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特許7140324過酸化水素ガス発生装置および過酸化水素ガス発生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】過酸化水素ガス発生装置および過酸化水素ガス発生方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 15/032 20060101AFI20220913BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220913BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20220913BHJP
【FI】
C01B15/032
A61L2/20 106
A61L101:22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018080556
(22)【出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2019189474
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236160
【氏名又は名称】株式会社テクノ菱和
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】安井 文男
(72)【発明者】
【氏名】田村 一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋且
(72)【発明者】
【氏名】藤井 美紗
(72)【発明者】
【氏名】関口 和彦
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-515770(JP,A)
【文献】特開2006-288647(JP,A)
【文献】特開2012-135378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0176959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/00
A61L
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過炭酸ナトリウムが充填された容器と、
前記容器を加熱する加熱装置と、
前記容器に気体を供給する気体供給路と、
前記気体供給路と対向する位置に設けられ、過酸化水素ガスを供給する過酸化水素ガス供給路と、
を有し、
前記加熱装置が前記容器を加熱するともに、前記気体供給路を介して前記過炭酸ナトリウムの加熱温度よりも低い温度の気体を、前記容器に通気する過酸化水素ガス発生装置。
【請求項2】
前記容器に充填された過炭酸ナトリウムにおいて、隣り合う過炭酸ナトリウムの間に気体の通り道となる空隙が形成されている請求項1記載の過酸化水素ガス発生装置。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記過炭酸ナトリウムに付着している水分を蒸発させるプレヒーティングを行う請求項1または2記載の過酸化水素ガス発生装置。
【請求項4】
前記加熱装置は、前記容器内の過炭酸ナトリウムの温度が、105~120℃となるように容器を加熱する請求項1~3いずれか1項記載の過酸化水素ガス発生装置。
【請求項5】
前記気体が、絶対湿度が1.5g/m3以下の乾燥した気体である請求項1~4いずれか1項記載の過酸化水素ガス発生装置。
【請求項6】
前記気体を冷却する冷却装置をさらに備え、
前記気体の温度を25度以下に冷却する請求項1~5いずれか1項記載の過酸化水素ガス発生装置。
【請求項7】
過炭酸ナトリウムを加熱し、過酸化水素ガスを発生させる加熱工程と、
熱温度よりも低い温度の気体により、前記過酸化水素ガスが対象空間に向かって流れるように、前記過酸化水素ガスに向けて前記気体を供給する気体供給工程と、を含む過酸化水素ガス発生方法。
【請求項8】
前記加熱工程の前に、前記過炭酸ナトリウムに付着している水分を蒸発させるプレヒーティング工程を含む請求項7記載の過酸化水素ガス発生方法。
【請求項9】
前記気体供給工程の前に、前記気体を25度以下に冷却する冷却工程を含む請求項7または8記載の過酸化水素ガス発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオロジカルクリーンルーム等の対象空間において、壁面等を殺菌に使用する過酸化水素ガスの発生装置および過酸化水素ガス発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンルーム等の対象空間の殺菌では、ホルムアルデヒドに代わり、過酸化水素(H)ガスが用いられるようになっている。ホルムアルデヒドガスは急性毒性や発癌性など、人体への有害性が問題視されている。一方、過酸化水素(H)ガスは、2H→2HO+Oの化学式のように分解することで最終的に酸素と水になり、有害な物質が発生しないからである。そのため、過酸化水素ガスは、クリーンルームをはじめとする室内や、ドラフトチャンバー、アイソレーター、RABS(Restricted Access Barrier Systems:アクセス制限バリアシステム)等の小空間の殺菌に使用されている。
