(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】多缶設置ボイラ
(51)【国際特許分類】
F22B 35/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
F22B35/00 E
(21)【出願番号】P 2019008116
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 享一
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】松井 佳征
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117840(JP,A)
【文献】特開平03-036404(JP,A)
【文献】特開2014-153010(JP,A)
【文献】特開2008-224127(JP,A)
【文献】米国特許第05732664(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高燃焼・低燃焼・燃焼待機のように段階的な燃焼制御を行うボイラを複数台設置しており、ボイラが供給している蒸気の圧力値に基づいて各ボイラの燃焼状態を制御する台数制御装置を持った多缶設置ボイラであって、台数制御装置は、燃焼量増加時に低燃焼の燃焼指令を出力しているボイラ数が所定台数以上であった場合は低燃焼のボイラに対して燃焼量増加の燃焼指令を出力し、低燃焼の燃焼指令を出力しているボイラ数が所定台数未満であって燃焼台数の増加が可能な場合には燃焼待機のボイラに対して低燃焼の燃焼指令を出力するようにしており、前記の所定台数は変更可能であって、所定台数毎に台数増加パターンを複数設定しておいて、台数制御を行う場合には複数ある台数増加パターンから使用する台数増加パターンを選択して行うようにしている多缶設置ボイラにおいて、台数増加パターンの選択は、多缶設置ボイラでの蒸気使用量を算出して蒸気使用量の累積時間を算出しておき、台数増加パターンの設定値ごとに、燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を算出し、計測しておいた蒸気使用量に前記の燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を当てはめ、蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合に基づいて台数増加パターンの設定台数を決定することを特徴とする多缶設置ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の多缶設置ボイラにおいて、算出した蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合が基準値以上となる組合せを抽出し、抽出された組合せのうち、最も台数増加パターン設定台数が大きなものを台数増加パターンの設定台数とすることを特徴とする多缶設置ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高燃焼・低燃焼・燃焼待機のように燃焼状態を段階的に調節するボイラを複数台設置しておき、ボイラが供給している蒸気の圧力値に基づいて各ボイラの燃焼状態を制御する台数制御を行っている多缶設置ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2015-117840号公報にあるように、複数台のボイラと、ボイラの燃焼台数を制御する台数制御装置からなる多缶設置ボイラが広く使用されている。台数制御装置は、ボイラが供給している蒸気の圧力値を圧力調節範囲内に維持するように、ボイラ全体での燃焼量を制御するものであり、蒸気圧力値が低くなるとボイラ全体での燃焼量を大きくして蒸気供給量を増加することで蒸気圧力値を高め、蒸気圧力値が高くなるとボイラ全体での燃焼量を小さくして蒸気供給量を減少することで蒸気圧力値が高くなりすぎにないようにする。そして台数制御装置では、ボイラ全体での燃焼量から個々のボイラでの燃焼状態を決定し、各ボイラに対して決定した燃焼状態とする燃焼指令を出力する。
【0003】
特開2015-117840号公報に記載しているボイラでの燃焼量の調節は、各ボイラでは、高燃焼・中燃焼・低燃焼・燃焼待機の四位置燃焼制御、あるいは高燃焼・低燃焼・燃焼待機の三位置燃焼制御のように段階的な制御を行うようにしており、台数制御装置は各ボイラに対してどの燃焼状態とするかを決定してその燃焼指令を出力することで行っている。その際、台数制御装置は、低燃焼で維持するボイラの台数を設定しておくようにしておき、ボイラ全体での燃焼量増加を行う場合は、現在の低燃焼ボイラ台数が設定台数未満である場合には、燃焼台数を増加させて低燃焼ボイラの台数を確保すること優先し、低燃焼ボイラの台数が設定台数以上あれば低燃焼ボイラを中燃焼に変更することで燃焼量を増加することを優先するようにしている。
