(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】砥石
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20220913BHJP
B24D 7/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B24D3/00 310C
B24D7/00 P
(21)【出願番号】P 2018137985
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】398046921
【氏名又は名称】株式会社ナノテム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 篤
(72)【発明者】
【氏名】大橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340726(JP,A)
【文献】実開平01-121656(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101664966(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨又は研削する加工面を有し、前記加工面に直交する直交方向に沿って延びる六角形筒状の複数の筒部が前記加工面に沿って並べられたハニカム構造を有する砥石であって、
前記砥石は、
複数の砥粒と、
前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備え、
前記複数の砥粒は、前記結合材内に、前記直交方向に沿って1列に並べられ、
前記複数の砥粒それぞれの中心位置は、前記結合材に対して前記結合材の厚さ方向において中心に位置
し、
前記結合材は、
前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における一方側に位置する第1層部と、
前記第1層部とは別の層として形成され、前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における他方側に位置する第2層部と、を備える、
砥石。
【請求項2】
被加工物を研磨又は研削する加工面を有し、前記加工面に直交する直交方向に沿って延びる六角形筒状の複数の筒部が前記加工面に沿って並べられたハニカム構造を有する砥石であって、
前記砥石は、
複数の砥粒と、
前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備え、
前記複数の砥粒は、前記結合材内に、前記直交方向に沿って1列に並べられ、
前記複数の砥粒それぞれの中心位置は、前記結合材に対して前記結合材の厚さ方向において中心に位置
し、
前記結合材は、
前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における一方側に位置する第1層部と、
前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における他方側に位置する第2層部と、を備え、
前記第1層部と前記第2層部の間には空間が形成される、
砥石。
【請求項3】
前記結合材の厚さは、前記砥粒の平均粒径と略同一に形成されている、
請求項1
又は2に記載の砥石。
【請求項4】
前記複数の砥粒のうち隣り合う2つの前記砥粒は互いに接触する、
請求項1から3の何れか1項に記載の砥石。
【請求項5】
前記筒部内には、前記被加工物を研磨又は研削する際に生じる切り屑を保持する空間が形成されている、
請求項1から4の何れか1項に記載の砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加工物を研磨又は研削する砥石が知られている。例えば、特許文献1に記載の砥石は、ハニカム構造をなし、ハニカム構造の交点等に位置し、砥粒及び結合材からなる砥石柱を備える。特許文献1の
図4等に示すように、複数の砥粒は、結合材内において、砥石柱の長手方向を列方向とした場合、おおよそ3列又は4列でランダムに分布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、上記特許文献1に記載の構成では、ハニカム構造をなす砥石の厚さが大きくなり、砥石の被加工物に対する接触面積が大きくなる。このため、砥石の切れ味が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、切れ味を向上させることができる砥石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る砥石は、被加工物を研磨又は研削する加工面を有し、前記加工面に直交する直交方向に沿って延びる六角形筒状の複数の筒部が前記加工面に沿って並べられたハニカム構造を有する砥石であって、前記砥石は、複数の砥粒と、前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備え、前記複数の砥粒は、前記結合材内に、前記直交方向に沿って1列に並べられ、前記複数の砥粒それぞれの中心位置は、前記結合材に対して前記結合材の厚さ方向において中心に位置し、前記結合材は、前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における一方側に位置する第1層部と、前記第1層部とは別の層として形成され、前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における他方側に位置する第2層部と、を備える。
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る砥石は、被加工物を研磨又は研削する加工面を有し、前記加工面に直交する直交方向に沿って延びる六角形筒状の複数の筒部が前記加工面に沿って並べられたハニカム構造を有する砥石であって、前記砥石は、複数の砥粒と、前記複数の砥粒を結合する結合材と、を備え、前記複数の砥粒は、前記結合材内に、前記直交方向に沿って1列に並べられ、前記複数の砥粒それぞれの中心位置は、前記結合材に対して前記結合材の厚さ方向において中心に位置し、前記結合材は、前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における一方側に位置する第1層部と、前記複数の砥粒に対して前記厚さ方向における他方側に位置する第2層部と、を備え、前記第1層部と前記第2層部の間には空間が形成される。
