(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】海生生物等の付着防止方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20060101AFI20220913BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C02F1/50 510E
C02F1/50 510C
C02F1/50 520F
C02F1/50 531Q
C02F1/50 532C
C02F1/50 540B
F28F19/00 501B
(21)【出願番号】P 2022505520
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036139
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021063726
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 洸太
(72)【発明者】
【氏名】錦織 弘宜
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04324784(US,A)
【文献】特開平06-227907(JP,A)
【文献】特開昭63-122604(JP,A)
【文献】特開2013-158743(JP,A)
【文献】特表平06-508636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
A01N 37/16
A01P 15/00
F28F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水が流通する海水利用設備への海生生物及びスライムの付着防止方法であって、
過酢酸を含有する薬剤を前記海水に添加する過酢酸添加工程と、
過酸化水素を前記海水に添加する過酸化水素添加工程とを含み、
前記過酢酸添加工程では、前記海水の過酢酸濃度が0.1~10mg/Lになるように薬剤を前記海水に添加し、
前記過酢酸添加工程における薬剤添加時間が1日当たり0.5~12時間であることを特徴とする海生生物等の付着防止方法。
【請求項2】
過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とは、交互及び/又は重複して行われる請求項1に記載の海生生物等の付着防止方法。
【請求項3】
過酢酸を含有する薬剤は酢酸を含有し、過酢酸添加工程では、海水の酢酸濃度が10mg/L未満になるように前記薬剤を前記海水に添加する請求項1又は2に記載の海生生物等の付着防止方法。
【請求項4】
過酸化水素添加工程では、海水の過酸化水素濃度が0.1mg/L以上になるように過酸化水素を前記海水に添加する請求項1、2又は3に記載の海生生物等の付着防止方法。
【請求項5】
過酸化水素添加工程における薬剤添加時間が1日あたり12~24時間である請求項1、2、3又は4に記載の海生生物等の付着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海生生物等の付着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷却水として海水を使用する発電所、製鉄所、石油化学プラントなどは、波浪などを避けるために、内海や湾内に面した所に多く建設されている。内海や湾内において海水を取水すると、海水中に生息するムラサキイガイ、フジツボ、コケムシ、ヒドロ虫などの海生生物やスライム等が、海水取水路、配管や導水路、熱交換器や復水器細管などの通水路に付着し、様々な障害を引き起こす。例えば、付着した海生生物等は、成長して熱交換器チューブ等の導水路を閉塞させて海水の通水を阻害し、また乱流を生じさせ、エロージョン腐食等の障害を引き起こす。また、付着した海生生物等が水圧や流速等によりはぎ取られることによっても、熱交換器のチューブやストレーナーの閉塞を引き起こし、海水の通水を阻害し、熱交換器本来の機能の低下を引き起こす。
また、種々の工場では、海水は冷却水としてだけではなく、例えば、希釈水や洗浄水としても用いられており、海水が流通する海水利用設備の内表面に海水中に生息する海生生物やスライム等が付着することで、海水の流通が阻害されることが問題になっている。
なお、上記海生生物等の通常の付着繁殖期は、4~10月頃と言われているが、海水温が高くなったり、外来種の流入等により冬季でも繁殖して、上述のような障害を引き起こす。
【0003】
上記の海水中に生息する海生生物は、自然界において付着基盤を争奪しながら共生しており、ムラサキイガイやフジツボはその繁殖力が強く、上記のような付着の問題を起こし易い。そして、ムラサキイガイやフジツボの付着を抑制すると、これらに代わって別の海生生物が繁殖する。その代表的な海生生物がヒドロ虫類であり、中でもクダウミヒドラ類、オベリア類の付着障害が問題になっている。