【0003】
従来では、過酸化水素ガスの発生には、過酸化水素水が用いられている。過酸化水素水は、通常35wt%の水溶液として市販されているため、これを殺菌に用いると過酸化水素ガスと水蒸気が発生し対象室内の湿度が上昇する。そのため、壁面等に水蒸気の結露が発生し、クリーンルーム等の構造材を腐食させるという問題があった。このような問題に対処するために、従来では、特殊なフィルタ等を用いて過酸化水素ガスから水分を取り除いたり、冷却コイルを有する除湿装置等を配置して対象空間内の除湿を行っていた。そのため、システムの大型化や高額化を招いていた。
【0004】
また、過酸化水素を含む物質としては過炭酸ナトリウムが知られている。過炭酸ナトリウムは洗剤等に配合され、水溶液中では過酸化水素と炭酸ナトリウムに解離する。過炭酸ナトリウムを加熱することで、気相中において過酸化水素を脱離させることは可能である。しかし、加熱により脱離した過酸化水素は、直ちに水と酸素に分解されるため、過炭酸ナトリウムから過酸化水素ガスを得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-288647号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Takeshi Wada、Nobuyoshi Koga、“Kinetics and Mechanism of the Thermal Decomposition of Sodium Percarbonate: Role of the Surface Product Layer”、THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY A、2013、1880-1889頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、低湿度な過酸化水素ガスを供給することのできる過酸化水素ガス発生装置および過酸化水素ガス発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、洗剤の過炭酸ナトリウムが、長時間放置すると炭酸ナトリウムとなることに着目した。つまり、過炭酸ナトリウムを長時間放置することで過酸化水素が揮発している可能性があると考えられた。発明者は、過炭酸ナトリウムから過酸化水素ガスを取り出すことができれば、過酸化水素水溶液から過酸化水素ガスを発生した場合に比べ、低湿度の過酸化水素ガスが得られると考え、鋭意検討を行った。その結果、過酸化水素ガス発生装置を以下の構成とすることで、過炭酸ナトリウムから過酸化水素ガスを得られるとの知見を得た。
【0009】
(1)過炭酸ナトリウムが充填された容器と、前記容器を加熱する加熱装置と、前記容器に気体を供給する気体供給路と、前記気体供給路と対向する位置に設けられ、過酸化水素ガスを供給する過酸化水素ガス供給路と、を有し、前記加熱装置が前記容器を加熱するともに、前記気体供給路を介して前記過炭酸ナトリウムの加熱温度よりも低い温度の気体を、前記容器に通気する。
【0010】
(2)前記容器に充填された過炭酸ナトリウムにおいて、隣り合う過炭酸ナトリウムの間に気体の通り道となる空隙が形成されていても良い。
(3)前記加熱装置は、前記過炭酸ナトリウムに付着している水分を蒸発させるプレヒーティングを行っても良い。
【0011】
(4)前記加熱装置は、前記容器内の過炭酸ナトリウムの温度が、105~120℃となるように容器を加熱しても良い。
(5)前記気体が、絶対湿度が1.5g/m以下の乾燥した気体であっても良い。
(6)前記気体を冷却する冷却装置をさらに備え、前記気体の温度を25度以下に冷却しても良い。
【0012】
なお、上記の各態様は、過酸化水素ガス発生方法としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低湿度な過酸化水素ガスを供給することのできる過酸化水素ガス発生装置および過酸化水素ガス発生方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る過酸化ガス発生装置の第1の実施形態を示す構成図である。
図2】過酸化水素ガスの発生工程を示すフローチャートである。
図3】過炭酸ナトリウムのプレヒーティング時間と過酸化水素ガスの相対湿度の関係を示すグラフである。
図4】過炭酸ナトリウムの加熱温度と過酸化水素ガスの過酸化水素濃度の関係を示すグラフである。
図5】過炭酸ナトリウムの加熱温度と過酸化水素ガスの相対湿度の関係を示すグラフである。
図6】過炭酸ナトリウムに通気する気体の温度と過酸化水素ガスの酸化水素濃度および相対湿度の関係を示すグラフである。
