(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220913BHJP
C08L 101/08 20060101ALI20220913BHJP
C08K 5/3432 20060101ALI20220913BHJP
C08F 20/30 20060101ALI20220913BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220913BHJP
C09K 19/56 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
C08L101/08
C08K5/3432
C08F20/30
C08L33/14
C09K19/56
(21)【出願番号】P 2019206887
(22)【出願日】2019-11-15
(62)【分割の表示】P 2016531349の分割
【原出願日】2015-06-29
【審査請求日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2014134036
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】南 悟志
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 亮一
(72)【発明者】
【氏名】川月 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 瑞穂
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-060619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/1337
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分を含有し、(A)成分の側鎖と(B)成分のいずれか又は両方に、光反応性基を含有し、(A)成分と(B)成分とが水素結合を介して、液晶性超分子を形成することを特徴とする光学活性組成物、を含有する、液晶配向剤。
(A)カルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体であって、下記式(3)及び(4)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有する重合体、及び
(B)
下記式(1)又は(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【化1】
[式中、
Xは、単結合、又は炭素原子数1~12のアルキレン、エーテル、エステル、アゾ、チオエーテル、ジスルフィド、テトラジン、二置換アルケン、アルキン、もしくはフェニレンを表し、
Sは、エーテル、エステル又はフェニレンを表し、
Pyはそれぞれ独立して、以下の群から選ばれる構造を表し、下記構造中、点がついている部分は、式(1)においてXと結合する部分であり、式(2)においてSと結合する部分である
【化2】
]、
【化3】
[式中、
Aは単結合、-O-、-COO-、-CONH-、及び-NH-から選ばれる基を表し、
Bは単結合、-O-、-COO-、-CONH-、-NH-、及び-CH=CH-COO-から選ばれる基を表し、
Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立に、フェニル基またはナフチル基を表し、
lは0~12の整数であ
り、mは0である]。
【請求項2】
前記(A)成分が、1つの側鎖構造中にカルボン酸基及び光反応性基を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記(B)成分が、前記(A)成分の重合体の重量に対して0.5重量%~70重量%含有される、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤から得られる、液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を具備する、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子や、位相差フィルムや偏光回折素子などの分子配向を制御した光学素子の製造に好適である高分子フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、軽量、薄型かつ低消費電力の表示デバイスとして知られ、近年では大型のテレビ用途に用いられるなど、目覚ましい発展を遂げている。液晶表示素子は、例えば、電極を備えた透明な一対の基板により液晶層を挟持して構成される。そして、液晶表示素子では、液晶が基板間で所望の 配向状態となるように有機材料からなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。
【0003】
すなわち、液晶配向膜は、液晶表示素子の構成部材であって、液晶を挟持する基板の液晶と接する面に形成され、その基板間で液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。そして、液晶配向膜には、液晶を、例えば、基板に対して平行な方向など、一定の方向に配向させるという役割に加え、液晶のプレチルト角を制御するという役割を求められることがある。こうした液晶配向膜における、液晶の配向を制御する能力(以下、配向制御能と言う。)は、液晶配向膜を構成する有機膜に対して配向処理を行うことによって与えられる。
【0004】
配向制御能を付与するための液晶配向膜の配向処理方法としては、従来からラビング法が知られている。ラビング法とは、基板上のポリビニルアルコールやポリアミドやポリイミド等の有機膜に対し、その表面を綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一定方向に擦り(ラビングし)、擦った方向(ラビング方向)に液晶を配向させる方法である。このラビング法は簡便に比較的安定した液晶の配向状態を実現できるため、従来の液晶表示素子の製造プロセスにおいて利用されてきた。そして、液晶配向膜に用いられる有機膜としては、耐熱性等の信頼性や電気的特性に優れたポリイミド系の有機膜が主に選択されてきた。
【0005】
しかしながら、ポリイミドなどからなる液晶配向膜の表面を擦るラビング法は、発塵や静電気の発生が問題となることがあった。また、近年の液晶表素子の高精細化や、対応する基板上の電極や液晶駆動用のスイッチング能動素子による凹凸のため、液晶配向膜の表面を布で均一に擦ることができず、均一な液晶の配向を実現できないことがあった。
【0006】
そこで、ラビングを行わない液晶配向膜の別の配向処理方法として、光配向法が盛んに検討されている。
