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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】水活性化装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20220913BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20220913BHJP
【FI】
C02F1/48 A
B23K26/21 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016216742
(22)【出願日】2016-11-04
(65)【公開番号】P2018069216
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2019-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399127072
【氏名又は名称】株式会社エッチアールディ
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】大池 好正
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝臣
(72)【発明者】
【氏名】井田 明
(72)【発明者】
【氏名】横山 修一
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】三崎 仁
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0197210(US,A1)
【文献】特開平7-322598(JP,A)
【文献】特開2001-191081(JP,A)
【文献】特開2015-29984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/46-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を水が通過する通水管と、
前記通水管の内部を通過する水に磁気を作用させる磁気作用面を有する永久磁石と、
前記永久磁石の前記磁気作用面の反対面側に配されて、その両端部が前記磁気作用面側に略コの字型に折曲されているヨークと、を備え、
前記永久磁石の着磁方向に対して略直交する方向における、前記ヨークの両端部と前記永久磁石との間の距離は、それ以上離しても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの1/2以上で1.5倍より小さい値の範囲であり
前記ヨークの厚さは、それ以上厚くしても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの2/5以上で1/2より小さい値の範囲である水活性化装置。
【請求項2】
前記通水管は、両端にねじ山を有し、
前記磁気作用面は、前記通水管の前記両端とは異なる領域の少なくとも一部において、前記通水管の延びる方向と略平行に設けられ、
前記通水管の延びる方向において、外側に前記磁気作用面を有する箇所の前記通水管の肉厚は、ねじ山を有する箇所の前記通水管の肉厚よりも薄い、請求項1に記載の水活性化装置。
【請求項3】
内部を水が通過する通水管と、前記通水管の内部を通過する水に磁気を作用させる磁気作用面を有する永久磁石と、前記永久磁石の前記磁気作用面の反対面側に配されて、その両端部が前記磁気作用面側に略コの字型に折曲されているヨークと、を組み付ける組み付け工程を含み、
前記永久磁石の着磁方向に対して略直交する方向における、前記ヨークの両端部と前記永久磁石との間の距離は、それ以上離しても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの1/2以上で1.5倍より小さい値の範囲であり
前記ヨークの厚さは、それ以上厚くしても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの2/5以上で1/2より小さい値の範囲である水活性化装置の製造方法。
【請求項4】
中空形状のハウジング本体の中空部分に、前記永久磁石と前記通水管とが組み付けられた組み付け部材を、前記ハウジング本体の中空部分の中心軸と前記通水管の中心軸が一体になるように収納する収納工程と、