図7】過炭酸ナトリウムの形状と過酸化水素ガスの過酸化水素濃度の関係を示すグラフである。
図8】本発明に係る過酸化ガス発生装置の他の実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
[1.構成]
本発明の第1の実施形態に係る過酸化水素ガス発生装置の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示す通り、過酸化水素ガス発生装置は、筐体1を有する。筐体1の内部には、過炭酸ナトリウムが充填された容器2と、容器2を加熱する加熱装置3が設けられている。
【0016】
(容器)
容器2は、中空部に過炭酸ナトリウムが充填される充填容器である。容器2は、熱伝導率が高く、容器2内部の温度が均一となる材料により形成されていると良い。例えば、容器2としては、円筒型のガラス管または金属管のカートリッジを用いることができる。以下の説明では、容器2としてカートリッジを用いた場合を例に説明する。このカートリッジには、気体供給路Aと過酸化水素ガス供給路Hが接続されている。具体的には、ガラス管または金属管の一端部の開口には、チューブコネクタを介して気体供給路Aが接続されている。ガラス管または金属管の他端部の開口には、チューブコネクタを介して過酸化水素ガス供給路Hが接続されている。
【0017】
カートリッジは、過酸化水素ガス発生装置に対して取り外し可能に構成されており、過酸化水素ガス発生後はカートリッジを交換する。また、過酸化水素ガスの発生量に応じて、カートリッジを複数本設置する構成としても良い。カートリッジの直径や長さは、以下に記載するように加熱装置3により加熱されたときに、カートリッジ内の過炭酸ナトリウムが均一に加熱されるように構成すればよい。
【0018】
容器2に充填された過炭酸ナトリウムにおいて、隣り合う過炭酸ナトリウムの間に気体の通り道となる空隙が形成されていると良い。空隙を形成する方法のひとつとして、粒状の過炭酸ナトリウムを用いると良い。粒状の過炭酸ナトリウムは、容器2に充填されたときに、隣り合う過炭酸ナトリウムの間に空隙が形成される。すなわち、複数の粒状の過炭酸ナトリウムが、空隙を画成する。この空隙が、容器2に供給された気体の通り道となる。
【0019】
(加熱装置)
加熱装置3は、容器2を加熱するための導体を有する。導体としては、アルミ線又は銅線等、電気伝導率の高い導体を用いることが好ましい。他にも、ニクロム線、カンタル線を用いても良い。導体は、電源供給トランスから供給される電流によって、所望の温度にカートリッジを加熱できるように、容器2の抵抗を鑑みて、導体の断面積や巻回する長さを調整しておく。なお、導体のような線状発熱体のみではなく、面状に発熱するヒーターを用いても良い。
【0020】
加熱装置3は、不図示の制御装置を含む。すなわち、導体には制御装置が接続されており、この制御装置からの制御信号により、容器2内の過炭酸ナトリウムが所望の温度となるように導体により容器2を加熱する。具体的には、容器2内の過炭酸ナトリウムの温度が、105~120℃となるように、容器2を加熱することが好ましい。このような温度範囲で加熱装置3が過炭酸ナトリウムを加熱することで、過酸化水素ガスが湿度の上昇を抑制した状態において効率よく発生される。
【0021】
例えば、容器2であるカートリッジをガラス管で形成した場合、加熱されたカートリッジの温度は、カートリッジ内の過炭酸ナトリウムの温度より約5度高い。従って、ガラス管を用いる場合には、カートリッジの温度が110~125℃となるように加熱装置3を構成する。このように、カートリッジの材料により具体的な温度差は異なるが、カートリッジの温度と過炭酸ナトリウムの温度の差を考慮したうえで、カートリッジ内の過炭酸ナトリウムの温度が105~120℃となるように構成すればよい。
【0022】
また、加熱装置3は、過酸化水素ガス発生のための加熱の前に、過炭酸ナトリウムに付着している水分を蒸発させるために容器2を加熱するプレヒーティングを行っても良い。プレヒーティングにより、過炭酸ナトリウムに付着している水分を蒸発させることにより、発生する過酸化水素ガスの湿度を低減させる。プレヒーティングの温度は、水分の蒸発を促す一方で過炭酸ナトリウムから過酸化水素ガスが発生しない温度とする。
【0023】
具体的には、100℃未満、より好ましくは80℃以下である。100℃以上で加熱を行うと、過酸化水素ガスが発生する可能性が高まる。また、プレヒーティング時間は、45分以上、より好ましくは60分以上とすることで、過炭酸ナトリウムに付着した水分が十分に蒸発される。なお、過炭酸ナトリウムを、容器2に充填する前に、過炭酸ナトリウムに対して、油浴、熱風乾燥機、ホットプレート等の外部の加熱装置を用いてプレヒーティングを行っても良い。
【0024】
(気体供給路)
