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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】石炭灰減容化方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/50 20220101AFI20220913BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20220913BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20220913BHJP
【FI】
B09B3/50 ZAB
B09B3/20
B09B101:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018224831
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020082035
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594127330
【氏名又は名称】中国高圧コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 等
(72)【発明者】
【氏名】及川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】佃 勝二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158888(JP,A)
【文献】特開2006-117478(JP,A)
【文献】特開2006-347838(JP,A)
【文献】特開平11-128881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰のイグロス量を異なる石炭灰を混合させることによって所定の値に調整するイグロス量調整工程と、
前記石炭灰に混合されるNa源のNa量を石炭灰重量を基準として所定の重量%に調整するNa量調整工程と、
前記イグロス量調整工程によってイグロス量が調整された石炭灰及び前記Na量調整工程によって調整された量のNa源を混合する混合工程と、
混合工程によって混合された混合物を所定の温度まで上昇させるために、前記混合物に所定の周波数のマイクロ波を所定の時間照射して燒結させる加熱工程と、
該加熱工程によって加熱された燒結物を所定の冷却方法で冷却する冷却工程と、によって構成されることを特徴とする石炭灰減容化方法。
【請求項2】
前記イグロス量の所定の値は、石炭灰重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の石炭灰減容化方法。
【請求項3】
石炭灰のイグロス量の調整については、所定の発電所毎に生じるイグロス量(強熱減量)の異なる石炭灰を混合させることによって石炭灰のイグロス量を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の石炭灰減容化方法。
【請求項4】
前記Na量は、石炭灰重量を基準として0.5~2.33重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の石炭灰減容化方法。
【請求項5】
前記Na源としては、水酸化ナトリウム溶液若しくは塩化ナトリウム溶液であること、若しくは塩化ナトリウム溶液の代わりとして海水を用いることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の石炭灰減容化方法。
【請求項6】
前記加熱工程で照射されるマイクロ波の周波数は、2.45GHz±0.5GHzであることが望ましく、混合物に照射される成分が電界成分であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の石炭灰減容化方法。
【請求項7】
前記冷却工程の冷却方法は、最終生成物の用途によって、燒結形状を保持した状態の最終生成物としたい場合には徐冷すること、又は、クリンカ化した最終生成物としたい場合には急冷することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の石炭灰減容化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰を有効活用するための石炭灰減容化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2006-117478号公報)は、石炭灰硬化体の養生工程を常圧水蒸気養生といった製法を用いて、反応温度及び反応時間を大幅に低減することを目的としたもので、石炭灰、石灰質原料、補強繊維、水、およびケイ酸質原料と石灰質原料との混合物固形分100重量部に対して、固形分8重両部以下の水酸化ナトリウムを含有する混合材料を成形した後、所定の温度で前乾燥し、常圧水蒸気養生またはマイクロ波-水熱養生によって固化させ、後乾燥する石炭灰硬化体及びその省エネルギー製造方法を開示する。また、石炭灰と石灰質原料との混合物に水酸化ナトリウムを添加したことにより、養生工程での硬化が促進し、機械的強度が向上すると共に、乾燥工程における変形がなく、寸法安定性の優れた高強度成形体が得られることが開示され、さらに水酸化ナトリウム添加量は8重量部以下が望ましいことも開示される。さらにまた、前乾燥及び後乾燥にマイクロ波乾燥を用いることが開示される。
【0003】
特許文献2(特開2018-58027号公報)は、石炭灰由来のセシウム、ストロンチウム吸着材であって、前記吸着材がゼオライト前駆体を主成分として含有する吸着材を提供するもので、非晶質のアルミナ珪酸塩とゼオライト化したアルミナ珪酸塩とを含む吸着材の製造方法を開示する。この特許文献2において、前記製造方法は、石炭灰にアルカリ水溶液を添加し、70~120℃で加熱してゼオライト前駆体を得る工程と、ゼオライト前駆体を含む水溶液からゼオライト前駆体を分離する工程とを含むもので、加熱手段がマイクロ波であるが開示されている。
