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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/46 20060101AFI20220913BHJP
   G01S 15/93 20200101ALI20220913BHJP
【FI】
G01S15/46
G01S15/93
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019067783
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165857
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晋一
(72)【発明者】
【氏名】飛龍 志津子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 倖平
(72)【発明者】
【氏名】中出 翔也
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350536(JP,A)
【文献】特開2009-265009(JP,A)
【文献】特公昭59-010513(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0121097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 7/52- 7/64
G01S 13/00-13/95
G01S 15/00-15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体に音波を送信する少なくとも1つの送波器と、
音波を受信して、受信結果を示す第1受波信号を生成する第1受波器と、
前記第1受波器とは異なる位置において音波を受信して、受信結果を示す第2受波信号を生成する第2受波器と、
前記送波器による音波の送信を制御して、前記各受波器から前記第1受波信号と前記第2受波信号とを取得する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記送波器に第1の信号波を送信させ、応答する第1及び第2受波信号に基づき前記物体の位置を検知し、
前記第1の信号波が送信される前記送波器の位置と前記第1受波器の位置と前記第2受波器の位置との内の少なくとも1つが異なった状態で第2の信号波を前記送波器に送信させ、応答する第1及び第2受波信号に基づき前記物体の位置を検知し、
前記第1の信号波に応じて検知された物体の位置を示す第1検知情報と、前記第2の信号波に応じて検知された物体の位置を示す第2検知情報とに基づいて、前記物体が存在しない位置を検知し、
前記制御部は、前記各検知情報から、前記第1検知情報において検知された物体の位置と、前記第2検知情報において検知された物体の位置とが合致しない位置を除去して、前記物体が存在しない位置を検知する
物体検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1受波信号と前記第2受波信号とのそれぞれから、前記各信号波に応答する信号成分を抽出し、
前記第1受波信号から抽出された信号成分と、前記第2受波信号から抽出された信号成分との組毎に、前記物体の位置を検知する
請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1受波信号から抽出された信号成分毎の楕円と、前記第2受波信号から抽出された信号成分毎の楕円とが交差する交点を算出して、前記物体の位置を検知し、
前記各楕円は、前記送波器の位置における焦点と、前記第1又は第2受波器の位置における焦点とによって規定される
請求項に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記送波器の位置と前記第1受波器の位置と前記第2受波器の位置との内の少なくとも1つを変更するように前記物体検知装置を駆動する駆動部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の信号波が送信されてから前記駆動部が駆動した後に、前記第2の信号波を前記送波器に送信させる
請求項1~のいずれか1項に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記物体検知装置を並進又は回転させる
請求項に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの送波器は、互いに異なる位置に配置された2つの送波器を含み、
前記2つの送波器において、一方の送波器は前記第1の信号波を送信し、他方の送波器は前記第2の信号波を送信する
請求項1~のいずれか1項に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記2つの送波器は、前記第1の信号波と前記第2の信号波とを同時に送信し、
前記制御部は、前記各受波信号において、前記第1の信号波に応答する信号成分と前記第2の信号波に応答する信号成分とを識別する
請求項に記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記送波器は、1つ又は複数のサーモホンを含む
請求項1~のいずれか1項に記載の物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波等の送受信に基づき物体の位置を検知する物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両等の移動体に搭載され、複数の物体の位置を適性に算出することを目的とした物体検知装置を開示している。この物体検知装置は、車両に複数、取り付けられた超音波センサによる測距センサの検知情報を用いて、三角測量の演算を行うことにより、車両に対する物体の位置を算出する。このとき、実際には存在しない物体であるにもかかわらず、三角測量の演算が成立して位置が算出された物体を、ゴーストと呼んでいる。特許文献1は、ゴーストの位置が算出される場合、実在する物体であるのか、ゴーストであるのかの区別ができないという問題点を開示している。この問題点に対して、ゴーストの位置が算出される場合には、物体が近傍に存在する可能性が高いとの考察から、車両に対して最も近傍に算出される位置を検知結果として、接触回避の制御に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-80648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、物体が存在しない位置に物体が存在すると誤って検知する誤検知を抑制することができる物体検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る物体検知装置は、少なくとも1つの送波器と、第1受波器と、第2受波器と、制御部とを備える。送波器は、周囲の物体に音波を送信する。第1受波器は、音波を受信して、受信結果を示す第1受波信号を生成する。第2受波器は、第1受波器とは異なる位置において音波を受信して、受信結果を示す第2受波信号を生成する。制御部は、送波器による音波の送信を制御して、各受波器から第1受波信号と第2受波信号とを取得する。制御部は、送波器に第1の信号波を送信させ、応答する第1及び第2受波信号に基づき物体の位置を検知する。制御部は、第1の信号波が送信される送波器の位置と第1受波器の位置と第2受波器の位置との内の少なくとも1つが異なった状態で第2の信号波を送波器に送信させ、応答する第1及び第2受波信号に基づき物体の位置を検知する。制御部は、第1の信号波に応じて検知された物体の位置を示す第1検知情報と、第2の信号波に応じて検知された物体の位置を示す第2検知情報とに基づいて、物体が存在しない位置を検知する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る物体検知装置によると、物体が存在しない位置に物体が存在すると誤って検知する誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る物体検知装置の概要を説明するための図