気体供給路Aは、容器2に気体を供給するダクトである。気体供給路Aは、一端部が容器2に接続され、他端部が不図示の気体供給システムに接続されている。容器2に気体を供給する理由の一つとしては、過炭酸ナトリウムから発生した過酸化水素ガスを、供給された気体により対象空間へと向けて押し出すことにある。また、過酸化水素は炭酸ナトリウムに対する結合力が強い一方、50度以上に加熱すると過酸化水素は脱離しながら分解し、100度以上になると顕著に分解する。すなわち、過炭酸ナトリウムから脱離した過酸化水素ガスは、脱離とほぼ同時に分解が始まり水と酸素になる。
【0025】
しかし、気体供給路Aを介して供給された気体により、分解の直前に過酸化水素ガスを加熱エネルギーから遠ざけることで分解が抑制される。過酸化水素ガスの分解を抑制するために、気体供給路Aを介して供給される気体は、過炭酸ナトリウムの加熱温度よりも低い温度の気体とすることが好ましい。
【0026】
ここで、過酸化水素ガスが水蒸気と酸素に分解する反応を示す。
(g)→HO(g) + 1/2 O(g)
この反応は発熱反応であり、25度における標準反応ギブスエネルギーΔG°[kJ mol-1]と圧平衡定数Kはそれぞれ、ΔG= -123kJ mol-1、K =3.5×1021となる。このことは、この反応が低温でもゆっくりと自発的に進行するだけでなく、成分組成も水蒸気と酸素に大きく偏っていることを示している。
【0027】
一方、熱分解条件を想定し115℃において同様の計算を行うと、標準反応ギブスエネルギーはΔG°=-128kJ mol-1と大きく変化はしないが、圧平衡定数はK= 1.8×1017と4桁近く小さな値を取る。このことは、高温での熱分解は同様に自発的に進行するが、熱分解時の成分組成は過酸化水素ガス側に偏っていることを示唆している。よって、この成分組成のまま冷却できれば過酸化水素ガスが水蒸気と酸素へ分解する速度を遅くでき、結果として、過酸化水素ガスが効果的に発生すると推察される。
【0028】
気体供給路Aを介して供給される気体は、過炭酸ナトリウムの加熱温度よりも低い温度であって、さらにより低い温度とすることが好ましいことが分かる。以上より、気体の温度を25度以下とすることで、より効果的に過酸化水素ガスを取り出すことが可能となる。
【0029】
気体供給システムとして、例えば圧縮空気供給システムを用い、圧縮空気を気体供給路Aを介して容器2に供給することができる。圧縮空気を用いる理由としては、大気には一定の含水率で水分が含まれている一方、圧縮空気は湿度10%程度の乾燥した気体であることがあげられる。すなわち、容器2に乾燥空気を供給することで、湿度60%以下の低湿度な過酸化水素ガスが発生する。
【0030】
圧縮空気供給システムとしては、コンプレッサを用いることができる。一般的に、本実施形態の過酸化水素発生装置が適用されるクリーンルーム等の設備には、コンプレッサが設置されていることが多い。気体供給路Aには、圧縮方式を問わず既存のコンプレッサを接続すればよい。ただし、容器2には、絶対湿度が1.5g/m以下の乾燥した気体が供給されていることが重要であり、その供給源はコンプレッサに限定されるものではない。なお、コンプレッサから供給された気体は、コンプレッサに供給された気体より高温となるが、配管を通る間に室温程度まで温度が下がる。従って、コンプレッサを用いて25℃以下の気体を供給することができる場合もある。
【0031】
気体供給システムは、他にもファンやブロワを用いて気体供給路Aに気体を供給する構成とすることができる。ファンやブロワを用いて室内空気を気体供給路Aに送風する場合には、気体供給路Aにおいて、室内空気の絶対湿度を低減させる除湿装置を設けることが好ましい。
【0032】
また、気体供給システムとして、必要に応じて水分除去用のドライヤや、油分除去用のオイルミストセパレータを含む構成としても良い。さらに、塵埃・菌・有機物除去用のフィルタを設置しても良い。すなわち、バイオロジカルクリーンルーム等の対象空間にとって必要な気体条件を満たすために、適宜ドライヤ、セパレータ、フィルタ等を気体供給システムおよび気体供給路Aに設けることが可能である。
【0033】
圧縮空気供給システムに接続される気体供給路Aには、減圧弁a1、逆止弁a2、流量計a3が設けられている。減圧弁a1は、気体供給路Aに供給された気体を減圧し、減圧後の圧力を一定に保つためのバルブである。減圧弁a1には、不図示の制御装置が接続されており、この制御装置からの制御信号により、減圧弁a1の開度が調整される。容器2に供給される気体の圧力は、大気圧として101.325Paとすると良い。
【0034】
逆止弁a2は、気体供給路Aに供給された気体が逆流することを防止するためのバルブである。逆止弁a2は、気体供給路Aに供給された気体が、逆方向に流れようとすると自動的に閉弁する構造を有する。逆止弁a2には、不図示の制御装置が接続されており、この制御装置からの制御信号により、逆止弁a2の開度が調整される。制御装置は、過酸化水素ガス発生装置の運転終了時には、逆止弁a2を閉状態とする。
【0035】