【0004】
上記海生生物種の着生(付着)を防止するために、従来から次亜塩素酸ナトリウム、電解塩素もしくは塩素ガスなどの塩素発生剤(「塩素剤」ともいう)、過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤(「過酸化水素剤」ともいう)の添加が行われている(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
例えば、特許文献2には、過酸化水素または過酸化水素発生剤を使用することを特徴とする海水動物の付着抑制方法が開示されており、易分解性を有し、残留毒性や蓄積毒性の問題が起らないより安全な海水動物の付着抑制方法を研究した結果、過酸化水素が極めて有効であることが開示されている。また、過酸化水素発生剤として、過酢酸等の有機過酸又はこれらの塩等が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、過酢酸を含有することを特徴とする水中有害生物付着阻止剤に関する技術が開示されている。過酢酸は、少量で短時間に殺菌作用を発揮し、生物分解性に優れ、安全性に優れていることが知られている([請求項1]等、[0014]段落等)。また、例えば、特許文献4には、製紙パルプ工業の白水循環系における微生物抑制剤として過酢酸を用いることが開示されており、特に、Flavobacterium、Alkaligenes、Serratia、Paecilomyces、Geotrichum、Cephalosporium、Rhodotorula及びCandida等のスライムを構成する菌に対し、強力な殺菌効果が認められることが開示されている。
一方、特許文献5の記載から、過酢酸を含有する薬剤に含まれる酢酸は、水系の微生物に利用されることが開示されており([0010]等)、一般的に、冷却水系中の酢酸量が増加すると、微生物量が増加することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-037666号公報
【文献】特公昭61-002439号公報
【文献】特開平06-227907号公報
【文献】特開昭63-122604号公報
【文献】特開2007-198869号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】発電所海水設備の汚損対策ハンドブック(P133~P136)、火力原子力発電技術協会 編、恒星社厚生閣、2014年10月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
海生生物等の付着防止において、トリハロメタンや有機塩素化合物類の生成といった環境への影響を考慮して、塩素剤や臭素剤等のハロゲン系薬剤の使用を避ける動きがあり、ハロゲン系薬剤を使用することなく、優れた海生生物及びスライムの付着防止効果を発揮し得る海生生物等の付着防止方法の開発が望まれている。
【0010】
このような方法として、例えば上述の特許文献2に記載のように、水中で容易に水と酸素に分解する過酸化水素を使用した海水動物の付着抑制方法が挙げられる。しかしながら、過酸化水素及び過酸化水素発生剤の、海生生物に対する付着防止効果は海生生物の種類に対して選択性があるため、過酸化水素の通常の使用方法では、ヒドロ虫類のような酸化剤や殺菌剤などの影響を受けにくい海生生物の付着を防止することは困難である。
一方、効果的にヒドロ虫類の付着を防止するための薬品としては、ハロゲン系薬剤が従来から採用されているが、上述の通り環境上の観点から好ましくない。
【0011】
また、上述の特許文献2に記載の海水動物の付着抑制方法では、過酸化水素の発生剤として、過酢酸等の有機過酸又はこれらの塩等が開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載の通り、低濃度の過酢酸は酢酸と過酸化水素とに分解しやすい事から、海水が流通する系における海洋性生物及びスライムの付着防止に関して、低濃度の過酢酸を添加することは、過酸化水素の添加と同等と考えられていたため、低濃度の過酢酸を添加する必然性はないとされていた。
【0012】
また、過酢酸は殺菌剤として広く知られており、例えば、上述の特許文献3に記載のように過酢酸を使用する水中有害生物付着阻止剤及び付着阻止方法のように、過酢酸を使用する海生生物等の付着防止方法が挙げられる。しかしながら、特許文献3に記載の方法は、0.16%以上(すなわち、1600ppm以上)の高濃度の過酢酸溶液を、海苔網や海洋構造物に対して浸漬、または噴霧することによって藻類や貝類の付着を防止するものであり、海水が流通する系における海洋性生物及びスライムの付着防止に関して、低濃度の過酢酸(例えば、10ppm以下)を添加することの効果は示されていない。
【0013】