前記ハウジング本体に、前記ハウジング本体の蓋体を、レーザーによる溶接で接合する接合工程と、をさらに含む、請求項3に記載の水活性化装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水活性化装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通水管に取り付けることによって、その通水管内を通る水に磁力を作用させて、水の活性化度を向上させる水活性化装置が知られている。
【0003】
このような水活性化装置として、一対の永久磁石と、一対の非磁性導電性金属板と、ヨークと、一対の永久磁石におけるN極の磁気作用面とS極の磁気作用面との間を通過するように配された管状部材と、を備える水活性化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この装置によると、管状部材に水を流し入れて、その水活性化装置における一対の永久磁石のN極の磁気作用面とS極の磁気作用面との間を通過させた処理水を得るようにして、水の活性化処理を行うことができる。。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-264649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通水管を通る水に作用する磁力を高めることについては、なお改良の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、通水管を通る水に作用する磁力をよりいっそう高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水活性化装置は、内部を水が通過する通水管と、前記通水管の内部を通過する水に磁気を作用させる磁気作用面を有する永久磁石と、前記永久磁石の前記磁気作用面の反対面側に配されて、その両端部が前記磁気作用面側に略コの字型に折曲されているヨークと、を備え、前記永久磁石の着磁方向に対して略直交する方向における、前記ヨークの両端部と前記永久磁石との間の距離は、それ以上離しても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの1/2以上で1.5倍より小さい値の範囲であり、前記ヨークの厚さは、それ以上厚くしても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの2/5以上で1/2より小さい値の範囲である
【0009】
上記水活性化装置は、前記通水管は、両端にねじ山を有し、前記磁気作用面は、前記通水管の前記両端とは異なる領域の少なくとも一部において、前記通水管の延びる方向と略平行に設けられ、前記通水管の延びる方向において、外側に前記磁気作用面を有する箇所の前記通水管の肉厚は、ねじ山を有する箇所の前記通水管の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【0010】
本発明の水活性化装置の製造方法は、内部を水が通過する通水管と、前記通水管の内部を通過する水に磁気を作用させる磁気作用面を有する永久磁石と、前記永久磁石の前記磁気作用面の反対面側に配されて、その両端部が前記磁気作用面側に略コの字型に折曲されているヨークと、を組み付ける組み付け工程を含み、前記永久磁石の着磁方向に対して略直交する方向における、前記ヨークの両端部と前記永久磁石との間の距離は、それ以上離しても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの1/2以上で1.5倍より小さい値の範囲であり、前記ヨークの厚さは、それ以上厚くしても前記通水管の中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度が増加しない値より小さく、前記永久磁石の厚さの2/5以上で1/2より小さい値の範囲である
【0011】
上記製造方法は、中空形状のハウジング本体の中空部分に、前記永久磁石と前記通水管とが組み付けられた組み付け部材を、前記ハウジング本体の中空部分の中心軸と前記通水管の中心軸が一体になるように収納する収納工程と、前記ハウジング本体に、前記ハウジング本体の蓋体を、レーザーによる溶接で接合する接合工程とをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通水管を通る水に作用する磁力をよりいっそう高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る水活性化装置1の外観を示す模式図である。