【0004】
図10を用いて具体的に説明する。
図10は、高燃焼・中燃焼・低燃焼・燃焼待機の4位置で燃焼制御するボイラ3台で台数制御を行う場合の台数制御パターンを示している。図ではボイラの燃焼状態は、高燃焼の場合を「H」、中燃焼の場合を「M」、低燃焼の場合を「L」、燃焼待機の場合を「-」で示している。図では台数増加パターン1台、2台、3台のそれぞれでの燃焼パターンを示している。
【0005】
ボイラの燃焼量は、全てのボイラで燃焼待機となっている「―――」の状態から、全てのボイラで高燃焼となる「HHH」まであり、ここでは10段階の燃焼パターンを設定している。この燃焼量は、ボイラから供給している蒸気の圧力値に対応させて設定しており、蒸気圧力値が高いほどボイラの燃焼量は小さくなるようにし、蒸気圧力値が低いほどボイラの燃焼量を大きくしていく。なお、実際の台数制御パターンでは燃焼量を減少する場合も設定する。しかし、燃焼量減少時の台数制御パターンを記載すると図は複雑となるため、ここでは全ボイラを燃焼待機としている状態からから全ボイラを高燃焼としている状態まで一方向へ変化していった場合のみをぬき出して記載している。
【0006】
図10は、低燃焼の燃焼指令を出力しているボイラ数が台数増加パターンの設定値-1台以上の場合には、低燃焼ボイラの1台を中燃焼とし、低燃焼の燃焼指令を出力しているボイラ数が台数増加パターンの設定値-1台未満の場合は、燃焼指令を出力するボイラを1台ずつ増加するものである。3つの台数制御パターンはこの低燃焼の設定台数が異なるものである。この設定値は、蒸気使用側での蒸気使用量の変動状況に基づき設定する。
【0007】
蒸気使用量の変動が急である場合、ボイラでは蒸気使用量の変化にあわせて短時間で蒸気供給量を増加することが必要となる。ボイラで燃焼状態の変更を行う場合、燃焼状態を減少する方向の変更は、燃料及び燃焼用空気の供給量を減少又は停止するだけであるために短時間で行える。そして燃焼状態を増加する方向の変更でも、低燃焼から中燃焼への変更や中燃焼から高燃焼への変更の場合には、燃料及び燃焼用空気の供給量を増加するだけであるために短時間で変更することができる。しかし、燃焼を停止している状態から燃焼を開始する場合は、炉内換気などの準備工程を行う必要がある。さらにボイラが冷えている場合、ボイラ水が蒸発温度に上昇するまでは蒸気を供給することができない。そのため、燃焼開始の燃焼指令出力から実際に蒸気供給を開始するまでにはタイムラグが発生する。
【0008】
そこで、蒸気使用量が急激に増加することのある場合には、燃焼状態の増加によって蒸気供給量をすぐに増加することのできるボイラを多く確保するようにしておき、蒸気使用量の急増に備えることを行っている。つまり、低燃焼のボイラを多く確保しておくと、低燃焼から中燃焼への増加及び中燃焼から高燃焼への増加はそれぞれ短時間で行えるため、蒸気使用量が急激に増加した場合でもすぐに蒸気供給量を増加することができる。
【0009】
燃焼状態の増加によって蒸気供給量をすぐに増加することができるボイラの台数は、蒸気使用量の変化が急激(急負荷)であるほど多く必要となるため、急負荷時の台数制御パターンでは低燃焼ボイラを多く確保するように設定する。逆に、蒸気使用量の変化が緩やか(緩負荷)であれば低燃焼ボイラの台数は少なくて良いため、緩負荷時の台数制御パターンでは低燃焼ボイラ台数は少なくなるように設定する。
図10で記載している3つの台数制御パターンの中では、台数増加パターン1台の場合が最も蒸気使用量の変化が緩やかな場合に設定するもの、台数増加パターン3台の場合が最も蒸気使用量の変化が急な場合に設定するもの、その中間である台数増加パターン2台は、蒸気使用量の変化がその中間の場合に設定するものである。
【0010】
台数増加パターンの設定台数が1台の場合での台数制御パターンを図に沿って説明する。台数増加パターンの設定台数が1台の場合、燃焼を行っているボイラで燃焼量を増加することができるのであれば、燃焼を行っているボイラでの燃焼量増加を優先する。そのため燃焼台数の増加は最小限となる。全てのボイラが燃焼を停止している「―――」から燃焼量を増加していく場合、まず1台目のボイラを燃焼待機から低燃焼に変更することで「L――」となる。次の燃焼量を増加する場合、燃焼台数は変更せずに燃焼量の増加を行う。1台目のボイラを低燃焼から中燃焼に変更することでボイラの燃焼状態は「M――」となる。次に燃焼量を増加する場合も、燃焼量を増加できる中燃焼のボイラがあるため、再び1台目ボイラの燃焼状態を増加する。1台目ボイラの燃焼状態を中燃焼から高燃焼に変更するため、燃焼状態は「H――」となる。次に燃焼量を増加する場合は、燃焼量を増加できるボイラがないため、今度は2台目のボイラで燃焼を開始させる。2台目のボイラを低燃焼にすると、燃焼状態は「HL―」となる。