本発明は、ハロゲン系薬剤を使用することなく、海水が流通する海水利用設備への優れた海生生物及びスライムの付着防止効果を発揮し得る海生生物等の付着防止方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、ハロゲン系薬剤を使用することなく、海水が流通する海水利用設備への優れたフジツボ類、ヒドロ虫類及びスライムの付着防止効果を発揮し得る海生生物等の付着防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は、過酸化水素を含有する薬剤(A)と、過酢酸を含有する薬剤(B)とを併用して海水に添加することで、フジツボ類、ヒドロ虫類のような海生生物及びスライムの海水が流通する海水利用設備への付着を有効に防止できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0015】
すなわち、本発明は、海水が流通する海水利用設備への海生生物及びスライムの付着防止方法であって、過酢酸を含有する薬剤を上記海水に添加する過酢酸添加工程と、過酸化水素を上記海水に添加する過酸化水素添加工程とを含み、上記過酢酸添加工程では、上記海水の過酢酸濃度が0.1~10mg/Lになるように薬剤を上記海水に添加し、上記過酢酸添加工程における薬剤添加時間が1日当たり0.5~12時間であることを特徴とする海生生物等の付着防止方法である。
過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とは、交互及び/又は重複して行われることが好ましい。
過酢酸を含有する薬剤は酢酸を含有し、過酢酸添加工程では、海水の酢酸濃度が10mg/L未満になるように上記薬剤を上記海水に添加することが好ましい。
過酸化水素添加工程では、海水の過酸化水素濃度が0.1mg/L以上になるように過酸化水素を上記海水に添加することが好ましい。
過酸化水素添加工程における薬剤添加時間が1日あたり12~24時間であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の海生生物等の付着防止方法によれば、海水が流通する海水利用設備への広範な海生生物種(例えば、フジツボ類、ヒドロ虫類等の海生生物)やスライムの付着を防止することができる。
さらに、本発明の海生生物等の付着防止方法によれば、塩素剤や臭素剤等のハロゲン系薬剤を用いることなく、海水が流通する海水利用設備への広範な海生生物種(例えば、フジツボ類、ヒドロ虫類等の海生生物)及びスライムの発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、海水が流通する海水利用設備への海生生物及びスライムの付着防止方法であって、過酢酸を含有する薬剤を上記海水に添加する過酢酸添加工程と、過酸化水素を上記海水に添加する過酸化水素添加工程とを含み、上記過酢酸添加工程では、上記海水の過酢酸濃度が0.1~10mg/Lになるように薬剤を上記海水に添加し、上記過酢酸添加工程における薬剤添加時間が1日当たり0.5~12時間であることを特徴とする海生生物等の付着防止方法である。
本発明の発明者らは、環境への影響を考慮して、ハロゲン系薬剤を使用することなく、フジツボ類及びヒドロ虫類等の海生生物、並びに、スライムが海水が流通する海水利用設備に付着することを防止する方法を検討するために、モデル水路による実験を重ねた。その結果、本発明者らは、過酢酸を含有する薬剤と、過酸化水素とを併用して海水に添加することでフジツボ類、ヒドロ虫類の海生生物及びスライムの海水が流通する海水利用設備への付着を効果的に防止できることを見出した。上述の通り、高濃度での過酢酸の殺菌作用は知られており、例えば、特許文献3では、1600ppm以上の高濃度の過酢酸溶液を藻類や貝類の付着防止に使用している。しかしながら、例えば、10ppm以下のような低濃度での過酢酸は、過酸化水素の発生源として使用できることが知られていたのみである。また、非特許文献1によると、低濃度での過酢酸は、過酸化水素の発生源としても使用の必然性がないとされていた。そのため、低濃度の過酢酸は、現実に海生生物の付着防止の用途には使用されていなかった。
このような状況において、本発明者らは、低濃度の過酢酸(0.1~10mg/L)のヒドロ虫類に対する優れた付着防止効果を見出し、本発明を完成させた。
本発明の海生生物等の付着防止方法において、過酢酸を含有する薬剤は、ヒドロ虫類の付着防止に対して特に有効であり、過酸化水素は、フジツボの付着防止に対して特に有効である。また、過酢酸を含有する薬剤及び過酸化水素のいずれも、スライムの付着防止に有効である。本発明の方法は、過酢酸を含有する薬剤を海水に添加する過酢酸添加工程と、過酸化水素を海水に添加する過酸化水素添加工程を含むため、海水が流通する海水利用設備への広範な海生生物及びスライムの付着を効果的に防止することができる。
【0018】
なお、本発明において、海水が流通する海水利用設備は、冷却水として海水を使用する発電所、製鐵所、石油化学プラント等の工場における海水冷却水系であってもよく、また、種々の工場において、海水を希釈水、洗浄水等として用いる場合の海水が流通する系であってもよく、特に限定されるものではない。上記海水利用設備としては、海水が流通する流路を形成する設備であれば特に限定されず、例えば、海水取水路、配管、導水路、熱交換器、復水器、排水路等が挙げられる。