図2】水活性化装置1から蓋体12Aを外したときのハウジング本体11の内部の状態を示す模式図である。
図3A】水活性化装置1の通水管13、永久磁石14A,14B及びヨーク16A,16Bの分解図であり、水活性化装置1の製造方法を説明するための図である。
図3B図3Aに続く図である。
図3C図3Bに続く図である。
図3D図3Cに続く図である。
図3E図3Dに続く図である。
図3F図3Eに続く図である。
図4】実験例における水活性化装置1の内部を模式的に示した図である。
図5】実験例1の実験結果を示すグラフである。
図6】実験例2の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
<水活性化装置1>
図1は、本実施形態に係る水活性化装置1の外観を示す模式図である。水活性化装置1を構成する各部材は、ハウジング10の内部に収容される。そして、ハウジング10は、中空形状のハウジング本体11と、ハウジング本体11の両端に設けられた蓋体12A,12Bとを含んで構成される。
【0016】
図2は、水活性化装置1から蓋体12Aを外したときのハウジング本体11の内部の状態を示す模式図である。ハウジング本体11の内部には、少なくとも、通水管13と、永久磁石14A,14Bとが収容されている。そして、ハウジング本体11の内部には、非磁性導電性金属板15A,15Bと、ヨーク16A,16Bと、がさらに収容されることが好ましい。
【0017】
なお、水活性化装置1は、後述するように、通水管13、永久磁石14A,14B及びヨーク16A,16Bが、充填部材17(図3D参照)により覆われるのが、図2では、通水管13、永久磁石14A,14B及びヨーク16A,16Bを示すために、その記載を省略している。
【0018】
〔通水管13〕
図3Aは、水活性化装置1の通水管13、永久磁石14A,14B及びヨーク16A,16Bの分解図であり、水活性化装置1の製造方法を説明するための図である。
通水管13は、内部を水が通過し、両端13A,13Bにねじ山を有する。ねじ山の形状は、隣り合う通水管(図示せず)と螺合可能であれば特に限定される、雄ねじであってもよいし、雌ねじであってもよい。通水管13は、図1に示すように、両端13A,13Bのねじ山とそれぞれ螺合する2つのナットにより、ハウジング10に固定される。
【0019】
図3Aに戻って、通水管13の延びる方向(長手方向)において、外側に磁気作用面を有する箇所13C(通水管13の両端13A,13Bとは異なる箇所)の通水管13の肉厚は、通水管13の内部を流れる流体(水)から加わる力によって通水管13が破壊しない程度であれば、できるだけ薄い方が好ましい(通水管13の内部に通水される水に対して、磁力による活性化を促進できる)。
【0020】
通水管13を通る流体に対して磁力を好適に作用させる観点から、中間部分(外側に磁気作用面を有する箇所13C)の肉厚の上限は、ねじ山を有する箇所(通水管13の両端13A,13Bに相当する箇所)の通水管13の肉厚未満である。具体的には、通水管13の肉厚が3.0mmの鋼管である場合、通水管13の中間部分(外側に磁気作用面を有する箇所13C)の肉厚は、0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましい。
【0021】
例えば、通水管13の肉厚が約3.0mmである場合の永久磁石14A,14Bの直下の磁力が、4,000ガウスであった場合、通水管13の中間部分(外側に磁気作用面を有する箇所13C)の肉厚を約3.0mmの半分の寸法である約1.5mmにした場合、永久磁石14A,14Bの直下の磁力が、4,500ガウスになる(すなわち、磁力が11%以上向上する。)。水活性化装置1は、取り付け場所が限られている場合もあり、外形をコンパクトにしたいという要望がある。また、水活性化装置1において、永久磁石14A,14B等は、ハウジング10の内部に配置され、このハウジング10の内部のスペースは限られており、磁力を向上するために、単純に永久磁石14A,14Bの大きさを大きくすることはできない。よって、通水管13の中間部分(外側に磁気作用面を有する箇所13C)の肉厚を、両端より薄くすることで、省スペース化と磁力の向上という、従来、相反する効果を奏することが可能となる。
【0022】