【0007】
光配向法には様々な方法があるが、直線偏光またはコリメートした光によって液晶配向膜を構成する有機膜内に異方性を形成し、その異方性に従って液晶を配向させる。その主な配向法としては、偏光紫外線照射により、分子構造に異方的な分解を生じさせる「光分解型」や、ポリビニルシンナメートを用い、偏光紫外線を照射し、偏光と平行な2つの側鎖の二重結合部分で二量化反応(架橋反応)を生じさせる「二量化型」(例えば、特許文献1を参照のこと。)、アゾベンゼンを側鎖に有する側鎖型高分子を用いた場合、偏光紫外線を照射し、偏光と平行な側鎖のアゾベンゼン部で異性化反応を生じさせ、偏光方向と直交した方向に液晶を 配向させる「異性化型」(例えば、非特許文献2を参照のこと。)が知られている。
【0008】
一方、近年、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を用いた新しい光配向法(以下、配向増幅法とも称する)が検討されている。これは、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を有する膜に、偏光照射によって配向処理を行い、その後、その側鎖型高分子膜を加熱する工程を経て、配向制御能が付与された塗膜を得るというものである。このとき、偏光照射によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性の側鎖型高分子自体が自己組織化により効率的に再配向する。その結果、液晶配向膜として高効率な配向処理が実現し、高い配向制御能が付与された液晶配向膜を得ることができる(例えば、特許文献2を参照のこと。)。
【0009】
さらに、この配向増幅法によって得られた高分子フィルムは、分子配向により複屈折性が発現することから、液晶配向膜の用途以外にも位相差フィルムなどの様々な光学素子としても利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3893659号公報
【文献】WO2014/054785
【非特許文献】
【0011】
【文献】M.Shadt et al., Jpn. J. Appl. Phys. 31, 2155(1992)
【文献】K.Ichimura et al., Chem. Rev. 100, 1847(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
配向増幅法に用いられる液晶配向膜への高効率な異方性の導入に最適な偏光紫外線の照射量は、その塗膜において感光性基が光反応する量を最適にする偏光紫外線の照射量に対応する。配向増幅法に用いられる液晶配向膜に対して偏光した紫外線を照射した結果、光反応する側鎖の感光性基が少ないと、十分な光反応量とならない。その場合、その後に加熱しても十分な自己組織化は進行しない。一方、光反応する側鎖の感光性基が過剰となると、得られる膜は剛直になって、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。
【0013】
現在、配向増幅法に用いられる液晶配向膜の中には、用いられている重合体中の光反応性基の感度が高い為か、上述した最適な偏光紫外線の照射量の領域が狭いものがある。その結果、液晶表示素子の製造効率の低下が問題となっている。
【0014】
さらに液晶配向膜の焼成温度が低い場合、残留溶媒などの影響により液晶表示素子の信頼性が低下する可能性があるが、配向増幅法で得られる液晶配向剤はその性質上、高分子液晶の液晶発現温度以上の温度では焼成できないため、総じて焼成温度が低く残留溶媒などが信頼性を低下させる一因となっている。
【0015】
そこで、本発明は、高効率で配向制御能が付与され、かつ、最適な偏光紫外線照射量や最適な焼成温度に調整が可能なプロセスマージンの広い液晶配向膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を達成するべく鋭意検討を行った結果、以下の発明を見出した。
【0017】
<1> 下記(A)成分及び(B)成分を含有し、(A)成分の側鎖と(B)成分のいずれか又は両方に、光反応性基を含有し、(A)成分と(B)成分とが水素結合を介して、液晶性超分子を形成することを特徴とする光学活性組成物。
(A)カルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体、及び
(B)下記式(1)又は(2)、ピラジンおよびナフチリジンで表される芳香族複素環化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【0018】
【0019】
[式中、
Xは、単結合、又は炭素原子数1~12のアルキレン、エーテル、エステル、アゾ、チオエーテル、ジスルフィド、テトラジン、二置換アルケン、アルキン、もしくはフェニレンを表し、
Sは、エーテル、エステル又はフェニレンを表し、
Pyはそれぞれ独立して、以下の群から選ばれる構造を表し、下記構造中、点がついている部分が、式(1)においてXと結合する部分であり、式(2)においてSと結合する部分である。
【0020】
【0021】
<2> 前記<1>の光学活性組成物において、前記(A)成分が、1つの側鎖構造中にカルボン酸基及び光反応性基を含有するのがよい。
【0022】
<3> 前記<1>または<2>の光学活性組成物において、前記(B)成分が、前記(A)成分の重合体の重量に対して0.5重量%~70重量%含有されるのがよい。
【0023】
<4> 前記<1>~<3>のいずれかの光学活性組成物において、前記(A)成分が、下記式(3)及び(4)からなる群から選ばれるいずれか1種のカルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体であるのがよい。
【0024】
【0025】
[式中、
Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-、及び-NH-から選ばれる基を表し、
Bは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-、-NH-、及び-CH=CH-COO-から選ばれる基を表し、
Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、フェニル基またはナフチル基を表し、
l及びmはそれぞれ独立に0~12の整数である]。
【0026】
<5> 前記<1>~<4>のいずれかの光学活性組成物において、前記(B)成分が、下記から選ばれる少なくとも1種の化合物であるのがよい。
【0027】
【0028】
【0029】
【化6】
[式中、
nは、1から3の整数を表し、
lは、2から6の整数を表し、及び
mは、1から4の整数を表す]。
【0030】