【0011】
その後も同様であり、燃焼量を増加できるボイラがある状態で燃焼状態の増加を行う場合は、燃焼台数を増加せずに燃焼を行っているボイラで燃焼状態を一段階高くし、燃焼量を増加できるボイラがない場合は、燃焼台数を増加することで燃焼量を増加し、最終的には燃焼状態が「HHH」である最大の燃焼量となるまで行う。
【0012】
次に台数増加パターンの設定台数が2台の場合での台数制御パターンを図に沿って説明する。台数増加パターンの設定台数が2台の場合、低燃焼ボイラが1台ある場合には低燃焼の1台を中燃焼へ増加、低燃焼ボイラが1台もない場合には燃焼台数を増加して低燃焼ボイラを確保するようにしている。全てのボイラが燃焼を停止している「―――」から燃焼量を増加していく場合、まず1台目のボイラを燃焼待機から低燃焼に変更することで「L――」となる。次の燃焼量を増加する場合、低燃焼ボイラが1台あるため、1台目の低燃焼ボイラを中燃焼として「M――」とする。次に燃焼量を増加する場合には、この時点で低燃焼ボイラの台数は0台であるため、燃焼台数の増加を行い、低燃焼のボイラを確保する。つまり燃焼待機としている2台目のボイラで燃焼を開始し、低燃焼とすることで燃焼量を増加して「ML-」とする。
【0013】
その後も同様であり、次の燃焼量増加は、低燃焼が存在するため、今度は燃焼台数を増加せずに2台目ボイラの燃焼状態を低燃焼から中燃焼に変更、その次は燃焼台数を増加する。燃焼台数を増加することができなくなると、中燃焼から高燃焼への変更で燃焼量を増加し、最終的には燃焼状態が「HHH」である最大の燃焼量となるまで行う。
【0014】
台数増加パターンの設定台数が3台の場合は、低燃焼ボイラが2台になるまで低燃焼を確保していくものである。ただし燃焼台数が1台でその燃焼状態が低燃焼の場合は、例外的に1台目の低燃焼ボイラを中燃焼にすることを優先している。全てのボイラが燃焼を停止している「―――」から燃焼量を増加していく場合、まず1台目のボイラを燃焼待機から低燃焼に変更することで「L――」となる。次の燃焼量を増加する場合、1台目の低燃焼ボイラを中燃焼として「M――」とする。次に燃焼量を増加する場合には、この時点で低燃焼ボイラの台数は0台であるため、燃焼台数の増加を行い、「ML-」とする。次の燃焼量増加でも燃焼台数を増加して「MLL」とする。その後は燃焼台数の増加はできないため、燃焼台数は同じで順次ボイラの燃焼量を増加し、最終的には燃焼状態が「HHH」である最大の燃焼量となるまで行う。
【0015】
以上のように、多缶設置で燃焼量を増加していく場合には複数の台数増加パターンを考えることができる。蒸気使用量の急激な増加がある場合には、早い段階で燃焼台数が多くなる設定としておくことで、大きな変動にも対応することができる。しかし、燃焼しているボイラの台数が多くなり、低燃焼のボイラしかない状態で燃焼量を減少することになると、燃焼を行っているボイラの燃焼を停止することになる。ボイラでは燃焼の開始時と停止時に炉内を換気する必要があるため、燃焼の発停が多くなると熱の損失が増加して効率は低下する。逆に、蒸気使用量が比較的安定している場合には、燃焼台数が少ない設定にしておくことで、ボイラの発停を抑制することができる。しかし、燃焼している(低燃焼)のボイラ台数が少ないため、急激な蒸気負荷変動があった場合には、負荷追従に遅れが発生し、蒸気圧力の低下を招くことになる。そのため、複数ある台数増加パターンから負荷追従性と効率を両立することのできる台数増加パターンを選定することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、燃焼状態を段階的に調節することができるようにしたボイラを複数台設置しており、ボイラから供給する蒸気の圧力値を調節範囲内に維持するように各ボイラの燃焼状態を制御する多缶設置ボイラにおいて、ボイラの効率と負荷追従性のバランスがとれた台数増加パターンを設定することができるようにした多缶設置ボイラを提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明は、高燃焼・低燃焼・燃焼待機を含んだ段階的な燃焼制御を行うボイラを複数台設置しており、ボイラが供給している蒸気の圧力