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特許7140380浴室床構造及び継ぎ目部材、並びに浴室床の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】浴室床構造及び継ぎ目部材、並びに浴室床の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20220913BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20220913BHJP
   E03C 1/20 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
E04H1/12 301
E04F15/00 F
E03C1/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018190524
(22)【出願日】2018-10-06
(65)【公開番号】P2020059998
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】牧野 祐介
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-119736(JP,U)
【文献】実開昭54-146032(JP,U)
【文献】実開平05-058741(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床パネルと、
前記床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートと、
前記第1、第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って延びる継ぎ目部材と、
を備え、前記継ぎ目部材が、
前記第1、第2表層シートの対向端面どうし間に配置された受け部材と、
前記受け部材の上側に配置された表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1、第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された受け壁部とを有し、前記受け壁部には上端面から壁内部に向かって嵌合溝が形成され、かつ前記受け壁部の両側面と前記第1、第2表層シートの対向端面との間にはそれぞれシーリング充填溝が形成され、各シーリング充填溝にシーリング材が充填されており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側のシーリング充填溝を跨いで前記第1、第2表層シートの上面間に架け渡されたカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記嵌合溝と嵌合された嵌合凸部と有していることを特徴とする浴室床構造。
【請求項2】
前記カバー部の幅が、前記底板部の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の浴室床構造。
【請求項3】
前記受け部材が、前記第1、第2表層シートの対向端面どうし間に挟まれるようにして、前記床パネル上に載置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室床構造。
【請求項4】
前記底板部の一端面が、前記第1表層シートの対向端面に突き当てられ、前記底板部の他端面が、前記第2表層シートの対向端面に突き当てられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の浴室床構造。
【請求項5】
前記底板部の下面から前記カバー部の下面までの高さが、前記表層シートの厚さと実質等しいことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の浴室床構造。
【請求項6】
前記表側部材が、前記嵌合凸部を構成する硬質樹脂と、前記カバー部を構成する軟質樹脂とを含む二色成形体であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の浴室床構造。
【請求項7】
浴室の床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って設けられる継ぎ目部材であって、
前記第1、第2表層シートの対向端面どうし間に配置される受け部材と、
前記受け部材上に配置される表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1、第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された受け壁部とを有し、前記受け壁部には上端面から壁内部に向かって嵌合溝が形成され、かつ前記受け壁部の両側面が前記第1、第2表層シートの対向端面との間にそれぞれシーリング材が充填されるシーリング充填溝を画成するようになっており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側のシーリング充填溝を跨いで前記第1、第2表層シートの上面間に架け渡されるカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記嵌合溝と嵌合される嵌合凸部と有していることを特徴とする浴室床用継ぎ目部材。