<6> 前記<1>~<5>のいずれかの光学活性組成物を含有する、液晶配向剤。
<7> 前記<6>の液晶配向剤から得られる、液晶配向膜。
<8> 前記<7>の液晶配向膜を具備する、液晶表示素子。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、高効率で配向制御能が付与され、かつ、最適な偏光紫外線照射量の領域が広い、もしくは、高分子液晶の液晶発現温度を好適に選択可能な、光学活性組成物、該組成物を含有する液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、該液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子を提供することができる。さらには、該光学活性組成物を用いることで位相差フィルムなどに光学素子の製造におけるプロセスマージン(偏光紫外線照射量や焼成温度)の広い高分子フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施例8と比較例2から得られた二色性を表したグラフである。
【
図2】
図2は、実施例10と比較例3から得られた各照射量における面内配向度Sを表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
<光学活性組成物>
本発明の光学活性組成物は、下記(A)成分及び(B)成分を含有し、(A)成分と(B)成分のいずれか又は両方に、光反応性基を含有し、(A)成分と(B)成分とが水素結合を介して、液晶性超分子を形成することを特徴とする。
(A)カルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体、及び
(B)下記式(1)及び(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物:
【0034】
【0035】
[式中、
Xは、単結合、又は炭素原子数1~12のアルキレン、エーテル、エステル、アゾ、チオエーテル、ジスルフィド、テトラジン、二置換アルケン、アルキン、及びフェニレンを表し、
Sは、エーテル、エステル又はフェニレンを表し、
Pyはそれぞれ独立して、以下の群から選ばれる構造を表し、下記構造中、点がついている部分が、式(1)においてXと結合する部分であり、式(2)においてSと結合する部分である。
【0036】
【0037】
なぜ上記構成要件を満たす組成物が本発明の課題を解決し得る効果を奏するかは定かではないが、概ね以下のように考えられる。
【0038】
本発明における(A)成分であるカルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体はカルボン酸同士の水素結合によって超分子液晶を示すと言われている。このような超分子液晶では水素結合を形成している芳香環-カルボン酸-カルボン酸-芳香環の構造が下記に示すようなメソゲン構造になっており、液晶性を示す温度範囲や、紫外線の吸収帯などはほとんどこのメソゲン部位で決定されると考えられる。
【0039】
【0040】
このとき、本発明の(B)成分である芳香族複素環構造が存在すると、カルボン酸の一部は複素環との水素結合(もしくはイオン結合などの相互作用)によってメソゲン構造を形成し、液晶性を発現することになる。その結果、液晶性を示す温度範囲や、紫外線の吸収帯などが変化することとなる。本発明ではこれらの組み合わせを自由に選択することによって、液晶の発現温度領域や、紫外線に対する感度などを任意の範囲に調整することが可能となる。なおこれらは理論であって本発明を拘束するものではない。
【0041】
<<(A)成分>>
(A)成分は、カルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体である。このとき、1つの側鎖構造中にカルボン酸基及び光反応性基を含有しても、重合体中に光反応性基を含有する別の側鎖が存在しても良いが、光学活性組成物反応効率の点から、1つの側鎖構造中にカルボン酸基及び光反応性基を含有することが好ましい。
【0042】
1つの側鎖構造中にカルボン酸基及び光反応性基を含有する場合、その側鎖(以下、特定側鎖とも称する)の一般式は上記式(3)及び(4)で表すことができる。
【0043】
上記式(3)、(4)中、Aは単結合、-O-、-COO-、-CONH-、及び-NH-から選ばれる基を表し、その中でも液晶性発現の観点から-O-、-COO-が好ましい。
また、上記式(3)、(4)中、Bは単結合、-O-、-COO-、-CONH-、-NH-、及び-CH=CH-COO-から選ばれる基を表し、その中でも液晶性発現の観点から-O-、-COO-が好ましい。
【0044】
Ar1、Ar2はそれぞれ独立にフェニル基またはナフチル基を表す。
【0045】
l及びmはそれぞれ独立に0~12の整数である。その中でも液晶性発現の観点から、
2から8の整数が好ましい。
【0046】
上記式(3)及び(4)で表される側鎖構造の具体例は以下のように例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【0048】
式中、mは2から12の整数を表す。
【0049】
<<重合体の製法>>
(A)成分の重合体は、上述した特定側鎖を含有するモノマーの重合反応により得ることができる。また、光反応性基を含有する側鎖を有するモノマーと、カルボン酸基を含有する側鎖を有するモノマーとの共重合によっても得ることができる。さらに、液晶性の発現能を損なわない範囲でその他のモノマーと共重合することができる。
その他のモノマーとしては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。
【0050】
その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0051】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0052】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0053】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。 グリシジル(メタ)アクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、および(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物も用いることができる。
【0054】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0056】
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0057】