値に基づいて各ボイラの燃焼状態を制御する台数制御装置を持った多缶設置ボイラであって、台数制御装置は、燃焼量増加時に低燃焼の燃焼指令を出力しているボイラ数が所定台数以上であった場合は低燃焼のボイラに対して燃焼量増加の燃焼指令を出力し、低燃焼の燃焼指令を出力しているボイラ数が所定台数未満であって燃焼台数の増加が可能な場合には燃焼待機のボイラに対して低燃焼の燃焼指令を出力するようにしており、前記の所定台数は変更可能であって、所定台数毎に台数増加パターンを複数設定しておいて、台数制御を行う場合には複数ある台数増加パターンから使用する台数増加パターンを選択して行うようにしている多缶設置ボイラにおいて、台数増加パターンの選択は、多缶設置ボイラでの蒸気使用量を算出して蒸気使用量の累積時間を算出しておき、台数増加パターンの設定値ごとに、燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を算出し、計測しておいた蒸気使用量に燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を当てはめ、蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合に基づいて台数増加パターンの設定台数を決定することを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記の多缶設置ボイラにおいて、算出した蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合が基準値以上となる組合せを抽出し、抽出された組合せのうち、最も台数増加パターン設定台数が大きなものを台数増加パターンの設定台数とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明を実施することで、ボイラの効率と負荷追従性を両立させた台数制御を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例での多缶設置ボイラのフロー図
【
図2】本発明の一実施例での台数増加パターン7台とした場合の燃焼状態と蒸気供給量と蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を示した説明図
【
図3】本発明の一実施例での台数増加パターン6台とした場合の燃焼状態と蒸気供給量と蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を示した説明図
【
図4】本発明の一実施例での台数増加パターン5台とした場合の燃焼状態と蒸気供給量と蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を示した説明図
【
図5】本発明の一実施例での台数増加パターン4台とした場合の燃焼状態と蒸気供給量と蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を示した説明図
【
図6】本発明の一実施例での台数増加パターン7台とした場合の燃焼台数毎の蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を説明する説明図
【
図7】本発明の一実施例での台数増加パターン6台とした場合の燃焼台数毎の蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を説明する説明図
【
図8】本発明の一実施例での台数増加パターン5台とした場合の燃焼台数毎の蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を説明する説明図
【
図9】本発明の一実施例での台数増加パターン4台とした場合の燃焼台数毎の蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を説明する説明図
【
図10】台数制御での台数増加パターン1台時から3台時での台数制御パターン説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例での多缶設置ボイラのフロー図、
図2から
図5は本発明の一実施例での台数増加パターンごとの燃焼状態と蒸気供給量と蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を示した説明図、
図6から
図9は本発明の一実施例での台数増加パターン毎での燃焼台数毎の蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を説明する説明図である。