ねじ山を有する箇所(通水管13の両端13A,13Bに相当する箇所)の通水管13の肉厚は、外側に磁気作用面を有する箇所13C(通水管13の両端13A,13Bとは異なる箇所)の通水管13の肉厚よりも厚い。これは、通水管13の内面又は外面にねじ山が設けられており、ねじ山を有するを有する箇所の肉厚が薄すぎると、通水管13の強度に支障が出るためである。
【0023】
通水管13の材料は、両端13A,13Bにねじ山を有していれば、特に限定されず、金属管であっても、樹脂管であってもよい。
【0024】
中でも、通水管13の内部に通水される水をより効率よく活性化させるため、通水管13は、非磁性の材料であることが好ましい。
【0025】
非磁性の金属管として、オーステナイト鋼製のステンレス鋼管(SUS304等)等が挙げられる。また、樹脂管として、ポリエチレン管、ポリ塩化ビニル管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管等が挙げられる。
【0026】
通水管13の内部を流れる流体は、水を含んでいれば、水のみに限定されず、お茶、ジュース、酒、ワイン、化粧水等であってもよい。
【0027】
〔永久磁石14A,14B〕
永久磁石14A,14Bの種類は、特に限定されない。永久磁石14の種類として、アルニコ磁石、KS鋼、MK鋼、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石、プラセオジム磁石、ネオジウム・鉄・ボロン磁石、サマリウム窒素鉄磁石、強磁性窒化鉄、白金磁石、セリウム・コバルト磁石等が挙げられる。
【0028】
永久磁石14A,14Bは、通水管13の延びる方向(長手方向)を挟んで対向するように設けられる。そして、一方の永久磁石14Aは、通水管13に対面する面がN極になるように配置され、他方の永久磁石14Bは、通水管13に対面する面がS極になるように配置される。これにより、一方の永久磁石14AのN極を有する面と、他方の永久磁石14BのS極を有する面とが、それぞれ、通水管13の内部を通過する水に磁気を作用させる磁気作用面として機能する。そして、磁気作用面は、通水管13の両端13A,13Bとは異なる領域の少なくとも一部において、通水管13の延びる方向(長手方向)と略平行に設けられる。
【0029】
本実施形態では、通水管13の延びる方向(長手方向)において、外側に磁気作用面を有する箇所13C(通水管13の両端13A,13Bとは異なる箇所)の通水管13の肉厚は、ねじ山を有する箇所(通水管13の両端13A,13Bに相当する箇所)の通水管13の肉厚よりも薄い。これにより、通水管13を通る流体に作用する磁力をよりいっそう高めることができる。
【0030】
また、永久磁石14A,14Bは、通水管13が延びる方向に沿って、所定間隔を空けて複数並べられることが好ましい。そうすることで、磁力の勾配ができ、通水管13の中を流れる流体をよりいっそう活性化できる。
【0031】
また、永久磁石14A,14Bは、直方体形状に形成されているが、これに限らず、例えば、通水管13に対面する面を、通水管13の外周に沿った湾曲形状に形成してもよい。これにより、永久磁石14A,14Bと通水管13との間に隙間ができず、無駄なく通水管13を通る水に対して磁力を集約できる。
【0032】
〔非磁性導電性金属板15A,15B〕
図2に示すように、本実施形態では、永久磁石14の側面に、一対の非磁性導電性金属板15A,15Bが配されることが好ましい。
【0033】
水活性化装置1では、永久磁石14AのN極から永久磁石14BのS極に向けて、磁力が生じている。この磁力が作用する通水管13内に、流体(水)が流れると、その流体の方向と直交し、この磁力の磁力線の方向(永久磁石14Aの磁気作用面から永久磁石14Bの磁気作用面に向かう方向)とも直交する方向に起電流が発生する。
【0034】
非磁性導電性金属板15A,15Bは、このように生じる起電流を放電損失のないように誘導帯電させ、この帯電によって発生する電子を流体中に効率よく放出させるために設けられる。
【0035】
一対の非磁性導電性金属板15A,15Bは、永久磁石14A,14Bの磁気作用面を挟んで対向しており、その磁気作用面に、その面が対向して配置され、永久磁石14A,14Bの側面に配されている。
【0036】
〔ヨーク16A,16B〕