(A)成分の重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、特定側鎖側鎖モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0058】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0059】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類 (ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシ シクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ 2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0060】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジ(メトキシカルボニル)-4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’-ジ(メトキシカルボニル)-4,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジ(メトキシカルボニル)-3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(3-メチル-3H-ベンゾチアゾール-2-イリデン)-1-ナフタレン-2-イル-エタノン、又は2-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2(3H)-イリデン)-1-(2-ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0061】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0062】
重合反応に用いる有機溶媒としては、生成した高分子が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0063】
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0064】
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の有機溶媒に混合して使用してもよい。
【0065】
また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
ラジカル重合の際の重合温度は30℃~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50℃~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、モノマー濃度が、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1モル%~10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0066】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた、重合体の反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0067】
本発明の(A)成分の重合体の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2000~1000000が好ましく、より好ましくは、5000~100000である。
【0068】
<<B成分>>
本発明の光学活性組成物は、(B)成分として下記式(1)又は(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
【0069】
【0070】
上記式(1)及び(2)中、Xは、単結合、又は炭素原子数1~12のアルキレン、エーテル、エステル、アゾ、チオエーテル、ジスルフィド、テトラジン、二置換アルケン、アルキン、もしくはフェニレンを表し、好ましくは、エステル、アゾ、二置換アルケン、又はアルキンを表す。ここで、「二置換アルケン」は、炭素原子数2~6,好ましくは2~4の二置換アルケンをいい、この二置換アルケンの置換基は、炭素数1~5のアルキル基、フッ素、又はシアノ基を表す。
【0071】
上記式(1)及び(2)中、Sは、エーテル、エステル又はフェニレンを表し、好ましくは、フェニレンを表す。
【0072】
上記式(1)及び(2)中、Pyはそれぞれ独立して、以下の群から選ばれる構造を表す。なお、下記構造中、点がついている部分が、式(1)においてXと結合する部分であり、式(2)においてSと結合する部分である。好ましいPyは、4-ピリジル、4-ピリジルフェニルである。
【0073】
【0074】
上記式(1)及び(2)で表される化合物の具体例を以下に例示するが、これに限定されない。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
[式中、
nは、1から3の整数を表し、
lは、2から6の整数を表し、及び
mは、1から4の整数を表す]。
【0079】
なお、液晶性発現の観点から、B1~B9、B16、B18が好ましく、B1~B5がさらに好ましい。
【0080】
上記(B)成分は、上記(A)成分の重合体の重量に対して0.5重量%~70重量%含有されることが好ましく、5重量%~50重量%含有されることがより好ましい。
【0081】
また、下記の化合物を(B)成分として用いても、同様の効果を得ることが可能である。
【0082】
【0083】
<光学活性組成物の調整>
本発明に用いられる光学活性組成物は、塗膜の形成に好適となるように塗布液として調製されることが好ましい。すなわち、A成分、B成分及び後述する、必要に応じて添加される各種添加剤を有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。その際、A成分、B成分及び必要に応じて添加される各種添加剤を合計した成分(以下、樹脂成分とも称する)の含有量は、1質量%~20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%~15質量%、特に好ましくは3質量%~10質量%である。
【0084】
<有機溶媒>
本発明の光学活性組成物に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0085】
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0086】