また、流量計a3は、気体供給路Aに供給された気体の流量を測定する計測機である。流量計a3の計測結果は、過酸化水素ガス発生装置の使用者が目視にて確認できるように表示される。気体の流量は、対象空間の体積、過酸化水素ガスの濃度、殺菌時間等を考慮して決定すればよい。流量計a3に制御装置を設け、ユーザが、対象空間の体積、過酸化水素ガスの濃度、殺菌時間を制御装置に入力すると気体の流量が自動的に決定される構成としても良い。気体供給路Aに供給される気体の流量は、流量計の値を確認した使用者が気体供給システムの流量を手動で調整することにより決定しても良い。ただし、気体供給路Aにバルブを設け、制御装置によりこのバルブの開度を調整することで所望の流量となるように調整することもできる。
【0036】
上記構成において、気体供給システムから供給された気体を冷却する冷却装置を設け、容器2に供給する気体の温度を25度以下に冷却しても良い。過炭酸ナトリウムに通気する気体を25度以下の冷却ガスとすることで、過酸化水素の分解が抑制される。そのため、発生する過酸化水素ガスの過酸化水素濃度を高めることができる。冷却装置としては、冷水による熱交換を行う機構や、ペルチェ素子を用いた冷却機構を適用することができる。冷却装置は、減圧弁a1と容器2の間に設け、気体が容器2に供給される直前に冷却される構成とすると良い。なお、冷却装置は必ずしも気体供給路Aに設ける必要はない。例えば、使用する気体供給システムが、供給する気体を冷却する機構を備えている場合には、その冷却機構を利用することができる。
【0037】
(過酸化水素ガス供給路)
過酸化水素ガス供給路Hは、過酸化水素ガスを対象空間Sに供給するダクトである。過酸化水素ガス供給路Hの、容器2と接続されている端部と反対側の端部は、対象空間内に設置されている。気体供給路Aを介して容器2に供給された気体は、容器2内において脱離直後の過酸化水素ガスをさらい、過酸化水素ガスとともに過酸化水素ガス供給路Hを介して対象空間に供給される。
【0038】
以上の構成において、容器2または導体、および過酸化水素ガス供給路Hの近傍に温度センサを設けても良い。温度センサは制御装置に接続されており、制御装置が容器2や過酸化水素ガス供給路Hが所定の温度以上にならないように加熱装置を制御する構成とすると良い。過酸化水素ガスの通り道となる構成を所定温度以下となるように制御することで、過酸化水素ガスが水と酸素に分解されることを防止する。
【0039】
[2.過酸化水素ガス発生工程]
以上のような構成を有する過酸化水素ガス発生装置は、図2に示す通り、以下の工程により過酸化水素ガスを生成する。
(1)容器2のプレヒーティング工程
(2)容器2の加熱工程
(3)容器2への気体供給工程
【0040】
(プレヒーティング工程)
プレヒーティング工程では、過炭酸ナトリウムを加熱する。例えば、2gの過炭酸ナトリウムを80℃でプレヒーティングする場合、加熱時間は1時間以上とすると良い。プレヒーティングは、加熱装置3を用いて過炭酸ナトリウムが充填されたカートリッジを加熱することにより行うことができる。また、プレヒーティングは、過炭酸ナトリウムを三角フラスコ等の容器に入れ、油浴により加熱して行ってもよい。この場合、プレヒーティング後の過炭酸ナトリウムは、カートリッジに充填される。このカートリッジを、過酸化水素ガス発生装置の筐体1内部に設置する。
【0041】
(加熱工程)
加熱工程では、過酸化水素ガス発生装置の筐体1に設置されたカートリッジを、加熱装置3により加熱する。すなわち制御装置からの制御信号により、加熱装置3は、カートリッジ内に充填された過炭酸ナトリウムが105~120度となるように、カートリッジを加熱する。カートリッジを加熱することにより、過炭酸ナトリウムはその表面が加熱され、過酸化水素ガスが発生する。この加熱工程の開始とともに、気体供給工程も開始される。
【0042】
(気体供給工程)
気体供給工程では、カートリッジに乾燥した気体を供給する。すなわち、制御装置からの制御信号により、減圧弁a1および逆止弁a2を開状態としたうえで、気体供給路Aに接続されている圧縮空気供給システムから圧縮空気を供給する。気体供給路Aに供給された圧縮空気は、減圧弁a1により大気圧まで減圧されて25度以下となり、流量計を介してカートリッジへと送られる。
【0043】
なお、この気体供給工程の前に、供給する気体を25度以下に冷却する冷却工程を行っても良い。気体供給工程の前とは、気体がカートリッジに供給される前を意味する。従って、気体の冷却は、気体供給システムの冷却機構により行っても良いし、気体供給路Aに冷却装置を設けて行っても良い。
【0044】
カートリッジ内部へと供給された気体は、粒状の過炭酸ナトリウムが画成する空隙を気体の通り道として、過酸化水素ガス供給路H側に向かって進む。この過程で、気体は過炭酸ナトリウムから発生した過酸化水素ガスをさらう。すなわち、過炭酸ナトリウムから発生した過酸化水素ガスは、随時気体により過酸化水素ガス供給路H側に向かって流される。また、供給された気体の温度は、過炭酸ナトリウムの加熱温度より低い。そのため、過炭酸ナトリウムから脱離した過酸化水素ガスの分解が抑制され過酸化水素ガスの状態のまま取り出されることとなる。
【0045】