図2】実施形態1に係る物体検知装置の構成を示すブロック図
図3】物体検知装置による物体の検知原理を説明するための図
図4】物体像の定位において発生する虚像を説明するための図
図5】実施形態1の物体検知装置による虚像の除去方法を説明するための図
図6】実施形態1に係る物体検知装置の動作を例示するフローチャート
図7】実施形態1に係る物体検知装置における各種信号を例示するタイミングチャート
図8】実施形態1に係る物体検知装置の動作を説明するための図
図9】物体検知装置の虚像除去処理を例示するフローチャート
図10】実施形態1の物体検知装置の動作についてのシミュレーション結果を示す図
図11】実施形態2に係る物体検知装置を説明するための図
図12】実施形態2に係る物体検知装置の動作を例示するフローチャート
図13】実施形態3に係る物体検知装置を説明するための図
図14】実施形態3の物体検知装置における送波器の構成例を示す図
図15】実施形態3の送波器による種々の周波数における指向性の変化を例示するグラフ
図16】実施形態3に係る物体検知装置の動作を例示するフローチャート
図17】実施形態4に係る物体検知装置における送波器を例示する図
図18】実施形態4の送波器による種々のサイズにおける指向性の変化を例示するグラフ
図19】物体検知装置の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る物体検知装置の実施の形態を説明する。
【0009】
各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では実施形態1と共通の事項についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1では、移動体に搭載される物体検知装置の一例を説明する。
【0011】
1.構成
1-1.概要
本実施形態に係る物体検知装置の概要を、図1を用いて説明する。
【0012】
図1(a)は、本実施形態に係る物体検知装置1が、移動体の一例として自走ロボット2に搭載された例を示す。本実施形態の物体検知装置1は、例えば超音波の送受信に基づいて、周囲に存在する物体を検知する装置である。物体検知装置1は、例えば、自律走行を行う自走ロボット2に適用可能である。
【0013】
図1(b)は、図1(a)の自走ロボット2が走行する進路を例示する。自走ロボット2は、自機が走行する進路を自律的に決定する。自走ロボット2において、物体検知装置1は、例えば図1(b)に示すように、走行中の自機が周囲の物体3に接触しないように進路を決定するために用いられる。
【0014】
自走ロボット2においては、実際には物体3が存在しない場所にあたかも物体が存在するような誤検知が生じると、誤検知された物体(即ちゴースト)の場所を避けて進路が決定されてしまう。このため、自走ロボット2において、本来は自機が通過可能な進路を取れない事態を招き、進路決定を効率良く行うことが困難になる。
【0015】
本実施形態の物体検知装置1は、上記のような誤検知を抑制して、物体3が存在する位置と存在しない位置を精度良く検知する。これにより、自走ロボット2における進路決定を効率良く行うことができる。以下、物体検知装置1の構成の詳細を説明する。
【0016】
1-2.装置構成
本実施形態の自走ロボット2における物体検知装置1の構成を、図1,2を用いて説明する。図2は、実施形態1に係る物体検知装置1の構成を示すブロック図である。
【0017】
自走ロボット2は、例えば図2に示すように、物体検知装置1と、ロボット制御部20と、駆動部21とを備える。本実施形態に係る物体検知装置1は、1つの送波器10と、2つの受波器11L,11Rと、制御部13と、記憶部14とを備える。物体検知装置1は、例えば図1(a)に示すように、自走ロボット2の進行方向における前方に向かって、自走ロボット2の水平方向に沿って取り付けられる。例えば、送波器10は、物体検知装置1の中央に設けられる。
【0018】
送波器10は、例えば熱励起型の音波発生装置であるサーモホンで構成される。送波器10は、例えば20kHz以上の周波数を有する超音波を発生させる。サーモホンによると、例えば単パルスのような短い音波を発声可能である。送波器10は、サーモホン等の音源を駆動する駆動回路などを含んでもよい。送波器10の駆動回路により、発生させる音波の周波数、強度、信号長および指向性等が設定されてもよい。送波器10は必ずしも超音波に限らず、種々の周波数帯の音波を発生させてもよい。
【0019】
本実施形態の送波器10は、特に指向性を持たない各種の無指向性音源であってもよい。送波器10は、可変又は固定の指向性音源であってもよい。送波器10はサーモホンに限らず、例えば圧電共振型の超音波トランスデューサ等であってもよい。
【0020】
2つの受波器11L,11Rは、例えばそれぞれマイクロホンで構成され、別々の位置に配置される。各受波器11L,11Rと送波器10間の距離は、予め設定されている。図1(a)の例では自走ロボット2の前方に向かって、水平方向における送波器10の左側に、一方の受波器11Lが設けられ、他方の受波器11Rは送波器10の右側に設けられる。本実施形態の各受波器11L,11Rは、無指向性であってもよいし、種々の指向性を適宜、有してもよい。
【0021】
制御部13は、物体検知装置1の全体動作を制御する。制御部13は、例えばマイクロコンピュータで構成され、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現する。制御部13は、記憶部14に格納されたデータ及びプログラムを読み出して種々の演算処理を行い、各種の機能を実現する。制御部13は、例えばロボット制御部20及び駆動部21に各種信号を出力可能な出力インタフェースを含む。制御部13は、ロボット制御部20及び駆動部21から各種情報を取得する入力インタフェースを含んでもよい。
【0022】
なお、制御部13は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路であってもよい。制御部13は、CPU、MPU、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0023】
記憶部14は、制御部13の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体であり、例えばフラッシュメモリで構成される。例えば、記憶部14は、所定領域分の二次元座標を記憶可能な記憶領域を有し、座標データ(後述)を記憶する。
【0024】