水活性化装置1は、ヨーク16A,16Bをさらに備えることが好ましい。ヨーク16A,16Bは、永久磁石14A,14Bの磁気作用面の反対面側に配される。そして、ヨーク16A,16Bは、その両端部が永久磁石14A,14Bの磁気作用面側に略コの字型に折曲されてなり、永久磁石14A,14Bの磁気作用面と平行に配置された中央部16aと、中央部16aの両端から、永久磁石14A,14Bの磁気作用面側に、それぞれ延びる、両端部の一例である折り曲げ部16bと、を備える。
【0037】
ヨーク16A,16Bは、永久磁石14A,14Bの吸着力を高める機能を有する。ヨーク16A,16Bの材質は、永久磁石14A,14Bの吸着力を高める磁性材料であれば特に限定されず、例えば、鋼材(SS400等)、純鉄(SUY-1等)、軟鉄板、磁性セラミック板等が挙げられる。
【0038】
図2に示す例において、ヨーク16Aの折り曲げ部16bの端部と、ヨーク16Bの折り曲げ部16bの端部と、は、互いに間隔を空けて配置されている。しかしながら、これに限らず、ヨーク16Aの折り曲げ部16b及びヨーク16Bの折り曲げ部16bは、端部が、互いに接触するように、形成してもよい。これにより、ヨーク16Aの折り曲げ部16bの端部と、ヨーク16Bの折り曲げ部16bの端部と、の隙間から磁束が漏れることを防止でき、通水管13の内部における磁束密度を上昇させることができる。
【0039】
本実施形態では、永久磁石14A,14Bの着磁方向に対して略直交する方向における、ヨーク16A,16Bの両端部(折り曲げ部16b)の永久磁石14A,14Bに対向する面と、永久磁石14A,14Bの互いに対向する方向と直交する方向の端部との間の距離は、永久磁石14A,14Bの厚さ(永久磁石14A,14Bの互いに対向する方向の寸法)の1/2倍よりも大きいことが好ましく、永久磁石14A,14Bの厚さの略1.5倍以あることが好ましい。ヨーク16A,16Bの両端部と永久磁石14A,14Bとの間が離れていることで、永久磁石14AのN極から永久磁石14BのS極に向けた磁気回路の短絡に起因して磁束密度が低下するのを防止できる。
【0040】
〔充填部材17〕
必須の構成ではないが、ハウジング10の内部に充填部材17(後述する図3D参照)が形成されることが好ましい。
【0041】
充填部材17は、ハウジング10の内部空間であって、ハウジング10の内側に収容された永久磁石14A,14Bと、一対の非磁性導電性金属板15A,15Bと、ヨーク16A,16Bとの隙間等に充填された流動性の充填材の固化物である。
【0042】
充填部材17が形成されることで、ハウジング10の内部に外部から水分等が浸入した場合や、ハウジング10の内部において結露が発生した場合でも、充填部材17に覆われた永久磁石14A,14B、非磁性導電性金属板15A,15B、ヨーク16A,16Bに外部からの水分等が付着し、錆が発生するのを防止できるため、水活性化装置1の磁気的性能や水活性化性能を長期に亘って安定して維持することができる。
【0043】
また、充填部材17によって、ハウジング10の内部において、配設した永久磁石14A,14B等のがたつきを防止することもできるので、永久磁石14A,14Bと、非磁性導電性金属板15A,15Bと、ヨーク16A,16Bとの配置にずれや歪みが生じてしまうことや、永久磁石14A,14Bに割れ欠けが生じてしまうことを低減することができ、水活性化装置1の磁気的性能や水活性化性能を維持することができる。
【0044】
充填部材17の材質は、永久磁石14A,14Bと、一対の非磁性導電性金属板15A,15Bと、ヨーク16A,16Bとの隙間等に充填できる材料であれば特に限定されるものでなく、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0045】
〔ハウジング10〕
図1に戻り、ハウジング10は、中空形状(例えば、円筒形状等)のハウジング本体11と、ハウジング本体11の両端に設けられた蓋体12A,12Bとを含んで構成される。なお、ハウジング10は、中空形状であれば、円筒形状に限らず、四角柱形状等の多角柱形状等の任意の形状とすることができる。
【0046】
ハウジング10(ハウジング本体11、蓋体12A,12B)は、例えば、ステンレス鋼で形成されているが、ABS樹脂が成型された部材であって、銅メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキの3層のメッキ層によって被覆されているものでもよい。
【0047】