【0019】
本発明の方法において、過酢酸添加工程と、過酸化水素添加工程とは、交互及び/又は重複して行われることが好ましい。本発明の方法において、過酢酸添加工程と、過酸化水素添加工程とが、交互に行われるとは、過酢酸添加工程と、過酸化水素添加工程とが時間を空けて交互に行われること、時間を空けることなく交互に行われること、及び、重複時間を設けて交互に行われることを含み、これらの組合せも含む。また、本発明の方法において過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが重複して行われるとは、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが同時に行われること、及び、いずれか一方の工程が行われている期間に、間欠的又は連続的に他方の工程が行われることを含む。
すなわち、本発明の方法において、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが両工程とも単独で行われる期間を含む場合は、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが交互に行われるといい、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが両工程とも単独で行われる期間を含まない場合は、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが重複して行われるという。
なお、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが時間を空けて交互に行われる場合、6時間未満の時間を空けることが好ましい。また、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが重複時間を設けて交互に行われる場合、6時間未満の重複時間を設けることが好ましい。
また、本発明の方法において過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが行われる順序は問わない。
【0020】
本発明の方法において、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とは、交互に行われることが好ましい。過酢酸を含有する薬剤には過酸化水素も含有していることから、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とを重複して行われることは、海水への過酸化水素としての添加量が過剰となり、過酸化水素の添加量に応じた海生生物及びスライムの付着防止効果が期待できず、経済的な面から好ましくないためである。
【0021】
[過酢酸を含有する薬剤]
本発明の方法において、過酢酸を含有する薬剤は、過酢酸を含有していればよく、工業用として市販されている過酢酸溶液や、オンサイト(本発明の方法が使用される場所)で合成した過酢酸溶液を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、過酢酸を含有する薬剤は、水溶液中で過酸化水素と酢酸との平衡反応によって製造されたものであってよく、このような平衡反応により製造された過酢酸溶液を、過酢酸を含有する薬剤として用いることが好ましい。平衡反応により製造された過酢酸溶液は、過酸化水素と、過酢酸と、酢酸とを含有する。過酢酸溶液中の過酢酸濃度(すなわち、過酢酸を含有する薬剤中の過酢酸濃度)は、公知の測定方法(例えば滴定法)によって測定する事ができる。
なお、オンサイトで過酢酸を含有する薬剤を合成する場合に用いられる酢酸は、酢酸又はその塩であってよく、工業用に市販されている酢酸溶液を用いてもよい。
【0022】
また、本発明の方法に用いられる過酢酸を含有する薬剤は、上述の通り水溶液中で過酸化水素と酢酸との平衡反応によって製造されたものであることが好ましい。
本発明の方法に用いられる過酢酸を含有する薬剤は、薬剤100質量%に対し、過酢酸の含有率が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、上記薬剤100質量%に対し、過酢酸の含有量が40質量%以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の方法に用いられる過酢酸を含有する薬剤が、水溶液中で過酸化水素と酢酸との平衡反応によって製造されたものである場合、上記薬剤における酢酸の濃度は、過酢酸濃度の0.5倍以上25倍以下であることが好ましい。海水が流通する海水利用設備において、酢酸は微生物に消費されスライム増加を引き起こすためである。