【0004】
特許文献3(特開平9-30857号公報)は、フライアッシュ、シンダーアッシュ、ボトムアッシュなど微粉炭燃焼石炭火力ボイラーより発生した石炭灰を成形後、焼結して形成された焼結体を開示する。この特許文献3では、未然カーボンを含む石炭灰について、従来のブレーン比表面積や強熱減量値などでは焼結体減量としての物性を十分に把握できないことから、未然カーボン量を、BET比表面積を指標として把握し、これをフルイ上残分量で表される粒度と共に管理指標とすることにより燒結体減量として良質な石炭灰を選別し、高強度でヒビ割れのない燒結体を得ることが開示される。
【0005】
特許文献4(特開昭56-54267号公報)は、石炭火力発電所等よりえられる石炭灰(フライアッシュ、クリンカーを含む)に、燐酸、重合燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、及びそれらの塩類よりなる群から選ばれた少なくとも1種を混合して成る硬化性組成物を開示する。この特許文献4では、燐酸を石炭灰に混練することによって、石炭灰が硬化することが開示され、さらに希薄な燐酸を用いれば硬化時間が長くなって強度が低くなる傾向があり、濃厚な燐酸を用いれば硬化時間が短くなって強度が大となることが開示される。また、実施例では、イグロス2.78%の石炭灰を使用することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-117478号公報
【文献】特開2018-58027号公報
【文献】特開平9-30857号公報
【文献】特開昭56-54267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、石炭灰のリサイクルの観点から、石炭灰の硬化・減量化が重要な課題となっている。石炭火力発電所では、粉砕された石炭粉がボイラーで燃焼され、その熱エネルギーが電気に変換されるが、石炭灰の粒子はこの燃焼によって溶融して高温の燃焼ガス中に浮遊し、ボイラーの出口に向かって温度が下がるにつれて球状になり、集塵機に捕捉される。これによって生じた石炭灰の主成分は、「シリカ」と「アルミナ」であり、これらを利用して、セメント原料や、コンクリート混和材、充填材、シールド材、土壌・地盤改良材等の原料として使用され、残りは埋立処分されている。しかしながら、現在では、コストと環境保護の観点から、新しい処分場の確保は困難になってきており、埋立地の使用を継続する場合には、プラントによって生産される石炭灰の量を減少させる必要がある。さらに、石炭灰の焼結および硬化は、新しい構造材料の開発をもたらすことも期待されている。
【0008】
また、石炭灰及び燒結体には、微量ではあるが、六価クロム、ヒ素、セレン、フッ素、ホウ素などの重金属類が含まれており、最終製品からのこれら重金属類の溶出が基準値以下でなければならない。
【0009】
このため、本発明は、効率的な石炭灰の減容化を達成し、さらに重金属類の溶出を基準値以下とすることのできる石炭灰の減容化方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明に係る石炭灰減容化方法は、
石炭灰のイグロス量を異なる石炭灰を混合させることによって所定の値に調整するイグロス量調整工程と、
前記石炭灰に混合されるNa源のNa量を石炭灰重量を基準として所定の重量%に調整するNa量調整工程と、
前記イグロス量調整工程によってイグロス量が調整された石炭灰及び前記Na量調整工程によって調整された量のNa源を混合する混合工程と、
混合工程によって混合された混合物を所定の温度まで上昇させるために、前記混合物に所定の周波数のマイクロ波を所定の時間照射して燒結させる加熱工程と、
該加熱工程によって加熱された燒結物を所定の冷却方法で冷却する冷却工程と、によって構成される。
【0011】
前記イグロス量の所定の値は、石炭灰重量を基準として10重量%以下、好ましくは4.4~7.2重量%の範囲内、より好ましくは6重量%であることが望ましい。石炭灰のイグロス量の調整については、所定の発電所毎に生じるイグロス量(強熱減量)の異なる石炭灰を混合させることによって石炭灰のイグロス量を調整することが可能である。例えば、新小野田発電所で生じる石炭灰(新小野田灰)のイグロス量は3%程度であるのに対して、水島発電所で生じる石炭灰(水島灰)のイグロス量は17%程度であることから、新小野田灰の配合を多くするとイグロス量は低下し、水島灰の配合を多くするとイグロス量は上昇する。
【0012】
前記Na量は、石炭灰重量を基準として0.5~2.33重量%の範囲内、好ましくは1.0~1.5重量%の範囲内、より好ましくは1.0重量%であることが望ましい。また、Na源としては、水酸化ナトリウム溶液若しくは塩化ナトリウム溶液であることが望ましく、さらに塩化ナトリウム溶液の代わりとして海水を用いることが望ましい。
【0013】
前記加熱工程で照射されるマイクロ波の周波数は、2.45GHz±0.5GHzであることが望ましく、混合物に照射される成分が電界成分であることが望ましい。また、この加熱工程では、マイクロ波を照射することにより、800℃以上、特に1200℃以上の温度まで加熱することが望ましい。また、所定の温度までの到達時間は、前述したNa量によって変化する。
【0014】