過酸化水素ガスを含む気体はカートリッジの出口側に到達し、そのまま過酸化水素ガス供給路Hへと流れる。そして、過酸化水素ガスは、過酸化水素ガス供給路Hを介して対象空間に供給される。カートリッジの加熱と、カートリッジに対する気体の供給を、対象空間を殺菌するのに十分な過酸化水素ガスが供給されるように、所定の時間にわたり実施する。
【0046】
[3.実験]
以下、本実施形態の過酸化水素ガス発生装置により発生される過酸化水素ガスについて検証を行った。各実験において、特に断りがない場合は、同様の実験設備および条件を用いて過酸化水素ガスの発生および測定を行った。
(実験設備)
過酸化水素ガスの発生および測定は、以下の設備と手順により行った。すなわち、粒状の過炭酸ナトリウム2gを三角フラスコに入れ、油浴中に固定した。油浴温度を設定し、設定温度に保った状態で、0.5L/minで乾燥空気を1時間サンプルに通気した。乾燥空気としては、25度以下の圧縮空気を用いた。三角フラスコから排出された気体について、温湿度計と過酸化水素検知器を設置し、気体の温湿度と過酸化水素濃度を測定した。
【0047】
なお、実験に用いた過酸化水素検知器は、0.0~300ppmの範囲で過酸化水素を検知可能な検知器であった。過酸化水素検知器にはポンプが内蔵されており、このポンプにより、0.67L/minで気体を吸引する構成であった。三角フラスコに対しては0.5L/minで乾燥空気が供給されていることから、この乾燥空気を用いて三角フラスコから排出した気体を過酸化水素検知器の直前で2倍に希釈し、流量を1.0L/minとしてから過酸化水素ガス濃度を測定することとした。
【0048】
(プレヒーティング)
本実施形態の過酸化水素ガス発生装置が用いる過炭酸ナトリウムについて、プレヒーティングの効果を検証した結果を以下に示す。実験におけるプレヒーティングは、2gの過炭酸ナトリウムを三角フラスコに入れ、油浴にて80℃に加熱して行った。過炭酸ナトリウムは、加熱時間が異なる6種のサンプルを用意した。各サンプルの加熱時間は、0、15、30、45、60、または75分であった。各サンプルを三角フラスコに入れ、油浴により過炭酸ナトリウムの温度が115℃となるように加熱し、発生した気体にいて、湿度を測定した。
【0049】
各サンプルについて湿度を測定した結を図3に示す。図3から明らかな通り、プレヒーティング時間が0~30分のサンプルでは、加熱開始2分後に過炭酸ナトリウムから発生した気体の相対湿度が15%以上となった。また、プレヒーティング時間が45分のサンプルは、水分の発生が見られたものの相対湿度は5%以下にとどまった。
【0050】
最後に、プレヒーティング時間が60または75分のサンプルでは、発生する気体の相対湿度は1%以下であった。すなわち、プレヒーティング時間が60または75分のサンプルでは、ほとんど水分が発生しておらず、低湿度の過酸化水素ガスが発生していることが確認された。なお、各サンプルにおいて、加熱開始3分後以降徐々に相対湿度が上昇しているが、これは過酸化水素ガスが水と酸素に分解されたためであると考えられる。
【0051】
(過炭酸ナトリウムの加熱温度)
過炭酸ナトリウムの加熱温度と発生する過酸化水素の濃度の関係を検証する実験を行った。この実験は、80℃にて1時間プレヒーティングを行った過炭酸ナトリウムを、各サンプルにおいて2gずつ用いて行った。過炭酸ナトリウムの加熱温度は、95、105、110、115、120、および125℃とした。実験ではガラス製の三角フラスコに過炭酸ナトリウムを入れ、油浴により加熱した。従って、油浴温度を100、110、115、120、125および130℃として三角フラスコを油浴温度と同一の温度に加熱することで、過炭酸ナトリウムを上記温度に加熱した。
【0052】
各サンプルについて、60分間、過酸化水素濃度および湿度を測定した。また、比較対象として、過酸化水素水をバブリングした場合の、過酸化水素濃度とおよび湿度を測定した。
【0053】
各サンプルについて過酸化水素濃度を測定した結果を図4に示す。上記の通り、過酸化水素濃度は気体を2倍希釈した後に測定したため、図4では補正後の濃度を示す。また、各温度は三角フラスコの油浴温度を示している。図4から明らかな通り、油浴温度100℃、すなわち過炭酸ナトリウム温度が95℃以上となると、過炭酸ナトリウムからの過酸化水素の脱離が徐々に始まることが分かる。
【0054】
また、油浴温度110℃~125℃、すなわち過炭酸ナトリウム温度で105℃~120℃においては、過酸化水素濃度が上昇し良好な結果となった。一方、油浴温度130℃、すなわち過炭酸ナトリウム温度が130℃となると、加熱開始30分後に過酸化水素濃度が大きく上昇した。また、過酸化水素濃度は上昇後に急激に減少し、不安定な挙動を示した。ただし、いずれのサンプルにおいても、比較対象である過酸化水素水のバブリングと比べると、過酸化水素濃度は低かった。
【0055】
2gの過炭酸ナトリウムを各温度で1時間加熱した場合の、試料の減少量を表1に示す。表1では、試料の減少量から過酸化水素濃度を換算し、換算した過酸化水素濃度を、過酸化水素の理論含有量で除して、理論含有量に対する過酸化水素の発生割合を求めた。