上記薬剤における酢酸の濃度は、上記過酢酸濃度の0.5倍以上20倍以下であることがより好ましく、0.5倍以上10倍以下であることがさらに好ましく、0.5倍以上5倍以下であることがよりさらに好ましく、0.5倍以上2倍以下であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の方法に用いられる過酢酸を含有する薬剤が、水溶液中で過酸化水素と酢酸との平衡反応によって製造されたものである場合、上記薬剤における過酸化水素の濃度は、過酢酸濃度の1倍以上5倍以下であることが好ましく、1倍以上3倍以下がより好ましく、1倍以上2倍以下がさらに好ましい。なお、過酢酸を含有する薬剤が、水溶液中で過酸化水素と酢酸との平衡反応によって製造されたものである場合、過酢酸を含有する薬剤中に過酸化水素を含むが、該薬剤の添加は、本発明の方法における過酢酸添加工程にのみ該当し、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程が重複して行われる場合には該当しない。本発明の過酢酸添加工程においては過酢酸を含有する薬剤中に過酸化水素を含む場合があるが、本発明の過酸化水素添加工程においては過酢酸が添加されることはない。そのため、過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とが重複時間を設けて交互に行われる場合とは、過酢酸を含有する薬剤とは異なる過酸化水素が別途海水に添加されることをいう。
【0025】
本発明の方法において、過酢酸を含有する薬剤の添加方法は特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、配管に接続された配管からポンプ等により送液することにより行うことが挙げられる。添加においては、海水や淡水で薬剤を適宜希釈してもよい。
【0026】
過酢酸添加工程では、海水の過酢酸濃度が0.1~10mg/Lになるように過酢酸を含有する薬剤を海水に添加する。海水中の過酢酸濃度が上記範囲となるように過酢酸を含有する薬剤を海水に添加することにより、ヒドロ虫類の海水が流通する海水利用設備への付着を効果的に防止するためである。
本発明の方法において、海水の過酢酸濃度が0.15mg/L以上になるように過酢酸を含有する薬剤を海水に添加することが好ましく、0.2mg/L以上になるように上記薬剤を海水に添加することがより好ましい。また、本発明の方法において、海水の過酢酸濃度が6mg/L以下になるように過酢酸を含有する薬剤を海水に添加することが好ましく、4mg/L以下になるように過酢酸を含有する薬剤を海水に添加することがより好ましく、2mg/L以下になるように上記薬剤を海水に添加することがさらに好ましい。
また、本発明の方法において、上述の海水の過酢酸濃度の下限と上限とは適宜組み合わせて数値範囲を決定することができる。
なお、本発明の方法において、過酢酸を含有する薬剤の添加濃度は、海水の過酢酸濃度が、上記範囲となるように適宜調節されることが好ましい。
【0027】
本発明の方法において、過酢酸添加工程で使用される過酢酸を含有する薬剤は、上述の通り、酢酸を含有し、過酢酸添加工程では、海水の酢酸濃度が10mg/L未満になるように上記薬剤を添加することが好ましい。酢酸は有機酸の一種であり、微生物に利用され得る水溶性の低分子化合物である。そのため、海水の酢酸濃度が10mg/L以上となると、海水中の微生物が酢酸を消費し、増加する可能性が生じる。
本発明の方法において、過酢酸添加工程では、海水の酢酸濃度が6mg/L以下になるように過酢酸を含有する薬剤を海水に添加することがより好ましく、海水の酢酸濃度が5mg/L以下になるように上記薬剤を海水に添加することがより好ましく、2mg/L以下になるように上記薬剤を海水に添加することがさらに好ましい。
【0028】
[過酸化水素]
本発明の方法の過酸化水素添加工程で添加される過酸化水素は、過酸化水素及び過酸化水素発生剤の少なくとも一方であればよい。過酸化水素としては、限定されない一又は複数の実施形態において、過酸化水素水溶液の形態があげられる。過酸化水素発生剤としては、水等の液中で過酸化水素を発生するものが挙げられ、一又は複数の実施形態において、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等の可溶性過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウムや過ホウ酸カリウム等の可溶性過ホウ酸塩等の各種の可溶性ペルオキシ酸塩、尿素/過酸化水素付加物、メタケイ酸塩/過酸化水素付加物、過酸化ナトリウム等が挙げられる。ただし、本発明の方法において、過酸化水素発生源に過酢酸は含まない。
【0029】
過酸化水素添加工程において、過酸化水素の海水への添加方法は特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、配管に接続された配管からポンプ等により送液することにより行うことが挙げられる。添加においては、海水や淡水で過酸化水素を適宜希釈してもよい。