【0007】
また、上記砥石において、前記結合材の厚さは、前記砥粒の平均粒径と略同一に形成されている、ようにしてもよい。
【0009】
また、上記砥石において、前記複数の砥粒のうち隣り合う2つの前記砥粒は互いに接触する、ようにしてもよい。
【0010】
また、上記砥石において、前記筒部内には、前記被加工物を研磨又は研削する際に生じる切り屑を保持する空間が形成されている、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、砥石において、切れ味を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る(a)は砥石の下面図であり、(b)は(a)の一部を拡大した拡大図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る
図1(b)の3-3線の断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る
図1(b)の3-3線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本発明に係る砥石の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)及び
図2に示すように、砥石ユニット1は、被加工物Wを加工する砥石10と、砥石10を保持する砥石ホルダー20と、を備える。
【0017】
図2に示すように、砥石ホルダー20は略円板状をなし、その中心に円柱状のシャフト25を有する。砥石ホルダー20は、砥石10とともに、シャフト25に沿う回転軸Oを中心にモータ27により軸回転する。これにより、砥石10は、図示しないチャックに固定された被加工物Wを、加工、すなわち研磨又は研削する。被加工物Wは、セラミックス、シリコンウエハ、半導体基板、LED(Light Emitting Diode)基板、放熱基板、シリコンカーバイド、アルミナ、サファイア又は金属等である。
【0018】
砥石10は円板状をなす。砥石10の一方側の面、すなわち
図2の下面は、砥石ホルダー20により支持されている。砥石10の他方側の面、すなわち
図2の上面は被加工物Wを加工する加工面10aを備える。加工面10aは、回転軸Oに直交するXY平面に沿って延びる。
図1(b)に示すように、砥石10はハニカム構造を有している。すなわち、砥石10は、加工面10aに直交するZ方向に沿って延びる正六角形筒状の複数の筒部11を備える。複数の筒部11は、砥石10の加工面10aにおいて隙間なく並べられる。各筒部11は、6つの壁部12により構成される。壁部12は、自身に隣接する壁部12に対して60°の角度で交わる。筒部11内の空間は、被加工物Wの切り屑を保持する機能を有する。
【0019】
図3に示すように、砥石10は、複数の砥粒15と、複数の砥粒15を結合する結合材16と、を備える。
複数の砥粒15は、Z方向に沿って1列に並べられている。すなわち、複数の砥粒15は砥石10の全域に1層に並べられる。複数の砥粒15のうち隣り合う2つの砥粒15は接触点15Qにて互いに接触している。
砥粒15は、例えば、ダイヤモンドであり、その平均粒径Dは0.1~300μmである。複数の砥粒15は、ダイヤモンドに限らず、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒であってもよいし、CBN砥粒とダイヤモンドを混合させてもよい。さらには、複数の砥粒15は、炭化ケイ素(SiC)、又は溶融アルミナ(Al
2O
3)、若しくはこれらを混合したものであってもよい。
なお、砥粒15の平均粒径Dは、砥粒15の断面が円形でない場合には、同じ断面積の円相当径の平均値とする。
【0020】
結合材16は、内部に複数の砥粒15を保持するハニカム構造をなす。結合材16は、ニッケル、アルミニウム等の金属、樹脂又はセラミックにより形成される。結合材16の厚さTは、砥粒15の平均粒径Dと略同一である。例えば、結合材16の厚さTが平均粒径Dの±10%の範囲内であるときには、結合材16の厚さTが砥粒15の平均粒径Dと略同一である。複数の砥粒15のうち少なくとも何れかの頂点15Pは、結合材16におけるZ方向に沿う面16Sに一致する。すなわち、砥粒15の頂点15Pは、結合材16の面16Sから突出しない。よって、結合材16におけるZ方向に沿う2つの面16Sは平面で形成される。例えば、結合材16の厚さTは0.1~300μmに設定され、結合材16のZ方向の高さは5mmに設定される。
【0021】
結合材16は、その厚さTに沿う方向における中心に砥粒15が位置する。これにより、砥石10の壁部12の厚さTを小さくすることができ、砥石10の被加工物Wに対する接触面積を小さくすることができる。従って、砥石10の被加工物Wに対する接触圧力を大きくすることができ、砥石10の切れ味を向上させることができる。
【0022】
また、結合材16の厚さTが砥粒15の平均粒径Dと略同一に設定されることにより結合材16によって砥粒15が保持される保持力を所望の値に設定することができる。砥粒15が保持される保持力は、結合材16の厚さTが大きくなるにつれて大きくなる。所望の値は、砥粒15が加工により目つぶれ又は目詰まりを起こす前に結合材16から脱落する値に設定される。
詳しくは、砥石10により加工される際、複数の砥粒15のうち最も被加工物Wに近い第1砥粒15aが被加工物Wに摺動することにより、被加工物Wの研削又は研磨が行われる。第1砥粒15aが削れることにより目つぶれ等が発生し、砥石10の切れ味が低下する。本例では、砥粒15が保持される保持力を所望の値に設定されることにより、切れ味が低下する前に、第1砥粒15aが脱落し、第1砥粒15aに隣接する第2砥粒15bが被加工物W側に露出する。そして、第2砥粒15bにより被加工物Wの研削又は研磨が行われる。よって、砥石10による加工の切れ味を保つことができる。
【0023】
(効果)