本発明の光学活性組成物に含有される重合体は、全てが上述したカルボン酸基構造を含有する側鎖を有する重合体であってもよいが、液晶発現能および感光性能を損なわない範囲でそれら以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における他の重合体の含有量は、0.5質量%~80質量%、好ましくは1質量%~50質量%である。
【0087】
そのような他の重合体は、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸やポリイミド等からなり、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子ではない重合体等が挙げられる。
【0088】
本発明の光学活性組成物は、上記(A)及び(B)成分以外の成分を含有してもよい。その例としては、光学活性組成物の溶液を塗布した際の、膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、塗膜と基板との密着性を向上させる化合物等を挙げることができるが、これに限定されない。
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、次のものが挙げられる。
【0089】
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1-ヘキサノール、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等の低表面張力を有する溶媒等が挙げられる。
【0090】
これらの貧溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上述のような溶媒を用いる場合は、本発明の光学活性組成物に含まれる溶媒全体の溶解性を著しく低下させることが無いように、溶媒全体の5質量%~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%~60質量%である。
【0091】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
【0092】
より具体的には、例えば、エフトップ(登録商標)301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R-30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(旭硝子社製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~2質量部、より好ましくは0.01質量部~1質量部である。
【0093】
塗膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物などが挙げられる。
【0094】
例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0095】
さらに、基板と塗膜の密着性の向上に加え、液晶表示素子を構成した時のバックライトによる電気特性の低下等を防ぐ目的で、以下のようなフェノプラスト系やエポキシ基含有化合物の添加剤を、本発明の光学活性組成物中に含有させても良い。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0096】
【0097】
具体的なエポキシ基含有化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタンなどが例示される。
【0098】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、光学活性組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部~20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0099】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。無色増感剤および三重項増感剤が好ましい。
【0100】
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2-ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2-ヒドロキシケトン(2-ヒドロキシベンゾフェノン、モノ-もしくはジ-p-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル
-β-ナフトチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m-もしくはp-ニトロアニリン、2,4,6-トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5-ニトロアセナフテン)、(2-[(m-ヒドロキシ-p-メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N-アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2-ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2-ナフタレンメタノール、2-ナフタレンカルボン酸、9-アントラセンメタノール、および9-アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等がある。
【0101】
好ましくは、芳香族2-ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールである。
【0102】
本発明の光学活性組成物には、上述したものの他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、塗膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、塗膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的で、架橋性化合物を添加してもよい。
【0103】
上述した光学活性組成物を基板に塗布、焼成した塗膜は、例えば液晶配向膜として用いることが出来る。本発明の光学活性組成物を含有する液晶配向剤を横電界駆動用の導電膜を有する基板上に塗布する方法は特に限定されない。
【0104】
塗布方法は、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナ法(回転塗布法)またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0105】