ロボット制御部20は、自走ロボット2の全体動作を制御する。ロボット制御部20は、例えばソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU等を含む。ロボット制御部20は、例えば内部メモリに格納されたデータ及びプログラムを読み出して種々の演算処理を行い、各種の機能を実現する。ロボット制御部20は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路であってもよい。ロボット制御部20は、CPU、MPU、マイコン、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0025】
本実施形態の駆動部21は、自走ロボット2を移動させる各種のアクチュエータ及びモータ等を含む。駆動部21は、例えば自走ロボット2を並進駆動する。駆動部21は、自走ロボット2を回転駆動してもよい。本実施形態の物体検知装置1は、駆動部21と一体的に提供されてもよい。また、駆動部21は、ロボット制御部20を経由して、制御部13に制御されてもよい。
【0026】
2.動作
以上のように構成される物体検知装置1の動作について、以下説明する。
【0027】
2-1.検知原理について
物体検知装置1による物体3の検知原理について、図3を用いて説明する。図3では、物体3の検知が行われるX,Y方向を例示している。例えば、X方向は物体検知装置1が取り付けられた自走ロボット2の水平方向に対応し、Y方向は進行方向に対応する。
【0028】
本実施形態の物体検知装置1において、送波器10は、例えば単パルス状の超音波(以下「パルス波」という)を、特に指向性を持たせず放射する。例えば無指向性のパルス波は、送波器10の送波位置P10を中心として同心円状に広がるように伝搬し、物体3に到達すると反射される。各受波器11L,11Rは、各々の受波位置P11L,P11Rにおいて、パルス波が物体3で反射された反射波、即ちパルス波のエコーを受信する。
【0029】
例えば物体検知装置1は、送波器10がパルス波を放射してから、各受波器11L,11Rがパルス波のエコーを受信するまでの応答期間、即ちパルス波の伝搬期間をそれぞれ測定する。測定された各伝搬期間は、既知の音速を乗じることにより、パルス波が送波位置P10から物体3を経由して、エコーとして各々の受波位置P11L,P11Rに伝搬する伝搬距離に対応する。
【0030】
本実施形態の物体検知装置1による物体3の検知原理は、双方の受波器11L,11Rまでのパルス波の伝搬距離に応じた2種類の楕円E1,E2を用いる。楕円E1,E2は、2つの焦点を有する二次曲線である。なお、説明の便宜上、幾何学的に厳密ではない態様で、図3における楕円E1,E2の焦点等を図示している(以下同様)。
【0031】
双方の楕円E1,E2における1つの焦点は共通して、送波器10の送波位置P10に位置する。左方の受波器11Lに関する楕円E1における残りの焦点は、受波位置P11Lに位置する。楕円E1は、楕円E1上の各点から送波位置P10までの距離と、当該点から受波位置P11Lまでの距離との和が、当該受波器11Lまでのパルス波の伝搬距離となるように規定される。右方の受波器11Rに関する楕円E2も同様に、残りの焦点が受波位置P11Rに位置し、当該受波器11Rまでのパルス波の伝搬距離に応じて規定される。このような楕円E1,E2によると、パルス波を反射した物体3が楕円E1,E2上に位置することが推定できる。
【0032】
以上の検知原理より、本実施形態の物体検知装置1は、2種類の楕円E1,E2が交わる交点を演算することにより、物体3の検知結果を示す物体像Qを定位(位置算出)する。以下、上記の物体像Qのように実在する物体に対応する物体像を「実像」といい、実在する物体に対応していない物体像を「虚像」という。
【0033】
2-1-1.虚像とその除去方法について
物体像Qの定位において発生する虚像について、図4を用いて説明する。図4は、2個の物体31,32がある場合に、パルス波の送受信を1回行って、得られる楕円E11~E22及び物体像Q1~Q4を例示している。この場合、各々の物体31,32からのエコーに対応して、左方の受波器11Lの受信結果から2つの楕円E11,E12が求められる。同様に、右方の受波器11Rの受信結果からも2つの楕円E21,E22が求められる。
【0034】
図4の例において、楕円E11と楕円E21間の交点によって定位される物体像Q1は、物体31に対応する実像である。又、楕円E12と楕円E22間の交点による物体像Q2は、物体32に対応する実像である。一方、楕円E11と楕円E22間の交点による物体像Q3、及び楕円E12と楕円E21間の交点による物体像Q4は、物体31,32には対応していない虚像である。但し、図4の例の代わりに、各物体31,32が物体像Q3,Q4の位置にある場合、物体像Q3,Q4が実像となり、物体像Q1,Q2が虚像となる。
【0035】
上記のような虚像は、物体31,32が実在していない位置にまで、物体像Q3,Q4が誤検知される事態を招く。例えば多数の物体の存在下で受信されるエコーが増えるほど、多数の虚像が発生して誤検知が多発してしまう。これに対して、本実施形態では、物体検知装置1の移動前後のパルス波の送受信を用いて、虚像の物体像Q3,Q4を除去する。
【0036】
図5を用いて、本実施形態の物体検知装置1による虚像の除去方法を説明する。本実施形態の物体検知装置1は、1回目にパルス波の送受信を行った位置から微小に移動して、2回目のパルス波を送受信する。図5は、図4の後に2回目のパルス波の送受信を行って、得られる楕円E11’~22’及び物体像Q1’~ Q4’を例示している。なお、図4,5の例では、特に物体31,32は動かない場合を想定している。
【0037】
物体検知装置1の微小移動によると、2回目のパルス波の伝搬距離に基づく楕円E11’~22’の形状は、移動後の送波位置P10’及び受波位置P11L’,P11R’に応じて、1回目の楕円E11~22の形状(図4)から変化することとなる。これにより、移動後における虚像の物体像Q3’,Q4’の位置は、移動前における虚像の物体像Q3,Q4の位置からずれることとなる。一方、実像の物体像Q1’,Q2’は、実在する物体31,32の位置のままであり、1回目と2回目で合致することが推定される。
【0038】
そこで、本実施形態の物体検知装置1は、1回目のパルス波の送受信から定位される物体像Q1~Q4と2回目の定位による物体像Q1’~Q4 ’との比較によって虚像を除去し、残った実像に対応する物体31,32の位置を検知する。以下、本実施形態の物体検知装置1の動作の詳細を説明する。
【0039】
2-2.動作の詳細
実施形態1に係る物体検知装置1の動作の詳細について、図4~9を用いて説明する。
【0040】
図6は、本実施形態に係る物体検知装置1の動作を例示するフローチャートである。図7は、物体検知装置1における各種信号を例示するタイミングチャートである。図8は、物体検知装置1の動作を説明するための図である。図6のフローチャートに示す各処理は、物体検知装置1の制御部13によって、例えば所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
図7(a)~(c)は、図4,5の例に対応している。図7(a)は、送波器10によるパルス波W1のタイミングを示す。図7(b)は、図7(a)に応答する各受波器11L,11Rの受波信号SL,SRの、実像としてのタイミングを示す。図7(c)は、図7(a)に応答する各受波器11L,11Rの受波信号SL,SRの、虚像としてのタイミングを示す。
【0042】
図6のフローチャートにおいて、まず、物体検知装置1の制御部13は、パルス波W1を送信するように送波器10を制御する(S1)。図7(a)の例のパルス波W1は、時刻t0において、送波器10から外部に放射、即ち送信されている。