以上、説明した第1の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0024】
(1)砥石10は、被加工物Wを研磨又は研削する加工面10aを有し、加工面10aに直交するZ方向(直交方向)に沿って延びる六角形筒状の複数の筒部11が加工面10aに沿って並べられたハニカム構造を有する。砥石10は、複数の砥粒15と、複数の砥粒15を結合する結合材16と、を備える。複数の砥粒15は、結合材16内に、Z方向に沿って1列に並べられ、結合材16に対して結合材16の厚さ方向(X方向)において中心に位置する。
この構成によれば、複数の砥粒15が1列に並べられるため、砥石10の被加工物Wに対する接触面積を小さくすることができる。このため、砥石10の切れ味を向上させることができる。
また、複数の砥粒15が1列に並べられるため、複数の砥粒15のうち第1砥粒15aが脱落した後、次に、第2砥粒15bが露出する。よって、長期間にわたって、砥石10の切れ味を保つことができる。
さらに、砥石10は、ハニカム構造を有するため、被加工物Wへの接触圧力によってたわみづらい。よって、より確実に、被加工物Wを研磨又は研削することができる。
【0025】
(2)結合材16の厚さTは、砥粒15の平均粒径Dと略同一に形成されている。
この構成によれば、砥石10の被加工物Wに対する接触面積を小さくすることができる。このため、砥石10の切れ味を向上させることができる。
【0026】
(3)複数の砥粒15のうち少なくとも何れかの頂点15Pは、結合材16におけるZ方向に沿う面16Sに一致する。
この構成によれば、複数の砥粒15間で結合材16により覆われる面積を均一化することができる。よって、砥粒15毎に結合材16により保持される保持力を均一化することができる。このため、砥粒15が脱落するタイミングを均一化することができ、これにより、砥石10の切れ味を安定させることができる。
【0027】
(4)1列に並ぶ複数の砥粒15のうち隣り合う第1砥粒15a及び第2砥粒15bは互いに接触点15Qにて接触する。
この構成によれば、第1砥粒15aが脱落すると、すぐに第2砥粒15bが外部に露出する。このため、砥石10の切れ味を安定させることができる。
【0028】
(5)結合材16におけるZ方向に沿う2つの面16Sは平面で形成される。
この構成によれば、結合材16の2つの面16Sが非平面状に形成される構成に比べて、結合材16により砥粒15が保持される保持力を複数の砥粒15毎に均一化することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
本発明に係る砥石の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
図4に示すように、結合材16は、第1層部16aと、第2層部16bと、を備える。第1層部16aは、1列に並ぶ複数の砥粒15に対して厚さTに沿う方向における一方側、すなわち
図4の右側に位置する。第1層部16aは各砥粒15の右部分に密着する。
第2層部16bは、1列に並ぶ複数の砥粒15に対して厚さTに沿う方向における他方側、すなわち
図4の左側に位置する。第2層部16bは各砥粒15の左部分に密着する。1列に並ぶ複数の砥粒15は、第1層部16aと第2層部16bにより挟み込まれることにより、結合材16に保持される。第1層部16aと第2層部16bはそれぞれ同一の材質、例えば金属、樹脂又はセラミックにより形成されてもよいし、それぞれ異なる材質により形成されてもよい。
【0030】
さらに、第1層部16aと第2層部16bの間には空間Spが形成される。空間Spは、複数の砥粒15の中心に対応する位置に形成される。空間SpのX方向の長さにより、結合材16によって砥粒15が保持される保持力が調整される。空間SpのX方向の長さが小さくなることによりこの保持力が大きくなる。
【0031】
(効果)
以上、説明した第2の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0032】
(1)結合材16は、複数の砥粒15に対して厚さ方向における一方側に位置する第1層部16aと、複数の砥粒15に対して厚さ方向における他方側に位置する第2層部16bと、を備える。
上記構成と異なり、結合材16を一体で形成した場合には結合材16によって砥粒15が保持される保持力が大きすぎて、砥粒15が目つぶれにより砥石10の切れ味が低下するおそれがある。
この点、上記構成によれば、結合材16を第1層部16aと第2層部16bに分けることにより、上記保持力を所望の値まで低下させることができる。よって、目つぶれが発生する前に砥粒15が脱落し、砥石10の切れ味を保つことができる。
【0033】
(2)第1層部16aと第2層部16bの間には空間Spが形成される。
この構成によれば、空間Spにより上記保持力を所望の値まで低下させることができる。よって、目つぶれが発生する前に砥粒15が脱落し、砥石10の切れ味を保つことができる。
【0034】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0035】
上記実施形態においては、結合材16の厚さTは砥粒15の平均粒径Dと略同一に設定されていたが、これに限らず、結合材16の厚さTは砥粒15の平均粒径D未満に設定されてもよい。この場合、砥粒15の頂点15Pの周辺部が結合材16の面16Sから突出していてもよい。また、結合材16の厚さTは砥粒15の平均粒径Dを超えるように設定されてもよい。
【0036】
上記実施形態においては、1列に並ぶ複数の砥粒15のうち隣り合う2つの砥粒15は互いに接触していたが、隣り合う2つの砥粒15は互いに離間していてもよい。
【0037】
上記実施形態においては、第1層部16aと第2層部16bの間には空間Spが形成されていたが、空間Spは省略されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 砥石ユニット
10 砥石
10a 加工面
11 筒部
12 壁部
15 砥粒
15P 頂点
15a 第1砥粒
15b 第2砥粒
16 結合材
16S 面
16a 第1層部
16b 第2層部
20 砥石ホルダー
25 シャフト
27 モータ
D 平均粒径
W 被加工物
Sp 空間