【0030】
過酸化水素添加工程では、海水の過酸化水素濃度が0.1mg/L以上になるように過酸化水素を海水に添加することが好ましい。上述の通り、過酸化水素は、フジツボ類の海水が流通する海水利用設備への付着防止効果に優れており、海水中の過酸化水素濃度が0.1mg/L以上となるように、より好ましくは0.15mg/L以上となるように、過酸化水素を海水に添加することにより、フジツボ類の海水が流通する海水利用設備への付着を充分効果的に防止するためである。一方、海水中の過酸化水素の濃度が2.0mg/Lを超えると、過酸化水素の添加量が増大し、過酸化水素の添加量に応じた海生生物及びスライムの海水が流通する海水利用設備への付着防止効果が期待できず、経済的な面から好ましくない。
なお、本発明の方法において、過酸化水素の添加濃度は、海水の過酸化水素濃度が、上記範囲となるように適宜調節されることが好ましい。
【0031】
本発明の海生生物等の付着防止方法は、過酢酸添加工程における薬剤添加時間が1日当たり0.5~12時間である。過酢酸添加工程における薬剤添加時間が1日当たり12時間以内であることにより、過酢酸を含有する薬剤が、水溶液中で過酸化水素と酢酸との平衡反応によって製造されたものである場合、酢酸の海水への添加時間も12時間以内となり、微生物に消費される酢酸の添加時間を制限することにより、スライム等の増加を防止できるためである。また、本発明の海生生物等の付着防止方法は、過酸化水素添加工程における薬剤添加時間が1日あたり12~24時間であることが好ましい。各添加工程における添加は、連続添加でもよく、間欠添加でもよく特に限定されない。
また、本発明の海生生物の付着防止方法は、過酢酸を含有する薬剤の海水に対する過酢酸濃度に応じて添加時間を調整してもよく、過酢酸を含有する薬剤の添加時間に応じて過酢酸を含有する薬剤の海水に対する過酢酸濃度を調整してもよい。例えば、海水の過酢酸濃度が0.1mg/L以上2mg/L未満となるよう過酢酸を含有する薬剤が海水に添加される場合、該薬剤の添加時間は、0.5時間~12時間であることが好ましい。また、海水の過酢酸濃度が2mg/L以上となるよう過酢酸を含有する薬剤が海水に添加される場合、該薬剤の添加時間は、0.5時間~6時間であることが好ましい。
【0032】
本発明の方法が用いられる海生生物等は、フジツボ類、ヒドロ虫類(クダウミヒドラ類、オベリア類)及びスライムを含む海生生物等が挙げられ、これらの海水が流通する海水利用設備への付着防止のために用いられることが好ましい。
【0033】
本発明における薬剤(過酢酸を含有する薬剤、過酸化水素)の添加場所は、取水路、熱交換器または復水器に付帯する配管中や導水路、熱交換器の入口または復水器の入口のいずれであってもよい。また過酢酸添加工程と過酸化水素添加工程とは、海水が流通する海水利用設備において同じ位置で行われてもよく、異なる位置で行われてもよい。海生生物の付着による障害防止効果の点で、過酢酸添加工程及び過酸化水素添加工程のどちらの工程も取水路、熱交換器の入り口及び復水器の入口の少なくとも一箇所に位置することが好ましい。
【0034】
本発明の付着防止方法において、海水利用設備を流通する海水における過酢酸濃度、酢酸濃度及び/又は過酸化水素濃度の測定場所は特に限定されず、本発明における薬剤の添加場所より下流の海水の水質が測定される場所であればよく、排水路、熱交換器の出口及び復水器の出口の少なくとも一箇所で実施することが好ましい。
【0035】
本発明の海生生物の付着防止方法では、本発明の効果を阻害しない範囲において、当該技術分野で公知の他の添加剤を併用してもよい。
例えば、環境への影響が生じない程度の低濃度のハロゲン系薬剤(例えば、次亜塩素酸、次亜臭素酸、海水電解液、モノクロラミン等の結合塩素や結合臭素、N―クロロスルファマート等の安定化塩素や安定化臭素、二酸化塩素等)、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、カチオン系界面活性剤等の海生生物付着防止剤、鉄系金属腐食防止剤、消泡剤などが挙げられる。
【0036】
本発明の方法において、海水中の各成分濃度(過酢酸濃度、酢酸濃度、過酸化水素濃度、及び、残留塩素濃度等)は、公知の方法により測定することができる。
【0037】
以下、実施例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0038】
[モデル水路を用いた評価試験]
太平洋に面した和歌山県沿岸の某所に、水路試験装置を設け、試験を行った。水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、8系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m3/hで78日間(2020年8月~同年10月)、一過式に通水し、各水路に表1に記載の薬剤を、表1に示す海水中の濃度、および一日当たりの添加時間になるように添加した(参考例1及び2、比較例1~4並びに実施例1及び2)。