前記冷却工程の冷却方法は、最終生成物の用途によって異なるもので、燒結形状を保持した状態の最終生成物としたい場合には徐冷することが望ましく、クリンカ化した最終生成物としたい場合には急冷することが望ましい。さらに、急冷については、大気急冷と水中急冷とがある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の割合のイグロスを有する石炭灰に、さらに所定のNa量を有するNa源を混合したことにより、短時間で所定の温度まで加熱することができ、溶融前後の密度比から、最大50%程度まで体積を減ずることが可能となるものである。また、消滅・溶融させた場合の重金属類の溶出を基準値以内にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る減容化方法の概略を示したブロック図である。
図2】イグロス量が異なる組成に関するμ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図3】Na量が異なる石炭灰に関するμ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図4】イグロス量10.0%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図5】イグロス量7.7%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図6】イグロス量6.5%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図7】イグロス量5.8%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図8】イグロス量5.0%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図9】イグロス量4.4%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図10】イグロス量4.2%の石炭灰において、NaOHの量を変化させた場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図11】イグロス量5.8%の場合のNaOHの濃度と昇温時間の関係を示したグラフである。
図12】イグロス量5.8%の場合の食塩、海水、水道水の場合のマイクロ波照射時間と表面温度の関係を示した特性線図である。
図13】石炭灰及び燒結体の重金属類の溶出試験結果を示した表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例
【0018】
本願発明に係る減容化方法は、図1で示すように、石炭灰のイグロス量を所定の値に調整するイグロス量調整工程100と、前記石炭灰に混合されるNa源のNa量を所定の値に調整するNa量調整工程200と、前記イグロス量調整工程によってイグロス量が調整された石炭灰及び前記Na量調整工程によって調整された量のNa源を混合する混合工程300と、混合工程300によって混合された混合物を所定の温度まで上昇させるために、前記混合物に所定の周波数のマイクロ波を所定の時間照射して燒結させる加熱工程400と、該加熱工程400によって加熱された燒結物を所定の冷却方法で冷却する冷却工程500とによって構成される。
【0019】
前記イグロス量調整工程100におけるイグロス量の調整は、例えばイグロス量(強熱減量)が3%前後と低い新小野田発電所から生じる石炭灰(新小野田灰)と、イグロス量が17%前後と高い水島発電所から生じる石炭灰(水島灰)とを混合することによって可能である。下記する表1は、イグロス量の調整を示すもので、Aは新小野田灰であり、Bは水島灰である。
【0020】
【表1】
【0021】
石炭灰に配合されるべき最適なイグロス量を決定するために、表1に記載された各試料1乃至7及び新小野田灰のみを容器(陶製)に投入し、断熱容器で囲った状態で、電子レンジにてマイクロ波(μ波)を照射し加熱(500W)を行った。μ波照射開始後、電子レンジから適宜取り出し、断熱容器の上部に設けられた穴から照射温度計にて試料の表面温度を計測した。目標温度は1100℃とした。加熱終了後、試料を断熱材で囲った状態で室内にて冷却し、燒結・溶融状況(試料の噴上げ、燒結、溶融)を確認した。この結果は、図2に示すものである。この図2において、試料1(点線+)、試料2(点線△)、試料3(点線◇)、試料4(点線□)、試料5(点線〇)、試料6(点線×)、試料7(点線■)、新小野田灰(実線×)の実験結果が特性線として示される。また、それぞれに記載されるラベルの凡例として(試料の噴上げ、燒結、溶融)が示される。噴き上げとしては、多、中、少、無が実験結果から選択され、燒結・溶融としては、〇:全体、□:大部分、△:中~小部分、×:無しが実験結果から選択される。
【0022】
この図2に示される実験結果として、イグロス量が低下するにつれて、例えば試料1(イグロス量10%)から低下するにつれて、昇温温度が小さくなる傾向が概ね認められた。また、μ波の照射時間と温度昇温時間、及び噴上げ、燒結・溶融の実験結果から、試料2(イグロス量7.7%)~試料6(イグロス量4.4%)までが良好な結果(噴上げ:無し、燒結:大部分(□))を示すことが判明し、さらに試料4(イグロス量5.8%)の実験結果が(噴上げ:無し、燒結:大部分(□)、溶融:大部分(□))であり、最も適していることが判明した。
【0023】
これにより、イグロス量調整工程100では、イグロス量が大きい石炭灰(例えば水島灰)とイグロス量が低い石炭灰(新小野田灰)と混合してイグロス量10%以下の石炭灰混合物(混合灰)(試料1)を形成する。好ましくは、イグロス量が大きい石炭灰(例えば水島灰)とイグロス量が低い石炭灰(新小野田灰)と混合してイグロス量4.4~7.7%の間のイグロス量を有する石炭灰混合物(混合灰)を形成する(試料2、3,5,6,7)。さらに好ましくは、イグロス量が大きい石炭灰(例えば水島灰)とイグロス量が低い石炭灰(新小野田灰)と混合してイグロス量5.8%を有する石炭灰混合物(混合灰)を形成する(試料4)。
【0024】