<<液晶表示素子の製造>>
<工程[I]>
本発明の光学活性組成物を含有する液晶配向剤を用いた液晶表示素子の製造は、以下の工程[I]から[IV]で表される。まず、工程[I]は、導電膜を有する基板上に本発明の液晶配向剤を塗布する過程である。塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により50~200℃、好ましくは50~150℃で溶媒を蒸発させて塗膜を得ることができる。このときの乾燥温度は、側鎖型高分子の液晶相発現温度よりも低いことが好ましい。
【0106】
塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nm~300nm、より好ましくは10nm~150nmである。
尚、[I]工程の後、続く[II]工程の前に塗膜の形成された基板を室温にまで冷却する工程を設けることも可能である。
【0107】
<工程[II]>
工程[II]では、工程[I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する。塗膜の膜面に偏光した紫外線を照射する場合、基板に対して一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射する。使用する紫外線としては、波長100nm~400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm~400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0108】
偏光した紫外線の照射量は、使用する塗膜に依存する。照射量は、該塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAの最大値(以下、ΔAmaxとも称する)を実現する偏光紫外線の量の1%~70%の範囲内とすることが好ましく、1%~50%の範囲内とすることがより好ましい。
【0109】
<工程[III]>
工程[III]では、工程[II]で偏光した紫外線の照射された塗膜を加熱する。加熱により、塗膜に配向制御能を付与することができる。
加熱は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段を用いることができる。加熱温度は、使用する塗膜の液晶性を発現させる温度を考慮して決めることができる。
【0110】
加熱温度は、側鎖型高分子が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という)の温度範囲内であることが好ましい。塗膜のような薄膜表面の場合、塗膜表面の液晶発現温度は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子をバルクで観察した場合の液晶発現温度よりも低いことが予想される。このため、加熱温度は、塗膜表面の液晶発現温度の温度範囲内であることがより好ましい。すなわち、偏光紫外線照射後の加熱温度の温度範囲は、使用する側鎖型高分子の液晶発現温度の温度範囲の下限より10℃低い温度を下限とし、その液晶温度範囲の上限より10℃低い温度を上限とする範囲の温度であることが好ましい。加熱温度が、上記温度範囲よりも低いと、塗膜における熱による異方性の増幅効果が不十分となる傾向があり、また加熱温度が、上記温度範囲よりも高すぎると、塗膜の状態が等方性の液体状態(等方相)に近くなる傾向があり、この場合、自己組織化によって一方向に再配向することが困難になることがある。
【0111】
なお、液晶発現温度は、側鎖型高分子または塗膜表面が固体相から液晶相に相転移がおきるガラス転移温度(Tg)以上であって、液晶相からアイソトロピック相(等方相)に相転移を起こすアイソトロピック相転移温度(Tiso)以下の温度をいう。
加熱後に形成される塗膜の厚みは、工程[I]で記した同じ理由から、好ましくは5nm~300nm、より好ましくは50nm~150nmであるのがよい。
【0112】
以上の工程を有することにより、本発明の製造方法では、高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。そして、高効率に液晶配向膜付基板を製造することができる。
【0113】
<工程[IV]>
[IV]工程は、[III]で得られた、液晶配向膜を有する基板を、液晶を介して、双方の液晶配向膜が相対するように対向配置して、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子を作製する工程である。
【0114】
液晶セル又は液晶表示素子の作製の一例を挙げるならば、上述の基板を2枚用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に、基板を貼り合わせて封止を行う方法、等を例示することができる。このとき、片側の基板には横電界駆動用の櫛歯のような構造の電極を有する基板を用いることが好ましい。このときのスペーサの径は、好ましくは1μm~30μm、より好ましくは2μm~10μmである。このスペーサ径が、液晶層を挟持する一対の基板間距離、すなわち、液晶層の厚みを決めることになる。
【0115】
本発明の塗膜付基板の製造方法は、重合体組成物を基板上に塗布し塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射する。次いで、加熱を行うことにより側鎖型高分子膜への高効率な異方性の導入を実現し、液晶の配向制御能を備えた液晶配向膜付基板を製造する。
本発明に用いる塗膜では、側鎖の光反応と液晶性に基づく自己組織化によって誘起される分子再配向の原理を利用して、塗膜への高効率な異方性の導入を実現する。本発明の製造方法では、側鎖型高分子に光反応性基として光架橋性基を有する構造の場合、側鎖型高分子を用いて基板上に塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射し、次いで、加熱を行った後、液晶表示素子を作成する。
【0116】
こうすることにより、本発明によって提供される液晶表示素子は光や熱などの外部ストレスに対して高い信頼性を示すことになる。
以上のようにして、本発明の方法によって製造された横電界駆動型液晶表示素子用基板又は該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。
【0117】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は、該実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0118】