【0023】
図1では1号缶から7号缶の7台のボイラ1を並列に設置しており、各ボイラ1で発生させた蒸気を集合させるスチームヘッダ4を設けている。各ボイラ1とスチームヘッダ4の間を蒸気配管5で結んでおき、各ボイラ1で発生させた蒸気はスチームヘッダ4に集合させた後で蒸気使用部(図示せず)へ送る。スチームヘッダ4には、蒸気圧力値を検出する圧力検出装置6を設け、圧力検出装置6で検出した蒸気圧力値は台数制御装置3へ送る。台数制御装置3には、蒸気圧力値に応じてボイラの燃焼台数を定めている台数制御パターンを設定しておき、台数制御装置3が各ボイラにおける燃焼の有無及び燃焼状態を決定し、各ボイラへ燃焼指令を出力する。各ボイラには、それぞれに運転制御装置2を設けており、運転制御装置2は台数制御装置3からの燃焼指令を受けてボイラの燃焼を行う。
【0024】
各ボイラは、高燃焼、中燃焼、低燃焼、燃焼待機の四位置燃焼制御を行う。各ボイラでの蒸気発生量は、高燃焼時1.7t/h、中燃焼時0.85t/h、低燃焼時0.255t/hのように、燃焼量によって蒸気の発生量が異なるものとしている。ボイラ全体での蒸気供給量は、7台全てが停止の0t/hから7台全てが高燃焼での11.9t/hとなる。しかしこれは、点検による休止分などを考慮した過大なものであるため、それほど多くの蒸気が必要なものではない。実際の蒸気使用量の傾向は、蒸気流量を数日間計測することで把握することができる。本実施例では、数日間の蒸気流量を計測した結果、その間の蒸気使用量最大値3.78t/h、最小値0.53t/hで、ボイラが全て低燃焼となる蒸気使用量(0.255t/h×7台=1.785t/h)未満で運転していた時間が約93%であったとする。
【0025】
図2から
図5は7台のボイラで台数制御を行う場合であって、台数増加パターンの設定値を異ならせた場合のボイラ台数制御のパターンを記載している。燃焼状態の欄は対象となっている7台のボイラのそれぞれでの燃焼状態を示しており、「-」は燃焼停止、「L」は低燃焼、「M」は中燃焼、「H」は高燃焼であって、それぞれの個数がその状態でのボイラの台数を現している。
【0026】
燃焼量を増加していく時の台数制御パターンは、燃焼増加パターンの設定台数毎に異なっており、燃焼台数を早く増加することを優先するものか、燃焼しているボイラでの燃焼量増加を優先するかを設定することができる。
図2で示している台数増加パターン7台の場合は、燃焼台数を増加することを優先するものである。
図3から
図5で示している台数増加パターンは、燃焼量の増加と燃焼台数の増加を組み合わせて蒸気供給量を増加させるものであり、低燃焼の台数を何台確保するかが異なるものとなっている。燃焼増加パターン台数が減少するほど、燃焼台数を変更せず、燃焼中であるボイラの燃焼量を増加することで蒸気供給量を増加することを優先するものとなる。
【0027】
図2から
図5の記載基づいて説明する。
図2から
図5で燃焼台数0台から燃焼量を増加していく場合、「MLLL―――」までは共通となっている。0から燃焼量を増加していく場合、まず稼働優先順位が第1位のボイラを燃焼停止から低燃焼とすることで1段階目の蒸気供給量増加とし、次にそのボイラを中燃焼とすることで2段階目の蒸気供給量増加とする。3段階目の蒸気供給量増加は稼働優先順位が第2位のボイラを低燃焼とし、以降は低燃焼が3台になるまではボイラの燃焼台数を増加することで蒸気供給量を増加していく。「MLLL―――」までは各燃焼増加パターン台数で同じであるが、台数増加パターンが4台の場合は稼働優先順位が第4位のボイラが低燃焼となった以降は低燃焼ボイラの中燃焼への燃焼量増加と燃焼台数増加を交互に行い、5台の場合は稼働優先順位が第5位のボイラが低燃焼となった以降に低燃焼ボイラの中燃焼への燃焼量増加と燃焼台数増加を交互、6台の場合は稼働優先順位が第6位のボイラが低燃焼となった以降に低燃焼ボイラの中燃焼への燃焼量増加と燃焼台数増加を交互、7台の場合は7台目のボイラが燃焼を開始するまで低燃焼を増加するものとなっている。そのため台数増加パターンの設定台数が大きいほど早い段階で燃焼台数が多くなり、台数増加パターンの設定台数が小さいと燃焼台数の増加は緩やかになる。
【0028】
燃焼量を減少していく場合は、その時点で燃焼しているボイラの全てが低燃焼になるまでは燃焼台数の変更は行わずに燃焼量の変更で対応し、低燃焼への変更ができなくなると燃焼台数を減少する。台数増加パターンの設定値を小さくしている場合、早い段階で中燃焼の台数が多くなるため、燃焼台数を変更せずに燃焼量の変更で対応することのできる蒸気供給量の幅が広くなる。
【0029】
燃焼台数が6台に注目して各燃焼増加パターン台数を比較する。台数増加パターン7台(