【請求項8】
浴室の床パネルより小幅の第1表層シートを前記床パネル上に敷設し、
前記第1表層シートの対向端面に沿って継ぎ目部材の受け部材を設置し、
第2表層シートの対向端面を前記受け部材に沿わせるようにして、前記受け部材を挟んで前記第1表層シートとは反対側の床パネル上に前記第2表層シートを敷設し、
前記受け部材の底板部の幅方向中央部から上へ突出された受け壁部と前記第1、第2表層シートの各対向端面との間に形成された一対のシーリング充填溝にそれぞれシーリング材を充填し、
その後、前記継ぎ目部材の表側部材を前記受け部材上に被せて、前記表側部材のカバー部を前記第1、第2表層シートの上面間に架け渡すとともに、前記カバーの幅方向中央部から下へ突出された嵌合凸部を、前記受け壁部の上端面から壁内部に向かって形成された嵌合溝に嵌合させることを特徴とする浴室床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床構造及び施工方法に関し、特に複数の表層シートが床パネル上に並べられて敷設された浴室床における隣接する表層シートどうしの継ぎ目処理に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ユニットバスはFRPの圧縮成形や積層成形によって作製され、表面がFRPによって構成されている。一方、意匠性やクッション性などを付加するために、表層シートが貼られる場合もある。この種の表層シートとしては、一定幅の複層発泡塩化ビニル製のシートが用いられることが多い。浴室床の幅が前記シートの幅より大きい場合は、複数のシートを並べて敷設する。このため、隣接するシートどうしの間に継ぎ目が形成される。
前記の継ぎ目処理としては、通常、熱風溶接機による溶接が採用されている。塩化ビニルの溶接棒を熱風溶接機に取り付け、熱風で前記継ぎ目に溶かし込む。これによって、隣接するシートどうしが接合される。後工程として、継ぎ目に出来た溶接ビードのはみ出し部を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-218799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱風溶接機による継ぎ目処理の場合、熱風によって表層シートの継ぎ目以外の部分までもが熱せられやすい。そうすると、例えば化粧面のシボが消えたりテカリが生じたりして、意匠性が損なわれる。場合によっては、表層シートが焼け焦げるおそれもある。また、溶接作業はある程度の技能を要し、溶接が不十分であると、継ぎ目から水漏れが起きてしまう。
本発明は、かかる事情に鑑み、複数の表層シートが並べられて敷設された浴室床において、各表層シートに損傷を与えることがなく施工不良が起きにくく確実に防水して塞ぐことができる表層シート継ぎ目構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る浴室床構造は、
浴室の床パネルと、
前記床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートと、
前記第1、第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って延びる継ぎ目部材と、
を備え、前記継ぎ目部材が、
前記第1、第2表層シートの対向端面どうし間に配置された受け部材と、
前記受け部材の上側に配置された表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1、第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された受け壁部とを有し、前記受け壁部には上端面から壁内部に向かって嵌合溝が形成され、かつ前記受け壁部の両側面と前記第1、第2表層シートの対向端面との間にはそれぞれシーリング充填溝が形成されており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側のシーリング充填溝を跨いで前記第1、第2表層シートの上面間に架け渡されたカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記嵌合溝と嵌合された嵌合凸部と有していることを特徴とする。
【0006】
当該浴室床構造においては、第1、第2表層シート及び受け部材の設置後、表側部材の設置前は、受け壁部の両側の一対のシーリング充填溝が上方へ開放されている。該開口からシーリング材をシーリング充填溝の内部に容易に塗布できる。かつ前記開口を通して、シーリング材の塗布状況を容易に確認できる。したがって、施工不良を防止できる。好ましくはシーリング材としてシリコーンを用いる。