蓋体12A,12Bには、ハウジング本体11両端の外形及び外径と、略同じ形状の外形及び外径で形成された側縁を有し、例えば、円筒形状のハウジング本体11に対して、半球形状で形成され、その略中心に貫通孔が設けられている。このような蓋体12A,12Bが、ハウジング本体11の両端にそれぞれ取り付け、通水管13の両端を貫通孔から突出させることで、ハウジング本体11の中空部分の中心軸と、通水管13の中心軸が一体になるように通水管13等を、ハウジング10の内部に収納可能となる。
【0048】
本実施形態では、通水管13等が、中空形状のハウジング本体11の中空部分に、ハウジング本体11の中空部分の中心軸と通水管13の中心軸が一体になるように収納されるとともに、ハウジング本体11と、蓋体12A,12Bとが、レーザーによって溶接一体化されていることが好ましい。
【0049】
<水活性化装置1の製造方法>
以下、図3A図3Fを参照しながら、本実施形態に係る水活性化装置1の製造方法について説明する。
【0050】
〔ハウジング10の内部を構成する部材の組み付け〕
まず、図3Aに示すように、ハウジング10の内部を構成する部材、具体的には、中間部分(永久磁石14A,14Bで挟む部分)の肉厚を、両端部13A,13Bより薄くした通水管13、永久磁石14A,14B、非磁性導電性金属板15A,15B、及びヨーク16A,16Bを準備する。
【0051】
その際、ヨーク16Aの基板部には、複数の永久磁石14Aを、長手方向に沿って所定間隔で着磁させておく。このとき、ヨーク16Aの基板部と永久磁石14AのS極とが接する状態にある。また、永久磁石14Aは、ヨーク16Aの両端部から、永久磁石14Aの厚さの1/2よりも長く離した状態にある。
【0052】
また、ヨーク16Bの基板部には、複数の永久磁石14Bを、長手方向に沿って所定間隔で着磁させておく。このとき、ヨーク16Bの基板部と永久磁石14BのN極とが接する状態にある。また、永久磁石14Bは、ヨーク16Bの両端部から、永久磁石14Aの厚さの1/2よりも長く離した状態にある。
【0053】
続いて、図3Bに示すように、ヨーク16Aの両端部と永久磁石14Aとの間に、それぞれ非磁性導電性金属板15A,15Bを挿入し、永久磁石14Aの上に通水管13を配置し、その上に、複数の永久磁石14Bを着磁させたヨーク16Bを被せる。これにより、図3Cに示す状態となる。このとき、複数の永久磁石14Aと複数の永久磁石14Bとが互いに引き合うので、通水管13、永久磁石14A,14B、非磁性導電性金属板15A,15B、及びヨーク16A,16Bが一体的な状態で固定されている。
【0054】
〔充填部材17の充填〕
次いで、図3Dに示すように、図3Cに示す通水管13と、永久磁石14A,14Bと、一対の非磁性導電性金属板15A,15Bと、ヨーク16A,16Bとの隙間に、流動性の充填部材17(例えば、シリコン等)を流し込むように充填するとともに、ヨーク16A,16Bの周囲に、当該充填材を塗布する。
【0055】
〔ハウジング本体11への収納〕
次いで、図3Eに示すように、中空形状のハウジング本体11の中空部分に、図3Cに示す通水管13、永久磁石14A,14B、非磁性導電性金属板15A,15B、及びヨーク16A,16Bが組みつけられ、充填部材17が充填され塗布された組み付け部材18を、ハウジング本体11の中空部分に収納する。
【0056】
〔ハウジング本体11と蓋体12A,12Bとの接合〕
次いで、図3Fに示すように、ハウジング本体11に、収納された上記組み付け部材18の通水管13の両端部13A,13Bを、それぞれ蓋体12A,12Bの貫通孔に挿通し、ハウジング本体11の両側縁に、蓋体12A,12Bを、それぞれレーザーによる溶接で接合する。そして、必要に応じて、研磨処理する。
上記の工程を経て、本実施形態の水活性化装置1が製造される。
【0057】
レーザー溶接に使用するレーザーの種類は、例えば、YAGレーザーが望ましい。これにより、ハウジング本体11と、蓋体12A,12Bとを溶接一体化する際、熱によって永久磁石14A,14Bの磁力が低下することや、充填部材17が外部に溶出することを防止できる。
【0058】
溶接する工程における詳細は、まず、ハウジング本体11と、蓋体12Aと、をYAGレーザーにより、仮止めする。YAGレーザーは、電圧350~370V、周波数30Hzが望ましい。この状態において、組み付け部材18を、ハウジング本体11の中空部分に挿入し、蓋体12Aの貫通孔に通水管13の端部13Aを挿入する。
【0059】
その後、通水管13の端部13Bを、蓋体12Bの貫通孔に挿通し、ハウジング本体11と、蓋体12Bと、をYAGレーザーにより、仮止めする。