【表1】
【0056】
表1より、過炭酸ナトリウムの加熱温度が上昇すると、過酸化水素の発生割合が上昇することが分かった。油浴温度100~120℃では、1時間の加熱時間では過酸化水素濃度の発生割合が低く、脱離できていない過酸化水素があることが伺えた。これらのサンプルについては、加熱時間を増やすことで過酸化水素の発生割合を増やすことができると考えられる。また、油浴温度125℃、すなわち過炭酸ナトリウム温度120℃で1時間加熱することで、2gの過炭酸ナトリウムに含まれる過酸化水素のほとんどが脱離または分解していると考えられる。
【0057】
次に、各サンプルについて相対湿度を測定した結果を図5に示す。図5からも明らかな通り、過酸化水素水のバブリングにて発生した過酸化水素ガスの湿度は、加熱開始15分後に60%に達し、徐々に上昇していた。過酸化水素ガスの相対湿度が60%を超えると、対象空間の壁面等に結露を生じさせ、対象空間の構造材を腐食させる可能性が高く好ましくない。一方、過炭酸ナトリウムを加熱すると、油浴温度125℃以下、すなわち過炭酸ナトリウム温度で120℃以下の場合、相対湿度が60%以下の低湿度の過酸化水素ガスが発生していることが分かった。
【0058】
過炭酸ナトリウム温度が120℃の場合には、相対湿度が60%近傍まで上昇するため、対象空間に供給した場合、壁面等に多少の結露が生じる可能性はある。しかし、対象空間に除湿装置を配置せずとも、対象空間の腐食等は生じないレベルであると考えられる。ただし、より安全には、過炭酸ナトリウム温度を110℃および115℃とすることで、過酸化水素濃度を維持しつつも低湿度な状態の過酸化水素ガスが得られるため好ましい。
【0059】
また、油浴温度を130℃、すなわち過炭酸ナトリウム温度で125℃に達すると、加熱開始30分後に、相対湿度が80%に達した。上記の通り、過炭酸ナトリウム温度125℃においては、加熱開始30分後に過酸化水素濃度が著しく上昇していた。この相対湿度と過酸化水素濃度を併せて考慮すると、過炭酸ナトリウム温度が125℃に達すると、過酸化水素は脱離とともに水と酸素に分解し、高湿度のガスが発生していると考えられる。この高湿度のガスに、さらに過酸化水素が溶け込むかたちで、一時的に過酸化水素濃度が上昇した可能性が高い。従って、過炭酸ナトリウム温度を125℃に加熱した場合、過酸化水素ガスの湿度が著しく上昇するとともに、安定した濃度で過酸化水素ガスを供給できないことが分かった。
【0060】
(供給気体温度)
過炭酸ナトリウムに供給する気体の温度と発生する過酸化水素の濃度の関係を検証する実験を行った。この実験は、80℃にて1時間プレヒーティングを行った過炭酸ナトリウムを、各サンプルにおいて2gずつ用いて行った。過炭酸ナトリウムの加熱温度は115℃とした。実験ではガラス製の三角フラスコに過炭酸ナトリウムを入れ、油浴により加熱した。従って、油浴温度を120℃として三角フラスコを油浴温度と同一の温度に加熱することで、過炭酸ナトリウムを上記温度に加熱した。
【0061】
以上の条件で加熱した2つのサンプルについて、一方には20度に冷却された圧縮空気(冷却ガス)を通気し、もう一方には25度の圧縮空気(圧縮ガス)を通気した。圧縮空気の冷却は、圧縮空気供給システムから供給された気体を、液体窒素に浸された金属管の内部に通気することで行った。
【0062】
各サンプルについて、過酸化水素濃度と相対湿度を測定した結果を図6に示す。図6からも明らかな通り、圧縮ガスの通気では40%台であった過酸化水素濃度が、冷却ガスを通気した場合は50%を大幅に上回る結果となった。一方、相対湿度については、冷却ガスと圧縮ガスの間で大きな差異は確認されなかった。従って、過炭酸ナトリウムに25℃以下の冷却ガスを通気することで、より過酸化水素濃度が高く、かつ低湿度な過酸化水素ガスが発生できることが分かった。
【0063】
(試料のすり潰し)
粒状の過炭酸ナトリウムをすり潰し、粉末状とした場合における過酸化水素濃度を測定した。この実験は、80℃にて1時間プレヒーティングを行った過炭酸ナトリウムを、各サンプルにおいて2gずつ用いて行った。過炭酸ナトリウムのすり潰しは、乳鉢を用いて5分間手動にて行った。過炭酸ナトリウムの加熱温度は115℃とした。実験ではガラス製の三角フラスコに過炭酸ナトリウムを入れ、油浴により加熱した。従って、油浴温度を120℃として三角フラスコを油浴温度と同一の温度に加熱することで、過炭酸ナトリウムを上記温度に加熱した。
【0064】
粒状の過炭酸ナトリウムと粉末状の過炭酸ナトリウムについて過酸化水素濃度を測定した結果を図7に示す。図7から明らかな通り、粉末状の過炭酸ナトリウムを用いた場合、粒状の過炭酸ナトリウムと比較して過酸化水素濃度が大きく低下した。この結果は、粉末状の過炭酸ナトリウムの場合、過炭酸ナトリウムの粒子間形成される空隙が非常に小さくなるため、供給された気体の通り道となることができないことに理由があると考えられる。すなわち、粉末状の過炭酸ナトリウムを用いた場合、脱離した過酸化水素を通気により十分に取り出すことができていないと思われる。従って、過炭酸ナトリウム間に空隙を形成することができる粒状の過炭酸ナトリウムを用いることで、発生する過酸化水素ガスの過酸化水素濃度を上昇させることが可能となる。