塗布後、表側部材を設置する。該表側部材によって、受け部材及びシーリング材を覆い隠すことで、表層シートどうしの継ぎ目の見栄えをよくして意匠性を向上できる。かつ、表側部材の両端部が第1、第2表層シートの端部に被さることで、各表層シートの端部のメクレ、剥がれなどを防止できる。さらに、浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、表層シートの端部やシーリン材が損傷するのを防止できる。
表側部材の嵌合凸部が嵌合される嵌合溝は、シーリング充填溝から隔てられているから、嵌合凸部と嵌合溝との嵌合時に、シーリング充填溝内のシーリング材が押し出されることはない。したがって、シーリング材の状態を塗布時のまま維持でき、充填量を確保できる。また、表層シートの表面にシーリング材が溢れ出るのを防止でき、汚れ除去の手間を省くことができる。
第1表層シートの対向端面と受け壁部との間のシーリング充填溝内のシーリング材によって、第1表層シートと受け部材との間をシールでき、第1表層シートと床パネルとの間への水の侵入を防止できる。
第2表層シートの対向端面と受け壁部との間のシーリング充填溝内のシーリング材によって、第2表層シートと受け部材との間をシールでき、第2表層シートと床パネルとの間への水の侵入を防止できる。
前述したように、シーリング材の塗布不良が起きにくいから、第1、第2表層シートと受け部材との間を確実にシールでき、表層シートどうしの継ぎ目における防水性を確保できる。
当該浴室床構造における継ぎ目処理においては熱風を必要としないから表層シートに熱損傷を与えることがない。
【0007】
前記カバー部の幅が、前記底板部の幅より大きいことが好ましい。
これによって、カバー部の幅方向の両端部が、底板部よりも幅方向の外側へ延び出て、第1、第2表層シートの端部の上面に確実に被さるようにできる。したがって、各表層シートの端部のメクレ、剥がれなどを確実に防止できる。
【0008】
前記受け部材が、前記第1、第2表層シートの対向端面どうし間に挟まれるようにして、前記床パネル上に載置されていることが好ましい。
これによって、受け部材ひいては継ぎ目部材を表層シートの継ぎ目に安定的に設置できる。また、第1、第2表層シートの端部と底板部とを上下に重ねる必要がなく、第1、第2表層シートの端部が盛り上がるのを防止できる。
【0009】
前記受け部材の底板部の一端面が、前記第1表層シートの対向端面に突き当てられ、前記底板部の他端面が、前記第2表層シートの対向端面に突き当てられていることが、より好ましい。これによって、受け部材及び第1、第2表層シートの位置決めを容易化できる。さらには、受け部材ひいては継ぎ目部材を表層シートの継ぎ目に一層安定的に設置でき、継ぎ目部材がずれ動くのを防止できる。したがって、受け部材のずれによるシーリング材のちぎれや溢れ出しなどを確実に防止できる。
【0010】
前記底板部の下面から前記カバー部の下面までの高さは、前記表層シートの厚さと実質等しいことが好ましい。これによって、カバー部の両端部が、第1、第2表層シートの端部の上面に確実に接するようにできる。「実質」とは、製造公差、施工誤差程度の寸法差は許容される趣旨である。
【0011】
前記表側部材が、前記嵌合凸部を構成する硬質樹脂と、前記カバー部を構成する軟質樹脂とを含む二色成形体であることが好ましい。
これによって、嵌合凸部には嵌合に必要な硬さを付与できる。浴室の床面に面するカバー部にはクッション性を付与できる。二色成形によって嵌合凸部とカバー部を一体的に形成できる。
【0012】
本発明に係る浴室床の表層シート用継ぎ目部材は、浴室の床パネル上に隣接して敷設された第1表層シート及び第2表層シートどうしの継ぎ目に沿って設けられる継ぎ目部材であって、
前記第1、第2表層シートの対向端面どうし間に配置される受け部材と、
前記受け部材上に配置される表側部材と、を含み、
前記受け部材が、前記第1、第2表層シートより薄肉の底板部と、前記底板部の幅方向の中央部から上へ突出された受け壁部とを有し、前記受け壁部には上端面から壁内部に向かって嵌合溝が形成され、かつ前記受け壁部の両側面が前記第1、第2表層シートの対向端面との間にそれぞれシーリング充填溝を画成するようになっており、
前記表側部材が、前記受け壁部の両側のシーリング充填溝を跨いで前記第1、第2表層シートの上面間に架け渡されるカバー部と、前記カバー部の幅方向の中央部から下へ突出されて前記嵌合溝と嵌合される嵌合凸部と有していることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る浴室床の施工方法は、
浴室の床パネルより小幅の第1表層シートを前記床パネル上に敷設し、
前記第1表層シートの対向端面に沿って継ぎ目部材の受け部材を設置し、
第2表層シートの対向端面を前記受け部材に沿わせるようにして、前記受け部材を挟んで前記第1表層シートとは反対側の床パネル上に前記第2表層シートを敷設し、