図2)の場合は5台燃焼時の「MLLLL――」から燃焼量増加で「MLLLLL-」の6台燃焼となり、次の燃焼量増加では「MLLLLLL」の7台燃焼となる。そして燃焼台数6台の「MLLLLL-」の状態からの燃焼量減少時は、燃焼台数6台のまま「LLLLLL-」となり、次の燃焼量減少では「LLLLL――」の燃焼台数5台となる。燃焼台数6台の場合の蒸気供給量の幅は、「LLLLLL-」(0.255t/h×6台=1.53t/h)と「MLLLLL-」(0.85t/h+0.255t/h×5台=2.125t/h)の間であるため、1.53~2.125t/hとなる。
【0030】
これが台数増加パターン4台(
図5)の場合は、5台燃焼時の「MMMLL――」から燃焼量増加で「MMMLLL-」の6台燃焼となり、次の燃焼量増加では「MMMMLL-」で燃焼台数は6台のまま、更に次の燃焼量増加で「MMMMLLL」の7台燃焼となる。そして燃焼台数6台の「MMMMLL-」の状態からの燃焼量減少時は、燃焼台数6台のまま「MMMLLL-」となり、さらに「MMLLLLL-」「MLLLLL―」「LLLLLL-」となった後の燃焼量減少で「LLLLL――」の燃焼台数5台となる。燃焼台数6台の場合の蒸気供給量の幅は、「LLLLLL-」(0.255t/h×6台=1.53t/h)と「MMMMLL-」(0.85t/h×4台+0.255t/h×2台=3.91t/h)の間であるため、1.53~3.91t/hとなる。
【0031】
図2から
図5での蒸気供給量欄は、燃焼台数ごとに記載している。燃焼台数が6台の蒸気供給量は、台数増加パターン7台の
図2では1.53~2.125t/h、台数増加パターン6台の
図3では1.53~2.72t/h、台数増加パターン5台の
図4では1.53~3.315t/h、台数増加パターン4台の
図5では1.53~3.91t/hとなる。台数増加パターンの台数が大きいと、より早い段階で燃焼台数が多くしていくため、同じ燃焼台数で維持できる幅は狭くなる。逆に台数増加パターンの台数が小さいと、燃焼台数の増加は遅くなって、同じ燃焼台数で維持できる幅が広くなる傾向がある。
【0032】
蒸気使用量が少ない段階で燃焼台数を増加しておくと、蒸気使用量が急増した場合にすぐに蒸気供給量の増加を行える。しかし、低燃焼のボイラしかない状態で蒸気使用量が低下した場合には、燃焼を行っているボイラで燃焼を停止させることになる。ボイラでは燃焼の発停時にボイラ内の換気を行うため、燃焼の発停が多くなるとは効率が低下する。そのため蒸気使用量に対する追従性が良いことと燃焼台数の増減が少なく効率が良いことのバランスがとれた台数増加パターンの設定台数を選定することが重要となるが、蒸気の使用状況によって最適な設定台数は異なる。
【0033】
蒸気使用量に対する追従性とボイラ効率を両立させる設定は、事前に収集した蒸気流量のデータに基づき定める。一定期間における多缶設置ボイラでの蒸気使用量を算出しておき、蒸気使用量ごとの累積時間から台数増加パターンの設定台数を決定する。台数増加パターンの設定値ごとに、燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を算出しておき、計測しておいた蒸気使用量を当てはめた際に前記蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合を算出する。この算出した蒸気供給量の幅内に留まる時間の割合が基準値以上となる組合せを抽出し、抽出された組合せのうち、最も台数増加パターン設定台数が大きなものを台数増加パターンの設定台数とする。
【0034】
この制御をより具体的に説明する。まず、燃焼台数を変更せず燃焼量の調節だけで維持できる蒸気供給量の基準値を定めておく必要があり、本実施例では基準値を50%としておく。この基準値はより高い値にするほど燃焼台数の変更が少なくなるパターンを探すことになり、ボイラの効率が高い台数制御パターンとすることができるが、燃焼台数の増加が抑制されるため蒸気使用量が急激に増加した場合に蒸気供給量の増加が追従できなくなる可能性が高くなっていく。
【0035】
図6から
図9は事前に測定した蒸気使用量ごとの累積時間と、燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を示したものであり、
図6、
図7、
図8、
図9はそれぞれ
図2、
図3、
図4、
図5に対応させている。横軸は蒸気流量、縦軸はその蒸気流量が検出された時間の累積を現しており、燃焼台数を変更せずに調節することのできる蒸気供給量の幅を重ねている。
【0036】