【0043】
次に、制御部13は、双方の受波器11L,11Rから、各々の受信結果を示す受波信号SL,SRを取得する(S2)。図7(b)において、図7(a)に応じた、左方の受波器11Lによる受波信号SLと、右方の受波器11Rによる受波信号SRとをそれぞれ示す。
【0044】
制御部13は、取得した各受波信号SL,SRに基づいて、所定期間T1中に、双方の受波器11L,11Rがパルス波W1のエコーを受信したか否かを判断する(S3)。所定期間T1は、例えば物体検知装置1において物体を検知する範囲の上限とする距離に対応する伝搬期間を考慮して設定される。
【0045】
ステップS3の判断は、例えば、左方の受波器11Lの受波信号SLが所定レベルを超えるエコー成分W2を少なくとも1つ含み、且つ右方の受波器11Rの受波信号SRも所定レベルを超えるエコー成分W2を少なくとも1つ含む場合に「YES」に進み、それ以外の場合には「NO」に進む。所定レベルは、パルス波W1のエコーが受信された場合に想定される受波信号SL,SRの信号レベルと、雑音の信号レベル等を分別する観点から適宜、設定される。例えば、図7(b)の例では、双方の受波信号SL,SRがそれぞれ2つのエコー成分W2を含んでいることから、制御部13はステップS3で「YES」に進む。
【0046】
制御部13は、双方の受波器11L,11Rがパルス波W1のエコーを受信したと判断すると(S3でYES)、双方の受波信号SL,SRから、個別にエコー成分W2を抽出する(S4)。例えば、制御部13は、パルス波W1が送信された時刻t0を基準として、受波器11L,11R毎に受波信号SL,SRが上記の所定レベルを超えたタイミングを順次、測定する。
【0047】
図7(b)の例のステップS4では、左方の受波器11Lの受波信号SLにおいては、1つ目のエコー成分W2の時刻t11と、2つ目のエコー成分W2の時刻t12とが測定される。さらに、右方の受波器11Rの受波信号SRにおいて、1つ目のエコー成分W2の時刻t21と、2つ目のエコー成分W2の時刻t22とが測定される。この場合、各受波器11L,11Rにおけるエコー成分W2の個数が2個であることから、パルス波W1を反射した物体31,32の個数が2個であることが推定できる。ステップS4において、制御部13は、上記のように推定される物体の個数を取得してもよい。
【0048】
次に、制御部13は、左方の受波器11Lの受波信号SLにおけるエコー成分W2と、右方の受波器11Rの受波信号SRにおけるエコー成分W2間の組合せに基づいて、物体像の座標データD1を生成する(S5)。図8(a)に、1回目のパルス波W1の送受信で得られる物体像の座標データD1を例示する。物体像の座標データD1は、例えば(X,Y)座標上で、定位される各物体像Q1~Q4の位置を示す。
【0049】
例えば図7(b)の例において、左方の受波器11Lにおける1つ目のエコー成分W2は、時刻t0から時刻t11までの伝搬期間(=伝搬距離/音速)に基づいた、左方の受波位置P11Lが焦点の楕円E11に対応している(図4参照)。同様に、右方の受波器11Rにおける1つ目のエコー成分W2は、時刻t21までの伝搬期間に基づいた、右方の受波位置P11Rが焦点の楕円E21に対応している。制御部13は、上記2つのエコー成分W2の組合せに対応する物体像Q1の位置として、楕円E11,E12間の交点を算出する(S5)。
【0050】
ステップS5において、制御部13は、左方の受波器11Lのエコー成分W2と右方の受波器11Rのエコー成分W2間の全ての組み合わせについて網羅的に、楕円E11,E12と楕円E21,E22間の交点を算出する。図7(c)は、図7(b)と同じ受波信号SL,SRにおける図7(b)とは別のエコー成分W2の組合せを示す。図7(a)~(c)の例では、左方の受波信号SLにおける2つのエコー成分W2と、右方の受波信号SRにおける2つのエコー成分W2との組による4つの交点が、各物体像Q1~Q4の位置として算出される。制御部13は、例えばステップS5の算出結果として、全ての物体像Q1~Q4の位置を含む座標データD1を記憶部14に記録する。
【0051】
なお、制御部13は、双方の受波器11L,11Rがパルス波W1のエコーを受信していないと判断すると(S3でNO)、特にステップS4,S5の処理を行わず、ステップS1以降の処理を再度、実行する。
【0052】
制御部13は、パルス波W1の送受信が2回目か、又は2回目でなく1回目かを判断する(S6)。ステップS6の判断対象の回数は、双方の受波器11L,11Rがパルス波W1のエコーを受信したと判断された場合(S3でYES)の回数に対応しており、ステップS3で「NO」に進んだ場合の回数は含まれない。
【0053】
パルス波W1の送受信が1回目である場合(S6でNO)、制御部13は、所定の移動量の分、物体検知装置1と共に自走ロボット2を移動させるように、駆動部21を制御する(S7)。所定の移動量は、虚像に対応する交点の位置ずれが生じることが想定され、且つ自走ロボット2の移動としては微小と考えられる程度の距離を示す。
【0054】
次に、制御部13は、ステップS1以降の処理を再度、行って、2回目のパルス波W1の送受信を実行する(S1~S5)。図8(b)に、2回目のパルス波W1の送受信で得られる物体像の座標データD2を例示する。制御部13は、2回目のパルス波W1の送受信に基づき物体像の座標データD2を生成する際に(S5)、1回目の座標データD1からステップS7の移動量の分の補正を行う。
【0055】
2回目のパルス波W1の送受信が行われると(S6でYES)、制御部13は、1回目の測定結果と2回目の測定結果との比較によって虚像を除去する虚像除去処理を実行する(S8)。本実施形態における虚像除去処理の一例を図9に示す。以下では、1つの物体像毎に虚像か実像かを判定する処理例を説明する。
【0056】
例えば、制御部13は、1回目の座標データD1の中から、判定対象とする1つの物体像を選択し(S21)、選択した物体像が、2回目の座標データD2の中のいずれかの物体像と重畳するか否かを判断する(S22)。ステップS22の判断は、例えば、1回目の座標データD1おける判定対象の物体像の位置から所定の許容誤差の範囲内に、2回目の座標データD2における物体像があるか否かに基づき行われる。許容誤差は、虚像が1回目と2回目との間でずれると想定される距離よりも小さい距離に設定される。
【0057】
例えば図8(a),(b)の例において、1回目の物体像Q3は、2回目の物体像Q1’~ Q4’と重畳しておらず(S22でNO)、虚像であると判定できる。制御部13は、1回目の座標データD1から選択した物体像が2回目の座標データD2中の物体像と重畳しないと判断すると(S22でNO)、例えば座標データD1において選択した物体像を消去して(図8(a),(c)参照)、虚像を除去する(S23)。
【0058】
一方、図8(a)の例の物体像Q1は、図8(b)の例の物体像Q1’と重畳しており(S22でYES)、実像であると判定できる。制御部13は、1回目の座標データD1から選択した物体像が2回目の座標データD2中の物体像と重畳すると判断すると(S22でYES)、座標データD1において、選択した物体像を実像として保持する(S24)。
【0059】
制御部13は、例えば1回目の座標データD1における全ての物体像Q1~Q4について上記の判定が行われるまで(S25でNO)、順次、未選択の物体像を判定対象としてステップS21以降の処理を繰り返す。全ての物体像が実像か虚像か判定されると(S25でYES)、制御部13は、本フローチャートによる虚像除去処理を終了する。図8(c)は、虚像除去処理によって処理された結果として得られる座標データD3を示す。