【0060】
その後、ハウジング本体11と、蓋体12A,12Bと、をそれぞれYAGレーザーにより本溶接してから、蓋体12A,12Bと通水管13とを、YAGレーザーにより本溶接する。
【0061】
このように、ハウジング本体11と、蓋体12A,12Bと、を本溶接してから、蓋体12A,12Bと、通水管13と、を本溶接することで、蓋体12A,12Bと通水管13とを本溶接した際に、ハウジング本体11と蓋体12A,12Bとの仮止めが外れることを防止できる。
【0062】
本溶接では、仮止め時と同様の溶接機で溶接してもよいし、例えば、仮止め時はハンディ型の溶接機を使用し、本溶接では連続して(例えば、仮止めしたハウジング本体11と蓋体12A,12Bとを、レーザー照射位置に対して回転させて)溶接が可能なロボット型の溶接機を使用してもよい。
例えば、ロボット型の溶接機を使用する場合には、レーザー幅(パルス1発の時間)を11.9ミリセックとし、パルス周波数を22Hzとし、溶接速度を30cm/分とし、出力を320~350Wとしてもよい。
なお、溶接速度とは、レーザー照射位置に対して、仮止めしたハウジング本体11及び蓋体12A,12Bを回転させる速度である。
【0063】
なお、溶接の手法は、YAGレーザーのほか、炭酸ガスレーザーアーク溶接やガス溶接等でもよい。
【0064】
<実験例>
次に、本実施形態に係る水活性化装置1のヨーク16A,16Bの態様を変化させた場合における、通水管13の内部における磁束密度を計測した実験例について説明する。
図4は、実験例における水活性化装置1の内部を模式的に示した図である。
図4に示す例では、ヨーク16Aの折り曲げ部16b及びヨーク16Bの折り曲げ部16bは、端部が、互いに接触するように、形成されている点が、図2に示す例と異なる。
また、以下に説明する実験例における永久磁石14A,14Bの厚さ(永久磁石14A,14Bの互いに対向する方向の寸法)は、10mmである。また、以下に説明する実験例におけるヨーク16A,16Bは、純鉄(SUY-1)で形成した。
【0065】
〔実験例1〕
実験例1では、ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bの永久磁石14A,14Bに対向する面と、永久磁石14A,14Bの互いに対向する方向(着磁方向)と直交する方向の端部との間の距離S(図4参照)を変え、各距離における、通水管13の内部における磁束密度を計測した。また、実験例1では、ヨーク16A,16Bの厚さtは、4.5mmである。
【0066】
具体的には、実験例1では、上記距離を、5mm(永久磁石14A,14Bの厚さの1/2の寸法)~20mm(永久磁石14A,14Bの厚さの2倍の寸法)の間で変え、各距離における、通水管13の内部における磁束密度を計測した。
【0067】
図5は、実験例1の実験結果を示すグラフである。図5において、横軸は、ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bと、永久磁石14A,14Bと、の間の距離S(図4参照)(単位:mm)を示している。また、図5において、縦軸は通水管13中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度(単位:T)を示している。
【0068】
図5に示す実験例1の実験結果より、ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bと、永久磁石14A,14Bと、の間の距離S(図4参照)を離すことによって、平均磁束密度(単位:T)が上昇するが、距離Sを15mm(永久磁石14A,14Bの厚さの1.5倍)以上離しても、平均磁束密度が増加しないことが分かった。
【0069】
この実験例1の実験結果より、ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bと、永久磁石14A,14Bと、の間の距離S(図4参照)は、永久磁石14A,14Bの厚さの1/2倍よりも大きく、永久磁石14A,14Bの厚さの略1.5倍以下とすることが好ましいことが確認できた。例えば、ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bと、永久磁石14A,14Bと、の間の距離Sを、永久磁石14A,14Bの厚さの略1.5倍とすることで、通水管13の内部における磁束密度を最大にしつつ、不必要に水活性化装置1が大きくなるのを防止できる。