【0065】
[4.作用効果]
以上のような本実施形態の過酸化水素ガス発生装置の作用効果は、以下のとおりである。
(1)過炭酸ナトリウムが充填された容器2と、容器2を加熱する加熱装置3と、容器2に気体を供給する気体供給路Aと、を有し、加熱装置3が容器2を加熱するともに、気体供給路Aを介して過炭酸ナトリウムの加熱温度よりも低い温度の気体を容器2に通気する。
【0066】
過炭酸ナトリウムを充填した容器2を加熱することで、過炭酸ナトリウムから過酸化水素を脱離させることができる。また、容器2に炭酸ナトリウムの加熱温度よりも低い温度の気体を通気することで、脱離した過酸化水素の分解を抑制しつつ過酸化水素ガスを取り出すことができる。以上より、過酸化水素水溶液から過酸化水素ガスを発生した場合に比べ、低湿度の過酸化水素ガスを得ることが可能となる。
【0067】
(2)容器2に充填された過炭酸ナトリウムにおいて、隣り合う過炭酸ナトリウムの間に気体の通り道となる空隙が形成されている。
【0068】
過炭酸ナトリウム間に空隙を形成すると、この空隙が供給された気体の通り道となることから、確実に過酸化水素ガスを取り出すことが可能となる。
【0069】
(3)加熱装置3は、過炭酸ナトリウムに付着している水分を蒸発させるプレヒーティングを行う。
【0070】
過酸化水素ガスの発生前に、過炭酸ナトリウムに含まれている水分を蒸発させておくことで、発生する過酸化水素ガスをより低湿度な気体とすることができる。
【0071】
(4)加熱装置3は、容器2内の過炭酸ナトリウムの温度が、105~120℃となるように容器を加熱する。
【0072】
過炭酸ナトリウムの加熱温度を105~120℃とすることで、過酸化水素の発生量を維持しつつ、相対湿度60%以下の低湿度な過酸化水素ガスを発生させることが可能となる。
【0073】
(5)気体が、絶対湿度が1.5g/m以下の乾燥した気体である。
【0074】
容器2に乾燥した気体を供給することで、得られる過酸化水素ガスをより低湿度なものとすることができる。
【0075】
(6)気体を冷却する冷却装置をさらに備え、気体の温度を25度以下に冷却する。
【0076】
容器2に供給される気体の温度を25度以下とすることで、より確実に過酸化水素の分解を抑えることができる。よって、より高濃度な過酸化水素ガスをえることが可能となる。
【0077】
[その他の実施の形態]
【0078】
(過炭酸ナトリウムの形状について)
上記の実施形態では、容器2に充填された過炭酸ナトリウムにおいて空隙を形成するために、粒状の過炭酸ナトリウムを用いた。ただし、本発明では、例えば粒状の過炭酸ナトリウムをすり潰すことで微粉末とした過炭酸ナトリウムを用いることを排除する意図はない。微粉末の過炭酸ナトリウムを容器2内部に敷き詰めるようにして用いた場合、隣り合う過炭酸ナトリウムにより形成される空隙は非常に少ない。そのため、容器2に供給された気体の通り道が形成されにくくなる。
【0079】
従って、微粉末の過炭酸ナトリウムを用いる場合には、例えば容器2に繊維状材料とともに充填すると良い。繊維状材料はその内部構造に空隙を含むため、微粉末状の過炭酸ナトリウムを用いた場合であっても、隣り合う過炭酸ナトリウムの間に気体の通り道となる空隙が形成されやすくなる。繊維状材料としては、ガラス繊維、グラスウール、不織布などを用いることができる。以上説明した通り、繊維状材料とともに微粉末の過炭酸ナトリウムを用いることで、上記実施形態の作用効果を得ることができる。
【0080】
(カートリッジの構成について)
上記の実施形態では、カートリッジは、円筒型のガラス管または金属管であり、中空部に過炭酸ナトリウムが充填されている。ただし、図8に示すように、カートリッジを、ガラス管または金属管の外筒2aと、外筒2aの内部に収容される内筒2bにより構成しても良い。過炭酸ナトリウムは、外筒2aと内筒2bの間の空間に充填される。ここで、内筒2bは、金属製のメッシュ構造を有している。よって、内筒2bの内周面が形成する円柱型の空間に気体を供給する構成とすることで、過炭酸ナトリウムに対して通気することができる。このようなカートリッジの一例として、ディフューションドライヤーを適用しても良い。
【0081】
また、過炭酸ナトリウムへの通気効率を向上させるために、カートリッジの気体供給口に角度を設け、外筒2aの内周面に向かって給気する構造としても良い。すなわち、カートリッジ内部において気体が旋回するように給気するための機構を設けることができる。
【符号の説明】
【0082】
A 気体供給路
a1 減圧弁
a2 逆止弁
a3 流量計
H 過酸化水素ガス供給路
1 筐体
2 容器
2a 外筒
2b 内筒
3 加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8