【0060】
図6に戻り、制御部13は、虚像除去処理(S8)の処理結果の座標データD3を、物体検知装置1による物体の検知結果として、例えばロボット制御部20に出力する(S9)。例えば図8(c)に示すように、出力される座標データD3は、実像と判定された物体像Q1,Q2の位置を含む。
【0061】
制御部13は、実像の座標データD3を出力すると(S9)、例えば記憶部14における各座標データD1~D3を消去して、本フローチャートによる処理を終了する。
【0062】
以上の処理によると、物体検知装置1は、パルス波W1の送受信1回当たりでは虚像が含まれる、移動前後の2回分の座標データD1,D2を比較して、虚像の物体像Q3,Q4を判定して除去することで(S8)、同物体像Q3,Q4を除去した位置が、物体31,32が存在しない位置であることを検知する(S9)。これにより、物体31,32が存在しない位置に物体が存在すると誤検知することを抑制でき、例えば自走ロボット2による進路決定の効率化を図れる。
【0063】
以上のステップS7において、物体検知装置1が、所定の移動量の分、駆動部21に自走ロボット2を駆動させる例を説明した。これに代えて、物体検知装置1は、例えば自走ロボット2の移動中にステップS1~S6の処理を繰り返してもよい。この場合、制御部13は、連続した2回のパルス波W1の送信時の間の移動量を、駆動部21又はロボット制御部20から取得して、2回目の座標データD2の生成に用いることができる。
【0064】
以上で説明した図9の虚像除去処理(S8)は一例であり、特に図9の例に限定されない。例えば、1回目の座標データD1と2回目の座標データD2とを入れ替えて図9と同様の処理が行われてもよい。また、制御部13は、1回目の座標データD1と2回目の座標データD2と間の積を演算してもよい。例えば図8(a)の座標データD1と図8(b)の座標データD2とを重畳して、所定の許容誤差の範囲内で一方の物体像Q1~Q4と他方の物体像Q1’~Q4’間の重なりの有無を判断し、重なっていない物体像Q3,Q4を消去する演算が行われてもよい。これによっても、上記の虚像除去処理(S8)と同様の効果を得ることができる。
【0065】
図10は、本実施形態の物体検知装置1の動作についてのシミュレーション結果を示す。図10(a),(b),(c)では、物体検知装置1の送波器10と双方の受波器11L,11Rとの移動に伴う実像と虚像の変化を数値シミュレーションした。図10の横軸はX方向を示し、縦軸はY方向を示す。図10では無次元系を用いているが、例えばcm単位で考えてもよい。
【0066】
図10(a)は、物体検知装置1の送波器10と双方の受波器11L,11Rとがそれぞれ初期位置(0,0)、(-1,0)、(1,0)にある場合の実像と虚像を示す。図10(b)は、図10(a)から物体検知装置1がY方向に0.5移動した場合の実像と虚像を示し、図10(c)は、図10(b)からさらに物体検知装置1がY方向に0.5移動した場合の実像と虚像を示す。図10(a)~(c)に示すように、物体検知装置1の移動が微小であっても、虚像は大幅に変位する。よって、本実施形態の物体検知装置1によると、移動前後の物体像を比較することにより、虚像を除去できることが確認された。
【0067】
3.まとめ
以上のように、本実施形態の物体検知装置1は、少なくとも1つの送波器10と、第1受波器の一例として左方の受波器11Lと、第2受波器の一例として右方の受波器11Rと、制御部13とを備える。送波器10は、周囲の物体3に音波を送信する。左方の受波器11Lは、音波を受信して、受信結果を示す受波信号SL(第1受波信号)を生成する。右方の受波器11Rは、左方の受波器11Lとは異なる位置において音波を受信して、受信結果を示す受波信号SR(第2受波信号)を生成する。制御部13は、送波器10による音波の送信を制御して、各受波器11L,11Rから受波信号SL.SRを取得する。制御部13は、第1の信号波の一例のパルス波W1を送波器10に送信させ(S1)、応答する受波信号SL,SRに基づき物体31,32の位置を物体像Q1~Q4として検知する(S5)。制御部13は、1回目のパルス波W1が送信される送波器10の送波位置P11と左方の受波器11Lの受波位置P11Lと右方の受波器11Rの受波位置P11Rとの内の少なくとも1つが異なった状態で、第2の信号波の一例として2回目のパルス波W1を送波器10に送信させ(S6,S7,S1)、応答する受波信号SL,SRに基づき物体31,32の位置を物体像Q1’~Q4’として検知する(S5)。制御部13は、第1の信号波に応じて検知された物体像Q1~Q4を示す第1検知情報の一例の座標データD1と、第2の信号波に応じて検知された物体像Q1’~Q4’を示す第2検知情報の一例の座標データD2とに基づいて、物体31,32が存在しない位置である虚像の物体像Q3,Q4を検知する(S8)。
【0068】
以上の物体検知装置1によると、1回目の検知結果の座標データD1と2回目の検知結果の座標データD2とに含まれる、虚像の物体像Q3,Q4が検知され、物体31,32が存在しない位置に物体が存在すると誤って検知する誤検知を抑制することができる。
【0069】
本実施形態において、制御部13は、第1検知情報の座標データD1において検知された物体の位置(Q1~Q4)と、第2検知情報の座標データD2において検知された物体の位置(Q1’~Q4’)とが合致しない位置(Q3~Q4)を、座標データD1,D2から除去して、物体が存在しない位置を検知する(S22でNO,S23)。これにより、虚像の物体像Q3,Q4を除去して、存在しない物体の誤検知を抑制することができる。
【0070】
本実施形態において、制御部13は、受波信号SL,SRのそれぞれから、各回のパルス波W1に応答する信号成分としてエコー成分W2を抽出する(S4)。制御部13は、各回のパルス波W1に応答して、受波信号SLから抽出されたエコー成分W2と、受波信号SRから抽出されたエコー成分W2との組毎に、物体31,32の位置として物体像Q1~Q4を検知する(S5)。これにより、複数の物体31,32が存在する場合にも、各物体31,32の位置を漏れなく検知することができる。
【0071】
本実施形態において、制御部13は、受波信号SLから抽出されたエコー成分W2毎の楕円E11,E12と、受波信号SRから抽出されたエコー成分W2毎の楕円E21,E22とが交差する交点を算出して、物体像Q1~Q4を検知する(S5,図4参照)。各楕円E11~E22は、送波器10の送波位置P10における焦点と、左方又は右方の受波器11R,11Rの受波位置P11L,P11Rにおける焦点とによって規定される。楕円E11~E22間の交点算出の検知原理により、2つの受波器11L,11Rによる簡単な構成で各物体31,32の位置を検知することができる。
【0072】
本実施形態において、物体検知装置1は、駆動する駆動部21をさらに備えてもよい。駆動部21は、物体検知装置1と共に自走ロボット2を駆動して、送波器10の送波位置P10と左方の受波器11Lの受波位置P11Lと右方の受波器11Rの受波位置P11Rとを変更することができる。制御部13は、1回目のパルス波W1が送信されてから駆動部21が駆動した後に(S7)、2回目のパルス波W1を送波器10に送信させる(S1)。送波位置P10及び受波位置P11L,P11Rを異ならせたパルス波W1の送受信に基づいて、虚像の除去を行うことができる。
【0073】