前記受け部材の底板部の幅方向中央部から上へ突出された受け壁部と前記第1、第2表層シートの各対向端面との間に形成された一対のシーリング充填溝にシーリング材を充填し、
その後、前記継ぎ目部材の表側部材を前記受け部材上に被せて、前記表側部材のカバー部を前記第1、第2表層シートの上面間に架け渡すとともに、前記カバーの幅方向中央部から下へ突出された嵌合凸部を、前記受け壁部の上端面から壁内部に向かって形成された嵌合溝に嵌合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の表層シートが並べられて敷設された浴室床において、各表層シートに損傷を与えることなく、表層シートどうしの継ぎ目を確実に防水して塞ぐことができ、施工不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る継ぎ目部材を含む浴室床の平面図である。
図2図2は、前記浴室床の一部分の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う、前記浴室床の断面図である。
図4図4は、前記継ぎ目部材の分解斜視図である。
図5図5(a)~同図(c)は、前記浴室床の施工手順を順次示す断面図である。
図6図6(a)~同図(c)は、図5に続く前記施工手順を順次示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
本実施形態における浴室は、例えば介護施設などにおいて用いられる比較的大型の浴室である。浴室の全体が洗い場になっている。浴室の供用時には、別途、移動式の浴槽を搬入可能である。
【0017】
図1に示すように、浴室床1(浴室床構造)は、複数の床パネル2と、外周枠3と、排水ピット4と、複数の表層シート10を備えている。外周枠3は、浴室床1の外周に沿って設けられ、図示しない浴室壁パネルや扉枠を受ける。浴室床1の奥行方向(図1において上下)の中央部に排水ピット4が配置されている。該排水ピット4が、浴室床1の幅方向(図1において左右)の一端部から他端部まで横断している。排水ピット4を挟んで両側の床部1aには、それぞれ複数(図では2つ)の床パネル2が幅方向に並べられて設置されている。床パネル2の上面(床面)には、排水ピット4へ向かって下へ傾く水流れ勾配が形成されている(図2参照)。
【0018】
図2及び図3に示すように、床パネル2は、例えば発泡樹脂製のパネル本体2aを鋼板製の上側補強板2b及び下側補強板2cによって上下から挟んでなるサンドイッチ構造になっている。これによって、床パネル2の製造コストを安価にでき、かつ所要強度を確保できる。
なお、床パネル2は、前記サンドイッチ構造に限らず、FRPの圧縮成形品や積層成形品であってもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、浴室床1の上面(床面)には複数(図では1つの床部1aあたり3つ)の表層シート10が敷設されている。図3に示すように、各床パネル2の上面には両面粘着テープ2dが貼られており、該両面粘着テープ2d上に表層シート10が貼り付けられている。表層シート10の厚さは、好ましくは数mm程度、より好ましくは3mm程度である。
【0020】
表層シート10としては、一定の規格幅寸法の複層発泡塩化ビニル製のシートが用いられている。図1に示すように、床パネル2の幅ひいては床部1aの幅が前記規格幅寸法より大きい。このため、床部1aには、複数枚(図1では3つ)の表層シート10が浴室幅方向(図1において左右)に並べられて配置されている。なお、図1においては、各表層シート10の幅が前記規格幅寸法になっているが、床部1aの大きさによっては、少なくとも1つの表層シートをカットして幅を詰めてもよい。各表層シート10の幅方向と直交する長手方向は浴室奥行方向(図1において上下)へ向けられている。
以下、複数枚の表層シート10のうち隣接する2つを互いに区別するときは、一方を「第1表層シート11」と称し、他方を「第2表層シート12」と称す。ここでは、便宜的に各床部1aの3つの表層シート10のうち中央のものを第1表層シート11とし、両側のものを第2表層シート12とする。
【0021】
図1に示すように、隣接する第1表層シート11及び第2表層シート12どうしの対向端面11e,12e間には、継ぎ目13が形成されている。好ましくは、表層シート11,12どうしの継ぎ目13は、床パネル2どうしの継ぎ目2gと交差しておらず、かつ重なっていない。これによって、両継ぎ目13,2gの交差部又は重なり部からの漏水のリスクを無くすことができる。より好ましくは、表層シート11,12どうしの継ぎ目13は、床パネル2どうしの継ぎ目2gと平行であり、かつ継ぎ目2gからずれて何れかの床パネル2の面上に配置されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、継ぎ目13に沿って継ぎ目部材14が設けられている。好ましくは、継ぎ目部材14は、浴室床1における水流れ勾配が付けられた方向(浴室奥行方向、図1において上下)に沿って延びている。これによって、排水が継ぎ目部材14に沿って流れるようにできる。継ぎ目部材14が水流れ勾配が付けられた方向に対して交差していると、排水が継ぎ目部材14に堰き止められて、水や固形物の溜まりが出来やすい。