また、水中ポンプを用いて揚水した未濾過の海水(pH8)を、7系統に分岐させた水路(試験区)に流量1m3/hで76日間(2021年4月~同年6月)、一過式に通水し、各水路に表1に記載の薬剤を、表1に示す海水中の濃度、および一日当たりの添加時間になるように添加した(比較例5及び実施例3~8)。
【0039】
水路試験装置の各水路内(各試験区内)には、付着生物調査用にアクリル製のカラム(内径64mm×長さ300mm×厚さ2mm、表面積:602.88cm2、半円状に半割しその片方の内面に目合5mm、糸径1mmのビニロン網を張りつけたものを再度円柱状にしたもの)を挿入し、通水終了後にカラムに付着した海生生物(フジツボ類及びヒドロ虫類)を測定し、海生生物の付着防止効果を評価した。
また、各水路内には、スライム汚れ防止効果確認用にチタン管からなるテストチューブ(内径23.4mm、長さ1000mm、肉厚1.0mm)を設置し、通水終了後にテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れ量を測定し、スライムの付着防止効果を評価した。なお、ブランクとして薬剤無添加についても試験した。
得られた結果を、海水中の過酢酸濃度、酢酸濃度及び過酸化水素濃度、並びに、一日当たりの添加時間と共に表1に示す。
【0040】
(過酢酸を含有する薬剤(過酢酸溶液A))
過酢酸溶液Aは、35%過酸化水素60%、酢酸38%、硫酸1%、60%HEDP(1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸)水溶液1%となるよう混合し、室温で2日間放置することで調製した。調製した過酢酸溶液Aの過酸化水素及び総過酸化物濃度を、従来公知の滴定法によって測定し、得られた結果から組成を算出したところ、過酸化水素14.4%、過酢酸14.4%、酢酸26.7%であった。
【0041】
(過酢酸を含有する薬剤(過酢酸溶液B))
過酢酸溶液Bは、35%過酸化水素60%、酢酸32%、水6%、硫酸1%、60%HEDP(1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸)水溶液1%となるよう混合し、室温で2日間放置することで調製した。調製した過酢酸溶液Bの過酸化水素及び総過酸化物濃度を、従来公知の滴定法によって測定し、得られた結果から組成を算出したところ、過酸化水素8.0%、過酢酸6.0%、酢酸32.0%であった。
【0042】
調製した過酢酸溶液A又は過酢酸溶液Bは、付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前に、定量ポンプを用いて、表1に示す海水中の濃度、および一日当たりの添加時間になるように添加した。具体的には、比較例3、4、実施例1~4、8では、1日のうち12時~18時の間(6時間)、過酢酸溶液A又は過酢酸溶液Bを添加した。また、実施例5、7では、1日のうち14時~16時の間(2時間)、過酢酸溶液Aを添加した。また、実施例6では、1日のうち14時~24時の間(10時間)、過酢酸溶液Aを添加した。また、比較例5では、1日のうち14時~翌日4時の間(14時間)、過酢酸溶液Aを添加した。
【0043】
(過酸化水素)
過酸化水素は、市販品の35%過酸化水素溶液を適宜純水で希釈することで海水に添加する薬剤濃度に調整し、同様に付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前に、定量ポンプを用いて、表1に示す海水中の濃度、および一日当たりの添加時間になるように添加した。具体的には、参考例2では1日のうち18時~翌日14時の間(20時間)、比較例4、実施例1~5、7、8では、1日のうち18時~翌日12時(18時間)の間、過酸化水素溶液を添加した。また、実施例6では、1日のうち0時~14時の間(14時間)、過酸化水素を添加した。また、比較例5では、1日のうち4時~14時の間(10時間)、過酸化水素を添加した。
【0044】
(塩素)
次亜塩素酸ナトリウムは、市販品の有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を適宜純水で希釈することで濾過海水に添加する薬剤濃度に調整し、同様に付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前に、定量ポンプを用いて、表1に示す海水中の濃度、および一日当たりの添加時間になるように添加した。具体的には、参考例2では1日のうち15~17時の間(2時間)に次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加した。
【0045】
(脂肪族第四級アンモニウム塩)