本実施形態において、駆動部21は、物体検知装置1を並進させる。駆動部21は、例えばステップS7において、物体検知装置1を回転させてもよい。この場合であっても、送波位置P10と受波位置P11L,P11Rの少なくとも1つを回転前後で異ならせて、上記と同様に虚像の除去を行うことができる。
【0074】
本実施形態において、送波器10は、1つ又は複数のサーモホンを含んでもよい。サーモホンは、指向性、周波数の自由度が大きく、時間的に短いパルスを放射可能である。よって、送波器10としてサーモホンを用いることで、空間分解能を高く取れ、虚像除去の効果を得やすい。
【0075】
(実施形態2)
実施形態1では、1つの送波器10を用いる物体検知装置1について説明した。実施形態2では、2つの送波器を用いる物体検知装置について説明する。
【0076】
1.構成
実施形態2に係る物体検知装置の構成について、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態に係る物体検知装置1Aを説明するための図である。
【0077】
本実施形態の物体検知装置1Aは、実施形態1の物体検知装置1と同様の構成において、図11に示すように、別々の送波位置P10a,P10bから音波を送信する2つの送波器10a,10bを備える。本実施形態の物体検知装置1Aは、各送波器10a,10bから送信される音波のエコーが、各受波器11L,11Rの受波信号SL,SR別々に識別可能に構成される。図11では、図4と同様に2個の物体31,32がある場合に、各送波器10a,10bからの音波を用いて得られる楕円E11a~E22a,E11b~E22bを例示している。
【0078】
一方の送波器10aからの音波によって得られる楕円E11a~E22aは、当該送波器10aの送波位置P10aを焦点として有する。これに対して、他方の送波器10bからの音波によって得られる楕円E11b~E22bは、当該送波器10bの送波位置P10bを焦点として有し、上記の楕円E11a~E22aとは異なる形状を有する。このため、一方の送波器10aからの楕円E11a~E22aの交点にある虚像の物体像Q3a,Q4aの位置と、他方の送波器10bからの楕円E11b~E22bの交点にある虚像の物体像Q3b,Q4bの位置とは、合致せずにずれることとなる。一方、実像の物体像Q1a,Q2a,Q1b,Q2bは、物体31,32の位置において合致すると推定できる。
【0079】
以上のように、一方の送波器10aからの音波によって定位される物体像Q1a~Q4aと、他方の送波器10bからの音波によって定位される物体像Q1b~Q4bとを比較することにより、実施形態1と同様に虚像を除去することができる。この際、本実施形態では特に物体検知装置1Aを移動させなくても、物体31,32が実在する位置と実在しない位置を精度良く検知することができる。
【0080】
本実施形態において、各々の送波器10a,10bは、実施形態1の送波器10と同様に構成されてもよい。例えば、図6のステップS7の代わりに、2つの送波器10a,10b間で、1回目のステップS1と2回目のステップS1とで音波を送信する送波器が切り替えられる。この場合、各送波器10a,10bからの音波は、時系列で識別可能であることから、同じパルス波など同種の信号波であってもよい。
【0081】
また、本実施形態の各送波器10a,10bは、互いに別種の信号波を送信可能に構成されてもよい。例えば、一方の送波器10aが送信する第1の信号波と、他方の送波器10bが送信する第2の信号波とは、互いに異なる周波数を有してもよい。波数を変えるほか、それぞれの音波を他と直交する符号で変調して受波後に、マッチドフィルタで復調する方法もとり得る。この場合、物体検知装置1Aは、各信号波を同時に送信して動作可能である、以下、このような物体検知装置1Aの動作例を説明する。
【0082】
2.動作
実施形態2に係る物体検知装置1Aの動作例を、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態に係る物体検知装置1Aの動作を例示するフローチャートである。
【0083】
実施形態1の物体検知装置1は、移動前後で2回のパルス波の送受信を行った(図6のS6,S7)。本実施形態において、物体検知装置1Aの制御部13は、実施形態1と同様の処理において(図6)、ステップS6,S7の代わりに、2つの送波器11a,11bからそれぞれ第1及び第2の信号波を送信させる(S1A)。また、制御部13は、双方の受波器11L,11Rが第1の信号波のエコーと第2の信号波のエコーとを受信したか否かを判断し(S3A)、各信号波についてのエコー成分を識別して双方の受波信号SL,SRから抽出する(S4A)。
【0084】
さらに、制御部13は、第1の信号波と第2の信号波とのそれぞれに関して、図6のステップS5と同様に、物体像の座標データを生成する(S5a,S5b)。これにより、第1の信号波に関する座標データにおいて一方の送波器11aによる物体像Q1a~Q4aが定位され(S5a)、第2の信号波に関する座標データにおいて他方の送波器11bによる物体像Q1b~Q4bが定位される(S5b)。
【0085】
本実施形態の虚像除去処理(S8A)は、上記の物体像Q1a~Q4aの座標データと物体像Q1b~Q4bの座標データ間の比較に関して、実施形態1と同様に行われる。これにより、実施形態1と同様に、信号波1回当たりで定位される物体像Q1a~Q4aに含まれる虚像を判定して除去し、物体31,32が存在しない位置が検知できる。
【0086】
3.まとめ
以上のように、本実施形態の物体検知装置1Aは、少なくとも1つの送波器として、互いに異なる送波位置P10a,P10bに配置された2つの送波器10a,10bを含む。2つの送波器10a,10bにおいて、一方の送波器10aは第1の信号波を送信し、他方の送波器10bは第2の信号波を送信する。互いに異なる送波位置P10a,P10bから送信された各信号波に基づく2回分の検知情報を用いて、実施形態1と同様に、虚像の誤検知を抑制することができる。
【0087】
本実施形態において、2つの送波器10a,10bは、第1の信号波と第2の信号波とを同時に送信する(S1A)。制御部13は、各受波信号SL,SRにおいて、第1の信号波に応答する信号成分と第2の信号波に応答する信号成分とを識別する(S4A)。2回分の信号波の同時送信により、誤検知を抑制した物体の検知を効率良く行うことができる。
【0088】
本実施形態の物体検知装置1Aは、2個の送波器10a,10bに限らず、3個以上の送波器を備えてもよい。また、物体検知装置1Aは、2個の受波器11L,11Rに限らず、3個以上の受波器を備えてもよい。n個の送波器とm個の受波器を備えた物体検知装置1Aは、1個の物体に対してn×m個の伝搬系を構成して、物体の検知することができる。複数k個の物体が存在する場合、楕円の数は、k×n×m個になる。ここで、実像ではm×n本の楕円が交わる一方、虚像ではそうならない。そこで、例えばn個の座標データの比較により、虚像を除去することができる。
【0089】
(実施形態3)
実施形態3では、指向性を制御して物体の誤検知を抑制する物体検知装置について説明する。
【0090】
1.構成
実施形態3に係る物体検知装置の構成について、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態に係る物体検知装置1Bを説明するための図である。
【0091】
本実施形態の物体検知装置1Bは、実施形態1と同様の構成において、音波を発する指向性が可変である送波器10Bを備える。図13(a)は、送波器10Bの指向性ビームB1が比較的に広い場合を例示する。図13(b)は、図13(a)の例から比較的に狭い指向性ビームB2に変更された場合を例示する。