【0023】
図4に示すように、継ぎ目部材14は、下側の受け部材20と、上側の表側部材30とを含む。受け部材20及び表側部材30は、それぞれ一定の断面に形成され、直線状に延びている。受け部材20は、例えばABSなどの比較的硬質の樹脂を押し出し成形することによって形成されている。図3及び図4に示すように、受け部材20は、底板部21と、受け壁部22とを一体に有している。底板部21は、表層シート10(11,12)より薄肉かつ一定幅の帯板状に形成されている。
【0024】
底板部21の幅方向の中央部には、受け壁部22が上方へ突出するように形成されている。受け壁部22には上端面から壁内部に向かって嵌合溝23が形成されている。嵌合溝23の両側の溝壁にはそれぞれ係止突起24が形成されている。
受け壁部22が、嵌合溝23を挟んで2つの受け壁部分25,26に分断されている。
【0025】
図3に示すように、受け部材20は、表層シート11,12の対向端面11e,12e間に挟まれるようにして、床パネル2の上に載置されている。前記対向端面11e,12eどうしは、受け部材20の幅寸法の分だけ互いに離間されている。底板部21が、前記対向端面11e,12e間に現れた両面粘着テープ2dに接着されている。底板部21の一端面(図3において左端)が、第1表層シート11の対向端面11eの下側部分に突き当てられている。底板部21の他端面(図3において右端)が、第2表層シート12の対向端面12eの下側部分に突き当てられている。
受け壁部22の上端面は、表層シート10の上面とほぼ同じ高さに位置されている。
【0026】
受け壁部22の両側面と表層シート11,12の対向端面と11e,12eの間にはそれぞれシーリング充填溝41,42が形成されている。
詳しくは、第1表層シート11側の受け壁部分25の外側面と、第1表層シート11の対向端面11eとの間に第1のシーリング充填溝41が形成されている。底板部21における受け壁部分25よりも第1表層シート11側へ張り出した部分の上面が、シーリング充填溝41の溝底面を構成している。
【0027】
第2表層シート12側の受け壁部分26の外側面と、第2表層シート12の対向端面12eとの間に第2のシーリング充填溝42が形成されている。底板部21における受け壁部分26よりも第2表層シート12側へ張り出した部分の上面が、シーリング充填溝42の溝底面を構成している。
2つのシーリング充填溝41,42は、継ぎ目13に沿って図3の紙面直交方向に延びている。
【0028】
図3に示すように、シーリング充填溝41,42には、それぞれシーリング材5が充填されている。好ましくは、シーリング材5としてシリコーンが用いられている。
【0029】
図3及び図4に示すように、受け部材20上に表側部材30が配置されている。表側部材30は、カバー部31と、嵌合凸部33とを一体に有している。カバー部31は、ソフトアクリルなどの軟質樹脂によって構成され、嵌合凸部33はABSなどの硬質樹脂によって構成されている。表側部材30は、カバー部31と嵌合凸部33とを二色成形してなる二色成形体である。これによって、浴室の床面に面するカバー部31にはクッション性を付与できる。嵌合凸部33には嵌合に必要な硬さを付与できる。
【0030】
カバー部31は、一定幅の帯状に形成されている。カバー部31の幅は、底板部21の幅より大きい。カバー部31の幅方向の両端部が、底板部21よりも幅方向の外側へ延び出ている。
該カバー部31が、受け壁部22の両側のシーリング充填溝41,42を跨いで、第1表層シート11の上面と第2表層シート12の上面間に架け渡されている。カバー部31の幅方向両側部が、表層シート11,12の上面に被さり、好ましくは表層シート11,12の上面に当接されている。
【0031】
カバー部31における、各表層シート11,12の上面に重なる部分の幅は好ましくは数mm程度、より好ましくは3mm程度である。
底板部21の下面からカバー部31の下面までの高さは、表層シート10の厚さとほぼ等しい。
【0032】
カバー部31の幅方向の中央部に嵌合凸部33が設けられている。嵌合凸部33は、カバー部31から下へ突出されている。嵌合凸部33の下端部には係止突起34が形成されている。該嵌合凸部33が、受け部材20の嵌合溝23に挿し込まれて嵌合されている。係止突起24,34どうしが係止されている。
【0033】
<浴室床の施工方法>
当該浴室床1の施工の際は、図5(a)に示すように、床パネル2を設置した後、第1表層シート11を床パネル2上に敷設して、床パネル2の上面の両面粘着テープ2dに貼り付ける。
次に、図5(b)に示すように、第1表層シート11の対向端面に沿って、継ぎ目部材14の受け部材20を設置する。該受け部材20の底板部21の一端面を第1表層シート11の対向端面11eに突き当てる。かつ受け部材20を床パネル2上に載せて、床パネル2の上面の両面粘着テープ2dに貼り付ける。