実施例で使用する略号は以下のとおりである。
【0119】
(メタクリルモノマー)
【0120】
【0121】
【0122】
(有機溶媒)
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
【0123】
(重合開始剤)
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
ポリマーの分子量測定条件は、以下の通りである。
装置:センシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC―7200)、
カラム:Shodex社製カラム(KD-803、KD-805)
カラム温度:50℃
【0124】
溶離液:N,N’-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(Li
Br・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/
L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
【0125】
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量
約9000,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリ
マーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000
、1,000)。
【0126】
<実施例1>
M6CA(12.41g、35.0mmol)をTHF(111.7g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行なった後、AIBNを(0.287g、1.8mmol)を加え再び脱気を行なった。この後60℃で30時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をジエチルエーテル(500ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をジエチルエーテルで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(A)を得た。このポリマーの数平均分子量は11000、重量平均分子量は26000であった。
【0127】
得られたメタクリレートポリマー粉末(A)(6.0g)にNMP(29.29g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にNMP(14.7g)、BC(50.0g)を加え5時間攪拌し液晶配向剤(A1)を得た。
また、上記の液晶配向剤(A1)10.0gに対してビピリジン系添加剤 BPyを0.03g(固形分に対して5質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、液晶配向剤(A2)を調製した。
【0128】
また、上記の液晶配向剤(A1)10.0gに対してビピリジン系添加剤 BPyStylを0.03g(固形分に対して5質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、液晶配向剤(A3)を調製した。
【0129】
また、上記の液晶配向剤(A1)10.0gに対してビピリジン系添加剤 BPyC2を0.03g(固形分に対して5質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、液晶配向剤(A4)を調製した。
【0130】
また、上記の液晶配向剤(A1)10.0gに対してビピリジン系添加剤 BPyC3を0.03g(固形分に対して5質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、液晶配向剤(A5)を調製した。
【0131】
<実施例2>
M6BA(15.32g、50.0mmol)をTHF(141.6g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行なった後、AIBNを(0.411g、2.5mmol)を加え再び脱気を行なった。この後60℃で30時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をジエチルエーテル(1500ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をジエチルエーテルで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(B)を得た。このポリマーの数平均分子量は13000、重量平均分子量は31000であった。
【0132】
得られたメタクリレートポリマー粉末(B)(6.0g)にNMP(29.29g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にNMP(14.7.5g)、BC(50.0g)を加え5時間攪拌し液晶配向剤(B1)を得た。
【0133】
また、上記の液晶配向剤(B1)10.0gに対してビピリジン系添加剤 BPyStylを0.03g(固形分に対して5質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、液晶配向剤(B2)を調製した。
【0134】
<実施例3>
実施例1で得られた液晶配向剤(A2)を用いて液晶セルを作成し、低分子液晶の配向性を確認した。配向処理における偏光UVの照射量、偏光UV照射後の加熱温度の条件を振り、最適な配向性が得られる条件を確認した。
【0135】
[液晶セルの作製]
基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板であり、ITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置されたものを用いた。画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は10μmであり、電極要素間の間隔は20μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜の配向処理方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+15°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が-15°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。実施例1で得られた液晶配向剤(A2)を、準備された上記電極付き基板にスピンコートした。