【0092】
図13(a)の例では、送波器10Bの指向性ビームB1に応じた測定範囲内に、2つの物体33,34が位置する。この際の音波の送受信によると、4つの物体像Q1~Q4が定位(位置算出)される。本例では、2つの物体像Q3,Q4が、それぞれ物体3,34に対応する実像であり、残る2つの物体像Q1,Q2は、虚像である。このように、指向性が広い音波による定位では、虚像を伴うことが考えられる。
【0093】
一方、図13(b)の例では、狭い指向性ビームB2に応じた測定範囲が、図13(a)の例の一方の物体33に対応する物体像Q3の位置を含まずに、他の物体像Q1,Q2,Q4の位置を含んでいる。この際の音波の送受信によると、物体34からのエコーに基づき、図13(a)の例の物体像Q4と同じ物体像Q4’のみが定位されることとなる。
【0094】
図13(a)の測定結果と図13(b)の測定結果とを比較すると、図13(a)の一部の物体像Q1,Q2は、図13(b)の測定範囲に含まれているにも拘わらず、定位されなかったことから、虚像であることが判定できる。また、物体像Q4は、図13(a)の測定結果と図13(b)の測定結果とで合致することから、実像であることが判定できる。
【0095】
さらに、上記の判定結果より、指向性を狭めた測定範囲に含まれていない物体像についても推定を行うことができる。例えば、4つの物体像Q1~Q4のうちの2つの虚像が判定できたことで、残りの物体像Q3が実像であることが推定できる。
【0096】
1-1.送波器の構成例
実施形態3の物体検知装置1Bにおける送波器10Bの構成例を、図14~15を用いて説明する。
【0097】
図14(a)は、本構成例における送波器10Bの平面図を示す。図14(b)は、図14(a)のA-A’断面における送波器10Bの断面図を示す。
【0098】
本構成例の送波器10Bは、空気を加熱して音波を発生させるサーモホンである。送波器10Bは、図14に示すように、発熱体41と、基板42と、一対の電極43と、断熱層44とを備える。送波器10Bにおいて、発熱体41と断熱層44とは基板42上に積層される。
【0099】
発熱体41は、電流を流すことによって発熱する抵抗体で構成される。発熱体41は、例えば空気に接触する放音面41aを形成するように設けられる。発熱体41の放音面41a周囲の空気は、発熱体41の温度変化によって膨張又は収縮する。これにより、放音面41a近傍から空気の圧力波即ち音波が発生する。
【0100】
送波器10Bにおいて、放音面41aは、例えば図14(a)に示すうように、幅aを有する矩形状に設けられる。送波器10Bは、例えば幅aの方向が図13のX方向に平行に配置される。
【0101】
発熱体41は、銀パラジウム、銀、金、プラチナ、カーボンナノチューブなどで構成される。発熱体41は、例えば500[J/kg℃]以下の比熱、及び50[W/mK]以上の熱伝導率を有する。発熱体41は、例えば基板42の主面上で種々の形状を有するようにパターン印刷されてもよい。
【0102】
断熱層44は、発熱体41と基板42との間に設けられる。断熱層44は、例えば、基板42の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する。断熱層44は、発熱体41から放音面41aとは反対側への熱伝導を抑制する。断熱層44は、ガラスグレース、ポーラスシリコン、二酸化ケイ素などで構成される。断熱層44は、例えばガラス成分及び金属成分を含む厚膜導体として、発熱体41と一体的に構成されてもよい。
【0103】
基板42は、シリコン、酸化アルミニウムなどの絶縁性の材料で構成される。基板42においては、断熱層44で遮断しきれずに発熱体41から伝導した熱を放熱することができる。基板42は、プリント基板であってもよい。
【0104】
一対の電極43は、送波器10Bの駆動回路(不図示)から発熱体41に電流を流すための電極である。一対の電極43は、発熱体41の両側に設けられる。各電極43はCu、Au、Alなどの金属材料で構成される。
【0105】
以上のようなサーモホンの送波器10Bによると、駆動周波数(音波の周波数)に応じて指向性を変更することができる。この点について、図15を用いて説明する。
【0106】
図15は、本実施形態の送波器10Bによる種々の周波数における指向性の変化を例示するグラフである。図15の横軸は、XY平面における偏角θを示し、縦軸は音波の強度を示す。図15では、幅a=10mmの場合における、周波数20kHz,40kHz,80kHzの特性を例示している。
【0107】
送波器10Bの指向性は、放音面41aが矩形である場合、次式のように表される。
sin(k×a×sinθ)/(k×asinθ)
ここで、kは波数であり、周波数fと音速vと円周率πを用いて、k=2πf/vである。
【0108】
図15に示すように、特定の幅aを有する送波器10Bによると、周波数を高くするほど主ビームのビーム幅が狭くなり、指向性が狭まる。また、周波数を低くするほど指向性(ビーム幅)が広がる。サーモホンの送波器10Bによると、種々の周波数で駆動可能であり、周波数制御によってビーム幅のような指向性を変化させることができる。
【0109】
2.動作
以上のように構成される実施形態3の物体検知装置1Bの動作について、以下説明する。図16は、本実施形態に係る物体検知装置1Bの動作を例示するフローチャートである。
【0110】
本実施形態の物体検知装置1Bの制御部13は、例えば実施形態1と同様の処理において(図6)、駆動部21の制御(S7)の代わりに、図16に示すように送波器10Bのビーム幅を制御する(S7B)。
【0111】
例えば、制御部13は、送波器10Bによる1回目の信号波の送信時(S1)には、図13(a)に示すように比較的広い指向性ビームB1を設定する。これにより、広範囲に渡って物体検知を行うことができる。
【0112】
また、2回目の信号波の送信時(S6でYES,S1)に、制御部13は、図13(b)に示すように変更前よりも狭い指向性ビームB2を設定する(S7B)。変更後の指向性ビームB2による測定範囲は、例えば物体検知装置1Bにより重点的に検知すべき範囲に設定される。例えば自走ロボット2の場合、前方を重点的に検知することにより、前方に障害物がなければ直進するような進路を取り易いことが考えられる。
【0113】
なお、1回目と2回目のビーム幅は、逆順でもよい。指向性ビームに応じた測定範囲は、例えば主ビームのビーム幅に応じて設定される。このような測定範囲外に放射された信号波のエコー影響を抑制する観点から、例えばステップS5のエコー成分W2の抽出時の信号レベルが設定されてもよい。
【0114】
また、本実施形態の虚像除去処理(S8B)は、例えばビーム幅の変更前後で重畳する測定範囲内の座標データ間の比較に関して、実施形態1と同様に行われる。制御部13は、さらに、重畳する測定範囲内の比較結果に基づき、重畳しない測定範囲について上述したような推定に基づく各種の判定処理を行ってもよい。
【0115】
以上の処理によっても、実施形態1,2と同様に、信号波1回当たりで定位される物体像Q1~Q4に含まれる虚像を除去して、物体33,34が存在する位置と存在しない位置とが検知できる。
【0116】
3.まとめ