台数増加パターンの設定値を定める場合、台数増加パターンの台数が大きいものから試算していく。まず台数増加パターンの設定台数が最も大きい7台の
図6で見る。この場合の燃焼台数が3台から6台での蒸気供給量の幅は、
図2に記載しているように3台時0.765~1.36t/h、4台時1.02~1.615t/h、5台時1.275~1.87t/h、6台時1.53~2.125t/hとなる。
図6の累積時間のグラフには、この幅を重ねている。なお、2台以下の場合と7台の場合は、蒸気供給量の幅内に留まる時間は明らかに短くなることより記載は省略している。燃焼台数が3台、4台、5台、6台での蒸気供給量調節範囲における蒸気流量が検出された時間の累積時間を算出すると、それぞれ48.7%、48.7%、49.2%、40.0%であったとする。この場合、いずれも基準値の50%に満たないため、台数増加パターン7台は採用しないことを決定する。
【0037】
次に台数増加パターンを1台減らして6台で試算する。
図7は台数増加パターンを6台とした場合のものである。台数増加パターン6台時の燃焼台数が3台から6台での蒸気供給量の幅は、
図3に記載しているように3台時0.765~1.36t/h、4台時1.02~1.615t/h、5台時1.275~1.87t/h、6台時1.53~2.72t/hとなる。燃焼台数が3台、4台、5台、6台での蒸気供給量調節範囲における蒸気流量が検出された時間の累積時間を算出すると、それぞれ48.7%、48.7%、49.2%、42.5%であったとすると、いずれの場合もまだ基準値の50%に満たないため、台数増加パターン6台も採用しないことを決定する。
【0038】
さらに台数増加パターンを1台減らして5台で試算する。
図8は台数増加パターンを5台とした場合のものである。台数増加パターン5台時の燃焼台数が3台から6台での蒸気供給量の幅は、
図4に記載しているように3台時0.765~1.36t/h、4台時1.02~1.615t/h、5台時1.275~2.465t/h、6台時1.53~3.315t/hとなる。燃焼台数が3台、4台、5台、6台での蒸気供給量調節範囲における蒸気流量が検出された時間の累積時間を算出すると、それぞれ48.7%、48.7%、55.6%、44.1%であったとする。この場合、燃焼台数5台での蒸気供給量調節範囲における蒸気流量(グラフ内の斜線を入れた部分の面積)は、検出された累積時間が基準値の50%を超えている。基準値を超える設定が見つかると、この台数増加パターンの値で確定する。なお、基準値を超える台数増加パターンは、後で記載する4台の場合にも現れるが、基準値以上で台数増加パターンの設定台数が最も大きなものとするため、設定台数の大きい側から試算して最初に見つかった基準値以上で確定している。
【0039】
また、基準値が50%の場合は台数増加パターン5台で確定したが、基準値がより高い60%であると、台数増加パターン5台では基準値60%に達していないため、さらに適正値を探すことになる。
図9は台数増加パターンを4台とした場合のものである。台数増加パターン4台時の燃焼台数が3台から6台での蒸気供給量の幅は、
図5に記載しているように3台時0.765~1.36t/h、4台時1.02~2.215t/h、5台時1.275~3.06t/h、6台時1.53~3.91t/hとなる。燃焼台数が3台、4台、5台、6台での蒸気供給量調節範囲における蒸気流量が検出された時間の累積時間を算出すると、それぞれ48.7%、68.2%、57.5%、43.4%であったとする。この場合、4台での蒸気供給量調節範囲における蒸気流量が検出された時間(グラフ内の斜線を入れた部分の面積)は基準値の60%を超えている。基準値を超える設定が見つかると、この台数増加パターンの値で確定する。
【0040】
このようにして設定値を定めるようにすると、燃焼台数を変更せずに蒸気供給量を調節することのできる時間が長く、かつ台数増加パターンの設定台数が大きなものを見つけることができる。蒸気供給量調節範囲の時間が長くなると燃焼台数の変更が行われず、燃焼の発停が少なくなるということであるため、効率の高い台数制御が行える。また蒸気供給幅内で維持される時間が基準値以上となる台数増加パターンのうち、最も台数増加パターン設定台数が大きなものを台数増加パターン設定台数とすることで、発停回数を少なくした状態で、低燃焼の確保台数を可能な限り多くすることができる。このようにすることで、蒸気必要量の変化に対する追従性と効率のバランスがとれた最適な台数制御を行うことができる。
【0041】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ボイラ
2 運転制御装置
3 台数制御装置
4 スチームヘッダ
5 蒸気配管
6 圧力検出装置