次いで、70℃のホットプレートで90秒間乾燥し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、塗膜面に偏光板を介して313nmの紫外線を3~13mJ/cm2照射した後に140~170℃のホットプレートで10分間加熱し、液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として電極が形成されていない高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、同様に塗膜を形成させ、配向処理を施した。一方の基板の液晶配向膜上にシール剤(協立化学製XN-1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を熱硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-2041(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して、IPS(In-Planes Switching)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを得た。
【0136】
得られた液晶セルをクロスニコルにした偏光板の間に置き、液晶の配向性を確認した。また各電極間に8Vppの交流電圧を印可し、画素部の液晶が駆動するかどうかを確認した。以下の表に偏光UVの照射量とその後の加熱温度による液晶配向性の結果を示す。なお、液晶注入後に流動配向などの配向不良が確認されたものを×、配向不良が無く良好な液晶配向性が確認されたものを○と表示する。
【0137】
【0138】
<実施例4>
実施例3と同様な方法で、液晶配向剤(A3)を用いて液晶セルを作成し、得られた液晶セルの配向性を確認した。以下の表2に液晶セルの液晶配向性の結果を示す。
【0139】
【0140】
<実施例6>
実施例3と同様な方法で、液晶配向剤(A4)を用いて液晶セルを作成し、得られた液晶セルの配向性を確認した。以下の表3に液晶セルの液晶配向性の結果を示す。
【0141】
【0142】
<実施例7>
実施例3と同様な方法で、液晶配向剤(A5)を用いて液晶セルを作成し、得られた液晶セルの配向性を確認した。以下の表4に液晶セルの液晶配向性の結果を示す。
【0143】
【0144】
<比較例1>
実施例3と同様な方法で、液晶配向剤(A1)を用いて液晶セルを作成し、得られた液晶セルの配向性を確認した。以下の表5に液晶セルの液晶配向性の結果を示す。
【0145】
【0146】
表1~5の結果からピリジン系の添加剤を加えることで比較例に対して最適な配向性を得られる加熱温度や偏光UVの照射量が変化することが確認された。特に加熱温度に関しては、残存溶媒などの影響による液晶表示素子の電気特性悪化などが懸念されるためなるべく高い温度で焼成を行うことが求められており、添加剤を用いるだけで最適な配向性が得られる加熱条件を任意に選択できることは材料選択の幅を広めることにつながる。
最適な照射量や加熱温度が変化した理由としては、超分子液晶のメソゲン部分が変わることでUVの吸収帯やUVによる感度や反応率の変化によるものであると考えられる。
[高分子フィルムとしての評価]
【0147】
<実施例7>
次に、液晶配向剤(A1)10.0gに対して、ビピリジン系添加剤 BPyを0.06g(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、光学活性組成物(A6)を調製した。
【0148】
また、液晶配向剤(A1)10.0gに対してビピリジン系添加剤 BPyを0.3g(固形分に対して50質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、液晶配向剤(A7)を調製した。
【0149】
<実施例8>
実施例7で得られた光学活性組成物(A6)を1.1mmの石英基板に膜厚100nmとなるようにスピンコート法により塗布し、70℃のホットプレートで乾燥した。
【0150】
この塗膜に313nmの偏光UVを0J/cm2から30J/cm2まで照射していった時の二色性を追跡した。なお二色性△Aの測定は偏光UV-vis吸収スペクトルを測定して以下の式により算出した。
【0151】
二色性△A=A//-A⊥
【0152】
(A//は照射した偏光UVに対して平行方向の吸光度、A⊥は照射した偏光UVに対して⊥方向の吸光度を表す。吸光度は313nmにおける吸光度の値である。)
【0153】
同様の方法で光学活性組成物(A7)を用いた場合の二色性も算出した。
なお、偏光UV-vis吸収スペクトルの測定にはUV-3100(島津製作所製)を使用した。
【0154】
<比較例2>
実施例8と同様の方法で、液晶配向剤(A1)の二色性も算出した。実施例8と比較例2から得られた二色性を
図1に示す。
【0155】
<実施例9>
次に、液晶配向剤(A1)10.0gに対して、ビピリジン系添加剤 BPyAz(上記B-3)を0.06g(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間撹拌して溶解させ、光学活性組成物(A8)を調製した。
【0156】
<実施例10>
実施例9で得られた光学活性組成物(A8)を1.1mmの石英基板に膜厚100nmとなるようにスピンコート法により塗布し、70℃のホットプレートで乾燥した。
この塗膜に313nmの偏光UVを0mJ/cm2から150mJ/cm2まで照射した後、150℃のホットプレートで加熱(高分子液晶の自己組織化による所謂配向増幅処理)した後のIn-plane order parameter (面内配向度S)を追跡した。なお面内配向度Sの測定は偏光UV-vis吸収スペクトルを測定して以下の式により算出した。
【0157】
面内配向度 S=(A//-A⊥)/(Al+2As)
【0158】
(Alは偏光UV吸収スペクトル(A//とA⊥)における大きなほうの吸光度、Asは偏光UV吸収スペクトルにおける小さいほうの吸光度を表す。)
【0159】
<比較例3>
同様の方法で液晶配向剤(A1)を用いた場合の面内配向度Sも算出した。
実施例10と比較例3から得られた各照射量における面内配向度Sを
図2に示す。
実施例7、8の評価において、ビピリジン系の添加剤を加えることで最大の二色性を示す偏光UVの照射量や二色性の大きさを変化させることが可能であることが確認された。
【0160】
また実施例9、10の評価において面内配向度を大きくさせる最適な照射領域がビピリジン系の添加剤が無い場合にくらべ劇的に広がることが確認された。
【0161】
このように実施例1~10において最適な照射量や加熱温度が変化した理由としては、超分子液晶のメソゲン構造が変わることでUVの吸収帯やUVによる感度や反応率が変化したことによるものであると考えられた。