以上のように、本実施形態の物体検知装置1Bは、送波器10Bと、2つの受波器11L,11Rと、制御部13とを備える。送波器10Bは、周囲の物体に音波を送信する指向性を有する。制御部13は、第1の信号波を送波器10に送信させ(S1)、応答する受波信号SL,SRに基づき物体33,34の位置を検知する(S5)。制御部13は、第1の信号波に対する指向性とは異なった指向性において第2の信号波を送波器13Bに送信させ(S6,S7B,S1)、応答する受波信号SL,SRに基づき物体33,34の位置を検知する(S5)。制御部13は、第1の信号波に応じて検知された第1検知情報と、第2の信号波に応じて検知された第2検知情報に基づいて、物体33,34が存在しない位置である虚像の物体像Q1,Q2を検知する(S8)。
【0117】
以上の物体検知装置1によると、指向性が異なる第1及び第2の信号波を用いた検知結果の比較により、物体33,34が存在しない位置に物体が存在すると誤って検知する誤検知を抑制することができる。
【0118】
本実施形態の物体検知装置1Bにおいては、第1の信号波に対する指向性のビームと、第2の信号波に対する指向性のビームとの内の一方が、他方よりも狭い範囲に設定される(図13参照)。制御部13は、第1の信号波のビームと、第2の信号波のビームとが重複して設定された範囲内で、第1検知情報において検知された物体の位置と、第2検知情報において検知された物体の位置とが合致しない位置を除去する。これにより、指向性が広い範囲で生じた虚像を除去して、虚像による物体の誤検知を抑制できる。
【0119】
本実施形態において、制御部13は、例えばサーモホンの送波器10Bを、第1の信号波の周波数と第2の信号波の周波数とを異ならせるように制御して、第1の信号波に対する指向性とは異なった指向性において第2の信号波を送信させる。サーモホンの送波器10Bにより、特に送波器を追加しなくても指向性の制御が実現でき、装置構成を簡単化することができる。
【0120】
(実施形態4)
実施形態3では、1つのサーモホンを用いた送波器10Bの構成例を説明した。実施形態4では、複数のサーモホンを用いた送波器による物体検知装置について説明する。
【0121】
図17は、実施形態4に係る物体検知装置1Cにおける送波器10Cを例示する図である。本実施形態における送波器10Cは、図17に示すように、複数のサーモホン10cがアレイ状に配置されたサーモホンアレイで構成される。各サーモホン10cは、例えば実施形態3の送波器10Bの構成例(図14)と同様に構成される。
【0122】
図17では、3行3列で配置された9個のサーモホン10cによるサーモホンアレイを例示している。各サーモホン10cは、例えば制御部13により独立に制御可能である。本実施形態の送波器10Cにおいて、サーモホンアレイ中のサーモホン10cの個数は特に9個に限らず、例えば2行2列の4個であってもよいし、種々の個数であってもよい。
【0123】
本実施形態の物体検知装置1Cにおいては、送波器10Cにおける実質的な放音面のサイズを変えるように、音波を発するサーモホン10cの個数を変更することで、音波の指向性を変化させることができる。この点について、図18を用いて説明する。
【0124】
図18は、本実施形態の送波器10Cによる種々のサイズにおける指向性の変化を例示するグラフである。図18の横軸及び縦軸は、図15と同様である。図18では、周波数f=40kHzにおける、幅a=5mm,10mm,20mmの特性を例示している。図18では、送波器の放音面を矩形状に設定している。図15に示すように、送波器の放音面の幅aを大きくするほど、指向性が狭まる。これは、幅aが大きいほど面音源に近似されることに対応している。また、幅aを小さくするほど、点音源に近似され、指向性は広がる。
【0125】
以上より、本実施形態の物体検知装置1Cにおいて、制御部13は、例えば実施形態3と同様の動作(図16)のステップS7Bにおいて、信号波を送信させるサーモホン10cの個数を変更することにより、ビーム幅を変更する。例えば、制御部13は、図17の例の送波器10Cにおいて、中央の1個のサーモホン10cのみから第1の信号波を送信させ、9個全てのサーモホン10cから第2の信号波を送信させることにより、第1の信号波の指向性よりも第2の信号波を狭くすることができる。
【0126】
以上のように、本実施形態の物体検知装置1Cにおいて、送波器10Cは、アレイ状に配置された複数のサーモホン10cを含む。制御部13は、第1の信号波を送信するサーモホン10cの個数と、第2の信号波を送信するサーモホン10cの個数とを異ならせて、第1の信号波に対する指向性とは異なった指向性において第2の信号波を送信させる。本実施形態の送波器10Cによっても、実施形態3と同様に信号波の指向性を変化させて、虚像による物体の誤検知を抑制できる。
【0127】
また、本実施形態の送波器10Cは、駆動するサーモホン10の変更により、指向性に限らず、送波位置を変更することもできる。例えば、本実施形態の送波器10Cを用いて、実施形態2と同様の動作(図12)も実現できる。
【0128】
(他の実施形態)
上記の実施形態3では、指向性のビーム幅を変更する例を説明したが、指向性の制御はこれに限定されない。図19を用いて、変形例に係る物体検知装置1Dについて説明する。
【0129】
本変形例の物体検知装置1Dは、例えば実施形態1と同様の構成において、図19に示すように、送波器10を回転させる駆動部15をさらに備える。本変形例の送波器10は、例えば、角度幅90度以下などの狭い指向性を有する。本変形例の駆動部15は、例えば、物体検知装置1が搭載される自走ロボット2とは独立して、送波器10等を駆動可能な機構で構成される。本変形例の駆動部15は、送波器10と共に各受波器11L,11Rを回転させるように構成されてもよいし、送波器10を単独で回転させるように構成されてもよい。
【0130】
本変形例の物体検知装置1Dは、例えば実施形態1と同様の動作(図6)において、ステップS7の代わりに、駆動部15によって送波器10等を回転駆動する。これにより、第1及び第2の信号波の間で、指向性ビームの向きを変更することができる。よって、第1及び第2の信号波の間で左方と右方というように測定範囲を分担することによって、虚像の発生を抑制することができる。このような虚像の除去方法は、上記の各実施形態と適宜、組み合わせることが可能である。なお、物体検知装置1Dの回転駆動は、自走ロボット2の駆動部21によって行われてもよい。
【0131】
以上のように、本変形例の物体検知装置1Dにおいて、制御部13は、第1の信号波に対する指向性のビームと、第2の信号波に対する指向性のビームとを互いに異なる向きに設定して、第1の信号波に対する指向性とは異なった指向性において第2の信号波を送波器に送信させる。これによっても、虚像を除去することができる。
【0132】
また、本変形例の物体検知装置1Dは、送波器10の位置と左方の受波器11Lの位置と右方の受波器11Rの位置との内の少なくとも1つを変更するように物体検知装置を駆動する駆動部15をさらに備える。制御部13は、第1の信号波が送信されてから駆動部15が駆動した後に、第2の信号波を送波器10に送信させる。
【0133】
また、上記の各実施形態においては、送波器10の指向性を制御する例を説明した。本実施形態はこれに限らず、各受波器11L,11Rの指向性を制御してもよい。これによっても、上記の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0134】
1,1A~1D 物体検知装置
10 送波器
11L,11R 受波器
13 制御部
15,21 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図15
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図18
図19