これによって、第1表層シート11の対向端面11eと受け壁部22との間に第1のシーリング充填溝41が形成される。この時点の第1のシーリング充填溝41は、上方へ開口されている。
【0034】
次に、図5(c)に示すように、第2表層シート12の対向端面12eを受け部材20に沿わせて底板部21の他端面に突き当てるようにして、第2表層シート12を床パネル2上に敷設して両面粘着テープ2dに貼り付ける。これによって、第2表層シート12の対向端面12eと受け壁部22との間に第2のシーリング充填溝42が形成される。この時点の第2のシーリング充填溝42は、上方へ開口されている。
また、受け部材20が、表層シート11,12によって両側から挟み付けられて位置固定される。表層シート11,12の端部と底板部21とを上下に重ねる必要がなく、第1、第2表層シートの端部が盛り上がるのを防止できる。
【0035】
続いて、図6(a)に示すように、各シーリング充填溝41,42にシリコーン等のシーリング材5を塗布して充填する。受け壁部22の上面又は表層シート11,12の上面が、シーリング材5の充填量を量る目安となる。
各シーリング充填溝41,42は上方へ開口されているから、該溝開口41a,42aからシーリング材5をシーリング充填溝41,42の内部に容易に塗布して充填できる。かつ溝開口41a,42aを通して、シーリング材5の塗布・充填状況を容易に確認できる。したがって、施工不良を防止できる。
【0036】
次に、図6(b)~図6(c)に示すように、表側部材30を受け部材20上に被せ、嵌合凸部33を嵌合溝23に嵌合させる。これによって、表側部材30によって溝開口41a,42aに蓋をすることができ、さらに受け部材20及びシーリング材5を覆い隠すことができる。したがって、継ぎ目13の見栄えをよくして意匠性を向上できる。
図6(c)に示すように、表側部材30の両端部が第1、第2表層シート11,12の端部の上面に被さることで、各表層シート11,12の端部のメクレ、剥がれなどを防止できる。さらに、供用後の浴室床面上を車椅子やリフトその他の介助機器が走行したとしても、表層シート11,12の端部やシーリング材5が損傷するのを防止できる。
受け部材20が表層シート11,12によって両側から挟み付けられて位置固定されているから、表側部材30をも位置固定できる。ひいては、継ぎ目部材14を継ぎ目13に安定的に設置でき、継ぎ目部材14がずれ動くのを防止できる。したがって、受け部材のずれによるシーリング材のちぎれや溢れ出しなどを確実に防止できる。
嵌合凸部33が嵌合される嵌合溝23は、シーリング充填溝41,42から隔てられているから、嵌合凸部33と嵌合溝23の嵌合操作時に、シーリング充填溝41,42内のシーリング材5が押し出されることはない。したがって、シーリング材5の状態を塗布時のまま維持でき、充填量を確保できる。また、前記嵌合操作時にシーリング材5が表層シート10の表面に溢れ出るのを防止でき、汚れ除去の手間を省くことができる。
当該浴継ぎ目処理においては熱風を必要としないから表層シート10に熱損傷を与えることがない。
【0037】
第1表層シート11側のシーリング充填溝41内のシーリング材5によって、第1表層シート11と受け部材20との間をシールして、第1表層シート11と床パネル2との間への水の侵入を防止できる。
第2表層シート12側のシーリング充填溝42内のシーリング材5によって、第2表層シート12と受け部材20との間をシールでき、第2表層シート12と床パネルとの間への水の侵入を防止できる。
前述したように、シーリング材5の塗布不良が起きにくいから、表層シート11,12と受け部材20との間を確実にシールでき、継ぎ目13における防水性を確保できる。
表層シート10(11,12)を張り替える際は、継ぎ目部材14の表側部材30を受け部材20から引き剥がして撤去する。受け部材20は残置して再使用できる。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、浴室床1が1つの床パネルだけで構成されていてもよい。床パネルがFRP製であってもよい。
浴室が、浴槽及び浴槽受けパンを有していてもよい。本発明の床パネルが、前記浴槽受けパンを含んでいてもよい。
本発明の浴室床構造は、介護施設などの大型浴室に限らず、戸建て住宅や集合住宅その他の浴室にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば介護施設などの大型の浴室に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 浴室床(浴室床構造)
2 床パネル
2d 両面粘着テープ
5 シーリング材
11 第1表層シート
11e 対向端面
12 第2表層シート
12e 対向端面
13 継ぎ目
14 継ぎ目部材
20 受け部材
21 底板部
22 受け壁部
23 嵌合溝
30 表側部材
31 カバー部
33 嵌合凸部
41,42 シーリング充填溝
41a,42a 溝開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6