前記イグロス量調整工程100で取得された混合灰に混合されるNa量について、図3に示すように、イグロス量5.8%の混合灰へのNaOHの添加量を10%~1%まで変化させてマイクロ波で昇温させた結果、添加量10%~3%までは昇温し易いことが判明したが、3%以上添加するとNa分の溶融とイグロスのガスの噴出の関係から噴き上がり減少が生じる場合があった。
【0025】
さらに、図4乃至図10では、異なるイグロス量を含む石炭灰混合物にNa添加量を変化させた実験結果が示される。これらの実験では、Na添加物として水酸化ナトリウム(NaOH)を使用した。それぞれの実験結果として、図4に示す実験結果では、イグロス量が10%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が20分以下であった。図5に示す実験結果では、イグロス量が7.7%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が20分以下であった。図6に示す実験結果では、イグロス量が6.5%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が20分以下であった。図7に示す実験結果では、イグロス量が5.8%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が30分以下であった。図8に示す実験結果では、イグロス量が5.0%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が40分以下であった。図9に示す実験結果では、イグロス量が4.4%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が40分以下であった。図10に示す実験結果では、イグロス量が4.2%、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が45分以下であった。また、新小野田灰のみ(イグロス量3%)の場合、NaOHが1%~3%のときは、噴上げがなく、昇温時間(1200℃到達時間)が120分以下であった。
【0026】
以上のことから、最適条件としては、NaOH1~3%、イグロス量は、5.8%~10%の場合に、昇温時間が短く噴上げがなかったが、大部分燒結(□)となっている場合は、NaOHが1~3%、イグロス量が5.8%=約6%であることから、これらの条件が最適条件であると推定可能である。さらに、図11に示すように、イグロス量(igloss)5.8%の場合のNaOHの濃度と昇温時間の関係を求める実験結果から、NaOH量が2.33%の場合が最も昇温時間が短いことが判明した。
【0027】
さらに、図12で示すように、Na量添加物として、前述した水酸化ナトリウムに変えて塩化ナトリウム(NaCl)を使用することも可能である。イグロス量5.8%の混合灰に対して、食塩のナトリウム量を1.725%Naとした場合及び2.875%Naとした場合には、噴上げがなく1200℃到達まで30分であった。また、塩化ナトリウムの代わりに海水を使用することも可能である。海水の場合には、Na量を1.339%Naとして実験したが、噴上げが多く検出されたが、昇温時間は約20分と早かった。
【0028】
上述したイグロス量調整工程100によって所定のイグロス量に設定された石炭灰混合物は、混合工程300において、所定のNa量に設定されたNa源、例えば水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム若しくは海水等と混合される。
【0029】
前記混合工程300において所定のNa量が混合された石炭灰混合物は、加熱工程400において加熱される。この加熱工程で照射されるマイクロ波の周波数は、2.45GHz±0.5GHzであることが望ましく、混合物に照射される成分が電界成分であることが望ましい。これは、マイクロ波より石炭灰混合物が受け取るエネルギーは、(複素誘電率)×(マイクロ波電界強度の2乗)と(複素透磁率)×(マイクロ波磁界強度の2乗)の和に比例する。共振摂動法の結果より、石炭灰混合物のマイクロ波加熱は、複素誘電率と電界による寄与が大きいことが明らかになった。そのため、マイクロ波電界を照射することで、効率的な加熱が達成できると推察される。これによって、加熱工程400では、上述した条件を有するマイクロ波を例えば1200℃まで昇温させるために照射する。
【0030】
加熱工程400において加熱された石炭灰混合物は燒結され、その後冷却工程500で冷却される。この冷却工程500の冷却方法は、最終生成物の用途によって異なるもので、燒結形状を保持した状態の最終生成物としたい場合には徐冷する。また、砂代替材料等としてクリンカ化した最終生成物としたい場合には急冷する。これによって、要望された最終生成物を取得することが可能となる。
【0031】
この最終生成物についての重金属類の溶出試験の結果が、図13に示される。この溶出試験において、検液の作製方法は環告第46号付表によるもので、混合灰A(新小野田灰:水島灰=4;1)の場合と、混合灰B(三隅灰:水島灰=4:1)の場合で、Na源として水酸化ナトリウム1.5%の場合と1.0%の場合でそれぞれ比較したものである。この結果、水酸化ナトリウムを添加した場合には、全ての重金属類において溶出基準をクリアしたことが証明された。
【0032】
このように、本発明の減容化方法によれば、所定の割合のイグロスを有する石炭灰に、さらに所定のNa量を有するNa源を混合したことにより、短時間で所定の温度まで加熱することができ、溶融前後の密度比から、最大50%程度まで体積を減ずることが可能となる。また、消滅・溶融させた場合の重金属類の溶出を基準値以内にすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
100 イグロス量調整工程
200 Na量調整工程
300 混合工程
400 加熱工程
500 冷却工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13