脂肪族第四級アンモニウム塩であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドを、過酸化水素と同様に付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前に、定量ポンプを用いて、表1に示す海水中の濃度、および一日当たりの添加時間になるように添加した。具体的には、実施例8では1日のうち18時~翌日12時の間(18時間)、脂肪族第四級アンモニウム塩を添加した。
【0046】
各水路に2種類以上の薬剤を添加する場合は、付着防止効果確認用アクリル製カラムの手前に、それぞれ独立した薬剤添加箇所を設けた。
【0047】
[評価]
(フジツボ類の付着数及びヒドロ虫類の被覆率の計測)
回収したカラムからフジツボ類の付着及びヒドロ虫類の被覆率(%)の計測を行った。フジツボ類の付着は、それぞれカラム目視観察により、直径2mm以上のフジツボ類の付着の有無を確認した。ヒドロ虫類の被覆率(%)は、通水終了後のカラムに5mm目合いのネットを押し当て、被覆面と非被覆面の目数を計数し、カラムの表面積602.88cm2を100%として被覆率を算出した。算出結果に基づき下記のように評価をした。
【0048】
(フジツボ類)
直径2mm以上のフジツボ類の付着が見られなかった場合に「〇」、付着が見られた場合に「×」と評価した。評価が「〇」であれば、フジツボ類の付着防止効果があると判断できる。得られた結果を表1に記載した。
(ヒドロ虫類)
被覆率が5%以下の場合に「〇」、被覆率が5~10%の場合に「△」、被覆率が10%を超える場合に「×」と評価した。評価が「△」であれば、ヒドロ虫類の付着防止効果があると判断でき、評価が「〇」であれば、ヒドロ虫類の付着防止効果が充分にあると判断できる。得られた結果を表1に記載した。
【0049】
(スライムの計測)
試験後、水路から取り外したテストチューブの内面に形成されたスライムを主体とする汚れを掻き取り、100mLのメスシリンダーに回収し、4時間静置後の湿体積を計量した。
ブランクにおいて掻き取ったスライムは主にテストチューブに付着した微生物に由来する。カラムでの付着防止効果の確認と同様に、テストチューブの内面に付着したスライムにもデトリタスが含まれるが、テストチューブのチタン管径はカラム径の約1/3であり、その管内を流通する海水の流速は速く、ムラサキイガイなどのイガイ類やフジツボ類、コケムシ類などの海生付着生物の付着はないことを確認している。
ブランクでのスライムの付着状況から、本試験例では湿体積が5mL以下の場合に「〇」、湿体積が5mLを超え10mL以下の場合に「△」、湿体積が10mLを超える場合に「×」と評価した。評価が「△」であれば、スライムの付着防止効果があると判断でき、評価が「〇」であれば、スライムの付着防止効果が充分にあると判断できる。得られた結果を表1に記載した。
【0050】
【0051】
表1に示すように、薬剤1として過酢酸溶液A又は過酢酸溶液B(いずれも過酢酸を含有する薬剤)を、海水の過酢酸濃度が0.1mg/L以上となるように海水に12時間以下添加し、さらに、薬剤2として過酸化水素を海水に添加した実施例1~8では、フジツボ類、ヒドロ虫類及びスライムの付着を効果的に低減できた。
特に、フジツボ類及びヒドロ虫類の海生生物については、塩素を薬剤1として海水に添加し、さらに、過酸化水素を薬剤2として海水に添加した参考例2と同等のレベルで低減することができ、効果的な海生生物付着防止効果を確認した。
一方、過酸化水素のみが添加された比較例1及び2は、ヒドロ虫類の付着防止効果が充分ではなく、また、過酢酸溶液Aのみが添加された比較例3は、フジツボ類の付着防止効果が充分ではなかった。また、薬剤1として過酢酸溶液Aを海水の過酢酸濃度が0.05mg/Lとなるように海水に添加した比較例4は、過酸化水素との併用であっても、ヒドロ虫類の付着防止効果が充分ではなかった。
また、比較例5を確認すると、薬剤1として過酢酸溶液Aを、海水の過酢酸濃度が0.1mg/L以上となるように海水に添加し、薬剤2として過酸化水素を海水に添加しているが、過酢酸溶液Aの添加時間が14時間であり、12時間を超えていたため、スライムが付着していた。ここで、比較例5と実施例6とを比べると、過酢酸溶液A中の過酢酸濃度は2.5mg/Lと同じであるものの、過酢酸溶液Aの添加時間が異なる。すなわち過酢酸溶液の添加時間が12時間を超えると過酢酸溶液A中の酢酸の影響によりスライムが増加することを確認した。
【要約】
本発明は、ハロゲン系薬剤を使用することなく、海水が流通する海水利用設備への優れた海生生物及びスライムの付着防止効果を発揮し得る海生生物等の付着防止方法を提供することを目的とする。
本発明は、海水が流通する海水利用設備への海生生物及びスライムの付着防止方法であって、過酢酸を含有する薬剤を上記海水に添加する過酢酸添加工程と、過酸化水素を上記海水に添加する過酸化水素添加工程とを含み、上記過酢酸添加工程では、上記海水の過酢酸濃度が0.1~10mg/Lになるように薬剤を上記海水に添加し、上記過酢酸添加工程における薬剤添加時間が1日当たり0.5~12時間であることを特徴とする海生生物等の付着防止方法に関する。