【0070】
〔実験例2〕
実験例2では、ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bの永久磁石14A,14Bに対向する面と、永久磁石14A,14Bの互いに対向する方向(着磁方向)と直交する方向の端部との間の距離Sを15mm(永久磁石14A,14Bの厚さの略1.5倍)とし、ヨーク16A,16Bの厚さt(図4参照)を変え、各厚さにおける、通水管13の内部における磁束密度を計測した。
【0071】
具体的には、実験例2では、上記厚さtを、2mm(永久磁石14A,14Bの厚さの1/5の寸法)~7mm(永久磁石14A,14Bの厚さの7/10の寸法)の間で変え、各厚さにおける、通水管13の内部における磁束密度を計測した。
【0072】
図6は、実験例2の実験結果を示すグラフである。図6において、横軸は、ヨーク16A,16Bの厚さt(図4参照)(単位:mm)を示している。また、図6において、縦軸は通水管13中心線に沿った複数箇所で計測した磁束密度の値の平均である平均磁束密度(単位:T)を示している。
【0073】
図6に示す実験例2の実験結果より、ヨーク16A,16Bの厚さt(図4参照)を厚くすることによって、平均磁束密度(単位:T)が上昇するが、厚さtを4.5mmから5mm(永久磁石14A,14Bの厚さの2/5から1/2)以上にしても、平均磁束密度が増加しないことが分かった。
【0074】
この実験例2の実験結果より、ヨーク16A,16Bの厚さt(図4参照)は、永久磁石14A,14Bの厚さの2/5から1/2の寸法にすることが好ましいことが確認できた。
【0075】
また、別の実験おいて、ヨーク16A,16Bを、鋼材(SS400)で形成し、実験例1と同様の実験を行ったが、実験例1と同様の実験結果であった。
この実験結果より、ヨーク16A,16Bの材質は、鋼材(SS400)でも純鉄(SUY-1)でも、通水管13の内部における磁束密度に変化がないことが確認できた。
【0076】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態の水活性化装置1は、永久磁石14A,14Bの着磁方向に対して略直交する方向における、ヨーク16A,16Bの両端部と永久磁石14A,14Bとの間の距離は、永久磁石14A,14Bの厚さの1/2倍よりも大きい。ヨーク16A,16Bの折り曲げ部16bと永久磁石14A,14Bとの間が離れていることで、永久磁石14AのN極から永久磁石14BのS極に向けた磁気回路の短絡に起因して磁束密度が低下するのを防止できる。
【0077】
また、本実施形態の水活性化装置1では、通水管13の延びる方向(長手方向)において、外側に磁気作用面を有する箇所13C(通水管13の両端部13A,13Bとは異なる箇所)の通水管13の肉厚は、ねじ山を有する箇所(通水管13の両端部13A,13Bに相当する箇所)の通水管13の肉厚よりも薄い。ここで、磁束密度は、磁場の強さと透磁率との積によって表される。水活性化装置1によれば、従来の通水管に比べて、外側に磁気作用面を有する箇所(通水管13の両端部13A,13Bとは異なる箇所)における透磁率を高くすることができる。これにより、磁場の強さが同じであっても、通水管13を通る水に作用する磁束密度を大きくすることができる。したがって、通水管13を通る水に作用する磁力をよりいっそう高めることができる。
【0078】
また、本実施形態の水活性化装置1の製造方法によれば、ハウジング本体11と、蓋体12A,12Bとが、レーザーによって溶接一体化されることで、ハウジング本体11の中空部分の中心軸と通水管13の中心軸とを合わせることができるので、例えば、本実施形態の水活性化装置1を水道管(図示せず)に接続し、地中に埋設し、ハウジング10にアンバランスな土圧がかかった場合であっても、水活性化装置1と水道管との接続部分、より具体的には、通水管13の端部13A,13Bに、偏った力が加わるのを防止できる。
【0079】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 水活性化装置
10 ハウジング
11 ハウジング本体
12A,12B 蓋体
13 通水管
14 永久磁石
16A,16B ヨーク
16a 中央部
16b 折り曲げ部
17 充填部材
18 組み付け部材

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6