補正部131により補正される領域が探索領域Rに限られる。これにより、透視画像TIの補正に必要な時間をさらに短くすることができる。
【0086】
本実施形態では、医用装置100の表示制御部124は、補正部131により補正された画像TIを表示する画面を入力・表示部120に表示させる。このような構成によれば、リアルタイムで補正された透視画像TIを入力・表示部120に表示させることができる。これにより、医師などは、時間的に大きな遅れなく補正された透視画像TIを確認することができる。
【0087】
本実施形態では、表示制御部124は、画面のなかで前記所定領域外に対応する領域には、取得部128により取得されて補正されていない透視画像TIを表示させる。このような構成によれば、医師などは、前記所定領域については補正された透視画像TIを確認することができるとともに、前記所定領域以外の領域のおおよその状態も併せて把握することができる。
【0088】
本実施形態では、表示制御部124は、画面のなかで前記所定領域外に対応する領域には、取得部128により取得された透視画像TIは表示させない。このような構成によれば、前記所定領域とその外側領域との境界で段差のようなずれがある画像が表示されることを避けることができる。
【0089】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の医用装置100Aについて説明する。本実施形態は、参照画像作成部132Aが学習部132aを有する点で、第1の実施形態とは異なる。ただし、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態の医用装置100と略同じである。
【0090】
図11は、第2の実施形態の医用装置100Aを含む治療システム1の構成図である。治療システム1は、例えば、治療装置10と、医用装置100Aとを備える。医用装置100Aは、第1の実施形態の参照画像作成部132に代えて、参照画像作成部132Aを有する。参照画像作成部132Aの基本機能は、参照画像作成部132と同様である。
【0091】
本実施形態では、参照画像作成部132Aは、学習部132aを有する。学習部132aは、治療が複数回(複数の日)に分かれて行われる場合、初回の治療においては三次元ボリュームデータ(例えば4DCT画像)から得られる複数のDRR画像に基づいてターゲットのパターン(例えば透視画像TIに現れるターゲットの形状のパターン)を学習し、マーカレス追跡に使用される参照画像を生成する。例えば、学習部132aは、テンプレートマッチングによりターゲットを追跡するためのテンプレートTを生成する。ターゲットのパターンは、「ターゲットに関する情報」の一例である。そして、学習部132aは、2回目以降の治療においては、1つ前の治療時に取得部128によって取得された複数の透視画像TIに基づいてターゲットのパターンを学習し、テンプレートTを生成し直す。これにより、被検体Pの身体の経時的変化を反映させたテンプレートTを用いてターゲットを追跡することができ、ターゲット追跡の精度を高めることができる。また、治療当日のターゲットの位置や動き等の傾向の比較から、信頼性の高いテンプレートが自動または手動で選択されてもよい。これにより、複数回行われる治療でも、治療当日のターゲット位置を精度よく特定できるテンプレートを選択でき、新たなテンプレート作成のための透視画像を撮影が不要になる。本実施形態では、ターゲットのパターンの学習に用いられる透視画像TIは、補正部131によりアライメント補正が行われた画像である。
【0092】
図12は、医用装置100Aにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、マーカレス追跡の場合について説明する。まず、統括制御部110は、その治療が2回目以降の治療の場合、1つ前の治療時に取得部128によって取得されて記憶部160に記憶されている透視画像TIがあるか否かを判定する(ステップS202)。統括制御部110は、1つ前の治療時の透視画像TIがある場合、その透視画像TIに対して補正部131によりアライメント補正を行う(ステップS204)。参照画像作成部132Aは、補正部131によりアライメント補正が行われた透視画像TIに基づいてターゲットのパターンを学習する(ステップS206)。そして、参照画像作成部132Aは、学習したターゲットのパターンに基づいてテンプレートTを生成する。この場合、ステップS102からS106の処理が省略され、ステップS110の処理が行われる。
【0093】
一方で、統括制御部110は、1つ前の治療時の透視画像TIがない場合、4DCT画像から得らえるDDR画像に基づいてテンプレートTを生成してもよいし、撮影部30および取得部128によってテンプレート画像となる透視画像TIを取得し、取得された透視画像TIに基づいてテンプレートTを生成してもよい。
【0094】
以上、いくつかの実施形態について説明した。ただし、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、機械学習によるマーカレス追跡が行われる場合は、透視画像TIから切り出されて学習済みモデルに入力される画像(計算領域)のみを補正してもよい。学習済みモデルに入力される画像(計算領域)は、1つでもよく、複数でもよい。
【0095】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、医用装置の補正部は、1つ以上の補正値に基づき透視画像のなかで被検体のターゲット位置を含む所定領域の画像を補正するが、前記透視画像のなかで前記所定領域を外れた少なくとも一部の領域の画像は補正しない。このような構成によれば、透視画像に補正が必要な場合でも被検体のターゲットの位置を大きな遅れなく把握することができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
10…治療装置、30…撮影部、100…医用装置、120…入力・表示部、124…表示制御部、128…取得部、131…補正部、132a…学習部、140、140B…ターゲット位置特定部、140a…判定部、150…出力制御部、P…被検体、TI、TI-1、TI-2…透視画像TI、PT…ターゲット位置、GW…ゲーティングウインドウ、R…探索領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12